説明

癌の処置および予防に有用な縮合ピリミドン類

式(I)の化合物であって、Eg5阻害活性を有し且つそれらの抗細胞増殖(抗癌などの)活性について有用であり、したがって、ヒトまたは動物体の処置方法に有用である化合物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、それらを製造する方法、それらの医薬組成物および使用方法に関する。更に、本発明は、癌の処置および予防のための治療的方法、および癌の処置および予防に用いるための薬剤の製造におけるこれら化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床において現在広く用いられている抗癌薬の一つのサブクラス(タキサン類、ビンカアルカロイド系)は、微小管に向けられ、そして有糸分裂紡錘体の正常な集合または集合解除(assembly or dissassembly)を妨害することによって細胞分裂周期をブロックする(Chabner, B. A., Ryan, D. P., Paz-Ares, l., Garcia-Carbonero, R., and Calabresi, P: Antineoplastic agents. In Hardman, J. G., Limbird, L.E., and Gilman, A. G., eds. Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10thedition, 2001, The MacGraw-Hill Companies, Inc を参照されたい)。このクラスの最も有効な薬物の一つである Taxol(登録商標)(パクリタキセル)は、微小管安定剤である。それは、微小管の正常な成長および収縮を妨害し、したがって、有糸分裂の中期の細胞をブロックする。有糸分裂ブロックの後に、しばしば、適切に分裂することなく次の細胞周期へのすべり込みが起こり、そして最後に、これら異常細胞のアポトーシスが起こる(Blagosklonny, M.V. and Fojo, T.: Molecular effects of paclitaxel: myths and reality (a critical review). Int J Cancer 1999, 83:151-156.)。
【0003】
パクリタキセルでの処置の若干の副作用は、好中球減少症および末梢神経障害である。パクリタキセルは、間期細胞中の微小管の異常な束化を引き起こすことが知られている。更に、若干の腫瘍タイプは、パクリタキセルでの処置に不応性であり、そして他の腫瘍は、処置中に感受性でなくなる。パクリタキセルは、更に、多剤耐性ポンプであるP糖タンパク質の基質である(Chabner et al., 2001 を参照されたい)。
【0004】
したがって、抗微小管薬よりも副作用の少ない有効な抗有糸分裂薬が、そして更には、タキサン耐性腫瘍に対して有効である物質が要求される。
キネシンは、分子モータータンパク質のラージファミリーであり、それらは、アデノシン5’−三リン酸(ATP)加水分解のエネルギーを利用して、微小管に沿って段階的に移動する。概説については、Sablin, E.P.: Kinesins and microtubules: their structures and motor mechanisms. Curr Opin Cell Biol 2000, 12:35-41 and Schief, W. R. and Howard, J.: Conformational changes during kinesin motility. Curr Opin Cell Biol 2001, 13:19-28 を参照されたい。
【0005】
このファミリーの若干のメンバーは、分子カーゴ(cargo)を、それらを必要とする細胞中の部位に、微小管に沿って輸送する。例えば、若干のキネシンは、軸索において小胞に結合し且つそれらを微小管に沿って輸送する。いくつかのファミリーメンバーは、双極有糸分裂紡錘体を決定する微小管の再編成(reorganization)において役割を果たしているので、有糸分裂キネシンである。微小管のマイナス端は、中心体または紡錘体極で始まるが、プラス端は、各々の染色体のセントロメア領域においてキネトコアに結合する。有糸分裂紡錘体は、有糸分裂の中期に染色体を一列に並べ、そして後期および終期に、それらを別個に移動させ且つ個々の嬢細胞へと配分する(細胞質分裂)。Alberts, B., Bray, D., Lewis, J., Raff, M., Roberts, K., and Watson, J. D., Molecular Biology of the Cell, 3rd edition, Chapter 18, The Mechanics of Cell Division, 1994, Garland Publishing, Inc. New York を参照されたい。
【0006】
HsEg5(ヒトEg5)(受託番号X85137;Blangy, A., Lane H.A., d’Heron, P., Harper, M., Kress, M. and Nigg, E.A.: Phosphorylation by p34cdc2 regulates spindle association of human Eg5, a kinesin-related motor essential for bipolar spindle formation in vivo. Cell 1995, 83(7): 1159-1169 を参照されたい)、またはKSP(キネシン紡錘体タンパク質)は、有糸分裂キネシンであり、多数の生物中のそのホモログは、有糸分裂前期の中心体分離に、および双極有糸分裂紡錘体の集合に必要とされることが分かった。概説については、Kashina, A.S., Rogers, G.C., and Scholey, J.M.: The bimC family of kinesins: essential bipolar mitotic motors driving centrosome separation. Biochem Biophys Acta 1997, 1357: 257-271 を参照されたい。Eg5は、四量体モーターを形成するので、微小管を架橋し且つそれらの束化に関与することが考えられる(Walczak, C. E., Vernos, I., Mitchison, T. J., Karsenti, E., and Heald, R.: A model for the proposed roles of different microtubule-based motor proteins in establishing spindle bipolarity. Curr Biol 1998, 8:903-913)。いくつかの報告は、Eg5機能の阻害が、中期ブロックをもたらすということを示しており、この場合の細胞は、単星(monastral)紡錘体を示す。最近になって、モナストロール(monastrol)と称されるEg5阻害剤が、有糸分裂ブロッカーについての細胞基材スクリーニングで単離された(Mayer, T.U., Kapoor, T. M., Haggarty, S.J., King, R.w., Schreiber, S.L., and Mitchison, T.J.: Small molecule inhibitor of mitotic spindle bipolarity identified in a phenotype-based screen. Science 1999, 286: 971-974)。
【0007】
モナストロール処置は、キネシン重鎖上のEg5に特異的であることが分かったが、別の密接に関連したモーターは、異なった機能を有する(Mayer et al., 1999)。モナストロールは、キネシンモータータンパク質の触媒周期における重要な段階である(概説については、Sablin, 2000; Schief and Howard, 2001 を参照されたい)、Eg5モーターからのADP(アデノシン5’−二リン酸)の放出をブロックする(Maliga, Z., Kapoor, T. M., and Mitchison, T.J.: Evidence that monastrol is an allosteric inhibitor of the mitotic kinesin Eg5. Chem & Biol 2002, 9: 989-996 and DeBonis, S., Simorre, J.-P., Crevel, I., Lebeau, L, Skoufias, D. A., Blangy, A., Ebel, C., Gans, P., Cross, R., Hackney, D. D., Wade, R. H., and Kozielski, F.: Interaction of the mitotic inhibitor monastrol with human kinesin Eg5. Biochemistry 2003, 42: 338-349)。モナストロールでの処置は、適当な分裂が起こるために全てのDNAが適所に存在するまで、細胞分裂周期の進行を止める有糸分裂紡錘体チェックポイントを活性化させること、および可逆的であることが分かった(Kapoor, T.M., Mayer, T. U., Coughlin, M. L., and Mitchison, T.J.: Probing spindle assembly mechanisms with monastrol, a small molecule inhibitor of the mitotic kinesin, Eg5. J Cell Biol 2000, 150(5): 975-988)。最近の報告も、Eg5の阻害剤が、処置された細胞のアポトーシスをもたらし、しかもいくつかの腫瘍細胞系および腫瘍モデルに対して有効であるということを示している(Mayer et al., 1999)。
【0008】
Eg5は、全ての細胞における有糸分裂に必要であると考えられるが、一つの報告は、それが、腫瘍細胞中で過発現されるということを示しており(国際特許出願WO01/31335号)、それら細胞が、その阻害に特に感受性であるかもしれないということが示唆される。Eg5は、間期細胞の微小管上に存在していないし、有糸分裂の初期の時点のリン酸化によって微小管に標的指向するので(Blangy et al., 1995. See also; Sawin, K. E. and Mitchison, T.J.: Mutations in the kinesin-like protein Eg5 disrupting localization to the mitotic spindle. Proc Natl Acad Sci USA 1995, 92(10): 4289-4293)、モナストロールには、間期細胞中の微小管アレイへの検出可能な作用がない(Mayer et al., 1999)。別の報告は、Eg5が、マウスの神経発生に関与しているということを示唆しているが、それは、誕生後まもなくニューロンから消失し、したがって、Eg5阻害は、パクリタキセルおよび他の抗微小管薬での処置に関連した末梢神経障害を生じないことがありうる(Ferhat, L., Expression of the mitotic motor protein Eg5 in postmitotic neurons: implications for neuronal development. J Neurosci 1998, 18(19): 7822-7835)。本明細書中に、本発明者は、新生物疾患の処置に有用であると考えられる特異的且つ強力なEg5阻害剤のクラスの単離を記載している。
【0009】
ある種のピリミドンは、最近になって、KSPの阻害剤であると記載された(WO03/094839号、WO03/050122号、WO03/050064号、WO03/049679号、WO03/049527号、WO04/078758号、WO04/106492号、WO04/111058号およびWO03/099211号)。
【発明の開示】
【0010】
本発明により、本発明者は、Eg5阻害活性を有し、したがって、それらの抗細胞増殖(抗癌などの)活性に有用であり、したがって、ヒトまたは動物体の処置方法に有用である新規な化合物を発見した。
【0011】
したがって、本発明により、式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、Rは、フルオロであり;
mは、0〜5であり;
は、水素またはメチルであり;
は、炭素連結した−NR−を含有する複素環式環であり、またはRは、−NRで置換されたC1−3アルキルであり;ここにおいて、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;
Xは、−C(O)−または−CH−であり;
環Aは、カルボシクリルまたはヘテロシクリルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;そしてここにおいて、このヘテロシクリルが、追加のNHを含有する場合、その窒素は、Rで置換されていてもよく;
環Bは、示されている式(I)のピリミドン環に縮合していて、5員または6員の縮合炭素環式環または5員または6員の縮合複素環式環であり;ここにおいて、環Bは、炭素上に1個またはそれを超えるR10で置換されていてもよく;そしてここにおいて、この5員または6員の縮合複素環式環が、追加のNHを含有する場合、その窒素は、R11で置換されていてもよく;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルより選択され;
およびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;またはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、窒素含有複素環を形成し;ここにおいて、このC1−6アルキルまたはこの窒素含有複素環は、独立して、炭素上に1個またはそれを超えるR12で置換されていてもよく;そしてここにおいて、この窒素含有複素環が、追加のNHを含有する場合、その窒素は、R13で置換されていてもよく;
、R10およびR12は、独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−6アルコキシ、C1−6アルカノイル、C1−6アルカノイルオキシ、N−(C1−6アルキル)アミノ、N,N−(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルカノイルアミノ、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、C1−6アルキルS(O)(式中、aは、0〜2である)、C1−6アルコキシカルボニル、N−(C1−6アルキル)スルファモイル、N,N−(C1−6アルキル)スルファモイル、C1−6アルキルスルホニルアミノより選択され;ここにおいて、R、R10およびR12は、独立して、R14で置換されていてもよく;
、R11およびR13は、独立して、C1−6アルキル、C1−6アルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルより選択され;
およびR14は、独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、アセチルアミノ、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メチル−N−エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイルまたはN−メチル−N−エチルスルファモイルより選択される]
を有する化合物;またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0014】
本明細書中において、「アルキル」という用語は、直鎖および分岐状鎖双方のアルキル基を包含する。例えば、「C1−6アルキル」には、C1−4アルキル、C1−3アルキル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルが含まれる。しかしながら、「プロピル」などの個々のアルキル基の意味は、直鎖型のみを特定し、そして「イソプロピル」などの個々の分岐状鎖アルキル基の意味は、分岐状鎖型のみを特定する。同様の慣例が、他の基に当てはまり、例えば、「フェニルC1−6アルキル」には、フェニルC1−4アルキル、ベンジル、1−フェニルエチルおよび2−フェニルエチルが含まれる。「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0015】
任意の置換基が、「1個またはそれを超える」基より選択される場合、この定義には、明記された基の内の一つより選択される全ての置換基、または明記された2個またはそれを超える基より選択される置換基が含まれる。
【0016】
「複素環式環を含有する炭素連結した−NR−」は、少なくとも一つの原子が、Rで置換されている窒素より選択される3〜12個の原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式または二環式環であり、そしてここにおいて、他の原子は、炭素、および場合により、窒素、硫黄または酸素原子より選択される1〜3個の追加のヘテロ原子より選択され、ここにおいて、−CH−基は、−C(O)−で置き換えられることもありうるし、そして環窒素原子または環硫黄原子は、酸化されて、1個または複数のN−および/またはS−オキシドを形成してもよい。「複素環式環を含有する炭素連結した−NR−」の適する例には、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アジリジニル、アゼチジニル、インドリル、ピラゾリニルおよびイミダゾリルが含まれる。
【0017】
式(I)のピリミドン環に縮合した「5員または6員の縮合炭素環式環」は、5個または6個の炭素原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式環であって、−CH−基が、−C(O)−で置き換えられることもありうる環である。式(I)のピリミドン環に縮合した「5員または6員の縮合炭素環式環」の例は、6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン、4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン、ピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オンおよび7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オンである。疑わしさを免れるために、式(I)のピリミドンにいったん縮合したら、「5員または6員の縮合炭素環式環」は、ピリミドン環の窒素を含有するであろうということは理解されるはずである。
【0018】
式(I)のピリミドン環に縮合した「5員または6員の縮合複素環式環」は、少なくとも一つの原子が、窒素、硫黄または酸素より選択される5個または6個の原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式環であって、−CH−基が、−C(O)−で置き換えられることもありうるし、環窒素原子または環硫黄原子が、酸化されて、1個または複数のN−および/またはS−オキシドを形成してもよい環である。式(I)のピリミドン環に縮合した「5員または6員の縮合複素環式環」の例は、2,3−ジヒドロ−5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン、3,4−ジヒドロ−6−オキソ−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジンおよび5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジンである。
