説明

癌の処置のための4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド

本発明は、式(I):
【化1】


の化合物である、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド、その治療上の使用、およびその結晶化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを含む新規医薬品製剤、および該化合物の新規製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを製造するための方法、該化合物および結晶形の該化合物を含む医薬組成物、さらにはまた、該化合物の治療上の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質キナーゼは、細胞内の広範囲にわたる様々なシグナル伝達過程の制御を担う、構造的に関連のある大きな酵素ファミリーを構成する(Hardie, G. and Hanks, S. (1995) The Protein Kinase Facts Book. I and II, Academic Press, San Diego, CA)。該キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質等)によりファミリーに分類され得る。これらのキナーゼファミリーの各々に一般的に対応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks, S.K., Hunter, T., FASEB J., 9:576-596 (1995); Knighton, et al., Science, 253:407-414 (1991); Hiles, et al., Cell, 70:419-429 (1992); Kunz, et al., Cell, 73:585-596 (1993); Garcia-Bustos, et al., EMBO J., 13:2352-2361 (1994))。
【0003】
タンパク質キナーゼは、それらの調節機構により特徴付けられ得る。これらの機構には、例えば、自己リン酸化、他のキナーゼによるトランスリン酸化、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−脂質相互作用、およびタンパク質−ポリヌクレオチド相互作用が含まれる。個々のタンパク質キナーゼは、1つ以上の機構により調節され得る。
【0004】
キナーゼは、限定されるものではないが、リン酸基を標的タンパク質に付加することにより、増殖、分化、アポトーシス、運動性、転写、翻訳および他のシグナル伝達過程を含む多くの様々な細胞過程を調節する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節することができる分子のオン/オフスイッチとしての役目を果たす。標的タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、増殖および分化因子等)、細胞周期事象、環境または栄養ストレス等に応答して生ずる。適当なタンパク質キナーゼは、シグナル経路において機能して、例えば、代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルもしくはポンプ、または転写因子を(直接的または間接的のいずれかに)活性化するまたは不活性化する。タンパク質リン酸化の制御不全による無制御のシグナル伝達は、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および状態、中枢神経系の疾患および状態、並びに血管形成を含む、多数の疾患に関係している。
【0005】
サイクリン依存性キナーゼ
真核細胞分裂の過程は、G1、S、G2およびMと称される一連の連続期に大別され得る。細胞周期の種々の期を通じての適正な進行は、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)として知られているタンパク質ファミリー、およびサイクリンと称されるそれらの同族タンパク質パートナーの多様な集合の空間的および時期的調節に非常に依存することが示されている。cdkは、ATPを多様なポリペプチドのリン酸化における基質として配列依存的に利用することができるcdc2(cdk1としてもまた知られている)相同セリン−スレオニンキナーゼタンパク質である。サイクリンは、特異的なcdkパートナータンパク質へ結合する際に、また特異的なcdkパートナータンパク質に対する選択性を定義する際に使用される、“サイクリンボックス”と称される約100個のアミノ酸を含む相同領域により特徴付けられるタンパク質ファミリーである。
【0006】
細胞周期を通しての種々のcdkおよびサイクリンの発現レベル、分解率、および活性化レベルの調整は、cdkが酵素的に活性である、一連のcdk/サイクリン複合体の循環形成をもたらす。これらの複合体の形成は、個別の細胞周期チェックポイントを通じての経過を制御し、またそれによって、細胞分裂の過程を継続することが可能になる。所定の細胞周期チェックポイントで必須の生化学的基準を満たさないと、すなわち、必要とされるcdk/サイクリン複合体を形成しないと、細胞周期停止および/または細胞アポトーシスをもたらし得る。癌において現れる異常細胞増殖は、適正な細胞周期制御の喪失に起因し得ることが多い。従って、cdk酵素活性の阻害は、異常に分裂する細胞がそれらの分裂を停止させ得るおよび/または死滅させ得る手段を提供する。cdk、およびcdk複合体、並びに細胞周期を媒介する際の、それらの重要な役割の多様性は、定義された生化学的根拠に基づいて選択される広範囲の可能性のある治療標的を提供する。
【0007】
細胞周期のG1期からS期への進行は、D型およびE型サイクリンのメンバーとの会合を経て、主としてcdk2、cdk3、cdk4およびcdk6により調節される。G1期からS期への移行にはcdk2/サイクリンE複合体が重要であることから、D型サイクリンは、G1制限点を越えての通過を可能とするのに役立つらしい。S期を通じてG2期へと入るその後の進行は、cdk2/サイクリンA複合体を必要とすると考えられる。有糸分裂と、それを誘発するG2期からM期への移行はどちらも、cdk1とA型およびB型サイクリンとの複合体により調節される。
【0008】
G1期の間、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)、およびp130といったような関連ポケットタンパク質は、cdk(2、4および6)/サイクリン複合体に対する基質である。G1を通じての進行は、cdk(4/6)サイクリン−D複合体によるRbおよびp130の過剰リン酸化、また従って、不活性化により幾分促進される。Rbおよびp130の過剰リン酸化は、E2Fといったような転写因子の放出、また従って、サイクリンEに関する遺伝子といったような、G1を通じての進行に、そしてS期へと入るのに必要な遺伝子の発現を引き起こす。サイクリンEの発現は、Rbのさらなるリン酸化を経て、E2Fレベルを増幅するまたは維持するcdk2/サイクリンE複合体の形成を促進する。そのcdk2/サイクリンE複合体はまた、ヒストン生合成に関係しているNPATといったような、DNA複製に必要な他のタンパク質もリン酸化する。G1の進行およびG1/Sの移行はまた、cdk2/サイクリンE経路へと送り込むマイトジェン刺激Myc経路を経ても調節される。cdk2はまた、p21レベルのp53調節を経て、p53が媒介するDNA損傷応答経路にも接続される。p21は、cdk2/サイクリンEのタンパク質阻害剤であり、また従って、G1/Sの移行を遮断するまたは遅延させることができる。従って、そのcdk2/サイクリンE複合体は、Rb、Mycおよびp53経路からの生化学的刺激がある程度統合されるであろうポイントを示し得る。従って、cdk2および/またはcdk2/サイクリンE複合体は、異常に分裂する細胞において、細胞周期を停止させる、または細胞周期の制御を回復させるよう計画された治療のための良好な標的を示す。
【0009】
細胞周期におけるcdk3の正確な役割は明らかではない。同族サイクリンパートナーは、今のところ同定されていないが、cdk3のドミナントネガティブ型は、G1における細胞を遅延させ、それによって、cdk3がG1/Sの移行を調節する役割を有することを示唆している。
【0010】
ほとんどのcdkは、細胞周期の調節に関係しているが、cdkファミリーのあるメンバーが他の生化学的過程に関与するという証拠がある。これは、適正な神経発達に必要であって、Tau、NUDE−1、シナプシン1、DARPP32およびMunc18/シンタキシン1A複合体といったような幾つかの神経タンパク質のリン酸化にもまた関係しているcdk5により実証される。神経cdk5は、通常、p35/p39タンパク質への結合により活性化される。しかしながら、cdk5活性は、p35の切断型であるp25の結合により脱調節され得る。p35のp25への転換、またその後のcdk5活性の脱調節は、虚血、興奮毒性、およびβ−アミロイドペプチドにより誘発され得る。その結果、p25は、アルツハイマー病といったような神経変性疾患の病因に関係しており、また従って、これらの疾患に対して向けられた治療標的として重要である。
【0011】
cdk7は、cdc2 CAK活性を有して、サイクリンHに結合する核タンパク質である。cdk7は、RNAポリメラーゼII C末端ドメイン(CTD)活性を有するTFIIH転写複合体の成分として同定されている。これは、Tatが媒介する生化学的経路を経てのHIV−1転写の調節と関連している。cdk8は、サイクリンCを結合して、RNAポリメラーゼIIのCTDのリン酸化に関係している。同様に、cdk9/サイクリン−T1複合体(P−TEFb複合体)は、RNAポリメラーゼIIの伸長制御に関係している。PTEF−bはまた、ウイルス性トランス活性化因子Tatによる、そのサイクリンT1との相互作用を通じての、HIV−1ゲノムの転写の活性化にも必要とされる。従って、cdk7、cdk8、cdk9およびP−TEFb複合体は、抗ウイルス治療の可能性のある標的である。
【0012】
分子レベルでは、cdk/サイクリン複合体活性の媒介は、一連の刺激的および阻害的リン酸化、または脱リン酸化の事象を必要とする。cdkリン酸化は、cdk活性化キナーゼ(CAK)および/またはwee1、Myt1およびMik1といったようなキナーゼの一群により行われる。脱リン酸化は、cdc25(aおよびc)、pp2a、またはKAPといったようなホスファターゼにより行われる。
【0013】
cdk/サイクリン複合体活性は、内因性細胞タンパク質阻害剤の2つのファミリー:Kip/Cipファミリー、またはINKファミリーによりさらに調節され得る。INKタンパク質は、cdk4およびcdk6を特異的に結合する。p16ink4(MTS1としてもまた知られている)は、大多数の原発性癌において突然変異するまたは欠失する、可能性のある腫瘍抑制遺伝子である。そのKip/Cipファミリーは、p21Cip1,Waf1、p27Kip1およびp57Kip2といったようなタンパク質を含む。先に論じたように、p21は、p53により誘発されて、cdk2/サイクリン(E/A)およびcdk4/サイクリン(D1/D2/D3)複合体を不活性化することができる。乳癌、結腸癌および前立腺癌において、典型的に低いレベルのp27発現が観察されている。逆に、固形癌におけるサイクリンEの過剰発現は、予後不良患者と相互に関連があることが示されている。サイクリンD1の過剰発現は、食道癌、乳癌、扁平上皮癌および非小細胞肺癌と関連している。
【0014】
増殖細胞において細胞周期を調整して操作する際の、cdkおよびそれらの関連タンパク質の極めて重要な役割については、先に概要を述べている。cdkが重要な役割を果たす生化学的経路の幾つかについてもまた記載している。従って、一般的にcdkを、または特異的なcdkを標的とする治療を使用しての、癌といったような増殖性障害の処置のための単剤療法の開発は、非常に望ましい可能性がある。恐らく、cdk阻害剤を使用して、とりわけウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患といったような他の状態を処置することもまたできるであろう。cdkを標的とする治療はまた、既存または新規いずれかの治療剤との併用療法において使用される場合、先に記載した疾患の処置における臨床的有益性も提供し得る。cdkを標的とする抗癌療法は、それらがDNAと直接相互作用せず、また従って、二次性腫瘍発達の危険性を減少させるであろうことから、多くの現在の抗腫瘍剤を超える利点を有する可能性があろう。
【0015】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ
グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK3)は、ヒトにおいて偏在的に発現する2つのイソ型(GSK3αおよびGSK3β)として生ずるセリン−スレオニンキナーゼである。GSK3は、胚発生、タンパク質合成、細胞増殖、細胞分化、微小管動態、細胞運動および細胞アポトーシスにおける役割を有するものとして関係している。GSK3自体は、糖尿病、癌、アルツハイマー病、卒中、癲癇、運動神経疾患および/または頭部外傷といったような病状の進行に関係している。系統発生的に、GSK3は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)に最も密接に関係する。
【0016】
GSK3により認識される共通ペプチド基質配列は、(Ser/Thr)−X−X−X−(pSer/pThr)であり、ここで、Xは、いずれかのアミノ酸((n+1)、(n+2)、(n+3)番目)であって、pSerおよびpThrは各々、ホスホ−セリンおよびホスホ−スレオニン(n+4)である。GSK3は、一番目のセリン、または(n)番目のスレオニンをリン酸化する。(n+4)番目のホスホ−セリンまたはホスホ−スレオニンは、GSK3をプライミングして、最大基質代謝回転を与えるのに必要らしい。Ser21でのGSK3α、またはSer9でのGSK3βのリン酸化は、GSK3の阻害をもたらす。突然変異誘発およびペプチド競合研究は、GSK3のリン酸化N末端が自己阻害機構を経てホスホ−ペプチド基質(S/TXXXpS/pT)と競合することができるモデルを導いている。GSK3αおよびGSKβが各々、チロシン279および216のリン酸化により微妙に調節され得ることを示唆するデータもまたある。これらの残基のPheへの突然変異は、インビボにおけるキナーゼ活性の減少を引き起こした。GSK3βのX線結晶構造は、GSK3の活性化および調節の全態様を明らかとするのに役立っている。
【0017】
GSK3は、哺乳類のインシュリン応答経路の一部を成して、グリコーゲン合成酵素をリン酸化し、またそれによって、不活性化することができる。従って、GSK3の阻害を通じての、グリコーゲン合成酵素活性の上方調節、またそれによるグリコーゲン合成は、II型、またはインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM):身体組織がインシュリン刺激に抵抗性となる状態と闘う、可能性のある方法と考えられている。肝臓、脂肪または筋肉組織における細胞インシュリン応答は、細胞外インシュリン受容体に結合するインシュリンにより誘発される。これは、リン酸化、またその後のインシュリン受容体基質(IRS)タンパク質の細胞膜への補充を引き起こす。IRSタンパク質のさらなるリン酸化は、二次メッセンジャーであるホスファチジルイノシチル3,4,5−三リン酸(PIP3)を遊離することができる、細胞膜へのホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)の補充を開始する。これは、その膜への3−ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ1(PDK1)およびタンパク質キナーゼB(PKBまたはAkt)の共局在化を促進し、ここで、PDK1はPKBを活性化する。PKBは、Ser9またはSer21のリン酸化を通じて、各々、GSK3αおよび/またはGSKβをリン酸化し、またそれによって、阻害することができる。次いで、GSK3の阻害は、グリコーゲン合成酵素活性の上方調節を誘発する。従って、GSK3を阻害することができる治療剤は、インシュリン刺激で見られるものと似通った細胞応答を誘発することができるであろう。GSK3のインビボにおけるさらなる基質は、真核生物のタンパク質合成開始因子2B(eIF2B)である。eIF2Bは、リン酸化を経て不活性化され、また従って、タンパク質生合成を抑制することができる。従って、例えば、“ラパマイシンの哺乳類標的”タンパク質(mTOR)の不活性化によるGSK3の阻害は、タンパク質生合成を上方調節することができる。最後に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ1(MAPKAP−K1またはRSK)といったようなキナーゼによるGSK3のリン酸化を通じての、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を経てのGSK3活性の調節に関して幾つかの証拠がある。これらのデータは、GSK3活性が、分裂促進、インシュリンおよび/またはアミノ酸刺激により調整され得ることを示唆する。
【0018】
GSK3βが脊椎動物のWntシグナル経路における重要な成分であることもまた示されている。この生化学的経路は、正常な胚発生に重要であることが示されており、また正常組織における細胞増殖を調節する。GSK3は、Wnt刺激に応答して阻害されるようになる。これは、Axin、大腸腺腫症(APC)遺伝子産物およびβ−カテニンといったようなGSK3基質のリン酸化をもたらし得る。Wnt経路の異常調節は、多くの癌と関連している。APCおよび/またはβ−カテニンにおける突然変異は、結腸直腸癌および他の腫瘍において一般的である。β−カテニンはまた、細胞接着において重要であることも示されている。従って、GSK3はまた、細胞接着過程もある程度調整し得る。既に記載した生化学的経路とは別に、c−Jun、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα)、c−Mycといったような転写因子および/または活性化T細胞の核因子(NFATc)、熱ショック因子−1(HSF−1)およびc−AMP応答配列結合タンパク質(CREB)といったような他の基質のリン酸化において、GSK3がサイクリン−D1のリン酸化を経て細胞分裂の調節に関係するというデータもまたある。GSK3はまた、組織特異的ではあるが、細胞アポトーシスを調節する役割をも果たすらしい。アポトーシス促進機構を経て細胞アポトーシスを調整するGSK3の役割は、神経細胞アポトーシスが起こり得る病状に特に関連し得る。これらの例は、頭部外傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病および運動神経疾患、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、並びにピック病である。インビトロにおいて、GSK3は、微小管結合タンパク質Tauを高リン酸化することができることが示されている。Tauの高リン酸化は、微小管へのその正常な結合を妨害して、細胞内Tauフィラメントの形成もまた導き得る。これらのフィラメントの進行性蓄積は、最終的には神経機能障害および変性をもたらすと考えられる。従って、GSK3の阻害を通じての、Tauリン酸化の阻害は、神経変性効果を制限するおよび/または防ぐ方法を提供し得る。
【0019】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
細胞周期の進行は、負の細胞周期調節因子である、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、およびCDK阻害剤(CDKi)の複合作用により調節される。p27KIP1は、細胞周期調節において重要なCDKiであり、その分解がG1/Sの移行に必要とされる。増殖リンパ球におけるp27KIP1発現の欠如にもかかわらず、幾つかの侵攻性B細胞リンパ腫は、異常なp27KIP1染色を示すことが報告されている。異常に高いp27KIP1発現は、このタイプのリンパ腫において見い出された。これらの発見の臨床的関連の分析は、このタイプの腫瘍における高レベルのp27KIP1発現が、単変量および多変量分析の両方における悪い予後マーカーであることを示した。これらの結果は、悪い臨床的意義をもって、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)において異常なp27KIP1発現があることを示し、この異常なp27KIP1タンパク質が、他の細胞周期調節因子タンパク質との相互作用を通じて、非機能性とされ得ることを示唆する(Br. J. Cancer. 1999 Jul;80(9):1427-34. p27KIP1 is abnormally expressed in Diffuse Large B-cell Lymphomas and is associated with an adverse clinical outcome. Saez A, Sanchez E, Sanchez-Beato M, Cruz MA, Chacon I, Munoz E, Camacho FI, Martinez-Montero JC, Mollejo M, Garcia JF, Piris MA. Department of Pathology, Virgen de la Salud Hospital, Toledo, Spain.)。
【0020】
慢性リンパ球性白血病
B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)は、西半球において最も一般的な白血病であり、毎年約10,000件の新たな症例が診断されている(Parker SL, Tong T, Bolden S, Wingo PA: Cancer statistics, 1997. Ca. Cancer. J. Clin. 47:5, (1997))。他の形態の白血病に比べて、CLLの全体的な予後は良好であり、最も進行した段階の患者ですら、3年という生存期間中央値を有する。
【0021】
症候性CLL患者に対する初期治療としてのフルダラビンの追加は、これまで使用されてきたアルキル化剤に基づく治療に比べて、より高い完全応答率(3%に対して27% )および無増悪生存期間(17ヶ月に対して33ヶ月)をもたらしている。治療後に完全臨床応答を達成することは、CLLにおける生存を向上させるための初期段階であるが、大多数の患者は、完全寛解を達成しないか、またはフルダラビンに応答しないかのいずれかである。さらにまた、CLLをフルダラビンで処置した患者は全て、最終的には再発し、その単剤としての役割は、単に対症療法的なものとなる(Rai KR, Peterson B, Elias L, Shepherd L, Hines J, Nelson D, Cheson B, Kolitz J, Schiffer CA: A randomized comparison of fludarabine and chlorambucil for patients with previously untreated chronic lymphocytic leukemia. A CALGB SWOG, CTG/NCI-C and ECOG Inter-Group Study. Blood 88:141a, 1996 (abstr 552, suppl 1))。従って、この疾患の治療におけるさらなる進歩が実現されるならば、フルダラビンの細胞毒性を補足して、内因性CLL薬物耐性因子により誘発される耐性を抑止する、新規作用機構を有する新たな薬剤を同定することが必要であろう。
【0022】
最も広範囲にわたって研究されている、CLL患者における治療に対する応答不良および低い生存に関する一定の予測因子は、点突然変異または染色体17p13欠失により特徴付けられる異常なp53機能である。実際には、事実上、アルキル化剤またはプリン類似体治療のいずれかに対する応答は、異常なp53機能を有するそれらのCLL患者に関する複数の単一施設症例集には記述されていない。CLLにおけるp53突然変異と関連した薬物耐性を克服する能力を持つ治療剤の採用は、該疾患の処置に関して大きな進歩となる可能性があろう。
【0023】
サイクリン依存性キナーゼの阻害剤であるフラボピリドールおよびCYC 202は、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)由来の悪性細胞のインビトロにおけるアポトーシスを誘発する。
【0024】
フラボピリドール曝露は結果的に、カスパーゼ3活性の刺激、およびB−CLLにおいて過剰発現される、細胞周期の負の調節因子であるp27(kip1)のカスパーゼ依存性切断をもたらす(Blood. 1998 Nov 15;92(10):3804-16 Flavopiridol induces apoptosis in chronic lymphocytic leukemia cells via activation of caspase-3 without evidence of bcl-2 modulation or dependence on functional p53. Byrd JC, Shinn C, Waselenko JK, Fuchs EJ, Lehman TA, Nguyen PL, Flinn IW, Diehl LF, Sausville E, Grever MR)。
【0025】
デュ・ポン(Du Pont)からのWO 02/34721は、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤として、一群のインデノ[1,2−c]ピラゾール−4−オンを開示している。
【0026】
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb)からのWO 01/81348は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤として、5−チオ−、スルフィニル−およびスルホニルピラゾロ[3,4−b]−ピリジンの使用を記載している。
【0027】
ブリストル・マイヤーズ・スクイブからのWO 00/62778はまた、一群のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤も開示している。
【0028】
サイクラセル(Cyclacel)からのWO 01/72745A1は、2−置換4−ヘテロアリール−ピリミジンおよびそれらの製造、それらを含む医薬組成物、並びにサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の阻害剤としてのそれらの使用、また従って、癌、白血病、乾癬等といったような増殖性障害の処置におけるそれらの使用を記載している。
【0029】
アグロン(Agouron)からのWO 99/21845は、CDK1、CDK2、CDK4およびCDK6といったような、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害するための4−アミノチアゾール誘導体を記載している。その発明はまた、そのような化合物を含む医薬組成物の治療的または予防的使用、並びにそのような化合物の有効量を投与することにより悪性腫瘍および他の障害を処置する方法にも関する。
【0030】
アグロンからのWO 01/53274は、CDKキナーゼ阻害剤として、N含有複素環式基に結合したアミド置換ベンゼン環を含んでなり得る一群の化合物を開示している。
【0031】
WO 01/98290(ファルマシア・アンド・アップジョン(Pharmacia & Upjohn))は、タンパク質キナーゼ阻害剤として、一群の3−アミノカルボニル−2−カルボキサミドチオフェン誘導体を開示している。
【0032】
アグロンからのWO 01/53268およびWO 01/02369は、サイクリン依存性キナーゼまたはチロシンキナーゼといったようなタンパク質キナーゼの阻害を通じて、細胞増殖を媒介するまたは阻害する化合物を開示している。そのアグロンの化合物は、インダゾール環の3位に直接またはCH=CHもしくはCH=N基を通じて結合したアリールまたはヘテロアリール環を有する。
【0033】
WO 00/39108およびWO 02/00651(両方ともデュ・ポン・ファーマシューティカルズ(Du Pont Pharmaceuticals)から)は、トリプシン様セリンプロテアーゼ酵素、とりわけ、Xa因子およびトロンビンの阻害剤である複素環式化合物を記載している。その化合物は、抗凝固剤として、または血栓塞栓性障害の予防に有用であると述べられている。
【0034】
US 2002/0091116(Zhuら)、WO 01/19798およびWO 01/64642は各々、Xa因子の阻害剤として、多様な群の複素環式化合物を開示している。幾つかの1−置換ピラゾールカルボキサミドを開示して、例示している。
【0035】
US 6,127,382、WO 01/70668、WO 00/68191、WO 97/48672、WO 97/19052およびWO 97/19062(全てアラガン(Allergan)から)は各々、癌を含む種々の過剰増殖性疾患の処置において使用するための、レチノイド様活性を有する化合物を記載している。
【0036】
WO 02/070510(バイエル(Bayer))は、心臓血管疾患の処置において使用するための、一群のアミノ−ジカルボン酸化合物を記載している。この文書中、ピラゾールは一般的に言及されているが、ピラゾールの具体例はない。
【0037】
WO 97/03071(クノール・アーゲー(Knoll AG))は、中枢神経系障害の処置において使用するための、一群のヘテロサイクリル−カルボキサミド誘導体を開示している。ピラゾールは複素環式基の例として一般的に言及されているが、具体的なピラゾール化合物は開示されていないし、または例示されていない。
【0038】
WO 97/40017(ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk))は、タンパク質チロシンホスファターゼのモジュレーターである化合物を記載している。
【0039】
WO 03/020217(コネチカット大学(Univ. Connecticut))は、神経学的状態を処置するためのカンナビノイド受容体モジュレーターとして、一群のピラゾール 3−カルボキサミドを開示している。その化合物は、癌化学療法において使用することができると述べられている(15頁)が、その化合物が抗癌剤として活性であるかどうか、またはそれらが他の目的に投与されるかどうかは明らかにされていない。
【0040】
WO 01/58869(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)は、とりわけ、様々な疾患を処置するために使用することができるカンナビノイド受容体モジュレーターを開示している。その主な使用は、呼吸器疾患の処置であるが、癌の処置について触れられている。
【0041】
WO 01/02385(アベンティス・クロップ・サイエンス(Aventis Crop Science))は、殺菌剤として、1−(キノリン−4−イル)−1H−ピラゾール誘導体を開示している。1−非置換ピラゾールは、合成中間体として開示されている。
【0042】
WO 2004/039795(藤沢(Fujisawa))は、アポリポタンパク質B分泌の阻害剤として、1−置換ピラゾール基を含むアミドを開示している。その化合物は、高脂血症といったような状態を処置するのに有用であると述べられている。
【0043】
WO 2004/000318(セルラー・ゲノミクス(Cellular Genomics))は、キナーゼモジュレーターとして、種々のアミノ置換単環を開示している。例示された化合物はどれも、ピラゾールではない。
【0044】
WO 2005/012256(アステックス・テクノロジー・リミテッド(Astex Technology Limited))は、サイクリン依存性キナーゼ(CDKキナーゼ)およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK3)の阻害剤であるとして、化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドおよびその類似体を開示している。
【0045】
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、サイクリン依存性キナーゼ(CDKキナーゼ)およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK3)の阻害剤であるとして、我々の以前の国際特許出願番号PCT/GB2006/000193(この内容は、参照することにより本明細書中に組み込まれる。)に開示されている。その化合物の製造は、PCT/GB2006/000193の実施例1に記載されており、また実施例1における最終段階は、減圧下での溶媒の蒸発による、その化合物の酢酸エチル溶液からの単離を伴う。この方法により製造された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは非晶質であると考えられる。
【発明の開示】
【0046】
発明の要約
結晶形
第一の態様において、本発明は、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0047】
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、式(I):
【化1】

