説明

異形断面条及びその製造方法

【課題】表面粗さの低減による品質向上を図り、且つ、表面粗さ不良を防止して製造コストを低減することができる異形断面条及びその製造方法を提供する。
【解決手段】平板状条材23を圧延加工してなり、表面に薄板部31と厚板部30とからなる段差部33を備えた異形断面条32において、裏面であって薄板部31と厚板部30との境界部34に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域61が長手方向に亘って形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージのリードフレーム材として使用される異形断面条及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板状条材を加工して、薄板部と厚板部とを有する段付きの異形断面を備えた異形断面条を製造する方法としては、一般に、所定の部分を研削除去する方法、溝ロールと平ロールとで交互に圧延する方法、V字状の突起部が設けられた平盤状V型ダイス(金型)を用いた圧延方法があるが、近年、例えば特許文献1や特許文献2等によって、平盤状V型ダイスを用いた圧延による製造方法や装置が提案され、高い生産性で段付きの異形断面条を製造することが可能となってきている。
【0003】
図1は、そのような平盤状V型ダイスを示す図である。
【0004】
図1に示すように、平盤状V型ダイス10は、先端からV字状に末広がりの形状をなすV字状の突起部11a,11bと、そのほぼ中央部を貫通するように設けられた溝部12とが、基台13上に形成されている。
【0005】
突起部11a,11bの両脇には、平坦な基面14a,14bが設けられており、この基面14a,14bと突起部11a,11bとは、斜面15a,15bで接続され、これらの面は連続的に形成されている。
【0006】
この平盤状V型ダイス10は一般に、金型製作用の金属ブロック材を研削加工する工程等を含んだ製造方法によって作製される。
【0007】
このような平盤状V型ダイス10の突起部11a,11bが形成された面(以下、圧延加工面という)に対して加工対象の平板状条材を配置し、その平板状条材上を移動する押圧用ロール等によって押圧力を印加することで、その平板状条材を平盤状V型ダイス10に押圧プレス加工する。図2に、平板状条材を平盤状V型ダイス10に押圧プレス加工する異形断面条製造装置の概略を示す。
【0008】
図2に示すように、異形断面条製造装置20は、円周上に複数の押圧用ロールとしての遊星圧延ロール(圧延ロール)21を配置してなる遊星圧延機22の外周に、突起部11a,11bを有する圧延加工面を内側にして湾曲させた平盤状V型ダイス10を配置して構成され、その平盤状V型ダイス10と遊星圧延機22との間に平板状条材23をコイル24から供給(導入)することにより、平板状条材23を連続的に押圧プレス加工する。
【0009】
そして、図3に示すように、その押圧プレス加工した後に平板状条材23を平盤状V型ダイス10の先端(V字先端)から末広がりの後方(図1〜3の白抜き矢印の方向)へと移動させる前方張力を加える。この動作を所定の長さごとに繰り返すことにより、平板状条材23のうち平盤状V型ダイス10の溝部12を通過した部分を厚板部30となし、平盤状V型ダイス10の突起部11a,11bを経由した部分(つまり、平板状条材23の左右両脇の部分)を薄板部31となして、長手方向全長に亘って略直線的に連続した異形断面形状を有する異形断面条32が形成される。
【0010】
この異形断面形状の加工プロセスでは、加工対象の平板状条材23が平盤状V型ダイス10の突起部11a,11bに沿って、そのV字の先端から後方へと末広がりに圧延されていくことで、平板状条材23のうち突起部11a,11bを経由した部分は薄板部31となる。
【0011】
他方、平盤状V型ダイス10の溝部12では、突起部11a,11bが設けられておらず、底面が平坦な基面14a,14bと連続した平面となっているのであるから、この溝部12を通った部分の平板状条材23は、突起部11a,11bよりも圧延量が少ないままに平盤状V型ダイス10を通過する。従って、この部分が厚板部30となる。
【0012】
このようにして、厚板部30と薄板部31とを幅方向に混在するように形成してなる段付きの異形断面条32が、高い生産性で製造される。