【0019】
「カルボシクリル」は、4〜12個の炭素原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式または二環式環であって、−CH−基が、−C(O)−で置き換えられることもありうる環である。具体的には、「カルボシクリル」は、5個または6個の原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式環、または9個または10個の炭素原子を含有する二環式環であって、−CH−基が、−C(O)−で置き換えられることもありうる環である。「カルボシクリル」という用語の適する意味および例は、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニルおよびナフチルである。
【0020】
「ヘテロシクリル」は、少なくとも一つの原子が、窒素、硫黄または酸素より選択される4〜12個の原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式または二環式環であって、特に断らない限り、炭素または窒素連結していてよい環であり、ここにおいて、−CH−基は、−C(O)−で置き換えられることもありうるし、環窒素原子または環硫黄原子は、酸化されて、1個または複数のN−および/またはS−オキシドを形成してもよい。具体的には、「ヘテロシクリル」は、少なくとも一つの原子が、窒素、硫黄または酸素より選択される5個または6個の原子を含有する飽和、部分飽和または不飽和の単環式または9個または10個の原子を含有する二環式環であって、特に断らない限り、炭素または窒素連結していてよく、−CH−基は、−C(O)−で置き換えられることもありうるし、そして環硫黄原子は、酸化されて、1個または複数のS−オキシドを形成してもよい環である。「ヘテロシクリル」という用語の適する意味および例は、モルホリノ、ピペリジル、ピリジル、ピラニル、ピロリル、イソチアゾリル、インドリル、キノリル、チエニル、1,3−ベンゾジオキソリル、チアジアゾリル、ピペラジニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ピロリニル、ホモピペラジニル、3,5−ジオキサピペリジニル、テトラヒドロピラニル、イミダゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、イソオキサゾリル、4−ピリドン、1−イソキノロン、2−ピロリドンおよび4−チアゾリドンである。
【0021】
「RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、窒素含有複素環を形成する」場合、この「窒素含有複素環」は、4〜12個の原子を含有する飽和、部分飽和または完全不飽和の単環式または二環式環であり、その一つの原子は、RおよびRが結合している窒素原子であり、そして他の原子は、全て炭素原子であるかまたはそれらは、炭素原子と、窒素、硫黄または酸素より選択される1〜3個のヘテロ原子であり、ここにおいて、−CH−基は、−C(O)−で置き換えられることもありうるし、環窒素原子または環硫黄原子は、酸化されて、1個または複数のN−および/またはS−オキシドを形成してもよい。「RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、窒素含有複素環を形成する」場合、この窒素原子は、第四級化されていない、すなわち、中性化合物が形成されるということは理解されるであろう。「窒素含有複素環」という用語の適する意味および例は、アゼチジニル、モルホリノ、ピペリジル、ピペラジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ピロリニル、ホモピペラジニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニルおよびトリアゾリルである。
【0022】
「C1−6アルカノイルオキシ」の例は、アセトキシである。「C1−6アルコキシカルボニル」の例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−およびt−ブトキシカルボニルが含まれる。「C1−6アルコキシ」の例には、メトキシ、エトキシおよびプロポキシが含まれる。「C1−6アルカノイルアミノ」の例には、ホルムアミド、アセトアミドおよびプロピオニルアミノが含まれる。「C1−6アルキルS(O)(式中、aは、0〜2である)」の例には、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシルおよびエチルスルホニルが含まれる。「C1−6アルカノイル」の例には、プロピオニルおよびアセチルが含まれる。「N−(C1−6アルキル)アミノ」の例には、メチルアミノおよびエチルアミノが含まれる。「N,N−(C1−6アルキル)アミノ」の例には、ジ−N−メチルアミノ、ジ−(N−エチル)アミノおよびN−エチル−N−メチルアミノが含まれる。「C2−6アルケニル」の例は、ビニル、アリルおよび1−プロペニルである。「C2−6アルキニル」の例は、エチニル、1−プロピニルおよび2−プロピニルである。「N−(C1−6アルキル)スルファモイル」の例は、N−(メチル)スルファモイルおよびN−(エチル)スルファモイルである。「N−(C1−6アルキル)スルファモイル」の例は、N,N−(ジメチル)スルファモイルおよびN−(メチル)−N−(エチル)スルファモイルである。「N−(C1−6アルキル)カルバモイル」の例は、メチルアミノカルボニルおよびエチルアミノカルボニルである。「N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル」の例は、ジメチルアミノカルボニルおよびメチルエチルアミノカルボニルである。「C1−6アルキルスルホニル」の例には、メシル、エチルスルホニルおよびt−ブチルスルホニルが含まれる。「C1−6アルキルスルホニルアミノ」の例には、メシルアミノ、エチルスルホニルアミノおよびt−ブチルスルホニルが含まれる。「C1−3アルキレン」の例は、メチレン、エチレンおよびプロピレンである。
【0023】
本明細書中で用いられる「薬学的に許容しうる塩」は、親化合物が、その酸塩または塩基塩を作ることによって修飾されている、開示された化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容しうる塩の例には、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩;および類似のものが含まれるが、これに制限されるわけではない。それら薬学的に許容しうる塩には、例えば、無毒性の無機酸または有機酸から形成される、親化合物の慣用的な無毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような慣用的な無毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸から誘導されるもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、オキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等のような有機酸から製造される塩が含まれる。
【0024】
酸付加塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、半硫酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、オキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2−ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモエート、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシラート(p−トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。塩基塩には、アンモニウム塩;ナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩;アルミニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン塩のような有機塩基との塩;N−メチル−d−グルカミン;およびアルギニン、リシン、オルニチン等のようなアミノ酸との塩が含まれる。更に、塩基性窒素含有基は、ハロゲン化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどの低級ハロゲン化アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチルのような硫酸ジアルキル;硫酸ジアミル;ハロゲン化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジルのようなハロゲン化アラルキルおよびその他のような物質で第四級化することができる。無毒性の生理学的に許容しうる塩が好適であるが、その他の塩も、生成物を単離するまたは精製する場合などに有用である。本発明の薬学的に許容しうる塩には、更に、次の酸の内の一つ、すなわち、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸またはL−酒石酸で製造される塩が含まれる。
【0025】
したがって、本発明の一つの側面において、本発明の化合物、具体的には、本明細書中に記載の実施例の一つを、薬学的に許容しうる塩として、具体的には、ベンゼンスルホン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩またはL−酒石酸塩として提供する。
【0026】
それら塩は、生成物の遊離塩基の形と、1当量またはそれを超える適当な酸とを、その塩が不溶性である溶媒または基剤中において、または水などの溶媒であって、真空中でまたは凍結乾燥することで除去される溶媒中において反応させることによる、または適するイオン交換樹脂上において既存の塩の陰イオンを別の陰イオンに交換することによるなどの慣用的な手段によって形成することができる。或いは、このような塩は、これら化合物の遊離酸または塩基の形と、化学量論的量の適当な塩基または酸とを、水または有機溶媒中で、または概して、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性基剤が好適であるそれら二つの混合物中で反応させることによって製造することができる。適する塩のリストは、本明細書中にその開示が援用される Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418 に見出される。
【0027】
本発明中の種々の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体で存在しうる。本発明は、本発明の範囲内に包含されるシス・トランス異性体、R・S−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、それらのラセミ混合物およびそれらの他の混合物を含めたこのような化合物を全て考慮している。追加の不斉炭素原子は、アルキル基などの置換基中に存在しうる。全てのこのような異性体、更には、それらの混合物は、本発明中に包含されるものである。本明細書中に記載の化合物は、不斉中心を有することがありうる。不斉置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性体でまたはラセミ体で単離することができる。ラセミ体の分割または光学活性な出発物質からの合成によるような、光学活性体を製造する方法は、当該技術分野において周知である。必要な場合、ラセミ体の分離は、当該技術分野において知られている方法によって行うことができる。オレフィン、C=N二重結合等の多数の幾何異性体も、本明細書中に記載の化合物中に存在しうるが、このような安定な異性体は全て、本発明において考えられる。本発明の化合物のシス・トランス幾何異性体は、記載されており、異性体の混合物としてまたは別々の異性体として単離することができる。特定の立体化学または異性体が具体的に示されない限り、ある構造の全てのキラルな形、ジアステレオマー、ラセミ体および全ての幾何異性体を意味する。
【0028】
可変基の具体的な意味は、次の通りである。このような意味は、本明細書中の前にまたは以下に定義のいずれかの定義、請求の範囲または態様について、適所で用いることができる。
【0029】
mは0である。
は水素である。
はメチルである。
【0030】
は、炭素連結した−NR−を含有する複素環式環であり;ここにおいて、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよい。
は、−NRで置換されたC1−3アルキルであり;ここにおいて、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよい。
【0031】
は、−NRで置換されたC1−3アルキルである。
は、−NRで置換されたメチルまたはエチルであり;ここにおいて、RおよびRは、独立して、水素またはメチルである。
【0032】
は、−NRで置換されたメチルまたはエチルであり;ここにおいて、RおよびRは双方とも水素である、またはRおよびRは双方ともメチルである。
およびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルである。
【0033】
およびRは、独立して、水素またはメチルである。
およびRは双方とも水素である、またはRおよびRは双方ともメチルである。
【0034】
Xは−C(O)−である。
Xは−CH−である。
環Aはカルボシクリルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよい。
【0035】
環Aは、フェニルまたはナフチルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよい。
環Aはヘテロシクリルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;そしてここにおいて、このヘテロシクリルが、追加のNHを含有する場合、その窒素は、Rで置換されていてもよい。
【0036】
環Aはカルボシクリルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;ここにおいて、Rは、ハロ、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである。
【0037】
環Aは、フェニル、ナフチルまたはベンゾチエニルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;ここにおいて、Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチルまたはメトキシである。
【0038】
環Aは、フェニルまたはナフチルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;ここにおいて、Rは、フルオロ、クロロ、メチルまたはメトキシである。
【0039】
環Aは、4−メチルフェニル(methyphenyl)、4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、ナフタ−2−イル、4−クロロフェニル、2,3 ジクロロフェニルまたは4−ブロモフェニルである。
【0040】
環Aは、4−メチルフェニル(methyphenyl)、4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、ナフタ−2−イルまたは4−クロロフェニルである。
環Bは、5員または6員の縮合炭素環式環であり;ここにおいて、環Bは、炭素上に1個またはそれを超えるR10で置換されていてもよい。
【0041】
環Bは、5員または6員の縮合複素環式環であり;ここにおいて、環Bは、炭素上に1個またはそれを超えるR10で置換されていてもよく;そしてここにおいて、この5員または6員の縮合複素環式環が、追加のNHを含有する場合、その窒素は、R11で置換されていてもよい。
【0042】
環Bは、5員または6員の縮合炭素環式環または5員または6員の縮合複素環式環である。
環Bおよびそれが縮合しているピリミドンは、2,3−ジヒドロ−5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン、3,4−ジヒドロ−6−オキソ−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン、5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジンまたは4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−イルを形成する。
【0043】
したがって、本発明のもう一つの側面において、
mが0であり;
が水素であり;
がメチルであり;
が、−NRで置換されたC1−3アルキルであり;
Xが、−C(O)−または−CH−であり;
環Aがカルボシクリルであり;ここにおいて、環Aが、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;
環Bが、5員または6員の縮合炭素環式環または5員または6員の縮合複素環式環であり;
およびRが、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;
が、ハロ、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである、上に示されたような式(I)の化合物;またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0044】
したがって、本発明のもう一つの側面において、
mが0であり;
が水素であり;
が、−NRで置換されたメチルまたはエチルであり;
Xが、−C(O)−または−CH−であり;
環Aが、4−メチルフェニル(methyphenyl)、4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、ナフタ−2−イルまたは4−クロロフェニルであり;
環Bおよびそれが縮合しているピリミドンが、2,3−ジヒドロ−5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン、3,4−ジヒドロ−6−オキソ−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン、5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジンまたは4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−イルを形成し;
およびRが、独立して、水素またはメチルである、上に示されたような式(I)の化合物;またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0045】
本発明の別の側面において、本発明の好適な化合物は、実施例のいずれか一つまたはその薬学的に許容しうる塩である。
本発明の別の側面は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を製造する方法であって(ここにおいて、可変基は、特に断らない限り、式(I)に定義の通りである)、
方法(a)Xが−C(O)−である場合;式(II)
【0046】
【化2】

