説明

病原体に対して活性を有するバイオサイド薬剤としての担子菌菌類類由来の炭水化物組成物

本発明はオリゴ糖を含む生物学的に活性な組成物を提供し、前記組成物は菌類培養を増殖させることによって製造され、使用のために少なくとも部分的に精製される。本発明の組成物は、抗菌活性、抗カビ活性及び殺線形動物活性を有し、したがって生育植物に対するそのような病原体の影響を減少させるために、表面及び物質内でそのような病原体の発生を減少させるために、並びに動物及び人間におけるそのような病原体によって引き起こされる感染を処置するために有用である。本発明はまた、ある種の菌類培養からそのような組成物を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2005年8月1日に出願された米国仮出願第60/704,824号に基づくものであり、該出願の全部を引用により本書に繰込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、微生物および他の病原体に対して活性を有する新規な組成物に関する。前記組成物は、担子菌類のある一定の種によって製造(産生)される。本発明は、多様な病原性生物(線形動物、菌類及び細菌を含む)に対してバイオサイド活性を有する、炭水化物含有組成物を提供する。本発明はまた、前記生物活性物質の産生を強化する担子菌菌類の増殖条件、並びにこれら組成物を用いて植物病原体によって引き起こされる被害から植物を保護するためにこれら組成物を使用する方法及び他の適用における方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
きのこのいくつかの種は有毒又は幻覚誘発性であることは周知である。数種は、線形動物又は他の菌類種に対するバイオサイド活性とともに、ヒトに対し病原性を有するいくつかの細菌に対する抗菌活性を有する代謝産物を産生することが報告されている。例えば、Colettoらは、ある種の担子菌類(ラエチポルス・スルフレウス(Laetiporus sulphureus)を含む)の培養由来のろ液に関して、ヒトに対し病原性を有するグラム陽性及びグラム陰性の両細菌に対する活性を報告している(M.A.B. Coletto et al. “ Basidiomiceti in relazione all'antibiosi. Nota XI. Attivita antibatterica e antifungina di 25 nuova ceppi”, Allionia, 35:95-101 (1997)(英語による要約))。Colettoはまた、病原性菌類に対する活性についていくつかの菌類を調べた(上掲書)。種々の菌類によって産生される生物活性を有する化合物のいくつかの要旨は以下で提供される:Doctoral Thesis of Loreto Robles Hernabdez, University of Idaho, March 2005。性状を調べられたこれらの化合物の大半はペプチド又はテルペノイド化合物のどちらかであり、生物活性を有する菌類由来の炭水化物はこれまでほとんど報告されていない。植物病原体に対し活性を有する菌類の代謝産物についてもまた比較的わずかしか知られていない。しかし、米国特許第6,517,851号及び米国特許第6,048,714号は、油を含む培地で菌類を培養することにより産生されるある種の組成物の殺線形動物活性を報告し、さらに少なくとも1つの報告は、ラエチポルス・スルフレウスはシンナムアルデヒドを産生することができることを提示している(シンナムアルデヒドはある種の昆虫に対し及び植物を害する病気に対し殺虫活性を有することが知られている)(S. Rapior et al. “Volatile composition of Laetiporus sulphureus”, Cryptogamie Mycologie, 21:67-72, 2002(英語による要約は)及びCINNAMITE(登録商標)殺ダニ剤の見本のラベル(ダニ、アリマキ及びうどん粉病に対する活性を開示している))。これらの報告の他に、種々の研究が、担子菌類の香り及び臭いを提供する揮発性物質の構造を開示し、これら菌類によって産生されるいくつかの多糖類の性状を調べている(例えば以下を参照されたい:S. Wu et al. “Characteristic Volatiles from Young and Aged Fruiting Bodies of Wild Polyporus sulfurous”, J Agricultural and Food Chem 2005, 53:4524-28;及びG. Alquini et al. “Polysaccharides from the fruit bodies of basidiomycete Laetiporus sulphureus (Bull.: Fr.) Murr”, FEMS Microbiology Lett 230:47-52, 2004)。種々の菌類により産生される非常に多様な生物活性化合物のために、それらは植物病原体に対して活性を有する天然の生成物の豊富な供給源であるはずである。
【0004】
担子菌菌類は、食用きのこ、有毒きのこ、ホコリタケ及び顕微鏡的な種さえも含まれる非常に多岐にわたる菌類の大きなファミリーであり、多くが少なくともいくつかの生物学的活性を示している。ガノデルマ・ルシドゥム(Ganoderma lucidum)は、強力な免疫調節作用を有する物質を産生するために漢方薬では公知の担子菌類きのこである(Bao, Wang, Dong, Fang & Li, “Structural Features of immunologically avtive polysaccharides from Ganoderma lucidum”, Phytochemistry, 59:175-81 (2002);Su et al. “Fungal mycelia as the source of chitin and polysaccharides and their applications as skin substitutes”, Biomaterials, 18:1169-74 (1997))。免疫調節化合物に加えて、いくつかのガノデルマの種は殺菌活性を示した。ガノデルマの種(G. ルシドゥム、G.フェイフェリ(Pfeifferi)及びG.レシナセウム(resinaceum))の粗抽出物は枯草菌(Bacillus subtilis)の増殖を阻害した(Suay et al. “Screening of basidiomycetes for antimicrobial activities”, Antonie van Leeuwenhoek, 78:129-39 (2000))。しかしながら、バイオサイド活性を有するこれらの菌類に由来するオリゴ糖は未だ報告されていない。
【0005】
限定的な抗カビ活性が担子菌類の代謝産物で報告されている。オイスターマッシュルーム、プリューロツス・オストレアツス(Pleurotus ostreatus)は、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)の増殖を阻害した(Gerasimenya et al. “Antimicrobial and antitoxical action of edible and medicinal mushroom Pleurotus ostreatus (Jacq.:Fr) Kumm. Extracts”, Int J Med Mushrooms, 4:106 (2002))。アナタケ目(Poriales)のメンバー、グロエオフィルム・セピアリウム(Gloeophyllum sepiarium)は、S.セレビシアエ(cerevisiae)及びアスペルギルス・フミガツス(A. fumigatus)に対してアンタゴニスト活性を有していた(Suay et al. 2000)。ガノデルマ・アプラナツム(G. applanatum)は、アルミラリア・ルテオブバリナ(Armillaria luteobubalina)の根状菌糸束の成長を妨げることが報告された(M. Perch, “In vitro interactions between Armillaria luteobubalina and other wood decay fungi”, Mycol Res 94:753-61 (1990))。したがって、種々雑多な菌類の増殖抑制を引き起こす担子菌類代謝産物に関する多数の報告が存在するが、実際的な殺カビ活性に関する報告、又は菌類による被害から栽培植物又は菌類を保護する有用性に関する報告はほとんどない。
【0006】
きのこの代謝産物の殺線形動物活性は非常に稀な事例で報告され、多くの場合、寄生状態に起因すると考えられている。しかしながら、ある種の菌類培養によってもたらされる殺線形動物活性が、米国特許6,517,851号及び米国特許6,048,714号で報告されている。さらに、最近、“Maui LCF”(LCFは“液体コンポスト因子(liquid compost factor)”を意味する)として知られている市販の肥料製品が、いくつかの植物で線形動物に対する耐性を誘発するといわれている。Maui LCFは、植物由来材料(パイナップル、パパイヤ及びサトウキビ材料を含む)から成る培地でL.スルフレウスを増殖させることによって製造される肥料である。これは植物の健康を増進させ、農薬依存を減少させる手段を提供する(Economic Development of Hawaii, “Activities Underway in 2003”(http://www.epa.gov/oppbppd1/PESP/publications/vol6se/IIIF-edah.htmでオンラインで利用できる))。水性環境下での植物材料のコンポストに由来するこの液体は加熱してタンパク質を変性させ、続いてろ過して固形物を除去し、更なる精製を実施しないで褐色の溶液として販売される。Maui LCFは、既に植物又は種子が導入されている土壌、又は将来植物又は種子が導入されうる土壌に、肥料又は肥料添加物として適用される;これは栄養及び植物成長調節化合物を提供するが、農薬としては分類されない。Maui LCFに関する明白な殺カビ活性についてのいくつかの報告が存在する:加熱はMaui LCFの殺カビ活性を破壊するという実験室での証拠を考慮すれば、殺カビ活性が観察されたことはMaui LCFバッチの“不十分加熱”に起因すると考えられる。
【0007】
したがって、担子菌菌類は、有用な生物学的活性を有する多様な分子を産生するが、植物保護剤の供給源としては十分には開発されてこなかった。さらにまた、植物病原体、特に植物細菌に対する活性を有する菌類由来の生物活性はほとんど知られていない。農耕植物及び観賞植物の昆虫及び菌類による病気の破壊的影響ははるかに大きいが、植物の細菌による病気は、毎年数十億ドルに値する被害をもたらし、それらに対する有効な処置はほとんど存在しない。植物細菌に対して活性を有する抗菌剤、特に天然産物に由来する抗菌剤は極めて価値があるであろう。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、植物の保護に有用な、担子菌菌類由来の新規な抗菌性炭水化物又はオリゴ糖化合物及び組成物を提供する。本発明はまた、1種類の担子菌菌類の培養液から製造されたコンポストティー(compost tea)を提供する:このティーの組成は完全には性状を決定されていないが、植物及びそれらの果実又は野菜生産物を植物病原体によって引き起こされる被害から保護し、さらに病原体によって引き起こされる被害からの回復を促進する。これらの化合物及び組成物は、植物病原体(細菌、菌類及び線形動物を含む)に対するバイオサイド活性を備え、植物病原性細菌を抑制又は殺滅する抗菌剤としてのそれらの活性のために特に有用である。本抗菌組成物はまた、シロアリ及び/又は菌類によって引き起こされる木材への被害を防ぐ木材防腐剤としての活性を有する。
【0009】
本発明は、ある種の担子菌菌類種によって製造される新規なオリゴ糖又は炭水化物含有バイオサイド抗菌組成物を提供する。特に、本発明は、いくつかの担子菌種(ガノデルマ・ルシドゥム及びラエチポルス・スルフレウスを含む)によって産生される炭水化物物質を含む新規な組成物、及びそれらを用いて栽培植物及び植物生産物を保護する方法を提供する。本発明はまた、担子菌菌類培養を増殖させることによってそのような組成物を製造する方法(大規模製造時に生物活性を有する種の収量を改善する方法を含む)を提供する。
【0010】
本発明はまた、担子菌培養によって製造されるコンポストティー(compost tea)を提供する。このティーは、植物保護物質活性及び病原体に対する有用な他のバイオサイド活性を有する多数の活性な因子を含み、例えば滅菌又は植物性物質を除去するろ過のような方法によって、又は例えば逆浸透のような他の濃縮方法によって部分的に精製することができる。本発明はまた、前記生成物の活性を高める本明細書に記載の組成物の製造方法を提供し、前記方法には好ましい培養液及び増殖条件が含まれる。
【0011】
Maui LCF(LCFは液体コンポスト因子を意味し、L.スルフレウスの液体培養液から収集された褐色の粗溶液として販売されている)として知られているラエチポルス由来物質が製造され、その植物成長調節作用及び植物栄養(肥料)作用のために既に用いられているが、前記菌類及び他の担子菌菌類の増殖並びに前記由来の培養液の加工のために改変したプロセスが、予想に反して植物病原体及び他の病原体の制御を提供する生成物を産生し、一方、前記生成物は植物の成長を過剰刺激(これは所望されないであろう)しないことが今や見出された。本発明の組成物はまた、植物及び/又は植物生産物の変色を引き起こすことなく(変色は従来技術の粗組成物では発生しえる)これらの活性を保持する。前記新規組成物は副作用が減少し、植物病原体に対して用いられたとき、植物又は植物生産物の被害を減少させ、収量及び作物の品質を向上させ、病原体(菌類、細菌及び線形動物(線虫類、nematodes)を含む)によって生じた被害の後で被害を受けた植物又は果実の回復を促進する。本組成物は、処理されるべき葉及び/又は植物生産物及び/又は果実若しくは野菜に、又はそのような植物の近傍の土壌、又は植物の根に直接与えることができる。
