説明

疾病予兆管理サービス

【課題】生活習慣病発症リスクの高いサービス利用者毎の最適な早期予兆検出及び管理が行える、疾病予兆管理サービスを得る。
【解決手段】サービス利用者の身体の特定管理部位の生体データの平常状態と異常状態との変化の検出を行なう検出手段と、前記サービス利用者が家庭・介護施設内又は外出中の何れの場所にいても前記生体データを収集して通信ネットワークに伝送を行う通信手段と、前記通信ネットワークより全てのサービス利用者の生体データを24時間且つリアルタイムに取得して所定フォーマットによる生体情報の作成及びデータベース蓄積を行うデータ処理手段と、前記生体情報を医学的に解析して所定フォーマットによる電子カルテの作成及びデータベース蓄積を行うデータ管理手段と、前記電子カルテを基に正常時と比較して生体変化が急変又は基準値を超えたサービス利用者の個別介護と状況に応じて救急発動を行う介護救急手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活習慣病にかかるリスクの高い人(通常は健康体であるが健康診断等により生活習慣病の発症リスクを指摘されている人)の身体状況を、年間を通して24時間且つリアルタイムに行い、平常状態と異常状態との変化を比較して検出された異常信号を取得管理することにより、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるための早期予兆検出及び管理を行うことができる、疾病予兆管理サービスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、出生率減少に伴う少子高齢化により高齢者の人口割合が増大している。このような高齢社会における国の医療費は、2004年で約32兆円であり、更には2010年で約40兆円,2025年では約70兆円と予想されている。該医療費のうち特に老人医療費の増加が著しく、原因として入院医療費の高騰と入院期間の長期化が挙げられる。また、前記長期入院の原因として、大腿骨等の骨折,脳卒中,脳梗塞等により寝たきり状態となることにある。
【0003】
今後の超高齢社会に向けて充実した医療を受けるためには、現行の医療制度や保険制度の見直しを図り、肥大化した医療費を削減する必要がある。このためには、日常の生活習慣を見直して健康な体の維持を図り傷病にかからないことを目的とする一次予防や、傷病の発生を予兆し、寝たきり患者の発生を減少させるための早期予兆検出を行う二次予防が必要となる。また最近、狭心症,脳卒中,肥満,高血圧,高脂血症,糖尿病,骨粗鬆症等の生活習慣病のうち、高血圧,高脂血症,糖尿病はそれぞれが独立した疾患ではなく内臓脂肪型肥満が原因であり、動脈硬化を引き起こし易くする状態いわゆるメタボリックシンドロームとなり、延いては心筋梗塞,狭心症,脳梗塞等の生命に関わる重大な疾患の原因となることが判明されてきた。
【0004】
従来、既に傷病にかかっている患者の状態をセンサを用いて取得管理する予防管理システムは一部実用化されているが、今後は上記生活習慣病にかかるリスクの高い人の身体状況を24時間且つリアルタイムに取得管理して、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるべく生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理を行うことにより医療費の削減を図ることが重要となる。
【0005】
上記目的を実施すべく、例えば特開2002−056099号公報の『健康管理システム』では、生活習慣病患者とその予備軍のユーザー宅に、血圧計,体温計,血糖測定器,尿糖測定器等の各種測定器を配備し、情報通信回線を経由して健康管理センターや医療機関にデータを伝送し、前記健康管理センターや医療機関では各ユーザーの健康状態を診断して、各種健康管理情報を提供することができるシステムについて記載され、特開2003−132150号公報の『集合住宅居住者の健康管理システム』では、マンション等の集合住宅に住む健康な人の身体情報を本人又は住居等に取り付けた生体センサにて直接通信ネットに接続し、ホストサーバのデータベースに電子カルテとして記憶し、更に病院等に設置したモニタセンタ端末にて健康状態を監視して、アドバイスを受けることができるシステムについて記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−056099
【特許文献2】特開2003−132150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特開2002−056099号公報に記載のものは、ユーザー宅に設置したバイタルセンサ制御部に血圧計,体温計,血糖測定器,尿糖測定器等の各種測定器を接続し、該測定器にて定期的に測定を行って得られた生体データや医療機関で定期検査した生体データ等を基にして医療機関からアドバイスを受けるものであり、外出中での測定は行うことができない。このため、身体状況を、24時間且つリアルタイムに取得管理することができず、突発的に発生する大腿骨等の骨折,脳卒中,脳梗塞等の傷病の早期予兆検出を行うことができないという問題点があった。