説明

癌および他の疾患の治療のための39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体

本発明は、新規の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、それらの製造のための方法、およびその使用に関する。さらなる態様において、本発明は、癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療における、これらの39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、その製造方法、およびその使用に関する。さらなる態様において、本発明は、癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療における、これらの39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシン(シロリムス)(図1)は、1,2,3−トリカルボニル部分がピペコリン酸ラクトン(Paivaら、1991年)と結合した、ストレプトミセス・ハイグロスコピクスNRRL5491(Sehgalら、1975年、Vezinaら、1975年;米国特許第3929992号、米国特許第3993749号)によって産生される脂溶性マクロライドである。本発明の目的のために、Findlayらの番号付け規約(1980年)またはChemical Abstracts(11th Cumulative Index、1982〜1986年、p60719 CS)よりも、McAlpineらの番号付け規約(1991年)によってラパマイシンを記載する。
【0003】
ラパマイシンは、化合物が呈する広範な活性スペクトルにより、重要な薬理学的値を有する。ラパマイシンは、主としてカンジダ属種に対してであるが、糸状菌に対しても、中等度の抗真菌活性を示す(Bakerら、1978年、Sehgalら、1975年、Vezinaら、1975年、米国特許第3929992号、米国特許第3993749号)。ラパマイシンは、種々の細胞型におけるシグナル変換経路を標的とすることによって、例えば、細胞周期のG期からS期への進行を可能にするシグナル伝達経路を阻害することによって、細胞増殖を阻害する(Kuoら、1992年)。T細胞において、ラパマイシンはIL−2受容体からのシグナル伝達、および、免疫抑制をもたらすT細胞のその後の自己増殖を阻害する。ラパマイシンは多数の哺乳動物細胞型の増殖を阻害することから、ラパマイシンの阻害効果はT細胞に限定されない(Brunnら、1996年)。したがって、ラパマイシンは、臓器同種移植片拒絶反応の防止および自己免疫障害の治療における治療的応用が確立または予測された、強力な免疫抑制剤である(Kahanら、1991年)。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(SDZ RAD、RAD001、サーティカン、エベロリムス)は、自己免疫性の薬理効力を示し、抗癌剤としても研究中の、ラパマイシンの半合成類縁体である(Sedrani, R.ら、1998年、Kirchnerら、2000年、米国特許第5665772号、Boulayら、2004年)。この薬物の免疫抑制剤としての承認は、2003年にヨーロッパにおいて得られた。ラパマイシンエステル誘導体CCI−779(Wyeth−Ayerst社製)は、インビトロで細胞成長を阻害し、インビボで腫瘍成長を阻害する(Yuら、2001年)。CCI−779は、現在、潜在的な抗癌剤としての第III相臨床試験中である。慢性尋常性乾癬の治療(KirbyおよびGriffiths、2001年)、PC12細胞における神経突起伸長の刺激等の効力の潜在的使用(Lyonsら、1994年)、機械的損傷後の血管細胞および平滑筋細胞によるサイトカインに対する増殖応答の遮断(Gregoryら、1993年)におけるラパマイシンの価値および同種移植片線維症の予防(WallerおよびNicholson、2001年)におけるその役割は、研究の盛んな分野である(KahanおよびCamardo、2001年)。近年の報告は、ラパマイシンが、長期にわたる免疫抑制療法を受けている臓器同種移植片患者において、その他の免疫抑制レジメンを受けている患者より癌の発生率が低いことと関連すること、および、この癌発生率の低下が血管新生の阻害によるものであることを明らかにしている(Gubaら、2002年)。イムノフィリンリガンドの神経栄養活性がそれらの免疫抑制活性と無関係であること(Steinerら、1997年)、および、国際特許出願WO01/03692において概説されているような成熟ステロイド受容体複合体(mature steroid receptor complex)の崩壊によって神経成長刺激が促進されることが報告されている。脂質異常症および血小板減少症等の副作用、ならびに潜在的な催奇形作用も報告されている(Hentgesら、2001年、KahanおよびCamardo、2001年)。
【0004】
ラパマイシンのポリケチド骨格は、計7個のプロピオン酸および7個の酢酸単位の全ての頭−尾(head−to−tail)縮合によって、I型ポリケチド合成酵素(rapPKS、Paivaら、1991年)を含む極めて大きい多機能タンパク質によるシキミ酸由来のシクロヘキサンカルボン酸のスターター単位が合成される。L−リシン由来のアミノ酸、ピペコリン酸は、アミド結合によってポリケチド骨格の最後のアセテートに縮合され(Paivaら、1993年)、続いてラクトン化が大員環を形成する。
【0005】
3個のラパマイシンPKS遺伝子、NRPSをコードする遺伝子およびフランキング後期遺伝子配列のそれぞれ、ならびに対応するポリペプチドについてのヌクレオチド配列は、Aparicioら、1996年およびSchweckeら、1995年によって同定され、アクセッション番号X86780でNCBIに寄託されており、この配列への訂正がWO04/007709において近年公開された。
【0006】
ラパマイシン生合成クラスターの第1の酵素フリー産物は、プレラパマイシンに指定されている(WO04/007709、Gregoryら、2004年)。完全に処理されたラパマイシンの製造は、ラパマイシン後期遺伝子、RapJ、RapN、RapO、RapM、RapQ、およびRapIによってコードされた酵素によるポリケチド/NRPSコアのさらなる処理を必要とする。
【0007】
これまでに特徴付けられているラパマイシンの薬理作用は、FKBPと称される細胞質受容体との相互作用によって媒介されると考えられている。真核性T細胞中の主要な細胞内ラパマイシン受容体はFKBP12(DiLellaおよびCraig、1991年)であり、結果として生じる複合体は、標的タンパク質と特異的に相互作用して、細胞のシグナル伝達カスケードを阻害する。
【0008】
ラパマイシン−FKBP12複合体の標的は、酵母内においてTOR(ラパマイシンの標的)として同定されており(Alarconら、1999年)、哺乳動物タンパク質は、FRAP(FKBP−ラパマイシン関連タンパク質)またはmTOR(哺乳動物のラパマイシンの標的)として知られている(Brownら、1994年)。
【0009】
神経細胞中のmTORシグナル伝達と局所的タンパク質合成との間の結合;翻訳制御に関与するタンパク質のリン酸化状態に対するその影響:転写レベルおよび翻訳レベルにおける翻訳機構の構成成分の豊富さ;アミノ酸透過酵素活性の制御、および代謝経路に関与する多くの酵素の転写の協調について説明されている(Raughtら、2001年)。ラパマイシン感受性のシグナル伝達経路は、胚脳の発達、学習、および記憶形成において重要な役割を果たすとも考えられている(Tangら、2002年)。酵母内のTORタンパク質に関する研究は、栄養感受性のシグナル伝達経路を調節する上でのそれらの役割も明らかにした(Hardwickら、1999年)。同様に、mTORは、プロテインキナーゼB(Akt)の作用、およびインスリンシグナル伝達において重要な役割を担うという作用に対する直接標的として定義されている(Shepherdら、1998年、Naveら、1999年)。哺乳動物のTORは、アクチン細胞骨格の極性形成および翻訳開始の調節にも関係している(Alarconら、1999年)。mTOR等のホスファチジルイノシトール3−キナーゼは、細胞周期の進行、接着、細胞生存、および血管新生等、腫瘍の発症機構のいくつかの態様において機能的である(RoymansおよびSlegers、2001年)。
【0010】
ラパマイシンおよびラパマイシン類縁体の薬物動態研究は、溶液中においてより安定で、代謝性攻撃(metabolic attack)に対してより耐性があり、かつ/または、細胞膜の改良された透過性および流出物の減少を有し、それによって、改良された経口バイオアベイラビリティを呈することができる、新規ラパマイシン化合物の開発の必要性を実証している。
【0011】
化学的に利用可能な分子の部位を使用して合成された一連のラパマイシン類縁体が報告されている。下記化合物の説明は、図1に記載されているラパマイシン分子の番号方式に適応させた。誘導体化または置き換えのための、分子上における化学的に利用可能な部位は、C40およびC28ヒドロキシル基(例えば、特許文献1、特許文献2)、C39およびC16メトキシ基(例えば、特許文献3、特許文献4)、C32、C26、およびC9ケト基(例えば、米国特許第5378836号、米国特許第5138051号、米国特許第5665772号)を含む。C17、C19、および/またはC21におけるトリエンを標的とした水素化は、抗真菌活性の保持をもたらしたが、免疫抑制の相対的損失ももたらした(例えば、特許文献5、特許文献6)。分子の安定性における顕著な改良(例えば、C32、C40、および/またはC28におけるオキシムの形成、特許文献7、特許文献8)、代謝性攻撃に対する耐性(例えば、特許文献9)、バイオアベイラビリティ(例えば、特許文献10、米国特許第5955457号、WO98/04279)、および、プロドラッグの製造(例えば、米国特許第6015815号、米国特許第5432183号)は、誘導体化によって達成された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5665772号明細書
【特許文献2】米国特許第5362718号明細書
【特許文献3】国際公開第96/41807号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5728710号明細書
【特許文献5】米国特許第5391730号明細書
【特許文献6】米国特許第5023262号明細書
【特許文献7】米国特許第5563145号明細書
【特許文献8】米国特許第5446048号明細書
【特許文献9】米国特許第5912253号明細書
【特許文献10】米国特許第5221670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、より広範なラパマイシン誘導体の必要性が残る。そのようなラパマイシン誘導体は、広範囲な状態の治療において優れた有用性を有するであろう。本発明は、一連の新規の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体を提供する。そのような化合物は、医学において、特に、癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療のために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ラパマイシンの39−デスメトキシ−39−メチル誘導体、これらの化合物の調製のための方法、これらの化合物への中間体、およびこれらの化合物を医学において使用するための方法を提供する。
【0015】
その最も広い態様において、本発明は、40−ヒドロキシ位が、カルボン酸エステルとして、エーテルとして、ホスフィン酸エステルとして、アセタールとして、またはグリコシルとして誘導体化されることを特徴とする、ラパマイシンの39−デスメトキシ−39−メチル誘導体を提供する。
【0016】
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンが、カルボン酸エステルとして、エーテルとして、またはアセタールとして誘導体化される場合、誘導体化基は、好ましくは12個を超えない炭素原子(特に7個以下、特に5個以下の炭素原子)を含有する。好ましくは、誘導体化基は、−CFPO(OH)、−PO(OH)、−COOH、−OH、および−NHから選択され、特に−COOHおよび−OHから、さらに特定すると−OHから選択される少なくとも1個の官能基(特に少なくとも2個の官能基)を含有する。
【0017】
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンが、グリコシル基から誘導されるアセタールとして誘導体化される場合、好ましくは、各グリコシルは、好ましくは12個を超えない炭素原子(特に7個以下、特に6個以下の炭素原子)を含有する糖またはグリコシドから形成される。例としては、単糖類および二糖類、特に5および6員環を形成する単糖類が挙げられる。好ましくは、各グリコシルは、−COOH、−OH、および−NHから選択され、特に−NHおよび−OHから、さらに特定すると−OHから選択される少なくとも1個の官能基(特に少なくとも2個の官能基)を含有する。
【0018】
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンが、ホスフィン酸エステルとして誘導体化される場合、好ましくは、アルキル基は、好ましくは4個を超えない炭素原子を含有し、一例は、ホスフィン酸で形成されたエステルである。
【0019】
誘導体化部分の具体例を以下に示す。
【0020】
より具体的な態様において、本発明は、下記の式(I)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、または薬学的に許容されるその塩:
【0021】
【化1】