【0047】
を有するキナゾリノンと、式(III):
【0048】
【化3】

【0049】
を有する酸またはその活性酸誘導体とを反応させること;
方法(b)Xが−CH−である場合;式(II)の化合物と、式(V):
【0050】
【化4】

【0051】
(式中、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物とを反応させること;
方法(c)Rが、−NRで置換されたC1−3アルキルであり且つ炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてよい式(I)の化合物について、式(VI):
【0052】
【化5】

【0053】
(式中、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてよいC1−3アルキレンであり;そしてここにおいて、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物と、式(VII):
HNR (VII)
を有する化合物とを反応させること;
方法(d)式(VIII):
【0054】
【化6】

【0055】
を有するアミンと、式(IX):
【0056】
【化7】

【0057】
(式中、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物との反応;そしてその後、必要ならば、
(i)式(I)の化合物を式(I)の別の化合物へと変換させること;
(ii)任意の保護基を除去すること;
(iii)薬学的に許容しうる塩を形成すること
を含んで成る方法を提供する。
【0058】
Lは、置換可能な基であり、Lに適する意味は、例えば、ハロ、例えば、クロロまたはブロモである。
上の反応について具体的な反応条件は、次の通りである。
【0059】
方法(a) 式(II)のアミンおよび式(III)の酸は、適するカップリング試薬の存在下で互いにカップリングさせることができる。当該技術分野において知られている標準的なペプチドカップリング試薬は、適するカップリング試薬として用いることができるし、または例えば、カルボニルジイミダゾールおよびジシクロヘキシルカルボジイミドを、場合により、ジメチルアミノピリジンまたは4−ピロリジノピリジンなどの触媒の存在下において、場合により、塩基、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、または2,6−ルチジンまたは2,6−ジ−tert−ブチルピリジンなどの2,6−ジアルキルピリジンの存在下において用いることができる。適する溶媒には、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、ベンゼン、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドが含まれる。そのカップリング反応は、好都合には、−40〜40℃の範囲内の温度で行うことができる。
【0060】
適する活性酸誘導体には、酸ハロゲン化物、例えば、酸塩化物;および活性エステル、例えば、ペンタフルオロフェニルエステルが含まれる。これらタイプの化合物とアミンとの反応は、当該技術分野において周知であり、例えば、それらは、上記のものなどの塩基の存在下において、上記のものなどの適する溶媒中で反応させることができる。その反応は、好都合には、−40〜40℃の範囲内の温度で行うことができる。
【0061】
式(II)のアミンは、スキーム1にしたがって製造することができる。
【0062】
【化8】