【0013】
以上のような方法で製造された異形断面条32は、通常、形状安定化のため、その後、圧延機で仕上げ圧延が行われ、製品幅にスリット、洗浄や歪除去の処理が行われたのち完成となり、リードフレーム材として使用される。
【0014】
半導体パッケージを構成するリードフレーム材は、半導体チップと共に重要な構成要素の1つである。このリードフレーム材は、半導体チップを搭載するダイパッド部、ワイヤボンディングにより半導体チップに連結されるインナーリード部、基板等の回路と接続するためのアウターリード部から構成される。
【0015】
半導体パッケージの組立過程においては、半導体チップとインナーリード部のワイヤボンディング特性やダイパッド部のはんだ付け特性を向上させるために、ダイパッド部とインナーリード部に銀等の金属めっきを施す場合が多い。更に、モールディング後には、基板等への実装時のはんだ付け特性を向上させるためにアウターリード部にはんだめっきを施す。
【0016】
このアウターリード部へのはんだめっき過程において、めっき液がインナーリード部まで浸透することが多発するため、改善案が提案されている。これは、特許文献3に開示されている事前めっきリードフレーム(Pre−Plated Frame:PPF)方式である。
【0017】
このPPF方式は、半導体パッケージング工程の前にはんだ濡れ性に優れためっきを施すものであり、外層にパラジウムめっきを施すものである。パラジウムめっきを施す前に、リードフレーム材の表面にニッケルのような別の金属でめっきし、パラジウムの接着が一層良くなるようにすることが必要である。
【0018】
最近では、これら2層めっき構造に加え、より長時間の熱処理を行っても、ワイヤボンディング特性やはんだ付け特性等が低下しないことが望まれるようになったことから、パラジウムめっき皮膜上に更に金等の金属を極薄くめっきする3層めっき構造が主流になってきている。
【0019】
これらのめっきを施す場合、めっき層の剥げやピンホールの発生等のめっき不良の発生リスクがある。このような不具合の原因としては、めっき工程の前処理工程の影響があることは言うまでもないが、リードフレーム材の表面状態も非常に大きく影響する。リードフレーム材の表面粗さが大きいと、めっき品質に悪影響がある。
【0020】
リードフレーム材として使われる材料の表面粗さを低く抑える改善案は、これまでに数多く提案されている(例えば、特許文献4,5参照)。特許文献4,5では、表面粗さを低く抑えた圧延ロールを用いて圧延を施すことにより表面粗さの小さい表面が得られ、ダイレクトボンディング性が改善されると記載されている。
【0021】
主に表面粗さの低減が求められる領域は、薄板部31と厚板部30とからなる段差部33が形成される表面(凸面)と反対側の裏面(平面)で、薄板部31と厚板部30との境界部34から薄板部31への5〜15mm程度の範囲がそれに該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第3520770号公報
【特許文献2】特許第2756402号公報
【特許文献3】特開昭63−2358号公報
【特許文献4】特許第2714560号公報
【特許文献5】特開平11−12714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ここでの問題点は、表面粗さの低減が求められる領域は、薄板部31と厚板部30とからなる段差部33の根元、即ち、異形断面条32の裏面であって薄板部31と厚板部30との境界部34であり、この箇所は、圧延により薄板部31を形成する際、材料が長手方向と幅方向に延ばされるため、表面粗さが大きくなりやすい箇所であるが、近年、表面粗さ低減の要求が高まっており、作業のバラツキにより規格を満たさず不良となる割合が増加していることである。なお、検査で規格以上の表面粗さとなった場合、1コイル又は作業単位で不良となってしまいコストアップに繋がる問題が生じる。
【0024】
そこで、本発明の目的は、表面粗さの低減による品質向上を図り、且つ、表面粗さ不良を防止して製造コストを低減することができる異形断面条及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するために創案された本発明は、平板状条材を圧延加工してなり、表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を備えた異形断面条において、裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域が長手方向に亘って形成された異形断面条である。