[式中、
Xは、結合またはCHを表し、
は、ケト基または(H,H)を表し、
は、OHまたはOMeを表し、
は、H、OHまたはOMeを表し、
およびRは、それぞれ独立にHまたはOHを表し、
は、−R、−C(O)R、−POR1920またはY−R15を表し、
は、−(CR(CR1011CR121314を表し、
およびRは、それぞれ独立にC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルを表し、それらの基のいずれかは、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−OH、−COOHまたは−NHで場合によって置換されていてよいか、あるいは、RおよびRは、それぞれ独立にH、トリフルオロメチルまたはFを表し、
10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立にC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルを表し、それらの基のいずれかは、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−OH、−COOHまたは−NHで場合によって置換されていてよいか、あるいは、R10、R11、R12、R13およびR14は、H、−(CRNH、−(CROH、CF、F、COOHから独立に選択されてよいか、あるいは、R10とR11またはR12とR13またはR13とR14は、それらが結合した炭素と一緒になって、N、O、およびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、5個までの−(CROH、−(CRNHまたはCOOH基で場合によって置換されている、C3〜C6シクロアルキルまたは3〜6員のヘテロアルキル環を形成してよく、
Y=結合、−C(O)−O−、−(CH−O−C(O)−O−であり、
15は、
【0022】
【化2】

を表し、
16は、それぞれ独立にHまたはOHであり、
17は、H、OHおよびNHから独立に選択され、
18は、H、−CH、−CHOHおよび−COOHから独立に選択され、
但し、R16、R17およびR18から選択される2個以下の基は、HまたはCHを表し、
19およびR20は、それぞれ独立にHまたはC1〜C4アルキルを表し、
m、pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の間の整数を表し、
但し、R部分は、12個を超える炭素原子を含有せず、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−COOH、OHまたはNHから選択される少なくとも1個の官能基を含有する]または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0023】
上記の構造は代表的な互変異性体を示すものであり、本発明は、式(I)の化合物のすべての互変異性体、例えば、エノール化合物が図示されている場合のケト化合物およびその逆を包含する。
【0024】
特定の立体異性体が具体的に(例えば、構造式中の関連する立体中心における太線もしくは点線の結合によって、構造式中においてEもしくはZ配置を有するものとして二重結合を描写することによって、または、立体化学規定の命名法を使用することによって)示されているのでない限り、すべての立体異性体が純化合物およびその混合物として本発明の範囲内に含まれる。別段の明示がない限り、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、ならびにそれらの組合せおよび混合物は、すべて本発明によって包含される。多形結晶形態および溶媒和物および水和物も、本発明の範囲内に包含される。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、医薬品として使用するための、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩としての39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ラパマイシンの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(定義)
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、1つの、または1つを超える(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法的な目的語を指すために使用される。例として、「an analogue(類縁体)」は、1つの類縁体または1つを超える類縁体を意味する。
【0028】
本明細書において使用する場合、「類縁体」という用語は、別のものと構造的には同様であるが組成(原子同士の置き換え、または特定の官能基の有無等)においてわずかに異なる化学化合物を指す。
【0029】
特に、「39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体」という用語は、WO2004/007709の方法によって製造され、式(II)で示される通りの39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン化合物を指す。これらの化合物は「親化合物」とも称され、本出願において、これらの用語は相互交換可能に使用される。本出願において、「39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体」という用語は、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン自体への言及を含む。
【0030】
本明細書において使用する場合、「誘導体」という用語は、半合成(semi−synthetic)有機化学によってそれらの親化合物から改変された化学化合物を指す。
【0031】
特に、「39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体」という用語は、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体の半合成改質によって製造された、上記式(I)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、または薬学的に許容されるその塩を指す。これらの化合物は、「本発明の化合物」または「ラパマイシンの39−デスメトキシ−39−メチル誘導体」とも称され、本出願において、これらの用語は相互交換可能に使用される。
【0032】
本明細書において使用する場合、「自己免疫障害」という用語は、一般に組織への慢性の炎症性損傷によって特徴付けられる、自己抗原に対して適応的免疫応答が展開される場合の状態を指す。本発明の範囲内に含まれるがそれらに限定されない自己免疫障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、重症筋無力症、インスリン依存性糖尿病、および多発性硬化症である。
【0033】
本明細書において使用する場合、「炎症疾患」という用語は、炎症系が過剰反応して組織損傷および/または無用な副作用を引き起こす場合の状態を含む。過剰反応は、非自己抗原、自己抗原に対してであり得るか、または自然に発生し得る。炎症性疾患は、アレルギー(過敏反応としても知られている)を含む。炎症疾患の例は、乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏症、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含むがこれらに限定されない)、肺炎症(喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、急性呼吸促迫症候群、および気管支炎を含む)、関節リウマチ、および眼ブドウ膜炎を含むがこれらに限定されない。
【0034】
本明細書において使用する場合、「癌」という用語は、皮膚中の、または、例えば乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、胃、もしくは腸であるがこれらに限定されない体内臓器中の、細胞の悪性または良性の成長を指す。癌は、隣接組織内へ浸潤し、遠隔臓器、例えば、骨、肝臓、肺、または脳に広がる(転移する)傾向がある。本明細書において使用する場合、癌という用語は、黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、および肥満細胞腫等であるがこれらに限定されない転移性腫瘍細胞型と、結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、乳癌、膵癌、膀胱癌、腎癌、胃癌、膠芽細胞腫、原発性肝癌、ならびに卵巣癌等であるがこれらに限定されない組織の癌腫型との両方を含む。
【0035】
本明細書において使用する場合、「B細胞悪性腫瘍」という用語は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、および非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む障害の群を含む。これらは、血液および造血臓器の腫瘍性疾患である。これらの疾患は、骨髄および免疫系の機能不全を引き起こし、宿主が感染症および出血に対して高度の感受性を示すようにする。
【0036】
本明細書において使用する場合、「血管疾患」という用語は、過剰増殖性の血管障害(例えば、再狭窄および血管閉塞)、血管移植片のアテローム性動脈硬化症、循環器疾患、脳血管疾患、および末梢血管疾患(例えば、冠動脈疾患、動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、非アテローム性動脈硬化症、または血管壁損傷)を含むがこれらに限定されない。
【0037】
本明細書において使用する場合、「神経再生」という用語は、神経細胞成長の刺激を指し、神経突起伸長および神経細胞の機能回復を含む。神経再生が著しい治療有効性を持ち得る疾患および障害は、物理的損傷(例えば、脊髄損傷または外傷、坐骨または顔面神経の病変または損傷)または病状(例えば、糖尿病)によって引き起こされるかにかかわらず、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、筋ジストロフィー、脳卒中、進行性筋萎縮症、進行性延髄遺伝性筋萎縮症(progressive bulbar inherited muscular atrophy)、頸部脊椎症、ギランバレー症候群、認知症、末梢神経障害、および末梢神経損傷を含むがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書において使用する場合、「線維症」という用語は、細胞外マトリックスの過剰産生に関連する疾患を指し、サルコイドーシス、ケロイド、糸球体腎炎、末期腎不全、肝線維症(肝硬変、アルコール性肝疾患、および脂肪性肝炎を含むがこれらに限定されない)、慢性移植腎症、外科的癒着、脈管障害、心臓線維症、肺線維症(特発性肺線維症および潜源性線維化肺胞炎を含むがこれらに限定されない)、黄斑変性症、網膜および硝子体網膜症、ならびに化学療法または放射線誘発線維症を含む(がこれらに限定されない)。
【0039】
本明細書において使用する場合、「移植片対宿主病」という用語は、同種幹細胞/骨髄移植後に観察される合併症を指す。これは、ドナーからの感染防御細胞が患者の体を異なるものまたは異質なものとして認識したときに発生する。続いて、これらの感染防御細胞は、あたかも感染症を攻撃するかのように、患者の体内の組織を攻撃する。移植片対宿主病は、移植後の最初の100日以内に発生する場合には急性として、移植後100日を超えて発生する場合には慢性として分類される。一般的に関与する組織は、肝臓、消化管、および皮膚を含む。慢性移植片対宿主病は、幹細胞/骨髄移植後の患者の約10〜40パーセントにおいて発生する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「バイオアベイラビリティ」という用語は、薬物またはその他の物質が、投与後、吸収される、または、生物活性部位において利用可能になるまでの程度または割合を指す。この特性は、化合物の溶解性、内臓における吸収速度、タンパク質結合および代謝の程度等を含む多数の要因に依存する。本明細書には、当業者によく知られているバイオアベイラビリティに関する種々の試験が記載されている(Trepanierら、1998年、Gallant−Haidnerら、2000年も参照)。
【0041】
「水溶性」という用語は、本願において使用する場合、水性媒体、例えば、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中における溶解性を指す。
【0042】
式(I)の化合物等の本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機の酸または塩基、および第四級アンモニウム酸付加塩から形成される従来の塩を含む。適切な酸性塩のさらに具体的な例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、パルモン酸塩(palmoic)、マロン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化水素酸塩、リンゴ酸塩、ステアリン酸塩、タンニン酸塩等を含む。シュウ酸等の他の酸は、それ自体が薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物および薬学的に許容されるその塩を得るときの中間体として有用な塩の調製において有用となり得る。適切な塩基性塩のさらに具体的な例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカイン塩を含む。以後、本発明による化合物に言及する場合は、式(I)の化合物および薬学的に許容されるその塩の両方を含む。
【0043】
アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、直鎖であっても、分枝していてもよい。
【0044】
C1〜C4アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルおよびn−ブチルを含む。
【0045】
C2〜C4アルケニル基の例は、エテニルおよび2−プロペニルを含む。
【0046】
C2〜4アルキニル基の例は、エチニルを含む。
【0047】
C3〜C6シクロアルキル基は、場合によって分枝していてよい3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル環を指す。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、メチル−シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0048】
N、O、およびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する3〜6員のヘテロアルキル環は、1個または2個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含有する環を含む。例としては、フラン、ピラン、オキセタン、オキシラン、ピペリジン、ピロリジン、アゼチジン、アジリジン、チイラン、チエタン、チオフェン、チオピランおよびモルホリンが挙げられる。
【0049】
3〜6員のヘテロアルキル環のための任意の置換基例としては、−OH、−CHOH、NH、CHNH、およびCOOHが挙げられる。一般に、3〜6員のヘテロアルキル環は、置換されていなくてもよいし、1または2個、例えば1個の置換基によって置換されていてもよい。
【0050】
(発明の説明)
本発明は、上記に示したように、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、これらの化合物の調製のための方法、これらの化合物への中間体、およびこれらの化合物を薬に使用するための方法を提供する。
【0051】
好ましくは、Rは、7個以下、特に5個以下の炭素原子を含有する。
【0052】
は、好ましくは、−PO(OH)、−OH、−COOHおよび−NH、より好ましくは−OH、−COOH、または−NH、特に−COOHおよびOH、中でも特にOHから選択される少なくとも1個の官能基を含有する。好ましくは、Rは、2個以上の置換基、例えば2−OH基を含有する。
【0053】
好適には、Xは、CHを表す。
【0054】
好適には、pは、0または1を表す。
【0055】
好適には、mは、0または1を表す。
【0056】
好適には、qは、0、1または2を表す。
【0057】
好適には、R11は、Hを表す。好適には、R12は、Hを表す。
【0058】
好適には、R13は、HまたはOHを表す。
【0059】
pが1を表す場合、好適には、R10は、Me、OHまたはCHOHを表す。
【0060】
pが1を表す場合、好適には、R11は、Me、HまたはCHOHを表す。
【0061】
mおよびpがどちらも0を表す場合、好適には、R12およびR13はどちらもHを表し、R14は−(CR−OH[式中、q=0または1であり、RおよびRはどちらもHを表す]を表す。
【0062】
pが1を表し、mが0を表す場合、好適には、R10およびR11はどちらもHを表し、R12はHを表し、R13はH、OHまたはNHを表し、R14は−(CR−OH[式中、q=0または1であり、RおよびRはどちらもHを表す]を表す。
【0063】
が−POR1516を表す場合、好適には、R15およびR16は、どちらもCHを表すか、またはどちらもCHCHを表す。
【0064】
好適には、Rは、ヒドロキシル酢酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのエステルの形成から誘導される残基を表す。
【0065】
化合物のセットの一例において、Rは、C(O)Rを表す。
【0066】
好ましくは、Rは、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなるリストより選択される酸、特に2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と、大環アルコールとの縮合によって形成される部分である。
【0067】
15
【0068】
【化3】

