説明

画質評価方法および画質評価装置ならびに画質評価用チャート画像

【課題】 人間の主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価する。
【解決手段】 人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価装置400であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像である被評価画像100を、被評価画像として使用する、ことを特徴とする。このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、グラデーション画像の階調変化を視感比較した場合と対応をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画質評価方法および画質評価装置ならびに画質評価用チャート画像に関し、さらに詳しくは、人間の知覚特性に対応させつつ画像の階調性を定量的に評価する画質評価方法および画質評価装置ならびに画質評価用チャート画像に関する。
【0002】
【従来の技術】評価対象となる画像(以下、被評価画像と称する)の評価としては、人間が視覚的に評価する「主観評価」と、画像の性質を測定器具等で客観的・物理的に測定した数値で評価する「定量評価」との2種類がある。なお、実際の評価においては、主観評価によって画像の評価がなされるケースが多い。
【0003】しかし上述した主観評価では、評価する人によって判断基準が曖昧であったり、外的環境に影響したりと、信頼性の高い結果が得られない問題がある。また、画像処理装置がもつ潜在的な画質との切り分けが難しい。そこで、定量評価が検討されている。
【0004】画像出力装置の階調性(いわゆる階調変化の滑らかさ、階調ムラの度合い、を指す)を定量的に評価する場合、画質評価に使用されるデジタル画像を画像出力装置にて出力し、その被評価画像を濃度計測、強度計測もしくは色計測を行い計測結果を計算処理し最終的な評価値を得る。
【0005】このことは、文献1(特開平11−025274号公報)と、文献3(藤野真「インクジェットプリンタの画質評価」日本写真学会誌60巻6号(1997年発行)pp.348−352)とに記載されている。
【0006】なお、デジタル画像処理などによる階調性の損失に関しては、画像評価用のチャート画像に同様な処理を行い、その後のデジタルデータを計算処理することが文献2(T. Olson, Smooth Ramps:Walking the Straight and Narrow Path through Color Space, 7ty color Imaging Conference: Color Science, systems, and Applications. pp57-64)に記載されている。
【0007】また、階調性評価に使用されるチャート画像には、文献1にあるような「隣接する階調レベルのパッチを空間的に隣接させて」作成されたものが多い。ここで、パッチとは「階調を表現するのに必要な面積と測定器による測定が可能な面積を有していて」均一に配色されているエリアであり、測定するには適しているものの、一定の面積をもっているために、主観的な階調性評価でよく使用されているグラデーション画像における階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象と対応をとりにくいという問題がある。
【0008】また、文献2および文献3についても、同様にパッチをチャート画像として使用しており、同様な問題が考えられる。なお、文献2では、チャート画像としてグラデーション画像に関する記述は一切なく、実験では多段階のパッチによるチャートを使用している。すなわち、定量的な階調性評価において、グラデーション画像を使用する手法は、知られていない。
【0009】また、階調性の評価方法に関しても、文献3において、1つの方法として階調再現段数を計算する方法が提案されている。他には、文献1において、隣接する階調レベル間の濃度値や明度値といった計測値の差を算出し、その差と人間のしきい値との大小関係を判断し、階調飛び量を算出・積算する方法が提案されている。さらに、文献3でも同様な方法で階調性を定量化することが示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述した階調再現段数を計算する方法では、複数個のパッチから階調再現段数を算出しているため、パッチ以外の濃度で発生する階調ムラの度合いを定量化することができない。また、任意の色に適用できるかが定かでない。
【0011】また、隣接する階調レベル間の差を算出する方法では、全ての色や濃度に対して人間のしきい値を用意する必要がある。また隣同士の差を実際の見え具合と対応させるのは困難であるし、計測値に含まれているノイズ成分に結果が影響する懸念もある。
【0012】そして、従来の階調性評価ではパッチ画像を用いているため、グラデーション画像での現象と対応をとることが困難であった。またパッチ画像によるチャート画像では、広い紙面領域を必要とし、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合には不適当である。
【0013】従って、本発明では、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することができる画質評価方法および画質評価装置、ならびに、様々な色や濃度の階調を評価する際に適した画質評価用チャート画像を実現することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】すなわち、前記した課題は以下の構成により解決される。
(1)請求項1記載の発明は、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価方法であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用する、ことを特徴とする画質評価方法である。
【0015】また、請求項3記載の発明は、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価装置であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用する、ことを特徴とする画質評価装置である。
【0016】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用する。
