説明

疎水化処理方法及び疎水化処理装置

【課題】安定して高い疎水性を確保できる疎水化処理方法及び疎水化処理装置を提供すること。
【解決手段】 処理容器内にて、ウエハWに、HMDSガスを供給し、前記ウエハの表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理において、前記疎水化を促進させる反応促進剤として水蒸気をウエハWに供給する工程と、前記処理容器内に搬入されたウエハWを加熱する工程と、加熱されたウエハWの表面に前記水蒸気が吸着している状態で、当該ウエハWの表面に前記HMDガスを供給する工程と、を実施する。前記水蒸気により、HMDS疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素との反応が促進され、安定して高い疎水性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して疎水化処理を行う疎水化処理方法及び疎水化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやLCD基板等の製造プロセスにおける、レジストパターンの形成処理の一連の工程の一つに、基板例えば半導体ウエハW(以下「ウエハ」という)に対する疎水化処理がある。この処理は、ウエハWにレジスト液を塗布する前に、下地膜とレジスト膜との密着性を向上させるために行われるものである。
【0003】
このような疎水化処理は、処理容器内の載置台上にウエハWを載置し、ウエハWを加熱した状態で、処理容器内にHMDS(hexamethyl disilazane)ガスを供給することにより行われる。例えばHMDSガスは、HMDS液の貯留タンクにキャリアガスである窒素(N)ガスを導入して、HMDS液を気化することにより得られ、このガスが前記Nガスと共に処理容器内に供給される。こうして、ウエハWにHMDSガスが供給されることにより、ウエハWの表面に薄膜が形成され、親水性のウエハWの表面が疎水性に変化する。
【0004】
ところで、疎水化処理の評価手法の一つとして接触角の測定が知られている。この手法では接触角が大きい程、疎水性が大きいと判断され、レジストパターンの形成における疎水化処理においても、目的とする接触角が設定されている。ウエハW表面にて目的とする接触角が得られないと、下地膜とレジスト膜との密着性が不十分になってパターン倒れが発生し、結果として歩留まりが低下してしまうからである。
【0005】
上述の手法では、通常、載置台温度を90℃、処理時間を30秒程度に設定して疎水化処理が実施されている。この処理条件にて実施すれば、60〜70°程度の接触角を確保することができるが、HMDSガスの劣化等の要因より、目的とする接触角が得られない場合が起こりうる。この際、処理時間を長くすれば、ウエハW表面におけるHMDSガスとの接触時間が長くなるため、疎水化処理が十分に進行し、接触角を大きくすることができる。しかしながら、処理のスループット向上の観点からは、処理時間を長くすることは得策ではなく、処理時間を長くせずに、疎水性を向上させることが好ましい。
【0006】
ところで、特許文献1には、加熱板上に基板を載置して疎水化処理を行う技術が記載されている。この技術によれば、基板の温度を調整することにより疎水性を高めることができるが、より簡易な手法で安定して高い疎水性を確保できる技術の確立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−194239号(図12〜図15等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、安定して高い疎水性を確保できる疎水化処理方法及び疎水化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の疎水化処理方法は、処理容器内にて、ケイ素を含み、表面に水酸基を備えた基板に、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスを供給し、前記基板の表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理方法において、
前記基板の疎水化を促進させる反応促進剤を気化させて基板に供給する工程と、
前記処理容器内に搬入された基板を加熱する工程と、
加熱された基板の表面に前記反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該基板の表面に前記疎水化処理ガスを供給する工程と、を含み、
前記反応促進剤により、疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素との反応を促進させることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記反応促進剤は、水、アンモニア、アミン、アルコールから選択された物質とすることができる。また、前記反応促進剤を気化させて基板に供給する工程は、基板を加熱する前、基板を設定温度に昇温させる途中、及び基板を設定温度に加熱した後の、少なくとも一つのタイミングで実施される。
【0011】
前記反応促進剤の蒸気は、疎水化処理ガスと混合された後、処理容器に供給されるようにしてもよい。また、前記処理容器内に設けられた反応促進剤の液体の貯留部を加熱することにより、前記反応促進剤を気化させるようにしてもよい。さらにまた、前記処理容器内に基板を搬入する前に、当該基板に前記反応促進剤の蒸気を供給するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の疎水化処理装置は、処理容器内にて載置部に載置された、ケイ素を含み、表面に水酸基を備えた基板に、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスを供給し、前記基板の表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理装置において、
前記処理容器に設けられ、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内に前記疎水化処理ガスを供給する疎水化処理ガス供給路と、
前記処理容器内に前記基板の疎水化を促進させる反応促進剤を気化させて供給する反応促進剤供給手段と、を備え、
処理容器内において、加熱された基板の表面に前記反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該基板の表面に前記疎水化処理ガスを供給し、前記反応促進剤により、疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素との反応を促進させることを特徴とする。
【0013】
前記反応促進剤は、水、アンモニア、アミン、アルコールから選択された物質とすることができる。また、前記反応促進剤供給手段は、前記処理容器内に前記反応促進剤の蒸気を供給する反応促進剤供給路として構成してもよい。この際、
前記反応促進剤供給路は前記疎水化処理ガス供給路を兼用しており、前記反応促進剤の蒸気は、疎水化処理ガスと混合された後、処理容器に供給されようにしてもよい。また、前記反応促進剤供給手段は、処理容器内に設けられた反応促進剤の液体の貯留部と、この貯留部を加熱する加熱部と、を含み、当該処理容器内にて反応促進剤を気化させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理容器内にて、ケイ素を含み、表面に水酸基を備えた基板表面と、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスとを接触させて、前記基板表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理において、加熱された基板の表面に反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該基板の表面に前記疎水化処理ガスを供給している。この反応促進剤により、疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素とを結合させて、基板表面に前記疎水基を形成する反応が促進されるので、この疎水化処理を行うことにより、安定して高い疎水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る疎水化処理方法の概略を説明する工程図である
【図2】疎水化処理ガスとしてHMDSガスを用いた場合の疎水化処理を説明する説明図である。
【図3】疎水化処理ガスとしてHMDSガスを用いた場合について、量子化学計算より求めた活性化エネルギーを示す特性図である。
【図4】本発明の疎水化処理装置を用いた疎水化処理システムの一実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明の疎水化処理装置の一実施の形態を示す断面図と平面図である。
【図6】前記疎水化処理システムに設けられる気化ユニットの一例を示す断面図である。
【図7】前記疎水化処理装置の作用を説明するための工程図である。
【図8】本発明の疎水化処理方法を説明するための工程図である。