を表す場合、
この部分の例としては、(i)グルコース(すなわち、R18はCHOHを表し、そして各R16およびR17はOHを表す)、例えばD−グルコース、(ii)グルコサミン(すなわち、R18はCHOHを表し、各R16はOHを表し、R17は、NHを表す)、例えばD−グルコサミン、(iii)グルクロン酸(すなわち、R18はCOOHを表し、各R16およびR17はOHを表す)、例えばD−グルクロン酸、ならびに(iv)アラビノース(すなわち、R18はHを表し、各R16およびR17はOHを表す)、例えばD−アラビノースとアセタールを形成することによって形成される部分が挙げられる。
【0069】
15
【0070】
【化4】

を表す場合、
この部分の例としては、フルクトース(すなわち、R16はそれぞれOHを表す)、例えばD−フルクトースの残基とアセタールを形成することによって形成される部分が挙げられる。
【0071】
15
【0072】
【化5】

を表す場合、
この部分の例としては、グルクロン酸(すなわち、各R16はOHを表す)、例えばD−グルクロン酸の残基とエステルを形成することによって形成される部分が挙げられる。
【0073】
概して、本発明の化合物は、式(II)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体の半合成誘導体化によって調製される。
【0074】
したがって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を調製するための方法は、
(a)式(II)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体:
【0075】
【化6】

またはその保護誘導体を、式(III)の化合物:
HO−R (III)
またはRの活性誘導体と反応させるステップ、
(b)式(I)の化合物またはその塩を、式(I)の別の化合物または別の薬学的に許容されるその塩に変換するステップ、あるいは、
(c)式(I)の被保護化合物を脱保護するステップ
を含む。
【0076】
上記で使用されている「活性誘導体」という用語は、(限定ではなく、例として)エステルの場合、カルボン酸、ハロゲン化アシル、混合無水物、対称無水物またはカルボン酸エステル;エーテルの場合、ハロゲン化アルキル、アルキルメシラート、アルキルトリフラート、アルキルトシラート、または他の適切に活性化されたアルキル誘導体;リン酸エステルおよびホスホン酸エステルの場合、クロロホスフェート、ジアルキルシアノホスフェート、ジアルキルジアルキルホスホルアミデート、またはクロロホスファイト;あるいは、グリコシル基から誘導されるアセタールの場合、グリコシルドナー、例えば、ハロゲン化グリコシル、チオグリコシド、1−O−アシルグリコシド、オルトエステル、1−Oもしくは1−Sカーボネート、トリクロロイミデート、4−ペンテニルグリコシド、グリコシルリン酸エステル、1−O−スルホニルまたは1−O−シリル化グリコシドを使用するものを指す。
【0077】
プロセス(a)において、式(II)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体は、WO2004/007709に記載されている通りに調製され得る。
【0078】
本明細書において提供される具体的な方法および参考文献に加えて、当業者は、Vogel’s textbook of practical organic chemistry(Furnissら、1989年)およびMarch’s advanced organic chemistry(SmithおよびMarch、2001年)を含むがこれらに限定されない、合成方法のための標準教科書的な文献を参考にしてもよい。
【0079】
さらに、本ヒドロキシル基は、当業者に利用可能である多数の標準的なヒドロキシ保護戦略のうちの1つによって、保護することができる。ヒドロキシル基は、置換アルキルエーテル、置換ベンジルエーテルおよびシリルエーテルを含むがこれらに限定されないエーテルを形成することによって保護され得る。シランの活性型(塩化シリルまたはシリルトリフラートを含むがこれらに限定されない)を、適切な塩基の存在下で39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンと反応させることにより、エーテル、好ましくは、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、およびt−ブチルジフェニルシリルを含むがこれらに限定されないシリルエーテルが形成される。その後、この保護基は、酸加水分解またはフッ化物補助開裂(assisted cleavage)のいずれかによって除去され得る。1,2−ジオールは、アセトン誘導体の縮合に基づき、アセトニドとして保護され得る。これは、酸触媒作用によって除去され得る。
【0080】
式(II)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体は、半合成(すなわち、プロセス(a))用のテンプレートとして使用され得る。C−40におけるペンダントヒドロキシル基は、当業者に既知である多数の合成変換を介し、例えばアシル化、アルキル化、グリコシル化、またはリン酸化によって官能化され得る。
【0081】
プロセス(a)において、Rが式−C(O)RまたはY−R15[式中、R15は、
【0082】
【化7】

を表し、Y=結合である]の部分を表す場合、ヒドロキシエステルの形成、またはO−アシル化は、式(II)の化合物のヒドロキシル基を、好ましくは活性化形態の対応するカルボン酸、例えば式(IIIAi)もしくは(IIIAii)の化合物:
【0083】
【化8】