【0017】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、グラデーション画像の階調変化を視感比較した場合と対応をとることができる。また、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0018】(2)請求項に記載されていない他の発明は、前記被評価画像は、反射物体、透過物体、発光物体のいずれかのうちの被評価画像、もしくは、電子化された被評価画像のいずれかである、ことを特徴とする(1)記載の画質評価方法である。
【0019】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記被評価画像は、反射物体、透過物体、発光物体のいずれかのうちの被評価画像、もしくは、電子化された被評価画像のいずれかである、ことを特徴とする(1)記載の画質評価装置である。
【0020】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、該被評価画像は、反射物体、透過物体、発光物体のいずれかのうちの被評価画像、もしくは、電子化された被評価画像のいずれかであるようにしている。
【0021】このように、被評価画像として、反射物体、透過物体、発光物体のいずれかのうちの被評価画像、もしくは、電子化された被評価画像のいずれかについてのグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。そして、様々な種類の画像出力装置で出力された画像や既に電子化された画像の階調性を評価することができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0022】(3)請求項2記載の発明は、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価方法であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用すると共に、前記グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行する、ことを特徴とする画質評価方法である。
【0023】また、請求項4記載の発明は、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価装置であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用すると共に、前記グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行する、ことを特徴とする画質評価装置である。
【0024】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしている。
【0025】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。また、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出することで、色に関係のある指標を用いて定量的な画質評価を行うことができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0026】(4)請求項に記載されていない他の発明は、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、人間の視覚特性を考慮して変換された情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価方法である。
【0027】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、人間の視覚特性を考慮して変換された情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価装置である。
【0028】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、人間の視覚特性を考慮して変換された情報を含むものである。
【0029】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。また、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出することで、色に関係のある指標を用いて定量的な画質評価を行うことができるようになる。さらに、人間の視覚特性を考慮した情報を含めることで、人間の視感に基づいた特徴量を得ることができ、人間の視感と整合性のとれた画質評価を行うことができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0030】(5)請求項に記載されていない他の発明は、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、グラデーションの変化方向の位置情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価方法である。
【0031】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、グラデーションの変化方向の位置情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価装置である。
【0032】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報はグラデーションの変化方向の位置情報を含むものである。
【0033】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。また、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出することで、色に関係のある指標を用いて定量的な画質評価を行うことができるようになる。さらに、グラデーションの変化方向の位置情報を含んでいることで、グラデーション内部の位置とグラデーションの変化を対応させることができ、グラデーションのどの位置で階調ムラが発生しているかを知ることができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0034】(6)請求項に記載されていない他の発明は、前記特徴量は、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のいずれかが有する階調ムラについての位置と程度との情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価方法である。