【0012】
本発明のある種の組成物は、高等動物で病気を引き起こしえる微生物に対する抗菌活性を備える。したがって、本組成物はそのような非植物病原体を殺滅するか又は前記病原体の増殖を予防することができる。非植物病原体に対し使用するためには、組成物は治療を受ける哺乳動物に投与するか、又はそれらは処置されるべき表面に当分野で公知の手段を用いて適用することができる。それらは、例えば、病原体について治療を受ける動物又は病原体から防御されるべき動物に有効量の本発明の組成物を投与することによってin vivoで用いることができる。また別には、本組成物は、そのような非植物病原体による汚染が疑われる表面に適用するか、又は液体(例えば病原体の増殖培地として機能しうる標準的な水(standing water))に適用するか、又は前記と混合することができる。さらにまた、それらは、昆虫若しくは病原体の媒介生物として機能しうる他のキャリアー、又はそのような昆虫もしくは他のキャリアーの場所に適用することができる。後者のアプローチは、動物が暴露される病原体の数及び/又は生存率を減少させることによって、前記暴露が病原体との直接接触を含むか病原媒介生物による病原体の送達を含むかにかかわらず、動物が感染する可能性を低下させる。
【0013】
本発明の組成物は多数の活性な物質種を含むことができ、したがって多数のメカニズムによって機能しうる。本発明はしたがって、担子菌培養液に由来する新規な抗菌組成物を提供し、前記組成物は、異なる多様な植物居住性細菌及び他の病原体の増殖を停止させるか、又は1つ若しくは2つ以上の病原体に対する全身的抵抗性を誘発するか、又は病原体によってもたらされる被害に対する植物の耐性を誘発する活性を有する。前記培養液は粗雑な形態で用いることができるが、また、公知の精製方法を前記培養液に適用することによって活性な組成物を得ることもできる。植物居住性細菌に対する本組成物の活性は新規であると考えられ、抗菌化合物を含む部分的に精製された組成物もまた新規である。
【0014】
G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液もまた、試験したほとんどの菌類に対して殺カビ活性を有することが観察された。この活性は実験室的に安定であったが(bench stable)(空気に暴露されたとき周囲温度(室温)では安定である)易熱性であり、この活性は殺菌活性以外の種々の性質を有することが示唆された。いくつかの報告は、きのこのいくつかの種は、いくつかの植物病原性菌類に対して殺カビ活性を有することを示した。しかしながら、G.ルシドゥム又はL.スルフレウスの殺カビ活性は、この実験で用いた病原体に対しては従来から報告されていない。
【0015】
さらに、本発明の組成物の殺菌作用を木材の保存に用いることができる。シロアリの被害を受ける木材に適用するとき、本組成物は、シロアリによる木材の滅失を防ぐか(摂食阻害剤活性)、又は木材を滅失させるシロアリの損傷若しくは死滅をもたらす(殺シロアリ活性)。作用理論には拘束されないが、この作用は、セルロースを消化するためにシロアリが必要とする共生細菌に対する本組成物の毒性に帰するかもしれない。したがって、本組成物は、シロアリによる被害を防ぎ、さらにある種の木材腐朽菌類によって引き起こされる被害も防ぐことができる材木用の天然の保護剤を提供する。本組成物は、木材保護に典型的に使用される、潜在的に危険な砒素、銅及びクロム化合物より安全な代替物を提供するために十分に生物分解性であり、市販の多くのシロアリ駆除剤よりも毒性は低い。
【0016】
高等動物に影響を及ぼす病原体(菌類及び微生物、例えばトリパノソーマ及び他の原生動物又は細菌を含む)もまた、本発明の組成物によって制御される。本組成物を用いて、感染生物内で微生物を殺滅するか又はその増殖を制御することができ、そのような微生物を支持及び伝播する宿主又は病原媒介生物内で、及びそのような微生物による汚染が疑われる物質中若しくは物質上で微生物を殺滅するか又はその増殖を制御することができる。前記組成物は通常の手段によって投与又は送達することができる。対象者(例えばヒト)への投与の場合、約30 brix濃度の組成物が、L.スルフレウス又はG.ルシドゥムの培養から本明細書に記載の方法によって調製される。この組成物を典型的には10xから100xに稀釈し、続いて経口的又は非経口的に対象者に投与することができる;投与経路は処置される病原体の型に左右され、そのような方法の選択は当業者の技量の範囲内である。1回投与でも有益でありえるが、典型的には対象者は少なくとも2回投薬され、しばしば対象者は1日につき少なくとも1回投与で2−7日間処置されるであろう。
【0017】
病原体の制御が必要な表面又は物質への適用の場合、上記記載の組成物を調製し、続いて1:100から1:2000の割合に稀釈し、その後で処置されるべき表面又は物質に通常の手段を用いてこれを直接適用することができる。
【0018】
本組成物はまた、菌類感染及び寄生生物感染(例えば条虫、白癬など)の処置または制御に用いることができる。これらの処置は、病原体、例えば白癬の皮膚感染、足指のつめの菌類、汗疱状白癬などに対して経皮投与によって実施することができる。本組成物を患部領域に直接、場合によってDMSOのような賦形剤と一緒に適用(塗布)することができる(前記賦形剤は、それがなければ皮膚への浸透が遅い化合物の経皮送達を促進する)。これらの適用の場合、本発明の組成物、例えば、L.スルフレウス又はG.ルシドゥムの培養液から調製されたものを乾燥又はほぼ乾燥するまで濃縮し、さらに皮膚適用に許容されえる溶媒又は溶媒混合物、例えばエタノール若しくはイソプロピルアルコール及び水、又はDMSO中の溶液にサンプルを溶解又は懸濁させることが時には望ましい。治癒効果が観察されるまで適用を繰り返すことができる。
【0019】
これらの組成物の低コスト及び低毒性のために、それらは、露出表面;水(飲料水源、地表水及び井戸を含む);及び汚染されうる他の表面又は領域の処置に有用であろう。それらの適用によって、そのような表面上の又はそのような物質中の感染性病原体に動物及び人間が暴露されるのを減らすことができる。
【0020】
本組成物の抗病原体活性はまた、ヒトを含む哺乳動物で疾患を引き起こす細菌、線形動物、原生動物などの増殖を遅らせるか、又は死滅させるために用いることができる。本組成物は、人間の疾患を引き起こす原生動物に対して活性を有することが示されている。したがって、本組成物を用いて、動物及び人間におけるそのような疾患を治療し、さらに宿主の体外で病原体を死滅させるか又は増殖を停止させることにより、又は病原体の伝播を促進する宿主又は病原媒介生物に本組成物を投与することによってそのような疾患の伝播を防ぐことができる。本組成物は、そのような疾患の治療又は予防のために部分的に精製した形態で用いることができ、従来の手段で投与することができる。
【0021】
動物及び/又は人間の治療に使用される組成物の製造は、追加の精製工程、例えば無菌性を担保するための限外ろ過等を含むことができ、さらに添加成分(例えば安定化剤及び/又は保存料)を含めて前記組成物を医療的な使用のために適切な形態で維持することができる。
【0022】
本発明の生物活性を有する組成物の製造を高める増殖培地の選択は本発明のまた別の特徴である。G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液は、例えば殺線形動物活性を有する。この活性は適切な富裕培地で培養することによって高めることができる。例えば、PDB(ジャガイモデキストロースブロス、従来の増殖培地)を用いて前記生物活性培養液を製造するときは、殺線形動物活性は、特別な富裕ブロス培地(RBM)で作成した培養液で観察される活性よりも顕著に低い。増殖培地としてRBMを用いることによるこの生物活性強化は、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの両方によって製造される培養液で観察された。RBMは、種々の炭素源(トウモロコシグルテン、糖蜜、オートミール、ビール酵母、植物油、シュクロースなどを含む)を含む富裕培地であり、一方、PDBは炭素の主要供給源としてジャガイモデンプンを含む。
【0023】
本発明は、バイオサイドオリゴ糖又はそれらを含む組成物を製造する方法であって、担子菌菌類を実質的に液体の培地で増殖させることを含む方法を提供する。使用される培地は産生される生物活性を有するオリゴ糖の量に対して顕著な効果を有する;したがって、前記増殖培地の構成は本発明のまた別の特徴であり、増殖培地を注意深く選択して、代謝産物含有量、及びそれにしたがって組成物の生物学的活性を改変することができる。本発明の組成物を濃縮する方法及び/又はその活性な形態を部分的に精製する方法もまた提供される。前記方法には、生物活性を保存するために過剰な加熱を加えずに活性物を濃縮する方法が含まれる。本発明の組成物は、生きている植物又はそのような植物が生育している場所に適用して、植物病原体の増殖を低下させるために有用である。それらはまた、保護されるべき植物を生育させる媒体の処理又は補充に、例えば実質的に土壌を用いることなく植物を生育させる水耕栽培媒体と混合させることによって、用いることができる。本組成物はまた、それらが病原体を排除しない場合であっても、病原体が感染植物及び植物生産物に対して有する悪影響を減少させるために有用である;本組成物は、植物の天然の防御手段を系統的に活性化して病原体に対する抵抗性又は被害に対する耐性を促進することによって機能するようである。したがって、本発明のまた別の視点には、これら化合物及び組成物を用いて植物及び植物生産物に対する病原体の悪影響を減少させる方法が含まれる。
本発明の実施の態様
【0024】
本明細書で用いられる、“炭水化物”及び“オリゴ糖”という用語は、少なくとも50重量%単糖類又は単糖類誘導体で構成されている任意の化合物を指すために用いられる。“オリゴ糖”は、少なくとも5つの単糖類又はその誘導体の直鎖又は分枝鎖を含み、一方、炭水化物は、オリゴ糖と同様に、単糖類及び二糖類並びに単糖類のより短い鎖を前記の誘導体と同様に含む。
【0025】
単糖類間の結合型は、各結合がエーテル基を含むかぎり重要ではない。単糖類の誘導体にはアミノ糖、O-アシル糖、デオキシ糖などが含まれる。“炭水化物”又は“オリゴ糖”は、単糖類又はその誘導体の鎖の他に、他の化学的構造的な特徴を含んでいてもよい。本明細書で用いられる“炭水化物”は、主として単糖類を含み(すなわち化合物の分子量の少なくとも50%が単糖類基に由来する);炭水化物中の単糖類基又はその誘導体は直鎖又は分枝鎖であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0026】
抗菌組成物は、少なくとも1つの生物活性化合物を含むが、この化合物は、プロテイナーゼ活性に対して安定であり、オリゴ糖構造を含み、さらに全分子量が約2000から5000である。前記組成物は、担子菌菌類を増殖させることによって産生される少なくとも部分的に精製された生成物であり、それらは、細菌、菌類及び線形動物から選択される少なくとも1つのタイプの植物病原体に対して、又は高等動物に感染する少なくとも1つの病原体(細菌、菌類、線形動物及び種々の寄生生物を含む)に対してバイオサイド活性を保有するので有用である。
【0027】
本発明の化合物及び組成物は、それらが対象とする特定の種の少なくとも50%の増殖低下をもたらす場合、又はそれらが少なくとも1つの栽培植物又は植物生産物に統計的に有意な保護効果をもたらす場合には“活性を有する”。したがって、組成物は、それらが例えば植物病原性細菌の少なくとも1つの種に対して活性を有する場合には、植物殺菌剤として活性を有する。
【0028】
化合物及び組成物は、それらが植物病原性細菌、菌類又は線形動物の少なくとも1つの種に対して活性を有する場合には、本明細書で用いられるように“バイオサイド”性である。
【0029】
一つの視点において、本発明は、植物、植物生産物及び菌類を種々の植物病原体によって引き起こされる悪影響から保護するために有用なある種の化合物及び組成物を提供する。本発明の組成物は、担子菌菌類によって産生されるバイオサイド性オリゴ糖を含む。前記オリゴ糖化合物は、構造によって部分的に特徴付けられ、さらに、それらの物理的特性、安定性及び生物活性(特に植物病原性細菌、菌類及び線形動物に対するそれらのバイオサイド活性)によって、及びそれらの産生方法によってより十分に定義される。
【0030】
別の視点において、本発明は、少なくとも1つの担子菌菌類を用いて、ある種の生物活性化合物及び組成物を製造する方法を提供する。前記方法は、菌類の増殖を支援する炭素源及び他の栄養物を含む実質的に液体の培地で菌類を増殖させることを含む。前記菌類は、少なくとも1つの生物活性化合物を、前記菌類が増殖している培養液中に分泌する。したがって、本発明は、担子菌菌類を増殖させる方法において、当該担子菌菌類は、少なくとも1つのバイオサイド性代謝産物を本発明の組成物を製造可能な培養液に蓄積する方法を提供する。
【0031】
別の視点において、本発明は、これらの生物活性化合物及び組成物を使用して、植物、植物生産物又は菌類(例えば栽培作物、観賞植物、樹木及びブドウの木、並びにきのこ)に対する多様な病原体の悪影響を軽減する方法を提供する。前記方法は、保護されるべき植物、植物生産物若しくは菌類、又はその場所、又はその育成媒体を本明細書により十分に記載された化合物又は組成物と接触させることを含む。
【0032】