またはその互変異性型を有する。本願において、式(I)の化合物は、その化学名により、または便宜上、“該化合物”、“式(I)の化合物”または“本発明の化合物”と呼ばれ得る。これらの同義語は各々、先の式(I)で示されて、化学名 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを有する化合物を指す。
【0048】
式(I)の化合物は、ピラゾール環における塩基性窒素原子で塩を形成することができるが、実質的には結晶形での該化合物についての言及は、遊離塩基についての言及である。
【0049】
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドについての言及には、文脈がつながる場合、それらの範囲内に、その溶媒和物、互変異性体および同位体が全て含まれる。
【0050】
式(I)の化合物は、多数の様々な幾何異性および互変異性型で存在し得て、式(I)の化合物についての言及には、そのような型が全て含まれる。誤解を避けるために、ある化合物が幾つかの幾何異性または互変異性型のうちの1つで存在し得て、1つだけを具体的に記載するまたは示す場合、それでもなお、他のものは全て、式(I)により包含される。
【0051】
例えば、式(I)の化合物において、そのピラゾール環は、以下の2つの互変異性型AおよびBで存在し得る。簡略化のために、一般式(I)は、A型を説明するが、その式は、両方の互変異性型を包含するものとしてみなされるべきである。
【化2】

【0052】
本発明の化合物にはまた、1つまたはそれ以上の同位体置換を有する化合物も含まれ、またある特定の元素についての言及には、その範囲内に、その元素の同位体が全て含まれる。例えば、水素についての言及には、その範囲内に、H、H(D)およびH(T)が含まれる。同様に、炭素および酸素についての言及には、それらの範囲内に、各々、12C、13Cおよび14C、並びに16Oおよび18Oが含まれる。
【0053】
該同位体は、放射性であっても、または非放射性であってもよい。本発明の一態様において、該化合物は、放射性同位体を含まない。そのような化合物は、治療上の使用に好ましい。しかしながら、別の態様において、該化合物は、1つまたはそれ以上の放射性同位体を含み得る。そのような放射性同位体を含む化合物は、診断上の場面において有用であり得る。
【0054】
本発明の第一態様により、該化合物は、実質的には結晶性であり;すなわち、それは、50%〜100%が結晶性である。
【0055】
より詳しくは、該化合物は、少なくとも55%が結晶性、または少なくとも60%が結晶性、または少なくとも65%が結晶性、または少なくとも70%が結晶性、または少なくとも75%が結晶性、または少なくとも80%が結晶性、または少なくとも85%が結晶性、または少なくとも90%が結晶性、または少なくとも95%が結晶性、または少なくとも98%が結晶性、または少なくとも99%が結晶性、または少なくとも99.5%が結晶性、または少なくとも99.9%が結晶性、例えば、100%が結晶性であり得る。
【0056】
本発明の化合物の結晶形は、溶媒和されていても(例えば、水和されていても)、または溶媒和されていなくても(例えば、無水であっても)よい。
【0057】
本明細書中で使用する“無水”という用語は、該化合物(例えば、該化合物の結晶)の上部または内部に水が幾らか存在する可能性を排除するものではない。例えば、該化合物(例えば、化合物結晶)の表面上に水が幾らか存在していてもよく、または該化合物(例えば、結晶)の本体内に少量存在していてもよい。典型的には、無水型は、化合物1分子につき0.4分子未満の水を含み、またより好ましくは、化合物1分子につき0.1分子未満の水、例えば、0分子の水を含む。
【0058】
一態様において、該化合物は無水である。
【0059】
別の態様において、該化合物は、溶媒和されており、例えば、水和されている。その塩が水和されている場合、それらは、例えば、3分子までの結晶水、より通常は、2分子までの水、例えば、1分子の水または2分子の水を含み得る。存在する水の分子数が1未満である、またはそうでなければ非整数である、不定比水和物もまた形成され得る。例えば、存在する水が1分子未満である場合、例えば、化合物1分子につき存在する水は0.4、または0.5、または0.6、または0.7、または0.8、または0.9分子であり得る。
【0060】
他の溶媒和物には、エタノラートおよびイソプロパノラートといったようなアルコラートが含まれる。
【0061】
本明細書中に記載する結晶形、その結晶およびそれらの結晶構造は、本発明のさらなる態様を成す。
【0062】
該結晶およびそれらの結晶構造は、単結晶X線結晶構造解析、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)および赤外分光法、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を含む多数の技術を使用して特徴付けられ得る。様々な湿度条件下での結晶の挙動は、重量測定蒸気吸着研究により、そしてまたXRPDによっても分析され得る。
【0063】
ある化合物の結晶構造の決定は、本明細書中に記載する方法、またFundamentals of Crystallography, C. Giacovazzo, H. L. Monaco, D. Viterbo, F. Scordari, G. Gilli, G. Zanotti and M. Catti, (International Union of Crystallography/Oxford University Press, 1992 ISBN 0-19-855578-4 (p/b), 0-19-85579-2 (h/b))に記載されている方法といったような、従来の方法に従って行うことができるX線結晶構造解析により行われ得る。この技術は、単結晶のX線回折の分析および解釈を伴う。
【0064】
実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドにおいて、1つの単結晶形が優位であり得るが、他の結晶形は少量、また好ましくは極少量で存在し得る。
【0065】
好ましい態様において、本発明は、単結晶形の無水化合物および5重量%未満のいずれかの他の結晶形の化合物を含む、実質的には結晶形の化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0066】
好ましくは、該単結晶形は、4%未満、または3%未満、または2%未満の他の結晶形を伴い、また特に約1重量%以下の他の結晶形を含む。より好ましくは、該単結晶形は、0.9%未満、または0.8%未満、または0.7%未満、または0.6%未満、または0.5%未満、または0.4%未満、または0.3%未満、または0.2%未満、または0.1%未満、または0.05%未満、または0.01%未満(重量で)の他の結晶形、例えば、0重量%の他の結晶形を伴う。
【0067】
結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、PCT/GB2006/000193に記載されている方法、または本明細書中に記載する方法を使用して、該化合物を合成した後、該化合物を1つまたはそれ以上の再結晶段階にかけることにより製造され得る。
【0068】
本明細書中、“結晶”という用語の使用は、再結晶過程より前に、化合物が結晶形であることを必要としない。それどころか、再結晶過程のための出発物質は、結晶性または一部結晶性であり得るが、あるいはまた、再結晶より前には非晶形であってもよい。
【0069】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの再結晶は、当業者によく知られている方法により行われ得る。よく知られているように、良好な再結晶溶媒は、高温では精製されるべき物質を適度な量溶解するが、より低い温度ではその物質を少量しか溶解するべきではない。それは、不純物を低温で容易に溶解するか、または少しも溶解してはならない。最後に、その溶媒は、精製産物から容易に除去されなければならない。これは、通常、それが比較的低い沸点を有することを意味し、そして当業者は、ある特定の物質のための再結晶溶媒を知っているか、またはもしその情報が得られないなら、適当な溶媒または溶媒混合物が見い出されるまで、幾つかの溶媒を試験するであろう。良好な収率の精製物質を得るためには、不純物質を全て溶解するための熱時溶媒を最少量使用する。実際には、その溶液が飽和しないよう、典型的には、必要量より3−5%多い溶媒が使用される。もしその不純化合物が、その溶媒に不溶性である不純物を含むなら、次いで、それを濾過により除去した後、その溶液を結晶化させるのがよい。加えて、もしその不純化合物が、その化合物には本来ない着色物質を微量含むなら、それらは、その熱時溶液に少量の脱色炭を加え、それを濾過した後、それを結晶化させることにより除去され得る。
【0070】
結晶化は、その溶液を冷却すると自然に起こり得る。しかしながら、もしそれが自然に起こらないなら、次いで、結晶化は、その溶液を室温以下に冷却するか、または純物質の単結晶(種晶)を加えることにより誘発され得る。貧溶媒の使用により、再結晶もまた行われ得て、および/またはその収率もまた最適化され得る。この場合、その化合物を適当な溶媒に高温で溶解し、濾過した後、必要な化合物が低い溶解度を有する溶媒をさらに加えて、結晶化を補助する。次いで、典型的には、減圧濾過を使用して、その結晶を単離し、洗浄した後、例えば、オーブン内で、または乾燥工程(desiccation)を経て乾燥させる。
【0071】
結晶化方法の他の例には、蒸気からの結晶化が含まれ、これには、例えば、封管内または気流中での蒸発段階、および融液からの結晶化が含まれる(Crystallization Technology Handbook 2nd Edition, edited by A. Mersmann, 2001)。
【0072】
本発明の一態様において、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトンおよび水の混合物を使用して、該化合物を再結晶することにより製造される。
【0073】
例えば、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、
(a)その化合物を加熱しながら(例えば、約50℃まで、例えば、40〜50℃の温度に)N,N−ジメチルアセトアミドおよびアセトンの混合物(例えば、体積比1.5:2で)に溶解し;
(b)濾過が必要な場合、場合により、その溶液を浄化し;
(c)加熱を維持しながらまたは増大させながら(例えば、60〜80℃の温度に)、水を加えて、
(d)その溶液を冷却するか、またはその溶液を放冷して、結晶化が起こるようにし;そして
(e)その結晶形の化合物を、例えば、濾過により単離する;
という段階を伴う方法により再結晶し得る。
【0074】
N,N−ジメチルアセトアミド/アセトン/水の溶媒系を使用して製造した4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶は、X線結晶構造解析による特徴付けにかけられている。
【0075】
表1は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶に関する座標データを、結晶学的情報ファイル(Crystallographic Information File)(CIF)形式(Hall, Allen and Brown, Acta Cryst. (1991). A47, 655-685; http://www.iucr.ac.uk/iucr-top/cif/home.htmlを参照)で示す。PDBファイル形式(例えば、EBI巨大分子構造データベース(EBI Macromolecular Structure Database)(ヒンクストン,イギリス)のものと一致する形式)といったような他のファイル形式が使用され得て、または他の当業者により好ましいとされ得る。しかしながら、その表の座標を提示するまたは操作するための別のファイル形式の使用は、本発明の範囲内であることが明らかであろう。該化合物の結晶構造は図1および2で説明され、X線回折研究により作成された該構造の熱楕円表現を図1に提供しており、またパッキング図を図2に提供している。
【0076】
X線結晶構造解析研究から、本発明の化合物は、a=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°の結晶格子定数をもって、C2/c(#15)といったような単斜晶系空間群に属する結晶構造を有することが見い出されている。
【0077】
従って、別の態様において、本発明は、
(a)図1および2に示した結晶構造を有し;および/または
(b)本明細書中の表1における座標により定義された結晶構造を有し;および/または
(c)a=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°での結晶格子定数を有し;および/または
(d)C2/c(#15)といったような単斜晶系空間群に属する結晶構造を有する;
実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0078】
あるいはまた、または加えて、本発明の結晶化合物の結晶構造は、X線粉末回折(XRPD)の固体状態技術により分析され得る。XRPDは、本明細書中に記載する方法(実施例を参照)、またIntroduction to X-ray Powder Diffraction, Ron Jenkins and Robert L. Snyder (John Wiley & Sons, New York, 1996)に記載されている方法といったような、従来の方法に従って行われ得る。XRPD回折図における定義されたピーク(ランダムバックグラウンドノイズに対するものとして)の存在は、該化合物が一定の結晶化度を有することを示す。
【0079】
化合物のX線粉末パターンは、X線回折スペクトルの回折角(2θ)および格子面間隔(d)パラメーターにより特徴付けられる。これらは、ブラッグの式 nλ=2d Sinθ(式中、n=1;λ=使用する陰極の波長;d=格子面間隔;およびθ=回折角)により関係付けられる。ここで、格子面間隔、回折角および全体パターンは、データの特徴により、X線粉末回折における結晶の同定に重要である。相対強度は、結晶成長の方向、粒径および測定条件に応じて変化し得ることから、厳密に解釈されるべきではない。加えて、回折角は、通常、2θ±0.2°の範囲内で一致するものを意味する。ピークは主要ピークを意味し、また先に述べたもの以外の回折角で媒体より大きくないピークが含まれる。
【0080】
N,N−ジメチルアセトアミド/アセトン/水の溶媒系を使用して製造した4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶形は、XRPDにより特徴付けられていて、基本的には、図3に示したX線粉末回折パターンを有する。
【0081】
その粉末X線回折パターンは、回折角(2θ)、格子面間隔(d)および相対強度に関して表される。
【0082】
従って、別の態様において、本発明は、表Aに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)での主要ピークの存在により特徴付けられるX線粉末回折パターンを有する、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
表A
【表1】

【0083】
X線粉末回折パターンは、好ましくは、表Bに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)でのさらなるピークの存在によりさらに特徴付けられる。
表B
【表2】

【0084】
本発明はさらに、図3に示すX線粉末回折パターンのものと同じ回折角でピークを示す、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。好ましくは、そのピークは、図3におけるピークと同じ相対強度を有する。
【0085】
好ましい態様において、本発明は、実質的には図3に示したX線粉末回折パターンを有する、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0086】
本発明の化合物の結晶形はまた、示差走査熱量測定(DSC)によっても特徴付けられ得る。
【0087】
N,N−ジメチルアセトアミド/アセトン/水の溶媒系を使用して製造した4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶形は、DSCにより分析されていて、熱で誘発される結晶格子の溶融を示す吸熱ピークを293−296℃、例えば、294.5−295℃で示す。主な溶融吸熱より前に有意な移行が明らかではないことから、本発明の化合物の結晶形が無水であることを示す。DSC走査を図4に示す。
【0088】
従って、別の態様において、本発明は、無水であって、DSCにかけた場合に、293−296℃、例えば、294.5−295℃で吸熱ピークを示す、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0089】
本発明の化合物の新規結晶形はさらに、赤外分光法、例えば、FTIRにより特徴付けられ得る。
【0090】
N,N−ジメチルアセトアミド/アセトン/水の溶媒系を使用して製造した該化合物の結晶形の赤外スペクトルには、UATR法を使用して分析した場合に、3362、3019、2843、1677、1577、1547、1533、1326、1150、926、781、667cm−1での特徴的なピークが含まれる。
【0091】
いずれかの理論により拘束されようとするものではないが、赤外ピークは、次のように、塩の構造成分に割り当てられ得ると考えられる。
【表3】

