説明

畜肉及び魚肉用の肉質改善剤及び肉質改善方法

【課題】優れた歩留まりと、良好な食感を食肉に与えることができる肉質改善剤を提供する。
【解決手段】畜肉及び魚肉用の肉質改善の有効成分として、果糖又は果糖を含有する糖組成物を100〜200℃で加熱処理してなる糖加熱品、及び天然多糖類を用いる。更に、有効成分としてコラーゲンを用いることが好ましい。糖加熱品は、その5質量%水溶液(固形分換算)の480nmにおける吸光度が0.1〜1.0であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉及び魚肉用の肉質改善剤及び肉質改善方法に関し、より詳細には、優れた歩留まりと、良好な食感を食肉に与えることができる畜肉及び魚肉用の肉質改善剤及び肉質改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に食肉に焼く、炒める、揚げる等の加熱処理を施すと、蛋白質が加熱変性を受け、肉汁の流出、歩留の低下、さらにパサパサとした食感や硬さを感じるなどの問題が生じる。従来から食肉を柔らかくしたりあるいは食肉の保存性を高めたりする方法には種々の方法が知られていた。例えば、ハムやソーセージ等の食肉加工品では重合リン酸塩、ピロリン酸塩等のリン酸塩の添加が行われてきた。しかし、これらの成分は風味や食感を低下させ、また、リン酸塩過剰摂取を懸念する消費者のニーズに応えられるものではなかった。
【0003】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、トランスグルタミナーゼと酸化還元酵素とを含有又は組み合わせて含む酵素製剤が記載されており、その酵素製剤を用いて、小麦加工食品、水練り製品、鳥獣畜肉加工食品等の各種加工食品において、喉ごしや、歯ごたえ等の物性、食感に優れたものを提供でき、かつ好ましい色調・風味を付与できることが記載されている。また、特許文献2には、トランスグルタミナーゼ及び食酢を含む食肉改質剤が記載されており、その食肉改質剤を用いて、リン酸塩を使用せずとも、食感が良好で製品歩留まりの高い食肉加工品を製造できることが記載されている。また、特許文献3には、卵白蛋白質の酵素加水分解物を含有する食肉用浸漬剤が記載されており、その食肉用浸漬剤を用いて、食肉加工品の冷凍保存または加熱調理における歩留まりの低下および食感・味・風味の劣化を防止できることが記載されている。また、特許文献4には、オリゴ糖と澱粉質原料とを含む肉類加工品用改良剤が記載されており、その肉類加工品用改良剤を用いて、加熱調理後の歩留と食感に優れた肉類加工品を提供でき、更には冷凍やチルド状態での保存を経た後の再加熱によっても良好な風味と食感を損なうことを防止できることが記載されている。
【0004】
更に、特許文献5には、蛋白質の酵素加水分解物を含有する食肉改質剤が記載されており、その食肉改質剤を、冷凍保存された食肉や加圧加熱殺菌食品用の食肉に用いた場合、また挽き肉加工食品の調製時に添加した場合、食肉の保水力の向上、焼成時の食肉の焼き縮みの抑制、食肉の食感の向上といった効果が奏せられることが記載されている。
【0005】
一方、特許文献6には、100〜200℃の温度下で果糖又は果糖を含む糖を加熱することにより得られ、5重量%水溶液(固形分換算)の480nmにおける吸光度が0.1〜1.0である糖加熱品を、食品に添加することにより、食品の品質を改良することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜5に記載された方法では、肉質改善剤としての効果が十分とはいえない場合があった。また、特許文献6には、肉質改善剤としての用途は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−60431号公報
【特許文献2】特開2007−189926号公報
【特許文献3】特開2004−329165号公報
【特許文献4】特開2006−67998号公報
【特許文献5】特再表WO98/041101号公報
【特許文献6】特開2008−187952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた歩留まりと、良好な食感を食肉に与えることができる肉質改善剤及び肉質改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、果糖又は果糖を含有する糖組成物を100〜200℃で加熱処理してなる糖加熱品が、畜肉及び魚肉用の肉質改善剤の有効成分として優れた特性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤は、果糖又は果糖を含有する糖組成物を100〜200℃で加熱処理してなる糖加熱品、及び天然多糖類を有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤によれば、糖加熱品と天然多糖類とが畜肉又は魚肉に作用して、畜肉又は魚肉の食感・食味に悪影響を与えることなく浸漬歩留及び焼成歩留を改善することができる。また加熱調理後もジューシー感があり柔らかい肉質となる。
【0012】
