説明

異常繊維径の検出方法及び検出装置

【課題】 スクリーン紗用モノフィラメントを製造するにあたり、繊維径不良糸の混入を防ぎ、高品位な織物を製造する。
【解決手段】 ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度で形成されたスリット状ガイド11(11a,11b)に形成された間隙Gに走行するモノフィラメント2を導入し、導入したモノフィラメント2が前記間隙Gを通過するときに受ける通過抵抗を通過抵抗検出器15によって検出することで力、動歪又は振動(周波数及び/又は振幅)によって通過抵抗を定量数値化し、通過抵抗検出器9によって定量化した数値が予め設定したしきい値を超えた場合に異常繊維径を有するモノフィラメントが通過したと判断する異常繊維径の検出方法と検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するモノフィラメントの異常繊維径部を検出する異常繊維径の検出方法とその検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用スクリーン紗としては、従来、絹などの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるスクリーン紗が広く使用されてきた。最近は、品質が安定し入手が容易なナイロンやポリエステルなどの有機繊維よりなるスクリーン紗が一般的に使用されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、電子回路の印刷分野においては、印刷精度の向上に対する要求が益々厳しくなってきており、高強度で、高モジュラスのスクリーン紗が要求されている。このように、印刷に使用するスクリーン紗としては、印刷における美しさを維持するために非常に高い均繊性や、高い寸法安定性が必要であって、通常、1本の単繊維だけで構成されるモノフィラメントが使用される。
【0004】
そこで、均繊性に優れたモノフィラメントを製造することが要求されるのであるが、均繊性に優れたモノフィラメントを製造するために、溶融紡糸工程において、1本のモノフィラメントに一対一に対応させて精密にポリマーを供給する計量ポンプを使用して紡糸して、延伸を行うことが行われている。しかしながら、紡糸・延伸の各工程における変動を全てコントロールし、繊度斑を起こさないようにすることは至難の技である。
【0005】
このような理由から、各工程で不可避的に生じた微細な変動は、約5mm程度の長さで数十μmの繊維径(以下、“繊維径”とは、“繊維の直径”を指すものとする)の変動を発生させ、モノフィラメントに節糸部が生じる。もし、どうしても不可避的に生じるこのような節糸部がスクリーン紗織物の中に混入すると、高密度で織られたスクリーン紗織物中に目開きがその部分だけ広くなった部分が生じ、印刷におけるにじみやぼやけなどの欠点の原因となる。
【0006】
以上に述べたような理由から、紡糸・延伸工程で生じるモノフィラメントの繊維径を連続的に検査して、異常な繊維径を有するモノフィラメントを除去する工程が必要となる。従来、糸の繊度斑を検査する手段としては、一旦巻取った糸条からサンプリングして、例えばツェルベガー社製のウスター斑試験器のような繊度斑を用いて測定する技術が公知である。しかしながら、この方法は、あくまでも一旦巻取った糸から適当な糸長をサンプリングして低速で繊度斑を測定するものであって、製糸工程中の走行糸条をオンラインで測定することはできない。また、繊度斑を生じているモノフィラメントの位置を特定することも困難である。
【0007】
一般に、走行中の糸条の繊度斑をオンラインで測定する技術としては、紡績糸(綿(スフ)を紡いだ糸)のスラブを検出するためのスラブキャッチャーに係わる技術が、特公平2−29771号公報、特開平8−188931号公報などで提案されている。この従来技術では、発光ダイオードなどの投光手段とCCDなどの受光素子を設けて、走行する紡績糸に投光させて、走行糸に遮られる光量を受光素子で検知する技術、あるいは紡績糸の繊度斑によって生じる静電容量の変化を検出しようとするものである。しかしながら、これらの何れの技術においても、検出できる繊度斑の精度にはノイズの影響もあって限界がある。例えば、モノフィラメントの許容繊維径に対して10μm程度繊維径が太くなった節糸部がモノフィラメントに生じていても、これを確実かつ精度良く検出することは極めて至難の業である。
【0008】