【0092】
従って、さらなる態様において、本発明は、ユニバーサル減衰全反射(Universal Attenuated Total Reflectance)(UATR)法を使用して分析した場合に、3362、3019、2843、1677、1577、1547、1533、1326、1150、926、781、667cm−1での特徴的なピークを含む赤外線スペクトルを示す、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0093】
前述の段落から明らかであろうように、本発明の化合物の新規結晶形は、多数の様々な物理化学的パラメーターにより特徴付けられ得る。従って、好ましい態様において、本発明は、次のパラメーターのいずれか1つまたはそれ以上(いずれかの組み合わせにて)または全てにより特徴付けられる、つまり、結晶形が、
(a)図1および2に示した結晶構造を有し;および/または
(b)本明細書中の表1における座標により定義された結晶構造を有し;および/または
(c)a=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°での結晶格子定数を有し;および/または
(d)C2/c(#15)といったような単斜晶系空間群に属する結晶構造を有し;および/または
(e)表A、また場合により表Bに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)での主要ピークの存在により特徴付けられるX線粉末回折パターンを有し;および/または
(f)図3に示すX線粉末回折パターンの回折角と同じ回折角でピークを示し、また場合により、そのピークが図3におけるピークと同じ相対強度を有し;および/または
(g)実質的には図3に示したX線粉末回折パターンを有し;および/または
(h)無水であって、DSCにかけた場合に、293−296℃、例えば、294.5−295℃で吸熱ピークを示し;
(i)ユニバーサル減衰全反射(UATR)法を使用して分析した場合に、3362、3019、2843、1677、1577、1547、1533、1326、1150、926、781、667cm−1での特徴的なピークを含む赤外線スペクトルを示す;
結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを提供する。
【0094】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを製造するための方法
我々の以前の出願PCT/GB2006/00の実施例1において、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、
(i)ジメチルホルムアミド(DMF)中、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下に、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸を4−アミノ−1−tert−ブチルオキシカルボニル−ピペリジンと反応させて、N−boc保護型の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドを得ること;
(ii)塩酸での処理により、そのboc保護基を除去すること;そして
(iii)アセトニトリル中、またジイソプロピルエチルアミンの存在下に、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミド塩酸塩を塩化メタンスルホニルと反応させること;
を含む、一連の段階により製造され得ることを開示している。
【0095】
現在、段階(iii)において第三級アミンを塩基として使用する代わりに、金属炭酸塩または重炭酸塩を塩基として使用して、メシル化段階が行われ得ることが見い出されている。
【0096】
従って、別の態様において、本発明は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを製造するための方法であって、アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下における、極性溶媒中での、式(II):
【化3】

の化合物の塩化メタンスルホニルとの反応;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶することを含んでなる方法を提供する。
【0097】
該塩基は、好ましくは、重炭酸ナトリウムといったようなアルカリ金属重炭酸塩である。
【0098】
該極性溶媒は、水、または水および有機溶媒の混合物、好ましくは、酢酸エチルといったような極性溶媒であり得る。
【0099】
塩化メタンスルホニルとの反応は、0℃〜約30℃まで、より典型的には約12℃〜約28℃まで、例えば、15℃〜25℃の温度で行うのがよい。
【0100】
式(II)の化合物は、最初、N−tert−ブトキシカルボニル(boc)保護化合物(III)の脱保護により形成され得るメタンスルホン酸塩として、反応混合物中に存在し得る。
【化4】

【0101】
最終生成物における相当量のboc保護中間体(III)の存在を最小限にするまたは回避するために、式(II)の化合物をメタンスルホン酸で処理して、50℃またはそれ以上(例えば、80℃もしくはそれ以上、または90℃もしくはそれ以上、例えば、95℃〜105℃)の温度まで加熱した後、冷却して、塩化メタンスルホニルと反応させるのがよい。
【0102】
従って、さらなる態様において、本発明は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、
(a)極性溶媒(例えば、ジオキサン)中、式(III):
【化5】

の化合物をメタンスルホン酸と反応させて、boc基を取り除いて、式(II):
【化6】

の化合物のメタンスルホン酸塩を得ること;
(b)その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩を単離すること;
(c)極性溶媒(例えば、水といったような水性溶媒)中、その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩をメタンスルホン酸で処理して、残っている微量の化合物(III)を化合物(II)に転換すること;そして
(d)アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下、極性溶媒中、段階(c)の生成物を塩化メタンスルホニルと反応させ;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0103】
式(III)の化合物は、我々の以前の出願PCT/GB2004/003179(WO 2005/012256)の実施例237に記載した方法、または我々の以前の出願PCT/GB2006/000193の実施例1に記載した方法に従って、また本明細書中の実施例に記載するように製造され得る。
【0104】
PCT/GB2006/000193の実施例1において、ジメチルホルムアミド(DMF)中、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下に、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸を4−アミノ−1−tert−ブチルオキシカルボニル−ピペリジンと反応させることにより、式(III)の化合物を形成させる。
【0105】
現在、カルボン酸を活性化して、アミド結合の形成を促進するよう、EDCおよひHOBtを使用する代わりに、4−アミノ−1−tert−ブチルオキシカルボニル−ピペリジンを、その代わりとして、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の酸塩化物と反応させ得ることが見い出されている。
【0106】
従って、別の態様において、本発明は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、
(ia)塩基(例えば、第三級アミン−例えば、トリエチルアミンといったような非妨害塩基)の存在下、極性溶媒中、式(IV):
【化7】

の酸塩化化合物を式(V):
【化8】

の化合物と反応させて、式(III):
【化9】

の化合物を得ること;
(a)極性溶媒(例えば、ジオキサン)中、式(III)の化合物をメタンスルホン酸と反応させて、boc基を取り除いて、式(II):
【化10】

の化合物のメタンスルホン酸塩を得ること;
(b)その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩を単離すること;
(c)極性溶媒(例えば、水といったような水性溶媒)中、その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩をメタンスルホン酸で処理して、残っている微量の化合物(III)を化合物(II)に転換すること;そして
(d)アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下、極性溶媒中、段階(c)の生成物を塩化メタンスルホニルと反応させ;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0107】
酸塩化物(IV)は、当業者によく知られている方法に従って、例えば、そのカルボン酸の塩化チオニルでの処理により、または触媒量のジメチルホルムアミドの存在下における塩化オキサリルとの反応により、またはその酸のカリウム塩の塩化オキサリルとの反応により製造され得る。塩化チオニルを使用して、その酸塩化物を生成させる場合、そのカルボン酸との反応は、典型的には、トルエンといったような不活性溶媒の存在下に、50℃を超える温度、例えば、80〜100℃まで加熱しながら行う。
【0108】
式(I)の化合物を製造するための説明に役立つ合成経路をスキーム1に示す。
スキーム1
【化11】

【0109】
別の態様において、本発明は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、式(VI):
【化12】

の化合物の、2,6−ジクロロ安息香酸、または塩化2,6−ジクロロベンゾイルといったようなその活性化誘導体との反応を含んでなる方法を提供する。
【0110】
その酸塩化物との反応は、典型的には、塩基、例えば、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン)といったような非妨害塩基の存在下に行う。その反応は、通常、溶媒、例えば、ジクロロメタンといったようなハロゲン化溶媒、またはトルエンといったような芳香族炭化水素溶媒、またはジオキサンといったような極性非プロトン性溶媒の存在下に、場合により、例えば、約60℃まで、例えば、約45℃までの温度まで穏やかに加熱しながら行う。
【0111】
式(VI)の化合物を2,6−ジクロロ安息香酸と反応させる場合、アミド結合形成は、ペプチド結合の形成において一般的に使用されるタイプのアミドカップリング試薬の使用によりもたらされ得る。そのような試薬の例には、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(Sheehan et al, J. Amer. Chem Soc. 1955, 77, 1067)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(本明細書中ではEDCまたはEDACのいずれかで呼ぶが、当業界ではEDCIおよびWSCDIとしてもまた知られている)(Sheehan et al, J. Org. Chem., 1961, 26, 2525)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU)といったようなウロニウム系カップリング剤、および1−ベンゾ−トリアゾリルオキシトリス−(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)(Castro et al, Tetrahedron Letters, 1990, 31, 205)といったようなホスホニウム系カップリング剤が含まれる。カルボジイミド系カップリング剤を1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(L. A. Carpino, J. Amer. Chem. Soc., 1993, 115, 4397)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(Konig et al, Chem. Ber., 103, 708, 2024-2034)と組み合わせて使用するのが有利である。好ましいカップリング試薬には、HOAtまたはHOBtと組み合わせてのEDC(EDAC)およびDCCが含まれる。
【0112】
そのカップリング反応は、典型的には、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドもしくはN−メチルピロリジンといったような非水性、非プロトン性溶媒中、または場合により、1つまたはそれ以上の混和性共溶媒と合わせた水性溶媒中で行う。その反応は、室温または適当に高温で行うことができる。その反応は、非妨害塩基、例えば、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンといったような第三級アミンの存在下に行うのがよい。
【0113】
式(VI)の中間体を伴う過程により式(I)の化合物を製造するための合成経路をスキーム2で説明する。
スキーム2
【化13】

【0114】
スキーム2において、標準方法を使用して、例えば、酸塩化物を形成させた後、アミン(VIII)と反応させることにより、または先に記載したタイプのアミドカップリング剤を使用することにより、4−ニトロピラゾールカルボン酸(VII)を保護ピペリジンアミン(VIII)と結合させて、アミド(IX)を得る。その反応の間、保護基PGによって、そのピペリジン環窒素を酸(VII)によるアシル化から保護する。
【0115】
そのアミン保護基PGは、先の過程において使用される条件下にアミン基を保護する際の使用に関して知られている、いずれかの保護基であり得る。保護基の例、並びに官能基を保護するおよび脱保護する方法は、Protective Groups in Organic Synthesis(T. Green and P. Wuts; 3rd Edition; John Wiley and Sons, 1999)において見い出され得る。従って、例えば、そのピペリジン環窒素は、アミド(NCO−R)またはウレタン(NCO−OR)として、例えば、メチルアミド(NCO−CH);ベンジルオキシアミド(NCO−OCH、−NH−Cbz);tert−ブトキシアミド(−NCO−OC(CH)、N−Boc);2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(NCO−OC(CH)、N−Bpoc)として、9−フルオレニルメトキシアミド(N−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(N−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(N−Teoc)として、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(N−Troc)として、アリルオキシアミド(N−Alloc)として、または2−(フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−N−Psec)として保護され得る。アミンのための他の保護基には、トルエンスルホニル(トシル)およびメタンスルホニル(メシル)基、並びにpara−メトキシベンジル(PMB)基といったようなベンジル基が含まれる。好ましいアミン保護基は、ウレタン(NCO−OR)、例えば、ベンジルオキシアミド(NCO−OCH5、−NH−Cbz)、またはtert−ブトキシアミド(−NCO−OC(CH)、N−boc);アリルオキシアミド(N−Alloc)またはpara−メトキシベンジル(PMB)基である。特に好ましい保護基PGは、tert−ブチルオキシカルボニル(boc)である。
【0116】
次の段階において、boc基の場合、ジオキサンまたは酢酸エチルといったような極性溶媒中の塩化水素または塩酸での処置といったような酸性条件を使用して、その保護基PGをアミド(IX)から除去して、ピペリジン化合物(X)を得る。
【0117】
その保護基PGの除去後、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン)といったような非妨害塩基の存在下に塩化メタンスルホニルを使用して、ピペリジン環窒素原子をメシル化して、ニトロ化合物(XI)を得る。そのメシル化反応は、典型的には、極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリルもしくはジオキサンもしくはジクロロメタンまたはその混合物)中、中温、例えば、室温で、または例えば、約40−50℃まで穏やかに加熱しながら行う。
【0118】
次いで、パラジウム炭素といったような触媒の存在下に水素を使用する接触水素化により、式(XI)の化合物におけるニトロ基をアミノ基に還元して、アミノ化合物(VI)を得た後、これを先に記載した条件下に2,6−ジクロロ安息香酸または塩化2,6−ジクロロベンゾイルと反応させて、式(I)の化合物を得ることができる。
【0119】
式(I)の化合物を製造するためのさらなる方法は、式(XII):
【化14】

のカルボン酸、または酸塩化物といったようなその活性化誘導体(すなわち、先の化合物(IV))の、式(XIII):
【化15】

の化合物との反応を含んでなる。
【0120】
その反応は、先に記載したアミドカップリング条件下、例えば、DMFといったような極性溶媒中、トリエチルアミンといったような非妨害塩基の存在下に、EDCおよびHOBtをアミドカップリング試薬として使用して行うことができる。
【0121】
該化合物(XIII)およびその塩酸塩は市販されており、または化合物(XIII)は、以下のスキーム3に示す一連の反応により製造され得る。
スキーム3
【化16】