【0063】
式(IIa)、式(IIb)および式(III)の化合物は、商業的に入手可能な化合物であるし、またはそれらは、参考文献において知られているし、またはそれらは、当該技術分野において知られている標準的な方法によって製造される。
【0064】
方法(b) 式(II)および式(V)の化合物は、適当な溶媒中において、炭酸カリウムなどの塩基と反応することができる。例えば、式(II)および式(V)の化合物は、溶媒としてのジメチルホルムアミドまたはアセトニトリルおよび炭酸カリウム中で加熱して、式(I)の化合物を生じることができる。
【0065】
式(V)の化合物は、商業的に入手可能な化合物であるし、またはそれらは、参考文献において知られているし、またはそれらは、当該技術分野において知られている標準的な方法によって製造される。
【0066】
方法(c) 式(VI)および式(VII)の化合物は、適当な溶媒中において塩基の存在下で互いに反応することができる。例えば、式(VI)および式(VII)の化合物は、ジメチルホルムアミド中の炭酸カリウムの存在下において高温で反応することができる。
【0067】
式(VI)のアミンは、スキーム2にしたがって製造することができる。
【0068】
【化9】

【0069】
式(VII)の化合物は、商業的に入手可能な化合物であるし、またはそれらは、参考文献において知られているし、またはそれらは、当該技術分野において知られている標準的な方法によって製造される。
【0070】
方法(d) 式(VIII)および式(IX)の化合物は、適当な溶媒中において、リチウムt−ブトキシドなどの塩基と反応することができる。例えば、式(II)および式(V)の化合物は、溶媒としてのテトラヒドロフランおよびリチウムt−ブトキシド中において−40℃で反応して、式(I)の化合物を生じることができる。
【0071】
式(VIII)のアミドは、スキーム3にしたがって製造することができる。
【0072】
【化10】

【0073】
式(VIIIa)および式(IX)の化合物は、商業的に入手可能な化合物であるし、またはそれらは、参考文献において知られているし、またはそれらは、当該技術分野において知られている標準的な方法によって製造される。
【0074】
本発明の化合物中のある種のいろいろな環置換基は、上述の方法の前かまたは直後に、標準的な芳香族置換反応によって導入するまたは慣用的な官能基修飾によって生じることができるが、それ自体、本発明の方法側面に包含されるということは理解されるであろう。このような反応および修飾には、例えば、芳香族置換反応による置換基の導入、置換基の還元、置換基のアルキル化および置換基の酸化が含まれる。このような手順のための試薬および反応条件は、化学技術分野において周知である。
【0075】
更に、本明細書中に述べられた若干の反応において、化合物中のいずれかの感受性基を保護することが必要でありうる/望まれることがありうるということは理解されるであろう。保護が必要であるまたは望まれる状況、および適する保護方法は、当業者に知られている。慣用的な保護基は、標準的な慣例にしたがって用いることができる(実例については、T.W. Green, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991 を参照されたい)。したがって、本明細書中の若干の反応において、反応物が、アミノ、カルボキシまたはヒドロキシなどの基を包含する場合、その基を保護することは望まれることがありうる。
【0076】
アミノ基またはアルキルアミノ基に適する保護基は、例えば、アシル基、例えば、アセチルなどのアルカノイル基;アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基またはt−ブトキシカルボニル基;アリールメトキシカルボニル基、例えば、ベンジルオキシカルボニル;またはアロイル基、例えば、ベンゾイルである。上の保護基の脱保護条件は、必然的に、保護基の選択肢で異なる。したがって、例えば、アルカノイル基またはアルコキシカルボニル基またはアロイル基などのアシル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムなどの適する塩基での加水分解によって除去することができる。或いは、t−ブトキシカルボニル基などのアシル基は、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸またはトリフルオロ酢酸などの適する酸での処理によって除去することができ、そしてベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル基は、例えば、炭素上パラジウムなどの触媒上の水素化によって、またはルイス酸、例えば、トリス(トリフルオロ酢酸)ホウ素での処理によって除去することができる。第一級アミノ基に適する別の保護基は、例えば、フタロイル基であり、それは、アルキルアミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミンでの、またはヒドラジンでの処理によって除去することができる。
【0077】
ヒドロキシ基に適する保護基は、例えば、アシル基、例えば、アセチルなどのアルカノイル基;アロイル基、例えば、ベンゾイル;またはアリールメチル基、例えば、ベンジルである。上の保護基の脱保護条件は、必然的に、保護基の選択肢で異なるであろう。したがって、例えば、アルカノイル基またはアロイル基などのアシル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムなどの適する塩基での加水分解によって除去することができる。或いは、ベンジル基などのアリールメチル基は、例えば、炭素上パラジウムなどの触媒上の水素化によって除去することができる。
【0078】
カルボキシ基に適する保護基は、例えば、エステル形成性基、例えば、水酸化ナトリウムなどの塩基での加水分解によって除去することができる、例えば、メチル基またはエチル基;または例えば、酸、例えば、トリフルオロ酢酸などの有機酸での処理によって除去することができる、例えば、t−ブチル基;または例えば、炭素上パラジウムなどの触媒上の水素化によって除去することができる、例えば、ベンジル基である。
【0079】
それら保護基は、合成中のいずれか好都合な段階で、化学技術分野において周知の慣用的な技法を用いて除去することができる。
【0080】
検定
マラカイトグリーン検定
Eg5モーターおよび阻害剤作用の酵素活性を、ATPから遊離したホスフェートを測定するマラカイトグリーン検定を用いて測定したが、それは、従来、キネシンモーターの活性を測定するのに用いられてきた(Hackney DD, and Jiang W, Assays for kinesin microtubule-stimulated ATPase activity; Methods in Molecular Biology vol 164:65-71 (2001))。酵素は、リコンビナントHsEg5モータードメイン(アミノ酸1−369−8His)であり、これを、6nM〜100μlの反応最終濃度で加えた。緩衝液は、25mM PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)/KOH、pH6.8、2mM MgCl、1mM EGTA(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’N’−四酢酸)、1mM DTT(ジチオトレイトール(dithiotheitol))、0.01% Triton X−100および5μMパクリタキセルから成った。マラカイトグリーン/モリブデン酸アンモニウム試薬を、次のように調製した。800ml最終容量について、0.27gのマラカイトグリーン(J.T. Baker)を、ポリプロピレンボトル中の600mlのHO中に溶解させた。8.4gのモリブデン酸アンモニウム(Sigma)を、200mlの4N HCl中に溶解させた。それら溶液を、20分間混合し、そして0.02μmフィルターを介してポリプロピレン容器中に直接的に濾過した。
【0081】
12%DMSO中で希釈した5μlの化合物を、96ウェルプレートのウェルに加えた。上の緩衝溶液中で希釈した80μl/ウェルの酵素を加え、化合物と一緒に20分間インキュベートした。このプレインキュベーション後、15μlの緩衝液中に2mM ATP(アデノシン5’−三リン酸)(最終濃度:300μM)および6.053μM重合チューブリン(最終濃度:908nM)を含有する基質溶液を、各々のウェルに加えて、反応を開始した。反応を混合し、室温で更に20分間インキュベートした。次に、それら反応を、150μlのマラカイトグリーン/モリブデン酸アンモニウム試薬の添加によって急冷し、そして吸光度を、Spectramax Plus プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて、正確に急冷後5分に650ナノメートルで読み取った。データをグラフで表し、そして ExCel Fit(Microsoft)を用いてIC50を計算した。
【0082】
本発明の化合物は、上の検定において1nM〜9μMの範囲内のIC50を記録した。具体的には、次の結果を得た。
【0083】
【表1】

