説明

界面検出装置及び方法、体積計測装置

【課題】 小型で安価な装置構成により、容器表面のラベル等による影響を受けることなく容器内の所定の液体の界面を精度よく検出できるようにする。
【解決手段】 レーザ照射装置3から採血管101内の検体液102に向けて上方からレーザ光線3aを照射すると、光散乱性の低い血清103では入射したレーザ光線3aがほとんど散乱せず、撮像装置4による血清103部分での受光強度は小さなものとなる。それに対して、血清103の下に位置する光散乱性の高い分離剤104では入射したレーザ光線3aが散乱するので、分離剤104部分での受光強度が大きくなる。更に、分離剤104で散乱した散乱レーザ光線の一部3bが血清103の上界面103Uに向かい、メニスカス103Aで反射して撮像装置4により受光されるので、血清103の上界面103U位置で特異的に受光強度が大きくなり、ピークが現れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば採血管内で分離した状態にある血清、分離剤、血餅のうち血清の界面を検出し、更には血清量を求めるのに用いて好適な界面検出装置及び方法、体積計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者から採取した血液を分離剤と共に採血管に入れ、遠心分離機により遠心分離を行って血清、分離剤、血餅に分離させた上で、血清だけを取り出して各種検査に利用することが行われている。
【0003】
近年では、患者の負担を軽減させるために採血量をできるだけ少なくすることが求められる一方で、血清を利用する検査は多岐にわたるため、限られた血清を過不足なく検査材料として利用すべく、血清量を正確に把握することが要求される。
【0004】
例えば特許文献1には、試験管の側方に、蛍光灯や電球からなる照明手段と、CCDカメラからなる撮像手段とを配置した血清量測定装置が開示されている。この血清量測定装置では、試験管内で血清、分離剤、血餅に分離した状態にある検体液に向けて照明手段により光を照射し、撮像手段により検体液を撮像して画像データを取得して、その画像を解析することにより血清画像の領域を特定する。
【0005】
【特許文献1】特開2001−165752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、採血管の表面には各種情報が表示されたラベルが貼着されることが多い。この場合に、特許文献1に開示されているように側方から光を照射して撮像画像を取り込む手法では、照射光がラベルにより遮断されたり、ラベルに反射したりして、血清の鮮明な画像が得られず、血清画像の領域を精度よく特定できないことがある。
【0007】
また、検体液全体に光を均一に照射しなければならないため、例えば検体液の量が多い(試験管が長い)場合には、照明手段を大型化しなければならないことがある。
【0008】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであり、小型で安価な装置構成により、容器表面のラベル等による影響を受けることなく容器内の所定の液体の界面を精度よく検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の界面検出装置は、上下に分離した状態で容器に収容された少なくとも2種類の液体のうち所定の液体の界面を検出する界面検出装置であって、前記容器内の液体に向けて上方から光を照射する照射手段と、前記容器の側方に配置される受光手段と、前記受光手段により得られる信号に基づいて、前記所定の液体の界面を検出する界面検出手段とを備える点に特徴を有する。
また、本発明の界面検出装置の他の特徴とするところは、前記照射手段は、前記容器の内径部より細い光束を前記容器内の液体に略鉛直方向に入射させる点にある。
また、本発明の界面検出装置の他の特徴とするところは、前記照射手段は、レーザである点、或いは、前記照射手段は、光源と、前記光源から照射される光を絞る集光手段とにより構成される点にある。
本発明の体積計測装置は、本発明の界面検出装置と、前記界面検出装置により検出される前記所定の液体の上下界面間の間隔と、前記容器の内径寸法とに基づいて、前記所定の液体の体積を算出する体積算出手段とを備える点に特徴を有する。
本発明の界面検出方法は、上下に分離した状態で容器に収容された少なくとも2種類の液体のうち所定の液体の界面を検出する界面検出方法であって、前記容器内の液体に向けて上方から光を照射する手順と、前記容器の側方に配置される受光手段により得られる信号に基づいて、前記所定の液体の界面を検出する界面検出手順とを有する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器内の液体に向けて上方から光を照射し、液体での散乱による散乱光を受光して、その結果に基づいて所定の液体の界面を検出するようにしたので、小型で安価な装置構成により、容器表面のラベル等による影響を受けることなく所定の液体の界面を精度よく検出して、血清量を正確に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明を適用した体積計測装置1の外観図を示す。体積計測装置1は、採血管101内の検体液102のうち血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置を検出することにより上下界面103U、103L間の間隔(高さ)を求め、既知の採血管101の内径寸法等を用いて血清103の体積(血清量)を算出するためのものである。