本発明はまた、培養液を加工して、本明細書に記載する生物活性を有する物質種を有効な濃度で含むティー(組成液ないし液状体)(tea)又は他の洗練組成物を製造する方法を提供する。これらの方法は、菌類を本明細書に記載された培地、形態によっては少なくとも約10%の果汁を含む培地上で増殖させること、及び容器自体の表面に加えて、増殖培地中に浸漬されるか又は増殖培地と接触される追加の菌糸支持増殖表面を与える増殖チャンバーの使用を含む(前記チャンバーは、)。これらの表面は、本組成物の活性成分の産生を高める、より多くの、さらにより速い菌糸の増殖を促進する;したがって与えられた培養体積による菌類培養物のより迅速な増殖及びより大量の活性組成物の産生を可能にする。典型的には、容器を含む全増殖表面は、培地1リットルにつき少なくとも約50cm2、好ましくは培地1リットルにつき少なくとも約100cm2、又は培地1リットルにつき少なくとも約200cm2を確保し、しばしば前記体積は容器当たり少なくとも100リットルである。理想的には、追加の表面は、容器単独に比べて、培地1リットルにつき利用可能な表面積の少なくとも50%増加を確保する。これらの方法を用いると、前記培養によってより多くの活性なオリゴ糖組成物が産生され、その結果ある与えられた体積の培地によってより高い活性を有する組成物が製造される。いくつかのそのような方法では、ブロスは、増殖期に菌蓋を実質的に破壊することなく混合又は攪拌される。製造方法は一般的には複雑ではないが、一方、この改善方法は生産性を高め、本明細書に記載の組成物の製造に要求される空間及び時間をより効率的に利用する。
【0033】
本発明の化合物及び組成物を製造するために好ましい菌類は担子菌(Basidiomycetes)、すなわち植物とともに存在しさらに増殖を植物に依存する一群の菌類である。担子菌は多くの異なる形態をとる:それらには、ホコリタケ及びいくつかの“古典的”きのこ等、死んだ植物材料上で生活する種が含まれ、それらのいくつかは食用で、いくつかは極めて有毒である;それらにはまた、サビキン類(rusts)又はクロホキン類(smuts)と称される顕微鏡的菌類が含まれ、これらは種々の作物植物及び植物生産物に対する重大な経済的被害の原因である。担子菌のラエチポルス種(Laetiporus)は、本発明のいくつかの実施態様にとって好ましく、抗菌活性を有する組成物の製造に特に有用である。前記抗菌活性には、マラリア、リーシュマニア症及び他の疾患を引き起こす原生動物;シャーガス病を引き起こすトリパノソーマ、フィラリア症、象皮病(elephantitis、elephantiatisの誤記)を引き起こす線形動物、及びイヌ糸状虫など;並びにヒト及び家畜を罹患させる他の病原体に対する活性が含まれる。L.スルフレウス(L.sulphureus)は、その有利な増殖性のため時には好ましい。ガノデルマ種(Ganoderma)はいくつかの実施態様で好ましく、G.ルシドゥム(G.lucidum)は時には好ましい。
【0034】
いくつかの担子菌菌類は枯死植物の腐敗かすで増殖するが、担子菌菌類、特に実質的に液体の培養液で増殖する菌類によって、生育中の植物を細菌、菌類及び線形動物等の多くの病原体の悪影響から保護するために有用な化合物が産生されることが今や見出された。
【0035】
本発明の化合物及び組成物を製造するために好ましい担子菌属はガノデルマ属である。特にガノデルマ・ルシドゥム、すなわち腐敗樹木かすで生育する種は、有機物質富裕水性培地で培養したとき、顕著な量の本発明の生物活性物質を産生することが示されている。さらにまた、活性組成物は、G.ルシドゥムが増殖した培養液から製造することができ、前記培養液中の活性成分の力価は、本明細書に記載された適切な増殖条件を使用することによって高めることができる。
【0036】
本発明で使用される別の好ましい担子菌の属(genus)はラエチポルス、特にラエチポルス・スルフレウスである。ラエチポルス・スルフレウス(“サルファー・シェルフ(Sulphur shelf)”又は“チキン・オブ・ザ・ウッズ(Chicken of the Woods)”)は硬材樹木の創傷部寄生生物である。それはハワイでチョウジ(Eucalyptus robusta)に通常的に見出される。それはまた、液体培地で好都合に増殖し本発明の組成物を製造することができる。
【0037】
担子菌ファミリーの他の属(genera)のメンバーもまた本発明の目的の範囲内で生物活性オリゴ糖の製造に用いることができる。これらには以下が含まれる:
アガリカ目(Agaricales):
アガリカ科(Agaricaceae)
ボルビチア科(Bolbitiaceae)
クラヴァリア科(Clavariaceae)
コプリナ科(Coprinaceae)
コルチナリア科(Cortinariaceae)
エントロマタ科(Entolomataceae)
フィスツリナ科(Fistulinaceae)
ヒドナンギア科(Hydnangiaceae)
リコペルダ科(Lycoperdaceae)
マラスミア科(Marasmiaceae)
ニドゥラリア科(Nidulariaceae)
プリューロタ科(Pleurotaceae)
プルテア科(Pluteaceae)
ストロファリア科(Strophariaceae)
トリコロマタ科(Tricholomataceae)
ボレタ目(Boletales)
ボレタ科(Boletaceae)
ギロポラ科(Gyroporaceae)
パキシラ科(Paxillaceae)
スクレロデルマータ科(Sclerodermataceae)
スイラ科(Suillaceae)
カンタレラ目(Cantharellales)
カンタレラ科(Cantharellaceae)
クラヴリナ科(Clavulinaceae)
ヒドナ科(Hydnaceae)
ダクリミセタ目(Dacrymycetales)
ダクリミセタ科(Dacrymycetaceae)
エキソバシディア目(Exobasidiales)
エキソバシディア科(Exobasidiaceae)
ヒメノカエタ目(Hymenochaetales)
ヒメノカエタ科(Hymenochaetaceae)
シゾポラ科(Schizoporaceae)
ファラ目(Phallales)
ゴムファ科(Gomphaceae)
ファラ科(Phallaceae)
ラマリア科(Ramariaceae)
ポリポラ目(Polyporales)
フォミトプシダ科(Fomitopsidaceae)
ガノデルマタ科(Ganodermataceae)
グロエオフィラ科(Gloeophyllaceae)
ハパロピラ科(Hapalopilaceae)
メリピラ科(Meripilaceae)
メルリア科(Meruliaceae)
ファネロカエタ科(Phanerochaetaceae)
ポドシファ科(Podoscyphaceae)
ポリポラ科(Polyporaceae)
ステッケリナ科(Steccherinaceae)
ルスラ目(Russulales)
アウリスカルピア科(Auriscalpiaceae)
ボンダルゼウィア科(Bondarzewiaceae)
ヘリシア科(Hericiaceae)
ラクノクラディア科(Lachnocladiaceae)
ルスラ科(Russulaceae)
ステレア科(Stereaceae)
テレフォラ目(Thelephorales)
バンケラ科(Bankeraceae)
テレフォラ科(Thelephoraceae)
トレメラ目(Tremellales)
エキシディア科(Exidiaceae)
トレメラ科(Tremellaceae)
【0038】
本発明の生物活性化合物及び組成物は、少なくとも1つの担子菌菌類を極めて多様な培養条件のいずれかの下で増殖させることによって製造される。担子菌菌類を増殖させるためのいくつかの適切な培養条件は当分野で公知であり、少なくともある種の種(species)に関して用いられる好ましい条件をここに記載する。具体的な種及び生物活性のための増殖条件の最適化は、対象となる具体的な活性のために適切な特性をもつ培地を選択するために例えば本明細書に記載するようなアッセイ方法を用いて、当業者の技量範囲内で実施される。
【0039】
前記組成物は、菌類が合理的な速度で増殖する任意の条件下で製造することができる。しかしながら、いくつかの培地成分及び増殖条件は、生物活性オリゴ糖及び他の生物活性種の産生を高めることが示されている。菌糸生成のための最適な増殖条件を、静止状態下でのG.ルシドゥム及びL.スルフレウスについて決定した。最高の菌糸濃度は、2000mLのエーレンマイヤーフラスコで3.0のpH値、及び30℃の温度でもたらされることが観察された。これらの結果は、振盪状態下のG.ルシドゥムの培養のために最適な条件はpH4.0及び温度35℃であることを見出した(Yang & Liau, “Effect of cultivating conditions on mycelia growth of Ganoderma lucidium in submerged flask cultures”, Bio Eng, 1998, 19:233-36)旨のYangらの報告した結果(1998)とは異なっていた。これらの菌類の増殖のために本明細書で示される培養条件は、抗微生物化合物の産生に非常に有効であった。
【0040】
G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液もまた、試験したほとんどの植物病原性菌類に対して殺カビ活性を有することが示された。この活性は水溶液中で周囲温度では安定であるが易熱性であり、この活性は殺菌活性以外の別個の性質であり、おそらく粗培養液中の種々の化学物質種に起因することが示唆される。わずかな報告において、きのこのいくつかの種が殺カビ活性をいくつかの植物病原性菌類に対して有することが示されている。しかしながら、G.ルシドゥムの殺カビ活性は、本明細書で使用した病原体に対しては従来報告されておらず、さらに、これがL.スルフレウスに関するそのような活性を報告した最初のものであると考える。
【0041】
G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液はまた殺線形動物活性を有する。この活性は富裕培地での培養によって高めることができる。例えば、PDBを用いて生物活性を有する培養液を製造したとき、殺線形動物活性は、RBMで製造した培養液で観察される殺線形動物活性よりも顕著に低かった。RBMは、トウモロコシグルテン、糖蜜、オートミール、ビール酵母、植物油、シュクロース等の種々の炭素源を含む富裕培地であり、一方、PDBは炭素の主要供給源としてジャガイモデンプンを含む。
【0042】
本発明の組成物はまた、ヒトを含む動物に感染する病原体に対しても活性を有する。前記活性には、マラリア、リーシュマニア症及び他の疾患を引き起こす原生動物;シャーガス病を引き起こすトリパノソーマ、フィラリア症、象皮病(elephantitis)を引き起こす線形動物、及びイヌ糸状虫等;並びに炭疽、黄熱病、デング熱、日本脳炎、天然痘、コレラ、リーシュマニア症及び結核等、ヒト及び家畜を罹患させる他の病原体に対する活性が含まれる。例えば、ラエチポルス・スルフレウスの培養液は、30brixシロップの1:2000希釈として用いたとき暴露したマラリア原虫のほぼ半分を殺滅することが見出された。この30brixシロップは、不溶性物質を除去した後で組成物を数秒間のみ煮沸して加熱し、続いて30brix濃度に達するまで華氏約170℃で煮立たせる“短時間煮沸”プロセスによって製造された。抗病原体活性をin vivoで送達するためにこれらの組成物を投与する方法は当分野で公知であり、従来の手段、例えば液体又は固体形態の本発明の組成物の経口送達、例えばIVによる静脈内送達、及び濃縮溶液の非経口的又は筋肉内注射が含まれる。そのような組成物の適切な製剤化方法は当分野で公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed.)に記載されている。
【0043】
一つの視点において、本発明は、本発明の生物活性化合物の産生を高める増殖条件及び液体培地を提供する。いくつかの実施態様では、増殖培地は植物由来炭水化物を含み、前記には水性懸濁物の状態の加工植物材料(例えばオートミール)、糖類、ジャガイモ、寒天などが含まれる。いくつかの実施態様では、前記培地には、トウモロコシ油、キャノーラ油又は類似の植物由来油等の植物油が補充されている。容易に利用できる安価な材料の特定の組合せが、バイオサイド性組成物の産生を増進させることが見出されている;それは本明細書では富裕ブロス培地(RBM)と称される。RBMは、典型的には以下の物質を水に混ぜることによって製造される:オートミール、ビール酵母、トウモロコシグルテン、糖蜜、クエン酸及びキャノーラ油。好ましいRBM混合物は、水1リットルに15gの磨り潰したオートミール、15gのビール酵母、15gのトウモロコシグルテン、1tspの糖蜜、2gのクエン酸、及び2mLのキャノーラ油を混合し、さらにこれを、菌類を接種する前にオートクレーブで滅菌することによって調製される。増殖培地のために望ましい他の成分には、シュクロース、麦芽抽出物、酵母抽出物、ジャガイモ浸出液、寒天等が含まれる。果汁並びに果実の育成及び加工の残留物もまた用いて、菌類ための更なる増殖材料を提供することができ、さらに果実の含有量を操作して組成物の活性を最適化することができる。
【0044】
したがって、一つの実施態様では、本発明は、RBM又は実質的に類似の培地で担子菌菌類種を増殖させることによって製造される、本明細書に記載の組成物を含む。本発明で使用するために好ましい担子菌種には、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスが含まれる。いくつかの実施態様については、好ましい担子菌からラエチポルスは除かれる。
【0045】
別の実施態様では、オリゴ糖含有組成物は、ジャガイモデキストロースブロス又は実質的に類似の培地で担子菌菌類種を増殖させることによって製造される。この培地は、ジャガイモ浸出液及びデキストロースを含み、約5.1のpH又は具体的な適用について最適なpHで用いることができ、当分野でよく知られている。
【0046】
これらの培地の成分の組合せ、具体的な菌類について均衡の取れた増殖培地を提供するために有益に添加することができる追加の物質、及び他の類似の栄養源は、本明細書に記載した増殖方法から当業者には明白であろう。さらに、本明細書に記載の生物活性組成物を製造するためにそれら物質を含む培地の使用もまた本発明の範囲内である。