したがって、モノフィラメントを紡出する口金サイズ、溶融温度、吐出温度、冷却条件、延伸条件などの製糸条件がほとんど変動しない最も安定な領域を探索し、その最適条件にて生産することでモノフィラメントの繊度斑の発生を極小化することが一般的な方法となっている。しかしながら、このような方法では、不可避的に稀に工程変動が発生して特定錘のモノフィラメントに繊維径の不良が発生しても、抜き取り検査で検出できなければ、そのまま問題のない製品として製織工程に出荷される。そして、その結果として、既に述べたような製織工程での異常の発生となって現われ、これによって多大の被害を発生させてしまう事態が生じる。
【0009】
【特許文献1】特公平2−29771号公報
【特許文献2】特開平8−188931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上に述べた従来技術が有する問題を解決し、モノフィラメントの製造工程において生じる繊度斑を精度良く確実に検知することができる繊維径異常(モノフィラメントの繊維径斑)をオンラインで検出することができる異常繊維径の検出装置とその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに、上記課題を解決するために、請求項1に係わる発明として、「ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度で形成されたスリット状の間隙に走行するモノフィラメントを導入し、導入したモノフィラメントが前記間隙を通過するときに受ける通過抵抗を力、動歪又は振動(周波数及び/又は振幅)によって数値で定量化し、定量化した数値が予め設定したしきい値を超えた場合に異常繊維径を有するモノフィラメントが通過したと判断することを特徴とする異常繊維径の検出方法」が提供される。
【0012】
ここで、上記発明は、請求項2に係わる発明のように、「前記モノフィラメントがスクリーン紗用モノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の異常繊維径の検出方法」とすることが好ましい。
【0013】
また、上記発明は、請求項3に係わる発明のように、「前記モノフィラメントを製造する製糸工程においてオンラインで繊維径異常を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異常繊維径の検出方法」とすることが好ましい。
【0014】
また、上記発明は、請求項4に係わる発明のように、「請求項3に記載の製糸工程が延伸工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異常繊維径の検出方法」とすることが好ましい。
【0015】
そして、上記発明は、請求項5に係わる発明のように、「前記モノフィラメントの基準繊維径よりも前記間隙を5〜15μm広くしたことを特徴とするた請求項1乃至請求項4の何れかに記載の異常繊維径の検出方法」とすることが好ましい。
【0016】
更に、前記課題を解決するための装置として、請求項6に記載の発明である「ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度で形成されたスリット状の間隙を有するガイドと、前記間隙を走行するモノフィラメントが通過した際に生じる通過抵抗を検出する通過抵抗検出器と、前記通過抵抗検出器によって検出されて定量数値化された通過抵抗値が予め設定した閾値を超えたときに繊維径異常が発生したと判断する異常判断手段とを含む異常繊維径の検出装置」が提供される。
【0017】
この際、本発明の前記装置としては、請求項7に記載のように、「前記ガイドが、互いに平行して設けられた一対の棒ガイドと、該一対の棒ガイド間にミクロンメーター・オーダーの加工精度を有すると共に前記間隙を形成させるためのスペーサと、を少なくとも備えたことを特徴とする請求項8に記載の異常繊維径の検出装置」とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の前記装置としては、請求項8に記載のように、「前記スペーサがスキマゲージであることを特徴とする請求項7に記載の異常繊維径の検出装置」とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明の前記装置としては、請求項9に記載のように、「前記通過抵抗検出器が、前記モノフィラメントが前記間隙を通過する際に前記ガイドが受ける反力を検出する手段であって、該手段は荷重検出器、動歪検出器又は振動検出器であることを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れかに記載の異常繊維径の検出装置」とすることが好ましい。
【0020】