【0012】
図1に示すように、採血管101を取り扱うハンドリング機構2と、採血管101の上部がハンドリング機構2のマニピュレータ21によりつかまれた状態で採血管101内の検体液102に向けて上方からレーザ光線3aを照射するレーザ照射装置3と、採血管101の側方に配置される撮像装置4と、採血管ラック5を搬送するベルトコンベア6と、採血管ラック5の移動を規制するとともにピッチ送りするラックストッパ機構7とが配設される。
【0013】
また、採血管101の表面に貼着されたラベル106のバーコードを読み取るバーコードリーダ8や、採血管101の表面に貼着されたラベル106の位置を検出する光沢度センサ9等が必要に応じて配設される。
【0014】
採血管101は、図2に示すように、試験管等のように下端が閉塞された円筒状をなし、レーザ光線が透過可能な材質、例えば無色透明な樹脂材料やガラス材料からなる。
【0015】
採血管101に収容される検体液102は、被験者から採取した血液及び分離剤からなるもので、遠心分離を行った結果、比重の大きい順に採血管101の底部からゲル状の血餅105、分離剤104、血清103に分離した状態となっている。
【0016】
多くの場合、採血管101の表面には、紙や樹脂等からなるラベル106が貼着される。ラベル106には、印刷や手書きによって、被験者に関する情報等が文字、記号、バーコード等により表示される。
【0017】
採血管101を保持する採血管ラック5は、複数本の採血管101を立てた状態で一列に並べて保持する。
【0018】
ハンドリング機構2は、複数本の爪21aにより採血管101の上部をつかむマニピュレータ21と、ステッピングモータ等によりマニピュレータ21を回転させるマニピュレータ回転機構22と、図示しないがマニピュレータ21を上下方向に昇降させるマニピュレータ昇降機構とにより構成され、採血管ラック5から採血管101を順次持ち上げて、血清103の体積計測処理を行うことができる。
【0019】
レーザ照射装置3は、採血管101の上部がハンドリング機構2のマニピュレータ21によりつかまれた状態で採血管101の上方に位置し、図2に示すように、検体液102に向けて上方からレーザ光線3aを照射する。
【0020】
撮像装置4は、上下方向に直線的或いは平面的に並べられた多数の受光素子(例えばCCD)を有し、詳細は後述するが、採血管101内の検体液102に向けて上方からレーザ光線3aを照射した場合に、検体液102での散乱による散乱レーザ光線のうち側方へと進行方向を変えたものを受光する。この場合に、外光の影響を少なくして、散乱レーザ光線だけを受光するように、使用するレーザ光線3aの波長域の光だけを透過するフィルタ4aを撮像装置4に設置する等してもよい。
【0021】
ここで、撮像装置4には、図2に示すように、受光素子により光電変換された電気信号を用いて画像処理を施す画像処理部41と、画像処理部41により得られた受光強度のプロファイルに基づいて血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置を検出する界面検出部42と、界面検出部42により検出される血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置から上下界面103U、103L間の間隔(高さ)を求め、記憶部44に記憶されている採血管101の内径寸法等を用いて血清103の体積(血清量)を算出する体積算出部43とが接続される。
【0022】
バーコードリーダ8は、ハンドリング機構2により持ち上げられた採血管101のラベル106のバーコードを読み取る。
【0023】
光沢度センサ9は、具体的な図示は省略するが、ハンドリング機構2により持ち上げられた採血管101の表面にスポット光を照射する光源と、反射光を受光するラインセンサ等の受光部とにより構成され、光沢度を測定して、採血管101自体とラベル106との光沢度の相違からラベル106の位置を検出する。
【0024】
採血管ラック5は、ベルトコンベア6により採血管101の配列方向に搬送される。ベルトコンベア6は、その搬送経路がマニピュレータ21の下方を通過するように設置されており、採血管ラック5を上流側にある例えば元検体供給ユニット(不図示)から体積計測装置へと搬送し、体積計測装置での処理が終了した後、下流側にある例えば分注装置(不図示)へと搬送する。
【0025】