【0047】
別の視点において、本発明は、培地の体積に対する増殖表面面積比を高めることによって、菌類の増殖速度及び培養液中の活性物質の産生速度を高める菌類培養液を製造するための改善方法を提供する。この改善方法は、要求される増殖空間を減少させながら生物活性物質の収量を最大にし、さらにまた増殖周期も短縮することができるので、大規模製造のために特に有用である。本方法は、ラエチポルス培養を含むある種の担子菌種に特に有用である。
【0048】
典型的には、大量の本発明の組成物を製造するために、たる型容器、円筒形容器、タンク又は類似の容器中の水性培地で、培養液に相当量の生物活性物質が存在するまで約30日間、培養を増殖させる;生物活性物質種の最大産生にはさらにもう30−60日間の培養維持が必要とされるかもしれない。さらに追加の増殖表面面積を提供することによって、菌類の増殖速度及び与えられた培地体積での生物活性物質の産生速度が加速されることが見出された。さらにまた本明細書に記載の培養方法を用いて、培養液の増殖バッチのためにサイクル時間を短縮することができる。
【0049】
増殖表面面積は、菌糸の増殖を支持するか又は菌糸に付着をさせることができる任意の表面についていう。追加の増殖表面の提供は、前記追加の表面が培地と接触しているか又は培地の近傍にあって菌糸の増殖が付加された表面上で容易に生じるかぎり、容器自体に本来付随する表面以外の任意の表面を提供することを指す。
【0050】
大量の本発明の組成物を製造するために用いられる菌類培養のための増殖容器は、典型的にはたる型容器又はタンク又は類似の容器であり、菌類の増殖のために必須の物質を含む水性培地の保持に適切な材料で作製される。種々のプラスチック、ガラス、PLEXIGLASTM、ガラス繊維及びある種の金属がそのような容器のための材料に適切である。しかしながら、培地の深さが数インチより大きいときは、典型的にはこれらの容器は比較的小さい表面積対体積比を提供し、表面積対体積比が増加するとき、増殖速度及び本発明の組成物の生物活性物質種の産生速度が増加することが見出されている。大規模製造のためには、各バッチで可能なかぎり多くの培養液を製造しながら、増殖空間及び光の利用を最大限にするために、培地の深さを可能なかぎり深くすることが好ましい。本発明の組成物の製造に適した多くの菌類培養が、数インチをより大きい培地の深さで効率的に増殖することができるが、もちろん培地の深さが増せば表面積対体積比は通常低下する。多くの場合、より大きな拡張菌蓋のための余地を提供し、さらに菌蓋の増殖を支持するために利用可能な表面積を増加させることは有益である。したがって、追加の増殖表面積が提供されるならば、培地の深さが数インチを超えても、培養の増殖速度及び本発明の生物活性物質種の産生速度の両方が増加することが今や提示された。
【0051】
ある種の実施態様において、本発明はこのようにして追加の増殖表面を提供するが、この追加の表面は典型的には実質的に垂直であり、増殖培地の表面又は表面上方から増殖培地の表面を通過して培地中へ下がり、少なくとも部分的には菌類が増殖している容器の底へ伸びる。いくつかの実施態様では、追加の表面面積は、成分が培地中にたれていくことができるように培地の表面上方からそれら成分を浮遊させることによって提供される;他の実施態様では、追加の表面積は、浮遊するか又は培地の最上部で浮遊する物質によって支持される表面によって提供される。他の実施態様では、追加の増殖表面を提供する構造又は複数の構造は、容器の側面から又は容器の底から培地中に伸び、さらに通常、それらは培地の表面を通過しさらに培地の上方に上向きに伸び、培地の上方に存在するが培地と液体により接触する追加の増殖表面を提供する。もっとも大きな利益は培地の表面から上向きに伸びる構造から得られ、そのため、追加の増殖表面は、大半が培地と直接又は培地中に到達した菌糸に由来する培地と接触状態にあり、かつ空気に暴露されている。
【0052】
多くの場合、追加の増殖表面は、棒、平らなプレート、細片、管又は円筒の形状である;それらはまた、容器の側面又は底又はその両方から伸びるひれ状の突出によって与えられてもよい。一つの実施態様では、追加の増殖表面は例えばPLEXIGLASTMの複数のプレートによって与えられるが、これらのプレートは、菌類培養を増殖させている円筒形容器又はたる型容器又は他の容器を覆うために用いられる蓋から吊り下げられている。場合によって、前記プレートは、例えばチェッカー盤の模様のように相互に連結され、さらにそれらが前記のように吊り下げられているときは、前記追加の増殖表面を安定化させるために容器の底又は側面から伸びる少なくとも1つの対応する構造が存在していてもよく、安定性が改善される。増殖支持体の運動はいったん定着した菌類に損傷を与えるので、比較的静止した状態で保持される追加の増殖表面を持つことは増殖菌類にとって有益である。この改善方法の利点のいくつかは理解することを要しないが、増殖期の大半を通じて追加の増殖表面を比較的静止状態で維持させることは、多くの場合有益である。しかしながら、追加の増殖表面の形状及びどのようにしてそれが決まった場所に支持又は保持されるかは、増殖菌糸が付着することができる表面面積が提供されるかぎり重要ではない。
【0053】
追加の増殖表面は、培地表面の上方及び/又は下方で菌類増殖を支持するために適した物質で構築される。それは、1つ又は2つ以上のそのような物質を含んでいてもよく、さらに容器と同じ物質であっても、又は異なる適合物質であってもよい。場合によって、追加の増殖表面に使用される物質は、紙やすりで削るか、引っかき傷を付けるか、こするか、そうでなければざらざらにして、前記追加の増殖表面に菌類が付着及び“よじ登り”易くしてもよい。表面が、ガラス又はPLEXIGLASTMのように比較的滑らかないくつかの実施態様では、垂直の刻み目、溝又は引っかき傷を加えるのが有利である:これらによって、菌類が培地から上方へ増殖し易くし、ある程度の毛細管作用を提供して湿気が培地から上方へ移動し易くし、さらに菌類の増殖を促進することができる。固体の表面の代わりに、前記追加の増殖表面はまた、多孔質又は吸収性物質、例えば布、海綿又はプラスチック若しくはガラス繊維で構成されうるマットを含んでいてもよい;或いは、それはまた、打ち抜き穴を有するプレート又はメッシュ又はスクリーンの形状であってもよい。
【0054】
追加の増殖表面のために好ましい物質は、菌類の増殖を支援するために有用な水性増殖培地への長期間暴露に適したものであり、これには典型的には、培養を増殖させる容器の構築に用いられた物質と同じものが含まれる。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、塩化ポリビニル、ガラス繊維、ポリウレタン、及びTEFLONTMは全て使用できる。ステンレス鋼のメッシュ又はスクリーンが、ポリプロピレンマット、加硫ポリウレタンフォーム(例えば音響調節材)及びTEFLONTMと同様に良好に機能する。これらの各々は時には好ましい物質である。これらの物質の組合せ並びにそれらの形状及び手触りの組合せを利用することができ、さらに適所にそれらを保持する種々の方法も同様に組み合わせることができる。
【0055】
本発明の別の視点によれば、植物由来有機物質の菌類消化によるコンポストティーが提供される。前記コンポストティーは、植物材料の水性懸濁物を典型的には数週間又はそれより長く担子菌菌類によりコンポストし、さらに典型的には細胞由来物質を実質的に含まない活性な化合物の溶液を与えるように前記生成物を部分的に精製することによって製造される。重要なことには、前記組成物を葉又は果実に適用することによって一定の利益を提供するために、組成物は、加熱によって、菌類及び/又は殺線形動物被害からの保護を提供する生物活性物質種のいくつかが減少又は破壊されるので、加工時に約50℃を越える又は約70℃を超える又は約90℃を超える温度に加熱することなく調製される。これらの植物保護組成物は植物の葉に適用することができるが、それらはまた、例えばタマネギ及びパパイヤ等のある種の作物に直接適用して、消費される果実又は野菜に対する菌類の被害を減少させ、したがって生産物の外観及び質を改善することができる。
【0056】
したがって一つの実施態様では、パイナップル、パパイヤ及びサトウキビの製造及び加工から得られる副産物を含む植物生産物の混合物が、オートミール、コムギのグルテン及びビール酵母等の加工植物材料と一緒に2−5週間、水性懸濁物/スラリー中で例えば本明細書に記載したような条件下で消化される。コンポストティーは加熱せずに、使用のために調製されるが、加熱は所望の生物活性物質のいくつかを破壊するであろう。固体は従来法によって分離され、場合によってティーはさらに、限外ろ過等の従来法による高分子量物質及び細胞由来物質の除去によって精製される。これによって、場合によりさらに精製することができる液体が製造されるが、またそれを植物(例えばトマトの草本)の葉に、又は植物生産物(例えば生育中のパパイヤ)に直接用いて、植物又は植物生産物に対する菌類の被害を減少させることができる。
【0057】
本発明の他の視点は、菌類を増殖させて所望の生物学的に活性な成分に富む培養液を製造するための培養条件を提供する。典型的には、実質的に液体の培地で7より低い、好ましくは5より低いpHで担子菌を増殖させてバイオサイド性オリゴ糖の産生を強化することは、本発明の化合物及び組成物の製造で有利である。いくつかの実施態様では、液体培地は、培養液の採集まで培養が維持される期間の大半又は好ましくは全期間、4より低いpHで維持される。他の実施態様では、液体培地は3.5より低いpHで維持され、好ましい実施態様では、培地のpHは培養増殖期間の大半を通して約3のpHで維持される。pHは任意の生物適合塩基(例えば水酸化ナトリウム又はカリウム)を用いて確立させることができ、要求される適切な緩衝剤を用いて維持される。場合によって、pHメーター及びpH維持のための自動化システムを利用して、望ましいpHから顕著に逸脱することを防ぐことができる。
【0058】
培養温度もまた、担子菌菌類の最適な増殖のために、さらに望ましい生物活性成分の産生を最大にするために維持されるべきである。最適温度は、増殖させる担子菌の種及び用いられる培地そのものに左右されるが、ほとんどの実施態様では、約20℃から約40℃の間の増殖温度が好ましい。いくつかの実施態様では、前記温度は、培養増殖期の大半において25℃から35℃、好ましくは約30℃で、又は約30−35℃で維持される。この範囲より幾分上又は下への温度逸脱は必ずしも培養液又は増殖菌類を害しないが、そのような逸脱は培養液中の望ましい生物活性成分の収量の低下を引き起こすか、又は増殖期の延長を必要とするかもしれない。培養温度は、サーモスタット及び当分野で周知の加熱冷却システムを用いて維持することができる。
【0059】
培地は、例えばそれをかき混ぜるか、又はその中で気体をあわ立たせることによって攪拌することができる。しかしながら、特定の実施態様では培地は攪拌されなかった。その代わりに、前記は非常に浅い懸濁物として維持され、培養は深さが約1−6インチを超えず、又は深さが約2インチ、又は約3インチ、又は約4−5インチであった。より深い懸濁物を用いる場合、及び培養の深さが6インチを顕著に超える場合、何らかの攪拌形態が望ましいであろう。
【0060】
大規模製造のためには、培地を攪拌することが時には好ましい。大規模製造のための増殖で顕著な改善は、適切な攪拌を用いて増殖培地を混合し、菌蓋を過度にかき乱すことなく培地と菌糸の接触を高めた場合にときに達成される。静止培養は、培地のいくらかを菌類と接触するには遠くに置く傾向にあり、これによって菌糸の近くにない培地は菌類に栄養を提供できず、対象の生物活性を有する化学物質種を含む浸出液を受け取ることもできないので、前記方法は有益である。この混合は、菌類が増殖している培地の穏やかな攪拌によって、又は培地より上の菌類の増殖物を増殖培地で濡らすことによって達成することができる。いくつかの実施態様では、前記混合は、増殖容器の底近くから又は特定の増殖期の菌類増殖物の大半より少なくとも低い地点から培地を採取し、それを増殖菌類に分配する吸上げポンプシステムによって達成することができる。前記培地を増殖している菌蓋に散布するか、滴らせるか、又は噴霧することができ、或いは菌類の増殖を害しないように十分に穏やかに培地を増殖菌類上に流してもよい。培地はまた、混合を促進する態様で容器に単純に再誘導することもできる。例えば、最終的に穏やかな流れが培地内に存在することができるように、培地を採取した点から十分に離れた点でポンプシステムによって培地を容器に戻してもよい。また別には、表面より少し下の吸上げポンプ系又は混合装置(例えば攪拌メカニズム)を用いて、菌蓋構造を過度にかき乱すことなく、菌糸と接触していない液体を下から菌蓋に又は菌蓋上に穏やかに誘導することができる。このようにして、比較的小さな増殖培養から本発明の組成物を含む大量の培養液を製造することができる。
【0061】
追加の増殖表面の量は決定的なものではなく、任意の追加増殖表面は何らかの利益を提供する。しかしながら、利用可能な表面面積を少なくとも約50%又は100%又はそれより多く増加させることが多くの場合望ましい。いくつかの実施態様では、例えば、培養を収納するために208リットルの円筒形容器が用いられ、それには約113リットルの培地が充填される。垂直方向では(すなわち上向きに立てたとき)、前記は約22cm2/リットルの表面積/体積比を有する。横向きに置いたときは、前記の比は約42cm2/リットルに増加する。しかしながら、本明細書に記載した追加の増殖表面材料のプレートを添加することによって、利用可能な表面積を容易に2倍又は3倍にすることができ、多孔質材料を使用すれば表面面積のさらに大きな増加さえも提供することができる。いくつかの実施態様では、追加の増殖表面を提供して表面積/体積比を約50cm2/リットルより大きく、又は約100cm2/リットルより大きくするのが好ましい。
【0062】