また、上記特開2003−132150号公報に記載のものは、身体の各測定部位に取り付けたセンサより得られた計測データを受信機に送信し、更には通信ネットを介してモニタセンタ端末に接続するものであり、前記センサは電池内蔵の無線センサユニットを構成するものである。しかしながら、該電池内蔵の無線センサユニットの消費電力は比較的大きいため、連続使用すると短時間で電池が消耗してしまい、年間を通して24時間連続使用することができないという問題点があった。また、外出時には送信部の電波を強力にして直接インターネットと接続可能にするとの記載があるが、電波法及び通信規格の観点からすればこのようなことは実施できるものではない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、生活習慣病にかかるリスクの高い人の身体状況を、年間を通して24時間且つリアルタイムに行い、平常状態と異常状態との変化を比較して検出された異常信号を取得管理することにより、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるべく生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理を行うことができる、疾病予兆管理サービスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の疾病予兆管理サービスは、当該サービス利用者の身体の特定管理部位の生体データの平常状態と異常状態との変化の検出を行なう検出手段と、前記サービス利用者が家庭・介護施設内又は外出中の何れの場所にいても前記生体データを収集して通信ネットワークに伝送を行う通信手段と、前記通信ネットワークより全てのサービス利用者の生体データを24時間且つリアルタイムに取得して所定フォーマットによる生体情報の作成及びデータベース蓄積を行うデータ処理手段と、前記生体情報を医学的に解析して所定フォーマットによる電子カルテの作成及びデータベース蓄積を行うデータ管理手段と、前記電子カルテを基に正常時と比較して生体変化が急変又は基準値を超えたサービス利用者の個別介護と状況に応じて救急発動を行う介護救急手段と、を有したシステムにおいて、全てのサービス利用者の身体状況が時間と場所を限定せずに年間を通じて24時間且つリアルタイムに取得管理され、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるため、前記生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理を行う。
【0010】
上記検出手段として、バッテリーレスタイプのセンサ機能付きRFID(Radio Frequency Identification)タグに少なくとも1個以上のセンサを接続して構成し、前記センサ機能付きRFIDタグ及びセンサは、粘着シートにて皮膚に直接貼り付けることができる可撓性を有した薄いシート形状とする。
【0011】
上記通信手段として、家庭・介護施設内においては、固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との通信が行える範囲内では前記固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との無線通信を行い、固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との通信が遮断されて行えない範囲内では前記RF通信装置とRF通信モジュール間との無線通信を行い、どちらか一方を自動的に適宜切換えることによるシームレス通信を行う。
【0012】
上記介護救急手段として、サービス利用者が家庭・介護施設内にいる場合は、当該家庭・介護施設内のユーザー端末に接続されたカメラ及びモニタ画面にて専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行い、サービス利用者が外出中の場合は、当該サービス利用者が所持する携帯端末のモニタ画面にて専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行い、救急処置が必要と判断された場合は、救急車を出動する。
【0013】
サービス利用者は、自らの要求により、家庭・介護施設内のユーザー端末のモニタ画面又は自己が所持する携帯端末のモニタ画面にて自己の傷病履歴等を電子カルテで閲覧することができ、更に当該電子カルテを基に専門医等のカウンセリングを受けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の疾病予兆管理サービスによれば、生活習慣病にかかるリスクの高い人の身体状況を、年間を通して24時間且つリアルタイムに行い、平常状態と異常状態との変化を比較して検出された異常信号を取得管理することにより、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるべく生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理を行うことができるという絶大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。図1は本発明の疾病予兆管理サービスを実施するための概略システム構成図である。
【0016】