と、または、式(IIIB)の化合物:
【0084】
【化9】

[式中、Wは、カルボン酸を求核攻撃に対して活性化する基である]と反応させることによって媒介され得る。カルボン酸は、限定ではなく、例として、ハロゲン化アシル(例えば、W=Cl)、混合無水物(すなわち、W=OC(O)R’)、対称無水物(W=OC(O)R)、またはカルボン酸エステル(すなわち、W=OR’)の形成によって活性化され得る。
【0085】
式(IIIAi)、(IIIAii)、または(IIIB)の化合物は、当業者に公知の標準的な方法を使用して、市販のカルボン酸から調製でき、特定の態様において、式(IIIAi)[式中、Rは、−(CR(CR1011CR121314である]の化合物は、米国特許第5362718号、米国特許第5665772号、またはEP0663916に記載されている方法を使用して調製され得る。
【0086】
好ましくは、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体は、有機媒体中において、塩基の存在下で酸塩化物または混合無水物のいずれかと反応する。使用され得る塩基は、ピリジン、4,4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、2,6−ルチジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、その他のトリアルキルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、または1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)を含むがこれらに限定されない。
【0087】
プロセス(a)において、Rが式−C(O)RまたはY−R15[式中、R15は、
【0088】
【化10】

を表し、Y=−C(O)O−または−(CH−OC(O)O−である]の部分を表す場合、これらのヒドロキシエステルの形成には、式(II)の化合物のヒドロキシル基を、式IVの化合物:
【0089】
【化11】

(IV)、[式中、T=結合または−O(CH−であり、R21は、アルキルまたはアリール基、好ましくはアリール基、特にパラ−ニトロフェニル基である]等の活性カーボネートを形成する試薬と反応させることが必要である。
【0090】
続いて、式IVの化合物は、式IIIの化合物と反応して、カーボネートリンカーを介して40−ヒドロキシル基と結合したRを有する化合物を生成し得る(WO2004/101583)。
【0091】
同様に、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を、適切に活性化された選択したアルキル誘導体と反応させることにより、C−40における異なるヒドロキシエーテルで39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を誘導体化し、39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−アルキルラパマイシン誘導体を形成し得る。活性化されたアルキル基は、ハロゲン化アルキル(RCl、RI、RBr)、アルキルメシラート(ROS(O)CH)、アルキルトリフラート(ROS(O)CF)、アルキルトシラート(ROS(O)PhMe)の形成を含むがこれらに限定されない多数の方法のうちの1つによって活性化されたアルキル基を指す。活性化されたアルキル基は、その後、有機媒体中において、適切な塩基の存在下で39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体と反応することになろう。その他の反応位置におけるアルキル化を回避するために、反応条件を最適化するための標準的な方法が当業者によって用いられ得る。
【0092】
同様に、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体はリン酸化され得、リン酸エステルの脱保護後、40−O−ホスホ−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体、または40−O−ジアルキルホスホノ−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体と、当業者に公知の方法によって作製されるこれらの誘導体の塩とを産出し得る。リン酸エステルは、直接的に、または、O−ホスファイト(すなわち、(R’O)POR)を介して間接的に、形成され得、この3価の亜リン酸塩は酸化され(好ましくは、mCPBA等であるがこれに限定されない過酸の作用によって)5価のリン酸塩になる。直接的なリン酸化法としては、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を、保護されているクロロホスフェート(例えば、(BnO)P(O)Cl、(アルキルO)P(O)Cl)と、好ましくは有機媒体中のDMAPの存在下において反応させること、または、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を、オキシ塩化リン(POCl)と、トリエチルアミン等の塩基の存在下で反応させること、それに続く、得られたO−ジクロロホスフェート(すなわち、ROP(O)Cl)の酸加水分解、またはジアルキルシアノホスフェートとのカップリング、が挙げられるがこれらに限定されない(WO01/81355)。ジアルキルまたはジアリールクロロホスフェートは、ジアルキルまたはジアリールホスファイト(すなわち、(RO)P(O)H)を、塩基の存在下で四塩化炭素と反応させることにより、インシチュで生成され得る。O−ホスファイトを(O−ホスフェートへの酸化のために)形成する方法は、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を、ジアルキルジアルキルホスホルアミデート(好ましくはジアルキルジイソプロピルホスホリルアミデート(dialkyl diisopropylphosphorylamidate))と、塩基(好ましくはテトラゾール)の存在下でカップリングすること、または、塩基の存在下でクロロホスファイトを使用してカップリングすることを含むがこれらに限定されない(Evansら、1992年)。保護基の選定は重要であり、リン酸塩のエチルおよびメチルエステルは、酸性または塩基性条件下で容易に加水分解可能なものではない。好ましくは、保護基は、ベンジルエステル(ヨウ化ナトリウム/クロロトリメチルシランによって促進される加水分解によって開裂される(WO01/81355))または2−シアノエチルエステル(弱塩基触媒の開裂によって開裂される)を含むがこれらに限定されない。同様に、40−O−ジアルキルホスホノ−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体を、(上記のように)適切に活性化されたホスホン酸ジアルキルまたはジアルキルホスファイトと反応させることによって生成され得る。
【0093】
プロセス(a)において、R15が式
【0094】
【化12】

または
【0095】
【化13】

の部分を表す場合、グリコシド結合の形成、またはO−グリコシル化は、ヒドロキシル基を対応するグリコシルドナー(好ましくは活性型の対応するグリコシルドナー)(ToshimaおよびTatsuta(1993年)を参照)、例えば式(IIIC)の化合物:
【0096】
【化14】

と、または、式(IIID)の化合物:
【0097】
【化15】

と反応させることによって媒介され得る。
【0098】
ハロゲン化グリコシル(Z=F、Cl、Br)、チオグリコシド(Z=SMe、SEt、SPh、SPy、SCN)、1−O−アシルグリコシド(Z=OC(O)R)、オルトエステル(Z=OC(Me)(R)(式(IIIC/IIID)のO−C2))、1−Oもしくは1−Sカーボネート(Z=OC(S)SMe、Z=OC(O)イミダゾール、Z=OC(S)イミダゾール、Z=SC(S)OEt)、トリクロロイミデート(Z=OC(=NH)CCl)、4−ペンテニルグリコシド(Z=OCHCHCHCH=CH)、リン酸エステル(例えば、Z=OP(O)(OPh))、1−O−スルホニル(Z=トシル)、または1−O−シリル化グリコシド(Z=OTMSまたはOTBS)を含むがこれらに限定されない「グリコシルドナー」を使用して、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体は、有機媒体中において、活性剤(ルイス酸または重金属塩等、ToshimaおよびTatsuta、1993年を参照)の存在下で優先的にグリコシル化され得る。使用される具体的なグリコシルドナーおよび反応条件は、αまたはβグリコシドのいずれが形成されるかを決定することになる。アシル化について前述したように、親化合物中に存在する任意のヒドロキシル基は保護またはマスクされ得るので、1当量のグリコシルドナーを使用することで40−O−アシル化がもたらされる。グリコシルドナー上の残留ヒドロキシルは、例えば、O−アセテート、O−ベンゾエート、1,2−アセトニドとして保護されているはずであり、そのため、さらなる脱保護が必要となる。さらに、グリカール等の2−デオキシグリコシルドナーを使用して(還元ステップも必要である)、2’−デオキシ−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシングリコシドを調製することができ、2,6−アンヒドロ−2−チオ糖(2,6−anhydro−2−thiosugar)のような2,6−ジデオキシグリコシルドナーを使用して、2’,6’−ジデオキシ−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシングリコシドを調製することができる。
【0099】
プロセス(b)において、当業者に公知である従来の方法により、塩形成および交換が実行され得る。式(I)の化合物の相互変換は、公知のプロセスによって実行され得、例えば、ヒドロキシおよびケト基は、本明細書の他の箇所に記載されているような酸化/還元によって相互変換され得る。式(I)の化合物[式中、Rは、−PO(OH)を表す]は、式(I)の対応する化合物[式中、Rは、OHを表す]をリン酸化することによって調製され得る。適切な条件は、本明細書の他の箇所において提供される。
【0100】
プロセス(a)および(c)において、保護基およびそれらの除去手段の例は、T W Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」(J Wiley and Sons、1991年)に見られ得る。適切なヒドロキシル保護基は、加水分解によって除去され得るアルキル(例えば、メチル)、アセタール(例えば、アセトニド)、およびアシル(例えば、アセチルまたはベンゾイル)と、触媒的加水分解によって除去され得るアリールアルキル(例えば、ベンジル)、または、酸加水分解もしくはフッ化物イオン補助開裂によって除去され得るシリルエーテルとを含む。
【0101】
プロセス(a)に加えて、式(I)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体[式中、Rは、Rを表す]は、リパーゼ触媒エステル交換によって合成され得る。限定ではなく、例として、式(II)の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン類縁体は、Guら(2005年)によって記載されている反応条件において、リパーゼPS−C「アマノ」IIの存在下で、本明細書の実施例においてさらに示すように、式(V)のビニルエステルと反応され得る。この方法論は、ビニルエステルの使用に限定されるものではなく、エステル交換は、他のリパーゼまたはエステラーゼによって触媒され得る。
【0102】
【化16】

本発明の他の化合物は、それ自体が公知の方法によって、または上述したものに類似する方法によって調製され得る。
【0103】
新規の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、免疫抑制剤、抗真菌剤、抗癌剤、抗炎症剤、神経再生剤、または、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、血管疾患、および/もしくは線維症の治療のための薬剤として有用な化合物を製造するために直接的に、ならびに、さらなる半合成または生物変換用のテンプレートとして、有用である。ラパマイシンおよびその類縁体の半合成誘導体化のための方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、
【0104】
【化17】