そのような追加の支持表面の種々の材料及び形状並びに種々の液体混合又は再配分設定を、使用される具体的な菌類、増殖条件及び培地に応じて変動させることができるので、具体的な培養の製造をスケールアップするときは、適切な組合せを選択することが必要となろう。バイオアッセイのために本明細書で提供する方法を用いて、どの条件がより大量の望ましい生物活性物質種を提供するかを決定することができる。したがって、本明細書で提供するバイオアッセイによって指示される日常的な実験を用いて、これらのパラメーターを個々の具体的な培養及び/又は増殖環境について最適化することができる。
【0063】
対象の生物活性物質の収量を最適化するために液体培地で担子菌を増殖させる時間は、培地、pH、温度、及び利用される菌類の種を含む多様な因子に左右される。生物活性成分はいったん産生されたら培養条件下で実質的に安定であるので、厳密な時間は、生物活性成分の良好な生成にとって必須ではない。典型的には、増殖期は少なくとも数日から1週間続くであろう;いくつかの実施態様では、それは約2週間であり;いくつかの実施態様では約3週間又は約4週間又は約60日まで培養を維持するのが有利である。いくつかの実施態様では、培養は少なくとも5週間維持され、いくつかの実施態様では、6週間又はそれより長く維持される。いったん増殖期が完了したら、培養液を採集することができるが、直ちに前記液を採集することが決定的に重要というわけではない。
【0064】
したがって、一つの実施態様では、担子菌菌類は約30℃の温度で約3のpHで、RBMで、曝気又は攪拌することなく、好ましくは約6インチ未満の深さの浅い混合物で増殖させることができる。別の実施態様では、担子菌菌類は約30℃の温度で約3のpHで、RBM又は類似の培地で、本明細書に記載の追加の増殖表面を有するたる型容器、円筒形容器又はタンクで、場合によって攪拌方法(例えば上記に記載したもの)を用いて増殖させることができる。
【0065】
前記培養液は、使用前に増殖菌蓋から培養液をドレイン若しくはデカンテーションによって、又は機械的な分離手段(例えばろ過又は遠心)により菌類増殖物の大半を除去することによって採取する。典型的には、採集培養液は使用前に少なくとも部分的に精製される。いくつかの実施態様では、固体は、例えば沈殿、ろ過、若しくは遠心、又はそれらのいくつかの組合せによって除去される。場合によって、溶液はまた、公知の方法(例えば加熱及び/又はろ過又は限外ろ過)によって滅菌して、水溶液として本発明の少なくとも1つの生物学的に活性なオリゴ糖化合物を含む水溶液(無菌的でありえる)を提供することができる。好ましくは、滅菌は、前記水溶液を約100℃までの温度で加熱することによって、又はメンブレン(例えば0.22ミクロンのメンブレン)でろ過することによって、又はUV若しくはガンマ線照射によって実施される。
【0066】
有効な滅菌はまた、凍結乾燥によって、又は逆浸透方法によって達成することができる。単離及び精製方法の組合せもまた利用して、粗ブロスと比較して少なくとも部分的に精製されている他の組成物を提供することができる。培養液の更なる精製又はその中の生物活性化合物の精製はまた、本明細書で提供する活性化合物の構造及び安定性についての情報を基にして当分野で公知の方法を用いて、適当に実施することができる。これによって、新規であり、さらに病原体によって引き起こされる被害に対し植物を防御するために有用な生物学的活性を有する部分精製組成物が提供される。
【0067】
液体形であるときの組成物の濃度及び取り扱い特性は、濃縮、濃度の調節、表面張力、粘度及び他の機械的特性についての公知の方法を用いて調節することができる。頻繁には、培養ブロスの加工には、組成物の体積を減少させさらに活性物質の濃度を増加させるために少なくとも1つの熱による濃縮工程が含まれる。そのような実施態様のいくつかでは、組成物は、限定した時間(好ましくは約4時間を越えない)沸騰するまで加熱され、いくつかの実施態様では、1時間又はそれより短い時間煮沸されて、組成物の生物学的活性が保存される。更なる濃縮は、低温での加熱によって、又は他の従来法によって達成される。いくつかの使用については、組成物は、90℃を越える温度で1時間より長く加熱されることなく、少なくとも10brix、又は少なくとも20brix、又は少なくとも約30brixの濃度を有するシロップに濃縮される。
【0068】
本発明のオリゴ糖含有組成物は多数の異なる化学物質種を含むことができ、活性成分は未だ十分には化学的構造の特徴が明らかにされていない。前記抗菌化合物は水及びメタノールに可溶性であるが、ジクロロメタン又は酢酸エチルには顕著には溶解性ではない。ACPI検出装置(化学的イオン化)を用いたHPLCによれば、前記化合物は、3000から4500の見かけの分子量を示している。メタノール可溶性物質はいくつかの成分を含むが、前記抗菌活性は速く溶出する高度に極性の分画に存在する。活性成分の質量分析は、オリゴ糖に特徴的なフラグメント化パターンを示した。すなわち、H2Oの消失に対応する、分子量における18ユニットの連続的低下が観察された。
【0069】
ゲルろ過カラムによれば、抗菌化合物は約4000−4500の限定分子量範囲に含まれる。したがって、前記化合物の構造は、それらの分子量及び前記構造の大半を構成するある種の単糖類成分の構造内の存在の他に、それらの可溶性、安定性及び生物活性の特徴によって実質的に定義される。
【0070】
他の構造的特色の存在は排除されなかったが、本発明の抗菌化合物は、主としていくつかの共通の単糖類を含むオリゴ糖構造である。このことは、塩化トリメチルシリルでシラン化した活性化合物サンプルの質量分析によって明らかにされた。親化合物は提示に十分なほどは揮発性ではないので、GC-MSはモノマーのみを示している。それにより、4つのピークの各々について質量スペクトルが提供された。これらを質量スペクトルデータのデータベースと比較し、前記オリゴ糖にリボース、ガラクトフラノース及びグルコースが存在することが示された(図1−4を参照)。リボース及びグルコースは各々2つの分離したピークとして出現するが、それによりそれらをアノマーの混合物と考えることができよう。ガラクトフラノースは動物には天然に存在しないが、病原性生物に広く分布する糖である(Beverley et al. Eukaryotic Cell, 1147-54, June 2005)。したがって、本発明はいかなる作用理論にも限定されないが、病原性組成物中のその存在はそれらの作用態様に関連を有しうる。
【0071】
存在する抗菌活性物質は、それらの活性に必須であるペプチド結合を含まないようである。すなわち、それらは、公知のプロテアーゼであるプロテイナーゼKで処理したとき抗菌活性の低下を示さなかった。この抗菌活性はまた、水性媒体中での加熱に対して安定であるらしい。すなわち、サンプルを100℃にて1時間水中で煮沸するか、又はサンプルを室温で少なくとも90日間保存しても、その抗菌活性は実質的に低下しなかった。しかしながら、記載の水中での加熱は、組成物の抗カビ活性及び殺線形動物活性を顕著に低下させた。したがって、前記組成物は少なくとも2つの異なる活性化合物を含むようであり、さらに、組成物の抗菌活性は、組成物の水溶液を加熱して殺線形動物活性及び殺カビ活性を除去することによって、後者の活性から容易に分離することができる。
【0072】
本発明の抗菌化合物は一般的な単糖類のオリゴマーを含むと考えられる。これらは全てD-異性体であると推定されるが、GC-MSデータでは絶対的な立体化学を確認することができない。これらの比はGCデータからは正確には決定できないが、そのデータによれば、活性なオリゴ糖は1つ又はおそらく2つのリボースユニット、いくつかのガラクトースユニットを含み、残りの大半はグルコースであると示唆される。したがって、活性な抗菌物質は、主としてこれらの一般的な単糖類部分を含むオリゴ糖であると考えられる。
【0073】
本発明の組成物は典型的には、少なくとも、実質的には細胞成分を含まないほど十分精製される。これは、本明細書に記載の精製方法によって、いずれの菌類由来不溶性物質も水性培養液から実質的に取り除かれてあることを意味する。いくつかの実施態様では、培養液は、ろ過した後で、又はそうでなければ存在する懸濁固体(菌類由来の不溶性物質を含む)の全てを実質的に除去するために、及び細胞及びサイズが約5ミクロンを越える細胞屑を除去するために処理(例えば沈殿、遠心、透析などによって)した後で用いられ、本発明の生物学的に活性な化合物に富む水溶液を提供する。いくつかの実施態様では、組成物は、サイズが約1ミクロンより大きい成分を除去するために処理される。
【0074】
場合によって、前記溶液は、限外ろ過によって、又はゲルクロマトグラフィー、透析若しくは他の通常的な方法によって処理され、一定のサイズ(例えば細胞のサイズ)、又は例えば約100,000、又は約60,000、又は約40,000、又は約20,000、又は約10,000の凡その分子量を超える実質的に全ての物質が除去される。これらの方法は対象の生物学的に活性な化合物から不純物を除去し、それら方法によって部分精製された組成物が提供される。前記組成物は新規で生物学的に活性であり、さらに精製又は濃縮するか又は農薬組成物として使用するために製剤化することができる。高分子量物質の除去は、植物及び果実に適用される望ましくない又は不要な物質の量を減少させることによって、葉に適用するために用いられる水溶液を改善する。
【0075】
これらの組成物はさらに、例えば水に非混和性の有機溶媒による抽出によってさらに精製して親油性及び/又は着色物質を除去するか、又は標準的なクロマトグラフィー的方法(ゲルクロマトグラフィー、通常相クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーを含む)によって精製して、そうしなければ処理植物に適用されてしまう不活性な又は望ましくない物質の量を減少させることができる。これら組成物はまた、他の従来法、例えば木炭又は不純物を除去するが所望の生物活性化合物は顕著には除去しない他の吸着剤を用いる脱色によって部分的に精製することができる。本明細書で用いられる“脱色”は、溶解又は懸濁された着色物質を水溶液又は水性懸濁液から少なくとも十分に除去して、前記水溶液の着色を顕著に淡く又は変化させることを指す。脱色は、処理された葉又は果実の染色を低下又は排除するので、葉への適用のためにより良好な物質を提供するが、これは葉による光の吸収を改善し、果実の外観及び質を改善する。
【0076】
本明細書で用いられる“親油性物質”とは、水に非混和性の溶媒に優先的に分配される物質であって、例えば水に非混和性の溶媒を用いて水溶液からそれらを抽出することにより部分的に又は実質的にそれらを取り除くことが可能な物質を指す。親油性物質の例は、精製された水溶液のpHで荷電をもたず、さらに当該pHで約2より大きい又は約3より大きいlog Pを有する化合物である。“Log P”は、ある分子のオクタノール/水分配係数の負の対数を指し、親油性を判定するための周知のパラメーターである。log P値を測定又は算出する方法は公知であり、さらに水溶液から親油性物質を除去するためのそのような水性/有機性抽出の方法もまた公知である。親油性物質の除去は、植物及び果実に適用される望ましくない又は不要な物質の量を減少させることによって葉の適用に用いられる水溶液を改善する。
【0077】
本発明の抗菌化合物は、担子菌菌類によって産生される他の生成物とはそれらの化学的及び生物学的特性によって区別される。それらは、それらの分子量及び可溶性及び安定性特性を基準にすれば、担子菌によって産生される公知のいずれの生物活性物質とも一致するようには思われない。第一に、それらはもっぱら水に可溶性であり、メタノール以外の有機溶媒にほとんど溶解性をもたない。すなわち、凍結乾燥培養液の1グラムサンプルを2mLのアセトニトリル、クロロホルム又は酢酸エチル中で2時間振盪したとき、前記有機溶媒中の溶解性物質は全く抗菌活性を示さなかった。したがって、本活性化合物はテルペノイド又は他の実質的に有機物質様代謝物質ではないようである。第二に、それらの活性は、ペプチドが消化される条件下で、プロテイナーゼKによる処理によって影響を受けないことが示された。したがって、本生物活性化合物は、プロテアーゼ感受性結合を含まないように思われる(それらは本質的にタンパク質又は単純なペプチドではない)。第三に、それらは、約、2000から5000(between about 2000 and 5000)の分子量を有することが示された。このことは、それらをいくつかの菌類によって産生される、免疫調節活性を有するが5000をはるかに超える分子量を有するベータ-グルカンと区別する。
【0078】
本発明の抗菌化合物は、大半がオリゴ糖から成り、サイズ排除クロマトグラフィーによれば約、4000から4500の分子量を有するように思われる。しかしながら、G.ルシドゥム由来の活性な組成物サンプルを約3500の分子量カットオフを有する透析バッグに入れたとき、活性物質はバッグの外に透析され外部溶液に見出された。これは、見かけの分子量が約3500にすぎないことを示している。フラグメント化を最小限にするために質量スペクトル検出及び化学的イオン化を用いるHPLC方法は、活性物質種の分子量は3000から4500の間であることを示唆している。上記で考察したように、組成物中には明らかに少なくとも2つの生物活性化合物が存在し、さらに少なくとも抗菌活性は、2000から5000の範囲内の分子量、おそらくは3000−4500の分子量範囲内の分子量を有する1つ又は2つ以上の炭水化物の化学物質種に付随している。
【0079】
別の視点に於いて、本発明は、担子菌菌類をその増殖を支援する培地中で増殖させ、続いて培養液を含む水溶液又は水性懸濁液として組成物を単離するプロセスによって生産される組成物を提供する。本発明の組成物は、上記に記載した構造特性及び安定性特性を有する少なくとも1つの活性化合物を含み、さらにいくつか又は実質的に全ての微粒子を除去するろ過;有機溶媒に顕著に可溶性の物質のいくつか又は実質的に全てを除去する抽出;透析、サイズ排除クロマトグラフィー、又は実質的に種々の分子量の物質を除去するための類似の方法;並びに酸性/塩基性成分を除去するためのイオン交換樹脂処理;及び他の望ましくない成分を除去するための化学薬剤、例えば酸化剤、還元剤、キレート剤などによる処理等の工程によって少なくとも部分的に精製することができる。場合によって、抗菌活性のみを望む場合は、ブロスを加熱してその抗カビ活性及び/又は殺線形動物活性を排除し、続いて本明細書に記載の方法を含む従来法によって部分的に精製することができる。