【0122】
スキーム3において、DMFといったような極性溶媒中、トリエチルアミンといったような非妨害塩基の存在下に、典型的には、極端ではない温度、例えば、40−50℃まで加熱しながら、4−ピペリドン一水和物を塩化メタンスルホニルと反応させる。
【0123】
段階2において、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムの存在下にベンジルアミンを使用して、そのメシルピペリドンにおけるカルボニル基を還元的アミノ化にかける。次いで、よく知られている方法、例えば、Pd/C触媒の存在下における水素化により、そのベンジル基を除去して、所望の化合物(XIII)を得ることができる。
【0124】
新規医薬品製剤
本発明の化合物は、良好な経口バイオアベイラビリティを有するが、その経口バイオアベイラビリティは、それを製剤化するという方法により高められ得る。
【0125】
本発明は、迅速に崩壊して、本発明の化合物を容易に吸収される微粉化固溶体の形態で放出する、改良された医薬品製剤を提供する。
【0126】
従って、さらなる態様において、本発明は、
(a)ポリビニルピロリドン中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体;
(b)固体希釈剤;および
(c)崩壊剤;また場合により、
(d)1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤;
の圧縮混合物を含んでなる固形医薬組成物を提供する。
【0127】
該固形医薬組成物は、典型的には、錠剤またはカプセル剤の形態を呈する。
【0128】
一態様において、該固形医薬組成物は錠剤の形態である。
【0129】
別の態様において、該固形医薬組成物は、コーティングされ得るまたはコーティングされ得ない錠剤の形態である。
【0130】
別の態様において、該固形医薬組成物はカプセル剤の形態である。
【0131】
別の態様において、該固形医薬組成物は、硬ゼラチンもしくはHPMCカプセル剤、または軟ゼラチンカプセル剤であり得るカプセル剤の形態であり、特に、それは硬ゼラチンカプセル剤である。
【0132】
該固体分散体(a)は、ポリビニルピロリドン(PVP)中に分散された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを含む。該分散体は、固溶体の形態をとり得るか、またはPVPの周囲マトリックス中に微粉化固体として分散された本発明の化合物からなり得る。
【0133】
PVPは、様々な分子量で利用可能であり、また本発明の製剤における使用のための、ある特定のグレードのPVPは、44,000−54,000の範囲内での分子量を有する。
【0134】
該固体分散体は、典型的には、本発明の化合物およびPVPを、約1:1〜約1:6、より典型的には1:2〜1:4、例えば、比率1:3の重量比で含む。
【0135】
該固体分散体は、本発明の化合物およびPVPを共通溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノールおよびエタノール、並びにその混合物(例えば、比率1:1でのジクロロメタン/エタノール)から選択される溶媒)に溶解した後、その結果得られる溶液を、例えば、回転蒸発器で、または噴霧乾燥で、特に噴霧乾燥で、その溶媒を除去することにより製造され得る。
【0136】
噴霧乾燥させた固体分散体は、それ自体で、典型的には、非常に低い密度を有し、また固体希釈剤は、該組成物の密度を増大させて、それをより圧縮し易くするのに役立つ。その固体希釈剤は、典型的には、糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムといったような非糖由来希釈剤、およびメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースといったようなセルロースまたはその誘導体、およびコーンスターチといったようなデンプンから選択される、薬理学的に不活性な固形物質である。さらなるセルロースまたはセルロース誘導体は、以下に論ずる微結晶性セルロースである。
【0137】
特定の希釈剤は、ラクトースおよびリン酸カルシウムである。特に、該希釈剤は、第二リン酸カルシウムである。
【0138】
崩壊剤は、該医薬組成物の迅速な崩壊および本発明の化合物の放出を引き起こすよう、水に触れると迅速に膨張する物質である。
【0139】
特定の崩壊剤は、当業界で“超崩壊剤”として知られているものであって、架橋カルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウムとしてもまた知られている)、架橋ポリビニルピロリドン(架橋PVPまたはクロスポビドン)、およびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれる。好ましい超崩壊剤の例は、クロスカルメロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムである。
【0140】
本発明の医薬組成物中に含まれ得る他の薬学的に許容され得る賦形剤(d)の例には、希釈剤および崩壊補助剤の両方として作用し得る微結晶性セルロースが含まれる。該組成物の流動性を高め、またそれによって、該組成物が圧縮され得る容易性を改良するために、ケイ化微結晶性セルロース(これは、約1−3%の二酸化ケイ素、典型的には、約2%の二酸化ケイ素を含む)もまた使用され得る。
【0141】
圧縮混合物中に含まれ得る、別の薬学的に許容され得る賦形剤(d)は、重炭酸ナトリウムといったようなアルカリ金属重炭酸塩である。その重炭酸塩は、胃酸と反応して、二酸化炭素を放出し、それによって、該医薬組成物のより迅速な崩壊を促進する。
【0142】
本発明の医薬組成物中に含まれ得る他の薬学的に許容され得る賦形剤(d)の別の例には、圧縮およびカプセル充填過程を補助するよう加え得る、ステアリン酸マグネシウム(例えば、0.1−2%)またはステアリルフマル酸ナトリウム(例えば、0.1−5%)といったような滑沢剤が含まれる。
【0143】
成分(a)〜(d)のある特定の混合物は、
・成分(a)が、比率1:3での、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのPVP中での噴霧乾燥固体分散体であり;
・成分(b)がリン酸カルシウムであり;
・成分(c)がクロスカルメロースであり;そして
・成分(d)がケイ化微結晶性セルロースである;
混合物である。
【0144】
特に、成分(a)〜(d)の混合物は、
・成分(a)が、比率1:3での、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのPVP中での噴霧乾燥固体分散体であり;
・成分(b)が第二リン酸カルシウムであり;
・成分(c)がクロスカルメロースナトリウムであり;そして
・成分(d)がケイ化微結晶性セルロースである;
混合物である。
【0145】
成分(a)〜(c)、また場合により(d)の混合物を圧縮した後、処理して、最終投薬形態を得る。従って、例えば、それを圧縮して、圧縮された固体塊(例えば、リボンまたはペレットの形態で)を得た後、粉砕して、所望の粒径の顆粒を形成させることができる。次いで、その顆粒をカプセルに充填するか、または成型し、そして圧縮して、錠剤を形成させることができる。
【0146】
成分(a)〜(c)、また場合により(d)の混合物は、当業者によく知られている種々の方法によって圧縮することができる。例えば、ローラー圧縮機を使用して、それらを圧縮して、リボンを形成させた後、これを破砕し、そして粉砕して、顆粒を形成させ得る。あるいはまた、錠剤圧縮機を使用して、それらをスラグへと圧縮し、これを破砕し、そして粉砕して、顆粒を形成させ得る。
【0147】
一態様において、本発明は、本明細書中に定義した成分(a)〜(c)、また場合により(d)の粉砕圧縮混合物を含む、カプセル剤の形態での医薬組成物を提供する。
【0148】
別の態様において、本発明は、本明細書中に定義した成分(a)〜(c)、また場合により(d)の圧縮混合物を含んでなる、錠剤の形態での医薬組成物を提供する。
【0149】
本発明の一態様は、
(a)ポリビニルピロリドン中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体;
(b)固体希釈剤;および
(c)崩壊剤;また場合により、
(d)1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤;
の圧縮混合物を含んでなる固形医薬組成物である。
【0150】
該医薬組成物中の固体分散体(a)は、典型的には、該組成物の全重量の10−70% w/wを成す。例えば、その固体分散体は、該組成物の20−60% w/w、または25−55%、または30−50%、または25−40% w/wを成し得る。
【0151】
該組成物中に含まれる賦形剤(b)の量は、5−95%、特に10−70% w/w、とりわけ20−60%、または30−40%、例えば、33−36%の範囲であり得る。化合物/PVPと賦形剤(b)との比率は、典型的には、5:1〜1:5の範囲、特に2:1または1:1の重量比である。
【0152】
該組成物中に含まれる賦形剤(c)の量は、1−30% w/w、特に5−25%、例えば、12−20%といったような、10−25%の範囲であり得る。化合物/PVPと賦形剤(c)との比率は、典型的には、5:1〜1:5の範囲、特に3:1または2:1の重量比である。
【0153】
存在する場合、該組成物中に含まれる賦形剤(d)の量は、0.1−20%、特に1−20% w/w、とりわけ5−15%の範囲、例えば、11または12%であり得る。化合物/PVPと(d)との比率は、典型的には、5:1〜1:5の範囲、特に3:1または2:1の重量比である。
【0154】
従って、さらなる態様において、本発明は、
(a)10−70% w/wの、ポリビニルピロリドン中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体;
(b)10−70% w/wの固体希釈剤;および
(c)1−20% w/wの崩壊剤;また場合により、
(d)1−30% w/wの、1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤;
の圧縮混合物を含んでなる固形医薬組成物を提供する。
【0155】
各々の組成物に関して、個々の成分(a)、(b)、(c)および(d)の重量パーセンテージの合計は、全部で100%になるであろうことが理解されるであろう。
【0156】
一態様において、希釈剤(b)(例えば、第二リン酸カルシウム)は、該医薬組成物の全重量の30−40重量%を含んでなる。
【0157】
一態様において、該医薬組成物は、特に、崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである場合、崩壊剤(c)を10−30%含んでなる。別の態様において、該医薬組成物は、該組成物中に混合したクロスカルメロースナトリウムを10−20%、例えば、12%、またさらに、その混合組成物と混合したクロスカルメロースナトリウムを5−20% wt、例えば、10% wt含んでなる。
【0158】
一態様において、該医薬組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤を10−20%含んでなる。一態様において、そのさらなる薬学的に許容され得る賦形剤は、10−20%のケイ化微結晶性セルロースである。
【0159】
一態様において、(a)および賦形剤(b)の比率は、約1:1である。別の態様において、存在する場合、賦形剤(c)および(d)の比率は、約1:1である。特定の一態様において、該組成物中の全成分の比率((a):(b):(c):(d))は、約3−4:3−4:1−2:1−2、例えば、3.9:3.6:1.2:1.2である。
【0160】
生物活性
式(I)の化合物、すなわち、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤である。例えば、式(I)の化合物は、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6およびCDK9から選択される、またさらにとりわけ、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5およびCDK9から選択される、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤である。
【0161】
式(I)の化合物はまた、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)に対する活性も有する。
【0162】
CDKおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼを調整するまたは阻害する際のそれらの活性の結果として、式(I)の化合物は、異常に分裂する細胞において、細胞周期を停止させる、または細胞周期の調節を回復させる方法を提供するのに有用であろう。従って、該化合物は、癌といったような増殖性障害を処置するまたは予防するのに有用であることが分かるであろう。本発明の化合物はまた、ウイルス感染、II型またはインシュリン非依存性糖尿病、自己免疫疾患、頭部外傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病といったような神経変性疾患、運動神経疾患、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症およびピック病、例えば、自己免疫疾患および神経変性疾患といったような状態を処置するのにも有用であろう。
【0163】
本発明の化合物が有用であろう病状および状態の1つのサブグループは、ウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患からなる。
【0164】
CDKは、細胞周期、アポトーシス、転写、分化およびCNS機能の調節における役割を果たす。従って、CDK阻害剤は、癌といったような、増殖、アポトーシスまたは分化に障害がある疾患の処置において有用であり得るだろう。特に、RB+ve腫瘍は、とりわけ、CDK阻害剤に感受性があり得る。RB−ve腫瘍もまた、CDK阻害剤に感受性があり得る。
【0165】
阻害され得る癌の例には、限定されるものではないが、癌腫、例えば、膀胱、胸部、結腸(例えば、結腸腺癌および結腸腺腫といったような結腸直腸癌)、腎臓、表皮、肝臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓(例えば、外分泌膵臓癌)、胃、頸部、甲状腺、前立腺、または皮膚(例えば、扁平上皮癌)の癌腫;リンパ系の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、またはバーケットリンパ腫;骨髄細胞系列の造血器腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、または前骨髄球性白血病;瀘胞性甲状腺癌;間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉腫(habdomyosarcoma);中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、または神経鞘腫;黒色腫;精上皮腫;奇形癌;骨肉腫;色素性乾皮症;角化棘細胞腫(keratoctanthoma);瀘胞性甲状腺癌;またはカポジ肉腫が含まれる。
【0166】
その癌は、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5およびCDK6から選択される、いずれか1つまたはそれ以上のサイクリン依存性キナーゼ、例えば、CDK1、CDK2、CDK4およびCDK5から選択される、1つまたはそれ以上のCDKキナーゼ、例えば、CDK1および/またはCDK2の阻害に感受性のある癌であり得る。
【0167】
ある特定の癌がサイクリン依存性キナーゼによる阻害に感受性のあるものであるかないかは、以下の実施例に示した細胞増殖アッセイによって、または“診断方法”と題した節に示した方法により判定され得る。
【0168】
CDKはまた、アポトーシス、増殖、分化および転写における役割を果たすことも知られており、また従って、CDK阻害剤はまた、癌以外の、次の疾患の処置においても有用であり得るだろう:ウイルス感染、例えば、ヘルペスウイルス、ポックス・ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、シンドビス・ウイルス、アデノウイルス、HIV、HPV、HCVおよびHCMV;HIV感染個体におけるAIDS発症の予防;慢性炎症性疾患、例えば、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫性糖尿病;心臓血管疾患、例えば、心臓肥大、再狭窄、アテローム性動脈硬化症;神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、AIDS関連の認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atropy)および小脳変性症;糸球体腎炎;骨髄異形成症候群、虚血性傷害関連心筋梗塞、卒中および再灌流障害、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発またはアルコール関連肝疾患、血液系疾患、例えば、慢性貧血および再生不良性貧血;筋骨格系の変性疾患、例えば、骨粗鬆症および関節炎、アスピリン感受性(aspirin-senstive)鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌性疼痛。
【0169】
幾つかのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、他の抗癌剤と組み合わせて使用され得ることもまた発見されている。例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤であるフラボピリドールは、併用療法において他の抗癌剤と共に使用されている。
【0170】
従って、異常細胞増殖を含んでなる疾患または状態を処置するための、本発明の医薬組成物、使用または方法では、一態様において、異常細胞増殖を含んでなる疾患または状態は癌である。
【0171】
癌の1つのグループには、ヒト乳癌(例えば、原発性乳房腫瘍、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳腺腺癌、非類内膜乳癌);およびマントル細胞リンパ腫が含まれる。加えて、他の癌は、結腸直腸および子宮内膜癌である。
【0172】
癌の別のサブセットには、リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫およびB細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)が含まれる。
【0173】
ある特定の癌は、慢性リンパ球性白血病である。
【0174】
別の特定の癌は、マントル細胞リンパ腫である。
【0175】
別の特定の癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0176】
癌の別のサブセットには、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、食道癌、扁平上皮癌および非小細胞肺癌が含まれる。
【0177】
サイクリン依存性キナーゼおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3の阻害剤としての本発明の化合物の活性は、以下の実施例に示すアッセイを使用して測定することができ、またある一定の化合物により示される活性のレベルは、IC50値に換算して定義され得る。
【0178】
本発明の化合物の利点
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、先行技術の化合物より多くの利点を有する。
【0179】
本発明の化合物は、経口暴露に適当な物理化学的特性を有する。
【0180】
本発明の化合物は、HCT−116細胞において、増殖に関するIC50より高い転写に関するIC50を有する:従って、例えば、転写に関するIC50は、増殖に関するIC50より100倍まで高い。これは、該化合物の耐性がより良好であろうことから、それがより高いレベルで、またより長期間にわたり投薬されることを可能にするとして有利である。
【0181】
特に、式(I)の化合物は、先行技術の化合物に比べて、改良された経口バイオアベイラビリティを示す。経口バイオアベイラビリティは、経口経路により投薬した場合の化合物のプラズマ照射と、静脈内(i.v.)経路により投薬した場合の化合物のプラズマ照射との比率(F)として定義され、パーセンテージとして表され得る。
【0182】
30%より大きい、より好ましくは、40%より大きい経口バイオアベイラビリティ(F値)を有する化合物は、それらが非経口投与というよりむしろ経口で、またはさらにはまた、非経口投与により投与され得るという点で、特に有利である。化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、経口経路によりマウスへ投与した場合、30−100%のバイオアベイラビリティ、特に40−50%のバイオアベイラビリティを有する。
【0183】
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、インビトロにおけるより優れたキナーゼ(CDK2)阻害活性、そして癌細胞系に対するより強力な抗増殖効果を有する。加えて、該化合物は、GSK3βに対してより低い活性を有し、またGSK3βよりCDK2に対してより選択的である。従って、該化合物の作用は、CDK阻害を経ての細胞周期効果により支配され、また例えば、インシュリン感受性、増殖因子作用に対するGSK3β阻害のさらなる影響により複雑化されない。従って、該化合物は、より簡潔な細胞周期阻害プロファイル、そしてGSK3βを経てのさらなる効果からのより少ない副作用を有する。該化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの生物学的特性の、その2,6−ジフルオロベンゾイルアミノ類似体の特性との比較を以下の実施例12に示す。
【0184】
サイクリン依存性キナーゼおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3の阻害剤としての本発明の化合物の活性は、以下の実施例に示すアッセイを使用して測定することができ、また示される活性のレベルは、IC50値に換算して定義され得る。
【0185】
従って、例えば、本発明の化合物は、癌の発生を軽減するまたは減少させるのに有用であろう。
【0186】
従って、本発明はまた、とりわけ、次のものも提供する。
【0187】
・サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(好ましくは、サイクリン依存性キナーゼ)により媒介される病状または状態の予防または処置において使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0188】
・哺乳動物において腫瘍増殖を阻害する際に使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0189】
・(例えば、哺乳動物において)腫瘍細胞の増殖を阻害する際に使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0190】
・サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(好ましくは、サイクリン依存性キナーゼ)により媒介される病状または状態の予防または処置方法であって、その必要がある対象に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与することを含んでなる方法。
【0191】
・哺乳動物(例えば、ヒト)において腫瘍増殖を阻害する方法であって、その哺乳動物(例えば、ヒト)に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの有効な腫瘍増殖阻害量を投与することを含んでなる方法。
【0192】
・腫瘍細胞(例えば、ヒトといったような哺乳動物において存在する腫瘍細胞)の増殖を阻害する方法であって、その腫瘍細胞を、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの有効な腫瘍細胞増殖阻害量と接触させることを含んでなる方法。
【0193】
・サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(好ましくは、サイクリン依存性キナーゼ)により媒介される病状または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その必要がある対象に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与することを含んでなる方法。
【0194】
・哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態を処置するための方法であって、その哺乳動物に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、異常細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【0195】
・哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その哺乳動物に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、異常細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【0196】
・哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態を処置するための方法であって、その哺乳動物に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、cdkキナーゼ(例えば、cdk1またはcdk2)またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【0197】
・哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その哺乳動物に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、cdkキナーゼ(例えば、cdk1またはcdk2)またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【0198】
・サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3を阻害する方法であって、該キナーゼを、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドと接触させることを含んでなる方法。
【0199】
・本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを使用して、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(好ましくは、サイクリン依存性キナーゼ)の活性を阻害することにより、細胞過程(例えば、細胞分裂)を調整する方法。
【0200】
・本明細書中に記載した病状の予防または処置において使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0201】
・本明細書中に定義する、いずれか1つまたはそれ以上の使用を目的とした薬物の製造のための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの使用。
【0202】
・本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド、および薬学的に許容され得る担体を含んでなる医薬組成物。
【0203】
・医薬において使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0204】
・先に示した、また本明細書中に他の部分で記載したいずれかの使用および方法を目的とした、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【0205】
・サイクリン依存性キナーゼにより媒介される病状または状態の診断および処置方法であって、
(i)患者をスクリーニングして、その患者が罹患しているまたは罹患しているかもしれない疾患または状態が、サイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物での処置に感受性があろうものであるかどうかを判定すること;そして
(ii)それにより、その患者の疾患または状態には、このような感受性のあることが示された場合、その後、その患者に、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与すること;
を含んでなる方法。
【0206】
・スクリーニングされて、サイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物での処置に感受性があろう疾患または状態に罹患しているまたは罹患する危険性があると判定された患者における病状または状態の処置または予防を目的とした薬物の製造のための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの使用。
【0207】
本出願において、文脈上、特に指示がない場合、式(I)の化合物については、本明細書中に定義した、式(I)のサブグループが全て含まれ、また“サブグループ”という用語には、本明細書中に定義する好ましい事項、態様、実施例および特定の化合物が全て含まれる。文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、本明細書中の式(I)についてはいずれもまた、式(I)の範囲内の化合物のいずれかのサブグループ、並びにそのいずれかの好ましい事項および実施例についてのものであるともみなされるべきである。
【0208】
本明細書中で使用する場合、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK、例えば、GSK−3)の活性に適用する“調整”という用語は、キナーゼの生物活性レベルにおける変化を定義することを意図する。従って、調整は、関連のあるキナーゼ活性における増大または減少をもたらす生理学的変化を包含する。後者の場合、その調整は“阻害”として記載され得る。その調整は、直接的に起こっても、または間接的に起こってもよく、そしていずれかの機構により、また例えば、遺伝子発現(例えば、転写、翻訳および/または翻訳後修飾を含む)のレベル、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)活性のレベルに対して直接的または間接的に作用する遺伝子コード調節エレメントの発現のレベル、または酵素(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3))活性(例えば、アロステリック機構、競合阻害、活性部位の不活性化、フィードバック阻害経路の混乱等による)のレベルを含むいずれかの生理学的レベルで媒介され得る。従って、調整は、遺伝子増幅(すなわち、同義遺伝子コピー)および/または転写効果による発現増大もしくは減少を含むサイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の発現上昇/抑制または過剰もしくは過少発現、さらにはまた、突然変異による((非)活性化を含む)サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の活動性亢進(または低下)および(非)活性化という意味を含み得る。“調整される”、“調整すること”および“調整する”という用語は、適宜解釈されるべきである。
【0209】
本明細書中で使用する場合、例えば、本明細書中に記載したサイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)と関連して使用する(例えば、種々の生理学的過程、疾患、状況、状態、治療、処置または診療に適用する)場合、“媒介される”という用語は、その用語を適用する種々の過程、疾患、状況、状態、処置および診断が、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)が生物学的役割を果たすものであるよう、限定的に操作することを意図する。その用語を、疾患、状況または状態に適用する場合、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)により果たされる生物学的役割は、直接的であっても、または間接的であってもよく、また疾患、状況または状態の症状の兆候(またはその病因もしくは進行)に必要および/または十分であり得る。従って、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)活性(また特に、異常レベルのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)活性、例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の過剰発現)は、必ずしも、疾患、状況または状態の近位原因である必要はない;むしろ、CDKおよび/またはGSK(例えば、GSK−3)が媒介する疾患、状況または状態には、CDKおよび/またはGSK−3を部分的にしか伴わない、多元的病因および複雑な進行を有するものが含まれると考えられる。その用語を、処置、予防または診療に(例えば、本発明の“CDKが媒介する処置”および“GSK−3が媒介する予防”において)適用する場合、CDKおよび/またはGSK−3により果たされる役割は、直接的であっても、または間接的であってもよく、また処置、予防または診療結果の操作に必要および/または十分であり得る。従って、本明細書中に記載したサイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)により媒介される病状または状態には、いずれかの特定の抗癌薬または処置に対する耐性(特に、本明細書中に記載する、1つまたはそれ以上の補助化合物に対する耐性を含む)の発現の結果として起こっている病状または状態が含まれる。
【0210】
医薬品製剤
本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド、または本発明の新規過程により製造される4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドに関して、単独で投与することは可能であるが、該化合物は、医薬組成物(例えば、製剤)の形態で存在するのが好ましい。
【0211】
医薬組成物の特定の例を“新規医薬品製剤”と題した先の節に記載する。しかしながら、より一般的な基準では、化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、1つまたはそれ以上の薬学的に許容され得る担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者によく知られている他の物質と共に、医薬組成物に製剤化することができる。該組成物にはまた、他の治療または予防剤、例えば、化学療法と関連した副作用の幾つかを減少させるまたは軽減する薬剤が含まれていてもよい。そのような薬剤の特定の例には、制吐剤、および化学療法と関連した好中球減少の期間を予防するまたは減少させて、赤血球または白血球のレベル減少から起こる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が含まれる。
【0212】
従って、本発明はさらに、先に定義した医薬組成物、および本発明の化合物、例えば、実質的には結晶形での化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、本明細書中に記載した、1つまたはそれ以上の薬学的に許容され得る担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または他の物質と共に混合することを含んでなる、医薬組成物を製造する方法を提供する。
【0213】
本明細書中で使用する“薬学的に許容され得る”という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なくして、対象(例えば、ヒト)の組織と接触させての使用に適当であり、妥当な利益/損益比に見合った、化合物、物質、組成物、および/または投薬形態に関係する。各々の担体、賦形剤等はまた、その製剤の他の成分と適合性があるという意味でも“許容され得る”でなければならない。
【0214】
従って、さらなる態様において、本発明は、実質的には結晶形での化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、医薬組成物、すなわち、固形または半固形製剤の形態で提供する。
【0215】
該医薬組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、眼、耳、直腸、膣内、または経皮投与に適当ないずれかの形態であり得る。該組成物が非経口投与を意図する場合、それらは、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下投与のために、または注射、輸液もしくは他の送達方法による標的臓器もしくは組織への直接送達のために製剤化され得る。その送達は、ボーラス注射、短期間の輸液または長期間の輸液によるものであり得て、また受動的送達を経るもの、または適当な輸液ポンプの利用を通じてのものであり得る。
【0216】
非経口投与に適した医薬品製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、共溶媒、界面活性剤、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、乳化剤(エマルション製剤を形成させて安定させるための)、リポソームを形成させるためのリポソーム成分、ポリマーゲルを形成させるためのゲル化(gellable)ポリマー、凍結乾燥保護剤、またとりわけ、活性成分を可溶型で安定させて、その製剤を意図するレシピエントの血液と等張にするための薬剤の組み合わせを含み得る、水性および非水性滅菌注射溶液が含まれる。非経口投与のための医薬品製剤はまた、懸濁化剤および増粘剤が含まれ得る、水性および非水性滅菌懸濁液の形態をもとり得る(R. G. Strickly, Solubilizing Excipients in oral and injectable formulations, Pharmaceutical Research, Vol 21(2) 2004, p 201-230)。
【0217】
イオン化できる薬物分子は、もしその薬物のpKaが製剤のpH値から十分離れているなら、pH調整により所望の濃度まで可溶化され得る。静脈内および筋肉内投与に関して、その許容範囲はpH2−12であるが、皮下では、その範囲はpH2.7−9.0である。溶液のpHは、その薬物の塩形態、塩酸もしくは水酸化ナトリウムといったような強酸/塩基のいずれかにより、または限定されるものではないが、グリシン、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、もしくは炭酸塩から形成される緩衝液が含まれる緩衝剤の溶液により制御される。
【0218】
水溶液と水溶性有機溶媒/界面活性剤(すなわち、共溶媒)の組み合わせは、注射製剤において使用されることが多い。注射製剤において使用される水溶性有機溶媒および界面活性剤には、限定されるものではないが、プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;ファーマソルブ(Pharmasolve))、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ソルトール(Solutol)HS15、クレモファー(Cremophor)EL、クレモファーRH60、およびポリソルベート80が含まれる。そのような製剤は、通常、常にというわけではないが、注射前に希釈され得る。