本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤においては、前記糖加熱品は、その5質量%(固形分換算)水溶液の480nmにおける吸光度が0.1〜1.0であることが好ましい。これによれば、より優れた肉質改善効果が得られる。
【0013】
本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤においては、更に有効成分としてコラーゲンを含有することが好ましい。これによれば、糖加熱品及び天然多糖類の作用に、コラーゲンの作用が加わり、更に優れた歩留改善及び肉質改善の効果が発揮される。
【0014】
本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤は、調味液中に糖加熱品1〜8.5質量%及び天然多糖類0.1〜1.2質量%を含有させてなるものであることが好ましい。これによれば、調味液として浸漬、表面コーティング、もみ込み、注入などの手段により糖加熱品及び天然多糖類を畜肉又は魚肉に作用させることができる。
【0015】
本発明の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤は、調味液中に糖加熱品1〜8.5質量%及び天然多糖類0.1〜1.2質量%を含有させるとともに更にコラーゲン0.1〜1.2質量%を含有させてなるものであることが好ましい。これによれば、調味液として浸漬、表面コーティング、もみ込み、注入などの手段により糖加熱品及び天然多糖類及びコラーゲンを畜肉又は魚肉に作用させることができる。
【0016】
一方、本発明の肉質改善方法は、畜肉又は魚肉を原料とする肉素材に前記畜肉及び魚肉用の肉質改善剤を添加することを特徴とする。
【0017】
本発明の肉質改善方法においては、前記肉素材に、前記肉質改善剤を含有する調味液を、浸漬、表面コーティング、もみ込み、又は注入のいずれかの手段により添加することが好ましい。
【0018】
また、本発明の肉質改善方法においては、前記肉素材が豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉、カツオ、マグロ、アジ、シャケ、タイ、スケソウタラ、エビ、イカ、タコ、又は貝から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた歩留まりと、良好な食感を食肉に与えることができる肉質改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の有効成分の1つである糖加熱品は、果糖又は果糖を含有する糖組成物を100〜200℃で加熱処理して得られる。好ましくは、その5質量%(固形分換算)水溶液の480nmにおける吸光度が0.1〜1.0になるように加熱処理したものである。このような糖加熱品の製造方法については、前記特許文献6(特開2008−187952号公報)に記載されている。
【0021】
本発明の有効成分の1つである天然多糖類としては、常温の蒸留水に0.2質量%程度の濃度で分散できる天然多糖類であればよく、例えばカラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、寒天、グルコマンナン、ペクチン、キサンタンガム、グアガム、粉末水飴、シクロデキストリン、プルランなどを好ましく例示できる。分散性の点からはカラギーナン、グルコマンナン、粉末水飴、アルギン酸、キサンタンガムが好ましく、味質、ハンドリングの点からはグルコマンナンが特に好ましい。
【0022】
本発明において用いられるコラーゲンは、その起源、抽出方法、分子量等において特に制限されるものではない。例えば、豚、牛、鶏等の骨や、皮、または魚の骨、皮、ウロコに含まれるコラーゲンを熱水抽出、加圧抽出等の抽出方法によって得られたコラーゲンを使用することができ、数平均分子量としては10万以上の高分子のものから1,000以下のペプチド状に分解されたものまで用いることができる。特には数平均分子量が1,000〜10,000のコラーゲンペプチドが好ましい。
【0023】
本発明の肉質改善剤を適用し得る肉素材に特に限定はなく、加熱調理されて食用される畜肉、魚肉等のいずれでもよい。畜肉としては、例えば豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉などを例示することができ、魚肉としては、例えばカツオ、マグロ、アジ、シャケ、タイ、スケソウタラ、エビ、イカ、タコ、貝などを例示することができる。これら食肉の部位、グレード、形状等に限定なく適用できる。例えば、加熱調理される前の生肉に対して適用してもよく、肉を冷凍する場合その前の生肉に対して適用してもよく、肉を冷凍する場合それを解凍した後に適用してもよく、ミンチやすり身にされた肉に適用してもよい。したがって、例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、メンチカツなどの一般的な食肉加工品、及びカマボコ、はんぺん、ちくわなどの一般的な水産加工品などの、いずれにも好ましく適用できる。
【0024】
