説明

畳及びその敷き込み構造

【課題】白蟻による侵食を防止し、芯材をなす合成樹脂発泡体を健全な状態に維持できる畳及びその敷きこみ構造を提供する。
【解決手段】芯材の上面が畳表によって覆われた畳において、前記芯材の少なくとも下層は合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畳及びその敷き込み構造の技術分野に属し、更に云うと、防蟻性に優れた畳及びその敷き込み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畳は芯材(畳床)の全てを藁で形成し、この芯材をなす藁の上面に補強板及び緩衝材が積層され、更にその上面が畳表によって覆われた構成であった。芯材として藁を用いると、重くて、取り回しが悪く、特に都会などの狭い住居に敷き込むのは不便であった。また、ダニが発生しやすい問題点があった。
【0003】
そこで、近年、芯材として合成樹脂発泡体を用いた畳が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−307024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の畳は、特に合成樹脂発泡体をポリスチレン系樹脂発泡体で形成した場合に、同ポリスチレン系樹脂発泡体が白蟻に侵食されやすい。つまり、ポリスチレン系樹脂発泡体に白蟻の侵食による蟻道が形成され、畳全体の強度が低下する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、白蟻による侵食を防止し、芯材をなす合成樹脂発泡体を健全な状態に維持できる畳及びその敷きこみ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る畳は、
芯材の上面が畳表によって覆われた畳において、
芯材の少なくとも下層は合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の畳において、
芯材の全ては合成樹脂発泡体で構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の畳において、
畳表は、畳の下面から所定の高さを開けて、芯材の側壁面を覆っていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載の畳において、
合成樹脂発泡体は複数の層から成り、少なくとも最下層に防蟻剤が含有されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した畳において、
防蟻剤が含有されている合成樹脂発泡体の厚さは、芯材の側壁面の露出部より厚いことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明に係る畳の敷き込み構造は、
芯材の上面が畳表によって覆われた畳の敷き込み構造において、
芯材の少なくとも下層は合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されていること、
隣接する畳相互の突合せ部に防蟻目地材が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る畳は、芯材の少なくとも下層が合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されている。そのため、芯材をなす合成樹脂発泡体が白蟻に侵食されることがなく、前記芯材を健全な状態に維持できる。
【0014】
特に、芯材の全てを合成樹脂発泡体で構成すると、芯材として藁を用いないので、ダニの発生を抑制することができる。しかも、軽量で取り回しやすく、都会などの狭い住居に敷き込む際に便利である。
【0015】
そして、上記畳を用いた敷き込み構造は、隣接する畳相互の突合せ部に防蟻目地材が配置されている。そのため、床側からの白蟻の侵食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<実施形態1>
先ず、本発明に係る畳の実施形態1を図1に基いて説明する。
【0017】
この畳1は、通例の畳と略同様に、芯材2の上面に補強板3及び緩衝材4が積層され、更にその上面が畳表5によって覆われている。そして、芯材2の下面は裏面シート6によって覆われた構成とされている。
【0018】
本実施形態の畳1は、芯材2の全てが合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されている(請求項1及び2記載の発明)。そのため、芯材2である合成樹脂発泡体が白蟻に侵食されることがなく、前記芯材2を健全な状態に維持できる。また、芯材2の全てを合成樹脂発泡体で構成し、つまり芯材として藁を用いていないので、ダニの発生を抑制することができる。しかも、軽量で取り回しやすく、都会などの狭い住居に敷き込む際に便利である。
【0019】