【図9】疎水化処理システムの他の例を示す構成図である。
【図10】図9に示す疎水化処理システムで実施される疎水化処理方法を説明するための工程図である。
【図11】疎水化処理システムのさらに他の例を示す構成図である。
【図12】疎水化処理システムのさらに他の例を示す構成図である。
【図13】本発明の疎水化処理装置の他の例を示す断面図と平面図である。
【図14】本発明の疎水化処理装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図15】図14に示す疎水化処理装置の作用を説明するための工程図である。
【図16】本発明の疎水化処理装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図17】図16に示す疎水化処理装置の作用を説明するための工程図である。
【図18】本発明の疎水化処理装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図19】水蒸気の供給の他の例を示す構成図である。
【図20】反応促進剤の他の例を示す説明図である。
【図21】前記実施例にて用いられる疎水化処理装置を示す断面図である。
【図22】本発明の効果を確認するために行った実施例を示す特性図である。
【図23】前記実施例の結果を示す特性図である。
【図24】本発明の効果を確認するために行った他の実施例の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明の概要について図1に基づいて説明する。本発明は、ケイ素(Si)を含み、表面に水酸基(OH基)を備えた基板例えばウエハWの表面と、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスとを接触させて、前記ウエハW表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理に関するものである。そして、前記ウエハWの疎水化を促進させる反応促進剤を気化させてウエハWに供給し、加熱されたウエハW表面にこの反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該ウエハWの表面に前記疎水化処理ガスを供給して、ウエハWの表面を疎水化するものである。以下では、前記反応促進剤が水、疎水化処理ガスがHMDSガス:(CHSiNHSi(CH、ウエハW表面に形成される疎水基が−O(CHである場合を例にして説明を進める。
【0017】
図1(a)は、処理容器に搬入されたウエハWを示しており、このウエハW表面のOH基は、クリーンルーム搬送中に吸着した外気中の水分に起因するものである。この処理容器内に、水蒸気とHMDSガスとを供給すると、ウエハ表面には水蒸気が吸着され、この水蒸気が反応促進剤(触媒物質)として作用して、以下の素反応式(1)に示す疎水化反応が進行する。
【0018】
(CHSiNHSi(CH+SiOH→
OSi(CH)+(CHSiNH+・・・(1)
(1)式中のSiOHは、図1(a),(b)に示すように、ウエハWの表面のOH基であり、図1(b)は処理容器内に供給された水蒸気がウエハW表面に吸着された様子を示している。この反応により、図1(c)に示すように、ウエハW表面には疎水基であるOSi(CH)が生成され、ウエハW表面が疎水化される。
【0019】
この疎水化反応では、例えば図2に示すように、HMDSガスのSi―N結合が切断され、Nとの結合が切れたSiはOH結合のOと結合して、疎水基であるOSi(CH)が生成される。一方、OH結合から脱離したHは、切断されたSi―N結合のNと結合して、(CHSiNHが生成される。
【0020】
ここで、水蒸気の介在により疎水化反応が促進される理由については、図3に示すように、水蒸気(HO)が遷移状態に存在すると、水蒸気が存在しない場合よりも反応の活性化エネルギーが低下し、疎水化反応が進行しやすくなるためと考えられる。なお、図3に示す活性化エネルギーは概略値である。
【0021】
そして、水蒸気の存在により活性化エネルギーが小さくなるメカニズムについては、次のように推測される。つまり、HMDS分子は3次元構造であり、HMDSがSiOHと反応するためには、SiOHに対してHMDS分子がある角度になることが必要である。この際、水蒸気が関与した場合には、図3に示すように、遷移状態において、HMDSのNがHOを介してSiOHと結合し、次いで、水素結合が入れ替わって、SiOSi(CHと(CHSiNHを生成すると考えられる。一方、水蒸気が関与しない場合には、遷移状態では、図2に示すように、HMDSのSiとSiOHのOとが反応する。
【0022】
従って、水蒸気が関与する場合には、遷移状態において、SiOHと反応するためのHMDSの角度の自由度が大きくなり、結果として、HMDSのSiとSiOHのOとが反応しやすい状態となるため、活性化エネルギーが低下するものと推測される。
【0023】
ところで、HMDSはHOにより加水分解することが知られている。しかしながら、HOが水蒸気として気相状態で存在する場合には、疎水化処理装置に供給される間に加水分解はほとんど起こらず、後述の実施例でも明らかなように、ウエハW表面にて疎水化処理が速やかに進行する。一方、HOが液相状態で存在すると、HMDSとHOとの衝突確率が高くなり、加水分解が起こってしまう。
【0024】
このことから、HOが液相状態でウエハW上に吸着されたときには、前記加水分解反応が進行するが、ウエハWに吸着されたHOが気相状態でHMDSガスと接触すれば、既述のように触媒物質として作用し、SiOHが存在するところでは、OH除去作用が働いて既述の疎水基が生成されることになる。
【0025】
ところで、前記疎水化処理は、例えばウエハWを予め90℃に加熱された熱板に例えば30秒載置することにより行われ、ウエハWへの水蒸気の供給は、ウエハWを加熱する前、ウエハWを設定温度である90℃に昇温させる途中、及びウエハWを設定温度に加熱した後の、少なくとも一つにタイミングで実施される。
【0026】
ウエハWを加熱する前に水蒸気を供給するときには、ウエハWを加熱したときには、十分に水蒸気が吸着されており、この状態でウエハWの表面にHMDSガスが供給される。水蒸気が存在すると、既述のように活性化エネルギーが小さくなることから、ウエハWの温度が設定温度よりも低い状態でも疎水化反応が起こり、ウエハWが昇温される間に、十分に疎水化反応が進行する。また、ウエハWを設定温度に昇温させる途中に水蒸気を供給するときにおいても、既述のようにウエハWの温度が設定温度よりも低い状態でも疎水化反応が起こることから、その後ウエハWが昇温される間に、十分に疎水化反応が進行する。
【0027】
さらに、ウエハWを設定温度に加熱した後に、水蒸気を供給する場合には、設定温度が90℃であるので、ウエハWに吸着された水蒸気は揮発するものもあるが、水蒸気を継続して供給しているので、ウエハW表面には常に水蒸気が吸着されている状態になる。そして、この吸着された水蒸気により疎水化反応が促進される。この際、前記疎水化処理は、例えばウエハWを設定温度に加熱したときに反応速度が大きくなることから、水蒸気の供給により、さらに疎水化反応が速やかに進行する。
【0028】
従って、疎水化反応促進に寄与する水蒸気は、ウエハW表面に水蒸気が吸着している間に、HMDSガスとウエハW表面とが接触するように供給されればよく、HMDSガスのキャリアガスに水蒸気を混合させて処理容器の外部から処理容器に供給してもよいし、水蒸気を気化器により発生させて、直接処理容器に供給してもよい。また、処理容器に搬入される前のウエハWに水蒸気を吸着させ、次いでこのウエハWを処理容器に搬入するようにしてもよい。さらに、処理容器の内部にて水蒸気を発生させるようにしてもよい。
【0029】
但し、既述のようにHOが液相状態でHMDSガスと接触すると、前記加水分解反応が進行してしまうし、水によりHMDSガスとウエハWとが接触しにくい状態になる。このため、HMDSガスが存在する処理容器内や、HMDSガスと水蒸気とを共通の供給路にて処理容器に供給するときには、この供給路内にて水蒸気を結露させないことが要求される。
【0030】
また、処理容器内においては、ウエハWの表面に水蒸気が吸着していても、ウエハWを加熱すると、その一部は蒸発してしまう。このため、ウエハW表面に水蒸気が吸着している間に、HMDSガスとウエハW表面とが接触するように、HMDSガスの処理容器への供給タイミングや、HMDSガス濃度、水蒸気の供給タイミングや、ウエハWの昇温の仕方が決定される。例えばウエハWを加熱した後に、処理容器に水蒸気を供給する場合には、HMDSガス濃度を高くすることにより、十分に疎水化反応を促進させることができる。
【0031】
さらに、水蒸気の供給量については、後述の実施例により、水蒸気の供給量が多ければ、より高い疎水性を確保できることが認められている。但し、水蒸気の供給量が多くなると、処理容器内にて結露するおそれがあるため、ウエハWの加熱温度や、処理時間等の処理条件によって、処理容器が結露しないように適切な水蒸気の供給量が設定される。
【0032】
以下に、具体的な水蒸気の供給方法について、図面を参照して説明する。図4は、本発明の疎水化処理装置を備えた疎水化処理システムの一実施の形態を示す構成図である。
【0033】
本発明では、水蒸気を処理容器に添加する手法として、