【0219】
プロピレングリコール、PEG 300、エタノール、クレモファーEL、クレモファーRH60、およびポリソルベート80は、市販の注射製剤において使用される完全に有機物の水混和性溶媒および界面活性剤であって、互いに組み合わせて使用され得る。その結果得られる有機製剤は、通常、IVボーラスまたはIV輸液前に少なくとも2倍希釈される。
【0220】
あるいはまた、水溶性の増大は、シクロデキストリンとの分子複合体形成を通じて達成され得る。
【0221】
リポソームは、外側の脂質二重膜と内側の水性核から成り、また全径が100μm未満である、閉じられた球形小胞である。疎水性のレベルにより、中程度に疎水性の薬物は、もしその薬物がリポソーム内に封入されるまたは挿入されるようになるなら、リポソームにより可溶化され得る。疎水性薬物もまた、もしその薬物分子が脂質二重膜の不可欠な部分となるなら、リポソームにより可溶化され得て、この場合、その疎水性薬物を脂質二重層の脂質部分に溶解する。典型的なリポソーム製剤は、5−20mg/mlでのリン脂質、等張剤(isotonicifier)、pH5−8の緩衝剤、また場合により、コレステロールと共に、水を含む。
【0222】
その製剤は、単位用量または多回用量容器、例えば、密閉アンプル、バイアルおよびプレ充填シリンジで存在し得て、使用直前に、滅菌液担体、例えば、注射用水の添加しか必要としない、フリーズ・ドライされた(凍結乾燥された)状態で保存するのがよい。
【0223】
その医薬品製剤は、本発明の化合物を凍結乾燥させることにより製造され得る。凍結乾燥は、組成物をフリーズ・ドライする手順を指す。従って、本明細書中、フリーズ・ドライおよび凍結乾燥を同義語として使用する。典型的な過程は、該化合物を可溶化して、その結果得られる製剤を浄化し、滅菌濾過して、凍結乾燥に適当な容器(例えば、バイアル)へ無菌的に移すことである。バイアルの場合、それらは、リオ・ストッパー(lyo-stoppers)で部分的に栓をする。その製剤を冷却して凍結させ、標準状態下で凍結乾燥にかけた後、密閉栓をして、安定で乾燥した凍結乾燥製剤を形成させることができる。その組成物は、典型的には、残留水含有量が低く、例えば、凍結乾燥物の重量に基づき、5重量%未満、例えば、1重量%未満であろう。
【0224】
その凍結乾燥製剤は、他の賦形剤、例えば、増粘剤、分散剤、緩衝剤、抗酸化剤、保存剤、および等張性調整剤を含み得る。典型的な緩衝剤には、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩およびグリシンが含まれる。抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオ尿素、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、およびエチレンジアミン四酢酸塩が含まれる。保存剤には、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムが含まれ得る。もし必要なら、等張性調整に関して、先に言及した緩衝剤、さらにはまた、デキストロースおよび塩化ナトリウムを使用することができる。
【0225】
凍結乾燥技術において、その過程を促進する、および/または凍結乾燥ケークに嵩および/または機械的完全性を与えるために、増量剤が一般的に使用される。増量剤は、該化合物またはその塩と共に同時凍結乾燥させた場合、物理的に安定な凍結乾燥ケーク、より最適なフリーズ・ドライ過程、および迅速かつ完全な再構成を与える、水に溶けやすい固体粒子希釈剤を意味する。該増量剤はまた、溶液を等張とするためにも利用され得る。
【0226】
水溶性増量剤は、典型的には、凍結乾燥に使用される、薬学的に許容され得る不活性固形物質のいずれかであり得る。そのような増量剤には、例えば、グルコース、マルトース、スクロース、トレハロースおよびラクトースといったような糖類;ソルビトールまたはマンニトールといったような多価アルコール;グリシンといったようなアミノ酸;ポリビニルピロリジンといったようなポリマー;並びにデキストランといったような多糖類が含まれる。
【0227】
活性化合物の重量に対する増量剤の重量の比率は、典型的には、約1〜約5、例えば、約1〜約3の範囲内、例えば、約1〜2の範囲である。
【0228】
あるいはまた、それは、適当なバイアル中で濃縮されて密閉され得る溶液の形態で提供され得る。投薬形態の滅菌は、製剤過程の適当な段階での、濾過を経てのもの、またはバイアルおよびそれらの内容物の高圧蒸気殺菌法によるものであり得る。供給される製剤は、送達前に、さらなる希釈または調製、例えば、適当な滅菌輸液パックへの希釈を必要とし得る。
【0229】
即時注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0230】
経口投与に適当な医薬品投薬形態が好ましく、またそのような製剤には、錠剤(例えば、コーティングされた、またはコーティングされていない)、カプセル剤(例えば、殻の固い、または殻の軟らかい)、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、ウエハー剤、またはバッカルパッチといったようなパッチ剤が含まれる。
【0231】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、既知の技術(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAを参照)に従って製剤化され得る。
【0232】
従って、錠剤組成物は、糖または糖アルコールといったような不活性希釈剤または担体、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および/または炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムといったような非糖由来希釈剤、または微結晶性セルロース(MCC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースといったようなセルロースもしくはその誘導体、およびコーンスターチといったようなデンプンと共に、単位投薬量の活性化合物を含み得る。錠剤はまた、結合および造粒剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースといったような膨潤性架橋ポリマー)、平滑剤(例えば、ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、抗酸化剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸またはクエン酸緩衝液)、並びに発泡剤(例えば、クエン酸塩/重炭酸塩の混合物)といったような標準成分も含み得る。そのような賦形剤はよく知られており、またここで詳しく論ずる必要はない。
【0233】
カプセル製剤は、硬ゼラチンまたは軟ゼラチン種のものであってよく、また活性成分を、固体、半固体、または液体の形態で含み得る。ゼラチンカプセル剤は、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の同等物から形成され得る。
【0234】
固形投薬形態(例えば、錠剤、カプセル剤等)は、コーティングされ得るか、またはコーティングされ得ず、しかし、典型的には、コーティング、例えば、保護膜コーティング(例えば、ポリマー、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングを有する。そのコーティング(例えば、ユードラジット(Eudragit)(商標)型ポリマー)は、活性成分を胃腸管内の所望の位置で放出するよう計画され得る。従って、そのコーティングは、あるpH条件下に胃腸管内で分解し、それによって、胃において、または回腸もしくは十二指腸において、化合物を選択的に放出するよう選択され得る。
【0235】
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、薬物は、放出制御剤、例えば、化合物を胃腸管において制御された方法で放出するのに適し得る放出遅延剤を含んでなる固体マトリックス中に存在し得るか、または薬物は、放出制御剤、例えば、様々な酸性度もしくはアルカリ度の条件下に化合物を胃腸管において選択的に放出するのに適し得る放出遅延剤を含んでなる、ポリマーコーティング、例えば、ポリメタクリル酸ポリマーコーティング中に存在し得る。あるいはまた、そのマトリックス物質または放出遅延コーティングは、実質的には、その投薬形態が胃腸管を通過すると連続的に侵食される、侵食可能なポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとり得る。さらなる代替法として、その活性化合物は、該化合物の放出の浸透圧制御を与える送達システムで製剤化され得る。浸透圧放出および他の遅延放出または徐放性製剤は、当業者によく知られている方法に従って製造され得る。
【0236】
該医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは約20%〜約90%の活性成分を含んでなる。本発明による医薬組成物は、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤またはカプセル剤の形態といったような、単位用量形態であるのがよい。
【0237】
経口投与のための医薬組成物は、活性成分を固体担体と混ぜ合わせ、もし所望なら、その結果得られる混合物を造粒して、もし所望または必要なら、適当な賦形剤を加えた後、その混合物を錠剤、糖衣錠核またはカプセル剤へと加工することにより得ることができる。それらに関して、活性成分が測定量で拡散するまたは放出されるのを可能とするプラスチック担体へと組み入れることもまた可能である。
【0238】
本発明の化合物はまた、固体分散体としても製剤化され得る。固体分散体は、2つまたはそれ以上の固体の、均一で極めて微細な分散相である。固体分散体の1つのタイプである固溶体(分子状の分散系)は、製薬技術での使用に関してよく知られており(Chiou and Riegelman, J. Pharm. Sci., 60, 1281-1300 (1971)を参照)、そして溶解速度を増大させるのに、また水難溶性薬物のバイオアベイラビリティを増大させるのに有用である。
【0239】
薬物の固体分散体は、一般的には、溶融または溶媒蒸発法により製造される。溶融加工に関して、通常、本来は半固体およびワックス様である物質(賦形剤)を加熱して、薬物物質の溶融および溶解を引き起こした後、非常に低い温度まで冷却することにより硬化させる。次いで、その固体分散体を粉砕し、篩過し、賦形剤と混合して、硬ゼラチンカプセルへと封入するか、または錠剤へと圧縮する。あるいはまた、界面活性および自己乳化担体の使用は、固体分散体を溶融物として硬ゼラチンカプセルへと直接封入するのを可能とする。あるいはまた、ワックスまたは低融点ポリマーの使用は、固体分散体を溶融物として硬または軟ゼラチンカプセルへと直接封入するのを可能とする。その溶融物を室温まで冷却すると、カプセルの内側に固体プラグが形成される。
【0240】
固溶体はまた、薬物および必要な賦形剤を、水溶液または薬学的に許容され得る有機溶媒のいずれかに溶解した後、噴霧乾燥といったような、薬学的に許容され得る方法を使用して、その溶媒を除去することによっても製造され得る。もし必要なら、その結果得られる固形物質を粒子の大きさとし、場合により、賦形剤と混合して、錠剤にするか、またはカプセルに充填することができる。
【0241】
そのような固体分散体または固溶体を製造するのに特に適当なポリマー補助剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0242】
該医薬組成物は、実質的には非晶質の固溶体を含んでなり得て、該固溶体は、
(a)式(I)の化合物、例えば、実施例1の化合物;および
(b)ポリビニルピロリドン(ポビドン)、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、ゼラチン、架橋ポリアクリル酸(カルボマー)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸塩コポリマー、並びにメタクリル酸のナトリウムおよびアンモニウム塩およびメタクリル酸塩コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびアルギン酸プロピレングリールといったような水溶性塩よりなる群から選択されるポリマー;
を含んでなり、ここで、該化合物と該ポリマーとの比率は、クロロホルムまたはジクロロメタンのうちの1つとメタノールまたはエタノールのうちの1つとの混合物、好ましくは1:1の比率でのジクロロメタン/エタノールから噴霧乾燥させて、約1:1〜約1:6、例えば、1:3の比率である。
【0243】
別の態様において、該医薬組成物は、実質的には非晶質の固溶体を含んでなり得て、該固溶体は、
(a)式(I)の化合物、例えば、実施例1の化合物;および
(b)ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン、架橋ポリアクリル酸(カルボマー)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸塩コポリマー、並びにメタクリル酸のナトリウムおよびアンモニウム塩およびメタクリル酸塩コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびアルギン酸プロピレングリールといったような水溶性塩よりなる群から選択されるポリマー;
を含んでなり、ここで、該化合物と該ポリマーとの比率は、クロロホルムまたはジクロロメタンのうちの1つとメタノールまたはエタノールのうちの1つとの混合物、好ましくは1:1の比率でのジクロロメタン/エタノールから噴霧乾燥させて、約1:1〜約1:6、例えば、1:3の比率である。
【0244】
本発明はまた、先に記載した固溶体を含んでなる固形投薬形態も提供する。固形投薬形態には、錠剤、カプセル剤およびチュアブル錠が含まれる。既知の賦形剤を該固溶体と混合して、所望の投薬形態を与えることができる。例えば、あるカプセル剤は、(a)崩壊剤および滑沢剤、または(b)崩壊剤、滑沢剤および界面活性剤と混合した固溶体を含み得る。加えて、あるカプセル剤はまた、例えば、ラクトースまたは微結晶性セルロースといったような増量剤も含み得る。ある錠剤は、少なくとも1つの崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、および流動促進剤と混合した固溶体を含み得る。あるチュアブル錠は、増量剤、滑沢剤、またもし所望なら、さらなる甘味剤(例えば、人工甘味料)、および適当な香料と混合した固溶体を含み得る。
【0245】
該医薬品製剤は、1つのパッケージ、通常、ブリスター・パックに全処置コースを含む“患者パック”で患者に差し出され得る。患者パックは、患者が、通常、患者の処方には欠けている、患者パックに含まれる添付文書を常に利用できるという点で、薬剤師がバルク供給から患者の医薬品供給を分けるという伝統的処方に優る利点を有する。添付文書の封入により、患者のコンプライアンスが医師の指示で改善されることが示されている。
【0246】
局所使用および鼻腔送達のための組成物には、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤、パッチ剤、ゲル剤、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が含まれる。そのような組成物は、既知の方法に従って製剤化され得る。
【0247】
非経口投与のための組成物は、典型的には、滅菌水溶液もしくは油性溶液または微細懸濁液として存在するか、または注射用滅菌水で即座に調合するために、微粉化滅菌粉末の形態で与えられ得る。
【0248】
直腸または膣内投与のための製剤の例には、例えば、活性化合物を含む、成形鋳造可能なまたはワックス様の物質から形成され得る、ペッサリーおよび坐剤が含まれる。
【0249】
吸入による投与のための組成物は、吸入可能な粉末組成物または液体もしくは粉末スプレーの形態をとり得て、粉末吸入器装置またはエアロゾル分配装置を使用する標準形態で投与され得る。そのような装置はよく知られている。吸入による投与のために、粉末化製剤は、典型的には、ラクトースといったような不活性固体粉末化希釈剤と共に、活性化合物を含んでなる。
【0250】
本発明の化合物は、一般的には、単位投薬形態で存在するであろうし、またそれ自体で、典型的には、所望の生物活性レベルを与えるのに十分な化合物を含むであろう。例えば、ある製剤は、1ナノグラムから2グラムまでの活性成分、例えば、1ナノグラムから2ミリグラムまでの活性成分を含み得る。この範囲内で、化合物の特定の部分的範囲は、0.1ミリグラム〜2グラムの活性成分(より通常は、10ミリグラムから1グラムまで、例えば、50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム〜2ミリグラムの活性成分)である。
【0251】
経口組成物に関して、単位投薬形態は、1ミリグラムから2グラムまで、より典型的には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜1グラム、例えば、100ミリグラム〜1グラムの活性化合物を含み得る。
【0252】
該活性化合物は、それを必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物の患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与されるであろう。
【0253】
処置方法
本発明の化合物は、サイクリン依存性キナーゼおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3により媒介される、様々な病状または状態の予防または処置において有用であろう。そのような病状および状態の例を先に示す。
【0254】
該化合物は、一般的には、そのような投与を必要とする対象、例えば、ヒトまたは動物の患者、好ましくはヒトに投与される。
【0255】
該化合物は、典型的には、治療的にまたは予防的に有用であって、一般的には毒性のない量で投与される。しかしながら、ある状況において(例えば、生命にかかわる疾患の場合)、本発明の化合物を投与することの有益性は、幾つかの有毒作用または副作用の不利益を上回り得て、その場合、化合物をある程度の毒性と関連する量で投与するのが望ましいと考えられ得る。
【0256】
該化合物は、有益な治療効果を維持するよう長期間にわたり投与されてもよいし、または短期間しか投与されなくてもよい。あるいはまた、該化合物は、連続的な方法で、または持続的な間欠投薬方法(例えば、パルス法)で投与され得る。
【0257】
式(I)の化合物の典型的な一日量は、体重1キログラムあたり100ピコグラムから100ミリグラムまで、より典型的には、体重1キログラムあたり5ナノグラム〜25ミリグラム、またより通常は、体重1キログラムあたり10ナノグラム〜15ミリグラム(例えば、10ナノグラム〜10ミリグラム、またより典型的には、1キログラムあたり1マイクログラム〜1キログラムあたり20ミリグラム、例えば、1キログラムあたり1マイクログラム〜10ミリグラム)の範囲であり得るが、必要とされる場合には、より高いまたはより低い用量が投与され得る。式(I)の化合物は、1日1回で、または例えば、2日、もしくは3日、もしくは4日、もしくは5日、もしくは6日、もしくは7日、もしくは10日、もしくは14日、もしくは21日、もしくは28日毎の反復単位で投与され得る。
【0258】
本発明の化合物は、例えば、1〜1500mg、2〜800mg、または5〜500mg、例えば、2〜200mg、または10〜1000mgの用量範囲で経口投与され得て、用量の特定例には、10、20、50および80mgが含まれる。該化合物は、一日一回または一回以上投与され得る。該化合物は、連続的に投与(すなわち、処置計画期間中は中断することなく毎日服用)され得る。あるいはまた、該化合物は、間欠的に投与され得る、すなわち、処置計画期間を通して、一週間といったような一定期間連続的に服用され、次いで、一週間といったような期間中断された後、一週間等といったような別の期間連続的に服用され得る。間欠投与が関与する処置計画の例には、投与を、1週間実行して、1週間休止する;または2週間実行して、1週間休止する;または3週間実行して、1週間休止する;または2週間実行して、2週間休止する;または4週間実行して、2週間休止する;または1週間実行して、3週間休止する;というサイクルで、1またはそれ以上のサイクル、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれ以上のサイクルである計画が含まれる。
【0259】
しかしながら、最終的には、投与する化合物の量、および使用する組成物のタイプは、処置する疾患または生理学的状態の性質に見合うであろうし、医師の判断であろう。
【0260】
本明細書中に定義した式(I)の化合物およびサブグループは、単独の治療剤として投与され得るか、またはそれらは、併用療法において、ある特定の病状、例えば、本明細書中で先に定義した癌といったような腫瘍性疾患の処置のための、1つまたはそれ以上の他の化合物と共に投与され得る。本発明の化合物と共に(同時に、または様々な時間間隔で)投与され得るまたは使用され得る他の治療剤または治療の例には、限定されるものではないが、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、DNA結合剤、微小管阻害剤(チューブリン標的剤)、モノクローナル抗体およびシグナル伝達阻害剤が含まれ、特定例は、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5FU、タキサン類、マイトマイシンCおよび放射線療法である。
【0261】
本明細書中に定義した化合物は、単独の治療剤として投与され得るか、またはそれらは、併用療法において、ある特定の病状、例えば、本明細書中で先に定義した癌といったような腫瘍性疾患の処置のための、1つまたはそれ以上の他の化合物と共に投与され得る。式(I)の化合物と共に(同時に、または様々な時間間隔で)投与され得る他の治療剤または処置の例には、限定されるものではないが、次のものが含まれる。
・トポイソメラーゼI阻害剤;
・代謝拮抗剤;
・チューブリン標的剤;
・DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤;
・アルキル化剤;
・モノクローナル抗体;
・抗ホルモン剤;
・シグナル伝達阻害剤;
・プロテアソーム阻害剤;
・DNAメチルトランスフェラーゼ;
・サイトカインおよびレチノイド;
・クロマチン標的療法;
・放射線療法;および
・他の治療または予防剤;例えば、化学療法と関連した副作用の幾つかを減少させるまたは軽減する薬剤。そのような薬剤の特定の例には、制吐剤、および化学療法と関連した好中球減少の期間を予防するまたは減少させて、赤血球または白血球のレベル減少から起こる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が含まれる。ビスホスホネート剤、例えば、ゾレドロネート、パミドロネートおよびイバンドロネートといったような骨吸収を阻害する薬剤、炎症反応を抑制する薬剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、およびプレドニゾロン)、並びに脳ホルモンであるソマトスタチンの合成型といったような、末端肥大症患者における成長ホルモンおよびIGF−Iの血中レベルを減少させるのに使用される薬剤もまた含まれ、これには、天然ホルモンであるソマトスタチンのものとよく似た薬理学的特性をもつ、長時間作用性のオクタペプチドである酢酸オクトレオチドが含まれる。葉酸のレベルを減少させる薬物に対する解毒剤として使用されるロイコボリンといったような薬剤、または葉酸それ自体、並びに浮腫および血栓塞栓症の発症が含まれる副作用の処置に使用され得る酢酸メゲストロールといったような薬剤がさらに含まれる。
【0262】
CDK阻害剤を他の治療と組み合わせる場合、2つまたはそれ以上の処置が、個々に異なる用量計画で、また様々な経路を経て施され得る。
【0263】
併用療法において、式(I)の化合物を、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上(好ましくは、1つまたは2つ、より好ましくは、1つ)の他の治療剤と共に投与する場合、該化合物は、同時に、または連続的に投与され得る。連続的に投与する場合、それらは、密な時間間隔で(例えば、5−10分間で)、またはより長い間隔で(例えば、1時間、2時間、3時間、4時間もしくはそれ以上おいて、または必要とされる場合には、さらにより長い期間おいて)投与され得て、その厳密な投薬計画は、治療剤の特性に見合う。
【0264】
本発明の化合物はまた、放射線療法、光線力学治療、遺伝子治療といったような非化学療法処置;手術およびコントロール食とも関連して投与され得る。
【0265】
別の化学療法剤との併用療法における使用に関して、式(I)の化合物、および1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の他の治療剤は、例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の治療剤を含む投薬形態で共に製剤化され得る。代替法において、個々の治療剤は、別々に製剤化されて、場合により、それらの使用説明書と共に、キットの形態で一緒に提示され得る。
【0266】
当業者は、各自共通の一般知識を通じて、使用するための投薬計画および併用療法を知るであろう。
【0267】
診断方法
式(I)の化合物を投与する前に、患者をスクリーニングして、その患者が罹患しているまたは罹患しているかもしれない疾患または状態が、サイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物での処置に感受性があろうものであるかどうかを判定するのがよい。
【0268】
例えば、患者から採取した生体試料を分析して、その患者が罹患しているまたは罹患しているかもしれない、癌といったような疾患または状態が、CDKの過剰活性化または正常なCDK活性への経路の感作をもたらす、遺伝的異常または異常タンパク質発現により特徴付けられるものであるかどうかを判定することができる。結果的にCDK2シグナルの活性化または感作をもたらす、そのような異常の例には、サイクリンEの上方調節(Harwell RM, Mull BB, Porter DC, Keyomarsi K.; J Biol Chem. 2004 Mar 26;279(13):12695-705)、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在(Rajagopalan H, Jallepalli PV, Rago C, Velculescu VE, Kinzler KW, Vogelstein B, Lengauer C.; Nature. 2004 Mar 4;428(6978):77-81)が含まれる。CDC4の突然変異体、またはサイクリンEの上方調節、特に過剰発現、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に感受性があり得る。上方調節という用語には、遺伝子増幅(すなわち、同義遺伝子コピー)を含む発現上昇または過剰発現、および転写効果による発現増大、並びに突然変異による活性化を含む活動性亢進および活性化が含まれる。
【0269】
従って、その患者は、サイクリンEの上方調節、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在に特徴的なマーカーを検出するための診断テストを受けるのがよい。診断という用語には、スクリーニングが含まれる。マーカーには、例えば、CDC4の突然変異を同定するためのDNA組成の測定を含む遺伝子マーカーが含まれる。マーカーという用語にはまた、酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化されているまたはされていない)、および前述のタンパク質のmRNAレベルを含むサイクリンEの上方調節に特徴的であるマーカーも含まれる。サイクリンEの上方調節、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に感受性があり得る。処置する前に、腫瘍を、サイクリンEの上方調節、またはp21もしくはp27の欠損に関して優先的にスクリーニングするのがよい。従って、その患者は、サイクリンEの上方調節、またはp21もしくはp27の欠損に特徴的なマーカーを検出するための診断テストを受けるのがよい。
【0270】
その診断テストは、典型的には、腫瘍生検試料、血液試料(剥離した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、喀痰、染色体分析、胸膜液、腹水、または尿から選択される生体試料に対して行われる。
【0271】
ヒト結腸直腸癌および子宮内膜癌(Spruck et al, Cancer Res. 2002 Aug 15;62(16):4535-9)において、突然変異がCDC4(Fbw7またはArchipelagoとしてもまた知られている)に存在したことが見い出されている(Rajagopalan et al (Nature. 2004 Mar 4;428(6978):77-81))。CDC4に突然変異をもつ個体の同定は、その患者がCDK阻害剤での処置に特に適当であろうことを意味し得る。処置する前に、腫瘍を、CDC4変異体の存在に関して優先的にスクリーニングするのがよい。そのスクリーニング過程には、典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または突然変異特異的抗体を伴うであろう。
【0272】
タンパク質の突然変異および上方調節の同定および分析方法は、当業者によく知られている。スクリーニング方法には、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションといったような標準方法が含まれ得るであろう。
【0273】
RT−PCRによるスクリーニングでは、mRNAのcDNAコピーを作成した後、そのcDNAをPCRによって増幅することより、腫瘍におけるmRNAのレベルを評価する。PCR増幅方法、プライマー選択、および増幅条件は、当業者によく知られている。例えば、Ausubel, F.M. et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 2004, John Wiley & Sons Inc.、またはInnis, M.A. et-al., eds. PCR Protocols: a guide to methods and applications, 1990, Academic Press, San Diegoに記載されている標準方法により、核酸操作およびPCRを行う。核酸技術を伴う反応および操作はまた、Sambrook et al., 2001, 3rd Ed, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressにも記載されている。あるいはまた、RT−PCRのための市販のキット(例えば、ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))、または米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号;同第5,272,057号;同第5,882,864号;および同第6,218,529号(参照により本明細書中に組み込まれる)に示された方法が使用され得る。
【0274】
mRNA発現を評価するためのin situハイブリダイゼーション技術の例は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)であろう(Angerer, 1987 Meth. Enzymol., 152: 649を参照)。
【0275】
一般的には、in situハイブリダイゼーションは、次の主要段階を含んでなる:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の近接性を増大させるための、また非特異的結合を減少させるための、試料のプレハイブリダイゼーション処理;(3)その核酸混合物の、生物学的構造または組織における核酸へのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸フラグメントを除去するためのポストハイブリダイゼーション洗浄;および(5)ハイブリッド形成した核酸フラグメントの検出。そのような適用において使用するプローブは、典型的には、例えば、放射性同位体または蛍光レポーターで標識化される。好ましいプローブは、厳しい条件下に標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするよう十分長い、例えば、約50、100、または200ヌクレオチドから約1000またはそれ以上までのヌクレオチドである。FISHを行うための標準方法は、Ausubel, F.M. et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 2004, John Wiley & Sons Inc and Fluorescence In Situ Hybridization: Technical Overview by John M. S. Bartlett in Molecular Diagnosis of Cancer, Methods and Protocols, 2nd ed.; ISBN: 1-59259-760-2; March 2004, pps. 077-088; Series: Methods in Molecular Medicineに記載されている。
【0276】
あるいはまた、mRNAから発現されたタンパク質産物は、腫瘍試料の免疫組織化学、マイクロタイタープレートでの固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット法、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリー、および特異的タンパク質の検出に関して当業界で知られている他の方法によりアッセイされ得る。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれるであろう。当業者は、サイクリンEの上方調節、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の検出のための、そのようなよく知られている技術が全て、本発明の場合において適用可能であり得るだろうことを認識するであろう。
【0277】
従って、これらの技術を全て使用して、本発明の化合物での処置に特に適当な腫瘍を同定することもまたできるであろう。
【0278】
CDC4の突然変異、またはサイクリンEの上方調節、特に過剰発現、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に感受性があり得る。処置する前に、腫瘍を、サイクリンEの上方調節、特に過剰発現(Harwell RM, Mull BB, Porter DC, Keyomarsi K.; J Biol Chem. 2004 Mar 26;279(13):12695-705)、またはp21もしくはp27の欠損に関して、またはCDC4変異体に関して優先的にスクリーニングするのがよい(Rajagopalan H, Jallepalli PV, Rago C, Velculescu VE, Kinzler KW, Vogelstein B, Lengauer C.; Nature. 2004 Mar 4;428(6978):77-81)。
【0279】
本明細書中に概要を述べる診断テストを使用して、マントル細胞リンパ腫(MCL)をもつ患者が、本発明の化合物での処置に対して選択され得るであろう。MCLは、CD5およびCD20の同時発現、侵攻性で治療不可能な臨床経過、並びに頻繁なt(11;14)(q13;q32)の転座を伴う、小型〜中型のリンパ球の増殖により特徴付けられる、非ホジキンリンパ腫の明白な臨床病理学的疾患単位である。マントル細胞リンパ腫(MCL)において見出されるサイクリンD1 mRNAの過剰発現は、重要な診断マーカーである。Yatabeら(Blood. 2000 Apr 1;95(7):2253-61)は、サイクリンD1陽性がMCLに関する標準基準の1つとして含められるべきであるということ、またこの治療不可能な疾患に対する革新的治療が新たな基準に基づいて探求されるべきであることを提唱した。Jonesら(J Mol Diagn. 2004 May;6(2):84-9)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の診断を補助するための、サイクリンD1(CCND1)発現に関するリアルタイムの定量的な逆転写PCRアッセイを開発した。Howeら(Clin Chem. 2004 Jan;50(1):80-7)は、リアルタイムの定量的なRT−PCRを使用して、サイクリンD1 mRNA発現を評価し、またCD19 mRNAに対して標準化されたサイクリンD1 mRNAに関する定量的なRT−PCRは、血液、髄、および組織中のMCLの診断において使用され得ることを見出した。あるいはまた、先に概要を述べた診断テストを使用して、乳癌を患う患者が、CDK阻害剤での処置に対して選択され得るであろう。腫瘍細胞は、一般的にサイクリンEを過剰発現し、またサイクリンEは、乳癌において過剰発現されることが示されている(Harwell et al, Cancer Res, 2000, 60, 481-489)。従って、乳癌は、特に本明細書中に提供するCDK阻害剤で処置され得る。
【0280】
図面の簡単な説明
図1は、単結晶X線回折研究により決定される、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの三次元構造の描写である。
【0281】
図2は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのX線回折研究により作成された該構造のグラフィカル表示である。
【0282】
図3は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのX線粉末回折図である。
【0283】
図4は、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのDSC走査である。
【0284】
図5は、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの熱重量分析により得られた重量損失プロファイルである。
【0285】
図6は、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの蒸気吸着/脱着プロファイルである。
【0286】
図7は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体を含む幾つかの製剤に関する、時間に対する溶解度のグラフであり、ここで、(1)は、さらなる賦形剤を含まないPVPおよび式(I)の化合物の非封入化固体分散体を示し;(2)は、サイズ0のカプセルにぎっしり詰めた固体分散体(1)を示し;そして(3)は、製剤化試料を示す。
【実施例】
【0287】
実施例
次の実施例に記載する具体的な態様を参照することにより、ここに本発明を説明するが、限定されるものではない。
【0288】
実施例1
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドおよびその結晶の合成
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、先のスキーム1で説明した、また以下により詳細に記載する合成順序により製造され得る。
【0289】
段階1:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの製造
【化17】