【0026】
前記領域は、前記他の部分と比べて十点平均粗さRzが0.1μm以上異なると良い。
【0027】
前記領域は、十点平均粗さRzが0.8μm以下であると良い。
【0028】
また本発明は、平板状条材を圧延加工して表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を形成した後、仕上げ圧延を行う異形断面条の製造方法において、前記段差部の形成後で前記仕上げ圧延前に、砥粒を含有した砥石を用いて、裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域を長手方向に亘って形成する異形断面条の製造方法である。
【0029】
また本発明は、平板状条材を圧延加工して表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を形成した後、仕上げ圧延を行う異形断面条の製造方法において、前記仕上げ圧延前又は後に、砥粒を含有したゴム砥石を用いて、裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域を長手方向に亘って形成する異形断面条の製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、表面粗さの低減による品質向上を図り、且つ、表面粗さ不良を防止して製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】異形断面条製造装置に用いられる平盤状V型ダイスを示す図である。
【図2】異形断面条製造装置を示す図である。
【図3】図1の平盤状V型ダイスを用いて行われる加工工程を模式的に示す図である。
【図4】仕上げ圧延工程におけるゴム砥石の配置位置を模式的に示す図である。
【図5】ゴム砥石で異形断面条の表面粗さを小さくする領域を加工する工程を示す模式図である。
【図6】ゴム砥石で異形断面条の表面粗さを加工した後の表面状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0033】
先ず、異形断面条の製造方法に用いる平盤状V型ダイス及び異形断面条製造装置について説明する。
【0034】
図1に示したように、平盤状V型ダイス10は、先端からV字状に末広がりの形状をなすV字状の突起部11a,11bと、そのほぼ中央部を貫通するように設けられた溝部12とを、基台13の平坦な上面に設けてなるものである。
【0035】
突起部11a,11bの平面的な形状は、尖った先端から末広がりにV字状となっており、その中央部を貫通するように溝部12が設けられている。この突起部11a,11bのV字状の外形を構成している斜面15a,15bには、加工対象の平板状条材に対して円滑な圧延を行うことができるように、適度な傾斜角度が与えられている。
【0036】
突起部11a,11bの両脇には、平坦な基面14a,14bが露出している。この基面14a,14bと溝部12の底面とは、同一の平面として連続している。換言すれば、基面14a,14bと溝部12の底面とは同じ高さとなっている。
【0037】
この平盤状V型ダイス10は、例えば金型製作用の金属ブロック材を研削加工して作製される。
【0038】
図2に示したように、異形断面条製造装置20は、円周上に複数の遊星圧延ロール21を配置してなる遊星圧延機22の外周に、突起部11a,11bを有する圧延加工面を内側にして湾曲させた平盤状V型ダイス10を配置して構成される。
【0039】
図示していないが、平盤状V型ダイス10の圧延加工面と反対側の面は、装置ハウジングに取り付けられた寸法調整手段等で支持されている。
【0040】
遊星圧延機22は、軸25を中心に回転自在に設けられたロータ26と、このロータ26と軸芯を同じくするが回転はしない車輪状レール27と、その円周上に等間隔に支持された複数(図2では、8個)の遊星圧延ロール21とからなる。
【0041】
