説明

異常通報装置

【課題】異常の種別や程度に応じて適切な通報先に選択的に通報することができる異常通報装置を提供する。
【解決手段】異常通報装置において、測定装置110からの生体情報を解析する成分解析装置101と、複数の通報先141〜14nを選択条件に関連付けて記憶する通報先記憶部103と、解析装置の解析結果と通報先記憶部103の選択条件とを照合し複数の通報先のうちの少なくとも一つを選択する照合装置102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象者の異常を検出して通報を行う異常通報装置に関し、特に、検出した異常の種別及び程度に応じて通報先を変更する移動通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の異常通報装置は、人感センサなどの動作検知手段からの検知データを集積装置に蓄積し、蓄積したデータを解析して監視対象者の行動を推定する。そして、推定結果に基づいて非日常レベルの判定を行い、判定レベルに応じて予め定められている通報先に通報するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の異常通報装置は、異常音声や異常血圧を検知したときに、予め定められた通報先に通報するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、センサ毎に予め登録された通報先へ通報する非常通報装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−301960号公報
【特許文献2】特開2006−141679号公報
【特許文献3】特開平8−79404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人感センサなどの動作検知手段からの検知信号を集積して非日常レベルを判定する従来の異常通報装置は、監視対象者の状態を推定して非日常レベルを判定するため、異常検出精度が低い。このため、異常検出時には、本人、家族あるいは協力者に連絡をとり、監視対象者の状態を確認する必要がある。このため、緊急時に直接医療機関へ通報するのには適していないという問題点がある。
【0007】
また、異常音声や異常血圧を検知する従来の異常通報装置は、特定の通報先へ通報するか否かの二者択一判断を行うものであって、異常の種別や程度に応じて適切な通報先を選択することができないという問題点がある。
【0008】
また、従来の非常通報装置もまた、各種センサから入力信号があったときに対応する通報先に通報するだけなので、異常の程度に応じて適切な通報先を選択することができないという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、異常の種別や程度に応じて適切な通報先に選択的に通報することができる異常通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、異常通報装置において、生体情報取得手段からの生体情報を解析する解析手段と、複数の通報先を選択条件に関連付けて記憶する通報先記憶手段と、前記解析手段の解析結果と前記選択条件とを照合し前記複数の通報先のうちの少なくとも一つを選択する照合手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異常通報装置は、異常の種別や程度に応じて適切な通報先に選択的に通報することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る異常通報装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
【0014】
異常通報装置100は、成分解析装置101と、照合装置102と、通報先記憶部103と、送信情報構築装置104と、外部情報データベース105とを含む。
【0015】
成分解析装置101は、生体情報取得手段である測定装置110に接続されている。測定装置110は、監視対象者の生態情報(心拍、血圧、呼吸数、体温等)を収集し、収集した生体情報を表す出力信号を成分解析装置101へ出力する。なお、測定装置110は、異常通報装置100に含まれてもよい。
【0016】
成分解析装置101は、解析手段として機能する。即ち、成分解析装置101は、測定装置110からの出力信号を受けると、それを解析し、一又二以上の情報成分を抽出する。抽出された生体情報成分は、照合装置102へ出力される。
【0017】
照合装置102は、成分解析装置101のみならず、通報先記憶手段である通報先記憶部103にも接続されている。通報先記憶部103は、図2に示すような複数のレコードを有する通報先対応表を格納している。各レコードには、測定装置110からの生体情報成分に対応する成分項目(成分1〜成分m)と通報先とが含まれ、各成分の特徴(異常の程度を表す)と通報先とが互いに関連付けられている。
【0018】
照合装置102は、照合手段として機能する。即ち、照合装置102は、成分分析装置101からの生体情報成分群を表す情報を、通報先記憶部103に格納されている通報先対応表のレコードと照合して通報先を決定(選択)する。照合装置102は、成分分析装置101からの生体情報成分群を表す情報とともに、選択した通報先を表す情報を送信情報構築装置へ出力する。
【0019】
送信情報構築装置104は、通信端末120とともに通報手段として機能する。送信情報構築装置104は、照合装置102から送られた生体情報成分群を表す情報及び通報先を表す情報と、さらには、自ら外部情報データベース105から取得した外部情報があればそれも通信端末120へ出力する。
【0020】
外部情報データベース105は、付帯情報記憶手段として機能する。即ち、外部情報データベース105は、通報先へ知らせるべき情報であって、測定装置110からは得られない情報、例えば、監視対象者を識別するための情報やその他付加的な情報を格納する。外部情報データベース105には、これらの情報が、図3に示すように、項目と値の組として格納されている。
【0021】