まず、当該サービス利用者9の身体の特定管理部位に、生体データの平常状態と異常状態との変化の検出を行なう検出手段を設ける。該検出手段としては、バッテリーレスタイプすなわちパッシブ型のセンサ機能付きRFIDタグを用い、該センサ機能付きRFIDタグに目的に合った少なくとも1個以上のセンサを接続する。なお、前記センサ機能付きRFIDタグにおけるキャリア周波数は、1〜3m程度の遠隔通信が行える2.45GHz又は3〜5m程度の遠隔通信が行える953MHz帯仕様のものが好ましい。
【0017】
図5は本発明の疾病予兆管理サービスで用いるセンサ機能付きRFIDタグの一実施例による構成図であり、(a)はRFIDタグの内部に1個のセンサを内蔵したもの、(b)はRFIDタグの外部に複数(3個)のセンサを接続したものを示している。(a)タイプは、センサ機能付きRFIDタグ10の内部にRFIDチップ11とアンテナ12と充電用コンデンサ13等を搭載し、更に前記RFIDチップ11に生体データの平常状態と異常状態との変化を検出する1個のセンサ14を接続して構成する。また、(b)タイプは、センサ機能付きRFIDタグ10の内部にRFIDチップ11とアンテナ12と充電用コンデンサ13等を搭載し、更に前記RFIDチップ11に接続された接続端子15を当該センサ機能付きRFIDタグ10の端部に設け、該接続端子15に生体データの平常状態と異常状態との変化を検出する複数の外部センサ14a,14b,14cを接続して構成する。なお、上記センサ機能付きRFIDタグ10及び外部センサ14a,14b,14cは、粘着シートにて皮膚に直接貼り付けることができる可撓性を有した薄いシート形状とする。また、外部センサ14a,14b,14cは3個描いてあるが、個数は特に限定するものではない。
【0018】
上記充電用コンデンサ13は、後述のリーダーと無線通信を行う際に発生する誘導起電力を当該センサ機能付きRFIDタグ10とセンサ14又は外部センサ14a,14b,14cを駆動するための電源として使用されるが、更に電力を必要とする場合は、他の発電素子(図示せず)を併用しても構わない。
【0019】
上記(a)タイプのセンサ機能付きRFIDタグ10の片面は粘着シートになっており、センサ14をサービス利用者9の身体の特定管理部位に接触するように保護シート(図示せず)を剥がして貼り付ける。また、(b)タイプのセンサ機能付きRFIDタグ10の片面も粘着シートになっており、複数の外部センサ14a,14b,14cも夫々粘着シート16が貼られており、該外部センサ14a,14b,14cをサービス利用者9の身体の特定管理部位に接触するように夫々の保護シート(図示せず)を剥がして貼り付け、更に前記外部センサ14a,14b,14cの近傍にも同様にしてセンサ機能付きRFIDタグ10を貼り付ける。
【0020】
上記(a)タイプのセンサ14や(b)タイプの外部センサ14a,14b,14cとしては、体温の平常状態と異常状態との変化を検出するためのセンサ,心拍数の平常状態と異常状態との変化を検出するためのセンサ,血圧の平常状態と異常状態との変化を検出するためのセンサ,心音の平常状態と異常状態との変化を検出するためのセンサ,転倒など身体の動きの平常状態と異常状態との変化を検出するためのセンサなど測定目的にあった各種センサを利用することが可能である。また、サービス利用者9の身体外に設置される測定器として、例えば体重計,血糖測定器,尿糖測定器などに上記センサ機能付きRFIDタグ10を接続することにより、体重の平常状態と異常状態との変化,血糖値の平常状態と異常状態との変化,尿糖値の平常状態と異常状態との変化などの生体データもその都度得ることができる。
【0021】
また、上記(a)タイプのセンサ14や(b)タイプの外部センサ14a,14b,14cの貼り付け個数は、サービス利用者9の身体の特定管理部位の箇所等により夫々異なるが、必要に応じて複数貼り付けることが可能である。これは、固有IDを有したセンサ機能付きRFIDタグ10により各生体データも前記固有IDにて識別されるためである。
【0022】
次に、上記サービス利用者9が家庭・介護施設1内又は外出中の何れの場所にいても前記生体データを収集して通信ネットワークに伝送を行う通信手段を設ける。該通信手段としては、サービス利用者9が家庭・介護施設1内にいる場合は、前記家庭・介護施設1内に構築されたPLC(Power Line Communications:電力線搬送通信)ネットワークや無線LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続された固定リーダー4と前記センサ機能付きRFIDタグ10間との無線通信を行い、更に前記PLCネットワーク又は無線LAN等に接続されたユーザー端末6を経由して通信ネットワークに接続する。また、サービス利用者9が外出中の場合は、該サービス利用者9が所持する携帯端末17に接続した携帯用リーダーユニット18と前記センサ機能付きRFIDタグ10間との無線通信を行い、更に前記携帯用リーダーユニット18に接続した携帯端末17を経由して通信ネットワークに接続する。なお、図1及び以下の説明図では家庭・介護施設1内のネットワークとして電力線2にPLCモデム3を接続したPLCネットワークとし、通信ネットワークとしてIPネットワーク21を示したが、これに限定するものではない。
【0023】