ラックストッパ機構7は、ストッパ7aを有する。ストッパ7aは、ベルトコンベア6上に突出して採血管ラック5の搬送方向前端に係止し、採血管ラック5の移動を規制する位置(図1に示す状態)と、ベルトコンベア6上から退避して、採血管ラック5の移動を許容する位置とに進退可能になっている。また、ラックストッパ機構7は、ストッパ7aを採血管ラック5の搬送方向へピッチ送りすることができる。
【0026】
次に、血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置を検出し、血清103の体積(血清量)を算出する処理動作について説明する。ベルトコンベア6により採血管ラック5が上流側から搬送されてくると、ラックストッパ機構7のストッパ7aが突出し、採血管ラック5を制止させ、同時にベルトコンベア6を停止させる。この状態では、採血管ラック5に保持された複数本の採血管101のうちの1本目がマニピュレータ21の直下に位置し、ハンドリング機構2がこの1本目の採血管101をつかんで持ち上げる。
【0027】
まず、採血管101の側面でのラベル106の位置を検出する。具体的には、マニピュレータ21で採血管101の上端部をつかんで持ち上げた状態で、マニピュレータ回転機構22を作動させて採血管101を所定方向に回転させる。採血管101を回転させている間、光沢度センサ9は、採血管101の表面の光沢度を測定する。ラベル106は採血管101自体より光沢度が小さく、ラベル106の縁位置で光沢度が急激に変化するので、ラベル106の位置を特定することができる。このようにしてラベル106の位置が特定されたならば、採血管101の側面のうちラベル106が貼着されていない領域を撮像装置4に向けて(対面させて)、次の界面検出処理を行う。
【0028】
界面検出処理では、図2に示すように、レーザ照射装置3から採血管101内の検体液102に向けて上方からレーザ光線3aを照射する。レーザ光線3aは鉛直方向下方に進行し、血清103の上界面103Uに入射する。この場合に、レーザ光線3aを血清103の上界面103Uの中心位置で入射させるのが望ましい。
【0029】
ここで、血清103は光散乱性(光の散乱の度合)が低く、血清103に入射したレーザ光線3aはほとんど散乱することなくまっすぐに(鉛直方向下方に)進行する。したがって、撮像装置4の受光素子ではレーザ光線3aをほとんど受光することはなく、図3の領域aに示すように、血清103部分での受光強度は小さなものとなる。
【0030】
それに対して、血清103の下に位置する分離剤104は白濁しており、光散乱性(光の散乱の度合)が高く、血清103内を通って分離剤104に入射したレーザ光3aは散乱する。したがって、分離剤104で散乱した散乱レーザ光線の一部が側方に向かって進行し、撮像装置4の受光素子で受光されて、図3の領域bに示すように、分離剤104部分での受光強度は大きなものとなる。
【0031】
更に、図4に示すように、分離剤104で散乱した散乱レーザ光線の一部3bは、血清103の上界面103Uに向かって進行する。血清103の上界面103Uでは、血清103と採血管101の内壁面との濡れ性によりメニスカス103Aが形成される。そして、血清103の上界面103Uに向かって進行する散乱レーザ光線3bの一部は、メニスカス103Aで反射して進行方向が変わり、側方に向かって進行する(散乱レーザ光線3c)。この散乱レーザ光線3cが撮像装置4の受光素子で受光されて、図2に示すように、血清103の上界面103U位置で特異的に受光強度が大きくなり、ピークcが現れる。
【0032】
撮像装置4の受光素子により光電変換された電気信号は、画像処理部41に出力される。画像処理部41は、受光素子から入力された電気信号に基づいて、採血管101の上下方向(長手方向)に沿った受光強度のプロファイル(図3を参照)を抽出する。
【0033】
界面検出部42では、画像処理部41により得られた受光強度のプロファイルに基づいて血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置を検出する。
【0034】
すなわち、上述したように血清103と空気層107との界面(血清の上界面103U)位置において受光強度にピークcが現れるので、採血管101の上側で最初のピークが現れる位置を血清103の上界面103Uとして検出する。
【0035】
また、上述したように血清103と分離剤104との界面(血清の下界面103L)位置において受光強度が変化するが、実際にはある程度の緩やかさを持って変化する。そこで、血清103の下界面103Lに対応する閾値を予め規定しておき、界面検出部42が有するコンパレータ機能によって、ピークcの下側において受光強度のプロファイルが閾値に一致する位置を求め、その位置を血清103の下界面103L位置として検出する。
【0036】
次に、体積算出部43により、界面検出部42により検出される血清103の上界面103U位置及び下界面103L位置から上下界面103U、103L間の間隔(高さ)を求め、その求めた上下界面103U、103L間の間隔と、記憶部44に記憶されている採血管101の内径寸法等とを用いて、血清103の体積(血清量)を算出する。