芯材2をなす合成樹脂発泡体としては、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの合成樹脂を好適に用いることができる。特に押出発泡ポリスチレン(商品名「スタイロフォーム」:ダウ化工(株)製)は、高い圧縮強度及び低い吸水性を有するので好都合である。
【0020】
前記合成樹脂に、後述する防蟻剤が0.05〜10.00重量%の範囲で含有されている。本実施形態では、ポリスチレン樹脂に防蟻剤としてケミホルツ社製「ケミホルツターマイトIMパウダー」を0.1重量%添加した混合物を押出機に供給し、物理発泡剤を注入し、溶融混合後、押出発泡成型して作製した合成樹脂発泡体を用いた。
【0021】
防蟻剤としては、通例、住宅などの白蟻対策に使用される防蟻剤の中から、合成樹脂への配合に適した防蟻剤を好適に用いることができる。例えば、
カーバメート系:カルバリル、フェノルカルブ、プロポクスル
ピレスロイド系:アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフォノトリン、プラレトリン
ピレスロイド様化合物:エトフェンプロックス、シラフルオフェン
トリアジン系:トリプロプルイソシアソーネ(TPIC)
クロルフェノール系:4−ブロモ−2,5−ジクロルフェノール(BDCP)
クロルニコチル系:イミダクロプリド、アセタミプロド、クロチアニジン
天然物系:カプリン酸、ヒバ中性油、ウコン
その他の化合物:プレトリン、オクタクロロジプロピルエーテル、フィプロニル
からなる防蟻剤を挙げることができ、上記の防蟻剤を単独或いは複数を併合して使用することができるが、特にビフェントリン、シフォノトリン、イミダクロプリド、シラフルオフェンが好ましい。
【0022】
補強板3としては、例えば、木製単板、ベニア等の合板、木質系繊維板等を用いることができる。
【0023】
緩衝材4としては、厚みが2mm程度のポリエチレン系樹脂等からなる発泡シートを用いるが、クッション性を有する材料であれば特に限定されず、その他の発泡プラスチックシートや繊維材料からなる不織布やフェルト状物等を用いることができる。
【0024】
畳表5としては、例えば、い草からなる畳表、合成繊維を織った畳表や合成樹脂の表面に畳の目を型押ししたシート状の畳表等を用いることができる。なお、畳表5は畳1の下面から所定の高さH(10mm〜25mm程度)を開けて、芯材2の側壁面を覆っていることが好ましい(請求項3記載の発明)。畳1の下面からの高さHを10mm以下とすると、床側から上ってきた白蟻が、敷き込んだ畳の畳表に沿って更に上っていき、補強板3及び緩衝材4、ならびに表面の畳表5を侵食する可能性がある。一方、畳1の下面からの高さHを25mm以上とすると、畳表5が芯材2の側壁面を覆う領域が小さくなり、前記畳表5を芯材2の側壁面に接合するのが困難になる。要するに、白蟻の侵食を防止することができ、且つ畳表5の端部を芯材2の側壁面に接合できるように、高さHが設定されていれば良い。ちなみに、畳表5に覆われていない芯材(合成樹脂発泡体)2の側壁面は露出しているので、更に白蟻の侵食を防止することができる。
【0025】
裏面シート6としては、例えば、紙を使用しないポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂からなるクロスシート等を用いることができる。
【0026】
<実施形態2>
次に、本発明に係る畳の実施形態2を図2に基づいて説明する。
【0027】
この畳11は、上記実施形態1の畳と略同様の構成とされているが、芯材12が合成樹脂発泡体からなる下層12aと藁又は木質系繊維板(タタミボード)等からなる上層12bとの2層構造とされており、前記合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されている。芯材12の少なくとも下層12aを防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体で構成したので、床側からの白蟻の侵食を防止することができ、芯材12を健全な状態に維持できる。また、防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体は高価であるため、畳を安価に製造することができる。
【0028】
なお、図示した畳11も畳表5が、前記畳11の下面から所定の高さHを開けて、芯材12の側壁面を覆っている。このとき、前記芯材12の下層12aをなす合成樹脂発泡体の厚さは、芯材12の側壁面の露出部より厚いことが好ましい(請求項5記載の発明)。防蟻剤の含有されていない上層12bが露出しないので、白蟻の侵食を防止することができる。
【0029】
<実施形態3>
更に、本発明に係る畳の実施形態3を図3に基いて説明する。
【0030】
この畳21は、上記実施形態1の畳と略同様の構成とされているが、芯材22をなす合成樹脂発泡体が下層22aと上層22bとの2層構造(但し、層の数はこの限りでない。)とされており、下層22aに防蟻剤が含有されている(請求項4記載の発明)。芯材22の下層22bを防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体で構成したので、床側からの白蟻の侵食を防止することができ、芯材22を健全な状態に維持できる。また、防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体は高価であるため、畳を安価に製造することができる。