図2は本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第一実施例のシステム構成図であり、図6は図2における通信系統図である。該システムは、介護施設より規模の小さな家庭での用途に適している。図2においては、家庭・介護施設1内に敷設された電力線2に、数メートル間隔毎の複数箇所にPLCモデム3を接続し、更に固定リーダー4を前記PLCモデム3に接続し、机上等においてはカメラ7を接続したユーザー端末6に前記PLCモデム3を接続した状態を示している。ここで、例えばサービス利用者9がベッド8にて就寝している場合、当該サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と最短距離にある固定リーダー4間において無線通信が行われる。前記センサ機能付きRFIDタグ10には少なくとも1個以上のセンサ14が接続され(図6では3個の外部センサ14a,14b,14cが接続される)、ここで得られた生体データは、PLCモデム3を介してユーザー端末6に取り込まれ、IPネットワーク21に接続して伝送される。
【0024】
図3は本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第二実施例のシステム構成図であり、図7は図3における通信系統図である。図3においては、家庭・介護施設1内に敷設された電力線2に、数十メートル間隔毎の複数箇所にPLCモデム3を接続し、更に固定リーダー4及びRF通信装置5を前記PLCモデム3に接続し、机上等においてはカメラ7を接続したユーザー端末6に前記PLCモデム3を接続した状態を示している。ここで、例えばサービス利用者9がベッド8にて就寝している場合、当該サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と当該ベッド8上又は近傍に設置されたリピーター20間において無線通信が行われ、更に前記リピーター20とRF通信装置5間において無線通信が行われる。前記センサ機能付きRFIDタグ10には少なくとも1個以上のセンサ14が接続され(図7では3個の外部センサ14a,14b,14cが接続される)、ここで得られた生体データは、PLCモデム3を介してユーザー端末6に取り込まれ、IPネットワーク21に接続される。なお、該方式において、サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と最短距離にある固定リーダー4との距離が通信範囲内であれば、前記リピーター20を中継しないで直接固定リーダー4と無線通信を行うことも可能である。
【0025】
上記リピーター20は、リーダーモジュール28にRF通信モジュール29を接続して構成される。なお、前記RF通信モジュール29及び上記RF通信装置5は、省電力で低コスト且つ10〜100m程度の遠隔通信が行えるものとして、例えばZigBee(登録商標)やBluetooth(登録商標)等が利用できる。特にZigBeeによる通信では、バッテリー寿命は1年から数年間持続でき、バッテリー交換の頻度が極めて少ない。
【0026】
図9は本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第三実施例のシステム構成図であり、図10は図9における通信系統図である。該システムは、家庭及び小規模な介護施設より大規模な介護施設での用途に適している。図9においては、家庭・介護施設1内に敷設された電力線2に、数十メートル間隔毎の複数箇所にPLCモデム3を接続し、更に固定リーダー4及びRF通信装置5を前記PLCモデム3に接続し、机上等においてはカメラ7を接続したユーザー端末6に前記PLCモデム3を接続した状態を示している。ここで、例えばサービス利用者9が歩行している場合、当該サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のハイブリッドタグ30と前記固定リーダー4又はRF通信装置5間において無線通信が行われる。前記センサ機能付きRFIDタグ10には少なくとも1個以上のセンサ14が接続され(図10では3個の外部センサ14a,14b,14cが接続される)、ここで得られた生体データは、PLCモデム3を介してユーザー端末6に取り込まれ、IPネットワーク21に接続して伝送される。
【0027】
上記ハイブリッドタグ30は、センサ機能付きRFIDタグ10にRF通信モジュール29を接続して構成され、上記固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との無線通信と、上記RF通信装置5とRF通信モジュール29間との無線通信のどちらか一方が自動的に適宜切換えられる。具体的には、固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との通信が行える範囲内では前記固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との無線通信を行い、固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との通信が遮断されて行えない範囲内では前記RF通信装置5とRF通信モジュール29間との無線通信を行う。ここで、前記固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との通信が遮断された時は、ハイブリッドタグ30内の電源線31を経由してRF通信モジュール29に内蔵のバッテリーよりセンサ機能付きRFIDタグ10のデータ処理部(図示せず)に電源を供給してデータ処理を実行させ、該処理にて得られた生体データをデータ信号線32を経由してRF通信モジュール29に転送すると共にRF通信装置5と無線通信を行う。なお、前記RF通信モジュール29及びRF通信装置5は、省電力で低コスト且つ10〜100m程度の遠隔通信が行えるものとして、例えばZigBeeやBluetooth等が利用できる。特にZigBeeによる通信では、バッテリー寿命は1年から数年間持続でき、バッテリー交換の頻度が極めて少ない。