(1)Nガスを水蒸気のキャリアガスとして使用し、HMDSガスと合流して処理容器に供給する例。
(2)HMDSガスを水蒸気のキャリアガスとして使用する例。
を採用しており、以下に夫々の例に分けて説明する。図4に示す例は、Nガスを水蒸気のキャリアガスとして使用する場合である。
【0034】
図4中、1はHMDS液を貯留する貯留タンクであり、この下流側には、ポンプP及びサックバックバルブSVを備えた供給路11を介してHMDS気化ユニット2が設けられている。図中20はHMDS気化ユニット2の温度コントローラである。このHMDS気化ユニット2には、その上流側にバルブAV1を備えた供給路22を介してNガスの供給源21が接続される一方、その下流側には、バルブAV3、フィルタF、濃度センサT、バルブAV4を上流側からこの順序で備えた供給路23を介して疎水化処理ユニット(ADH)3の処理容器が接続されている。なお、図4中点線にて示すように、濃度センサTと疎水化処理ユニット3との間に、供給路23から分岐する供給路24を設けるようにしてもよい。AV7は、供給路24に設けられたバルブである。
【0035】
図中4はHO気化ユニットであり、この上流側は、バルブAV8を備えた供給路41を介してNガスの供給源42に接続される一方、その下流側は、切り替えバルブAV9を備えた供給路43を介して、前記供給路23の濃度センサTの下流側に接続されている。また、この供給路43はバルブAV10を備えた供給路44を介してNガスの供給源45に接続されている。
【0036】
さらに、前記疎水化処理ユニット3の処理容器は排気路51を介して排気されており、この排気路51は、バルブAV2、バルブAV5を備えた供給路52によりパージガスであるNガスの供給源5に接続されている。この供給路52は、前記供給路23にも接続されている。さらにまた、切り替えバルブAV9は排気路51に接続された排気路53に切り変え接続するように構成されている。また、既述の供給路23のバルブAV4の上流側は、バルブAV6を備えた排気路54により、前記排気路53に接続されている。ここで、図4中、2重線で囲んだ領域は、HMDSガスや水蒸気の結露を抑制するために、例えばヒータよりなる加熱手段が巻回され、HMDSガスや水蒸気が結露しない程度の温度に温度調整されている。
【0037】
そして、濃度センサTの検出値は後述する制御部100に出力され、制御部100では、濃度センサTの検出値に基づいて、ポンプP及びHMDS気化ユニット2の温度コントローラ20に制御信号を出力するように構成されている。例えば濃度センサTの検出値が設定値よりも低い場合には、ポンプPによりHMDS液の流量を増加したり、HMDS気化ユニット2の温度を上昇させるように制御が行われる。
【0038】
続いて、本発明の疎水化処理装置である疎水化処理ユニット3の一実施の形態ついて図5を参照しながら説明する。図中30は処理容器であり、その一端側はウエハWの搬送口31として開口していて、シャッタ32により開閉自在に構成されている。図5においてはシャッタ32が閉じている状態を示しているが、この例ではシャッタ32が閉じているときであっても、僅かに外気の取り込み用の隙間が開口するように構成されている。
【0039】
処理容器30の内部には、ウエハWの載置部をなす熱板33が、その周囲をサポートブロック34にて支持されるように設けられている。この熱板33は図示しない例えばヒータよりなる加熱部を備えていて、本発明の基板を加熱する加熱手段に相当する。また、この熱板33には、外部の搬送手段と、熱板33との間でウエハWの受け渡しを行なうときに用いる突き上げピン機構35が設けられている。さらに、処理容器30の天井部には、水蒸気の結露を防止するために例えばヒータよりなる加熱手段36が内蔵されている。
【0040】
前記処理容器30の天井部には、前記搬送口31の近傍に、ガス吐出部37が設けられている。このガス吐出部37は、例えば搬送口31の幅方向(図5(b)中Y方向)に沿って、ウエハWの直径をカバーするように形成されている。図中37aはガス吐出部37に接続されたガス供給部であり、このガス供給部37aには、既述の供給路23(さらには供給路24)の一端側が接続されている。
【0041】
この例では、供給路23(さらには供給路24)を介して、処理容器30内に反応促進剤の蒸気及び疎水化処理ガスが供給される。従って、当該供給路23が、処理容器30内に疎水化処理ガスを供給する疎水化処理ガス供給路に相当する。また、この例では、処理容器30内に反応促進剤を気化させて供給する反応促進剤供給手段として、処理容器30内に前記反応促進剤の蒸気を供給する反応促進剤供給路が設けられており、反応促進剤供給路は疎水化処理ガス供給路と共通の供給路23として構成されている。
【0042】
前記処理容器30の天井部には、前記熱板33上に載置されたウエハWを挟んで前記ガス吐出部37と対向するように吸引排気口38が形成されている。この吸引排気口38は、例えば搬送口31の幅方向に沿って、ウエハWの直径をカバーするように設けられている。図中38aは吸引排気口38に接続された排気部であり、この排気部38aには、既述の排気路51が接続されている。これらガス吐出部37や吸引排気口38はスリット状に形成してもよいし、小孔を一定の間隔で配列して形成してもよい。この例では、前記吸引排気口38、排気部38a、排気路51により、処理容器30内を排気する排気手段が構成されている。
【0043】
続いて、HMDS気化ユニット2及びHO気化ユニット4について、図6を用いて簡単に説明する。これらは同様に構成されるので、HO気化ユニット4を例にして説明する。HO気化方式としては、水を溜めてキャリアガスを流入もしくはバブリングさせて気化させる方法や、圧力一定のまま温度を上昇させて気化させる方法、予め水を加熱しておき、一気に圧力を下げて気化させる方法、水と加熱したキャリアガスとを出口手前の気液混合部で混合し、出口を通るときに、減圧して気化する方法等種々の手法を用いることができる。
【0044】
また、気化量を制御する手法としては、図6に掲げる手法が用いられる。例えば図6(a)に示す例では、処理容器400に水を溜め、加熱温度を調整することにより気化量の制御を行うものであり、例えば、図4の疎水化処理システムではこの方式のHMDS気化ユニット2及びHO気化ユニット4が採用されている。この例では、処理容器400内に供給路411を介して図示しないポンプにより所定量の水を送液し、処理容器400の周囲に設けられたヒータよりなる加熱手段420により加熱することにより気化させる。この処理容器400には供給路41を介してキャリアガスこの例ではNガスが常時導入されており、気化した水蒸気は、Nガスと共に供給路43を介して処理容器400から流出していく。図中412は、処理容器61内に水を過剰に供給した際に排出する排出路である。
【0045】
なお、HMDS気化ユニット2においても、同様に構成され、処理容器400内に供給路11を介してポンプPにより所定量のHMDS液を送液し、処理容器400の周囲に設けられたヒータよりなる加熱手段420により加熱することにより気化させるように構成されている。そして、処理容器400には、供給路22を介してキャリアガスであるNガスが常時導入され、処理容器400内にて気化したHMDSガスは、Nガスと共に供給路23を介して処理容器400から流出していく。この際、温度コントローラ20により、前記加熱手段420の温度制御が行われるようになっている。
【0046】
また図6(b)に示す例は、処理容器400に水を滴下し、この滴下量を調整することにより、HO気化量の制御を行うものである。この例では、処理容器400内に、マスフローコントローラやポンプにより、制御された流量の水を滴下し、処理容器400の周囲に設けられた加熱手段420により加熱することにより気化させており、処理容器400の加熱温度と水の滴下量とより、HO気化量を制御している。処理容器400には供給路41を介してキャリアガス、この例ではNガスが常時導入されており、気化した水蒸気は、Nガスと共に供給路43を介して処理容器400から流出していく。処理容器400内には、気化を促進するフィン構造を設けるようにしてもよい。
【0047】
図6(a)、(b)に示す処理容器400としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)など熱伝導率の高い材料を使用することが好ましい。また、HMDSガスを水蒸気のキャリアガスとして使用する場合は、処理容器400内にHMDSガスが残留して加水分解が進行し、疎水化を阻害するアンモニア(NH)が発生しないように、疎水化処理中以外もNガスを常時当該HO気化ユニット4に導入することが好ましい。なお、処理容器400を加熱する加熱手段は、処理容器400の下に設けられた加熱プレートであってもよい。
【0048】