【0084】
本発明のもう一つの側面により、医薬組成物であって、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0085】
本発明の化合物は、経口、非経口で、口腔内、膣、直腸に、吸入、吹入で、舌下、筋肉内、皮下、局所、鼻腔内、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、脳室内に、および注射によって関節中に投与することができる。
【0086】
投薬量は、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢および体重、そして特定の患者に最も適当なように個々の治療方式および投薬レベルを決定する場合に、担当医師が普通に考える他の因子に依存するであろう。
【0087】
感染の療法に用いるための本発明の化合物の有効量は、温血動物、具体的には、ヒトにおいて感染の症状を症候的に軽減する、感染の進行を遅らせる、または感染の症状を有する患者において悪化の危険を減少させるのに充分な量である。
【0088】
本発明の化合物から医薬組成物を製造するには、不活性な薬学的に許容しうる担体は、固体かまたは液体でありうる。固形製剤には、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が含まれる。
【0089】
固形担体は、一つまたはそれを超える物質でありうるが、それは、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても作用しうるし;それは、カプセル封入材料でもありうる。
【0090】
散剤の場合、担体は、微粉固体であり、それは、微粉活性成分との混合物中である。錠剤の場合、活性成分を、必要な結合性を有する担体と、適する比率で混合し、そして所望の形状およびサイズに圧縮する。
【0091】
坐剤組成物を製造するには、脂肪酸グリセリドとカカオ脂の混合物のような低融点ロウを、最初に溶融させ、そして活性成分をその中に、例えば、撹拌することによって分散させる。次に、その溶融均一混合物を、好都合なサイズの型に注入し、冷却させ、凝固させる。
【0092】
適する担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ロウ、カカオ脂等が含まれる。
【0093】
ヒトを含めた哺乳動物の治療的処置(予防的処置を含めた)に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を使用するためには、通常は、それを、標準的な医薬慣例にしたがって、医薬組成物として製剤化する。
【0094】
本発明の化合物に加えて、本発明の医薬組成物は、本明細書中に挙げられた一つまたはそれを超える疾患状態を処置する場合に価値がある一つまたはそれを超える薬理学的物質を更に含有することができるし、または一緒に(同時にまたは逐次的に)共投与することができる。
【0095】
組成物という用語は、薬学的に許容しうる担体を含む活性成分またはその薬学的に許容しうる塩の製剤を包含するものである。例えば、本発明は、当該技術分野において知られている手段によって製剤化して、例えば、錠剤、カプセル剤、水性または油状の液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、鼻内噴霧剤、坐剤、吸入用の微粉散剤またはエアゾール剤またはネブライザー、および非経口使用の(静脈内、筋肉内または注入を含めた)滅菌水性または油状液剤または懸濁剤または滅菌乳剤の形にすることができる。
【0096】
液状形組成物には、液剤、懸濁剤および乳剤が含まれる。活性化合物の滅菌水または水−プロピレングリコール液剤は、非経口投与に適する液状製剤の一例として挙げることができる。液状組成物は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液で製剤化することもできる。経口投与用の水性液剤は、活性成分を水中に溶解させ、そして所望のような適する着色剤、着香剤、安定剤および増粘剤を加えることによって製造することができる。経口使用のための水性懸濁剤は、微粉活性成分を水中に、天然・合成ガム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および製薬技術分野に知られている他の懸濁化剤などの粘稠材料と一緒に分散させることによって製造することができる。
【0097】
それら医薬組成物は、単位剤形でありうる。このような形の場合、組成物は、適当量の活性成分を含有する単位用量に分割される。その単位剤形は、包装された製剤でありうるが、その包装には、個別の量の製剤、例えば、パケット入り錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤が入っている。単位剤形は、カプセル剤、カシェ剤または錠剤自体でもありうるし、またはそれは、いずれかのこれら包装された形の適当な数でありうる。
【0098】
本発明のもう一つの側面により、療法によるヒトまたは動物体の処置方法で用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
本発明者は、本発明に定義の化合物またはそれらの薬学的に許容しうる塩が、有効な抗癌薬であって、その性質は、それらのEg5阻害性によると考えられるということを発見した。したがって、本発明の化合物は、Eg5によって単独でまたは一部分媒介される疾患または医学的状態の処置に有用であると考えられる、すなわち、それら化合物は、このような処置を必要としている温血動物にEg5阻害作用を生じるのに用いることができる。
【0099】
したがって、本発明の化合物は、Eg5の阻害を特徴とする、癌を処置する方法を提供する、すなわち、それら化合物は、Eg5の阻害によって単独でまたは一部分媒介される抗癌作用を生じるのに用いることができる。
【0100】
本発明の化合物は、微小管モータータンパク質HsEg5を阻害することによる新生物疾患の処置に有用である。処置方法は、Eg5活性を標的とするが、それは、有糸分裂紡錘体の形成に、したがって、細胞分裂に必要である。したがって、Eg5の阻害剤は、有糸分裂中期の細胞をブロックして、影響を受けた細胞のアポトーシスをもたらすこと、したがって、抗増殖作用を有することが分かった。このように、Eg5阻害剤は、細胞分裂のモジュレーターとして働くので、乳房、卵巣、肺、結腸、前立腺および他の組織の癌、更には、多発性骨髄腫白血病、例えば、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、およびリンパ腫、例えば、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、および黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫などの他の腫瘍タイプのような新生物疾患に対して活性であると考えられる。Eg5阻害剤は、更に、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経疾患および心臓血管疾患が含まれるがこれに制限されるわけではない他の増殖性疾患の処置に有用であると考えられる。
【0101】
したがって、本発明のこの側面により、薬剤として用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物のEg5阻害作用の生成に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0102】
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物の抗増殖作用の生成に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0103】
本発明のこの側面により、ヒトなどの温血動物の抗癌作用の生成に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0104】
本発明のもう一つの特徴により、乳房、卵巣、肺、結腸または前立腺の癌、白血病およびリンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫および骨肉腫の処置に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0105】
本発明のもう一つの特徴により、脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0106】
本発明のこの側面のもう一つの特徴により、Eg5阻害作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物にEg5阻害作用を生じる方法であって、この動物に、有効量の上に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0107】
本発明のこの側面のもう一つの特徴により、抗増殖作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物に抗増殖作用を生じる方法であって、この動物に、有効量の上に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0108】
本発明のこの側面のもう一つの特徴により、抗癌作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物に抗癌作用を生じる方法であって、この動物に、有効量の上に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0109】
本発明のこの側面のもう一つの特徴により、乳房、卵巣、肺、結腸または前立腺の癌、白血病およびリンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫および骨肉腫の処置を必要としているヒトなどの温血動物でのこのような処置方法であって、この動物に、有効量の前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0110】
本発明のこの側面のもう一つの特徴により、脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置を必要としているヒトなどの温血動物でのこのような処置方法であって、この動物に、有効量の前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0111】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物のEg5阻害作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0112】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物の抗増殖作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0113】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物の抗癌作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0114】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物の乳房、卵巣、肺、結腸または前立腺の癌、白血病およびリンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫および骨肉腫の処置に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0115】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0116】
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物のEg5阻害作用の生成における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
本発明のもう一つの側面により、ヒトなどの温血動物の抗増殖作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0117】
本発明のこの側面により、ヒトなどの温血動物の抗癌作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
本発明のもう一つの特徴により、脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
【0118】
もう一つの態様において、本発明は、癌に関連した障害の処置または予防のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
本明細書中に定義の抗癌処置は、単独療法として適用されてよいし、または本発明の化合物に加えて、慣用的な外科手術または放射線療法または化学療法を伴ってよい。このような化学療法には、次の分類の一つまたはそれを超える抗腫瘍物質が含まれてよい。
【0119】
(i)医学腫瘍学で用いられるような抗増殖薬/抗腫瘍薬およびそれらの組合せであって、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン(oxaliplatin)、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド(temozolomide)およびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば、ジェムシタビン(gemcitabine)、および葉酸拮抗薬であって、5−フルオロウラシルおよびテガフルのようなフルオロピリミジン類、ラルチトレキセド(raltitrexed)、メトトレキサート、シトシンアラビノシドおよびヒドロキシ尿素のようなもの);抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン(idarubicin)、マイトマイシンC、ダクチノマイシンおよびミトラマイシンのようなアントラサイクリン系);有糸分裂阻止薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン(vinorelbine)のようなビンカアルカロイド系、およびタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類(taxoids))ポロキナーゼ(polokinase)阻害剤;およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカン(topotecan)およびカンプトテシン)のようなもの;
(ii)細胞分裂抑制薬であって、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン(toremifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene));エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えば、フルヴェストラント(fulvestrant));抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド(bicalutamide)、フルタミド、ニルタミド(nilutamide)および酢酸シプロテロン);LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、ロイプロレリン(leuprorelin)およびブセレリン(buserelin));プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール);アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(anastrozole)、レトロゾール(letrozole)、ボラゾール(vorazole)およびエクセメスタン(exemestane));およびフィナステリドなどの5α−レダクターゼの阻害剤のようなもの;
(iii)癌細胞浸潤を阻害する物質(例えば、マリマスタト(marimastat)のようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤またはSRCキナーゼの阻害剤(4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エトキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530;国際特許出願WO01/94341号)およびN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキサミド(ダサチニブ(dasatinib)、BMS−354825;J. Med. Chem., 2004, 47, 6658-6661)のような)または Heparanase への抗体);
(iv)増殖因子機能の阻害剤、例えば、このような阻害剤には、増殖因子抗体;増殖因子受容体抗体(例えば、抗erbb2抗体トラスツズマブ(trastuzumab)[HerceptinTM]および抗erbb1抗体セツキシマブ(cetuximab)[Erbitux,C225]);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤などのRas/Rafシグナリング阻害剤(例えば、ソラフェニブ(sorafenib)(BAY43−9006)およびチピファルニブ(tipifarnib));チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ(gefitinib),AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ(erlotinib),OSI−774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、およびラパチニブ(lapatinib)などのerbB2チロシンキナーゼ阻害剤)、例えば、イマチニブ(imatinib)などの血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、そして例えば、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、c−kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、IGF受容体(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害剤、およびMEK、AKTおよび/またはPI3Kキナーゼによる細胞シグナリングの阻害剤が含まれる;