【0035】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記特徴量は、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のいずれかが有する階調ムラについての位置と程度との情報を含む、ことを特徴とする(3)記載の画質評価装置である。
【0036】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報はいずれかが有する階調ムラについての位置と程度との情報を含むものである。
【0037】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。また、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出することで、色に関係のある指標を用いて定量的な画質評価を行うことができるようになる。さらに、特徴量に階調ムラの位置と程度を含めることによって、グラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0038】(7)請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラについての位置と程度との情報は、階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定し、それとの違いを比較することで抽出される、ことを特徴とする(6)記載の画質評価方法である。
【0039】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラについての位置と程度との情報は、階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定し、それとの違いを比較することで抽出される、ことを特徴とする(6)記載の画質評価装置である。
【0040】これらの発明では、上記(6)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定し、それとの違いを比較することで、階調のムラが発生している位置と程度を定量化できるようになる。
【0041】(8)請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定する手法として、階調ムラを含んでいる情報の近似曲線を作成する手法が含まれる、ことを特徴とする(6)記載の画質評価方法である。
【0042】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定する手法として、階調ムラを含んでいる情報の近似曲線を作成する手法が含まれる、ことを特徴とする(6)記載の画質評価装置である。
【0043】これらの発明では、(6)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを含んでいる情報の近似曲線を作成する方法を用いることで、任意の曲線を持つ情報に対応できるようになる。
【0044】(9)請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラを更に複数の特徴量に分解し、主観との相関性の高い複数の特徴量を選択して評価値を得る、ことを特徴とする(6)記載の画質評価方法である。
【0045】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記階調ムラを更に複数の特徴量に分解し、主観との相関性の高い複数の特徴量を選択して評価値を得る、ことを特徴とする(6)記載の画質評価装置である。
【0046】これらの発明では、(6)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを更に複数の特徴量に分解し主観との相関性の高い複数の特徴量を用いて評価値をえることによって、ロバスト性が向上し、主観との相関性も高く、信頼性の高い評価を行うことができるようになる。
【0047】(10)請求項に記載されていない他の発明は、前記グラデーション画像は、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像が含まれる、ことを特徴とする(1)記載の画質評価方法である。
【0048】また、請求項に記載されていない他の発明は、前記グラデーション画像は、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像が含まれる、ことを特徴とする(1)記載の画質評価装置である。
【0049】これらの発明では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、該グラデーション画像は、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像が含まれる。
【0050】このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、グラデーション画像の階調変化を視感比較した場合と対応をとることができる。また、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。さらに、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像を含んでいることで、同時に複数の色や濃度の階調性を評価することができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0051】(11)請求項5記載の発明は、階調が連続的に変化するグラデーション画像について、グラデーションが変化する方向の端部に、該端部と同じ特性を有する所定の大きさの画像を配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像である。
【0052】この発明では、グラデーション画像について、グラデーションが変化する方向の端部に、該端部と同じ特性を有する所定の大きさの画像を配置して被評価画像としている。この結果、被評価画像端部における画質評価の信頼性をあげることができるようになる。