【0037】
以上述べたように、採血管101内の検体液102に向けて上方からレーザ光線を照射するので、照射光そのものがラベル106により遮断されたり、反射したりすることはない。また、検体液102全体に光を均一に照射する必要はなく、採血管101の内径部より細いレーザ光線を照射すればよいので、レーザ照射装置3も小型のものでよい。したがって、小型で安価な装置構成により、採血管101の表面のラベル106等による影響を受けることなく血清103の界面103U、103L位置を精度よく検出することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、本発明でいう照射手段としてレーザ照射装置3を用いたが、図5に示すように、可視光や赤外光等を照射する光源31と、光源31から照射される光を絞るレンズ32とにより構成してもよい。可視光を照射するものとして、例えば汎用のLED等を用いれば、安価で小型な光源31を構成することができる。なお、図示例では2つのレンズ32を用いているが、その個数や形状は限定されるものではない。
【0039】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば前記実施形態の体積計測装置1の具体的構成はほんの一例であって、その形態に限定されるものではない。前記実施形態では、ハンドリング機構2に照射手段としてレーザ照射装置3を組み込んでおき、採血管101を持ち上げた状態で界面検出処理を行うようにしたが、図8に示すように、採血管ラック500の撮像装置400側に開口501を形成しておき、採血管ラック500に採血管101を立てた状態で、採血管101内の検体液102に上方から光(図中矢印)を照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態の体積計測装置の外観図である。
【図2】第1の実施形態の体積計測装置の概略構成を示す図である。
【図3】検体液と受光強度のプロファイルとの関係を示す図である。
【図4】血清の上界面のメニスカスでの様子を示す概略図である。
【図5】第2の実施形態の照明手段を示す図である。
【図6】採血管の内径部と光束の細さ(径)との関係を示す図である。
【図7】体積計測装置の一構成例を示す外観図である。
【符号の説明】
【0041】
1 体積計測装置
2 ハンドリング機構
3 レーザ照射装置
3a レーザ光線
4 撮像装置
5 採血管ラック
6 ベルトコンベア
7 ラックストッパ機構
8 バーコードリーダ
9 光沢度センサ
31 光源
32 レンズ
41 画像処理部
42 界面検出部
43 体積算出部
44 記憶部
101 採血管
101r 内径部
102 検体液
103 血清
103U 上界面
103L 下界面
104 分離剤
105 血餅
106 ラベル
107 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分離した状態で容器に収容された少なくとも2種類の液体のうち所定の液体の界面を検出する界面検出装置であって、
前記容器内の液体に向けて上方から光を照射する照射手段と、
前記容器の側方に配置される受光手段と、
前記受光手段により得られる信号に基づいて、前記所定の液体の界面を検出する界面検出手段とを備えることを特徴とする界面検出装置。
【請求項2】
前記照射手段は、前記容器の内径部より細い光束を前記容器内の液体に略鉛直方向に入射させることを特徴とする請求項1に記載の界面検出装置。
【請求項3】
前記照射手段は、レーザであることを特徴とする請求項1又は2に記載の界面検出装置。
【請求項4】
前記照射手段は、光源と、前記光源から照射される光を絞る集光手段とにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の界面検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の界面検出装置と、
前記界面検出装置により検出される前記所定の液体の上下界面間の間隔と、前記容器の内径寸法とに基づいて、前記所定の液体の体積を算出する体積算出手段とを備えることを特徴とする体積計測装置。
【請求項6】
上下に分離した状態で容器に収容された少なくとも2種類の液体のうち所定の液体の界面を検出する界面検出方法であって、
前記容器内の液体に向けて上方から光を照射する手順と、
前記容器の側方に配置される受光手段により得られる信号に基づいて、前記所定の液体の界面を検出する界面検出手順とを有することを特徴とする界面検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−29853(P2006−29853A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205775(P2004−205775)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】