車輪状レール27の平盤状V型ダイス10と対向する部分は、その平盤状V型ダイス10とほぼ同じ長さの直線部28となっている。この直線部28は、遊星圧延機22の軸芯と対称の位置になるように設けられている。従って、平盤状V型ダイス10も遊星圧延機22の軸芯と対称の位置になるように設けられている。
【0042】
遊星圧延機22の円周上に等間隔に支持された8個の遊星圧延ロール21は、その軸芯がロータ26の軸25に対してその放射方向に動き得るように弾性部材29により弾性的に支持されている。弾性部材29としては、例えば圧縮バネや引張バネ、流体圧シリンダ、ゴム等を用いる。
【0043】
なお、遊星圧延ロール21の数は、8個に限定されるものではなく、所望に応じて適宜変更可能である。
【0044】
次に、この異形断面条製造装置20を用いた異形断面条の製造方法を説明する。
【0045】
平盤状V型ダイス10と遊星圧延機22との間に銅などからなる平板状条材23を供給(導入)することにより、平板状条材23を連続的に押圧プレス加工する。
【0046】
そして、図3に示したように、その押圧プレス加工した後に平板状条材23を平盤状V型ダイス10の先端(V字先端)から末広がりの後方(図1〜3の白抜き矢印の方向)へと移動させる前方張力を加える。この動作を所定の長さごとに繰り返すことにより、平板状条材23のうち平盤状V型ダイス10の溝部12を通過した部分を厚板部30となし、平盤状V型ダイス10の突起部11a,11bを経由した部分(つまり、平板状条材23の左右両脇の部分)を薄板部31となして、長手方向全長に亘って略直線的に連続した異形断面形状を有する異形断面条32が形成される。
【0047】
この異形断面形状の加工プロセスでは、加工対象の平板状条材23が平盤状V型ダイス10の突起部11a,11bに沿って、そのV字の先端から後方へと末広がりに圧延されていくことで、平板状条材23のうち突起部11a,11bを経由した部分は薄板部31となる。
【0048】
他方、平盤状V型ダイス10の溝部12では、突起部11a,11bが設けられておらず、底面が平坦な基面14a,14bと連続した平面となっているのであるから、この溝部12を通った部分の平板状条材23は、突起部11a,11bよりも圧延量が少ないままに平盤状V型ダイス10を通過する。従って、この部分が厚板部30となる。
【0049】
このようにして、厚板部30と薄板部31とを幅方向に混在するように形成してなる段付きの異形断面条32が、高い生産性で製造される。
【0050】
以上のような方法で製造された異形断面条32は、通常、形状安定化のため、その後、圧延機で仕上げ圧延が行われ、製品幅にスリット、洗浄や歪除去の処理が行われたのち完成となり、リードフレーム材として使用される。
【0051】
このように加工が行われるが、小さい表面粗さが要求される異形断面条32の裏面であって薄板部31と厚板部30との境界部34は、圧延により平板状条材23を異形断面条32に加工する際、長手方向と幅方向に延ばされるため、材料が欠乏しやすい状況になり、平盤状V型ダイス10と遊星圧延ロール21によって十分なリダクションで加工できないため、表面粗さが粗くなりやすい。
【0052】
また、要求される形状、例えば薄板部31と厚板部30とからなる段差部33が大きい形状や薄板部31が厚板部30の幅に比べて大きい形状の場合等には、境界部34の表面粗さが大きくなりやすく、場合によっては亀裂が入ることもある。
【0053】
そこで、本発明においては、形状によらず安定して表面粗さを小さくする方法として、砥粒を含有した砥石、具体的には砥粒を保持するボンド材として銅よりも柔らかい材質、例えばゴムを使用したゴム砥石を用いて、境界部34に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域を長手方向に亘って形成するようにした。
【0054】
この領域は、他の部分と比べて十点平均粗さRzが0.1μm以上異なることが好ましく、更に十点平均粗さRzが0.8μm以下であることが望ましい。十点平均粗さRzを0.1μm以上異ならせる理由は、意図的に加工した領域と判断するに際し、目視で差異が確認できるようにするためであり、十点平均粗さRzを0.8μm以下とする理由は、この範囲が経験から機能上の特性を満たす範囲だからである。なお、十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994で定められた規格である。
【0055】