【0053】(12)請求項6記載の発明は、階調が連続的に変化するグラデーション画像の周囲に、白地よりも高濃度の灰色もしくは黒の画像を配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像である。
【0054】この発明では、グラデーション画像の周囲に、白地よりも高濃度の灰色もしくは黒の画像を配置して被評価画像としている。この結果、画像入力装置がスキャナの場合に、迷光や周辺からの光の回りこみの影響を抑えることができるようになる。
【0055】(13)請求項7記載の発明は、画像処理装置の持つ色域を任意の直線もしくは平面で投影もしくは切断し、その投影面もしくは切断面の色域分布に存在するグラデーションを平面図形もしくは立体図形内に配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像である。
【0056】この発明では、画像処理装置の持つ色域を任意の直線もしくは平面で投影もしくは切断し、その投影面もしくは切断面の色域分布に存在するグラデーションを平面図形もしくは立体図形内に配置して被評価画像としている。この結果、画像処理装置が持つ任意の色や濃度に合わせてグラデーション画像を作成することができるようになる。
【0057】(14)請求項に記載されていない他の発明は、任意の平面が明度軸を含む平面、および明度軸に垂直な平面を含む、ことを特徴とする請求項23記載の画質評価用チャート画像である。
【0058】この発明では、画像処理装置の持つ色域を任意の直線もしくは平面で投影もしくは切断し、その投影面もしくは切断面の色域分布に存在するグラデーションを平面図形もしくは立体図形内に配置して被評価画像としており、さらに、任意の平面が明度軸を含む平面、および明度軸に垂直な平面を含むようにしている。
【0059】この結果、画像処理装置が持つ任意の色や濃度に合わせてグラデーション画像を作成することができるようになり、さらに、明度軸を含む平面によって2色相間のグラデーション画像を発生することができるようになる。また、明度軸に垂直な平面によってある明度における全色相間のグラデーション画像を発生することができるようになる。
【0060】(15)請求項8記載の発明は、任意の画質評価用チャート画像と、それを90度回転させた画像データをペアとして構成する、ことを特徴とする画質評価用チャート画像である。
【0061】この発明では、任意の画質評価用チャート画像と、それを90度回転させた画像データをペアとして構成しているため、たとえば画像出力装置の印字方向と紙送り方向による画質の違いを1枚のプリントで評価することができるようになる。
【0062】(16)請求項9記載の発明は、任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成する、ことを特徴とする画質評価用チャート画像である。
【0063】この発明では、任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成するようにしているため、実際の画像データ分布に基づいた任意の被写体が持つ色のグラデーション画像を作成することができるようになる。
【0064】(17)請求項に記載されていない他の発明は、前記任意の被写体は空の色や肌色が含まれたものである、ことを特徴とする請求項26記載の画質評価用チャート画像である。
【0065】この発明では、任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成するようにしており、さらに、前記任意の被写体は空の色や肌色が含まれるようにしているため、実際の画像データ分布に基づいた任意の被写体が持つ色のグラデーション画像を作成することができるようになり、さらに、写真プリントなどを構成するいわゆる“主要色”と呼ばれる、空色や肌色のグラデーション画像を作成できるようになる。
【0066】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は本発明の実施の形態例の画質評価装置の構成を示す構成図である。
【0067】[第1の実施の形態例]この第1の実施の形態例の画質評価方法および画質評価装置についての、装置および処理手順の概要を図1に示す。ここでは、処理手順の機能ブロックに従ったブロック図により示している。
【0068】この画像評価装置は、画像入力装置200と、画像表示装置300と、それらを制御し画質評価を行う画質評価装置および各接続機器を制御する制御手段としての制御装置400と、パラメータ設定装置(操作入力装置)500から構成されている。
【0069】画像入力装置200としては、マイクロデンシトメータ(一次元データ)、ドラムスキャナ(二次元データ)、フィルムスキャナ(二次元データ)、フラットベッドスキャナ(二次元データ)、デジタルカメラ(二次元データ)など実物体(被評価画像)の1次元あるいは2次元あるいは3次元情報を電子化して出力する装置が想定される。この場合、被評価画像は反射物体、透過物体、発光物体のうちどれかで、画質評価を可能とするグラデーションなどの情報を有している。なお、この画像入力装置200は、特性のキャリブレーション、ドライバの調整などがなされていて、階調性が滑らかであり、階調特性がほぼ明度比例になっており、被写体によって特性が変化しないことが望ましい。また、AGCやエッジ強調などの装置側で行われる自動的な処理はオフにされていることが更に望ましい。
【0070】またそれとは別に、既に制御装置もしくは他の装置によって電子化された情報を被評価画像として入力する場合も考えられる。例えばCGがそれにあたり、この場合画像入力手段を介することなく、入力インタフェースなどを介して外部機器や保存記録媒体などから制御装置400に入力される。
【0071】画像表示装置300は、テレビモニタ、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、投写型ディスプレイ、など画像の表示に通常用いられる装置である。この画像表示装置300は、被評価画像の表示、画像評価時の各種設定の確認などに使用する。被評価画像を表示する場合には、画像入力装置200と同じ規格化された標準空間(たとえば、sRGB空間)、あるいは、画像入力装置200と同じRGB空間であることが望ましい。
【0072】なお、自動処理システムなどにより、被評価画像をモニタなどで確認し処理をする必要がなければ、あるいは、設定を確認する必要がなければ、この画像表示装置300を省略することも可能である。また、制御装置400はこれらの装置を制御し、画像評価を実現できるものであれば何でもよい。