図6(c)の構成は、処理容器400に水を溜め、減圧制御により、HO気化量の制御を行うものである。この例では、処理容器400内に、供給路411を介して図示しないポンプにより所定量の水を送液し、処理容器400の周囲に設けられた加熱手段420により処理容器400を加熱する。一方、処理容器400には、気化された水蒸気を流出させるための流路431が設けられ、この流路431には、エゼクタ部430を介して、キャリアガスであるNガスの供給路41,43が接続されている。そして、このキャリアガスの通流によりエゼクタ部430にて発生するエゼクタ効果によって、処理容器400内を流路431を介して減圧し、加熱手段420による加熱と合わせて水を気化する。気化された水蒸気は、前記キャリアガスの通流によるエゼクタ効果により流路431から吸い込まれ、供給路43からキャリアガスと共に流出していく。この手法では、HMDSガスを水蒸気のキャリアガスとして使用する場合であっても、処理容器400内にHMDSガスが侵入しにくいという利点がある。なお、処理容器400を加熱する加熱手段は、処理容器400の下に設けられた加熱プレートであってもよい。
【0049】
また、HMDSの気化においては、気化フィルタを用いて、気化フィルタの温度制御と、HMDS液供給量の制御により、気化量を制御する方式を用いるようにしてもよい。
【0050】
前記疎水化処理システムは制御部100により制御されるように構成されている。この制御部100は例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUを備えている。前記プログラムには制御部100から疎水化処理システムの各部に制御信号を送り、所定の疎水化処理を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0051】
続いて、上述の疎水化処理装置にて行われる本発明の疎水化処理方法について、図7及び図8を参照して説明する。先ず、HMDS気化ユニット2及びHO気化ユニット4の温調を開始する(ステップS1)。次いで、ポンプPを作動させてHMDS液貯留タンクから所定量のHMDS液をHMDS気化ユニット2に供給する(ステップS2)。次いで、HO気化ユニット4では、既述のように、HOの気化量制御を行う(ステップS3)。
【0052】
続いて、バルブAV1、AV3、AV4、AV8、AV9を開く。これによりN源21からのNガスをキャリアガスとしてHMDS気化ユニット2にて発生したHMDSガスが供給路23を介して疎水化処理ユニット3に供給されると共に、N源42からのNガスをキャリアガスとしてHO気化ユニット4にて発生した水蒸気が供給路43,23を介して疎水化処理ユニット3に供給される(ステップS4、図7(a))。つまり、HMDSガスと水蒸気は供給路23にて合流されて、キャリアガスであるNガスにより、疎水化処理ユニット3に供給される。このとき、HMDSガスは濃度センサTにより、常時所定のタイミングで濃度測定されており、この検出値に基づいて、ポンプPやHMDS気化ユニット2の温度コントローラ20がフィードバック制御され、HMDSガス中の水蒸気の濃度が所望の濃度になるように、HMDSガス濃度が制御されている。
【0053】
なお、図7(a)に示すように、処理容器30はシャッタ32が閉じられ、例えば5〜15L/min程度の排気量で排気されている。この際、既述のようにシャッタ32が閉じているときであっても、外気取り込み用の隙間が形成されているので、処理容器30内には外気が入り込み、これにより外気中に含まれる水分が処理容器30内に取り込まれる。なお、水蒸気濃度を安定させるために、疎水化処理の開始前に、バルブAV1,AV3、AV6,AV8,AV9を開いて、HMDSガス及び水蒸気を供給路23、排気路54,53を介して排気するようにしてもよい。
【0054】
次いで、シャッタ32を開いて、ウエハWを図示しない外部の搬送機構により搬送口31を介して処理容器30内に搬入する(ステップS5、図7(b))。そして、突き上げピン機構35を用いてウエハWを熱板33上に受け渡し、シャッタ32を閉じる。この際、処理容器30内には予めHMDSガス及び水蒸気が供給されていることから、ウエハWはその表面にHMDSガス及び水蒸気が吸着されながら処理容器30内に搬入され、予め90℃に加熱された熱板33上に受け渡されることになる。
【0055】
続いて、図7(c)に示すように、疎水化処理を行う(ステップS6)。この疎水化処理では、ウエハWを熱板33により加熱しながら、処理容器30内にガス吐出部37よりHMDSガス及び水蒸気を供給する一方、処理室30内を5〜15L/min程度の排気状態で排気する。こうして、ウエハWが熱板33に載置されてから15秒〜30秒程度疎水化処理を行う。ここで、処理容器30内には、ガス吐出部37と吸引排気口38とがウエハWを挟んで対向するように設けられていることから、搬送口31側から吸引排気口38側へと一方向に流れる気流が形成される。
【0056】
次いで、図7(d)に示すように、バルブAV1,AV3,AV4,AV8,AV9を閉じ、バルブAV2,AV4,AV10(又はバルブAV2,AV7,AV10)を開いて、処理容器30内にパージ用のNガス源5から供給路52,23(又は供給路52,24)を介してNガスを供給すると共に、Nガス源45から供給路44,23(又は供給路44,24)を介してNガスを供給する。こうして、処理容器30内のNパージを開始すると共に(ステップS7)、シャッタ32を開いて、ウエハWを搬出する(ステップS8)。
【0057】
ウエハWの搬出終了後、シャッタ32を閉じ、処理容器30内にパージ用のNガスを引き続き供給して、置換処理を行う(図7(e)、ステップS9)。この置換処理を行うときには、処理容器30内を例えば30〜100L/min程度の高排気状態で排気するようにしてもよい。そして、処理容器30内がNガスで置換された後、バルブAV2,AV4,AV10(又はバルブAV2,AV7,AV10)を閉じ、バルブAV1,AV3,AV5を開いて、Nガスを供給路22,23,52,排気路51を介して通流させ、これら供給路内に残存する残留HMDSを排出する(ステップS10)。なお、処理中以外は、バルブAV8を開き、Nガスを常時HO気化ユニット4及び供給路43,23を介して疎水化処理ユニット3に供給し、排気路51を介して排出するようにしてもよい。
【0058】
このような疎水化処理方法では、水蒸気をHMDSガスと共に処理容器30に供給しているので、既述のように、水蒸気が反応促進剤(触媒)として作用し、疎水化処理を促進させる。このため、水蒸気を供給するという簡易な手法で、熱板温度が90℃、疎水化処理時間が30秒の処理条件下でも、常に65°以上の接触角を得ることができ、この疎水化処理を行うことにより、高い疎水性を確保することができる。
【0059】
また、Nガスをキャリアガスとして用いてHMDSガスと水蒸気とを処理容器30の手前で合流させてから、処理容器30に供給しているので、配管中で水蒸気が結露し、ここをHMDSガスが通流して、HMDSガスが加水分解されるおそれがなく、安定した状態で水蒸気とHMDSガスを処理容器30内に導入することができる。
【0060】
さらに、ウエハWを処理容器30に搬入する前から処理容器30にはHMDSガスを供給し、ウエハWが熱板33に受け渡される前に、処理容器30内をHMDSガス雰囲気に設定することができる。このため、ウエハWを処理容器30に搬入する際にも、HMDSガスがウエハW表面に接触するため、ウエハW表面に水分が吸着している間に確実にHMDSガスとの反応を開始させることができる。これにより、ウエハW表面に吸着している水分を十分に疎水化反応に寄与させることができる。
【0061】
また、予め処理容器30内はHMDSガス雰囲気となっていることから、ウエハWの加熱開始時には、ウエハW表面全体がHMDSガスと接触している。このため、ウエハWに吸着した水蒸気がウエハWの加熱により揮発してしまう前に、ウエハW全面において疎水化処理が行われ、確実に反応促進剤の存在下で疎水化処理を行うことができる。
【0062】
さらに、ウエハWを処理容器30に搬入した後も、引き続き処理容器30にHMDSガス及び水蒸気を導入しているので、ウエハW表面には水蒸気が常に供給され、ウエハW表面に水分が吸着している状態でHMDSガスと反応させることができる。
【0063】
なお、シャッタ32の外気取りこみ隙間より、処理容器30内に室温で湿度40%RH程度の水分を含んだ外気を処理容器30内に取りこむことができる。外気中の水分は、処理容器30内が加熱されていることから水蒸気となってウエハWに吸着されるので、この外気の取り込みによっても、ウエハW表面に水蒸気を供給することができる。
【0064】
また、上述の例では、ウエハWを搬入する前からウエハWを搬入後疎水化処理が終了するまで処理容器30内に水蒸気を供給し続けているが、水蒸気はウエハWを処理容器30に搬入する前のみに処理容器30に供給するようにしてもよいし、ウエハWを処理容器30に搬入している間のみに供給するようにしてもよい。ここでウエハWを処理容器30に搬入している間とは、ウエハWの一端側が処理容器30内に入り、熱板33へのウエハWの受け渡しが終了するまでの間をいう。さらに、ウエハWを処理容器30に搬入した後、ウエハWを設定温度例えば90℃に昇温させる途中のみに水蒸気を供給するようにしてもよい。さらにまた、ウエハWを処理容器30に搬入し、ウエハWを設定温度に加熱した後のみに水蒸気を供給するようにしてもよい。さらにまた、これらのタイミングのいずれかを組み合わせて水蒸気を処理容器30内に供給してもよい。
【0065】