このゴム砥石を用いた加工は、平板状条材23を圧延加工して表面に薄板部31と厚板部30とからなる段差部33を形成した後、仕上げ圧延を行う際に実施する。
【0056】
具体的には、図4に示すように、異形断面条32が巻き付けられると共にこれを送り出すアンコイラ41と、送り出された異形断面条32を水平に保つ1組のロール42a,42bと、このロール42a,42b間に配置された4段圧延機43と、4段圧延機43の前段又は後段(図4では後段)に配置されたゴム砥石44と、加工した異形断面条32を巻き取るリコイラ45とからなる仕上げ圧延装置40を用い、仕上げ圧延前又は後(図4では後)に、砥粒を含有したゴム砥石44を材料進行方向とは逆の方向に回転させて(図5参照)、境界部34に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域61を長手方向に亘って形成する(図6参照)。
【0057】
この加工のタイミングは仕上げ圧延前でも効果はあるが、仕上げ圧延後又はそれ以降の工程で実施する方がより表面粗さを小さくできるため望ましい。また、表面粗さを小さくしたい箇所が2箇所以上ある場合にはゴム砥石44を2個用意するか、同じ面であれば幅広のゴム砥石44を段付きに加工することで対応可能である。
【0058】
なお、砥石の種類としては、ゴム砥石44以外にもメタル、レジン、ビトリファイ等を用いた砥石でも砥粒径が小さければ表面粗さを低減することができる。しかし、この場合には仕上げ圧延後に加工を行うと、加工した境界に0.1μm以上の段差が生じてしまうため、仕上げ圧延前に行うことが好ましい。
【0059】
また、表面粗さを小さくする場合のみならず、表面粗さを大きくしたい領域がある場合には、仕上げ圧延前に砥粒を保持するボンド材として、メタル、レジン、ビトリファイ等を用い、砥粒径の大きい砥石を用いて、その領域を荒らすことで可能となる。これを仕上げ圧延後に行うと、加工した境界に段差が生じてしまうため好ましくない。
【0060】
これらの手法を組み合わせることにより、リードフレーム材に局所的に表面粗さの大きい箇所と小さい箇所とを混在させることも可能である。
【0061】
以上説明した異形断面条及びその製造方法によれば、表面粗さの低減による品質向上を図り、且つ、表面粗さ不良を防止して製造コストを低減することができる。また、リードフレーム材の表面粗さが低減されることで、めっき性やマーキングの読み取り性が良好になり、歩留まりを向上させることができる。
【実施例】
【0062】
(実験1)
図2で説明した異形断面条製造装置20を用い、段付きの異形断面条32(材質:C1020、厚板部の厚さ:2mm、厚板部の幅:20mm、薄板部の厚さ:0.5mm、薄板部の幅(片側):40mm、断面積:80mm2)を製造した。その後、炉内温度800℃、ライン速度15m/minで焼鈍による調質を行った。次に、図4で説明した仕上げ圧延装置40を用い、最終的な形状に整える仕上げ圧延工程の圧延後に幅10mm、φ60の粒度#800のダイヤモンド砥粒を含有したゴム砥石44を材料進行方向と平行に、また材料進行方向と逆方向に回転するようにセットした(図4,5参照)。そして、圧延速度50m/minで仕上げ圧延を実施し、圧延出側で圧延速度の3倍の周速度で材料進行方向と逆方向にゴム砥石44を回転させた場合のサンプルを作製した。また、ゴム砥石44を用いなかった場合のサンプルも作製し、これらサンプルの表面粗さを比較した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表面粗さの測定は、株式会社東京精密社製の触針式表面粗さ測定器を用いてJIS B0651−1996に基づき行い、表面状態を観察した。得られたプロファイルを基にJIS B0601−1994の十点平均粗さRzにて比較を行った。このとき測定距離は10mmで行った。
【0065】
その結果、ゴム砥石44を用いて加工した方が表面粗さは良好であった。また、ゴム砥石44で加工した境界に段差は確認できなかった。
【0066】
また、ゴム砥石44を使用して作製したサンプルを電解脱脂、酸洗処理の順に処理し、その後、表2に示すようなめっき液組成及びめっき作業条件にて、厚さが凡そ0.5μmのニッケルめっきを施した。
【0067】
【表2】

【0068】
そして、得られた試料中の任意に選んだ1mm2のエリア内にめっき未着部がないか顕微鏡にて観察した。その結果、めっき未着部がなく、めっき性が良好であることが確認できた。