通信端末120は、送信情報構築装置104からの通報先情報に基づいて、通報先群140に含まれる通報先141〜14nの少なくとも一つを特定し、異常判定用成分群を表す情報と外部情報とを通信網130を介して送信する。なお、通信端末120は、異常通報装置100に含まれてもよい。
【0022】
次に、図4をも参照して、図1の異常通報装置100の動作について説明する。
【0023】
まず、成分解析装置101は、測定装置110からの出力信号を受信すると(4A)、受信した信号から特定の生体情報成分群を抽出する(4B)。ここで、特定の生体情報成分とは、通報先記憶部103に格納された通報先対応表で定義される成分群である。そして、成分解析装置101は、抽出した成分群を表す情報を照合装置102に入力する(4C)。
【0024】
照合装置102は、通報先記憶部103の通報先対応表からレコードを順に取り出すために、レコードを指し示すためのインデックスiを0に初期化する(4D)。そして、インデックスiで指し示されるレコードが通報先対応表に存在する場合(4EでYES)、照合装置102は通報先対応表のi番目のレコードに含まれる情報と成分解析装置101により抽出された成分群を表す情報とを照合する(4F)。
【0025】
照合の結果が合致するならば(4GでYES)、照合装置102は、そのレコードに通報先が記録されているかを確認する(4I)。通報先が記録されているならば、照合装置102は、その通報先を表す情報と抽出された成分群を表す情報とを送信情報構築装置104に入力する(4J)。
【0026】
ステップ4Eにおいてi番目のレコードが存在しないならば(4EでNO)、通報先は存在しないとみなして終了する。
【0027】
また、ステップ4Gにおいて、抽出された成分群を表す情報とレコードに含まれる情報とが合致しないならば(4GでNO)、インデックスiに1を加え(4H)、再びステップ4Eを実行する。
【0028】
通報先を表す情報及び抽出された成分群を表す情報が入力された送信情報構築装置104は、外部情報データベース105から予め蓄積された外部情報を取得し(4K)、通信端末120に対して通報先を表す情報及び抽出された成分群を表す情報と外部情報とを入力する(4L)。
【0029】
通信端末120は、通信情報構築装置104から入力された通信先情報を利用して通報先群140にある通報先を特定して、抽出された成分群を表す情報と外部情報とを、通信網130を通して送信する。
【0030】
以上のように本実施の形態によれば、生体情報を利用して異常を検出するので、客観的な基準に基づいて精度よく異常を検出することができる。また、異常が発生した後、速やかに通報を行うことができる。
【0031】
また、通報先を複数用意しておき、異常の種別や程度に応じて通報先を適切に指定することができる。例えば、異常の程度の応じて、知人に連絡、掛かり付け医に連絡、救急医に連絡というように、通報先を変えることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、図2の通報先対応表の全ての欄が何らかの情報で埋められている例について説明したが、通報先対応表の任意の欄は空欄であってもよい。例えば、通報先のいずれかの欄が空欄であれば、その成分1〜mの組み合わせでは、通報する必要がないことを意味する。また、各成分の欄を任意に空欄とすれば、例えば、成分1について異常が検出されたときは通報先1へ通報し、成分2について異常が検出されたときは通報先2へ通報するといったように、異常の種類に応じて通報先を変更するようにすることも可能である。この場合、さらに異常の程度に応じて通報先を変更するようにすることもできる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0034】
異常通報装置500は、心拍解析装置501と、照合装置502と、通報先対応表を格納する通報先記憶部503と、送信情報構築装置504と、患者情報を格納する患者情報記憶部505を持つ。
【0035】
心拍解析装置501は、監視対象者の身体に取り付けられた心拍測定装置510に無線又は有線で接続されている。また、送信情報公知装置504は、公衆回線網530に接続可能な携帯端末520に接続されている。
【0036】
心拍解析装置501は、心拍測定装置510から心拍信号を受け取ると、心拍信号の成分を解析し、通報先記憶部503に格納された通報先対応表との照合に必要な生体情報成分を取り出す。ここでは、心拍信号から心拍数と心拍の間隔とを表す情報を取り出す。
【0037】
照合装置502は、心拍解析装置501が分析した毎分の心拍数と心拍の間隔を表す情報を入力とし、これら情報と通報先記憶部503に格納された通報先対応表のレコードに含まれる情報とを照合し、通報先電話番号を決定する。
【0038】
通報先記憶部503に格納される通報先対応表は、図6に示すように、毎分の心拍数と心拍の間隔と連絡先電話番号とを関連付けている複数のレコードを有する。通報先対応表のレコードにおける通報先電話番号欄には空欄があってもよく、その場合は該当する毎分の心拍数と心拍の間隔は通報不要であるとみなされる。
【0039】
送信情報構築装置504は、心拍解析装置501が解析した成分群を表す情報と、照合装置502が決定した電話番号を表す情報と、送信情報構築装置504自身が患者情報記憶部505から取得した患者情報とを、携帯端末520に入力する。なお、患者情報には、患者の氏名、年齢、病歴などの付加的な情報が含まれる。患者情報記憶部505は、患者情報を図7に示すように、項目と値の組として記憶する。
【0040】
携帯端末520は、通信情報構築装置504から入力された電話番号を表す情報に基づき、通報先群540にある通報先541〜543を特定して、毎分の心拍数と心拍の間隔を表す情報と患者情報を、公衆回線530を通して音声にて通報する。
【0041】
次に、図8をも参照して、図5の異常通報装置の動作について説明する。
【0042】
心拍解析装置501は、心拍測定装置510からの心拍信号を受信すると(8A)、心拍信号から通報先対応表503で定義される毎分の心拍数と心拍の間隔という成分群を抽出する(8B)。心拍解析装置501は抽出した毎分の心拍数と心拍の間隔を表す情報を照合装置502に入力する(8C)。
【0043】