(v)抗血管新生薬であって、血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベヴァシズマブ(bevacizumab)[AvastinTM]、およびVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であって、国際特許出願WO97/22596号、WO97/30035号、WO97/32856号、WO98/13354号に開示されたもの、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474;WO01/32651号中の実施例2)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171;WO00/47212号中の実施例240)、ヴァタラニブ(vatalanib)(PTK787;WO98/35985号)およびSU11248(スニチニブ(sunitinib);WO01/60814号)のようなもの);および他の機構によって働く化合物(例えば、リノマイド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン(angiostatin))のようなもの;
(vi)血管損傷薬であって、Combretastatin A4、および国際特許出願WO99/02166号、WO00/40529号、WO 00/41669号、WO01/92224号、WO02/04434号およびWO02/08213号に開示された化合物、抗bcl2のようなもの;
(vii)アンチセンス療法、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンスなどの、上に挙げられた標的に向けられているもの;
(viii)遺伝子治療アプローチであって、例えば、異常p53または異常BRCA1またはBRCA2などの異常遺伝子を置き換えるアプローチ;シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いたものなどのGDEPT(遺伝子に支配される酵素プロドラッグ療法(gene-directed enzyme pro-drug therapy))アプローチ;および多剤耐性遺伝子治療などの、化学療法または放射線療法への患者耐性を増加させるアプローチを含めたもの;
(ix)免疫療法アプローチであって、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクションのような、患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させる ex-vivo および in-vivo アプローチ;T細胞アネルギーを減少させるアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた樹状細胞などのトランスフェクションされた免疫細胞を用いたアプローチ;サイトカインでトランスフェクションされた腫瘍細胞系を用いたアプローチ;および抗イディオタイプ抗体を用いたアプローチを含めたもの;
(x)細胞周期物質であって、オーロラキナーゼ(aurora kinase)阻害剤(例えば、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528、AX39459、および本明細書中に援用されるWO02/00649号、WO03/055491号、WO2004/058752号、WO2004/058781号、WO2004/058782号、WO2004/094410号、WO2004/105764号、WO2004/113324号に挙げられた具体的な実施例);CDK2および/またはCDK4阻害剤などのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(例えば、本明細書中に援用されるWO01/14375号、WO01/72717号、WO02/04429号、WO02/20512号、WO02/66481号、WO02/096887号、WO03/076435号、WO03/076436号、WO03/076434号、WO03/076433号、WO04/101549号およびWO04/101564号の具体的な実施例);および
(xi)細胞毒性物質であって、ジェムシタビン、トポイソメラーゼ1阻害剤(アドリアマイシン、エトポシド)およびトポイソメラーゼII阻害剤のようなもの。
【0120】
このような共同処置は、その処置の個々の成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与によって達成することができる。このような組合せ製品は、本明細書中の前に記載の投薬量範囲内の本発明の化合物と、承認された投薬量範囲内の他の薬学的に活性な物質を用いる。
【0121】
本発明のもう一つの側面において、本明細書中の上のリストより選択される抗腫瘍物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルを提供する。
【0122】
したがって、もう一つの態様において、本発明は、癌の処置方法であって、本明細書中の上のリストより選択される抗腫瘍物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せで、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルをヒトに投与することによる方法を提供する。
【0123】
本発明のもう一つの側面において、癌の処置に用いるための薬剤の製造に用いるための、本明細書中の上のリストより選択される抗腫瘍物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルの使用を提供する。
【0124】
本発明のもう一つの側面において、癌の処置に用いるための、本明細書中の上のリストより選択される抗腫瘍物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルの使用を提供する。
【0125】
本明細書中に定義の抗癌処置には、更に、次の分類の一つまたはそれを超える医薬物質が含まれてよい。
(i)貧血の処置に有用な物質、例えば、持続的赤血球生成受容体アクチベーター(エポエチンアルファなど);
(ii)好中球減少症の処置に有用な物質、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)のような、好中球の生産および機能を調節する造血系増殖因子、例えば、フィルグラスチム(filgrastim);および
(iii)本発明の化合物の、単独のまたは放射線療法と一緒の使用によって生じこるとがありうる、急性、遅延、後期および先行の嘔吐を含めた嘔吐または吐き気を処置する抗嘔吐薬であって、このような抗嘔吐薬の適する例には、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト;オンダンセトロン、グラニセトロン(granisetron)、トロピセトロン(tropisetron)およびザチセトロン(zatisetron)などの5H13受容体アンタゴニスト;バクロフェンなどのGABAB受容体アゴニスト;Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid または Benecorten などのコルチコステロイド;フェノチアジンなどの抗ドパミン作用薬(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン);メトクロプラミドまたはドロナビノールが含まれる。
【0126】
このような共同処置は、その処置の個々の成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与によって達成することができる。このような共同処置は、本明細書中の前に記載の投薬量範囲内の本発明の化合物と、承認された投薬量範囲内の他の薬学的に活性な物質を用いる。
【0127】
本発明のもう一つの側面において、本明細書中の上のリストより選択される別の医薬物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルを提供する。
【0128】
したがって、もう一つの態様において、本発明は、癌の処置方法であって、本明細書中の上のリストより選択される別の医薬物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せで、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルをヒトに投与することによる方法を提供する。
【0129】
本発明のもう一つの側面において、癌の処置に用いるための薬剤の製造に用いるための、本明細書中の上のリストより選択される別の医薬物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルの使用を提供する。
【0130】
本発明のもう一つの側面において、癌の処置に用いるための、本明細書中の上のリストより選択される別の医薬物質またはクラスの同時の、逐次的なまたは別々の投与との組合せでの、式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩または in vivo 加水分解性エステルの使用を提供する。
【0131】
治療薬におけるそれらの使用に加えて、式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩は、新しい治療薬の探求の一部分として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスなどの実験動物でのEg5阻害剤の作用について評価するための in vitro および in vivo 試験システムの開発および規格化における薬理学的手段としても有用である。
【0132】
上の他の医薬組成物、製法、方法、使用および薬剤製造の特徴には、本明細書中に記載の本発明の化合物の別の且つ好適な態様も当てはまる。
【実施例】
【0133】
本発明を、ここで、次の非制限実施例によって詳しく説明するが、ここにおいて、特に断らない限り、
(i)温度は、摂氏度(℃)で与えられている;操作は、室温または周囲温度で、すなわち、18〜30℃の範囲内の温度で行った;
(ii)有機溶液は、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた;溶媒の蒸発は、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(600〜4000パスカル;4.5〜30mmHg)において60℃までの浴温度で行った;
(iii)概して、反応経過は、TLCまたはMSで追跡したが、反応時間は、単に例示のために与えられている;
(iv)最終生成物は、納得のいくプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび/または質量スペクトルデータを有した;
(v)収率は、単に例示のために与えられ、高度な方法開発によって得ることができるものでは必ずしもない;より多くの材料が必要な場合、製造を反復した;
(vi)与えられている場合のNMRデータは、特に断らない限り、溶媒として重水素化クロロホルム(CDCl)を用いて400MHzで決定され、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に相対する百万分率(ppm)で与えられる、主要な診断用プロトンのδ値の形である;
(vii)化学記号は、それらの通常の意味を有する;SI単位および記号を用いている;
(viii)溶媒比は、容量:容量(v/v)という用語で与えられている;そして
(ix)質量スペクトルは、直接暴露プローブを用いた化学イオン化(CI)モードにおいて70電子ボルトの電子エネルギーで実験した;指示されている場合のイオン化は、電子衝撃法(EI)、高速原子衝撃法(FAB);エレクトロスプレー法(ESP);または大気圧化学イオン化法(APCI)で行った;m/zの値を与えている;概して、親質量を示すイオンのみを報告している;そして特に断らない限り、引用される質量イオンは(MH)である;
(x)合成が、前の実施例に記載されたのに類似すると記載されている場合、用いられる量は、前の実施例で用いられた量のミリモル比当量である;
(xi)次の略語を用いた:
THF テトラヒドロフラン;
DMF N,N−ジメチルホルムアミド;
EtOAc 酢酸エチル;
DCM ジクロロメタン;および
DMSO ジメチルスルホキシド。
【0134】
実施例1
2,3−ジヒドロ−5−オキソ−6−ベンジル−7−{1−[N−(4−メチルベンゾイル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン
ジオキサン中の4N HCl溶液(1ml)を、2,3−ジヒドロ−5−オキソ−6−ベンジル−7−[1−{N−(4−メチルベンゾイル)−N−[3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)プロピル]アミノ}プロピル)−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン(方法22;103mg,0.18mmol)に加え、30分間撹拌させた。脱保護を終えた時点で、溶液を真空中で濃縮した。次に、残留物を、水/アセトニトリルから凍結乾燥させて、92mgの標題化合物を与えた。
【0135】
NMR (500 MHz, DMSO-d6; 100 ℃) 7.69 (br s, 3 H) 7.25 - 7.32 (m, 2 H) 7.09 - 7.22 (m, 5 H) 6.87 (br s, 2 H) 5.06 (br s, 1H) 4.39 - 4.49 (m, 2 H) 3.65 - 3.82 (m, 4 H) 3.45 - 3.58 (m, 2 H) 2.62 - 2.74 (m, 2 H) 2.39 (s, 3 H) 1.57 - 1.93 (m, 4 H) 0.57 (t, 3 H);
m/z 477(M)。
【0136】
実施例2〜6
次の化合物を、実施例1の手順によって製造した。
【0137】
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
実施例7
2−{1−[N−(4−クロロベンゾイル)−N−(2−ジメチルアミノエチル)アミノ]プロピル}−3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン
DCM(1ml)中の3−ベンジル−2−[1−(2−ジメチルアミノエチルアミノ)−プロピル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(方法30;2mg,5.43μmol)の溶液に、炭酸カリウム(10mg/1ml)および4−クロロベンゾイルクロリド(1.2eq.,6.5μmol,1μL)の水溶液を加えた。反応を終えた時点で、層を分離し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。その化合物を、逆相クロマトグラフィー(0.1%TFA/水〜0.1%TFA/CHCN)によって精製して、3mg(91%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0140】
NMR (300 MHz, MeOD) 7.75 (m, 2 H) 7.40- 6.90 (m, 7 H), 4.65-4.50 (m, 2 H), 4.40-4.30 (m, 1 H), 3.75 (m, 2 H,) 3.60-3.35 (m, 4H), 3.00 (H2O ピークで隠される, 2 H), 3.00-2.85 (m, 6 H), 2.30 (s, 6 H), 1.30 (m, 3 H);
m/z 508(M)。
【0141】
出発物質の製造
方法1
4,4−ジメトキシ−3−オキソブタン酸エチル
EtOAc(75ml)中の酢酸ジメトキシメチル(25g,0.19mol)の溶液に、水素化ナトリウム(8.5g,0.21mol)を少量ずつ加えた。水素化ナトリウムを全て加えた後、混合物を10時間還流させた。その反応混合物を、冷水上に注いだ後、3N HCl溶液を用いてpHを3〜4に調整した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、34g(96%粗回収率)の標題化合物を与え、これを、更に精製することなく用いた。
【0142】
方法2
2−ベンジル−4,4−ジメトキシ−3−オキソブタン酸エチル
エタノール中の4,4−ジメトキシ−3−オキソブタン酸エチル(方法1;20g,0.105mol)、塩化ベンジル(12.2ml,0.106mol)およびナトリウムエトキシド(7g,0.105mol)の溶液を、10時間還流させた。次に、反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。次に、残留物をEtOAc中で希釈し、水で分配した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、24.2g(82%粗回収率)の標題化合物を与え、これを、更に精製することなく用いた。
【0143】
方法3
5−ベンジル−6−(ジメトキシメチル)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロピリミジン−4(1H)−オン
エタノール(100ml)中の2−ベンジル−4,4−ジメトキシ−3−オキソブタン酸エチル3(方法2;10g,35.7mmol)の溶液に、チオ尿素(2.58g,33.9mmol)を加えた後、ナトリウムエトキシド(2.43g,35.7mmol)を加えた。反応混合物を5時間還流させた。反応を終えた時点で、混合物を冷水上に注ぎ、そして3N HCl溶液を用いてpHを3に調整した。次に、その溶液をEtOAcで分配し、層を分離した。有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をヘキサンから研和して、4.16g(42%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0144】
NMR (300 MHz) 7.10 - 7.39 (m, 5 H), 5.26 (s, 1 H), 3.82 (s, 2 H), 3.31 (s, 6 H);
m/z 293(M)。
【0145】
方法4
6−ベンジル−7−(ジメトキシメチル)−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン
DMF(20ml)中の5−ベンジル−6−(ジメトキシメチル)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロピリミジン−4(1H)−オン(方法3;2.14g,7.33mmol)の溶液に、KCO(5.5g,40mmol)および1,2−ジブロモエタン(0.76ml,8.79mmol)を加えた。その混合物を、85℃に10時間加熱させた。反応混合物を、水の添加によって急冷し、EtOAcで分配した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上において80〜90%EtOAc/ヘキサンを用いて精製して、0.91g(39%単離収率)の標題化合物および0.83g(35%単離収率)の6−ベンジル−5−(ジメトキシメチル)−2,3−ジヒドロ−7H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−オン6を与えた。
【0146】
NMR (300 MHz) 7.07 - 7.45 (m, 5 H) 5.22 - 5.34 (m, 1 H) 4.41 - 4.55 (m, J=7.72, 7.72 Hz, 2 H) 4.00 (s, 2 H) 3.36 - 3.53 (m, 8 H);
m/z 319(M)。
【0147】
方法5〜6
次の化合物を、方法4の手順により、示されているアルキル化剤を用いて製造した。
【0148】
【表4】