【0069】
(実験2)
図2で説明した異形断面条製造装置20を用い、段付きの異形断面条32(材質:C1020、厚板部の厚さ:2mm、厚板部の幅:20mm、薄板部の厚さ:0.5mm、薄板部の幅(片側):40mm、断面積:80mm2)を製造した。その後、炉内温度800℃、ライン速度15m/minで焼鈍による調質を行った。次に、図4で説明した仕上げ圧延装置40を用い、最終的な形状に整える仕上げ圧延工程の圧延後に幅10mm、φ100の粒度#2000のダイヤモンド砥粒を含有したレジン砥石を材料進行方向と平行に、また材料進行方向と逆方向に回転するようにセットした。そして、圧延速度50m/minで仕上げ圧延を実施し、圧延出側で圧延速度の3倍の周速度で材料進行方向と逆方向にレジン砥石を回転させた場合のサンプルを作製した。また、レジン砥石を用いなかった場合のサンプルも作製し、これらサンプルの表面粗さを比較した。その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表面粗さの測定は、株式会社東京精密社製の触針式表面粗さ測定器を用いてJIS B0651−1996に基づき行い、表面状態を観察した。得られたプロファイルを基にJIS B0601−1994の十点平均粗さRzにて比較を行った。このとき測定距離は10mmで行った。
【0072】
その結果、レジン砥石を用いて加工した方が表面粗さは良好であった。また、レジン砥石で加工した境界に1μm以上の段差が生じている箇所が確認できた。
【0073】
また、レジン砥石を使用して作製したサンプルを電解脱脂、酸洗処理の順に処理し、その後、表4に示すようなめっき液組成及びめっき作業条件にて、厚さが凡そ0.5μmのニッケルめっきを施した。
【0074】
【表4】

【0075】
そして、得られた試料中の任意に選んだ1mm2のエリア内にめっき未着部がないか顕微鏡にて観察した。その結果、めっき未着部がなく、めっき性が良好であることが確認できた。
【0076】
以上の結果より、本発明の効果が実証された。
【符号の説明】
【0077】
23 平板状条材
30 厚板部
31 薄板部
32 異形断面条
33 段差部
34 境界部
61 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状条材を圧延加工してなり、表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を備えた異形断面条において、
裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域が長手方向に亘って形成されたことを特徴とする異形断面条。
【請求項2】
前記領域は、前記他の部分と比べて十点平均粗さRzが0.1μm以上異なる請求項1に記載の異形断面条。
【請求項3】
前記領域は、十点平均粗さRzが0.8μm以下である請求項1又は2に記載の異形断面条。
【請求項4】
平板状条材を圧延加工して表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を形成した後、仕上げ圧延を行う異形断面条の製造方法において、
前記段差部の形成後で前記仕上げ圧延前に、砥粒を含有した砥石を用いて、裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域を長手方向に亘って形成することを特徴とする異形断面条の製造方法。
【請求項5】
平板状条材を圧延加工して表面に薄板部と厚板部とからなる段差部を形成した後、仕上げ圧延を行う異形断面条の製造方法において、
前記仕上げ圧延前又は後に、砥粒を含有したゴム砥石を用いて、裏面であって前記薄板部と前記厚板部との境界部に、他の部分とは表面粗さの異なる5mm以上の幅を有する領域を長手方向に亘って形成することを特徴とする異形断面条の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39614(P2013−39614A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179643(P2011−179643)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】