本発明の肉質改善剤は、肉素材に一定時間作用させることで効果を発揮でき、その使用形態に特に制限はないが、例えば、肉の調味液中に、有効成分の1つである糖加熱品の濃度が1〜8.5質量%程度、より好ましくは1.5〜5質量%程度となるように添加して用いることができる。また、有効成分のもう1つである天然多糖類の濃度が0.1〜1.2質量%程度、より好ましくは0.2〜0.8質量%程度となるように添加して用いることができる。更に、有効成分としてコラーゲンを用いる場合には、例えば、上記浸漬液やピックル液中のコラーゲンの濃度が0.1〜1.2質量%程度、より好ましくは0.2〜0.8質量%程度となるように添加して用いることができる。その調味液には、上記の肉質改善の有効成分以外に、塩類、香辛料、着色類、甘味料、酸味料など一般的に食品に用いることができる食品素材類の1種または2種以上が添加されていてもよい。
【0025】
このように調製した調味液は、浸漬、コーティング、もみ込み、注入、練り込み、混合、絡める、通す、かける等の方法で、肉素材に一定時間作用させることができ、これらの適用法は肉素材の種類、加工目的などに応じて適宜選択することができる。肉素材のボリュームに対する本発明の肉質改善剤の使用量は、適用法や、適用される肉素材の種類、加工目的などに応じて適宜選択して行うことが好ましい。肉質改善剤を含む調味液による処理時間は、特に限定されないが、1〜12時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。肉質改善剤を含む調味液による処理温度は、0〜40℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
なお、以下の例においては、糖加熱品として下記方法で調製したものを用いた。
・糖加熱品A
果糖を120〜130℃の温度で4時間加熱後、加水冷却して固形分75%に調整したものである。この糖加熱品の5質量%(固形分換算)水溶液の480nmにおける吸光度は0.3であった。
・糖加熱品B
果糖ぶどう糖液糖を120〜130℃の温度で4時間加熱後、加水冷却して固形分75%に調整したものである。この糖加熱品の5質量%(固形分換算)水溶液の480nmにおける吸光度は0.3であった。
【0028】
また、コラーゲンとして魚由来のコラーゲンペプチド(平均分子量3,000)を用いた。また、カラギーナン、グルコマンナン、及びキサンタンガムは市販品を用いた。
<試験例1> (豚ソテー その1)
下記表1に挙げたマルトース、フルクトース、グルコース、トレハロース、又は糖加熱品A、糖加熱品Bを同濃度(2.5質量%)で含む調味液を調製した。また、これらを添加しない調味液を対照とした。これらの調味液を市販の豚ロース肉に肉質量の20%に当たる量で添加し、肉全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて2時間浸漬した(浸漬1時間後には肉全体にいきわたるようにもう1度混ぜた。)。浸漬後、下記式による浸漬歩留を測定した。
・浸漬歩留=(浸漬後の質量÷浸漬前の質量)×100
その後、スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてホットエアーモード200℃、クライマプラス20%の条件で8分間焼成した。焼成後、下記式による焼成歩留を測定した。
・焼成歩留=(焼成後の質量÷焼成前の質量)×100
また得られた豚ソテーのソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
その結果、マルトース、フルクトース、グルコース、トレハロース、糖加熱品などの糖類を調味液に添加して調理すると、浸漬歩留や焼成歩留を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品を用いることで、マルトース、フルクトース、グルコース、トレハロースなどの他の糖類を用いた場合に比べて、焼成後のソフト感の評価において最も良い結果が得られた。
<試験例2> (豚ソテー その2)
下記表2に挙げたグルコース、トレハロース、又は糖加熱品A、糖加熱品Bを同濃度(2.5質量%)で含み、更にカラギーナンを0.2質量%含む調味液を調製した。また、更にコラーゲンを0.2質量%含む調味液も調製した。これらを添加しない調味液を対照とし、試験例1と同様の試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
その結果、調味液に更にカラギーナンを添加すると、試験したグルコース、トレハロース、又は糖加熱品において、それらを単独で用いるよりも焼成歩留や焼成後のソフト感を更に改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとを併用したときに最も良好な改善効果が得られた。更に、それらに加えてコラーゲンを併用したときには、カラギーナンのみとの併用の場合よりも、更に焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用すると、浸漬歩留においても更なる改善がみられ、焼成後の焼成歩留やソフト感の評価において最も良い結果が得られた。
<試験例3> (豚ソテー その3)
下記表3に挙げた糖加熱品Aを2.5質量%で含み、更にカラギーナン、グルコマンナン、又はキサンタンガムを0.2質量%含む調味液を調製した。これらを添加しない調味液を対照とし、試験例1と同様の試験を行った。結果を下記表3に示す。