【0028】
また、図11は図9及び図10におけるシームレス通信の原理図であり、ハイブリッドタグ30を貼り付けたサービス利用者9が位置A→B→C→D→Eと移動するときにおける、固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との通信と、RF通信装置5とRF通信モジュール29間との通信の切替え状態を示している。
【0029】
まず、PLCネットワークとして電力線2に、ハイブリッドタグ30内のセンサ機能付きRFIDタグ10と通信を行うための固定リーダー4と、ハイブリッドタグ30内のRF通信モジュール29と通信を行うためのRF通信装置5を接続したPLCモデム3を複数接続する。なお、ハイブリッドタグ30内のセンサ機能付きRFIDタグ10が近傍の固定リーダー4と通信可能な範囲を一点鎖線円内とする。
【0030】
ここで、サービス利用者9が位置Aの一点鎖線円内にあるとき、ハイブリッドタグ30内のセンサ機能付きRFIDタグ10と位置Aに近い固定リーダー4間において無線通信が行われ、各種センサから検出された生体データがPLCモデム3に伝送される。
【0031】
次に、サービス利用者9が位置Bに移動すると、上記ハイブリッドタグ30内のセンサ機能付きRFIDタグ10と固定リーダー4間との通信が遮断される。該状態を検出後、ハイブリッドタグ30内のRF通信モジュール29が起動して位置A又は位置Cに近いRF通信装置(図では位置Cに近いRF通信装置)5間において通信が行われ、上記と同様に伝送処理が実行される。
【0032】
次に、サービス利用者9が位置Cの点線円内に移動すると、上記ハイブリッドタグ30内のRF通信モジュール29と位置Cに近いRF通信装置5との通信が停止され、再びハイブリッドタグ30内のセンサ機能付きRFIDタグ10と位置Cに近い固定リーダー4との通信が行われ、上記と同様に伝送処理が実行される。
【0033】
次に、サービス利用者9が位置Dに移動すると、上述の位置Bでの動作と同様の動作を行う。更にサービス利用者9が位置Eに移動すると、上述の位置Cでの動作と同様の動作を行う。以上のようにして、固定リーダー4とセンサ機能付きRFIDタグ10間との通信と、RF通信装置5とRF通信モジュール29間との通信の切替えを行うことにより、シームレス通信が実施できる。
【0034】
上記図2及び図6の方式は、サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と固定リーダー4間における無線通信によりシームレスに生体データを収集する方式のため、数メートル間隔毎に固定リーダー4を接続したPLCモデム3が必要になるが、図3及び図7の方式は、サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と固定リーダー4間における無線通信又はリピーター20を中継して前記サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10とRF通信装置5間における無線通信によりシームレスに生体データを収集する方式であり、図9及び図10の方式は、サービス利用者9の身体に貼り付けられたハイブリッドタグ30内の複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と固定リーダー4間における無線通信又は前記サービス利用者9の身体に貼り付けられたハイブリッドタグ30内の複数のRF通信モジュール29とRF通信装置5間における無線通信によりシームレスに生体データを収集する方式であるため、固定リーダー4及びRF通信装置5を接続したPLCモデム3は、数十メートル間隔毎の設置となり、前記方式に比べて設置台数が少なくて済む。
【0035】
なお、上述の第一実施例から第三実施例において、固定リーダー4を隣接した通信範囲内で同時に複数稼動させると干渉により生体データを収集できなくなることがある。このような場合は、ユーザー端末6のタイマーによる時間監視により、複数の固定リーダー4の駆動順位やタイミングにずれが生じないように制御を行う必要がある。
【0036】