照合装置502は、通報先記憶部503の通報先対応表からレコードを順に取り出すために、レコードを指し示すためのインデックスiを0に初期化する(8D)。
【0044】
インデックスiで指し示されるレコードが存在する場合(8EでYES)、照合装置502は、通報先記憶部503の通報先対応表のi番目のレコードに含まれる情報と、心拍解析装置501により抽出された毎分の心拍数と心拍の間隔とを照合する(8F)。
【0045】
照合の結果が合致するならば(8GでYES)、そのレコードに通報先電話番号が記録されているかを確認する(8I)。通報先電話番号が記録されているならば(8IでYES)、その通報先電話番号を表す情報と毎分の心拍数と心拍の間隔とを表す情報を送信情報構築装置504に入力する(8J)。
【0046】
ステップ8Eにおいてi番目のレコードが存在しないならば(8EでNO)、通報先電話番号はないとみなして終了する。
【0047】
また、ステップ8Gにおいて、毎分の心拍数と心拍の間隔とを表す情報とレコードに含まれる情報とが合致しないならば(8GでNO)、インデックスiに1を加え(8H)、再びステップ8Eを実行する。
【0048】
通報先電話番号の情報と毎分の心拍数と心拍の間隔の情報とを入力された送信情報構築装置504は、患者情報記憶部505から予め蓄積された患者情報を取得し(8K)、携帯端末520に対して通報先電話番号を表す情報と、毎分の心拍数と心拍の間隔とを表す情報と、患者情報を入力する(8L)。
【0049】
携帯端末520は、通信情報構築装置504から入力された通信先電話番号を表す情報を利用して通報先群540にある通報先541〜543を特定して、分析された成分群と外部情報を、公衆回線530を通して送信する。
【0050】
以上により、本実施例の異常通報装置は、高度な設備を有する専門機関に通報するまでもない軽微な異常については、身近な人や施設に通報することで、費用対効果のバランスをとることができる。
【0051】
また、本実施例の異常通報装置では、監視対象者が意識を失った場合のように、通報装置等を操作することが不可能な状態においても、心拍信号に基づき通報先を自動的に選択し、適切な通報先に通報することができる。
【0052】
また、本実施例の異常通報装置では、通報先が予め登録されているので、通報先を人手で探索する手間がなく、迅速な通報が可能である。
【0053】
さらに、本実施例の異常通報装置は、発生した異常に関する情報のみならず、患者の名前や病歴などの付帯的な情報も合わせて通報することで、誤った処置を行う可能性を減らし、また適切な処置を行うための判断材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る異常通報装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の異常通報装置に含まれる通報先記憶部に格納される通報先対応表の一例を示す図である。
【図3】外部情報データベースに格納される外部情報の一例を示す図である。
【図4】図1の異常通報装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例に係る異常通報装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5の異常通報装置に含まれる通報先記憶部に格納される通報先対応表の一例を示す図である。
【図7】外部情報記憶部に格納される外部情報の一例を示す図である。
【図8】図5の異常通報装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
100,500 異常通報装置
101 成分解析装置
102,502 照合装置
103,503 通報先記憶部
104,504 送信情報構築装置
105 外部情報データベース
110 測定装置
120 通信端末
130 通信網
140,540 通報先群
141〜14n 通報先
501 心拍解析装置
505 患者情報記憶部
510 心拍測定装置
520 携帯端末
530 公衆回線
541 応急処置が可能な医務室
542 掛かり付けの医院
543 高度な専門設備を有する大学病院

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常通報装置において、
生体情報取得手段からの生体情報を解析する解析手段と、
複数の通報先を選択条件に関連付けて記憶する通報先記憶手段と、
前記解析手段の解析結果と前記選択条件とを照合し前記複数の通報先のうちの少なくとも一つを選択する照合手段と、
を備えたことを特徴とする異常通報装置。
【請求項2】
前記生体情報取得手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の異常通報装置。
【請求項3】
前記生体情報取得手段が複数種類の生体情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の異常通報装置。
【請求項4】
前記解析手段が、前記複数種類の生態情報から任意の一又は二以上の生体情報を抽出することを特徴とする請求項3に記載の異常通報装置。
【請求項5】
前記生体情報取得手段が心拍モニタであることを特徴とする請求項2に記載の異常通報装置。
【請求項6】
前記解析手段が、心拍数及び心拍間隔を表す生体情報を抽出することを特徴とする請求項5に記載の異常通報装置。
【請求項7】
前記照合手段により選択された通報先に通報する通報手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の異常通報装置。
【請求項8】
付帯情報を記憶する付帯情報記憶手段をさらに備え、前記通報手段が、前記付帯情報を送信情報に含めることを特徴とする請求項7に記載の異常通報装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−245408(P2009−245408A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94556(P2008−94556)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】