【0031】
なお、図示した畳21も畳表5が、前記畳21の下面から所定の高さHを開けて、芯材22の側壁面を覆っている。このとき、前記芯材22の下層22aの厚さは、芯材22の側壁面の露出部より厚いことが好ましい(請求項5記載の発明)。防蟻剤の含有されていない上層22bが露出しないので、白蟻の侵食を防止することができる。
【0032】
<実施形態4>
本発明に係る畳の敷き込み構造の実施形態を図4に基いて説明する。
【0033】
この畳の敷き込み構造は、上記実施形態1の畳1を敷き込む際に、隣接する畳1と1の相互の突合せ部の下端部に防蟻目地材7を配置している(請求項6記載の発明)。そのため、床側からの白蟻の侵食を防止することができる。なお、防蟻目地材7は、畳1の全周部に配置しても良く、一部に配置しても良い。
【0034】
防蟻目地材7は、防蟻性を有する目地材であれば特には限定されないが、前記防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体を適当な大きさに切断したものが好ましく用いられる。本実施形態では、上方から被さる畳1の側壁面が密着しやすいように、防蟻剤が含有された合成樹脂発泡体を断面二等辺三角形状の棒体(即ち、二等辺三角柱)に切断したものを用い、その高さは、芯材2の側壁面の露出部より高く形成されている。床側から上がってきた白蟻が畳表5の端部に到達することを、確実に防止することができ、ひいては補強板3及び緩衝材4が侵食されることがない。
【0035】
本実施形態では、上記実施形態1の畳1を用いたが、実施形態2の畳11や実施形態3の畳21を用いても好適に実施できる。要するに、畳の芯材の少なくとも下層が合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有された構成であれば良い。
【0036】
上記実施形態は、合成樹脂発泡体2(12、22)の上面に補強板3及び緩衝材4が積層された構成とされているが、補強板3を省略した構成、又は緩衝材4を省略した構成、更には双方を省略した構成でも好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1に係る畳を示した部分拡大断面図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る畳を示した部分拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る畳を示した部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る畳の敷き込み構造における畳の突合せ部を示した部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、11、21 畳
2、12、22 芯材
12a、22a 芯材の下層
12b、22b 芯材の上層
3 補強板
4 緩衝材
5 畳表
6 裏面シート
7 防蟻目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の上面が畳表によって覆われた畳において、
芯材の少なくとも下層は合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されていることを特徴とする、畳。
【請求項2】
芯材の全ては合成樹脂発泡体で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の畳。
【請求項3】
畳表は、畳の下面から所定の高さを開けて、芯材の側壁面を覆っていることを特徴とする、請求項1に記載の畳。
【請求項4】
合成樹脂発泡体は複数の層から成り、少なくとも最下層に防蟻剤が含有されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の畳。
【請求項5】
防蟻剤が含有されている合成樹脂発泡体の厚さは、芯材の側壁面の露出部より厚いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した畳。
【請求項6】
芯材の上面が畳表によって覆われた畳の敷き込み構造において、
芯材の少なくとも下層は合成樹脂発泡体で構成されており、同合成樹脂発泡体に防蟻剤が含有されていること、
隣接する畳相互の突合せ部に防蟻目地材が配置されていることを特徴とする、畳の敷き込み構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−101364(P2008−101364A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283256(P2006−283256)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000109196)ダウ化工株式会社 (69)
【Fターム(参考)】