【0080】
部分精製の過程で必要な場合には、当分野で公知のバイオアッセイ技術を用い、対象の生物活性が存在するトラックについて本発明の生物活性化合物の位置を決定することができる。したがって、例えば、本発明の抗菌組成物を従来の精製方法の多様な組合せを用いて調製しながら、少なくとも1つの植物居住性細菌(例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)、アシドヴォラクス・アヴェナエ(Acidovorax avenae)、ブレンネリア・クェルシナ(Brenneria quercina)、エルウィニア・カロトヴォラ(Erwinia carotovora)、パントエア・ヘルビコラ(Pantoea herbicola)、プシュードモナス・コールガテ(Pseudomonas corrugate)、プシュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、ライタイイバクター・トリチシ(Raythayibacter tritici)、キサンゴモナス・アキソノポディス(Xanghomonas axonopodis)又はキサントモナス・キャmペストリス(Xanthomonas campestris))に対する抗菌活性についてアッセイすることによって活性成分を追跡することができる。本発明のある種の組成物はこれら病原体の各々に対して活性を有する。精製は、実質的に純粋な形の活性化合物の単離を含む、望ましい任意のレベルの純度を達成するために実施することができる。この単離過程のために適切な方法は公知であり、アッセイ工程は、使用者が抗菌、抗カビ及び殺線形動物活性を有する物質種を突き止めることができるように本明細書で概略される。単純な加熱及びろ過を超えるそのような精製方法を用いることによって、新規であり、さらに植物又は植物生産物の抗菌処理、又は細菌及び他の植物病原体(加熱されない場合)によって引き起こされる被害の緩和に有用である部分精製組成物が製造される。
【0081】
前述の方法によって製造された部分精製物質を、生育中の植物又は媒体、又は植物が将来生育する場所、又は種子が蒔かれてあるか若しくは将来導入される場所の処理に直接用いることができる。また別には、精製のいずれの段階においても、前記組成物を公知の方法(例えば蒸留、蒸発又は透析)によって濃縮し、濃縮溶液、乳濁液、懸濁液、ペースト又は固体を製造することができる。続いて、前記部分精製形又はその濃縮形を、従来法を用いて、植物病原体(前記植物病原体は細菌、菌類又は線形動物でありえる)によって引き起こされる有害な作用を緩和するために、又はそのような病原体の増殖を遅らせるか又は妨げるために、又はそのような病原体によって引き起こされる被害を防ぐために十分な量で適用することができる。
【0082】
本発明の組成物は植物及び菌類の病原体の悪影響を軽減するので、植物及び菌類の栽培で有用である。それらを投与して、微生物、菌類又は線形動物の悪影響を、そのような病原体を殺滅することによって、又はそのような病原体の増殖を遅らせることによって減少させることができる。前記化合物及び組成物は、抗菌、抗カビ又は他の農薬物質を生育植物(例えば生育作物、樹木、ブドウの木及び観賞植物)に、又は栽培菌類(例えばきのこ)に適用するための従来法を用いて配することができる。それらは、植物の葉に又は根に適用することができるが、そうでなければ生育植物に又は種子に又は発芽した実生に、前記植物又は種子又はその近傍に(例えば前記の育成媒体に)分配することによって投与することができる。それらはまた、生育中の果実又は野菜に直接適用して、植物病原体によって引き起こされるこれらの生産物に対する損害を軽減することができる。組成物を適用する方法は例えば当分野で公知の方法であり、本組成物の適用のために容易に適合させることができる。
【0083】
本発明の化合物又は組成物は、植物若しくはその存在場所に、又は生育果実若しくは野菜に、従来法、例えば噴霧、散布、又は植物に送達される灌漑若しくは水耕溶液との混合によって適用される。前記組成物の有効量は、投与されるべき組成物を1つの植物又はいくつかの植物で試験して、望ましい効果を達成するために必要とされる量を測定することによって容易に決定される。
【0084】
多くの目的のために、ただ1回の適用で十分である。いくつかの状況では、対象の植物又は植物生産物の適切な保護に複数回の適用が要求されるかもしれない。作物植物又は植物生産物の状況を判定し、連続的処理が必要か否かを決定するための野外調査方法は各々の具体的作物の農家にはよく知られている。
【0085】
本発明の組成物は、本発明の組成物を肥料又は植物の生育に用いる他の固形コンポストと混合する等、植物の育成媒体と混合することができる。前記組成物はまた水と混合して、空中噴霧又は陸上噴霧方法によって、ドリップ、スプレー若しくはフラッド灌漑方法によって、又は水耕送達によって植物に適用することができる。これらの方法は植物及び菌類の栽培では公知であり、本発明の組成物への前記方法の適用は当業者の技量の範囲内である。
【0086】
前記組成物は時には使用に向けて精製されない:例えば組成物をきのこに適用するときのように、増殖菌類及び細胞由来物質から実質的に培養液を分離した後の粗雑な形態で、場合によって残留する菌類物質を不活化するために、及び/又は抗カビ及び/又は殺線形動物活性を破壊するために加熱して用いることができる。粗培養ブロス、又は菌類物質の大半を除去することによって得た培養液を用いるこの方法もまた本発明の範囲内である。適用方法に応じて、担子菌が増殖した粗培養液を、細胞由来物質の実質的な除去及び場合によって濃縮又は適切な物質(例えば水又は固体)による稀釈後に用いることができる。
【0087】
場合によって、補助物質、例えば界面活性剤、洗剤、肥料、植物生長調節剤、UV遮断剤等を本発明の組成物に、前記組成物の適用前又は適用時に添加することができる。いくつかの実施態様では、アンモニウム塩、例えば硝酸アンモニウム又は硝酸尿素アンモニウムが、生育植物への混合物の適用前に混合物に添加される。
【0088】
本発明の組成物は使用前に実質的に乾燥させ、続いて再水和溶液又は懸濁液として適用することができ、或いはそれらは固体(例えばダスト)として適用することもでき、或いはそれらは他の固体(例えば粘度、砂、バーミキュル石、コンポスト、又は土壌)、又は保護されるべき植物若しくは菌類の育成媒体と混合することができる。培養液はまた、事前に乾燥させることなく固体と混合することができ、続いてスラリー又は懸濁液として投与するか、又は前記組合せを蒸発によって乾燥させ、得られた固体を生育植物若しくは菌類に、又はそれらの場所の近傍に適用して、有益な効果を提供することができる。
【0089】
場合によって、本発明の組成物は、1つ又は2つ以上の他のバイオサイド性物質又は農薬(例えば市販の除草剤、殺虫剤又は殺カビ組成物)を含む混合物と一緒に適用するか、又は前記混合物中で適用することもできる。本発明の組成物はまた、1つ又は2つ以上の植物生長調節物質又は生長刺激物質を含む混合物と一緒に、又は前記混合物中で適用することもできる。それらはまた、1つ又は2つ以上の肥料、特に生物が利用できる窒素、リン、カリウム、微量要素又は鉄を栽培植物に提供する肥料を含む混合物と一緒に適用するか、又は前記混合物中で適用することもできる。
【0090】
本発明はまた、既に公知の殺線形動物組成物(米国特許第6,048,714号;米国特許第6,517,851号)と類似しうる殺線形動物組成物を提供する;しかしながら、本発明は、培養条件の改善により活性が高められた組成物を提供し、前記殺線形動物組成物はまた、線形動物の増殖又は線形動物による被害に対する植物の耐性を高めることによって、植物での線形動物の増殖を阻害するか、又は線形動物によって引き起こされる植物若しくは植物生産物に対する被害を抑制する能力を有する。これらの組成物は、明らかに線形動物の増殖を妨げる植物の天然の防御メカニズムを活性化するか、又は、線形動物の個体数が多いときでさえ、防御応答を改変して線形動物の悪影響を軽減する。従来報告された組成物(土壌への適用のために設計されている)とは異なり、これらの組成物は、保護されるべき発芽植物の葉又は果実に適切に適用される。
【0091】
さらにまた、前記作用が植物仲介作用であるので、望ましい線形動物抑制作用は必ずしも線形動物との直接的な接触を必要としない。線形動物は、典型的には土壌中に生息し、植物の根に影響を及ぼすので、従来の組成物(有効であるためには線形動物との直接的接触を必要とする)の投与では土壌へ直接送達しなければならない。本組成物は、少なくとも部分的には植物の葉に投与して、線形動物蔓延の有害作用のあるものに対する防御を提供することができる。したがって、本組成物は、線形動物蔓延の症状又は証拠が観察されていない植物に、線形動物抑制性“免疫ブースター”として投与し、蔓延被害が高まる前に損害から植物を保護することができ、さらに本組成物は、標的とされる線形動物と直接接触させなければならない組成物では効果が期待できない葉への適用方法によって投与することができる。
【実施例】
【0092】
微生物株及び培養の維持
【0093】
菌類単離株は、ジャガイモデキストロース寒天(PDA, Difco Laboratories, Detroit, MI)で維持した。細菌株、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス、A.リゾゲネス、アシドヴォラクス・アヴェナエ、ブレンネリア・クェルシナ、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、エルウィニア・カロトヴォラ亜種カルトヴォラ、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)、エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)、パントエア・ヘルビコラ(Pantoea herbicola)、プシュードモナス・コールガタ0782-6株、プシュードモナス・フルオレセンス、プシュードモナス・シリンガエpv.シリンガエ、ラタイイバクター・トリチシ、キサントモナス・キャムペストリスpv.キャムペストリスB-24株、及びキサントモナス・キャムペストリスpv.トランスルセンスもまた栄養寒天(NA, Difco Laboratories, Detroit, MI)で維持した。
【0094】
ガノデルマ・ルシドゥム及びL.スルフレウス培養は富裕固体培地(RSM)で維持した。この培地は、1リットル中に3gの酵母抽出物、200gのジャガイモ浸出液、20gのバクトモルト抽出物、1gのバクトペプトン、60gのシュクロース、15gのバクト寒天、1 tspの糖蜜、及び3.75gの磨り潰したオートミールを含む。この培養液を用いて、液体培地(ブロス)培養に接種した。ブロス培養のためには、菌類をPDB又は富裕ブロス培地(RBM)で増殖させた。本明細書で用いられたRBMは、1リットルの水に、15gの磨り潰したオートミール、15gのビール酵母、15gのトウモロコシグルテン、1 tspの糖蜜、2gのクエン酸、及び2mLのキャノーラ油を含む。場合によって、別の植物油が時に前記培地に添加された。全ての培地を使用前にオートクレーブで滅菌した。
ガノデルマ及びラエチポルスのための最適化培養条件
【0095】
G.ルシドゥム及びL.スルフレウスのための最適な液体増殖条件を確立するために、表面曝気、pH、及び温度条件を評価した。表面曝気については、100mLのRBMを含む250mL、500mL、1000mL及び2000mLのエーレンマイヤーフラスコで静止フラスコ実験を実施した。続いて、100mLのRBMを含む2000mLのエーレンマイヤーフラスコで温度及びpH実験を実施した。pH実験については、pHは1NのHCl又は1NのNaOHを添加することによって3、4、5又は6に調節した。最適増殖温度を決定するために、100mLのRBMを含む2000mLのエーレンマイヤーフラスコで培養を増殖させ、20℃、25℃、30℃及び35℃で静止培養としてインキュベートした。全ての実験で、培地を121℃で20分滅菌し、25℃で増殖させた14日齢のRSM培養から5つの1cmプラグ(No.8コルクボーラー)を接種した。表面曝気及びpH実験のためのフラスコは25℃で21日間インキュベートした。
生物活性培養液の製造
【0096】
いったんG.ルシドゥム及びL.スルフレウス増殖のための培養条件が最適化されたら、以下の条件を用いて生物活性培養液を製造した。実験は200mLの培地を含む2000mLのエーレンマイヤーフラスコで実施し、したがって培地の深さを約2−4インチ未満に制限した。培地は121℃で20分オートクレーブ処理した。約50℃に冷却させた後、14日齢のRSM培養の活発に増殖した菌糸の5片(1cmの直径のNo.8コルクボーラー(core borer)で切り出し)をフラスコに接種した。フラスコを30℃で21日間インキュベートした。インキュベーション後に、14,000rpmで4℃にて15分遠心することによって培養液を採集し、0.22μmのフィルター(Membrane filters, IsoporeTM, Ireland)でろ過滅菌した。培養液をいくつかの細菌、菌類及び線形動物に対するそれらの抗微生物活性について調べた。
菌糸の増殖のための最適条件
【0097】