そして、本発明の前記装置としては、請求項10に記載のように、「スクリーン紗用モノフィラメントの延伸機に備えられることを特徴とする請求項5乃至請求項9の何れかに記載の異常繊維径の検出装置」とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べた請求項1と請求項6とに係わる本発明の異常繊維径の検出方法とその検出装置によれば、ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度を有する間隙へ走行するモノフィラメントを導入し、この間隙を通過するときのマルチフィラメントの通過抵抗を反力として検出することができる。しかも、従来の透過光の光量変化や静電容量変化による糸径斑の検出方法や装置では、糸揺れを起こしながら高速走行するモノフィラメントの糸径斑を精度良く測定できなかったが、本発明の検出方法と検出装置によれば走行状態にあるモノフィラメントであっても、異常繊維径部を有するモノフィラメントを精度良くオンラインで検出することができる。
【0022】
このように、本発発明の異常繊維径の検出方法と検出装置によれば、高速走行するモノフィラメントであっても異常な繊維径を有するモノフィラメントが検出部を通過すれば、正確に検出することができる。しかも、モノフィラメントを通過させる間隙は、極めて精度よく設定することができるため、管理上限径に対して数ミクロンメーターの繊維径の異常が生じていても、これを確実に検知することができる。
【0023】
また、ミクロンメーター・オーダーで高精度の厚みを持つように仕上げられたスキマゲージのようなスペーサを使用して、このスペーサを互いに平行して設けられた一対の棒ガイドの間に介在させて、前記間隙を形成するようにすれば、スペーサを交換するだけで、間隙の寸法精度を低下させること無く、容易に間隙調整が可能となる。したがって、間隙を走行するモノフィラメントの種類、銘柄、製造条件などに柔軟に応じて、最適な寸法に間隙を調整することができる。
【0024】
以上に述べた本発明の異常繊維径の検出方法と検出装置は、特に繊維径の上限を厳密に管理しなければならないスクリーン紗用モノフィラメントの製造工程(特に、紡糸工程と延伸工程)に適用した場合に、製造するモノフィラメントの品質管理を厳しく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、紡出されたモノフィラメントを紡糸工程で一旦巻取った後、この巻取ったモノフィラメントを延伸するために延伸工程を通過させた際に、本発明の異常繊維径の検出装置を使用してモノフィラメントの繊維径異常をオンラインで検出する方法を模式的に例示した説明図である。また、図2は、図1の延伸工程中に使用する本発明の繊維径異常の検出装置10を拡大して例示した斜視図である。
【0026】
この図1と図2において、紡糸工程で糸条パッケージとして一旦巻き取られたモノフィラメント2は、延伸倍率に応じて速度差を付けられた一対の延伸ローラ3と延伸ローラ5との間で加熱装置4で所定の延伸温度に加熱されながら延伸され、冷却ローラ6を通過して巻取機7で巻き取られる。なお、本例では紡糸工程と延伸工程を別々に行っているが、紡糸工程でモノフィラメント2を一旦巻取ることなく、後続の延伸工程へと連続的に供給して直接延伸するようにしてもよい。また、延伸ローラ3は、通常、加熱装置4に入るモノフィラメント2を予備加熱するために加熱ローラとされている。
【0027】
以上に述べた図2の模式拡大図で例示した実施形態では、本発明の繊維径異常の検出装置10は、ミクロンメーター・オーダーといった高精度な寸法でスリット状に形成された間隙Gを有するガイド11(図示した例では一対の棒ガイド11a及び11bで構成されている)を設け、この間隙Gに走行するモノフィラメント2を導く。このとき、もし、導いたモノフィラメント2に異常繊維径部(以下、“節部”という)が生じていると、この節部は間隙Gを通過するときにガイド11から大きな抵抗を受ける。
【0028】
このとき、正常な繊維径を有するモノフィラメント2が間隙Gを通過する場合に比べて、より大きな通過抵抗が反力としてガイド11に伝わる。このようにして、ガイド11へ伝播した力をそのまま反力として荷重検出器(ロードセル)によって検出したり、伝播した反力を動歪や振動(周波数又は振幅)などの形態に一旦変換したりして通過抵抗を定量数値化した状態で通過抵抗検出器15により検出する。このようにして、通過抵抗が通過抵抗検出器15により定量数値化されて検出されると、異常判断手段9によって、事前の実験によって求めて予め設定した通過抵抗のしきい値レベルと比較され、この閾値レベルを超えたと異常判断手段9が判断すると、モノフィラメント2の節部がガイド11を通過したと認識する。
【0029】