【0073】また、パラメータ設定手段500は、画質評価に必要なパラメータを設定するインタフェースであり、キーボード、マウス、タッチパネルなどユーザーインタフェースが担当する。なお、パラメータには、被評価画像の想定観察距離、電子化された情報の解像度、視覚の空間周波数特性、入力画像の種類(グレイ、色1→色2)、被評価画像となる領域の個数、画像入力装置200の特性補正方法、色順応パラメータ、評価したいグラデーション画像上位置の分割数(nビットもしくはn分割(nは自然数))、などの情報が含まれる。
【0074】また、この画像評価装置の主要部を構成する制御装置400は、画像評価を実行するために、以下の各手段を有する。反対色変換手段410は、画像表示機器に表示した画像情報(グラデーション画像、但し、ここでは模式的に示す。図2(a))を反対色空間に変換する(図2■)。ここで、「反対色」とは、知覚において相反対する色であり、赤−緑(RG)、黄−青(YB)の2対、あるいは、白−黒(輝度)を加えた3対が該当する。また、「反対色空間」とは、RG軸、YB軸、輝度軸の3軸から構成された三次元空間であり、反対色生成の各パターンを適用することができる。なお、このように反対色空間を用いるのは、色覚の時空間周波数が反対色空間で測定あるいは調査されている例が多いからであるが、必須の要件ではない。
【0075】空間周波数情報変換手段420は、反対色空間に変換された画像情報を空間周波数分布情報に変換する(図2■)。DFT,FFT,DCTなど空間周波数分布情報に変換できるハードウェアもしくはソフトウェアであれば何でも適用可能である。
【0076】空間フィルタリング手段430は、空間周波数分布情報を人間の視覚系の空間周波数特性を表す関数と乗算することによってフィルタリングする。人間の視覚系の空間周波数特性は、パラメータ設定手段500により設定されたパラメータに基づいて調整される。
【0077】フィルタリング情報変換手段440は、空間フィルタリングされた空間周波数情報を逆変換して画像情報を得る(図2■)。空間周波数情報変換手段420で用いた方法の逆変換方法を用いる。
【0078】なお、空間周波数情報変換手段420からフィルタリング情報変換手段440に示した周波数空間を介した演算ではなく、実空間上でコンボリューションフィルタリングを行う方法も考えられる。
【0079】色情報変換手段450は、フィルタリング情報変換手段440によって得られた画像情報を人間の色覚特性にあった均等色空間、XYZ空間、RGB空間、濃度空間などの画像情報に変換する(図2■、図2(b))。なお、以上の各空間のなかでは、均等色空間が最も望ましい。ここで、均等色空間としては、CIEで規格化されたL*a*b*空間やL*u*v*空間が代表的なものとしてあげられるが、均等色空間として規格化された、もしくは今後される他の空間でもよい。また、この部分での「人間の色覚特性」とは、請求項における「人間の視覚特性」の一部に相当するものである。
【0080】なお、以上の説明において、電子化された実物体の情報を均等色空間情報に変換するところまでは、本件出願人が別途出願している特開平9−153136号公報に記載の内容を用いることも可能である。また、それ以外の同等な内容を有する各種公知例を適用することも可能である。
【0081】仮想画像情報生成手段460は、色情報変換手段450で得られた画像情報に応じて、滑らかな仮想画像情報を生成する(図2■、図2(c))。具体的には、画像情報をスムージングしたり、画像情報の近似曲線を作成する。すなわち、L*u*v*等の色情報(カーブ)に対して、仮想的な滑らかなカーブを作成する。このため、スムージングだけでなく、多項式近似曲線、フィッティング曲線、補間曲線(スプライン、ラグランジェ、ベジェなど)を用いることができる。なお、良好な結果を得るためには、各色情報からできる限り均等に複数格子点を抽出し、スプライン補間曲線やラグランジェ補間曲線を用いることが望ましい。
【0082】ムラ部抽出手段470は、上述した仮想画像情報生成手段460で得られた滑らかな仮想画像情報と、色情報変換手段450で得られた画像情報とから、両者のムラ部を抽出する(図2■、図2(d))。なお、このムラ部の抽出は、両者の差分や比率をとることで実現できる。この操作で画像情報の階調性の不連続部分を抽出することができ、抽出された成分を解析することによって階調性の定量評価ができる。
【0083】特徴量算出手段480は、ムラ部抽出手段470で得られたムラ部から画質評価に有効な特徴量を算出する。特徴量の例としては、ムラ部の発生した位置情報の他に、ムラ部の明度情報、彩度情報、色差情報、色相角情報、微分情報、小区間内平均、分散、標準偏差、最大・最小、ムラ部内の高低差などがあげられる。そして、有効な特徴量を各種線形回帰分析や多変量分析を用いて抽出し、また、特徴量の項目と各項目の重み係数とを保持しておく。
【0084】なお、統計量などを計算する場合に計算する区間は、パラメータ設定手段500での設定による。また、この特徴量算出手段480での特徴量の算出は、市販ソフトウェアの科学計算処理ツールや表計算ソフトウェアの計算処理ツールなどを用いることができる。
【0085】画像評価値算出手段490は、特徴量(図3(b)〜(d))と各特徴量に付随する重み係数(図3(e)〜(g))とから最終的な画像評価値(図3(h))を算出する(図3)。
【0086】また、以上の説明において、グラデーション画像において同じ画像分布を持つ複数のライン(図4(a))に対して同様な評価を行って複数の画質評価値(図4(b)〜(c))を得て、これらの平均を求めることで、被評価画像の汚れや傷などの影響が緩和された評価値を得ることが可能である(図4(d))。
【0087】また、同じ画像分布を持つ複数のラインに対して、平均を求めずに、それぞれ評価を行って複数の画質評価値を得ることも考えられる。これにより、ライン毎に階調性が変化しているか否かを検知できる。
【0088】以上の画質評価方法および画質評価装置により、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することができるようになる。すなわち、この第1の実施の形態例の作用・効果を列記すると以下の(a)〜(j)のようになる。