培地の表面面積、pH及び温度の増殖条件はG.ルシドゥム及びL.スルフレウスの菌糸の増殖に影響を与えた。与えられた体積の培地に対してより大きな容器を用いることによって提供される培地/空気の境界面の表面積の増加は、両方の菌類のバイオマスを増加させた。25℃で、最高量の菌糸の増殖が、2000mLのエーレンマイヤーフラスコで増殖させた培養で、両方の菌類種の21日間のインキュベーション後に生じた(G.ルシドゥムについて1005mg/100mL及びL.スルフレウスについて1090mg/100mL)。もっとも低い菌糸濃度は250mLフラスコで観察された(G.ルシドゥムについて260mg/100mL及びL.スルフレウスについて270mg/100mL)。500mLと1000mLのエーレンマイヤーフラスコ間では有意な相違はなかった(これらは同様な結果を示し、2000MLフラスコ培養よりは顕著に少なかった)。これらは、浅い増殖培地が有利であり、典型的には培地は、深さが約6インチを超えない、好ましくは5インチ未満又は4インチ未満であることを示している。いくつかの実施態様では、培地は深さが3インチを超えない。
【0098】
より大規模の製造の場合、典型的には大きな円筒形容器(例えば55ガロンの円筒形容器)の半分のほぼ1/4まで培地を満たし、増殖させるべき菌類培養を接種する。培地及び増殖条件は上記に記載したとおりである。菌糸の増殖速度は、例えばPLEXIGLASTMのプレートを上方から吊り下げることによって増加する。
【0099】
両菌類の菌糸の増殖は、より低いpHの培養培地で促進される(図5)。最高量の菌糸の増殖が両菌類においてpH3で観察された(G.ルシドゥムについて680mg/100mL及びL.スルフレウスについて770mg/100mL)。4、5及び6の培地pHで、菌糸の増殖は、pH3で観察された増殖よりも両菌類で30%以上少なかった。種々の温度で増殖させたとき、両菌類について最適な増殖は30℃で観察された(図6)。
殺菌活性の測定
【0100】
以下のようにして、抗菌代謝物質について培養液を調べた:遠心及びろ過滅菌した、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスがジャガイモデキストロースブロス(PDB)で産生した培養液を2xの栄養寒天を用い1:1(v:v)に90mmx15mmのペトリ皿で稀釈した。病原性細菌をNAプレートで28℃にて24時間増殖させ、107CFU/mL(OD600=0.5)の細菌懸濁物を0.85%の食塩水溶液中で作製した。寒天を冷却させた後、15μLの細菌懸濁物を培養ろ液プレートにスポットした。28℃で48時間のインキュベーションの後で以下のように増殖を記録した:
+=全増殖阻害
±=わずかな増殖阻害
−=増殖なし
殺カビ活性の測定
【0101】
富裕ブロス培地(RBM)で増殖させたG.ルシドゥム及びL.スルフレウスの遠心及びろ過滅菌した培養液を、種々の植物病原体に対するそれらの殺カビ活性について調べた。未接種RBMを全ての実験のコントロールとして用いた。培養液及びコントロールを融解させた2xのPDAと1:1(v:v)で混合し、50x9mmの使い捨てプラスチックペトリ皿(Falcon(登録商標)、USA)に注入した。寒天を冷やした後、新しい活発に増殖中の菌糸の一片(5mm2)を寒天プレートの中央に置いた。プレートを25℃で5日間インキュベートした。インキュベーション後、菌糸コロニーの直径(cm)を測定し、菌類増殖阻害を決定した。結果は、5日間のインキュベーション後の菌類の菌糸の増殖低下の平均パーセンテージとして記録した。
殺線形動物活性の測定
【0102】
PDB、RBM又はキャノーラ油若しくはトウモロコシ油で改変したRBM(RBMCO又はRBMVO)で作成したG.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液を、それらの殺線形動物活性について判定した。全ての事例で、未接種PDB又はRBM(NI-PDB又はNI-RBM)をコントロールとして用いた。PDB又はRBMのどちらかで製造した培養液を用いて、殺線形動物生物活性化合物の産生のために最適なインキュベーション時間を決定し、同じ時間で殺線形動物活性に対する栄養培地の影響を判定した。どちらかの油で改変したRBMで製造した培養液を用いて、殺線形動物活性の産生における油の影響を判定した。
【0103】
殺線形動物活性は、直径3cmの浅いガラス皿中の無菌的な2回蒸留水の1滴に15匹のJ2幼弱メロイドギン・チットウッディ(Meloidogyne chitwoodi)線虫を静置することによってアッセイした。皿に線虫を静置した後、800μLの体積で処理を適用した。プレートを室温でインキュベートし、結果を6時間、12時間、24時間及び36時間のインキュベーション後に記録した。殺線形動物活性は、36時間後の死滅線虫の平均パーセンテージとして判定した。線虫の死亡率は、新しい無菌的な水を含む皿に線虫を移し、24時間インキュベートすることによって判定した。運動を回復しなかった線虫は死滅と記録した。
観察された殺菌活性
【0104】
殺菌活性については、PDB及びRBMの両方のG.ルシドゥム及びL.スルフレウス培養液で観察した。しかしながら、RBMの浸透圧条件では阻害ゾーンが同様に生じたので、その後の全ての抗菌アッセイではPDB培養を用いた。G.ルシドゥム及びL.スルフレウスは、アグロバクテリウム・リゾゲネス、A.ツメファシエンス、エルウィニア・カロトヴォラ亜種カルトヴォラ、及びプシュードモナス・シリンガエpv.シリンガエに対して強い阻害ゾーンを生じた。活性は、ブルクホルデリア・セパシア、プシュードモナス・コールガタ、プシュードモナス・フルオレセンス、及びキサントモナス・キャムペストリスpv.トランスルセンスに対しては観察されなかった。わずかな阻害が、ブレンネリア・クェルシナ及びラタイイバクター・トリチシで観察された。新しく採集された培養液又は90日間室温で保存された培養液と同じ量の活性を有していた。類似の結果が、培養液を1時間煮沸したときに観察されたが、ただし、増殖阻害は、B.クェルシナ及びR.トリチシでは液の煮沸後に観察されなかった(表1)。
【0105】
表1:ガノデルマ・ルシドゥム(Gl)及びラエチポルス・スルフレウス(Ls)のろ過滅菌栄養ブロス培養液の抗菌活性は、新しく採集した培養液と比較したとき長期保存(90日)又は1時間煮沸の影響を受けない。未接種栄養ブロスをコントロールとして用いた。

*細菌増殖阻害等級:+は無菌的ろ紙ディスク上に適用した200μLの培養ろ液を含むPDAプレート上でのテスト細菌シートの全増殖阻害;±はわずかな増殖阻害;−は増殖なし
観察された殺カビ活性
【0106】
テスト菌類の菌糸の増殖阻害は被検菌類に応じて0から71%の範囲であり、前記阻害は、室温での90日に及ぶ保存で安定のようであった(表2)。RBM単独ではテスト菌類を阻害しなかった。フォーマ・メディカギニス(Phoma medicaginis)は全ての被検菌類のうちでもっとも影響を受けたが、リゾプス(Rhizopus)sp.については、阻害は観察されなかった。わずかな阻害がピチウム・ウルチマム(Pythium ultimum)及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)で観察され、他の菌類単離株は、コントロールと比較して増殖が中等度に阻害された(23%から54%の増殖阻害)。1時間の煮沸は、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの両培養液でほとんどの菌類に対し殺カビ活性を顕著に低下させた。しかしながら、フサリウムsp.の増殖阻害は、新しい培養液又は保存培養液と比較して、G.ルシドゥム(54%)の煮沸培養液で軽度に増加し、L.スルフレウス(48%)については同じであった。同様に、リゾクトニア・ソラニの増殖阻害の増加もまた煮沸培養液で観察された。
【0107】
表2:ガノデルマ・ルシドゥム(Gl)及びラエチポルス・スルフレウス(Ls)のろ過滅菌富裕ブロス培地(RBM)培養液の抗カビ活性は、新しく採集した培養液と比較したとき長期保存(90日)の影響を受けない(新しく採集した培養液と類似している)が、1時間煮沸後には活性は低下した。未接種RMBをコントロールとして用いた。

結果は、無細胞RBM培養液:PDA(1:1、v:v)で構成されたアッセイ培地上での5日間のインキュベーション後のカビ菌糸の増殖低下における3回の実験の平均パーセンテージ(コントロールと比較)である。
*NI-RBMの値は、5日間のインキュベーション後の菌類増殖の実際の数の平均である(列2及び列5)。
観察された殺線形動物活性
【0108】
ガノデルマ・ルシドゥム及びラエチポルス・スルフレウスのPDB及びRBM両無細胞培養液は、メロイドギン・チトウッディ(Meloidogyne chitwoodi)に対して殺線形動物活性を示す。線虫のほぼ50%が、培養液に暴露されてから1時間以内に攣縮性の動きを示したが、未接種培養液に暴露したときは示さなかった。運動を停止しまっすぐになった線虫は死んだと考えられた。死んだ線虫は、新しい水に移して2−4時間後に動きがないことによって確認された。
【0109】
殺線形動物活性はG.ルシドゥム及びL.スルフレウスの両培養液とのインキュベーション7日目で早くも検出された(表3)。G.ルシドゥム及びL.スルフレウスについて、最も高いレベルの殺線形動物活性は、28、21及び14日齢PDB培養由来の培養液で観察され、35日齢培養で活性はわずかに低下した。類似の傾向がRBMで両方の菌類について観察された。しかしながら、活性レベルはPDBよりもRBMではるかに高かった。
【0110】
表3:ジャガイモデキストロースブロス(PDB)及び富裕ブロス培地(RBM)で増殖させたガノデルマ・ルシドゥム及びラエチポルス・スルフレウスの培養液の殺線形動物活性。培養液を7日間隔で35日まで採集し、J2幼弱メロイドギン・チトウッディに対してスクリーニングした。

同じ文字をもつ各列内の平均はp<0.05(LSD)で有意には相違しない。
数字は36時間後の死滅線虫の平均パーセンテージである。
キャノーラ油又はトウモロコシ油で改変したRBMで産生された殺線形動物活性
【0111】
PDB及びRBMの両培地において、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの培養液に油滴が観察された。PDB培養では、油滴は各実験の終結まで残ったが、眼に見える油滴はRBMでは30日目までに消失した。これらの菌類で油は栄養源として機能できるという仮説を試験するために、RBMを1%のキャノーラ油又は1%のトウモロコシ油(それぞれRBMCO及びRBMVO)で改変した。RBM、RBMCO及びRBMVO中のG.ルシドゥム及びL.スルフレウスの両培養液によって生成された全ての培養液で殺線形動物活性が観察されたが、RBMコントロールでは観察されなかった。しかしながら、どちらの油を補充した培地由来の培養液の殺線形動物活性も両菌類について非補充培地よりも低かった。
実施例2:植物に適用することを目的とする組成物の製造
【0112】
本発明の組成物は、ろ過により固体を除去し続いて水で稀釈することによって、植物に投与するために製造することができる。典型的には、追加の精製を実施して、実質的に細胞由来の全ての物質が除去される。このような除去は、例えば遠心、沈殿、ゲルろ過、又は透析を実施して細胞屑を除去することによって達成することができる。これらの方法又は他の通常的な方法を用いて、約100,000を超える分子量を有する物質を除去することができる。追加の加工工程及び精製工程、例えば親油性物質及び/又は着色物質を除去するために活性化炭素又は木炭による処理を用いることができる。同様に、水溶液を水に混和性の有機溶媒で抽出して、親油性物質を除去することができる。
【0113】
場合によって、表面活性剤を添加して、葉又は果実への適用について有効性を高めることができる。他の栄養剤及びアジュバント、例えば植物保護剤の有効性を高めることが知られている硝酸尿素アンモニウム(UAN)もまた添加できる。
【0114】
場合によって、各バッチの生成物(例えば、部分精製溶液、“コンポストティー”、又は濃縮物)を所望の生物活性若しくは活性プロフィルについて、又は特定の化合物若しくは所望の活性を伴う化合物の存在について試験することができる。続いて、ユーザーに提供する前に、各バッチを必要に応じて濃縮又は稀釈して標準化レベルの生物活性を提供することができる。
実施例3:植物への適用
【0115】
続いて、上記に記載した部分的に精製した組成物を保護されるべき植物又は植物の部分に通常の適用方法によって直接適用して、植物又は植物生産物に被害を与えうる植物病原体の蔓延を軽減する。例えば、前記組成物を噴霧に便利な体積に稀釈することができ、植物、土壌又はブロスに噴霧することができる。使用されるべき量を決定するための通常の方法は公知であり、前記方法を用いて、どの程度の稀釈が標的害虫の制御に適切で、一方で植物又は作物への害を回避できるかの決定でユーザーに指標を提供することができる。
【0116】
また別には、前記組成物を土壌ドレンチ又はスプレーとして用いるか、又はそれらを濃縮によって固体処方物として調製することができる。続いて、それらを新しく蒔いた種子、発芽した苗木又は生長した植物の周囲の土壌中に取りこませてもよい。さらにまた、播種した種子又は移植した苗木の近傍にバンド処理として栽培の間中それらを適用してもよい(これによって鋭敏な苗木のすぐ周囲の土壌が組成物を取り込むことが可能となる)。
【0117】
また別には、種子を蒔く前の種子処理としてそれらを用いてもよい。その場合には、種子を組成物の乾燥形で被覆するか、又は本発明の組成物から入手できる活性な成分を含む溶液(例えば濃縮培養液)に種子を浸漬してもよい。
実施例4:木材保存のための適用
【0118】
本発明の組成物を用い、シロアリ、菌類又はその両方によって引き起こされる被害を軽減させることによって木材を保存することができる。本発明の組成物は約30 brixまでの濃度で調製し、保護されるべき木材に直接適用することができる。場合によって、他のタイプの木材防腐剤についての技術分野でよく知られているように、加圧処理を用いて処理木材への組成物の取り込みを高めることができる。
実施例5:非植物病原体制御のための使用
【0119】