また、図4は本発明の疾病予兆管理サービスにおける外出中のサービス利用者とネットワーク間のシステム構成図であり、図8は図4における通信系統図である。図4においては、サービス利用者9がIPネットワーク21と接続可能な携帯電話等の携帯端末17を所持して外出している状態を示している。ここで、例えばサービス利用者9が散歩や買物等により外出した場合、図8の(a)に示すように当該サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と前記携帯端末17のインターフェースコネクタに直接接続された携帯用リーダーユニット18間において無線通信が行われる。又は、図8の(b)に示すように当該サービス利用者9の身体に貼り付けられた複数のセンサ機能付きRFIDタグ10と前記携帯端末17のインターフェースコネクタとケーブル接続されたリーダーユニット19間において無線通信が行われる。前記センサ機能付きRFIDタグ10には少なくとも1個以上のセンサ14が接続され(図8では3個の外部センサ14a,14b,14cが接続される)、ここで得られた生体データは、携帯端末17にてIPネットワーク21に接続し、パケット通信にて伝送される。なお、前記リーダーユニット19内に歩数表示計を内蔵すれば、外出時における消費カロリーが得られ、電子カルテにも反映されて有効利用できる。
【0037】
上記のようにして、サービス利用者9が家庭・介護施設1内の何処にいようとも又は外出中であっても、生体データを欠損することなく年間を通して24時間且つリアルタイムに収集することができる。
【0038】
次に、上記IPネットワーク21により全てのサービス利用者9の生体データを24時間且つリアルタイムに取得して所定フォーマットによる生体情報の作成及びデータベース蓄積を行うため、大型コンピュータ25a及びデータベース26aを設置したデータ処理手段としての情報処理センター22と、前記生体情報を医学的に解析して所定フォーマットによる電子カルテの作成及びデータベース蓄積を行うため、大型コンピュータ25b及びデータベース26bを設置したデータ管理手段としての疾病予兆管理センター23と、前記電子カルテを基に正常時と比較して生体変化が急変又は基準値を超えたサービス利用者9の個別介護と状況に応じて救急発動を行うため、サーバー27を設置した介護救急手段としての介護・救急センター24を配置する。
【0039】
上記情報処理センター22にて作成された全てのサービス利用者9の生体情報はIPネットワーク21を介して疾病予兆管理センター23に伝送され、更に前記疾病予兆管理センター23にて作成された全てのサービス利用者9の電子カルテも同様にIPネットワーク21を介して介護・救急センター24に伝送される。前記情報処理センター22と疾病予兆管理センター23及び介護・救急センター24は終日運営され、全てのサービス利用者9の生体情報は24時間且つリアルタイムに監視される。このため、全てのサービス利用者9の身体状況が時と場所を限定せずに年間を通して24時間且つリアルタイムに管理され、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるべく生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理を行うことが可能となる。なお、疾病予兆管理センター23は、新設された機関や既存の医療機関など、何れの業態であっても構わない。また、介護・救急センター24は、民間又は公共の介護センター又は救急センターなど、何れの業態であっても構わない。
【0040】
ここで、サービス利用者9の電子カルテを基に正常時と比較して生体変化が急変又は基準値を超えたと判断された場合、サービス利用者9が家庭・介護施設1内にいる場合には、当該家庭・介護施設1内のユーザー端末6に接続されたカメラ7及びモニタ画面にて疾病予兆管理センター23内の専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行う。また、サービス利用者9が外出中の場合には、サービス利用者9が所持する携帯端末17のモニタ画面にて疾病予兆管理センター23内の専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行う。そして、症状に問題なければ適切なアドバイスがなされ、緊急性を有する場合には介護・救急センター24より、担当介護士や看護師の派遣又は救急車の出動等が行われる。
【0041】
上述のサービス利用者9は、生活習慣病にかかるリスクの高い人であるとともに本疾病予兆管理システムの運営体とサービス利用契約を締結することによりサービス提供が受けられる。運営規模は、市,町,村など単位が好ましい。また、サービス利用料は、運営体が民間や自治体等により有料又は無料等任意に設定して構わない。
【0042】
また、上述の電子カルテは疾病予兆管理センター23内の専門医等や、介護・救急センター24内の担当介護士や看護師が閲覧して、サービス利用者9の身体状況を管理するために使用されるが、サービス利用者9は、自らの要求により、家庭・介護施設1内のユーザー端末6のモニタ画面又は自己が所持する携帯端末17のモニタ画面にて自己の傷病履歴等を電子カルテで閲覧することができ、更に当該電子カルテを基に専門医等のカウンセリングを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の疾病予兆管理サービスを実施するための概略システム構成図である。
【図2】本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第一実施例のシステム構成図である。
【図3】本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第二実施例のシステム構成図である。