に記載されているそれらの方法の改変を含む(がこれらに限定されない)。
【0105】
中間体(例えば、式(II)の化合物)の上記構造は、互変異性化に供され得、代表的な互変異性体が図示されている場合、すべての互変異性体、例えば、エノール化合物が図示されている場合のケト化合物およびその逆、が言及されることを意図していることが理解される。
【0106】
さらなる態様において、本発明は、薬における本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の使用を提供する。さらなる態様において、本発明は、免疫抑制の誘発もしくは維持、神経再生の刺激、または、癌、B細胞悪性腫瘍、真菌感染症、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療のための薬剤の、あるいは創傷治癒の調節において使用するための薬剤の調製における、本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の使用を提供する。
【0107】
当業者であれば、ルーチン実験により、真菌の成長を阻害するこれらの化合物の能力を測定することができるであろう(例えば、Baker, H.ら、1978年、NCCLS Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing for yeasts: Approved standard M27−A、17巻、9号、1997年)。さらに、当業者であれば、ルーチン実験により、腫瘍細胞の成長を阻害するこれらの化合物の能力を測定することができるであろう(Dudkin, L.ら、2001年、Yuら、2001年参照)。さらなる態様において、本発明の化合物は、免疫抑制を誘発するために有用であり、これらの分野における化合物の効力を測定するためのアッセイは、当業者に周知であり、例えば、免疫抑制活性、Warner, L.M.ら、1992年、Kahanら(1991年)ならびにKahanおよびCamardo(2001年);同種移植片、Fishbein, T.M.ら、2002年、Kirchnerら、2000年;自己免疫/炎症/喘息、Carlson, R.P.ら、1993年、Powell, N.ら、2001年;I型糖尿病、Rabinovitch, A.ら、2002年;乾癬、Reitamo, S.ら、2001年;関節リウマチ、Foey, A.ら、2002年;線維症、Zhu, J.ら、1999年、Jain, S.ら、2001年、Gregoryら、1993年であるがこれらに限定されない。
【0108】
免疫抑制を誘発する本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の能力は、本目的のために使用される標準的な試験において実証され得る。さらなる態様において、本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、抗線維化、神経再生、および抗血管新生機構に関して有用であり、当業者であれば、ルーチン実験により、血管新生を防止するこれらの化合物の能力を測定することができるであろう(例えば、Guba, M.ら、2002年)。当業者であれば、ルーチン実験により、例えば薬剤溶出ステントにおける、血管の過剰増殖性疾患を治療するためのこれらの化合物の有用性を測定することができるであろう(例えば、Morice, M.C.ら、2002年)。また、当業者であれば、ルーチン実験により、これらの化合物の神経再生能力を測定することができるであろう(例えば、Myckatyn, T.M.ら、2002年、Steinerら、1997年)。
【0109】
本発明は、本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体を薬学的に許容される担体とともに含む、医薬組成物も提供する。
【0110】
当業者であれば、下記および実施例中に記載されているものを含むがこれらに限定されない当業者に公知のインビボおよびインビトロの方法を使用して、本発明の化合物の薬物動態およびバイオアベイラビリティを測定することができ、下記ならびにGallant−Haidnerら、2000年およびTrepanierら、1998年およびそれらの中の参考文献に記載されているものを含むがこれらに限定されない代替的なアッセイが、当業者には周知である。化合物のバイオアベイラビリティは、多数の要因(例えば、水溶性、内臓における吸収速度、タンパク質結合および代謝の程度)によって測定され、その要因のそれぞれは、下記に記載するようなインビトロ試験によって測定され得るものであり、当業者には、これらの要因のうちの1つまたは複数における改良が、化合物のバイオアベイラビリティにおける改良につながることが十分に理解される。あるいは、化合物のバイオアベイラビリティは、以下でさらに詳細に記載するようなインビボの方法を使用して計測され得る。
【0111】
(Caco−2透過アッセイ)
インビトロテクノロジー社(IVT社、米国メリーランド州ボルティモア)によって提供されるような、融合性のCaco−2細胞(Li, A.P.、1992年、Grass, G.M.ら、1992年、Volpe, D.A.ら、2001年)を、24ウェルのコーニングコースター社製トランスウェルフォーマットで使用することができる。頂端チャンバに、0.15mLのハンクス平衡緩衝液(HBBS)pH7.4、1%DMSO、0.1mMのルシファーイエローを収納する。基底チャンバに、0.6mLのHBBS pH7.4、1%DMSOを収納する。続いて、対照群および試験群を加湿インキュベータ内において37℃でインキュベートし、130rpmで1時間振とうする。ルシファーイエローは、(接着結合間の)傍細胞ルートのみを介して透過し、ルシファーイエローの高い見掛けの透過率(Papp)は、アッセイ中の細胞損傷を示し、そのようなウェルはすべて除いた。プロプラノロール(公知の輸送効果のない、良好な受動透過)およびアセブタロール(P−糖タンパク質の能動流出によって減衰された不十分な受動透過)を参照化合物として使用する。化合物は、頂端または基底チャンバに化合物を塗布する(0.01mM)ことにより、単方向および双方向フォーマットで試験され得る。頂端または基底チャンバ内の化合物を、HPLC−MSによって分析する。結果は、見掛けの透過率Papp(nm/s)および流束比(AからB対BからA)として表現される。
【0112】
【化18】