以上において、HMDSガスは、図9に示すように、その内部にHMDS液が供給されたHMDSタンク6を加圧してHMDS液を気化させるものであってもよい。この例では、上述の図4の構成において、HMDS気化ユニット2の代わりにHMDSタンク6が設けられている。このHMDSタンク6には、HMDS液を貯留する貯留タンク1がバルブAV11を備えた供給路61を介して接続されると共に、加圧用のNガス供給源62がバルブAV12を備えた供給路63を介して接続されている。そしてNガスの加圧により発生したHMDSガスがバルブAV13を備えた供給路64、供給路23を介して疎水化処理ユニット3へ送気されるように構成されている。この供給路64には、バルブAV13の下流側にフィルタF、濃度センサTが設けられている。また、パージ用のNガス源5はバルブAV5を備えた供給路52により、供給路64におけるバルブAV13とフィルタFとの間に接続されている。なお濃度センサTの下流側の構成は、図4における濃度センサTの下流側の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0066】
図9中、2重線で囲んだ領域は、HMDSガスや水蒸気の結露を抑制するために、例えばヒータよりなる加熱手段が巻回され、HMDSガスや水蒸気が結露しない程度の温度に温度調整されている。また、濃度センサTの検出値は制御部100に出力され、制御部100では、濃度センサTの検出値に基づいて、HMDSタンク6の温度コントローラ60に制御信号を出力するように構成されている。例えば濃度センサTの検出値が低い場合には、HMDSタンク6の加熱温度を上昇させてHMDS濃度を高めるように制御が行われる。
【0067】
このような疎水化処理システムでは、図10に示すように、先ず、バルブAV11を開いて貯留タンク1からHMDSタンク6に所定量のHMDS液を供給し(ステップS11)、次いでHMDSタンク6の温調を開始する(ステップS12)。この際、バルブAV13,AV6を開いて、過剰なHMDSガスを供給路64、排気路54,53,51を介して排気する。次いで、HO気化ユニット4では、既述のように、HOの気化量制御を行う(ステップS13)。
【0068】
続いて、バルブAV13,AV6を開いたまま、バルブAV12、AV13、AV4、AV8を開き、バルブAV9を供給路43側に切り替える。これによりN源62からのNガスをキャリアガスとしてHMDSタンク6にて発生したHMDSガスが供給路64,23を介して疎水化処理ユニット3に供給されると共に、N源42からのNガスをキャリアガスとしてHO気化ユニット4にて発生した水蒸気が供給路43,23を介して疎水化処理ユニット3に供給される(ステップS14)。このとき、HMDSガスは濃度センサTにより、常時所定のタイミングで濃度測定されており、この検出値に基づいて、HMDSガス中の水蒸気濃度が所定濃度になるように、HMDSタンク6の温度コントローラ60がフィードバック制御される。
【0069】
次いで、ウエハWを搬送口31を介して処理容器30内に搬入する(ステップS15)。そして、突き上げピン機構35を用いてウエハWを熱板33上に受け渡し、シャッタ32を閉じると共に、処理容器30内にガス吐出部37よりHMDSガス及び水蒸気を供給する一方、処理容器30内を排気しながら、疎水化処理を行う(ステップS16)。なお、HO濃度を安定させるために、疎水化処理の開始前に、バルブAV12,AV13、AV6,AV8を開き、バルブVAV9を排出路54側に切り替え、HMDSガス及び水蒸気を供給路64、23、排気路54,53を介して排気するようにしてもよい。
【0070】
この後、バルブAV12,AV13,AV4,AV8,AV9を閉じ、バルブAV4,AV5,AV10(又はバルブAV5,AV7,AV10)を開いて、処理容器30内にパージ用のNガス源5及びNガス源52から供給路52,41,23(又は供給路52,41,24)を介して処理容器30内に供給する。そして、処理容器30内のNパージを開始する(ステップS17)すると共に、シャッタ32を開いて、ウエハWを搬出する(ステップS18)。
【0071】
こうして、ウエハWの搬出終了後、シャッタ32を閉じ、処理容器30内にぽパージ用のNガスを引き続き供給して、置換処理を行う(ステップS19)。なお、処理中以外は、バルブAV8を開き、バルブAV9を供給路43側に切り替えて、Nガス源42から常時、HO気化ユニット4及び供給路43,23を介して疎水化処理ユニット3に供給し、排気路51を介して排出するようにしてもよい。
【0072】
このような構成においても、Nガスを水蒸気のキャリアガスとして用いて、HMDSガスと混合してから、処理容器30に供給している。このため、上述の実施の形態と同様に、水蒸気が存在する状態でHMDSガスとウエハWとを接触させることができ、この水蒸気により疎水化反応が促進される。従って、当該疎水化処理において、目的とした接触角が得られ、安定して高い疎水性を確保することができる。
【0073】
続いて、HMDSガスをHOのキャリアガスとして使用する例について、図11及び図12を参照しながら説明する。なお、図11の構成はHMDSの気化をHMDS気化ユニット2を用いて行うものであり、濃度センサTの上流側の構成は図4の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
この例では、濃度センサTの下流側は、供給路65を介してHO気化ユニット4に接続されている。そして、このHO気化ユニット4の下流側は、バルブAV24を備えた供給路66を介して疎水化処理ユニット(ADH)3の処理容器30に接続されると共に、バルブAV26を備えた排出路67を介して排気路51に接続されている。
【0075】
この場合には、HMDSガスの加水分解の影響が発生しないように、疎水化処理ユニット3の直近にHO気化ユニット4を設けることが好ましい。なお、図11中点線にて示すように、濃度センサTと疎水化処理ユニット3との間に、供給路65から分岐する、バルブAV27を備えた供給路68を設けるようにしてもよい。また、図11中、HMDS気化ユニット4と疎水化処理ユニット3を結ぶ供給路を含む2重線で囲んだ領域は、HMDSガスや水蒸気の結露を抑制するために、例えばヒータよりなる加熱手段が巻回され、HMDSガスや水蒸気が結露しない程度の温度に温度調整されている。そして、濃度センサTの検出値は制御部100に出力され、制御部100では、濃度センサTの検出値に基づいて、ポンプP及びHMDS気化ユニット2の温度コントローラ20に制御信号を出力するように構成されている。
【0076】
このような疎水化処理システムでは、先ず、HMDS気化ユニット2及びHO気化ユニット4の温調を開始する。次いで、ポンプPを作動させてHMDS液貯留タンク1から所定量のHMDS液をHMDS気化ユニット2に供給し、続いて、HO気化ユニット4において、既述のように、HOの気化量制御を行う。
【0077】
続いて、バルブAV1、AV3、AV24を開く。これにより、N源21からのNガスをキャリアガスとして用いてHMDS気化ユニット2にて発生したHMDSガスが供給路23,65、HO気化ユニット4を介して疎水化処理ユニット3に供給される。この際、HMDSガスをキャリアガスとしてHO気化ユニット4にて発生した水蒸気が疎水化処理ユニット3に供給される。このとき、HMDSガスは濃度センサTにより、常時所定のタイミングで濃度測定されており、この検出値に基づいて、ポンプPやHMDS気化ユニット3の温度コントローラ20がフィードバック制御され、HMDSガスの濃度が所定範囲に収まるように制御されている。なお、HO濃度を安定させるために、疎水化処理の開始前に、バルブAV1,AV3、AV26を開いて、HMDSガス及び水蒸気を排出路67を介して排気するようにしてもよい。
【0078】
次いで、シャッタ32を開いて、ウエハWを図示しない外部の搬送機構により搬入口を介して処理容器30内に搬入してウエハWを熱板33上に受け渡し、所定の疎水化処理を行う。続いて、バルブAV1,AV3,AV24を閉じ、バルブAV2,AV24(又はバルブAV2,AV27)を開いて、処理容器30内にパージ用のNガス源5から供給路52,65,66(又は供給路52,65,68)を介してNガスを導入する(ステップS7)。そして、シャッタ32を開いて、ウエハWを搬出した後、シャッタ32を閉じ、処理容器30内にパージ用のNガスを引き続き供給して、置換処理を行う。
【0079】
こうして、処理容器30内がNガスで置換された後、バルブAV2,AV24(又はバルブAV2,AV27)を閉じ、バルブAV1,AV3,AV5を開いて、供給路23内にNガス源21からNガスを供給し、これら供給路23内に残存するHMDSを排気路51を介して排出する。なお、処理中以外は、バルブAV2,A26を開き、HO気化ユニット4及び供給路23,排出路67,51を介してNガスを常時排出するようにしてもよい。このようにすると、HO気化ユニット4内へのHMDSガスの残留が防止される。
【0080】
このような疎水化処理システムにおいても、HMDSガスをHOのキャリアガスとして用いて処理容器30に供給しているので、上述の実施の形態と同様に、水蒸気が存在する状態でHMDSガスとウエハWとを接触させることができる。従って、この水蒸気により疎水化反応が促進されるので、当該疎水化処理により、目的とした接触角が得られ、安定して高い疎水性を確保することができる。
【0081】