【0149】
方法7
6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−カルバルデヒド
30mlの硫酸水溶液(10%v/v)中の6−ベンジル−7−(ジメトキシメチル)−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン(方法4;1.5g)の混合物を、80℃で15〜30分間加熱した。反応は、出発物質の消費量によって監視した。終了時に、反応混合物をDCMで分配し、層を分離した。有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、1.17g(91%回収収率)の標題化合物を与えた。この化合物を、更に精製することなく用いた。
【0150】
NMR (300 MHz) 9.96 (s, 1 H) 7.02 - 7.37 (m, 5 H) 4.33 - 4.48 (m, 2 H) 4.19 (s, 2 H) 3.37 - 3.46 (m, 2 H)。
【0151】
方法8〜9
次の化合物を、方法7の手順により、示されている出発物質を用いて製造した。
【0152】
【表5】

【0153】
方法10
6−ベンジル−7−(1−ヒドロキシプロピル)−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン
テトラヒドロフラン(15ml)中の6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−カルバルデヒド(方法7;1.17g,4.3mmol)の−40℃の冷溶液に、臭化エチルマグネシウム(THF中1M;5.1ml,5.1mmol)を加えた。反応混合物を−40℃で数時間撹拌させた後、1M NHCl溶液で急冷した。反応混合物をEtOAcで分配し、層を分離した。有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、シリカゲル精製(10%EtOAc/DCM)後、450mg(33%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0154】
NMR 7.06 - 7.24 (m, 5 H) 4.55 (s, 1 H) 4.40 (t, J=7.34 Hz, 2 H) 3.77 (d, J=5.87 Hz, 2 H) 3.39 (t, J=7.83 Hz, 2 H) 3.04 (d, J=8.80 Hz, 1 H) 1.31 - 1.60 (m, 2 H) 0.86 (t, J=7.34 Hz, 3 H);
m/z 303(M)。
【0155】
方法11〜12
次の化合物を、方法10の手順により、示されている出発物質を用いて製造した。
【0156】
【表6】

【0157】
方法13
2−[1−(6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−イル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
THF(13.7ml)中の6−ベンジル−7−(1−ヒドロキシプロピル)−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン(方法10;413mg,1.37mmol)の溶液に、フタルイミド(221mg,1.5mmol)およびトリフェニルホスフィン(393mg,1.5mmol)を加えた。その溶液を0℃に冷却しながら、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)(0.3ml,1.5mmol)を加え、その溶液を低温で30分間撹拌させた。冷却浴を除去し、反応を周囲温度に達しさせた。反応を終えた時点で、混合物を水で急冷し、EtOAcで分配した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、シリカゲル精製(1:1のヘキサン/EtOAc)後、450mgの標題化合物を与えた。
【0158】
M/z 432(M)。
【0159】
方法14〜15
次の化合物を、方法13の手順により、示されている出発物質を用いて製造した。
【0160】
【表7】

【0161】
方法16
7−(1−アミノプロピル)−6−ベンジル−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン
エタノール(10ml)中の2−[1−(6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−イル)プロピル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(方法13;450mg)の溶液を、ヒドラジン水和物(0.2ml,4.18mmol)で処理し、一晩撹拌させた。得られた混合物を、珪藻土のパッドを介して濾過後、数回のエタノール洗浄を行った。濾液を真空中で濃縮して、256mg(2工程で62%全収率)の標題化合物を与え、これを、更に精製することなく用いた。
【0162】
M/z 302(M)。
【0163】
方法17〜18
次の化合物を、方法16の手順により、示されている出発物質を用いて製造した。
【0164】
【表8】

【0165】
方法19
(3−{[1−(6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−イル)プロピル]アミノ}プロピル)カルバミン酸 tert−ブチル
ジクロロエタン(4ml)中の7−(1−アミノプロピル)−6−ベンジル−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン(方法16;256mg,0.85mmol)および(3−オキソプロピル)カルバミン酸 tert−ブチル(162mg,0.93mmol)の混合物に、Na(OAc)BH(198mg,0.93mmol)を加えた。得られた混合物を、周囲温度で一晩撹拌させた。反応混合物を、水および飽和炭酸水素ナトリウム溶液で急冷し、DCMで分配した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上(5%MeOH/DCM)で精製して、150mg(38%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0166】
M/z 459(M)。
【0167】
方法20〜21
次の化合物を、方法19の手順により、示されている出発物質を用いて製造した。
【0168】
【表9】

【0169】
方法22
2,3−ジヒドロ−5−オキソ−6−ベンジル−7−[1−{N−(4−メチルベンゾイル)−N−[3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)プロピル]アミノ}プロピル)−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン
DCM(1.6ml)中の(3−{[1−(6−ベンジル−5−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−7−イル)プロピル]アミノ}プロピル)カルバミン酸 tert−ブチル(方法19;142mg,0.31mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.047ml,0.34mmol)および4−メチルベンゾイルクロリド(0.045ml,0.34mmol)を加えた。反応を終えた時点で、混合物を真空中で濃縮し、そしてシリカゲル上(20%EtOAc/DCM)で精製して、103mg(58%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0170】
M/z 577(M)。
【0171】
方法23〜26
次の化合物を、方法22の手順により、示されている出発物質およびアシル化剤/アルキル化剤を用いて製造した。
【0172】
【表10】