体積アクセプター(Volume Acceptor):0.6mL(A>B)および0.15mL(B>A)
単層の面積:0.33cm
Δ時間:60分。
【0113】
流束比の正値は、細胞の頂端面からの能動流出を示す。
【0114】
(ヒト肝ミクロソーム(HLM)安定性アッセイ)
肝ホモジネートは、ある一定量の化合物に、CYP450s(例えば、CYP2C8、CYP2D6、CYP1A、CYP3A4、CYP2E1)、エステラーゼ、アミダーゼ、およびフラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)を含む第I相(酸化)酵素に対する固有の脆弱性を提供する。
【0115】
ヒト肝ミクロソームに曝露した状態で、試験化合物の経時的な化合物の消失をLC−MSによってモニタリングすることにより、それらの半減期(T1/2)を測定することができる。0.001mMの化合物を、肝臓のヒトミクロソーム細胞亜画分(0.25mg/mLタンパク質および補因子として飽和レベルのNADPH)とともに、37℃、0.1MのTris−HCl pH7.4で40分間インキュベートする。所定の時間間隔で、アセトニトリルを試験試料に添加して、タンパク質を沈殿させ、代謝を停止させる。試料を遠心分離し、HPLC−MSによって親化合物について分析する。
【0116】
(インビボバイオアベイラビリティアッセイ)
インビボアッセイを使用して、化合物のバイオアベイラビリティを計測することもできる(例えば、Croweら、1999年を参照)。一般に、化合物を、腹腔内(i.p.)または静脈内(i.v.)および経口(p.o.)の両方で試験動物(例えば、マウスまたはラット)に投与し、そして一定間隔で血液試料を採取して、薬物の血漿中濃度が時間とともにどのように変動するかを検査する。時間に伴う血漿中濃度の経時変化は、標準モデルを使用して、化合物の絶対的バイオアベイラビリティをパーセントとして算出するために使用され得る。一般的なプロトコールの例を以下に記載する。
【0117】
本発明の化合物または親化合物3mg/kgをi.v.で、または、本発明の化合物または親化合物10mg/kgをp.o.で、マウスに投薬する。5分、15分、1時間、4時間、および24時間間隔で血液試料を採取し、試料中における本発明の化合物または親化合物の濃度をHPLCによって測定する。続いて、血漿中濃度の経時変化を使用して、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC−体循環に到達する未変化体薬物の総量に正比例する)、最大(ピーク)血漿中薬物濃度、最大血漿中薬物濃度が発生する時間(ピーク時)等の主要パラメータを導出することができ、バイオアベイラビリティの精密測定において使用される付加的要因は、化合物の終末半減期、全身クリアランス、定常状態分布容積、およびF%を含む。続いて、非コンパートメントまたはコンパートメント法によってこれらのパラメータを分析し、算出されたパーセントのバイオアベイラビリティを得るが、この種の方法の例については、Gallant−Haidnerら、2000年およびTrepanierら、1998年およびそれらの中の参考文献およびそれらの中の参考文献を参照されたい。
【0118】
本発明の前述の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体およびその配合物は、任意の従来の方法によって投与され得、限定ではなく例として、それらは、非経口で、経口で、局所的に(口腔、舌下、または経皮を含む)、医療機器(例えば、ステント)を介して、吸入によって、または注射(皮下または筋肉内)を介して、投与され得る。治療は、単一用量、またはある期間にわたる複数用量からなり得る。
【0119】
本発明の化合物は単独で投与することが可能だが、1つまたは複数の許容される担体とともに医薬配合物として存在することが好ましい。担体は、本発明の化合物と適合性があるという意味で「許容される」ものでなくてはならず、そのレシピエントに有害であってはならない。適切な担体の例は、以下でさらに詳細に説明されている。
【0120】
本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、単独で、またはその他の治療剤と組み合わせて投与され得、2つ(以上)の薬剤の同時投与は、それぞれの使用される用量を著しく低下させることを可能にし、それにより、見られる副作用を減少させる。
【0121】
一実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、免疫抑制の誘発または維持のための、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、または炎症疾患の治療のための別の治療剤と同時投与され、好ましい薬剤は、免疫調節剤、例えば、アザチオプリン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、FK506、ミコフェノール酸モフェチル、OKT−3、およびATGを含むがこれらに限定されない。
【0122】
代替的な実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、癌またはB細胞悪性腫瘍の治療のための別の治療剤と同時投与され、好ましい薬剤は、メトトレキサート、ロイコボリン、アドリアマイシン、プレドニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体(例えば、HerceptinTM)、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤(例えば、Iressa(登録商標)、TarcevaTM、ErbituxTM)、VEGF阻害剤(例えば、AvastinTM)、プロテアソーム阻害剤(例えば、VelcadeTM)、Glivec(登録商標)、またはHsp90阻害剤(例えば、17−AAGまたは17−DMAG)を含むがこれらに限定されない。さらに、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、放射線治療または外科手術を含むがこれらに限定されないその他の療法と組み合わせて投与され得る。
【0123】
一実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、血管疾患の治療のための別の治療剤と同時投与され、好ましい薬剤は、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、フィブリン酸誘導体、HMG−CoA還元酵素阻害剤、βアドレナリン遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、酸化防止剤、抗凝固剤、および抗血小板剤(platelet inhibitor)(例えば、PlavixTM)を含むがこれらに限定されない。
【0124】
一実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、神経再生の刺激のための別の治療剤と同時投与され、好ましい薬剤は、神経栄養因子、例えば、神経成長因子、グリア由来成長因子、脳由来成長因子、毛様体神経栄養因子、およびニューロトロフィン−3を含むがこれらに限定されない。
【0125】
一実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、真菌感染症の治療のための別の治療剤と同時投与され、好ましい薬剤は、アムホテリシンB、フルシトシン、エキノカンジン(例えば、カスポファンギン、アニデュラファンギン、またはミカファンギン)、グリセオフルビン、イミダゾールまたはトリアゾール系抗真菌剤(例えば、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール、テルコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、またはボリコナゾール)を含むがこれらに限定されない。
【0126】
当業者には明らかなように、同治療レジメンの一部として、同時投与により、2つ以上の治療剤を患者に送達するあらゆる手段が含まれる。2つ以上の剤を単一の配合物で同時に投与してもよいが、これは必須ではない。薬剤は、異なる配合物で、異なる時間に投与され得る。
【0127】
配合物は、好都合にも、単位用量形態で存在し得、薬剤学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製され得る。そのような方法は、活性成分(本発明の化合物)を、1つまたは複数の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。概して、配合物は、活性成分を液体担体もしくは微粉化した固体担体または両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要に応じて産物を形状化することによって調製される。
【0128】
本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、通常、経口または任意の非経口ルートで、活性成分を含む医薬配合物の形態で、場合によって、薬学的に許容される用量形態の、非毒性で有機または無機の酸付加塩または塩基付加塩の形態で、投与される。障害および治療される患者、ならびに投与ルートに応じて、組成物は可変用量で投与され得る。
【0129】
例えば、本発明の化合物は、経口で、口腔内に、または舌下に、即時−、遅延−、または制御放出適用のための、錠剤、カプセル剤、オビュール剤(ovule)、エリキシル剤、溶液、または懸濁液の形態で投与され得、これらは香味剤または着色剤を含有し得る。
【0130】
経口投与に適切な39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の溶液または懸濁液は、賦形剤、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、分散剤、例えばポリソルベート80、界面活性剤、および可溶化剤、例えばポリエチレングリコール、ホサール(Phosal)50PG(ホスファチジルコリン、大豆脂肪酸、エタノール、モノ/ジグリセリド、プロピレングリコール、およびパルミチン酸アスコルビルからなる)も含有し得る。
【0131】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物または無水ラクトース)、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、およびグリシン等の賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、バレイショ、タピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および特定の複合ケイ酸塩等の崩壊剤、ならびに、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、マクロゴール8000、スクロース、ゼラチン、およびアカシア等の顆粒化結合剤を含有し得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、およびタルク等の滑沢剤が含まれ得る。
【0132】
同様の種類の固体組成物が、ゼラチンカプセル内の充填剤として用いられ得る。この点で好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシル剤の場合、本発明の化合物は、種々の甘味剤もしくは香味剤、着色物質、または染料と、乳化剤および/または懸濁化剤と、および、水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリン等の希釈剤、ならびにそれらの組合せと組み合わせられ得る。
【0133】
錠剤は、場合によって1つまたは複数の副成分とともに、圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、粉末または顆粒等の遊離流動形態の活性成分を、場合によって、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、または分散剤と混合し、適切な機械内で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤化した粉末化合物の混合物を、適切な機械内で成形することによって作製され得る。錠剤は、場合によって、被覆されるかまたは刻み目をつけられてもよいし、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを望ましい放出プロフィールを提供する種々の割合で使用して、中の活性成分の遅い放出または制御放出を提供するように配合され得る。
【0134】
経口投与に適した本発明に従う配合物は、カプセル剤、カシェ剤、または錠剤等、それぞれ所定量の活性成分を含有する別個の単位として;粉末または顆粒として;水性液体または非水液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液として存在し得る。活性成分は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして存在し得る。
【0135】
口内の局所投与に適した配合物は、香味基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含む香錠;ならびに、適切な液体担体中に活性成分を含む洗口液を含む。
【0136】
上記で特に述べた成分に加えて、本発明の配合物は、問題の配合物の種類を考慮して、当該技術分野で慣行の他の薬剤を含み得ること、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含み得ることを理解すべきである。
【0137】
局所投与に適応する医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、含浸包帯剤、噴霧剤、エアロゾルまたは油、経皮デバイス、散布粉末等として配合され得る。これらの組成物は、従来の方法によって活性薬剤を含有するように調製され得る。したがって、それらは、保存料、薬物透過を補助するための溶媒、クリームまたは軟膏中の皮膚軟化剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールのような、適合性のある従来の担体および添加物を含み得る。そのような担体は、組成物の約1%〜約98%までで存在し得る。より通常には、そのような担体は、組成物の約80%までを形成する。単なる例示として、クリームまたは軟膏は、望ましいコンシステンシーを有するクリームまたは軟膏を製造するために十分な分量で、約5〜10重量%の化合物を含有して、十分な分量の親水性材料と水とを混合することによって調製され得る。
【0138】
経皮投与に適応する医薬組成物は、長期間にわたってレシピエントの表皮に密着したままであることが意図される別個のパッチとして存在し得る。例えば、活性薬剤は、イオン導入によってパッチから送達され得る。
【0139】
外部組織、例えば口および皮膚への適用の場合、組成物は、好ましくは局所軟膏またはクリームとして適用される。軟膏中に配合される場合、活性薬剤は、パラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかとともに用いられ得る。
【0140】
あるいは、活性薬剤は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤とともに、クリーム中に配合される場合もある。
【0141】
非経口的投与の場合、流体単位用量形態は、活性成分と、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセリン、および植物油であるがこれらに限定されない無菌ビヒクルとを利用して調製され、水が好ましい。活性成分は、使用されるビヒクルおよび濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁または溶解され得る。溶液を調製するとき、活性成分は、適切なバイアルまたはアンプル内に充填して密閉される前に、注射用水中に溶解され、ろ過滅菌され得る。
【0142】
有利なことに、局所麻酔薬、保存料、および緩衝剤等の薬剤は、ビヒクル中に溶解され得る。安定性を向上させるために、バイアル内に充填して真空下で水を除去した後、組成物を凍結させてもよい。続いて、乾燥した凍結乾燥粉末がバイアル内に密閉され、使用前に液体を再構成するために、付属するバイアルの注射用水が供給され得る。
【0143】
非経口懸濁液は、活性成分が溶解される代わりにビヒクル中に懸濁され、ろ過によって滅菌を実現できないことを除き、溶液と実質的に同じ方式で調製される。活性成分を無菌ビヒクル中に懸濁させる前にエチレンオキシドに曝露することで滅菌され得る。有利なことに、界面活性剤または湿潤剤が組成物中に含まれ、活性成分の均一分布を容易にする。
【0144】
本発明の化合物は、当該技術分野において公知の医療機器を使用して投与され得る。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、米国特許第5399163号、米国特許第5383851号、米国特許第5312335号、米国特許第5064413号、米国特許第4941880号、米国特許第4790824号、または米国特許第4596556号において開示されているデバイス等、無針皮下注射器具によって投与され得る。本発明において有用な周知のインプラントおよびモジュールの例としては、制御された速度で薬剤を分散するための埋め込み型マイクロ注入ポンプを開示している米国特許第4487603号、皮膚を経由して薬剤を投与するための治療機器を開示している米国特許第4486194号、正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示している米国特許第4447233号、持続的な薬物送達のための可変流量の埋め込み型注入装置を開示している米国特許第4447224号、マルチチャンバコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示している米国特許第4439196号、および、浸透圧薬物送達システムを開示している米国特許第4475196号が挙げられる。具体的な実施形態において、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体は、例えば、WO01/87263および関連出版物に記載されているもの、またはPerinが記載しているもの(Perin,2005年)に対応する、薬剤溶出ステントを使用して投与され得る。当業者には、他多数のそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールが公知である。
【0145】
本発明の39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン誘導体の投与される用量は、特定の化合物、関与する疾患、被検者、疾患の性質および重症度、被検者の身体状態、ならびに、選択された投与ルートによって変動する。適切な用量は、当業者によって容易に判断され得る。
【0146】
組成物は、投与の方法に応じて、0.1重量%、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%の本発明の化合物を含有し得る。
【0147】
当業者には、本発明の化合物の個々の用量の最適な分量および間隔が、治療されている状態の性質および程度、投与の形態、ルート、および部位、ならびに治療されている特定の被検者の年齢および状態によって決定されること、さらに、使用される適切な用量を最終的に医師が判断することが認識される。この投薬を適切な回数だけ繰り返してよい。副作用が発現した場合、通常の臨床業務に従って、投薬の量および/または頻度は変更または減少され得る。
【実施例】
【0148】
一般的な方法および材料
材料
すべての試薬を商業的供給元から得て、特に明記しない限り、それ以上精製することなく使用した。
【0149】
培養物
S.ハイグロスコピカスMG2−10[JMNOQLhis]を、培地1の寒天プレート(下記参照)上に28℃で維持した。培地1上で成長させた後、胞子ストックを調製し、蒸留水中の20%w/vグリセロール:10%w/vラクトース内で保存し、−80℃で保管した。0.1mLの凍結ストックを、250mLフラスコ中の50mLの培地2(下記参照)に播種することにより、植物培養物を調製した。培養物を、28℃、300rpmで36〜48時間インキュベートした。
【0150】
製造方法
植物培養物を、培地3内に2.5〜5%v/vで播種した。26℃、300rpmで6〜7日間、培養を行った。
【0151】
給餌手順
播種の24〜48時間後に、選択したカルボン酸の給餌/添加を行い、特に明記しない限り、1〜2mMで給餌した。
【0152】
培地1:
【0153】
【化20】