以上において、HMDSガスを水蒸気のキャリアガスとして用いる場合であっても、図12に示すように、HMDS気化ユニット2の代わりにHMDSタンク6を設けるようにしてもよい。図12に示す例は、濃度センサTの上流側は図9に示す例と同様に構成されており、濃度センサTの下流側は図11に示す例と同様に構成されている。
【0082】
このような疎水化処理システムでは、先ず、バルブAV11を開いて貯留タンク1からHMDSタンク6に所定量のHMDS液を供給し、次いで、HMDSタンク6の温調を開始する。この際、バルブAV13,AV26を開いて、過剰なHMDSガスを供給路64、65、排出路67を介して排気する。次いで、HO気化ユニット4では、既述のように、HOの気化量制御を行う。
【0083】
続いて、バルブAV12、AV13、AV24を開き、N源62からのNガスの供給によりHMDSタンク6にて発生したHMDSガスを供給路64,65、HO気化ユニット4を介して疎水化処理ユニット3に供給する。つまりHMDSガスをキャリアガスとして用いて、水蒸気が疎水化処理ユニット3に供給される。このとき、HMDSガスは濃度センサTにより、常時所定のタイミングで濃度測定されており、この検出値に基づいて、HMDS濃度が所定範囲に収まるように、HMDSタンク6の温度コントローラ60がフィードバック制御される。
【0084】
次いで、ウエハWを搬送口31を介して処理容器30内に搬入して熱板33上に受け渡し、シャッタ32を閉じる。そして、処理容器30内にガス吐出部37よりHMDSガス及び水蒸気を供給する一方、処理容器30内を排気しながら、疎水化処理を行う。なお、HO濃度を安定させるために、疎水化処理の開始前に、バルブAV12,AV13、AV26を開いて、HMDSガス及び水蒸気を供給路68、65、排出路67を介して排気するようにしてもよい。
【0085】
この後、バルブAV12,AV13,AV24を閉じ、バルブAV24,AV5(又はバルブAV5,AV27)を開いて、処理容器30内にパージ用のNガス源5から処理容器30内にNガスを供給する。そして、処理容器30内のNパージを開始すると共に、ウエハWを搬出する。こうして、ウエハWの搬出終了後、処理容器30内にNガスを引き続き供給して、置換処理を行う。なお、処理中以外は、バルブAV5、AV26を開き、Nガスを常時HO気化ユニット4、排出路67,51を介して排出するようにしてもよい。
【0086】
このような構成においても、HMDSガスをHOのキャリアガスとして用いて処理容器30に供給しているので、上述の実施の形態と同様に、水蒸気が存在する状態でHMDSガスとウエハWとを接触させることができる。従って、この水蒸気により疎水化反応が促進されるので、当該疎水化処理により目的とした接触角が得られ、安定して高い疎水性を確保することができる。
【0087】
また、水蒸気は、疎水化処理ユニット3の処理容器30の内部にて発生させるようにしてもよい。具体的に図13を参照して説明すると、図13に示す疎水化処理ユニット3は、図5に示す疎水化処理ユニット3に、反応促進剤の液体の貯留部をなすHO貯留部300を設けたものである。例えばHO貯留部300は、熱板33近傍に設けられ、例えば図13(b)に示すように、搬送口31側のサポートブロック34の表面における熱板33の近傍に、熱板33の円弧に沿った溝部として構成されている。従って、HO貯留部300は、熱板33上のウエハWを介して吸引排気口38と反対側に設けられることになる。
【0088】
さらに、前記サポートブロック34には、HO貯留部300に反応促進剤の液体である水を供給するための流路301が形成され、この流路301の他端側はポンプP1を介して水貯槽302に接続されている。こうして、HO貯留部300には、常時水を供給しておく。前記サポートブロック34におけるHO貯留部300の近傍には、当該HO貯留部300を加熱するための例えばヒータよりなる加熱部303が設けられている。
【0089】
このような構成では、HO貯留部300は、加熱部303及び熱板33からの熱によって気化される。従って、熱板33もHO貯留部300を加熱するための加熱部としての機能を有する。この際、HO貯留部300は、搬送口31側に設けられ、熱板33上を介して吸引排気口38と反対側に設けられることから、気化された水蒸気は、ウエハW表面側を通気していき、排気される。従って、ウエハW表面に確実に水蒸気を吸着させることができる。
【0090】
このように、処理容器30内にて水を気化させる構成を採用した場合には、外部から処理容器30内に水蒸気を供給しなくてもよいし、外部からの水蒸気の供給と処理容器30内における水蒸気の発生とを組み合わせるようにしてもよい。
【0091】
続いて、疎水化処理ユニット3の他の例について、図14を参照して説明する。この例の疎水化処理ユニット3は、処理容器310内に、HMDSガス及び水蒸気をシャワーヘッドから供給するように構成されている。この例では、処理容器310は、下部容器311と上部容器312に上下に分割されており、例えば上部容器312が下部容器311に対して昇降自在に設けられている。
【0092】
また、上部容器312の天板313には多数のガス供給孔314が形成されており、このガス供給孔314には、処理ガス供給部315が接続され、この処理ガス供給部315には、図4における供給路23よりなるHMDSガス及び水蒸気の供給路が接続されている。こうして、処理容器310内における熱板33の上方に、HMDSガス及び水蒸気をシャワー状に供給するシャワーヘッドが構成されている。この例では、供給路23と処理ガス供給部315とにより、疎水化処理供給路及び反応促進剤供給路が構成されている。
【0093】
さらに、天板313には、例えば中央部にパージガスであるNガスの供給路316が接続されている。なお、図4、図9、図11、図12では、NパージガスはHMDSガスと同様の供給路で疎水化処理ユニットに供給される構成であるが、当該実施の形態の疎水化処理ユニットを用いる場合には、パージ用のNガス源からNパージガスを疎水化処理ユニットに供給する専用の供給路が設けられる。また、天板313には、HMDSガスや水蒸気の結露を抑制するために、ヒータよりなる加熱手段36が設けられている。
【0094】
さらに、天板313の下方側には、多数のガス供給孔321を備えた中間板320が設けられており、例えばガス供給孔321は、天板313に設けられたガス供給孔314と干渉しないように、ガス供給孔314の下方側からずれた位置に設けられている。中間板320は、熱板33上のウエハWよりも上方側の処理位置と、前記処理位置の上方側であって、天板313の直ぐ下方側のパージ位置との間で昇降自在に構成されている。前記処理位置とは、HMDSガス等を処理容器310内に供給するときの位置であり、図14に示す位置である。またパージ位置とはNパージガスを処理容器300内に供給するときの位置である。この例では、中間板320は、前記処理位置にあるときには、側壁317に設けられた突部318によりその周縁部が支持され、昇降ピン機構322により前記パージ位置まで押し上げられるように構成されている。
【0095】
また、処理容器310は側壁部317に形成された排気路331を介して天井部に設けられた排気部330から排気されるように構成され、この排気部330は、例えば図4の排気路51に接続されている。これにより、処理容器310内にシャワーヘッドから供給されたガスが、処理容器310の外縁部から排気されるように構成されている。その他の構成は、上述の図5に示す疎水化処理ユニット3と同様である。
【0096】
このような疎水化処理ユニット3では、先ず図15(a)に示すように、上部容器312が上昇して、下部容器311との間にウエハW搬入用の開口を形成し、ウエハWを処理容器310内に搬入させる。この時、処理容器310内は前記高排気状態にて排気するようにしてもよい。次いで、図15(b)に示すように、上部容器312を下降させて、処理容器310を密閉し、HMDSガス及び水蒸気の供給を開始すると共に、処理容器310を排気して、ウエハを突き上げ35により熱板33に載置し、疎水化処理を行う。この際、HMDSガス及び水蒸気は処理ガス供給部315、天板313に設けられたガス供給孔314を介してシャワー状に処理容器310内に供給され、外周に設けられた排気路318を介して排気される。
【0097】
そして、図15(c)に示すように、疎水化処理終了後、中間板320を昇降ピン機構322よりパージ位置まで上昇させ、置換処理を開始する。これにより、Nガスは処理容器310の中心部から外周部に設けられた排気路318へ向けて通気していく。こうして、処理容器310内をNガスにより置換した後、図15(d)に示すように、中間板320を処理位置まで下降させ、上部容器312を上昇させて、ウエハWの搬出を行う。この置換処理時や、上部容器312を上昇させたときには、処理容器310内を前記高排気状態にて排気するようにしてもよい。
【0098】
このような構成では、HMDSガス及び水蒸気をシャワーヘッドから供給しているので、ウエハW全面に対してHMDSガス及び水蒸気をすばやく均一に供給することができる。つまり、ウエハWの中心部と外周部との間で、HMDSガス等の供給時間差をなくすと共に、供給量を揃えることができる。これにより、ウエハWの温度が上昇し、ウエハWに吸着している水蒸気が全て気化してしまう前に、ウエハW全面に均一にHMDSガスを供給することができ、疎水化処理を速やかに進行させることができる。
【0099】