【0033】
【表3】

【0034】
その結果、カラギーナンの替わりに、グルコマンナンやキサンタンガムを用いた場合にも、糖加熱品の単独による焼成歩留や焼成後のソフト感の改善効果が、更に高められることが明らかとなった。
<試験例4> (アジの開き)
下記表4に挙げた原料を含む調味液を調製した。なお、各原料の濃度は上記試験例1〜3での濃度と同じである。これらの調味液を市販のアジの開きにアジ質量の20%に当たる量で添加し、アジ全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて2時間浸漬した(15分ごとにアジ全体にいきわたるように混ぜた。)。浸漬後、浸漬歩留を測定し、スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてホットエアーモード270℃、クライマプラス40%の条件で8分間焼成し、焼成歩留を測定した。焼成後、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
その結果、アジの開きでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例5> (鶏もも肉の照り焼き)
試験例4と同様に、下記表5に挙げた原料を含む調味液を調製した。これらの調味液を市販の鶏もも肉に肉質量の20%に当たる量で添加し、肉全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて2時間浸漬した(浸漬1時間後には肉全体にいきわたるようにもう1度混ぜた。)。浸漬後、浸漬歩留を測定し、スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてホットエアーモード180℃、クライマプラス20%の条件で13分間焼成した。焼成後、焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表5に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
その結果、鶏もも肉の照り焼きでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例6> (鶏もも肉の唐揚げ)
試験例4と同様に、下記表6に挙げた原料を含む調味液を調製した。これらの調味液を市販の鶏もも肉に肉質量の20%に当たる量で添加し、肉全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて2時間浸漬した(浸漬1時間後には肉全体にいきわたるようにもう1度混ぜた。)。浸漬後、浸漬歩留を測定した。さらに調味液に30分浸漬させ、150℃、6分間揚げた。焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表6に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
その結果、鶏もも肉のから揚げでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例7> (豚の生姜焼き)
試験例4と同様に、下記表7に挙げた原料を含む調味液を調製した。これらの調味液を市販の豚スライス肉に肉質量の20%に当たる量で添加し、肉全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて1時間浸漬した(浸漬30分後には肉全体にいきわたるようにもう1度混ぜた。)。浸漬後、浸漬歩留を測定した。さらに調味液に30分浸漬させ、スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてホットエアーモード200℃、クライマプラス20%の条件で4分間焼成した。焼成後、焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表7に示す。
【0041】
【表7】