機械式撹拌機、冷却器および温度計を備えたフランジフラスコに、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.350Kg、8.59Mol、1.0wt)およびメタノール(10.80L、8.0vol)を入れた。その懸濁液を窒素下に0〜5℃まで冷却して、この温度で塩化チオニル(0.702L、9.62Mol、0.52vol)を加えた。その混合物を16〜24時間かけて15〜25℃まで温めた。反応の完了をH NMR分析(d−DMSO)により判定した。その混合物を減圧下に35〜45℃で濃縮して、その残留物にトルエン(2.70L、2.0vol)を入れて、減圧下に35〜45℃で除去した。トルエン(2.70L、2.0vol)を使用して、そのトルエン共沸混合物を2回繰り返して、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル[1.467Kg、99.8%th、108.7% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、同伴溶媒なし]をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0290】
段階2:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの製造
【化18】

4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.467Kg、8.57Mol、1.0wt)およびエタノール(14.70L、10.0vol)の懸濁液を加熱して、完全な溶解が起こるまで、30〜35℃で維持した。10% パラジウム/炭素(10% Pd/C 湿潤ペースト、0.205Kg、0.14wt)を窒素下に分離フラスコへ入れて、減圧/窒素パージサイクルを行った(×3)。エタノール中の4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの溶液を触媒に入れて、減圧/窒素パージサイクルを繰り返した(×3)。減圧/水素パージサイクルを行って(×3)、その反応物を水素雰囲気下に置いた。H NMR分析(d−DMSO)により完了と判断されるまで、その反応混合物を28〜30℃で撹拌した。その混合物を窒素下に濾過して、減圧下に35〜45℃で濃縮して、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル[1.184Kg、97.9%th、80.7% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、0.27% w/w 同伴エタノールに対して補正した]をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0291】
段階3:4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの製造
【化19】

窒素下、15〜25℃での1,4−ジオキサン(10.66L、9.0vol)中の4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.184Kg、8.39Mol、1.0wt)の溶液に、トリエチルアミン(1.42L、10.20Mol、1.2vol)を加えた。塩化2,6−ジクロロベンゾイル(1.33L、9.28Mol、1.12vol)を15〜25℃で入れた後、1,4−ジオキサン(1.18L、1.0vol)のライン洗浄を行って、その反応混合物を15〜25℃で14〜24時間撹拌した。反応の完了をH NMR分析により判定した。その反応混合物を濾過し、フィルターケークを1,4−ジオキサン(2×1.18L、2×1.0vol)で洗浄して、合わせた濾液をさらに単離することなく段階4へと進めた。
(注) その反応混合物の試料を濾過し、濾液をd−DMSOに溶解して、H NMRスペクトルを得た。
【0292】
段階4:4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の製造
【化20】

35〜45℃での2M 水酸化ナトリウム水溶液(7.19L、14.38Mol、5.5vol)に、1,4−ジオキサン(6.47L、5.0vol)中の4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.308Kg、4.16Mol、1.0wt)の溶液を一度に入れた。その反応混合物を14〜24時間かけて15〜25℃まで冷却した。反応の完了をTLC分析により判定した。その反応混合物を減圧下に45〜50℃で濃縮した。その結果得られた油性残留物を水(11.77L、9.0vol)で希釈して、15〜30℃で濃塩酸水溶液を用いてpH1まで酸性にした。沈殿物を濾過により集め、水(5.88L、4.5vol)で洗浄し、フィルター上で吸引乾燥させて(pulled dry)、ヘプタン(5.88L、4.5vol)での置換洗浄液を加えた。フィルターケークを20Lの回転蒸発器フラスコに入れて、トルエン(2×5.23L、2×4.0vol)と共沸乾燥させて(azeo-dried)、4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸[1.207Kg、96.6%th、92.3% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、HPLC領域により98.31%]を黄色の固形物質として得た。
(注) 溶離液:酢酸エチル。UV可視化。Rfエステル0.5、Rf段階40.0。
【0293】
段階5:4−{[4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボニル]アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの製造
【化21】

窒素下、16〜25℃でのトルエン(8.00L、10.0vol)中の4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(0.806Kg、2.69Mol、1.0wt)の撹拌懸濁液に、塩化チオニル(0.25L、3.43Mol、0.3vol)を加えた。次いで、その内容物を加熱して、80〜100℃で16〜24時間撹拌した。反応の完了をH NMR分析により判定した。その反応混合物を40〜50℃まで冷却し、減圧下に45〜50℃で濃縮乾燥させて、残留物を減圧下に45〜50℃でトルエン(3×1.60L、3×2.0vol)と共沸乾燥させて、白色の固形物質を得た。その固形物質を適当な容器に移し、テトラヒドロフラン(4.00L、5.0vol)を入れ、その内容物を窒素下に撹拌して、トリエチルアミン(0.42L、3.01Mol、0.512vol)を16〜25℃で加えた。次いで、その反応フラスコに、テトラヒドロフラン(4.00L、5.0vol)中の4−アミノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.569Kg、2.84Mol、0.704wt)の溶液を16〜30℃で加えて、その反応混合物を加熱して、45〜50℃で2〜16時間撹拌した。反応の完了をH NMR分析により判定した。その反応混合物を16〜25℃まで冷却して、水(4.00L、5.0vol)および混合ヘプタン(0.40L、0.5vol)でクエンチした。その内容物を10分以内で撹拌し、層を分離して、水相をテトラヒドロフラン:混合ヘプタン[(9:1)、3×4.00L、3×5.0vol]で抽出した。合わせた有機相を水(1.81L、2.5vol)で洗浄して、減圧下に40〜45℃で濃縮した。残留物をトルエン(3×4.00L、3×5.0vol)と共沸乾燥させて、粗製の4−{[4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボニル]アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.257Kg、97.1%th、156.0% w/w、0.90% w/w 同伴溶媒に対して補正した)を得た。幾つかの化合物バッチをこのように製造して、そのバッチを精製のために合わせた。
【0294】
粗製の4−{[4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボニル]アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.22Mol、1.0wt)、トルエン(12.00L、4.87vol)およびメタノール(0.30L、0.13vol)を窒素下に16〜25℃で3〜18時間撹拌した。固形物質を濾過により単離し、フィルターケークをトルエン(2×1.60L、2×0.7vol)で洗浄して、減圧下に40〜50℃で乾燥させて、4−{[4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボニル]アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル[2.242Kg、86.6%th、139.2% w/w、H NMR(d−DMSO)一致した、HPLC領域により99.41%]をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0295】
段階6:4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドメタンスルホン酸塩の製造
【化22】

4−{[4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボニル]アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.561Kg、1.16Mol、1.0wt)および1,4−ジオキサン(14.00L、26.0vol)を窒素下に撹拌して、80〜90℃まで加熱した。メタンスルホン酸(0.30L、4.62Mol、0.54vol)を80〜90℃で30〜60分かけて加えて、その内容物を加熱して、95〜105℃で1〜24時間維持した。反応の完了をH NMR分析により判定した。その反応混合物を20〜30℃まで冷却して、その結果得られた沈殿物を濾過により集めた。フィルターケークをプロパン−2−オール(2×1.10L、2×2.0vol)で洗浄して、フィルター上で3〜24時間吸引乾燥させて、4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドメタンスルホン酸塩[0.558Kg、100.2%th、99.4% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、HPLC領域により98.13%]をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0296】
段階7:4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造
【化23】

15〜40℃での水(5.60L、10.0vol)中の4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドメタンスルホン酸塩(0.562Kg、1.17Mol、1.0wt)の撹拌懸濁液に、メタンスルホン酸(0.055L、0.85Mol、0.1vol)を加えた。その反応混合物を加熱して、95〜105℃で80〜100分間撹拌した。反応の完了をHPLC分析により判定した。その混合物を15〜20℃まで冷却して、炭酸水素ナトリウム(1.224Kg、14.57Mol、2.18wt)を15〜25℃で入れた後、酢酸エチル(4.20L、7.5vol)を入れて、必要に応じて、温度を15〜25℃に調節した。塩化メタンスルホニル(0.455L、5.88Mol、0.81vol)を15〜25℃で120〜180分かけて5つのアリコートで加えて、その反応混合物をさらに30〜45分間撹拌した。反応の完了をHPLC分析により判定した。酢酸エチルを減圧下に35〜45℃で除去し、その結果得られたスラリーを濾過し、フィルターケークを水(0.56L、1.0vol)で洗浄して、適当な大きさのフラスコに移した。水(2.81L、5.0vol)を入れて、その混合物を15〜25℃で30〜40分間撹拌した後、濾過し、フィルターケークを水(0.56L、1.0vol)で洗浄して、パッド上で1〜24時間吸引乾燥させた。集めた固形物質を減圧下に40〜50℃で乾燥させて、粗製の4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド[0.490Kg、90.7%th、87.2% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、HPLC領域により98.05%]をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0297】
段階8:4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの再結晶
【化24】

粗製の4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド(5.506Kg、11.96Mol、1.0wt)、N,N−ジメチルアセトアミド(8.00L、1.5vol)およびアセトン(11.00L、2.0vol)を窒素下に撹拌して、40〜50℃まで加熱した。その結果得られた溶液をガラス超極細繊維紙を通じての濾過により浄化して、濾液を60〜80℃まで加熱した。還流をずっと維持するように、水(10.50L、2.0vol)を60〜80℃で加えた。その混合物を冷却して、15〜25℃で14〜24時間寝かせ、結晶化した固形物質を濾過により単離し、フィルターケークを水(6.00L、1.0vol)で洗浄して、適当な容器に移した。水(11.00L、2.0vol)を入れ、その混合物を15〜25℃で30〜40分間撹拌した後、濾過した。フィルターケークを水(6.00L、1.0vol)で洗浄して、フィルター上で少なくとも30分間吸引乾燥させた。固形物質を減圧下に40〜50℃で乾燥させて、4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド[4.530Kg、82.3%th、82.3% w/w、H NMR(d−DMSO)構造と一致した、HPLC領域により99.29%]を白色の固形物質として得た。
【0298】
実施例2
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの別途合成
【0299】
段階1:4−[(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの合成
【化25】

N−ニトロピラゾール−3−カルボン酸(20.0g、127.4mmol)をCHCl/DMF(99:1、400mL)に懸濁させ、塩化オキサリル(11.6mL、134mmol)で慎重に処理した後、室温で16時間撹拌した。その反応混合物を蒸発させた後、トルエンと共に再蒸発させて(×3)、黄色の固形物質を得た。その結果得られた酸塩化物をジオキサン(400mL)に懸濁させ、トリエチルアミン(26.4mL、190mmol)で処理した後、4−アミノ−1−BOC−ピペリジン(25.0g、125mmol)で処理して、室温で6時間撹拌した。その反応混合物を濾過して、集めた固形物質を水(500mL)中で撹拌した後、再び濾過した。集めた固形物質を減圧下に乾燥させ、トルエンと共沸して、標記化合物(37.6g)を得た。
【0300】
段階2:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミドの合成
【化26】

4−[(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(20.0g、59.0mmol)をジオキサン−CHCl(1:1、400ml)に懸濁させて、ジオキサン中の4M HCl(100mL)で処理した。その混合物を室温で16時間撹拌して、形成された固形物質を濾過により集めて、減圧下に乾燥させて、標記化合物(13.8g)を白色の固形物質として得た。
【0301】
段階3:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの合成
【化27】

ジオキサン−アセトニトリル(1:1、250mL)中の4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸ピペリジン−4−イルアミド(13.7g、50.0mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(17.4mL、125mmol)を加えた後、塩化メタンスルホニル(4.26mL、55.0mmol)を加えた。その混合物を45℃で5時間撹拌した後、減圧下に減量させた。残留物に、水(500mL)を加え、その混合物を20分間撹拌して、固形物質を濾過により集めて、減圧下に乾燥させ、トルエンと共沸して(×3)、標記化合物(12.8g)をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0302】
段階4:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの合成
【化28】