その後、121℃で20分間オートクレーブ処理することにより、培地を滅菌した。
【0154】
培地2:RapV7種培地
【0155】
【化21】

その後、121℃で20分間オートクレーブ処理することにより、培地を滅菌した。
【0156】
滅菌後、0.16mLの40%グルコースをそれぞれ7mLの培地に添加した。
【0157】
培地3:MD6培地(発酵培地)
【0158】
【化22】

滅菌前に、0.4mLのシグマ社製α−アミラーゼ(BAN250)を1Lの培地に添加した。
【0159】
培地を121℃で20分間滅菌した。
【0160】
滅菌後、0.35mLの無菌40%フルクトースおよび0.10mLのL−リシン(水中140mg/mL、ろ過滅菌済み)をそれぞれ7mLに添加した。
【0161】
培地4:RapV7a種培地
【0162】
【化23】

その後、121℃で20分間オートクレーブ処理することにより、培地を滅菌した。
【0163】
培地5:MD6/5−1培地(発酵培地)
【0164】
【化24】

培地を121℃で30分間滅菌した。
【0165】
滅菌後、1リットル当たり15gのフルクトースを添加した。
48時間後、0.5g/LのL−リシンを添加した。
【0166】
合成方法
特に明記しない限り、反応はすべて、市販の乾燥溶媒を使用して無水条件下で行った。LC−UV−MSにより、エレクトロスプレー源を装備するブルカーダルトニクス社製エスカイヤ3000+質量分析計と連結されたアジレント社製1100HPLCにおいて反応をモニタリングした。10分間の水:アセトニトリル v:v 30:70〜100%アセトニトリルの線形勾配、続いて100%アセトニトリルにおける5分間のアイソクラティックな期間を用いて、1mL/分におけるフェノメネクス社製ハイパークローン(Hyperclone)カラム、BDS C18 3u(150×4.6mm)で、分離を達成した。
【0167】
抗癌活性のインビトロバイオアッセイ
オンコテスト(Oncotest)試験施設である、実験腫瘍学研究所(Institute for Experimental Oncology)(オンコテストGmbH、フライブルク)で、単層増殖アッセイにおける、12のヒト腫瘍細胞系のパネルの抗癌活性を調べるための化合物のインビトロ評価が行われ得る。12の選択した細胞系の特徴が表1にまとめられている。
【0168】
【化25】

オンコテスト細胞系は、Rothら、1999年によって記載されているように、ヒト腫瘍異種移植片から確立される。ドナーの異種移植片の起源は、Fiebigら、1999年によって記載された。その他の細胞系は、NCI(H460、SF−268、OVCAR−3、DU145、MDA−MB−231、MDA−MB−468)から得るか、またはDSMZ、ドイツ、ブラウンシュヴァイク(LNCAP)から購入するかのいずれかである。
【0169】
特別の明記のない限り、細胞系はすべて、RPMI1640培地と、10%ウシ胎仔血清と、0.1mg/mLのゲンタマイシンとを含有する「調合済み」培地(PAA、ドイツ、ケルベ(Colbe))中、加湿雰囲気(95%空気、5%CO)内、37℃で成長させる。
【0170】
単層アッセイ−プロトコールの簡単な説明
改変されたヨウ化プロピジウムアッセイを使用して、12のヒト腫瘍細胞系の成長に対する試験化合物の効力を評価することができる(Denglerら、(1995年))。
【0171】
手短に述べると、トリプシン処理によって対数期の培養物から細胞を収穫し、計数し、96ウェル平底マイクロタイタープレートに、細胞系に応じた細胞密度(5〜10000生存細胞/ウェル)で平板培養する。細胞に指数増殖を再開させるために24時間回復させた後、0.01mLの培養培地(1プレート当たり6個の対照ウェル)または試験化合物を含有する培養培地をウェルに添加する。各濃縮物を3通りに平板培養する。化合物を2つの濃縮物に塗布(0.001μMおよび0.01μM)する。4日間の連続曝露に続いて、試験化合物を有する細胞培養培地と有さない細胞培養培地とを0.2mLのヨウ化プロピジウム(PI)水溶液(7mg/L)に置き換える。生細胞の割合を計測するために、プレートを凍結させて細胞を透過化処理する。プレートを解凍した後、サイトフローラ(Cytofluor)4000マイクロプレートリーダー(励起530nm、発光620nm)を使用して、生存細胞の総数に直接の因果関係を与える蛍光性を計測する。
【0172】
成長阻害は、処理済み/対照 × 100(%T/C)として表現される。活性化合物の場合、IC50およびIC70値は、化合物濃度対細胞生存率をグラフ化することによって推定され得る。
【0173】
(実施例1)
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンの発酵および単離
WO04/007709に記載されている方法に従って、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンを製造した。手短に述べると、ラパマイシン遺伝子rapJ、rapM、rapN、rapO、rapQ、およびrapLを担持する適切な発現ベクターでS.ハイグロスコピカスMG2−10の培養物を変換して、S.ハイグロスコピカスMG2−10[rapJMNOQLhis]菌株を製造した。WO04/007709に記載されている方法を使用して、S.ハイグロスコピカスMG2−10[rapJMNOQLhis]の培養物を成長させ、3−メチルシクロヘキサンカルボン酸で給餌した。培養抽出物のLCMSおよびLCMS分析は、製造されたラパマイシン類縁体のm/z比がラパマイシンのものより低い16原子質量単位であり、C−39でメチル基とメトキシ基との交換に一致することを示した。
【0174】
(実施例2)
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンのリパーゼ触媒エステル化を経た39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル]ラパマイシンの合成
無水tert−ブチルメチルエーテル(2mL)中の、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン、ビニル2,2,5−トリメチル[1.3−ジオキサン]−5−カルボキシレート、リパーゼPS−C「アマノ」II、および分子篩(0.5nm)の混合物を、アルゴン雰囲気下、43℃まで加熱する。48時間後、LC/MSモニタリングは、出発原料の変換を示す。THFを添加し、混合物をセライトのパッドでろ過する。酵素をTHFで2回洗浄し、組み合わせた有機抽出物を減圧濃縮する。残留物をTHF中に溶解し、HSO(0.5N)を添加する。溶液を室温で5時間静置させ、引き続き、NaHCO(5%)および生理食塩水の添加によって反応物をクエンチする。水性混合物を酢酸エチルで3回抽出し、組み合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥する。溶媒を除去し、産物を半固体として得る。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 1:1)による精製は、産物を無色固体として与える。
【0175】
(実施例3)
39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン
3.1. 2−(tert−ブチルジメチルシリル)オキシエチルトリフラート
6mLのジクロロメタン中の2−(tert−ブチルジメチルシリル)−エチレングリコール(125mg、0.71mmol)および2,6−ルチジン(0.08mL、0.69mmol)の溶液を、−78℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.11mL、0.65mmol)を5分間かけて添加し、−78℃でさらに15分間攪拌し続け、トリフラートの形成を完了させた。下記3.2に記載されている通りの反応のために、トリフラートをインサイチュで使用した。
【0176】
3.2. 40−O−[2−(tert−ブチルジメチルシリル)]エチル−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンおよび2,6−ジ−tert−ブチルピリジンを、室温にて、2−(tert−ブチルジメチルシリル)オキシエチルトリフラートで処理する。続いて、この溶液を、窒素の緩流で元の体積の3分の1になるまで濃縮し、結果として生じた懸濁液を、室温でさらに72時間攪拌する。その期間の後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水を添加し、混合物を約30分間攪拌する。有機層を分離し、水相を酢酸エチルで2回抽出する。組み合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、無色油を得る。ヘキサンからヘキサン/アセトン(v:v 1:1)の勾配を使用するシリカカラムクロマトグラフィーによる精製により、産物を無色固体として得る。
【0177】
3.3. 39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン
アセトン中の40−O−[2−(tert−ブチルジメチルシリル)]エチル−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンの溶液を、室温にて、0.5N硫酸で処理する。溶液を室温で約3時間静置させ、引き続き、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水の添加によってクエンチする。続いて、水性混合物を酢酸エチルで3回抽出し、組み合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥する。減圧濃縮により無色固体が得られ、さらにHPLC(水/アセトニトリル v:v 20/80)によって精製され得る。
【0178】
(実施例4)
39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル]ラパマイシンの合成
下記の手順に従って、39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンから39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル]ラパマイシンが合成される。
【0179】
4.1. 39−デスメトキシ−39−メチル−28−O−トリメチルシリルラパマイシンの合成
39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンおよびイミダゾールを、0℃の酢酸エチル中に溶解する。この冷溶液に、クロロトリメチルシランを10分間かけて滴下添加する。さらに60分間攪拌し続け、28,39−ビス−O−トリメチルシリルエーテルの形成を完了させる。その期間の後、含水硫酸(0.5N)を添加し、混合物を0℃で2.5時間攪拌する。続いて、酢酸エチルを添加し、有機層を、ブライン、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、および水で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、28−O−トリメチルシリルエーテルを無色固体として産出し、これを、それ以上精製することなく、その後の反応に使用する。
【0180】
4.2. 2,4,6−トリクロロ安息香酸2’,2’,5’−トリメチル−1’,3’−ジオキサン−5’カルボン酸無水物の合成
2,2−ジメトキシプロパン(13.5g、130mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(100mg、0.53mmol、0.4mol%)を、アセトン(100mL)中の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(13.5g、100mmol)の溶液に添加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した。その期間の後、湿潤炭酸水素ナトリウムを添加し、混合物をさらに5分間攪拌した。上澄みをデカントして取り除き、減圧濃縮した。生じた固体をジエチルエーテル(3×50mL)で処理し、組み合わせた有機抽出物を減圧濃縮して、白色固体16.2g(93%)を産出した。
H−NMR (400 MHz, CDCl), δ (ppm): 4.19 (d, 1H, J=12.0Hz) 3.68 (d, 1H, J=12.0Hz) 1.45 (s, 1H) 1.41 (s, 1H) 1.20 (s, 1H)。
【0181】
続いて、この材料を米国特許第5362718号の方法によって活性混合無水物に変換した。そして、アセトニド(1.04g、5.98mmol)をTHF(20mL)中に溶解し、0℃まで冷却し、トリエチルアミン(0.83mL、5.98mmol)および2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(0.93mL、5.98mmol)の滴下添加によって処理した。続いて、反応物を室温で5時間攪拌した。生じた沈殿物をろ過し、THF(10mL)で洗浄した。組み合わせたろ液を真空で減少させて白色無定形固体とし、これをさらに精製することなく(下記のように)使用した。
【0182】
4.3. 2,2,5−トリメチル[1.3−ジオキサン]−5−カルボン酸を有する39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン28−O−トリメチルシリルエーテル40−エステルの合成
実施例4.1からの粗28−O−トリメチルシリル−39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシンを、ジクロロメタン中に溶解する。溶液を0℃まで冷却し、DMAPを添加する。その後、ジクロロメタン中の2,4,6−トリクロロ安息香酸2’,2’,5’−トリメチル−1’,3’−ジオキサン−5’カルボン酸無水物の溶液を、10分間かけて添加する。反応混合物を0℃で5時間攪拌し、LC/MSによって変換をモニタリングする。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水の添加によってクエンチする。有機層を分離し、硫酸(0.5N)、炭酸水素ナトリウム溶液、および水で連続的に洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、表題化合物を無色発泡体として得て、これをさらに精製することなく直ちに使用する。
【0183】
4.4. 39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル]ラパマイシン
実施例4.3からの、2,2,5−トリメチル[1.3−ジオキサン]−5−カルボン酸を有する粗39−デスメトキシ−39−メチルラパマイシン−28−O−トリメチルシリルエーテル40−エステルを、アセトン中に溶解し、硫酸(0.5N)を添加する。反応混合物を室温で5時間攪拌し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水の添加によって、中和する。水性混合物を酢酸エチルで抽出し、組み合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥する。減圧濃縮して無色固体を得て、これを、クロロホルム/ヘプタン/エタノール(v:v:v 10:10:1)を溶離液として使用して、セファデックスLH20でのサイズ排除クロマトグラフィーによって精製する。
【0184】
参考文献:
【0185】
【化26】