【0042】
その結果、豚の生姜焼きでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例8> (ハンバーグ)
試験例4と同様に、下記表8に挙げた原料を含む調味液を調製した。これらの調味液を市販の牛・豚合い挽肉に肉重量の10%に当たる量で添加し、肉全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ成型した。スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてホットエアーモード200℃、クライマプラス40%の条件で10分間焼成した。焼成後、焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を表8に示す。
【0043】
【表8】

【0044】
その結果、ハンバーグでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例9> (蒸しエビ)
試験例4と同様に、下記表9に挙げた原料を含む調味液を調製した。これらの調味液を市販のバナメイエビに肉重量の20%に当たる量で添加し、全体にいきわたるようによく混ぜ合わせ、冷蔵庫にて2時間浸漬した(浸漬1時間後には全体にいきわたるようにもう1度混ぜた。)。浸漬後、浸漬歩留を測定した。スチームコンベクションオーブン(FUJIMAK製 FSCCシリーズ)にてスチーミングモード100℃、クライマプラス100%の条件で5分間焼成した。焼成後、焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を表9に示す。

【0045】
【表9】

【0046】
その結果、蒸しエビでも、調味液に糖加熱品を添加すると焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。特に糖加熱品とカラギーナンとコラーゲンとを併用した場合に、最も良好な改善効果がみられた。
<試験例10> (鶏もも肉の唐揚げ)
下記表10に挙げた原料を含む調味液を調製した。なお、各原料の濃度は上記試験例1〜3での濃度と同じである。これらの調味液を使用して試験例6と同様にして、鶏もも肉の唐揚げを作った。浸漬歩留及び焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表10に示す。
【0047】
【表10】

【0048】
その結果、鶏もも肉のから揚げにおいて、試験例6におけるカラギーナンの替わりにグルコマンナンを用いた場合も、同様に、焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。
<試験例11> (豚の生姜焼き)
下記表11に挙げた原料を含む調味液を調製した。なお、各原料の濃度は上記試験例1〜3での濃度と同じである。これらの調味液を使用して試験例7と同様にして、豚の生姜焼きを作った。浸漬歩留及び焼成歩留を測定し、ソフト感について官能検査を行った。官能検査はパネラー8名にて、製品のソフト感について良い方を+として−5から+5の11段階で評価し、平均点で示した。結果を下記表11に示す。
【0049】
【表11】

【0050】
その結果、豚の生姜焼きにおいても、試験例7におけるカラギーナンの替わりにグルコマンナンを用いた場合も、同様に、焼成歩留や焼成後のソフト感を改善できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果糖又は果糖を含有する糖組成物を100〜200℃で加熱処理してなる糖加熱品、及び天然多糖類を有効成分として含有することを特徴とする畜肉及び魚肉用の肉質改善剤。
【請求項2】
前記糖加熱品は、その5質量%水溶液(固形分換算)の480nmにおける吸光度が0.1〜1.0である請求項1記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤。
【請求項3】
更に有効成分としてコラーゲンを含有する請求項1又は2記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤。
【請求項4】
調味液中に前記糖加熱品1〜8.5質量%及び前記天然多糖類0.1〜1.2質量%を含有させてなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤。
【請求項5】
調味液中に更にコラーゲン0.1〜1.2質量%を含有させてなる請求項4記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤。
【請求項6】
畜肉又は魚肉を原料とする肉素材に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤を添加することを特徴とする肉質改善方法。
【請求項7】
前記肉素材に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の畜肉及び魚肉用の肉質改善剤を含有する調味液を、浸漬、表面コーティング、もみ込み、又は注入のいずれかの手段により添加する請求項6記載の肉質改善方法。
【請求項8】
前記肉素材が、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉、カツオ、マグロ、アジ、シャケ、タイ、スケソウタラ、エビ、イカ、タコ、又は貝から選ばれた1種又は2種以上である請求項6又は7記載の肉質改善方法。

【公開番号】特開2011−45296(P2011−45296A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196891(P2009−196891)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】