【図4】本発明の疾病予兆管理サービスにおける外出中のサービス利用者とネットワーク間のシステム構成図である。
【図5】本発明の疾病予兆管理サービスで用いるセンサ機能付きRFIDタグの一実施例による構成図である。
【図6】図2における通信系統図である。
【図7】図3における通信系統図である。
【図8】図4における通信系統図である。
【図9】本発明の疾病予兆管理サービスにおける家庭・介護施設内の第三実施例のシステム構成図である。
【図10】図9における通信系統図である。
【図11】図9及び図10におけるシームレス通信の原理図である。
【符号の説明】
【0044】
1 家庭・介護施設
2 電力線
3 PLCモデム
4 固定リーダー
5 RF通信装置
6 ユーザー端末
7 カメラ
8 ベッド
9 サービス利用者
10 センサ機能付きRFIDタグ
11 RFIDチップ
12 アンテナ
13 充電用コンデンサ
14 センサ
15 接続端子
16 粘着シート
17 携帯端末
18 携帯用リーダーユニット
19 リーダーユニット
20 リピーター
21 IPネットワーク
22 情報処理センター
23 疾病予兆管理センター
24 介護・救急センター
25 大型コンピュータ
26 データベース
27 サーバー
28 リーダーモジュール
29 RF通信モジュール
30 ハイブリッドタグ
31 電源線
32 データ信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該サービス利用者の身体の特定管理部位の生体データの平常状態と異常状態との変化の検出を行なう検出手段と、前記サービス利用者が家庭・介護施設内又は外出中の何れの場所にいても前記生体データを収集して通信ネットワークに伝送を行う通信手段と、前記通信ネットワークより全てのサービス利用者の生体データの平常状態と異常状態との変化を24時間且つリアルタイムに取得して所定フォーマットによる生体情報の作成及びデータベース蓄積を行うデータ処理手段と、前記生体情報を医学的に解析して所定フォーマットによる電子カルテの作成及びデータベース蓄積を行うデータ管理手段と、前記電子カルテを基に正常時と比較して生体変化が急変又は基準値を超えたサービス利用者の個別介護と状況に応じて救急発動を行う介護救急手段と、を有したシステムにおいて、
全てのサービス利用者の身体状況が時間と場所を限定せずに年間を通じて24時間且つリアルタイムに取得管理され、生活習慣病や骨折等の傷病の発生を予兆して寝たきり患者の発生を減少させるため、前記生体情報の変化を根拠としてサービス利用者毎に最適な早期予兆検出及び管理が行えることを特徴とした、疾病予兆管理サービス。
【請求項2】
上記検出手段として、バッテリーレスタイプのセンサ機能付きRFIDタグに少なくとも1個以上のセンサを接続して構成し、前記センサ機能付きRFIDタグ及びセンサは、粘着シートにて皮膚に直接貼り付けることができる可撓性を有した薄いシート形状とすることを特徴とした、請求項1に記載の疾病予兆管理サービス。
【請求項3】
上記通信手段として、家庭・介護施設内においては、固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との通信が行える範囲内では前記固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との無線通信を行い、固定リーダーとセンサ機能付きRFIDタグ間との通信が遮断されて行えない範囲内では前記RF通信装置とRF通信モジュール間との無線通信を行い、どちらか一方を自動的に適宜切換えることによるシームレス通信が行えることを特徴とした、請求項1又は請求項2に記載の疾病予兆管理サービス。
【請求項4】
上記介護救急手段として、サービス利用者が家庭・介護施設内にいる場合は、当該家庭・介護施設内のユーザー端末に接続されたカメラ及びモニタ画面にて専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行い、サービス利用者が外出中の場合は、当該サービス利用者が所持する携帯端末のモニタ画面にて専門医等と映像対話又は電話による音声対話にて状況確認を行い、救急処置が必要と判断された場合は、救急車を出動することを特徴とした、請求項1から請求項3の何れかに記載の疾病予兆管理サービス。
【請求項5】
サービス利用者は、自らの要求により、家庭・介護施設内のユーザー端末のモニタ画面又は自己が所持する携帯端末のモニタ画面にて自己の傷病履歴等を電子カルテで閲覧することができ、更に当該電子カルテを基に専門医等のカウンセリングを受けることができることを特徴とした、請求項1から請求項4の何れかに記載の疾病予兆管理サービス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−40761(P2008−40761A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213879(P2006−213879)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(394007610)株式会社テルヤ (30)
【出願人】(301046617)ペガサスネット株式会社 (34)
【出願人】(501360979)
【Fターム(参考)】