このとき、通過抵抗検出器15として、振動の周波数又は振幅(特に、周波数)によって通過抵抗を定量数値化して、異常判断手段9によって異常繊維径の通過を判断する場合には、走行するモノフィラメントの張力などで代表される通過抵抗は、節部がガイド11を通過する時に急激に変動して、正常時よりも高い周波数成分を持った振動が出現する。したがって、通過抵抗検出器15により、これを検出することに通過抵抗を定量数値化し、この情報を異常判断手段9へ送って節部の通過を異常判断手段9が判断する。
【0030】
なお、このような異常判断手段9としては、周知のマイクロコンピュータを好適に使用することができる。より具体的には、通過抵抗検出器15によって検出された通過抵抗は電圧値や周波数などの信号へA/D変換器などによって変換された後、必要に応じて信号増幅器(図示せず)を介して増幅された後、図示省略したインターフェース手段を介して時系列的に異常判断手段9に設けられた記憶装置にオンラインで取り込まれ、異常判断手段9に記憶された閾値と比較され、この閾値を超えたことが分かると、異常繊維径部がガイド11を通過したと判断する。
【0031】
通常、モノフィラメント2は、数μmから数十μmの繊維径を有しているため、このようなモノフィラメント2の異常繊維径の通過を検出するガイド11としては、例えばミクロンメーター・オーダーの単位で高寸法精度で製作されたスリット状の間隙Gが加工されたものが要求される。通常、このような高寸法精度が要求されるスリット状の間隙Gは、一体物として工作機械などで加工することができ、当然のことながら、本発明のガイド11においても、このような一体物のガイドを使用することもできる。
【0032】
しかしながら、ガイド11を一体物として加工してしまうと、間隙Gの調整ができなくなる。したがって、最適な間隙Gを繰返し実験などによって選定しようとすると、その都度、高寸法精度で加工されたガイド11が必要とされることとなる。当然のことながら、モノフィラメント2の種類、銘柄、製造条件などが異なってくると、その条件に合わせて多くのガイド11を製作しなければならない。
【0033】
そこで、図1及び図2に例示したガイド11では、一対の棒ガイド11a及び11bを平行度を良好に保って、形成する間隙Gに対応した厚みを有するスキマゲージ13を棒ガイド11aと棒ガイド11bとの間に介在させることによって正確かつ厳密に間隙Gを設定することを特徴とする。なお、一対の棒ガイド11a及び11bは、その平行度を精度良く保ちながら、スキマゲージ13を間に挟んで緩まないように確実に固定する必要がある。そこで、押付け部材14を設けて、一対の棒ガイド11a及び11bを互いに押付け勝手に本体12に立設している。このようにすることによって、振動などの影響を受けても、一対の棒ガイド11a及び11bとスキマゲージ13とは緩むことなく、スキマゲージ13によって形成された間隙Gが変化せず、常に一定に保っている。
【0034】
なお、前記実施形態では、間隙Gを形成させるためにスキマゲージ13を使用している。このように、スキマゲージ13は、安価に市販されており入手も容易であることから、簡単かつ安価な方法で、一対の棒ガイド11a及び11bをミクロンメーター・オーダーといった高寸法精度で離間させることができる部材(すなわち、“スペーサ”)として適している。したがって、当然のことながら高寸法精度を有するスペーサとしての役割を果たすことができる部材であれば、本発明はスキマゲージ13に限定されるものではない。
【0035】
以下、本発明の異常繊維径の検出装置とその検出方法を詳細に説明するが、説明をより具体的にして理解を容易にするために、正常なモノフィラメント2と評価する基準繊維径を30μmと想定し、更に、管理上限径としてこの基準繊維径よりも+10μm以上太い繊維径(つまり、40μm以上の繊維径)を想定する。そして、このような想定の下で、モノフィラメント2の繊維径がこの管理上限径を超えた場合に繊維径異常と判断する場合について説明する。もちろん、本発明においては、モノフィラメント2の基準繊維径と管理上限径はこのような具体的な数値(30μmと40μm)に限定されることは無く、本発明の趣旨を満足する限り任意の値を選定できることはいうまでもない。
【0036】
ここで、一例を挙げるならば、共に5mmの外径を有する一対の前記丸断面を有するガイド11が形成する間隙Gを管理上限径である40μmに設定すると共に、その材料として高い剛性と耐磨耗性を有するアルミナや酸化チタンなどのセラミック材料で構成しておく。そうすると、走行するモノフィラメント2の繊維径が管理上限径である40μmよりも小さければ、棒ガイド11に接触しながらであっても、モノフィラメント2は間隙Gを容易に通過することができる。このため、それほど大きな通過抵抗を受けない。