4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド(5.0g)をDMF(30mL)に溶解し、10% パラジウム炭素(0.5g)で処理した後、反応が完了するまで、室温および45psiで水素化した。その反応混合物をセライトを通じて濾過して、減圧下に減量させた。残留物を水(200mL)でトリチュレートして、その結果得られた固形物質を濾過により集めて、減圧下に乾燥させ、トルエンと共沸して(×3)、標記化合物(3.5g)を主要生成物として得た。
【0303】
段階5:4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの合成
【化29】

45℃でのジオキサン(50mL)中の4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド(3.4g、〜10mmol)およびトリエチルアミン(1.53mL、11mmol)の混合物に、塩化2,6−ジクロロベンゾイル(1.4mL、10mmol)をゆっくり加えた。その混合物を45℃で2時間加熱し、水(250mL)へと注ぎ込んだ後、EtOAc(2×200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を減圧下に減量させて、P.E−EtOAc(1:0−0:1)で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含む画分を減圧下に減量させて、残留物を2M 水性NaOH−MeOH(1:1、50mL)に取り入れて、周囲温度で2時間撹拌した。MeOHを減圧下に除去して、その混合物をEtOAcで抽出した。有機部分をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させて、減圧下に減量させた。残留物をEtOHとの熱時スラリーにより精製して、標記化合物(2.52g)をオフホワイト色の固形物質として得た。
【0304】
実施例3
X線回折による4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶構造の決定
実施例2に記載したように製造した化合物 4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのCHCl溶液の蒸発により、結晶を得た。
【0305】
回折実験に使用した結晶は、無色で大きさが0.15×0.15×0.04mmの不規則な形のものであった。リガク(Rigaku)の回転陽極RU3HRからのCuKα放射線(λ=1.5418Å)、オスミック(Osmic)の青色共焦点光学、AFC91/4χゴニオメーター、およびリガク・ジュピター(Rigaku Jupiter)のCCD検出器を使用して、結晶学的データを104Kで集めた。検出器から結晶までの距離を67mmとして、2θ=15°での3回のωスキャン、および2θ=90°での4回のスキャンにおいて、画像を集めた。データ収集をクリスタルクリア(CrystalClear)のソフトウェアにより制御し、また画像をディトレック(Dtrek)により処理してスケール化した。高い吸収係数(μ=4.04mm−1)のために、フーリエ(Fourier)の四次吸収補正を使用して、データを補正しなければならなかった。その結晶は、結晶格子定数がa=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°である、単斜晶空間群C2/c(#15)に属することが見出された。短時間の室温スキャンを1回行って、結晶格子定数および対称性を調べた。対称性は104Kで同じであり、また結晶格子定数は同様である(室温a=9.19、b=31.31、c=8.09Å、β=115.2°)ことが見出された。単位格子の大きさであるa、bおよびcは、5%の偏差(s.u.、標準不確定度)を有する。
【0306】
SHELXS−97に実装される直接法を使用して、結晶構造を解明した。15.67−0.84Å(2.82<θ<66.54)の分解能範囲における全部で2682の固有反射に対する強度データを、SHELXS−97による263の結晶学的パラメーターの精密化に使用した。最終的な統計パラメーターは、wR2=0.1749(全データ)、R=0.0663(I>2σ(I)でのデータ)および適合度S=1.035であった。
【0307】
非対称単位において、一分子の遊離塩基しか見出されなかった。その非対称単位の元素組成はC1719ClSであって、その結晶の計算密度は1.47Mg/mである。水素原子は、幾何学的根拠で生成されたが、一方、ヘテロ原子が結合した水素原子の位置は、Fo−Fc差の分布図の検査により確認された。水素原子の位置および熱パラメーターを狭めて、対応する非水素原子に重ねた。非水素原子の熱運動を異方性熱因子によりモデル化した(図1を参照)。
【0308】
その結晶構造は、1つの分子内水素結合(N6−H...O14 2.812Å)および1つの分子間水素結合を含む(図2を参照)。その分子は、分子間H−結合N1−H...O22 2.845Åにより鎖へ連結される。様々な鎖由来のジクロロフェニル部分が一緒に積み重なって、コンパクトな3Dパッキングを形成する。
【0309】
X線回折研究により作成された該構造の熱楕円表現を図1に提供し、またパッキング図は図2である。
【0310】
4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの遊離塩基の構造を構成する原子に関する座標を以下の表1にcif形式で示す。
【0311】
表1
【表4】

【表5】

【0312】
実施例3
4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶のX線粉末回折(XRPD)研究
実施例1の段階8に記載した再結晶法を使用して、4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶を製造した。
【0313】
X線粉末回折(XRPD)データ収集のための結晶試料を大理石乳鉢により穏やかに粉砕して、結晶学的毛細管(ハンプトン・リサーチ(Hampton Research)社製、石英またはガラスタイプ 10、直径0.4または0.7mm)に充填した。リガクの回転陽極RU3HRからのCuKα放射線(λ=1.5418Å)、オスミックの青色共焦点光学、1/4χゴニオメーター、およびリガクのHTC画像プレート検出器を使用して、回折パターンを室温で集めた。検出器から結晶までの距離を250mmとして、ψ軸を回転させている間に2D画像を集めた。データ収集をクリスタルクリアのソフトウェアにより制御し、また2D画像をデータスクウィーズ(Datasqueeze)により1Dプロット(2θ 対 強度)に変換した(0.01°または0.02°段階での2θ範囲3−30°に関して方位角0<χ<360°にわたり平均化した強度)。社内プログラムであるアステックス(Astex)XRPDを1D XRPDパターンの操作および可視化のために使用した(図3)。
【0314】
表2 2θ、d−間隔および主要ピークの相対強度
【表6】

【0315】
実施例4
4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの物理化学的研究
実施例1の段階8の再結晶法により製造した4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶を示差走査熱量測定研究および熱重量分析にかけた。
【0316】
示差走査熱量測定研究
試料約1−3mg(正確に重さを量った)をアルミニウムのDSCパンに入れて、アルミニウムの蓋を使用して圧着して、しっかりとした密閉を確実なものとした。次いで、その試料を、液体窒素冷却装置を備えたパイリス・ダイヤモンド(Pyris Diamond) DSC(パーキン・エルマー(Perkin-Elmer))に入れて、安定した熱流量応答が見られるまで、25℃で平衡化させた。乾式ヘリウムパージガスを流量20ml/分で使用して、不活性雰囲気を作り出して、加熱している間の試料の酸化を防いだ。次いで、その試料を走査速度200℃/分で25から400℃までスキャンして、その結果得られた熱流量応答(mW)を温度に対して測定した。実験分析する前に、インジウム参照基準を使用して、その機器を温度および熱流量調整した。
【0317】
該化合物のDSCスキャンを図4に示す。
【0318】
熱重量分析
試料約5mg(正確に重さを量った)をプラチナTGAパンに入れて、TGA7重量測定分析器に充填した。次いで、研究中の試料を10℃/分の割合で加熱して、その結果得られた重量変化をモニターした。乾式窒素パージガスを流量20ml/分で使用して、不活性雰囲気を作り出して、加熱している間の試料の酸化を防いだ。分析する前に、その機器を、参照基準100mgを使用して重量調整し、またアルメル参照基準を使用して(キュリー点転移温度を使用して)温度調整した。
【0319】
該化合物の重量損失プロファイルを図5に示す。
【0320】
結果および結論
結果的に得られたDSCサーモグラムから、唯一定義されて協同的な吸熱転移の開始が約294.5−295℃で見られ、熱で誘発される結晶格子の溶融を示した。主要な溶融吸熱の前に、有意な転移は明らかではなく、(脱水/脱溶媒和の結果として)試料からの化学吸着(結合)揮発物の損失がほとんど/全くないこと、さらにはまた、検出可能な非晶質の内容物が全く存在しないことを示した。150℃まで約0.2%の質量損失を示したTGA(図5)を使用して、この水和または溶媒和状態の欠如を確認した。これは、この薬物形態が、検出可能な多形不純物または多形転移を生ずることなく、単独に無水結晶状態で存在することを示唆する。
【0321】
TGAプロット(図5)は、主要な溶融転移の前に、開始と共に生ずる有意な事象を約288℃で示し、溶融の前に、また溶融の間に、熱で誘発される試料の部分的分解が僅かであることを示唆する。この分解過程は、300℃より高い温度で促進された。
【0322】
実施例5
4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの蒸気吸着/脱着分析
この試料が水和状態を形成する傾向に関して試験するために、実施例1の段階8の再結晶法により製造した4−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの結晶を蒸気吸着/脱着分析にかけた。
【0323】
試料約20mgを金網の蒸気吸着平衡パンに入れて、25+/−0.1℃で維持した‘IgaSorp’蒸気吸着平衡(ハイデン・アナライティカル・インスツルメンツ(Hiden Analytical Instruments))に充填した。次いで、さらなる重量変化が記録されなくなるまで、(質量流量制御装置を使用して)0%の湿度環境を維持することにより、その試料を乾燥させた。その後、その試料を、次いで、相対湿度(% RH)を10% RH増分で0から90%まで勾配させるプロファイルにかけ、平衡が達成されるまで(99.5%の段階完了)、その試料を各々の段階で維持した。
【0324】
平衡に達したら、その装置内の% RHを次の段階に勾配させて、平衡手順を繰り返した。吸着サイクル完了後、次いで、同じ手順を使用して、その試料を乾燥させた。次いで、吸着/脱着サイクルの間の重量変化をモニターし、その試料の吸湿性を判定するのを可能とする。
【0325】
該化合物の蒸気吸着/脱着プロファイルを図6に示す。
【0326】
その試料の初期乾燥の間(0% RHで)、約0.01%の重量損失が見られ、分析の前に粒子上に存在する、緩く結合した物理吸着水または結合していない表面吸着水の除去に相当した。その後、相対湿度を段階的に90% RHまで増大させることは結果的に、対応する僅かな増分の重量増加をもたらし、90% RHでの平衡で合計0.24%になった。様々な湿度での保存で見られる、これらの僅かな質量取り込みは、真の結晶性水和物形成が明らかではない、粒子表面への水の単層の単純面吸着の結果である。これは、該化合物が、吸湿性に関して物理的に安定であり、また高い湿度条件での保存でも水和状態に転換されないことを示唆する。
【0327】
生物活性
実施例6
活性化CDK2/サイクリンAキナーゼ阻害活性アッセイ(IC50)の測定
次のプロトコルを使用して、本発明の化合物をキナーゼ阻害活性に関して試験した。
【0328】
活性化CDK2/サイクリンA(Brown et al, Nat. Cell Biol., 1, pp438-443, 1999; Lowe, E.D., et al Biochemistry, 41, pp15625-15634, 2002)を、2.5倍濃度アッセイ緩衝液(50mM MOPS(pH7.2)、62.5mM β−グリセロリン酸塩、12.5mM EDTA、37.5mM MgCl、112.5mM ATP、2.5mM DTT、2.5mM オルトバナジウム酸ナトリウム、0.25mg/ml ウシ血清アルブミン)中、125pMまで希釈して、10μlをヒストン基質混合物(60μlのウシヒストンH1(アップステート・バイオテクノロジー(Upstate Biotechnology)、5mg/ml)、940μlのHO、35μCiのγ33P−ATP)10μlと混合して、DMSO中の試験化合物の種々の希釈物(2.5%まで)5μlと共に96ウェルのプレートに加える。その反応を2〜4時間継続させた後、過剰のオルトリン酸(2%で5μl)で停止させる。ヒストンH1へと組み込まれずに残留するγ33P−ATPをミリポア(Millipore)のMAPHフィルタープレートでリン酸化ヒストンH1から分離する。MAPHプレートのウェルを0.5% オルトリン酸で湿らせた後、その結果の反応物をミリポアの減圧濾過装置でウェルを通じて濾過する。濾過後、残留物を0.5% オルトリン酸200μlで2回洗浄する。そのフィルターが乾燥したら、Microscint 20 シンチラント20μlを加えた後、Packard Topcountで30秒間計測する。
【0329】
CDK2活性を50%阻害するのに必要とされる試験化合物の濃度(IC50)を測定するために、CDK2活性の阻害%を計算して、プロットする。
【0330】
実施例7
活性化CDK1/サイクリンBキナーゼ阻害活性アッセイ(IC50)の測定
CDK1/サイクリンBアッセイは、CDK1/サイクリンB(アップステート・ディスカバリー(Upstate Discovery))を使用して、その酵素を6.25nMまで希釈することを除き、先のCDK2/サイクリンAと同じである。
【0331】
CDK2またはCDK1アッセイにおいて、本発明の化合物は、1μM未満のIC50値を有する。
【0332】
実施例8
GSK3−βキナーゼ阻害活性アッセイ
GSK3−β(アップステート・ディスカバリー)を、25mM MOPS(pH7.00)、25mg/ml BSA、0.0025% Brij−35、1.25% グリセロール、0.5mM EDTA、25mM MgCl、0.025% β−メルカプトエタノール、37.5mM ATP中、7.5nMまで希釈して、10μlを基質混合物10μlと混合する。GSK3−βに対する基質混合物は、35μCiのγ33P−ATPを含む水1ml中の12.5μM ホスホ−グリコーゲン合成ペプチド−2(アップステート・ディスカバリー)である。酵素および基質をDMSO中の試験化合物の種々の希釈物(2.5%まで)5μlと共に96ウェルのプレートに加える。その反応を3時間継続させた後(GSK3−β)、過剰のオルトリン酸(2%で5μl)で停止させる。濾過手順は、先の活性化CDK2/サイクリンAアッセイに関するものと同じである。
【0333】
実施例9
抗増殖活性
本発明の化合物の抗増殖活性は、該化合物が多数の細胞系において細胞増殖を阻害する能力を測定することにより判定され得る。Alamar Blueアッセイ(Nociari, M. M, Shalev, A., Benias, P., Russo, C. Journal of Immunological Methods 1998, 213, 157-167)を使用して、細胞増殖の阻害を測定する。その方法は、生存細胞がレザズリンをその蛍光産物であるレゾルフィンへと還元する能力に基づく。各々の増殖アッセイに関して、細胞を96ウェルのプレートに置いて、16時間回復させた後、阻害剤である化合物をさらに72時間加える。培養期間が終了した時点で、10%(v/v) Alamar Blueを加えて、さらに6時間培養した後、蛍光産物を535nM ex/590nM emで測定する。非増殖性細胞アッセイの場合、細胞を集密状態で96時間維持した後、阻害剤である化合物をさらに72時間加える。生存細胞数を先のようなAlamar Blueアッセイにより測定する。細胞系は、ECACC(European Collection of cell Cultures)から得ることができる。
【0334】
特に、本発明の化合物をヒト結腸癌に由来するHCT−116細胞系(ECACC参照:91091005)に対して試験して、1μM未満のIC50値を有することを見出した。
【0335】
実施例10
経口バイオアベイラビリティの測定
式(I)の化合物の経口バイオアベイラビリティは、次のように測定され得る。
【0336】
試験化合物を、次の用量レベルおよび用量製剤で、静脈内および経口での両方の溶液として、balb/c マウスに投与する;
・10% DMSO/90% (2−ヒドロキシプロピル)−β−シクロデキストリン(25% w/v)中で製剤化した1mg/kgの静脈内製剤(IV);および
・10% DMSO/20% 水/70% PEG200中で製剤化した5mg/kgの経口製剤(PO)。
【0337】
投薬後、種々の時点で、血液試料をヘパリン化試験管に採取して、分析のために血漿分画を集める。タンパク質が沈殿した後、その分析をLC−MS/MSにより開始して、試料を試験化合物に関して作成した標準較正線との比較により定量化する。曲線化面積(AUC)を標準方法により血漿レベル 対 時間プロファイルから計算する。次の方程式から経口バイオアベイラビリティをパーセンテージとして計算する:
【数1】

【0338】
このプロトコルに従うことにより、化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、経口経路によりマウスへ投与した場合、40−50%のバイオアベイラビリティを有することが見出された。
【0339】
実施例11
異種移植片(Xenograph)研究
化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドは、ヒト腫瘍由来細胞系を移植したヌードマウスにおいて抗腫瘍作用を有する。該化合物での処置は、腫瘍バイオマーカーの阻害を引き起こす用量で経口投薬した場合、皮下に移植した、そのような異種移植片において腫瘍増殖の阻害を引き起こす。これらのバイオマーカーには、サイクリン依存性キナーゼの基質のリン酸化の抑制、例えば、網膜芽細胞腫タンパク質が含まれる。該化合物は、数週間の慢性投与を含む様々な計画の範囲で与える場合に有効である。
【0340】
実施例12
比較例
2,6−ジクロロフェニル基を含む、本発明の化合物、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの生物活性を、その2,6−ジフルオロフェニル類似体の生物活性と比較した。我々の以前の出願PCT/GB2004/003179(公開番号WO 2005/012256)における実施例131に記載する、その2,6−ジフルオロフェニル類似体は、次の構造を有する。
【化30】

【0341】
より詳しくは、CDK2キナーゼおよびGSK3βキナーゼに対するそれらの活性、並びにHCT−116ヒト結腸癌細胞の増殖を阻害するそれらの能力に関して、該化合物を比較した。先に示したアッセイ法を使用して、そのキナーゼ阻害活性およびHCT−116阻害活性を測定し、またその結果を以下の表に示す。
【表7】

【0342】
次の理由から、本発明の化合物は、そのジフルオロ類似体の化合物に優る利点を有する:
・本発明の化合物は、そのジフルオロ類似体と比較した場合、ヒト結腸癌HCT−116細胞系に対して6−7倍のより強力な抗増殖効果を有する。
・本発明の化合物は、そのジフルオロ類似体に比べて、インビトロにおけるより優れたキナーゼ(CDK2)阻害活性を有する。
・本発明の化合物は、そのジフルオロ類似体(0.014μM)より、GSK3βに対してより低い活性(0.22μM)を有する。
・本発明の化合物は、そのジフルオロ類似体(〜6倍)に比べて、GSK3βよりCDK阻害に対してより優れた選択性(>200倍)を有する。
【0343】
医薬品製剤
実施例13
(i)錠剤製剤
式(I)の化合物を含む錠剤組成物は、該化合物50mgを希釈剤としてのラクトース(BP)197mgおよび滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgと混合して、既知の方法で圧縮して、錠剤を形成することにより製造される。
【0344】
(ii)カプセル剤製剤
カプセル剤製剤は、式(I)の化合物100mgをラクトース100mgと混合して、その結果得られた混合物を標準的な不透明の硬ゼラチンカプセルに充填することにより製造される。
【0345】
(iii)注射製剤I
注射による投与のための非経口組成物は、式(I)の化合物(例えば、塩形態での)を、10% プロピレングリコールを含む水に溶解して、1.5重量%の活性化合物濃度を与えることにより製造され得る。次いで、その溶液を濾過により滅菌し、アンプルに充填して、密閉する。
【0346】
(iv)注射製剤II
注射のための非経口組成物は、式(I)の化合物(例えば、塩形態での)(2mg/ml)およびマンニトール(50mg/ml)を水に溶解し、その溶液を滅菌濾過して、密閉可能な1mlのバイアルまたはアンプルに充填することにより製造される。
【0347】
(v)注射製剤III
注射または輸液による静脈内送達のための製剤は、式(I)の化合物(例えば、塩形態での)を水に20mg/mlで溶解することにより製造され得る。次いで、バイアルを密閉して、高圧蒸気殺菌法により滅菌する。
【0348】
(vi)注射製剤IV
注射または輸液による静脈内送達のための製剤は、式(I)の化合物(例えば、塩形態での)を、緩衝剤(例えば、0.2M 酢酸塩(pH 4.6))を含む水に20mg/mlで溶解することにより製造され得る。次いで、バイアルを密閉して、高圧蒸気殺菌法により滅菌する。
【0349】
(vii)皮下注射製剤
皮下投与のための組成物は、式(I)の化合物を医薬品等級のトウモロコシ油と混合して、5mg/mlの濃度を与えることにより製造される。その組成物を滅菌して、適当な容器に充填する。
【0350】
(viii)凍結乾燥製剤
式(I)の製剤化化合物のアリコートを50mLのバイアルに入れて、凍結乾燥させる。凍結乾燥の間、一段階凍結プロトコルを(−45℃)で使用して、その組成物を凍結させる。その温度をアニーリングのために−10℃まで上昇させた後、−45℃での凍結のために低下させ、続いて、+25℃で約3400分間一次乾燥させ、続いて、もし温度が50℃までなら、段階を増加して二次乾燥させる。一次および二次乾燥の間の圧力を80ミリトルで設定する。
【0351】
(ix)固溶体製剤
実施例1の化合物およびPVPをジクロロメタン/エタノール(1:1)に5〜50%(例えば、16または20%)の濃度で溶解して、以下の表に示すものに対応する条件を使用して、その溶液を噴霧乾燥させる。表に与えるデータには、実施例1の化合物の濃度、噴霧乾燥機の入口および出口温度、噴霧乾燥固体の全収率、噴霧乾燥固体での実施例1の化合物の濃度(アッセイ)、並びに噴霧乾燥固体を構成する粒子の粒径分布(P.S.D.)が含まれる。
【表8】