【0089】(a)この実施の形態例では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用する。このように、パッチ画像ではなくグラデーション画像を用いることで、階調ムラや階調飛び、つぶれといった現象との対応も可能になり、グラデーション画像の階調変化を視感比較した場合と対応をとることができる。また、様々な色や濃度の階調を同時に評価する場合にも広い紙面領域を必要としなくなる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0090】(b)また、この実施の形態例では、上記(a)に加え、該被評価画像は、反射物体、透過物体、発光物体のいずれかのうちの被評価画像、もしくは、電子化された被評価画像のいずれかであるようにしている。これにより、画像出力装置で出力された画像や既に電子化された画像の階調性を評価することができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0091】(c)また、この実施の形態例では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしている。これにより、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出することで、色に関係のある指標を用いて定量的な画質評価を行うことができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0092】(d)また、この実施の形態例では、上記(c)において、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報は、人間の視覚特性を考慮して変換された情報を含むものである。このように、人間の視覚特性を考慮した情報を含めることで、人間の視感に基づいた特徴量を得ることができ、人間の視感と整合性のとれた画質評価を行うことができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0093】(e)また、この実施の形態例では、上記(c)において、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報はグラデーションの変化方向の位置情報を含むものである。このように、グラデーションの変化方向の位置情報を含んでいることで、グラデーション内部の位置とグラデーションの変化を対応させることができ、グラデーションのどの位置で階調ムラが発生しているかを知ることができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0094】(f)また、この実施の形態例では、上記(c)において、グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行するようにしており、前記明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報はいずれかが有する階調ムラについての位置と程度との情報を含むものである。このように、特徴量に階調ムラの位置と程度を含めることによって、グラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0095】(g)また、この実施の形態例では、上記(f)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを含んでいる情報の滑らかに階調変化をしている状態を仮定し、それとの違いを比較することで、階調のムラが発生している位置と程度を定量化できるようになる。
【0096】(h)また、この実施の形態例では、(f)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを含んでいる情報の近似曲線を作成する方法を用いることで、任意の曲線を持つ情報に対応できるようになる。
【0097】(i)また、この実施の形態例では、(f)においてグラデーション内部で階調のムラが発生している位置とその程度を得ることができるようになり、さらに、階調ムラを更に複数の特徴量に分解し主観との相関性の高い複数の特徴量を用いて評価値をえることによって、ロバスト性が向上し、主観との相関性も高く、信頼性の高い評価を行うことができるようになる。
【0098】(j)また、この実施の形態例では、人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価の際に、階調が連続的に変化するグラデーション画像を被評価画像として使用すると共に、該グラデーション画像は、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像が含まれる。このように、一次元以上の方向の変化を伴うグラデーション画像を含んでいることで、同時に複数の色や濃度の階調性を評価することができるようになる。従って、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することが容易にできるようになる。
【0099】[第2の実施の形態例]この第2の実施の形態例の画質評価方法および画質評価装置についての、装置および処理手順の概要を図5に示す。ここでは、処理手順の機能ブロックに従ったブロック図により示している。
【0100】この第2の実施の形態例では、上述した第1の実施の形態例の図1における反対色変換手段410の前段に、色順応手段408が設けられている。それ以外の部分は、第1の実施の形態例と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0101】この実施の形態例における色順応手段408は、照明が変わっても色の見え方を同じにする処理であり、この用途のために提案されている各種の手段を使用することが可能である。なお、照明環境の変換を行うための照明環境変換手段などを用いることもできる。
【0102】これによりパラメータ設定手段500により与えられる任意のパラメータ(光源特性)に画像情報を順応させて画質評価をおこなうことができる。光源の特性の変化に対する画質の変化を観察したり定量化できるようになる。
【0103】[第3の実施の形態例]この第3の実施の形態例では、上述した第1,第2の実施の形態例の画質評価方法および画質評価装置で使用するに適しており、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価するに適した画質評価用チャート画像について説明する。
【0104】画質評価用チャート画像の例を図6、図7、図8に示す。図6は矩形のグラデーション画像(階調変化は一方向)の例である。ここで図6(a)は、滑らかに階調が変化するグラデーション画像をドットにより模式的に示した模式図、図6(b)は図6(a)のグラデーション画像の階調変化の内容を説明する説明図である。そして、そのグラデーション画像の周囲の背景部分は所定濃度のグレイもしくは黒に配色されており、視感との対応をとりやすくなっている。また、グラデーションの両端画像値である(R,G,B)=(255,255,255)と(R,G,B)=(0,0,0)が、外側に一定量だけのびている。