【0037】
なお、前記棒ガイド11は、正常な繊維径を有するモノフィラメント2が通過する際には、ガイドとの接触による擦過損傷を受けないように、適当な表面粗さを付与しておくことが好ましい。また、棒ガイド11の形状は、本発明の趣旨を満足する限り特に限定されることはない。しかしながら、薄い平板状棒ガイドを用いたのでは、その柔軟性のために剛性が失われて振動などを惹起し、これによるノイズによって検出精度が低下し、仮に節部が通過してもこれを正確に捉えることができない。このような理由から、節部分が当たった際にその衝突力に十分に耐えうる剛性を持った形状を有することが必要であって、その接糸部が丸断面などの適当な曲率を持った曲面を有するガイド11が好ましい。何故ならば、節部などの異常のないモノフィラメントがこのガイド11に接触しても、ダメージを受けることがないからである。
【0038】
しかしながら、走行するモノフィラメント2に管理上限径の40μmよりも大きな繊維径を有する節部が生じていれば、この節部は間隙Gを通過できずに断糸するか、あるいは節部が弾性変形又は塑性変形を起こして通過せざるを得ない。そうすると、節部が通過しない場合と比較すると、ガイド11にはより大きな力が加わる。したがって、モノフィラメント2がガイド11に及ぼす力を検出してこれを監視すれば、モノフィラメント2の繊維径異常を良好に検出することができるのである。
【0039】
ここで、前記間隙Gについては、製造するモノフィラメント2の種類、銘柄、製糸条件、管理上限径などによって異なるため、個々の条件に合わせて適宜実験などによって最適な値を決定すべき性質のものである。したがって、ここで間隙Gの数値範囲を限定する理由はないが、この間隙Gは基準繊維径に対して相対的に決定されるものであって、基準繊維径に対して5〜15μm広くすることが好ましく、特に10μmの近傍とすることが好ましい。
【0040】
すなわち、例えば基準とする繊維径が30μmであるポリエステル製のスクリーン紗用モノフィラメントを例に採って説明すると、前記間隙Gは基準繊維径30μmよりも10μm程度大きい40μmを採用することが好ましい。何故ならば、モノフィラメントの基準繊維径が30μmであるのに対して、間隙Gを45μmよりも大きく設定してしまうと、スクリーン紗を製織する際に問題となる40μm近傍の節部が通過しても、的確に捉えることができないからである。
【0041】
逆に、間隙Gが35μmより小さくすると、基準繊維径30μmに近づくため、正常な基準繊維径を有するモノフィラメント2であっても、間隙Gを通過する際に大きな通過抵抗を受けて擦過損傷を惹起する。そうすると、スクリーン紗織物にした際のタフネスの低下などの物性低下などにもつながり好ましくないばかりか、ガイド11からのしごきによってスカムが発生する。そうすると、蓄積したスカムの影響で、間隙Gのクリアランス調整が無駄になったり、クリアランス調整自体が困難になったり、あるいは、スカム除去のための清掃を頻繁に行ったりする必要があるため好ましくない。
【0042】
また、検出した節部の径が小さくなり過ぎて、このような節部がスクリーン紗とされたときに現実的に印刷欠点として現われる可能性は極めて低くなる。更には、本発明者らの経験によると、異常繊維径を有するモノフィラメント2が発生する場合は、数十μmのオーダーでの節部の存在が少なくとも1箇所以上生じているのが普通であることが分かっている。したがって、このような理由からも、間隙Gは基準とする繊維径よりも10μm程度広い寸法に設定しておくことで十分に高品位を有するスクリーン紗織物としての品質を達成することができる。
【0043】
なお、前記押付け部材14としては、図示例のようなボルト、あるいは圧縮バネや弾性ゴムなどのような付勢部材を例示することができる。また、スキマゲージ13は、適当な長さに切り取り、一対の棒ガイド11a及び11bの何れか一方の根元部分に1周だけ巻き付けて固定している。このとき、スキマゲージ13の設置は、一対の棒ガイド11a及び11bを高寸法精度で離間させることによって間隙Gを確保することが本発明の趣旨である。したがって、本発明の実施形態は、その趣旨を満足する限りにおいて、棒ガイド11a及び/又は11bにスキマゲージ13を巻き付ける実施態様に限定されるものではない。
【0044】