【0173】
方法27
3−ベンジル−2−ジメトキシメチル−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
エタノール(50ml)中の2−ベンジル−4,4−ジメトキシ−3−オキソブタン酸エチル(方法2;5g,17.85mmol)の溶液に、2−イミノピペリジン塩酸塩(1.5eq.,3.60g,26.7mmol)を加えた後、ナトリウムエトキシド(1.21g,17.85mmol)を加えた。反応混合物を、マイクロ波中において120℃で1時間反応させた。反応を終えた時点で、溶液を蒸発乾固させ、EtOAc中に再溶解させた。化合物を、フラッシュクロマトグラフィー(6%MeOH/EtOAc)によって精製して標題化合物(4.03g,12.8mmol)だけを72%収率で生じた。
【0174】
NMR (300 MHz) 7.35-7.15 (m, 5 H) 5.40 (s, 1 H) 4.10 (s, 2 H) 4.00-3.90 (t, 2H), 3.40 (s, 6 H), 3.20 (t, 2 H) 2.10-1.90 (m, 4 H);
m/z 315(M)。
【0175】
方法28
3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−カルバルデヒド
30mlの硫酸水溶液(10%v/v,50ml)中の3−ベンジル−2−ジメトキシメチル−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(方法27;0.40g,1.27mmol)の混合物を、80℃で50分間加熱した。反応は、出発物質の消費量によって監視した。終了時に、反応混合物をDCMで分配し、層を分離した。有機層を、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、0.302g(89%回収収率)の標題化合物を与えた。この化合物を、更に精製することなく用いた。
【0176】
M/z 269(M)。
方法29
3−ベンジル−2−(1−ヒドロキシプロピル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
THF(30ml)中の3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−カルバルデヒド(方法28;0.302g,1.13mmol)の−78℃の冷溶液に、臭化エチルマグネシウム(THF中1M;1.48ml,1.48mmol)を加えた。反応混合物を−78℃で1時間撹拌させた後、1M NHCl溶液で急冷した。反応混合物をEtOAcで分配し、層を分離した。有機層を、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、シリカゲル精製(4%MeOH/EtOAc)後、264mg(2工程による68%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0177】
M/z 299(M)。
【0178】
方法30
3−ベンジル−2−[1−(2−ジメチルアミノエチルアミノ)−プロピル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
3−ベンジル−2−(1−ヒドロキシプロピル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(方法29;40mg,0.134mmol)を、無水DCM(3.5ml)中に溶解させ、そしてこれに、2,6−ルチジン(2eq.,0.268mmol,31μl)および無水トリフルオロ酢酸(1.2eq.,0.161mmol,23μl)を加えた。得られた混合物を、マイクロ波条件下において110℃で30分間反応させた。反応混合物を蒸発乾固させ、無水DCM(3ml)中に再溶解させた。これに、N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(1.2eq.,0.161mmol,1.3mg)およびジイソプロピルエチルアミン(1.2eq.,0.161mmol,28μl)を加えた。得られた混合物を、マイクロ波条件下において80℃で30分間反応させた。反応混合物を蒸発乾固させ、そして残留物を、シリカゲル上(10%MeOH/EtOAc)で精製して、2mg(4%単離収率)の標題化合物を与えた。
【0179】
M/z 369(M)。
【0180】
方法31
次の化合物を、方法30の手順により、3−ベンジル−2−(1−ヒドロキシプロピル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(方法29)および示されているアルキル化剤を用いて製造した。
【0181】
【表11】

【0182】
方法32
次の化合物を、実施例7の手順により、{2−[1−(3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−イル)−プロピルアミノ]−エチル}−カルバミン酸 tert−ブチルエステル(方法31)と、示されているアシル化剤を用いて製造した。
【0183】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、Rは、フルオロであり;
mは、0〜5であり;
は、水素またはメチルであり;
は、炭素連結した−NR−を含有する複素環式環であり、またはRは、−NRで置換されたC1−3アルキルであり;ここにおいて、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;
Xは、−C(O)−または−CH−であり;
環Aは、カルボシクリルまたはヘテロシクリルであり;ここにおいて、環Aは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;そしてここにおいて、該ヘテロシクリルが、追加のNHを含有する場合、その窒素は、Rで置換されていてもよく;
環Bは、示されている式(I)のピリミドン環に縮合していて、5員または6員の縮合炭素環式環または5員または6員の縮合複素環式環であり;ここにおいて、環Bは、炭素上に1個またはそれを超えるR10で置換されていてもよく;そしてここにおいて、該5員または6員の縮合複素環式環が、追加のNHを含有する場合、その窒素は、R11で置換されていてもよく;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルより選択され;
およびRは、独立して、水素またはC1−6アルキルであり;またはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、窒素含有複素環を形成し;ここにおいて、該C1−6アルキルまたは該窒素含有複素環は、独立して、炭素上に1個またはそれを超えるR12で置換されていてもよく;そしてここにおいて、該窒素含有複素環が、追加のNHを含有する場合、その窒素は、R13で置換されていてもよく;
、R10およびR12は、独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−6アルコキシ、C1−6アルカノイル、C1−6アルカノイルオキシ、N−(C1−6アルキル)アミノ、N,N−(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルカノイルアミノ、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、C1−6アルキルS(O)(式中、aは、0〜2である)、C1−6アルコキシカルボニル、N−(C1−6アルキル)スルファモイル、N,N−(C1−6アルキル)スルファモイル、C1−6アルキルスルホニルアミノより選択され;ここにおいて、R、R10およびR12は、独立して、R14で置換されていてもよく;
、R11およびR13は、独立して、C1−6アルキル、C1−6アルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C1−6アルキル)カルバモイル、N,N−(C1−6アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルより選択され;
およびR14は、独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、アセチルアミノ、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メチル−N−エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイルまたはN−メチル−N−エチルスルファモイルより選択される]
を有する化合物;またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
mが0である、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項3】
が水素である、請求項1かまたは請求項2に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項4】
が、−NRで置換されたC1−3アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項5】
Xが−C(O)−である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項6】
Xが−CH−である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項7】
環Aがカルボシクリルであり;ここにおいて、環Aが、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてもよく;ここにおいて、Rが、ハロ、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項8】
環Bが、5員または6員の縮合炭素環式環または5員または6員の縮合複素環式環である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項9】
式(I):
【化2】

[式中、mは0であり;
は水素であり;
は、−NRで置換されたメチルまたはエチルであり;
Xは、−C(O)−または−CH−であり;
環Aは、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、ナフタ−2−イルまたは4−クロロフェニルであり;
環Bおよびそれが結合しているピリミドンは、2,3−ジヒドロ−5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン、3,4−ジヒドロ−6−オキソ−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン、5−オキソ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジンまたは4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−2−イルを形成し;
およびRは、独立して、水素またはメチルである]
を有する化合物;またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項10】
式(I):
【化3】

を有する化合物であって、
2,3−ジヒドロ−5−オキソ−6−ベンジル−7−{1−[N−(4−メチルベンゾイル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン;
3,4−ジヒドロ−6−オキソ−7−ベンジル−8−{1−[N−(4−メチルベンゾイル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン;
3,4−ジヒドロ−6−オキソ−7−ベンジル−8−{1−[N−(4−メチルベンジル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン;
3,4−ジヒドロ−6−オキソ−7−ベンジル−8−{1−[N−(4−メトキシベンゾイル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−2H,6H−ピリミド[2,1−b][1,3]チアジン;
5−オキソ−6−ベンジル−7−{1−[N−(3−フルオロ−4−メチルベンゾイル)−N−(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン;
2−{1−[N−(ナフタ−2−イルカルボニル)−N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル}−3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン;および
2−{1−[N−(4−クロロベンゾイル)−N−(2−ジメチルアミノエチル)アミノ]プロピル}−3−ベンジル−4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン
より選択される化合物;またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項11】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を製造する方法であって、ここにおいて、可変基は、特に断らない限り、請求項1に定義の通りであり、
方法(a)Xが−C(O)−である場合;式(II)
【化4】

を有するキナゾリノンと、式(III):
【化5】

を有する酸またはその活性酸誘導体とを反応させること;
方法(b)Xが−CH−である場合;式(II)の化合物と、式(V):
【化6】

(式中、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物とを反応させること;
方法(c)Rが、−NRで置換されたC1−3アルキルであり且つ炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてよい式(I)の化合物について、式(VI):
【化7】

(式中、Rは、炭素上に1個またはそれを超えるRで置換されていてよいC1−3アルキレンであり;そしてここにおいて、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物と、式(VII):
HNR (VII)
を有する化合物とを反応させること;
方法(d)式(VIII):
【化8】

を有するアミンと、式(IX):
【化9】

(式中、Lは、置換可能な基である)
を有する化合物との反応;そしてその後、必要ならば、
(i)式(I)の化合物を式(I)の別の化合物へと変換させること;
(ii)任意の保護基を除去すること;
(iii)薬学的に許容しうる塩を形成すること
を含んで成る方法。
【請求項12】
医薬組成物であって、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項13】
薬剤として用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項14】
ヒトなどの温血動物のEg5阻害作用の生成に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項15】
ヒトなどの温血動物の抗癌作用の生成に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項16】
脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置に用いるための薬剤の製造における、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項17】
Eg5阻害作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物にEg5阻害作用を生じる方法であって、該動物に、有効量の上に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法。
【請求項18】
抗癌作用を生じる処置を必要としているヒトなどの温血動物に抗癌作用を生じる方法であって、該動物に、有効量の上に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法。
【請求項19】
脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫を処置する方法であって、このような処置を必要としているヒトなどの温血動物に、有効量の前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む方法。
【請求項20】
医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物のEg5阻害作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物であって、ヒトなどの温血動物の抗癌作用の生成に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項22】
本発明のもう一つの側面において、医薬組成物であって、脳、乳房、卵巣、肺、結腸および前立腺の癌、多発性骨髄腫白血病、リンパ腫、中枢および末梢神経系の腫瘍、黒色腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および骨肉腫の処置に用いるための、前に定義の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。

【公表番号】特表2008−506759(P2008−506759A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522018(P2007−522018)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002845
【国際公開番号】WO2006/008523
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】