【0105】計測範囲の画像情報に対して視覚特性を考慮した空間フィルタリングを行うと、計測範囲の端部にフィルタリングによる影響が現れる。この影響がグラデーション部分でおこらないように、両端画像値を外側に一定量だけ伸ばすことによって、グラデーション端部の画質評価の信頼性をあげることができる。
【0106】図7は画質評価用チャート画像の第2の例を示す説明図である。ここで、図7(a)は画像出力装置の色域を明度軸に垂直な平面上に投影した色域形状であり、図7(b)はその色域形状から派生した画質評価用チャート画像の色の配置の一例を説明する説明図である。なお色空間は、均等色空間に限らず、XYZ軸、RGB軸など他の色空間でも構わない。
【0107】すなわち、図7(a)のような任意の明度における色域を、図7(b)のように配置することで画質評価用チャート画像を作成する。なお、図7(b)に示された色(赤、黄、緑、シアン、青、マゼンタ、グレイ(白・黒))の間では滑らかに色が変化しているものとする。
【0108】図8は画質評価用チャート画像の第3の例を示す説明図である。ここで、図8(a)は画像出力装置の色域の明度軸を含む平面で切った色域形状を示す説明図であり、図8(b)はその色域形状から派生した画質評価用チャート画像の一例を説明するための説明図である。
【0109】すなわち、図8(a)のような明度軸を含む色域を、図8(b)のように配置することで画質評価用チャート画像を作成する。なお、図8(b)に示された色(赤、シアン、白、黒)の間では滑らかに明度と彩度とが変化しているものとする。
【0110】図9は上述した画質評価用チャート画像の第2の例(図7)と、上述した画質評価用チャート画像の第3の例(図8)とで、階調性の評価を行う場合に抽出すべきと考えられる画像領域の一例を示す説明図である。
【0111】上述した画質評価装置の画像入力装置200がスキャナやデジタルカメラの場合、2次元画像情報として被評価画像を電子化できるため、これらの画質評価用チャート画像を1度撮像することにより複数の階調評価が可能となる。すなわち、撮像した被評価画像をフレームメモリなどに取り込み、図9の破線で囲んだ複数の領域を抽出して、階調性の評価を行えばよい。
【0112】また、画質評価用チャート画像を作成する際の投影平面や切断平面を変えることによって任意の色相、彩度、明度によるグラデーションを作ることができ、様々なグラデーションに対する階調性評価に対応することも可能である。
【0113】また、使用する画像出力装置によっては画像の記録方向(記録ヘッド移動方向:主走査方向)と紙送り方向(副走査方向)とで画質が違う場合がある。その場合、図10(a)(b)のように矩形画像とそれを90度回転させたものを1ペアとして画質評価用チャート画像とすれば、主走査方向と副走査方向との両方向の画質評価が可能となる。
【0114】また、画像再現では多くの場合、主要色の画像再現が重要となる。主要色とは、人肌や青空など、画像に比較的多く含まれていると考えられる対象の持つ色であり、階調性に対する要求も高く、主要色を対象とする画質評価の結果が機器の能力としてそのまま判断される場合がある。そういった主要色の階調性を評価する場合、画質評価用チャート画像を以下の手順で作成する。
【0115】まず、複数のデジタル画像から主要色部分の画像データを抽出し、RGB、XYZ、Labなどの3次元空間に抽出したデータを分布させる。この分布を“主要色のもつ色域”とし、主成分分析やKL分析なと線形回帰分析により“主要色の色域”の主成分を求める。ここで、図11(a)のL1,L2は、上述した主成分の一例である。L1とL2とで張られる平面内にこの色域がほとんど収まっている場合は、その平面へ画像データを射影したときの射影点の存在エリア(図11(a)内では楕円内)が“主要色のもつ色域”とほぼ同じになり、図11(b)に示す楕円の両軸との交点に対応する画像値を取得することによって矩形の画質評価用チャート画像(図11(c))を作ることができる。また、L1軸だけで充分な近似ができる場合は、長軸との交点(R1,G1,B1)と(R2,G2,B2)を端点とした一次元のグラデーション画像(図11(d))を作成できる。
【0116】また、デジタル画像の取得に用いた画像入力装置の特性の補正をすることで、画像入力装置の特性に左右されないグラデーション画像を作成できる。また、RGB,XYZ,Labといった3次元空間だけでなく、分光反射率などのスペクトル空間に対しても同様に適用することができる。
【0117】さらに、XYZやLabなどの形態のままでグラデーション画像のデータを保存すれば、色情報を標準的な値として扱えるため、出力装置や制御装置の方でXYZやLabとの色変換によりカラーマネジメントを実現できる場合は、装置に依存せず好ましい画像を得ることができる。
【0118】以上の画質評価用チャート画像により、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することができるようになる。また、様々な色や濃度の階調を評価する際に適した画質評価用チャート画像を実現できる。すなわち、この第3の実施の形態例の作用・効果を列記すると以下の■〜■のようになる。
【0119】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、グラデーション画像について、グラデーションが変化する方向の端部に、該端部と同じ特性を有する所定の大きさの画像を配置して被評価画像としている。この結果、被評価画像端部における画質評価の信頼性をあげることができるようになる。
【0120】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、グラデーション画像の周囲に、白地よりも高濃度の灰色もしくは黒の画像を配置して被評価画像としている。この結果、画像入力装置がスキャナの場合に、迷光や周辺からの光の回りこみの影響を抑えることができるようになる。
【0121】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、画像処理装置の持つ色域を任意の直線もしくは平面で投影もしくは切断し、その投影面もしくは切断面の色域分布に存在するグラデーションを平面図形もしくは立体図形内に配置して被評価画像としている。この結果、画像処理装置が持つ任意の色や濃度に合わせてグラデーション画像を作成することができるようになる。