また、N置換処理時には中間板320が上昇し、Nガスを処理容器310の中心部から供給し、外周部から排気しているので、Nガスの流れが一方向流となり、Nガスをシャワー状に供給する場合に比べて、置換処理を速やかに進行させることができる。
【0100】
続いて、疎水化処理ユニット3のさらに他の例について、図16を参照して説明する。この例は、処理容器330の外周からHMDSガス及び水蒸気を処理容器330内に供給し、処理容器330の中心部から排気する構成である。この例では、前記処理容器330は、下部容器331と上部容器332とに上下に分割されており、例えば上部容器332が下部容器331に対して昇降自在に設けられている。下部容器331の構成は、図4に示す疎水化処理ユニットと同様である。
【0101】
上部容器332は、中央部に排気路333が形成されると共に、天板334にはガス室335が形成されている。このガス室335の下面の外周部にはガス供給孔336が形成され、前記ガス室335には、HMDSガス及び水蒸気の供給路23が接続されている。この例では、供給路23により、疎水化処理供給路及び反応促進剤供給路が構成されている。また天板334には、HMDSガスや水蒸気が結露しないように、ヒータよりなる加熱手段36が設けられている。その他の構成は、図5に示す疎水化処理ユニット3と同様である。
【0102】
このような疎水化処理ユニット3では、先ず図17(a)に示すように、上部容器332が上昇して、下部容器331との間にウエハ搬入用の開口を形成し、ウエハWを処理容器330内に搬入させる。この時、処理容器330内は前記高排気状態に切り替えるようにしてもよい。次いで、図17(b)に示すように、上部容器332を下降させて処理容器330を形成し、HMDSガス及び水蒸気の供給を開始すると共に、ウエハを熱板33に載置し、疎水化処理を行う。この際、HMDSガス及び水蒸気は、供給路24からガス室335を介して処理容器330内へ供給される。このとき、HMDSガス及び水蒸気は、処理容器330の外周部から供給され、処理容器330の中心部から排気されるので、処理容器330内には外から中へ向かうガス流れが形成される。
【0103】
こうして、図17(c)に示すように、疎水化処理終了後、パージ用のNガスを供給路24からガス室335を介して処理容器330内に供給して、置換処理を開始する。置換処理終了後、図17(d)に示すように、上部容器332を上昇させて、ウエハWを搬出する。この置換処理やウエハWの搬出時には、処理容器330内を前記高排気状態に切り替えるようにしてもよい。また、上部容器332を下部容器331に接触させたときに、両者の間に僅かな外気取り込み用隙間が形成されるように構成し、当該隙間より、処理容器330内に湿度40%RH程度の水分を含んだ外気を取り込むようにしてもよい。
【0104】
このような構成では、HMDSガス等を処理容器330の外周部から供給し、中心部から排気しているので、処理容器330の外への雰囲気漏れ防止が期待できる。
【0105】
さらにこの疎水化処理ユニットでは、図18に示すように、HO貯留部340を設けるようにしてもよい。この例のHO貯留部340は、サポートブロック34における熱板33の近傍に、例えば熱板33の周囲に沿って設けられている。サポートブロック34にはHO貯留部340に水を供給するための流路341と、この流路341とHO貯留部340とを加熱するための加熱部342とが設けられており、前記流路341には、ポンプP2により水タンク343から水が供給されるように構成されている。
【0106】
このような構成では、先ず、前の処理が終了した後、次の処理を開始する前に、一定量の水をHO貯留部340にポンプP2により供給しておく。そして、上部容器332を上昇させて、ウエハWを処理容器330内に搬入する。このとき、HO貯留部340の水は、加熱手段342及び熱板33により加熱されて気化し、水蒸気が発生している状態である。次いで、ウエハWを熱板33上に載置し、上部容器332を下降させる。この後、供給路24を介して処理容器30内へのHMDSガスの供給を開始して、疎水化処理を行う。
【0107】
疎水化処理終了後、HMDSガスの供給を停止して、Nガスを供給路24を介して供給し、処理容器330内雰囲気をNガス雰囲気に置換する。置換処理終了後、上部容器332を上昇し、ウエハWを搬出する。こうして、1枚のウエハWに対して処理を終了した後、HO貯留部340への水の供給を行う。このような処理では、上部容器332を上昇させている間や置換処理の間は、前記高排気状態に切り替えるようにしてもよい。また、処理容器332の内部での水蒸気の発生と合わせて、処理容器332の外部から、HMDSガスと共に水蒸気を供給するようにしてもよい。
【0108】
さらに、疎水化処理ユニット3の処理容器3内にウエハWを搬入する前に、当該ウエハWに水蒸気を供給することにより、反応促進剤を気化させて基板に供給する工程を実施するようにしてもよい。図19に示す例では、外部の搬送機構7上にウエハWを載置し、例えば疎水化処理ユニット3の近傍に設けられたHO気化ユニット4から搬送機構7上のウエハWに水蒸気を供給するように構成されている。そして、HO気化ユニット4から水蒸気が供給されたウエハWは、この搬送機構7により、疎水化処理ユニット3に受け渡されるようになっている。なお、HO気化ユニット4から疎水化処理ユニット3近傍に設けられた載置台上のウエハWに対して水蒸気を供給し、この後、当該ウエハWを疎水化処理ユニット3に搬送するようにしてもよい。このように、疎水化処理ユニット3にウエハWを搬入する前に、このウエハWに水蒸気を供給する構成では、当該ウエハWが疎水化処理ユニット3に搬入され、HMDSガスが供給されるまでにウエハW表面にて水蒸気が結露しないことが必要となる。
【0109】
以上において、ウエハWを加熱する際は、初期吸着水分が揮発してウエハW表面からなくなる前に、ウエハWを疎水化処理に適した温度まで速やかに昇温させることが好ましい。ここで初期吸着水分とは、処理容器に搬入する前のウエハWに吸着している水分のことである。このため、ウエハWと熱板とのギャップが大きくなると、ウエハWの昇温速度が低下するため、ウエハWを熱板に接触させて加熱するコンタクトベークや、ウエハWと熱板とのギャップが0.03mm〜0.05mm程度のプロキシミティギャップベーク方式を採用することが好ましい。
【0110】
本発明では、ウエハWの疎水化を促進させる反応促進剤としては、水以外にもアンモニア(NH)やアミンやアルコール等、水素結合を有するものを用いることができる。この際、常温常圧でガスのものを反応促進剤として用いる場合は、例えば高圧により液化させチューブに封入するパーミエーションチューブ法などを用いて、濃度調節したガスを疎水化処理ユニット3の処理容器30内に供給することが好ましい。
【0111】
以下に、NHが疎水化反応に介在する場合を例にして図を参照して説明する。この場合には、NHが遷移状態に介在することで、図20(a)に示すように、NHが介在しない場合に比べて反応の活性化エネルギーが低下すると推察される。NHが関与した場合には、遷移状態において、HMDSのNがNHを介してSiOHと結合し、次いで、水素結合が入れ替わって、SiOSi(CHと(CHSiNHを生成すると考えられる。このため、遷移状態において、HMDSの3次元構造の角度の自由度が大きくなり、結果として、HMDSのSiとSiOHのOとが反応しやすい状態となり、活性化エネルギーが低下するものと推測される。このように、HOやNH、アミン、アルコールなどの水素結合を有するものが関与する場合は、既述のように遷移状態における水素結合の入れ替わりが発生し、反応の活性化エネルギーが低下することから、疎水化反応の反応を促進する触媒として作用するものと考えられる。
【0112】
また、HMDSガス以外の疎水化処理ガスとしては、例えばTMSDMA(Trimethylsilyldimethylamine)やTMSDEA(N-Trimethylsilyldiethylamine)やBSA(N,O-bis(trimethylsilyl)acetamide)等のシリルアルキル基を持つシリル化剤を用いることができる。これらのシリル化剤もHMDSと同様の反応機構で表面反応をおこすため、これらもHMDS同様に水などの水素結合を有する反応促進剤を添加することにより疎水化反応が促進されると考えられる。
【0113】
TMSDMAを疎水化処理ガスとして用いた場合には、次の(2)式に示す素反応式に従って、疎水化反応が進行し、疎水基であるOSi(CH)が生成される。
【0114】
(CHSiN(CH+SiOH→
SiOSi(CH)+(CHNH・・・(2)
また、TMSDEAを疎水化処理ガスとして用いた場合には、次の(3)式に示す素反応式に従って、疎水化反応が進行し、疎水基であるOSi(CH)が生成される。
【0115】
(CHSiN(C+SiOH→
SiOSi(CH)+(CNH・・・(3)
さらに、BSAを疎水化処理ガスとして用いた場合には、次の(4)式に示す素反応式に従って、疎水化反応が進行し、疎水基であるOSi(CH)が生成される。
【0116】
CHC[=NSi(CH]OSi(CH+SiOH
→SiOSi(CH)+CHC[=NH]OSi(CH・・・(4)
【実施例】
【0117】
以下に、水分の疎水化処理反応への寄与を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