以上に述べたように本発明の異常繊維径の検出装置10は、ガイド11に高寸法精度で形成した間隙Gを設け、節部を有するモノフィラメント2がこの間隙Gを通過する際の通過抵抗を検出することを一大特徴とする。このため、間隙Gを通過するモノフィラメント2に管理上限径よりもわずかに太い節部が生じていて、この節部が間隙Gを通過すると、通過抵抗が大幅に上昇する(場合によっては衝撃力が発生する)ため、これを確実に検知することができる。したがって、節部の径が40μmをわずかに数μm超えたような場合であっても、このような節部の通過を精度良く検出することができる。これに対して、従来の光量変化や静電容量変化を検出する技術では、糸揺れを起こしながら高速で走行するモノフィラメント2の繊維径異常を数μmの誤差で検出するということは至難の業であることは言うまでもない。
【0045】
なお、間隙Gは、スキマゲージ13を単独で用いたり、厚みの異なる複数のスキマゲージ13を組み合わせて用いたりすることで、適宜調整することができる。したがって、製造するモノフィラメント2の銘柄変更が生じたり、より厳しい管理上限径を設定したりすることも容易にできる。また、間隙Gをμm単位で調整できるために、節部(異常繊維径部)から棒ガイド11a及び11bが受ける反力の大きさを繰返し実験による微調整によって最適化することができ、節部の検出精度の向上に寄与させることもできる。
【0046】
本発明の異常繊維径の検出装置10では、モノフィラメント2の異常な節部が通過しても変形が生じない高い剛性を有するガイド11とし、モノフィラメント2が間隙Gを通過してもガイド11の方は、間隙Gが全く変化しないように固定してしまう実施形態を採用することができる。この場合、ガイド11は、モノフィラメント2からより大きな反力を受けることになって検出精度は向上する半面で、走行するマルチフィラメント2にダメージを及ぼして断糸させたり、損傷を与えたりすることがある。
【0047】
したがって、このような実施形態とは逆に、間隙Gよりも太い節部が通過するとモノフィラメント2へのダメージを少なくするために棒ガイド11a及び/又は11bの方がモノフィラメント2から受ける力に対応して変形し、間隙Gを大きくするような実施形態を採用することもできる。ただし、この場合には、モノフィラメント2へのダメージは少なくなるものの、正常な繊維径を有するモノフィラメント2が間隙Gを通過する場合であっても、糸張力が大きくなったり、糸張力が変動したりすると誤検出を起こす可能性が常に存在する。もちろん、これらの実施形態の中庸をとることもできる。
【0048】
以上に述べたように、本発明の異常繊維径の検出装置10では、モノフィラメント2の節部がガイド11を通過する際の通過抵抗あるいはガイド11に節部が衝突して発生する反力(衝撃力)を検出する。なお、このような通過抵抗を反力(衝撃力)として検出する通過抵抗検出器とその検出方法については、周知の技術、例えば、ガイド11の根元に動歪ゲージ貼り付けて反力によって生じる歪量を検出する技術、あるいは、荷重検出器(ロードセル)をガイド11の根元部に設けて反力を荷重として直接検出する技術などを適用することができることは明らかである。したがって、その詳細説明はここでは省略する。
【0049】
なお、これ以外の検出技術としては、節部が衝突してガイド11に生じた振動の伝播を振動の周波数や振幅(振動強度)によって検知する振動検出器をガイド11の根元部に取付けて使用することもできる。この場合、節部がガイド11に衝突して生じる振動の周波数は、正常な繊維径を有するモノフィラメント2が間隙Gを通過する場合と明らかに異なるため、節部の通過をよりクリアに判断することができる。ちなみに、このような振動検出センサーの例としては、市販のキーエンス社製振動センサー(センサヘッド型式:GH-513、アンプユニット:GA-223)などを挙げることができる。
【0050】
本発明の異常繊維径の検出装置10は、モノフィラメントに生じた異常繊維径(管理上限径)を製造する工程に用いることができ、特に、スクリーン紗用のモノフィラメントの紡糸工程や延伸工程などの製造工程に好適に使用することができる。なお、このようなモノフィラメントの製造工程においては、生産条件が十分に最適化されているために、こうした異常繊維径を有するモノフィラメントが発生する頻度は極めて低い。
【0051】
しかしながら、製造工程内に生じる微小変動の発生は不可避であって、微細な節部が発生する可能性はある。ところが、本発明の異常繊維径の検出装置10を用いることで、微細な節部が例え発生しても、これを正確に捉えることができる。そして異常部分を一度捉えさえすれば、その場で即座に異常処理を実施することができ、繊維径に異常のあるモノフィラメントを製糸工程にて検出して抜き取ることができる。そして、後続の製織工程などに異常が発生したモノフィラメントを供給することもなくなり、織物異常を広い範囲にわたり拡大させてしまう可能性は少なくなり、その結果として、常に安定した高品位織物を得ることができる。
【0052】