【0352】
実施例1の化合物およびPVPの固溶体は、硬ゼラチンもしくはHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセルに直接充填され得るか、または増量剤、流動促進剤もしくは分散剤といったような、薬学的に許容され得る賦形剤と混合され得るかのいずれかである。そのカプセルは、実施例1の化合物を2mg〜200mgの間の量で、例えば、10、20および80mg含み得るであろう。あるいはまた、そのカプセルは、実施例1の化合物を40mg含み得るであろう。
【0353】
実施例14
ポリビニルピロリドン(PVP)中に4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体を含む医薬品製剤
この実施例は、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの噴霧乾燥固体分散体、およびK30等級のポリビニルピロリドン(ドイツ,ブルグベルンハイム(Burgbernheim)のBASF ChemTrade GmbHから入手可能なコリドン(Kollidon) K30)を含む顆粒組成物の製造を記載する。PVPの分子量は、44,000−54,000の範囲である。
【0354】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、エタノールおよびジクロロメタンの1:1(v/v)の混合物に溶解して、50mg/mlの化合物濃度を与えた後、化合物とPVPとの比率1:3でPVP K30を加えることにより、固体分散体を製造した。
【0355】
次いで、溶質をNiro Mobile Minor 2000 噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥機から集めた粉末を減圧下に乾燥させた。
【0356】
噴霧乾燥条件は、次のとおりであった:
【表9】

【0357】
レーザー回折装置を使用して、乾燥後の噴霧乾燥固体分散体の粒径分布を測定して、次のようなD10、D50およびD90指数を得た。
【表10】

【0358】
次の実施例において、PVP中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体を“式(I)の化合物/PVP”と呼ぶ。
【0359】
次の物質を高剪断混合機において30秒間混合した:
【表11】

【0360】
次いで、フロインド(Freund)のローラー圧縮機を使用して、その粉末混合物を圧縮した。リボンを製造するために、次の設定が必要であった。
【表12】

【0361】
圧縮粉末のリボンを710μmの篩を通じて粉砕して、その結果得られた顆粒を適当な容器に集めた。その顆粒塊のアリコート(9.0g)をAc−Di−Solのさらなるアリコート(1.0g)と混合した。サイズ0のカプセルに充填することができるであろう顆粒塊の量を測定した(さっと充填した(flush-filled)場合とぎっしり詰めた(tightly packed)場合の両方)。結果を以下に要約する。
【表13】

【0362】
崩壊試験
即時放出経口製剤に関して、投薬形態の崩壊および活性成分の放出は15分以内に起こるべきであることが望ましい。従って、標準的な錠剤/カプセル剤崩壊装置(ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia)、第4版)を使用して、記載するカプセル製剤を崩壊試験にかけた。蒸留水を崩壊媒体として使用した。崩壊媒体の量は800mLであって、温度を37℃(+/−1℃)で維持した。その製剤の分散/溶解挙動の評価を観察によってのみ行った。崩壊時間を以下の表に示す。
【表14】

【0363】
溶解試験
そのカプセル製剤の溶解速度を、(1)さらなる賦形剤を含まないPVPおよび式(I)の化合物の非封入化固体分散体、並びに(2)サイズ0のカプセルにぎっしり詰めた固体分散体(1)、並びに(3)製剤化試料の溶解速度と比較した。
【0364】
ヨーロッパ薬局方、第4版に記載されているパドル装置を使用して、溶解試験を行った。
【0365】
その溶解研究の結果を図7に示す。
【0366】
その結果は、非封入化固体分散体の溶解がカプセル試料の溶解より速かったことを示す。ぎっしり詰めた封入化試料において、PVPが恐らく粒子同士を結合していることから、式(I)の化合物の放出が遅延される。興味深いことには、その製剤化試料は、製剤化されていない封入化試料と比べて、ずっとより迅速な化合物放出プロファイルを示し、このことは、製剤中の高い割合の崩壊剤がPVPの結合能力に対抗するのに有効であることを示す。
【0367】
実施例15
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法
段階1
DMF(10mL)中の4−ピペリドン塩酸塩一水和物(0.50g、3.25mmol)の溶液に、トリエチルアミン(2.44mL、17.6mmol)を加えて、その混合物を45℃で1時間加熱した。その混合物に、塩化メタンスルホニル(0.75mL、9.75mmol)を加えて、その混合物を45℃で18時間加熱した。その結果得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下に減量させた。その残留物をEtOAcに取り入れて、水で洗浄し、有機部分をMgSOで乾燥させて、減圧下に減量させて、1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−オン(369mg)を淡黄色の固形物質として得た。
【0368】
段階2
DCM(3mL)中の1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−オン(130mg、0.73mmol)の溶液に、氷酢酸(32μL、0.55mmol)、ベンジルアミン(108μL、0.99mmol)およびNaBH(OAc)(232mg、1.09mmol)を加えた。その反応混合物を周囲温度で18時間撹拌した。その混合物に、2M NaOH水溶液(3mL)を加えて、層を分離した。有機部分をMgSOで乾燥させて、減圧下に減量させて、4−ベンジルオキシ−1−メタンスルホニル−ピペリジン(160mg)を黄色の固形物質として得た。
【0369】
段階3
1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イルアミンを作り出すための4−ベンジルオキシ−1−メタンスルホニル−ピペリジンの転移は、4−ベンジルオキシ−1−メタンスルホニル−ピペリジンを適当な溶媒に溶解して、Pd/Cの存在下に水素雰囲気にさらすことにより成し遂げられ得る。
【0370】
段階4
【化31】

DMF(50ml)中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(3.6g)、1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イルアミントリフルオロ酢酸塩(3.53g;1.15当量)、EDC(2.87g;1.25当量)、HOBt(2.02g;1.25当量)およびトリエチルアミン(3.5ml;2.1当量)の混合物を室温で20時間撹拌した後、減圧下に減量させた。その残留物を飽和NaHCO(250ml)でトリチュレートし、固形物質を濾過により集め、水で洗浄し、吸引乾燥させた(sucked dry)。EtOAcとの熱時スラリーによる精製、およびEtOAc/P.E.(1:1、次いで、1:0)で溶出するクロマトグラフィーにより、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを白色の固形物質として2.8g(51%)得た。
【0371】
実施例17
薬学的に許容され得る賦形剤を含むPVP中の化合物1(化合物1:PVPの比率1:3)の固体分散体の乾式造粒を通じて、実施例14の製剤化製品を製造した。この製剤化製品物質をサイズ0のカプセル殻に充填して、10mgおよび40mgの化合物1に相当する用量を得た。25℃/相対湿度(RH)60%および40℃/相対湿度75%という2つの異なる保存条件下、これらのカプセルを安定性に置いた。以下のデータは、製剤化カプセルが良好な物理的および化学的安定性を有し、またこれらの保存条件下での崩壊特性と一致することを示す。
【0372】
ブリスター・ストリップで保存された製剤化カプセル10mgに関する安定性データの要約
【表15】

【0373】
ブリスター・ストリップで保存された製剤化カプセル40mgに関する安定性データの要約
【表16】

【0374】
均等物 (Equivalents)
前述の実施例は、本発明を説明する目的で提示するものであって、本発明の範囲に対する制限を何ら課すものとして解釈されるべきものではない。本発明の基礎を成す原理から逸脱することなく、先に記載し、また実施例において説明した本発明の具体的な態様に対して、多数の変更および改変がなされ得ることが容易に明らかであろう。そのような変更および改変は全て、本出願により包含しようと意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0375】
【図1】単結晶X線回折研究により決定される、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの三次元構造の描写である。
【図2】4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのX線回折研究により作成された該構造のグラフィカル表示である。
【図3】4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのX線粉末回折図である。
【図4】結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのDSC走査である。
【図5】結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの熱重量分析により得られた重量損失プロファイルである。
【図6】結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの蒸気吸着/脱着プロファイルである。
【図7】4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体を含む幾つかの製剤に関する、時間に対する溶解度のグラフであり、ここで、(1)は、さらなる賦形剤を含まないPVPおよび式(I)の化合物の非封入化固体分散体を示し;(2)は、サイズ0のカプセルにぎっしり詰めた固体分散体(1)を示し;そして(3)は、製剤化試料を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項2】
少なくとも55%が結晶性、または少なくとも60%が結晶性、または少なくとも65%が結晶性、または少なくとも70%が結晶性、または少なくとも75%が結晶性、または少なくとも80%が結晶性、または少なくとも85%が結晶性、または少なくとも90%が結晶性、または少なくとも95%が結晶性、または少なくとも98%が結晶性、または少なくとも99%が結晶性、または少なくとも99.5%が結晶性、または少なくとも99.9%が結晶性、例えば、100%が結晶性である、請求項1に記載の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項3】
単結晶形の無水化合物および5重量%未満のいずれかの他の結晶形の化合物を含む、実質的には結晶形の化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項4】
単結晶形が、4%未満、または3%未満、または2%未満の他の結晶形を伴い、また特に約1重量%以下の他の結晶形を含む、請求項3に記載の実質的には結晶形の化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項5】
単結晶形が、0.9%未満、または0.8%未満、または0.7%未満、または0.6%未満、または0.5%未満、または0.4%未満、または0.3%未満、または0.2%未満、または0.1%未満、または0.05%未満、または0.01%未満(重量で)の他の結晶形、例えば、0重量%の他の結晶形を伴う、請求項4に記載の実質的には結晶形の化合物 4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項6】
(a)図1および2に示した結晶構造を有し;および/または
(b)本明細書中の表1における座標により定義された結晶構造を有し;および/または
(c)a=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°での結晶格子定数を有し;および/または
(d)C2/c(#15)といったような単斜晶系空間群に属する結晶構造を有する;
実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項7】
表Aに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)での主要ピークの存在により特徴付けられるX線粉末回折パターンを有する、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
表A
【表1】

【請求項8】
X線粉末回折パターンが、好ましくは、表Bに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)でのさらなるピークの存在によりさらに特徴付けられる、請求項7に記載の実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
表B
【表2】

【請求項9】
図3に示すX線粉末回折パターンのものと同じ回折角でピークを示し、また好ましくは、そのピークが図3におけるピークと同じ相対強度を有する、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項10】
実質的には図3に示したX線粉末回折パターンを有する、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項11】
無水であって、DSCにかけた場合に、293−296℃、例えば、294.5−295℃で吸熱ピークを示す、結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項12】
UATR法を使用して分析した場合に、3362、3019、2843、1677、1577、1547、1533、1326、1150、926、781、667cm−1での特徴的なピークを含む赤外線スペクトルを示す、実質的には結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項13】
次のパラメーターのいずれか1つまたはそれ以上(いずれかの組み合わせにて)または全てにより特徴付けられる、つまり、結晶形が、
(a)図1および2に示した結晶構造を有し;および/または
(b)本明細書中の表1における座標により定義された結晶構造を有し;および/または
(c)a=9.15、b=31.32、c=7.93Å、β=113.3°、α=γ=90°での結晶格子定数を有し;および/または
(d)C2/c(#15)といったような単斜晶系空間群に属する結晶構造を有し;および/または
(e)表A、また場合により表Bに示す回折角(2θ)および格子面間隔(d)での主要ピークの存在により特徴付けられるX線粉末回折パターンを有し;および/または
(f)図3に示すX線粉末回折パターンのものと同じ回折角でピークを示し、また場合により、そのピークが図3におけるピークと同じ相対強度を有し;および/または
(g)実質的には図3に示したX線粉末回折パターンを有し;および/または
(h)無水であって、DSCにかけた場合に、293−296℃、例えば、294.5−295℃で吸熱ピークを示し;および/または
(i)UATR法を使用して分析した場合に、3362、3019、2843、1677、1577、1547、1533、1326、1150、926、781、667cm−1での特徴的なピークを含む赤外線スペクトルを示す;
結晶形の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項14】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを製造するための方法であって、アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下における、極性溶媒中での、式(II):
【化1】

の化合物の塩化メタンスルホニルとの反応;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶することを含んでなる方法。
【請求項15】
該塩基が重炭酸ナトリウムといったようなアルカリ金属重炭酸塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、
(a)極性溶媒(例えば、ジオキサン)中、式(III):
【化2】

の化合物をメタンスルホン酸と反応させて、boc基を取り除いて、式(II):
【化3】

の化合物のメタンスルホン酸塩を得ること;
(b)その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩を単離すること;
(c)極性溶媒(例えば、水といったような水性溶媒)中、その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩をメタンスルホン酸で処理して、残っている微量の化合物(III)を化合物(II)に転換すること;そして
(d)アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下、極性溶媒中、段階(c)の生成物を塩化メタンスルホニルと反応させ;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶すること;
を含んでなる方法。
【請求項17】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、
(ia)塩基(例えば、第三級アミン−例えば、トリエチルアミンといったような非妨害塩基)の存在下、極性溶媒中、式(IV):
【化4】

の酸塩化化合物を式(V):
【化5】

の化合物と反応させて、式(III):
【化6】

の化合物を得ること;
(a)極性溶媒(例えば、ジオキサン)中、式(III)の化合物をメタンスルホン酸と反応させて、boc基を取り除いて、式(II):
【化7】

の化合物のメタンスルホン酸塩を得ること;
(b)その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩を単離すること;
(c)極性溶媒(例えば、水といったような水性溶媒)中、その式(II)の化合物のメタンスルホン酸塩をメタンスルホン酸で処理して、残っている微量の化合物(III)を化合物(II)に転換すること;そして
(d)アルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩から選択される塩基の存在下、極性溶媒中、段階(c)の生成物を塩化メタンスルホニルと反応させ;そしてその後、このようにして形成された4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを単離すること、また場合により、再結晶すること;
を含んでなる方法。
【請求項18】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの製造方法であって、式(VI):
【化8】

の化合物の、2,6−ジクロロ安息香酸、または塩化2,6−ジクロロベンゾイルといったようなその活性化誘導体との反応を含んでなる方法。
【請求項19】
(a)ポリビニルピロリドン中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体;
(b)固体希釈剤;および
(c)崩壊剤;また場合により、
(d)1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤;
の圧縮混合物を含んでなる固形医薬組成物。
【請求項20】
錠剤の形態での、請求項19に記載の固形医薬組成物。
【請求項21】
カプセル剤の形態での、請求項19に記載の固形医薬組成物。
【請求項22】
該固体分散体が、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドおよびPVPを、約1:1〜約1:6、より典型的には1:2〜1:4、例えば、比率1:3の重量比で含む、請求項19〜21のいずれか1項に記載の固形医薬組成物。
【請求項23】
該固体希釈剤が、糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムといったような非糖由来希釈剤、およびメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースといったようなセルロースまたはその誘導体、およびコーンスターチといったようなデンプンから選択される、薬理学的に不活性な固形物質である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の固形医薬組成物。
【請求項24】
該希釈剤がラクトースまたはリン酸カルシウムである、請求項23に記載の固形医薬組成物。
【請求項25】
該崩壊剤が、架橋カルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、架橋ポリビニルピロリドン(架橋PVPまたはクロスポビドン)、およびデンプングリコール酸ナトリウムから選択される、請求項19〜24のいずれか1項に記載の固形医薬組成物。
【請求項26】
該崩壊剤がクロスカルメロースまたはデンプングリコール酸ナトリウムである、請求項25に記載の固形医薬組成物。
【請求項27】
微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、および重炭酸ナトリウムといったようなアルカリ金属重炭酸塩から選択される1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤(d)を含む、請求項19〜26のいずれか1項に記載の固形医薬組成物。
【請求項28】
〇成分(a)が、比率1:3での、4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドのPVP中での噴霧乾燥固体分散体であり;
〇成分(b)がリン酸カルシウムであり;
〇成分(c)がクロスカルメロースであり;そして
〇成分(d)がケイ化微結晶性セルロースである;
請求項19に記載の固形医薬組成物。
【請求項29】
請求項19〜28のいずれか1項に定義した成分(a)〜(c)、また場合により(d)の粉砕圧縮混合物を含む、カプセル剤の形態での医薬組成物。
【請求項30】
請求項19〜28のいずれか1項に定義した成分(a)〜(c)、また場合により(d)の圧縮混合物を含んでなる、錠剤の形態での医薬組成物。
【請求項31】
1つのさらなる薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含んでなる、請求項29または請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
さらなる薬学的に許容され得る該賦形剤が滑沢剤である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
(a)10−70% w/wの、ポリビニルピロリドン中の4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの固体分散体;
(b)10−70% w/wの固体希釈剤;および
(c)1−20% w/wの崩壊剤;また場合により、
(d)1−30% w/wの、1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に許容され得る賦形剤;
の圧縮混合物を含んでなる固形医薬組成物。
【請求項34】
該組成物中の全成分の比率((a):(b):(c):(d))が約3−4:3−4:1−2:1−2である、請求項19〜33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
該組成物中の全成分の比率((a):(b):(c):(d))が約3.9:3.6:1.2:1.2である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3により媒介される病状または状態の予防または処置において使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項37】
哺乳動物において腫瘍増殖を阻害する際に使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項38】
(例えば、哺乳動物において)腫瘍細胞の増殖を阻害する際に使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項39】
サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3により媒介される病状または状態の予防または処置方法であって、その必要がある対象に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与することを含んでなる方法。
【請求項40】
哺乳動物(例えば、ヒト)において腫瘍増殖を阻害する方法であって、その哺乳動物(例えば、ヒト)に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの有効な腫瘍増殖阻害量を投与することを含んでなる方法。
【請求項41】
腫瘍細胞(例えば、ヒトといったような哺乳動物において存在する腫瘍細胞)の増殖を阻害する方法であって、その腫瘍細胞を、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの有効な腫瘍細胞増殖阻害量と接触させることを含んでなる方法。
【請求項42】
サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3により媒介される病状または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その必要がある対象に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与することを含んでなる方法。
【請求項43】
哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態を処置するための方法であって、その哺乳動物に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、異常細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【請求項44】
哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その哺乳動物に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、異常細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【請求項45】
哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態を処置するための方法であって、その哺乳動物に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、cdkキナーゼ(例えば、cdk1またはcdk2)またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【請求項46】
哺乳動物において異常細胞増殖を含むまたはそれから生ずる疾患または状態の発生を軽減するまたは減少させるための方法であって、その哺乳動物に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを、cdkキナーゼ(例えば、cdk1またはcdk2)またはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で投与することを含んでなる方法。
【請求項47】
サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3を阻害する方法であって、該キナーゼを、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドと接触させることを含んでなる方法。
【請求項48】
請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを使用して、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3の活性を阻害することにより、細胞過程(例えば、細胞分裂)を調整する方法。
【請求項49】
本明細書中に記載した病状の予防または処置において使用するための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項50】
本明細書中に定義したいずれか1つまたはそれ以上の使用を目的とした薬物の製造のための、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの使用。
【請求項51】
請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド、および薬学的に許容され得る担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項52】
医薬において使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項53】
先に示した、また本明細書中に他の部分で記載した、いずれかの使用および方法を目的とした、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミド。
【請求項54】
サイクリン依存性キナーゼにより媒介される病状または状態の診断および処置方法であって、
(i)患者をスクリーニングして、その患者が罹患しているまたは罹患しているかもしれない疾患または状態が、サイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物での処置に感受性があろうものであるかどうかを判定すること;そして
(ii)それにより、その患者の疾患または状態には、このような感受性のあることが示された場合、その後、その患者に、請求項1〜13のいずれか1項に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを投与すること;
を含んでなる方法。
【請求項55】
スクリーニングされて、サイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物での処置に感受性があろう疾患または状態に罹患しているまたは罹患する危険性があると判定された患者における病状または状態の処置または予防を目的とした薬物の製造のための、本明細書中に定義した、実質的には結晶形での4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドの使用。
【請求項56】
4−(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−アミドを製造するための方法であって、式(XII):
【化9】

のカルボン酸、または酸塩化物(すなわち、先の化合物(IV))といったようなその活性化誘導体の、式(XIII):
【化10】

の化合物との反応を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−536187(P2009−536187A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508469(P2009−508469)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001655
【国際公開番号】WO2007/129066
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(506025512)アステックス・セラピューティクス・リミテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ASTEX THERAPEUTICS LIMITED
【Fターム(参考)】