初期吸着水分が存在するウエハWを疎水化処理ユニットの処理容器に搬入し、加熱した熱板上にウエハWを載置してウエハWを加熱しながらHMDSガスを導入して疎水化処理を行い、処理後に接触角をカーブフィッティング法により測定した。ここで、疎水化処理ユニットは、図21に示すように、処理容器71の中央からHMDSガスを導入し、処理容器71の外周から排気する構成とした。また、ウエハWを載置したときの熱板72の温度は90℃に設定し、熱板72に載置してから30秒間疎水化処理を行った。このときのウエハWの温度変化と処理状態を図22(a)に示す。
(実施例2)
初期吸着水分が存在するウエハWを疎水化処理ユニットの処理容器71に搬入し、ウエハWを加熱しながら当該処理容器71にNガスを供給して120℃でベーク処理を1分行い、ウエハW上の初期供給水分を除去した。この後、HMDSガスを導入して疎水化処理を30秒行い、処理後に接触角を測定した。このときのウエハWの温度変化と処理状態を図22(b)に示す。
(実施例3)
初期吸着水分が存在するウエハWを疎水化処理ユニットの処理容器71に搬入し、ウエハWを加熱しながら当該処理容器71にNガスを供給して120℃でベーク処理を1分行い、ウエハW上の初期供給水分を除去した。この後、一旦ウエハWを処理容器71から搬出して、湿度40%RH大気中に30分程度暴露した。次いで、再度ウエハWを処理容器71に搬入し、ウエハWを加熱しながらHMDSガスを導入して疎水化処理を30秒行い、処理後に接触角を測定した。このときのウエハWの温度変化と処理状態を図22(c)に示す。
(実施例4)
初期吸着水分が存在するウエハWを疎水化処理ユニットの処理容器71に搬入し、ウエハWを加熱しながら当該処理容器71にNガスを供給してベーク処理を1分行い、ウエハW上の初期供給水分を除去した。この後、HMDSガスと共に露点22℃の水蒸気を導入して疎水化処理を30秒行い、処理後に接触角を測定した。このときのウエハWの温度変化と処理状態を図22(d)に示す。
(結果)
実施例1〜4の接触角について、図23に示す。この結果、実施例2のように、疎水化処理前にNパージによるベーク処理を行い、表面に吸着した水分を除去した後で再度疎水化処理を行うと、ベーク処理を行わない場合(実施例1)に比べて、接触角が大きく低下した。
【0118】
また、ベーク処理後に湿度40%RHの雰囲気中にウエハWを放置してから疎水化処理を行った場合(実施例3)や、ベーク処理後の疎水化処理の際に水分を添加した場合(実施例4)の処理では、実施例1に近い状態まで接触角が回復した。
【0119】
このことから、ウエハWに水分が存在した状態で疎水化処理を行うことにより、接触角が大きくなることが確認された。また、初期吸着水分が除去された場合でも、水蒸気の供給を行う等、ウエハW表面に水蒸気が吸着された状態で疎水化処理を行うことが重要であることが理解される。
(実施例5)
上述の図12に示す疎水化処理システムを用い、疎水化処理ユニット3の熱板33温度を90℃、疎水化処理時間を30秒とし、HMDSガスを水蒸気のキャリアガスとして使用すると共に、HMDSガスを2.5L/minの流量で供給して、上述の工程に沿って疎水化処理を行い、処理後に接触角を測定した。この際、HO気化ユニット4は、図6(a)の構成のものを用い、水蒸気を供給しない場合と、HO気化ユニット4の水温を変えた場合について同様に疎水化処理を行って、夫々の場合について接触角を測定した。この結果を図24に示す。
【0120】
図24により、水蒸気を供給した場合は、水蒸気を供給しない場合に比べて、接触角が大きくなること、HO気化ユニット4の水温が高い程、接触角が大きくなることが理解される。 ここでHO気化ユニット4の水温が高い程、気化量が多くなり、水蒸気の供給量が増加することから、水蒸気の供給量が増加するほど、接触角が大きくなることが認められた。
【0121】
以上において、本発明の疎水化処理装置では、疎水化処理ガス供給路と、反応促進剤供給路とは別個に設けるようにしてもよい。また、疎水化処理ガス供給路と、反応促進剤供給路とが共通の場合、別個の場合に関わらず、疎水化処理ガスと反応促進剤の蒸気の供給は、夫々独立したタイミングで行うようにしてもよい。例えば処理容器内に先に水蒸気を供給してから、疎水化処理ガスを供給するようにしてもよい。また、疎水化処理ユニットの構成は上述の実施の形態には限られず、また反応促進剤を気化する手段や、気化された反応促進剤をウエハWに気化して供給する手段も上述の実施の形態には限られない。
【0122】
以上において、本発明の疎水化処理は、半導体ウエハW以外のFPD(Flat Panel Display)用ガラス基板等の基板の疎水化処理に適用できる。
【符号の説明】
【0123】
W ウエハ
2 HMDS気化ユニット
3 疎水化処理ユニット
30 処理容器
33 熱板
303 HO貯留部
4 HO気化ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内にて、ケイ素を含み、表面に水酸基を備えた基板に、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスを供給し、前記基板の表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理方法において、
前記基板の疎水化を促進させる反応促進剤を気化させて基板に供給する工程と、
前記処理容器内に搬入された基板を加熱する工程と、
加熱された基板の表面に前記反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該基板の表面に前記疎水化処理ガスを供給する工程と、を含み、
前記反応促進剤により、疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素との反応を促進させることを特徴とする疎水化処理方法。
【請求項2】
前記反応促進剤は、水、アンモニア、アミン、アルコールから選択された物質であることを特徴とする請求項1記載の疎水化処理方法。
【請求項3】
前記反応促進剤を気化させて基板に供給する工程は、基板を加熱する前、基板を設定温度に昇温させる途中、及び基板を設定温度に加熱した後の、少なくとも一つのタイミングで実施されることを特徴とする請求項1又は2記載の疎水化処理方法。
【請求項4】
前記反応促進剤の蒸気は、疎水化処理ガスと混合された後、処理容器に供給されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の疎水化処理方法。
【請求項5】
前記処理容器内に設けられた反応促進剤の液体の貯留部を加熱することにより、前記反応促進剤を気化させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の疎水化処理方法。
【請求項6】
前記処理容器内に基板を搬入する前に、当該基板に前記反応促進剤の蒸気を供給することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の疎水化処理方法。
【請求項7】
処理容器内にて載置部に載置された、ケイ素を含み、表面に水酸基を備えた基板に、トリメチルシリル基を含む疎水化処理ガスを供給し、前記基板の表面に−O(CHよりなる疎水基を生成する疎水化処理装置において、
前記処理容器に設けられ、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内に前記疎水化処理ガスを供給する疎水化処理ガス供給路と、
前記処理容器内に前記基板の疎水化を促進させる反応促進剤を気化させて供給する反応促進剤供給手段と、を備え、
処理容器内において、加熱された基板の表面に前記反応促進剤の蒸気が吸着している状態で、当該基板の表面に前記疎水化処理ガスを供給し、前記反応促進剤により、疎水化処理ガスのケイ素と、基板表面の酸素との反応を促進させることを特徴とする疎水化処理装置。
【請求項8】
前記反応促進剤は、水、アンモニア、アミン、アルコールから選択された物質であることを特徴とする請求項7記載の疎水化処理装置。
【請求項9】
前記反応促進剤供給手段は、前記処理容器内に前記反応促進剤の蒸気を供給する反応促進剤供給路であることを特徴とする請求項7又は8記載の疎水化処理装置。
【請求項10】
前記反応促進剤供給路は疎水化処理ガス供給路を兼用しており、前記反応促進剤の蒸気は、疎水化処理ガスと混合された後、処理容器に供給されることを特徴とする請求項9記載の疎水化処理装置。
【請求項11】
前記反応促進剤供給手段は、処理容器内に設けられた反応促進剤の液体の貯留部と、この貯留部を加熱する加熱部と、を含み、当該処理容器内にて反応促進剤を気化させることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一つに記載の疎水化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−253899(P2011−253899A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126048(P2010−126048)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】