L.スルフレウスから調製し、30 brix濃度に“短時間煮沸”プロセスを用いて濃縮した本発明の組成物の2000:1希釈でペトリ皿中のプラスモディウム培養(マラリア原虫)を処理した。この稀釈では、約50%のマラリア原虫が数時間以内に死滅した。より高い提供用量によって原虫集団への毒性は増加した。
実施例6:改善された菌類培養増殖方法
【0120】
追加の増殖表面を提供する付加ポリウレタンホーム片を含む及び含まないPYREX(登録商標)容器でL.スルフレウスの培養を増殖させた。前記ホームは、PYREX(登録商標)容器単独と比較して増殖表面面積を3倍にすると概算された。増殖培地中の糖類の濃度を、培地のbrixを周期的に測定することによって2ヶ月間追跡した。Brixは、生育中のブドウで糖含有量をモニターするために用いられるパラメーターであり、水性混合物中の溶解固体の凡その濃度を示す。付加ポリウレタンホームを含む培養は、付加ポリウレタンホームを含まない培養の約3倍の速度で培地から糖を消費し、ポリウレタンホームによって提供された追加の増殖表面のお蔭でほぼ3倍速く増殖していたことを示唆した。
【0121】
ここに提供した詳細な記載及び実施例は本発明を詳述するために供され、前記を限定するためのものではない。本発明の特色の変型及び組合せは、提供された記述から当業者には明らかであり、これら変型及び組合せもまた本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、G.ルシドゥム培養液由来の活性成分(分析のためにシラン化されてある)のGC-質量スペクトルトレースを示す。
【図2】図2は、図1のGC-質量スペクトルのあるピークの質量スペクトルを示す。
【図3】図3は、図1のGC-質量スペクトルのあるピークの質量スペクトルを示す。
【図4】図4は、図1のGC-質量スペクトルのあるピークの質量スペクトルを示す。
【図5】図5は、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの増殖速度のpH依存性を示す。
【図6】図6は、G.ルシドゥム及びL.スルフレウスの増殖速度の温度依存性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2000から約5000の間の分子量を有する熱安定性オリゴ糖を含む殺菌性組成物であって、前記オリゴ糖が担子菌の菌類によって製造され、さらに少なくとも1つの細菌に対して活性を有し、前記組成物は前記菌類に由来する細胞成分を実質的に除去するために処理されてある、殺菌性組成物。
【請求項2】
着色物質の除去によって、及び/又は親油性物質の除去によって、及び/又は約100,000を超える分子量を有する物質の除去によってさらに精製される、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項3】
担子菌の種がガノデルマ又はラエチポルスの種である、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項4】
担子菌の種がガノデルマ・ルシドム又はラエチポルス・スルフレウスである、請求項1に記載の殺菌性組成物。
【請求項5】
オリゴ糖がD−グルコース、D−リボース及びD−ガラクトフラノースを含む、請求項1から4のいずれかに記載の殺菌性組成物。
【請求項6】
滅菌されてある、請求項5に記載の殺菌性組成物。
【請求項7】
オリゴ糖が約3000から約4500の間の分子量を有する、請求項5に記載の殺菌性組成物。
【請求項8】
組成物が、アグロバクテリウム、アシドヴォラクス、ブレンネリア、エルウィニア、パントエア、プシュードモナス、及びキサントモナスから成る群から選択される少なくとも1つの種を含む植物病原性細菌に対して活性を有する、請求項1−7に記載の殺菌性組成物。
【請求項9】
植物細菌が、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、アグロバクテリウム・リゾゲネス、アシドヴォラクス・アヴェナエ、ブレンネリア・クェルシナ、エルウィニア・カロトヴォラ、パントエア・ヘルビコラ、プシュードモナス・コールガテ(Pseudomonas corrugate)、プシュードモナス・シリンガエ、及びキサントモナス・カムペストリスの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の殺菌性組成物。
【請求項10】
組成物が、人間に感染する病原体に対して活性を有する、請求項1−7のいずれかに記載の殺菌性組成物。
【請求項11】
約2000から約5000の間の分子量を有する殺菌性炭水化物であって、前記炭水化物が担子菌の菌類によって産生され、植物病原性細菌の少なくとも1つの種に対して活性を有し、さらに細胞性成分が実質的に存在しない、殺菌性炭水化物。
【請求項12】
担子菌菌類のガノデルマ種によって産生される、請求項11に記載の殺菌性炭水化物。
【請求項13】
担子菌菌類のラエチポルス種によって産生される、請求項11に記載の殺菌性炭水化物。
【請求項14】
約3000から約4500の間の分子量を有する、請求項11−13のいずれかに記載の殺菌性炭水化物。
【請求項15】
約60,000を超える分子量を有する成分を実質的に除去するために処理されてある、請求項14に記載の殺菌性炭水化物。
【請求項16】
植物病原性細菌が、アグロバクテリウム、アシドヴォラクス、ブレンネリア、エルウィニア、パントエア、プシュードモナス、及びキサントモナスの種である、請求項15に記載の殺菌性炭水化物。
【請求項17】
細菌が、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、アグロバクテリウム・リゾゲネス、アシドヴォラクス・アヴェナエ、ブレンネリア・クェルシナ、エルウィニア・カロトヴォラ、パントエア・ヘルビコラ、プシュードモナス・コールガテ、プシュードモナス・シリンガエ、及びキサントモナス・カムペストリスから選択される、請求項16に記載の殺菌性炭水化物。
【請求項18】
担子菌菌類を実質的に液体の増殖培地で増殖させる工程;前記培養液を採集する工程;及び実質的に全ての細胞性成分を除去する工程を含む、病原体に対してバイオサイド活性を有する組成物を製造する方法。
【請求項19】
着色物質の除去によって、及び/又は親油性物質の除去によって、及び/又は約100,000を超える分子量を有する物質の除去によって組成物がさらに精製される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
担子菌菌類を4より低いpHで増殖させる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
担子菌菌類を約3のpHで増殖させる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
液体培地が富裕なブロス培地又はジャガイモデキストロースブロスを含み、さらに、培養を保持するために用いられる容器によって提供される増殖表面に加えてさらに追加の増殖表面面積が提供されるか、又は担子菌菌類がガノデルマ種であり、さらに前記担子菌菌類が深さ約6インチ(約15.2cm)未満の培地内又は攪拌若しくは曝気培地内で増殖させられる、請求項18−21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
担子菌菌類を約30℃の温度で2から5週間増殖させる、請求項18−22項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
病原体が細菌、菌類又は線形動物であり、さらに植物に感染する病原体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
病原体が細菌、菌類又は線形動物(線虫類)であり、さらに人間に感染する病原体である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
プロテアーゼによる処理に対して安定であるが水溶液中での煮沸で変性する、約2000から5000の間の分子量を有する炭水化物を含む菌類由来の殺線形動物組成物であって、前記組成物が実質的に全ての細胞性成分の除去によって部分的に精製されてある、殺線形動物組成物。
【請求項27】
着色物質の除去によって、及び/又は親油性物質の除去によって、及び/又は約100,000を超える分子量を有する物質の除去によってさらに精製される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
担子菌菌類種を増殖させることによって製造される、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
担子菌菌類のガノデルマ又はラエチポルスの種を増殖させることによって製造される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
菌類がRMB又は実質的に類似の培地で少なくとも約30℃の温度で増殖される、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
プロテアーゼによる処理に対して安定であるが水溶液中での煮沸で変性する、約2000から5000の間の分子量を有する炭水化物を含む菌類由来の抗カビ組成物であって、前記組成物が実質的に全ての細胞性成分の除去によって部分的に精製されてある、組成物。
【請求項32】
着色物質の除去によって、又は親油性物質の除去によって、又は約100,000を超える分子量を有する物質の除去によってさらに精製されてある、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
担子菌菌類によって製造される、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
富裕ブロス培地(RBM)又はRBMと実質的に類似の培地で増殖する担子菌菌類種によって製造される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
ガノデルマ・ルシドゥム又はラエチポルス・スルフレウスによって製造される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
植物、植物生産物又は菌類に対する病原体の悪影響を減少させる方法であって、前記方法が、請求項1、26又は31に記載の組成物の有効量を、保護されるべき植物又は植物生産物又は菌類に適用するか、又は請求項1、26又は31に記載の組成物の有効量を、保護されるべき植物又は菌類の場所又は増殖培地に適用することを含む、方法。
【請求項37】
病原体が細菌である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
病原体が菌類である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
病原体が線形動物であり、組成物が、線形動物が存在する証拠を観察しうる前に植物、植物生産物又は菌類に適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
組成物が、植物の葉に適用されるか、又は生育中の植物生産物に直接適用される、請求項36―39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
大きな容器中の水性培地で菌類を増殖させることによって培養液を製造する改善方法であって、前記改善が、容器の表面に加えて菌糸体の増殖の支持に適した追加の増殖表面の提供することを含み、ここで容器の培地で濡れた表面プラス追加された増殖表面の全表面積/体積比が少なくとも約50cm/リットル培地であるか、及び/又は前記追加された増殖表面が、容器の培地で濡れた表面によって提供される増殖表面面積の少なくとも約50%である、改善方法。
【請求項42】
さらに、培養の増殖中に菌蓋を実質的に破壊することなく培地を攪拌又は混合することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
菌類が担子菌である、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
菌類がラエチポルス・スルフレウスである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1−7又は請求項31−35のいずれかに記載の組成物を木材表面の少なくとも一部分に適用することを含む、木材を保存する方法。
【請求項46】
シロアリ及び/又は菌類によって引き起こされる木材の被害を減少させることによって木材を保存する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
病原体による汚染が疑われる表面又は物質に請求項1−7のいずれかに記載の組成物を適用することを含む、表面又は物質の内部の感染性病原体のレベルを減少させる方法。
【請求項48】
表面又は物質に請求項1−7のいずれかに記載の組成物を適用することを含む、表面又は物質の汚染を減少させるか又は予防する方法。
【請求項49】
請求項1−7のいずれかに記載の組成物の有効量を動物に投与することを含む、病原体による動物の感染を治療又は予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−513579(P2009−513579A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536569(P2008−536569)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/030009
【国際公開番号】WO2008/039169
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(505018119)エービーアール、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】