なお、本発明の異常繊維径の検出装置10は、管理上限径を超えた節部が通過する場合にこのような節部が通過したことをその場で直ちに検知するために好適に使用することができ、管理下限径よりも小さな細糸部が通過したことを検出するためには必ずしも適していない。しかしながら、本発明の検出装置10と検出方法は、既に詳細に述べたように、設定した間隙Gを通過するモノフィラメント2の通過抵抗を数量化しているため、その検出精度において劣るが、細糸部の通過を検知することは原理的に可能である。何故ならば、細糸部が間隙Gを通過すると、今度は通過抵抗が逆に減少するからである。したがって、この通過抵抗の減少や変動を通過抵抗検出器15によって的確に捉え、捉えた信号を異常判断手段によって細糸部が通過したか否かを判断することで細糸部の通過を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】繊維径異常を製糸工程(延伸工程)でオンラインで検出する方法を模式的に例示した説明図である。
【図2】本発明の異常繊維径の検出装置に係わる一つの実施形態例を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1:未延伸モノフィラメントの原糸パッケージ
2:モノフィラメント
3,5:延伸ローラ
4:加熱装置
6:冷却ローラ
7:巻取機
9:異常判断手段
10:異常繊維径の検出装置
11(11a,11b):ガイド(一対の棒ガイド)
12:検出装置本体部
13:スキマゲージ
14:押付け部材
15:通過抵抗検出器
G:間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度で形成されたスリット状の間隙に走行するモノフィラメントを導入し、導入したモノフィラメントが前記間隙を通過するときに受ける通過抵抗を力、動歪又は振動(周波数及び/又は振幅)によって数値で定量化し、定量化した数値が予め設定したしきい値を超えた場合に異常繊維径を有するモノフィラメントが通過したと判断することを特徴とする異常繊維径の検出方法。
【請求項2】
前記モノフィラメントがスクリーン紗用モノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の異常繊維径の検出方法。
【請求項3】
前記モノフィラメントを製造する製糸工程においてオンラインで繊維径異常を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異常繊維径の検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製糸工程が延伸工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異常繊維径の検出方法。
【請求項5】
前記モノフィラメントの基準繊維径よりも前記間隙を5〜15μm広くしたことを特徴とするた請求項1乃至請求項4の何れかに記載の異常繊維径の検出方法。
【請求項6】
ミクロンメーター・オーダーの高寸法精度で形成されたスリット状の間隙を有するガイドと、前記間隙を走行するモノフィラメントが通過した際に生じる通過抵抗を検出する通過抵抗検出器と、前記通過抵抗検出器によって検出されて定量数値化された通過抵抗値が予め設定した閾値を超えたときに繊維径異常が発生したと判断する異常判断手段とを含む異常繊維径の検出装置。
【請求項7】
前記ガイドが、互いに平行して設けられた一対の棒ガイドと、該一対の棒ガイド間にミクロンメーター・オーダーの加工精度を有すると共に前記間隙を形成させるためのスペーサと、を少なくとも備えたことを特徴とする請求項6に記載の異常繊維径の検出装置。
【請求項8】
前記スペーサがスキマゲージであることを特徴とする請求項7に記載の異常繊維径の検出装置。
【請求項9】
前記通過抵抗検出器が、前記モノフィラメントが前記間隙を通過する際に前記ガイドが受ける反力を検出する手段であって、該手段は荷重検出器、動歪検出器又は振動検出器であることを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れかに記載の異常繊維径の検出装置。
【請求項10】
スクリーン紗用モノフィラメントの延伸機に備えられることを特徴とする請求項5乃至請求項9の何れかに記載の異常繊維径の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−241612(P2006−241612A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55604(P2005−55604)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】