【0186】
【化27】

【0187】
【化28】

【0188】
【化29】

【0189】
【化30】

【0190】
【化31】

【0191】
【化32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
40−ヒドロキシ位が、カルボン酸エステルとして、エーテルとして、ホスフィン酸エステルとして、アセタールとして、またはグリコシルとして誘導体化されることを特徴とする、ラパマイシンの39−デスメトキシ−39−メチル誘導体。
【請求項2】
下記の式(I)の化合物:
【化33】

[式中、
Xは、結合またはCHを表し、
は、ケト基または(H,H)を表し、
は、OHまたはOMeを表し、
は、H、OHまたはOMeを表し、
およびRは、それぞれ独立にHまたはOHを表し、
は、−R、−C(O)R、−POR1920またはY−R15を表し、
は、−(CR(CR1011CR121314を表し、
およびRは、それぞれ独立にC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルを表し、それらの基のいずれかは、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−OH、−COOHまたは−NHで場合によって置換されていてよいか、あるいは、RおよびRは、それぞれ独立にH、トリフルオロメチルまたはFを表し、
10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立にC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルを表し、それらの基のいずれかは、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−OH、−COOHまたは−NHで場合によって置換されていてよいか、あるいは、R10、R11、R12、R13およびR14は、H、−(CRNH、−(CROH、CF、F、COOHから独立に選択されてよいか、あるいは、R10とR11またはR12とR13またはR13とR14は、それらが結合した炭素と一緒になって、N、O、およびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、5個までの−(CROH、−(CRNHまたはCOOH基で場合によって置換されている、C3〜C6シクロアルキルまたは3〜6員のヘテロアルキル環を形成してよく、
Y=結合、−C(O)−O−、−(CH−O−C(O)−O−であり、
15は、
【化34】

を表し、
16は、それぞれ独立にHまたはOHであり、
17は、H、OHおよびNHから独立に選択され、
18は、H、−CH、−CHOHおよび−COOHから独立に選択され、
但し、R16、R17およびR18から選択される2個以下の基は、HまたはCHを表し、
19およびR20は、それぞれ独立にHまたはC1〜C4アルキルを表すか、あるいは、R19とR20は一緒になって=CHを表し、
m、pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の間の整数を表し、
但し、R部分は、12個を超える炭素原子を含有せず、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−COOH、OHまたはNHから選択される少なくとも1個の官能基を含有する]
または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
は−Rを表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
は−C(O)Rを表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
は7個以下の炭素原子を含有する、請求項2から4に記載の化合物。
【請求項6】
は5個以下の炭素原子を含有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
は、−PO(OH)、−CFPO(OH)、−OH、−COOHおよび−NHから選択される2個の基を含有する、請求項2から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
は、−COOH、OHおよびNHから選択される少なくとも1個の官能基を含有する、請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
pは0または1を表す、請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
mは0または1を表す、請求項2から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
qは0、1または2を表す、請求項2から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
11はHを表す、請求項2から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
12はHを表す、請求項2から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
13はHまたはOHを表す、請求項2から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
pは1を表し、R10はMe、OHまたはCHOHを表す、請求項2から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
pは1を表し、R11はMe、HまたはCHOHを表す、請求項2から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
mおよびpはどちらも0を表し、R12およびR13はどちらもHを表し、R14は−(CR−OH[式中、q=0または1であり、RおよびRはどちらもHを表す]を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項18】
pは1を表し、mは0を表し、R10およびR11はどちらもHを表し、R12はHを表し、R13はH、OHまたはNHを表し、R14は−(CR−OH[式中、q=0または1であり、RおよびRはどちらもHを表す]を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項19】
は、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのエステルの形成から誘導される残基を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項20】
は、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのエーテルの形成から誘導される残基を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項21】
39−デスメトキシ−39−メチル−40−O−[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル]ラパマイシン、または薬学的に許容されるその塩である、請求項2に記載の化合物。
【請求項22】
は−POR1920を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項23】
19およびR20は、どちらもCHを表すか、またはどちらもCHCHを表す、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
はY−R15を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項25】
15基は、
【化35】

を表す、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
15は、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸またはアラビノースとアセタールを形成することによって形成される部分である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
15は、D−グルコースとアセタールを形成することによって形成される部分である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
15は、D−グルコサミンとアセタールを形成することによって形成される部分である、請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
15は、D−グルクロン酸とアセタールを形成することによって形成される部分である、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
15は、
【化36】

を表す、請求項24に記載の化合物。
【請求項31】
15は、フルクトースとアセタールを形成することによって形成される部分である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
15は、
【化37】

を表す、請求項24に記載の化合物。
【請求項33】
15は、グルクロン酸とエステルを形成することによって形成される部分である、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
Yは結合を表す、請求項24から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
Yは−(CH−O−C(O)−O−を表す、請求項24から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
Yは−C(O)−O−を表す、請求項24から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
医薬品として使用するための、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療において使用するための、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
癌またはB細胞悪性腫瘍の治療において医薬品として使用するための、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤または担体とともに含む、医薬組成物。
【請求項41】
癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療のための方法であって、有効量の請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を患者に投与するステップを含む方法。
【請求項42】
癌および/またはB細胞悪性腫瘍の治療の方法であって、有効量の請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物を患者に投与するステップを含む方法。
【請求項43】
癌および/もしくはB細胞悪性腫瘍の治療、免疫抑制の誘発もしくは維持、移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫障害、炎症疾患、血管疾患および線維症の治療、神経再生の刺激、または真菌感染症の治療のための薬剤の調製における、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項44】
前記薬剤は、癌またはB細胞悪性腫瘍の治療用のものである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
請求項2から36のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の調製のための方法であって、
(a)式(II)の化合物:
【化38】

またはその保護誘導体を、
式(III)の化合物:
HO−R (III)
またはその活性誘導体
[式中、基Rは、式(I)の化合物またはその保護誘導体について上記で定義されている通りである]
と反応させるステップ、あるいは
(b)式(I)の化合物またはその塩を、式(I)の別の化合物または別の薬学的に許容されるその塩に変換するステップ、あるいは
(c)式(I)の被保護化合物を脱保護するステップ
を含む方法。
【請求項46】
(i)請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物と、(ii)1つまたは複数のその他の治療効果のある薬剤とを含む、組成物またはパーツのキット。
【請求項47】
前記1つまたは複数のその他の治療効果のある薬剤は、メトトレキサート、ロイコボリン、アドリアマイシン、プレドニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体(例えば、HerceptinTM)、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤、Hsp90阻害剤、アザチオプリン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、FK506、ミコフェノール酸モフェチル、OKT−3、ATG、アムホテリシンB、フルシトシン、エキノカンジン、グリセオフルビン、イミダゾール、およびトリアゾール系抗真菌剤の群より選択される、請求項46に記載の組成物またはパーツのキット。


【図1】
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【公表番号】特表2009−537504(P2009−537504A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510554(P2009−510554)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001875
【国際公開番号】WO2007/135411
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(506181508)バイオティカ テクノロジー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】