【0122】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、上記■において、任意の平面が明度軸を含む平面、および明度軸に垂直な平面を含むようにしている。この結果、画像処理装置が持つ任意の色や濃度に合わせてグラデーション画像を作成することができるようになり、さらに、明度軸を含む平面によって2色相間のグラデーション画像を発生することができるようになる。また、明度軸に垂直な平面によってある明度における全色相間のグラデーション画像を発生することができるようになる。
【0123】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、任意の画質評価用チャート画像と、それを90度回転させた画像データをペアとして構成しているため、たとえば画像出力装置の印字方向と紙送り方向による画質の違いを1枚のプリントで評価することができるようになる。
【0124】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成するようにしているため、実際の画像データ分布に基づいた任意の被写体が持つ色のグラデーション画像を作成することができるようになる。
【0125】■この実施の形態例の画質評価用チャート画像では、任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成するようにしており、さらに、前記任意の被写体は空の色や肌色が含まれるようにしているため、実際の画像データ分布に基づいた任意の被写体が持つ色のグラデーション画像を作成することができるようになり、さらに、写真プリントなどを構成するいわゆる“主要色”と呼ばれる、空色や肌色のグラデーション画像を作成できるようになる。
【0126】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、人間の知覚特性や主観に対応させて画像の階調性を定量的に評価することができる画質評価方法および画質評価装置を実現できる。また、本発明によれば、様々な色や濃度の階調を評価する際に適した画質評価用チャート画像を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態例の画質評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態例の画質評価装置と画像評価方法とにおける処理の様子を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例の画質評価装置と画像評価方法とにおける処理の様子を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態例の画質評価装置と画像評価方法とにおける処理の様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態例の画質評価装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態例における画質評価用チャート画像の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
100 被評価画像
200 画像入力装置
300 画像表示装置
400 制御装置
500 パラメータ設定装置
600 画質評価値

【特許請求の範囲】
【請求項1】 人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価方法であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用する、ことを特徴とする画質評価方法。
【請求項2】 人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価方法であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用すると共に、前記グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行する、ことを特徴とする画質評価方法。
【請求項3】 人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価装置であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用する、ことを特徴とする画質評価装置。
【請求項4】 人間の知覚特性に対応させて画像の階調性を定量的に評価する画質評価装置であって、階調が連続的に変化するグラデーション画像を、被評価画像として使用すると共に、前記グラデーション画像の明度情報、濃度情報、強度情報、彩度情報、色度情報、色相情報のうち少なくとも1つの情報から特徴量を抽出して画質評価を実行する、ことを特徴とする画質評価装置。
【請求項5】 階調が連続的に変化するグラデーション画像について、グラデーションが変化する方向の端部に、該端部と同じ特性を有する所定の大きさの画像を配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像。
【請求項6】 階調が連続的に変化するグラデーション画像の周囲に、白地よりも高濃度の灰色もしくは黒の画像を配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像。
【請求項7】 画像処理装置の持つ色域を任意の直線もしくは平面で投影もしくは切断し、その投影面もしくは切断面の色域分布に存在するグラデーションを平面図形もしくは立体図形内に配置して被評価画像とする、ことを特徴とする画質評価用チャート画像。
【請求項8】 任意の画質評価用チャート画像と、それを90度回転させた画質評価用データをペアとして構成する、ことを特徴とする画質評価用チャート画像。
【請求項9】 任意の被写体における複数の画像データを画像空間上で分布させ、そのデータ分布からその被写体が持つ色のグラデーション画像を作成する、ことを特徴とする画質評価用チャート画像。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2003−16443(P2003−16443A)
【公開日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−200825(P2001−200825)
【出願日】平成13年7月2日(2001.7.2)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】