説明

癌の組み合わせ処置法

本発明は、第一の処置手順において第一の量のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤を、それを必要としている被験者に投与することによる、それを必要としている被験者の癌の処置法に関する。第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む。HDAC阻害剤および抗癌剤の効果は相加的でも相乗的でもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を抗癌剤との組み合わせで投与することによる、癌の処置法に関する。第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、細胞群が様々な程度で増殖および分化を正常に支配する制御メカニズムに対して不応性となる障害である。
【0003】
臨床癌療法において用いられる治療剤は次の6つの範疇に分類することができる:アルキル化剤、抗生物質、体謝拮抗剤、生物学的薬剤、ホルモン剤、および植物由来薬剤。
【0004】
癌療法は新生細胞(neoplastic cell)の終末分化の誘導によっても試行されている(M. B., Roberts, A. B., and Driscoll, J. S. (1985) in Cancer: Principles and Practice of Oncology, eds. Hellman, S., Rosenberg, S. A., and DeVita, V. T., Jr., Ed. 2, (J. B. Lippincott, Philadelphia), P. 49)。細胞培養モデルにおいて、細胞を環状AMPおよびレチノイン酸(Breitman, T. R., Selonick, S. E., and Collins, S. J. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 2936-2940; Olsson, I. L. and Breitman, T. R. (1982) Cancer Res. 42: 3924-3927)、アクラルビシンおよび他のアントラサイクリン(Schwartz, E. L. and Sartorelli, A. C. (1982) Cancer Res. 42: 2651-2655)を含む様々な刺激に曝露することにより分化が報告されている。悪性形質転換は必ずしも癌細胞が分化する可能性を破壊するものではないとの多くの証拠がある(Sporn et al; Marks, P. A., Sheffery, M., and Rifkind, R. A. (1987) Cancer Res. 47: 659; Sachs, L. (1978) Nature (Lond.) 274: 535)。
【0005】
正常な増殖制御物質に反応せず、分化プログラムの発現において阻止されていると思われるが、それでも分化して複製をやめるよう誘導することができる、多くの腫瘍細胞の例がある。様々な薬剤が、様々な形質転換細胞株およびヒト原発腫瘍外植片をより分化した特徴を発現するよう誘導することができる。これらの薬剤には下記が含まれる:
a)極性化合物(Marks et al (1987); Friend, C., Scher, W., Holland, J. W., and Sato, T. (1971) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 68: 378-382; Tanaka, M., Levy, J., Terada, M., Breslow, R., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1975) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 72: 1003-1006; Reuben, R. C., Wife, R. L., Breslow, R., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1976) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 73: 862-866);
b)ビタミンDおよびレチノイン酸の誘導体(Abe, E., Miyaura, C., Sakagami, H., Takeda, M., Konno, K., Yamazaki, T., Yoshika, S., and Suda, T. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 78: 4990-4994; Schwartz, E. L., Snoddy, J. R., Kreutter, D., Rasmussen, H., and Sartorelli, A. C. (1983) Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 24: 18; Tanenaga, K., Hozumi, M., and Sakagami, Y. (1980) Cancer Res. 40: 914-919);
c)ステロイドホルモン(Lotem, J. and Sachs, L. (1975) Int. J. Cancer 15: 731-740);
d)増殖因子(Sachs, L. (1978) Nature (Lond.) 274: 535, Metcalf, D. (1985) Science, 229: 16-22);
e)プロテアーゼ(Scher, W., Scher, B. M., and Waxman, S. (1983) Exp. Hematol. 11: 490-498; Scher, W., Scher, B. M., and Waxman, S. (1982) Biochem. & Biophys. Res. Comm. 109: 348-354);
f)腫瘍プロモーター(Huberman, E. and Callaham, M. F. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76: 1293-1297; Lottem, J. and Sachs, L. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76: 5158-5162);ならびに
g)DNAまたはRNA合成の阻害剤(Schwartz, E. L. and Sartorelli, A. C. (1982) Cancer Res. 42: 2651-2655, Terada, M., Epner, E., Nudel, U., Salmon, J., Fibach, E., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 75: 2795-2799; Morin, M. J. and Sartorelli, A. C. (1984) Cancer Res. 44: 2807-2812; Schwartz, E. L., Brown, B. J., Nierenberg, M., Marsh, J. C., and Sartorelli, A. C. (1983) Cancer Res. 43: 2725-2730; Sugano, H., Furusawa, M., Kawaguchi, T., and Ikawa, Y. (1973) Bibl. Hematol. 39: 943-954; Ebert, P. S., Wars, I., and Buell, D. N. (1976) Cancer Res. 36: 1809-1813; Hayashi, M., Okabe, J., and Hozumi, M. (1979) Gann 70: 235-238)。
【0006】
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、腫瘍細胞の増殖停止、分化、および/またはアポトーシスを誘導する能力を有する薬剤のこのクラスに属する(Richon, V.M., Webb, Y., Merger, R., et al., (1996)PNAS 93:5705-8)。これらの化合物は動物における腫瘍増殖の阻害に有効な用量で毒性がないと考えられるため、新生物細胞が悪性となる能力に固有のメカニズムに標的指向されている(Cohen, L.A., Amin, S., Marks, P.A., Rifkind, R.A., Desai, D., and Richon, V.M. (1999) Anticancer Research 19:4999-5006)。ヒストンアセチル化および脱アセチル化は、それによって細胞内の転写制御が行われるメカニズムであるという一連の証拠がある(Grunstein, M. (1997) Nature 389:349-52)。これらの効果は、ヌクレオソームにおけるヒストンタンパク質のらせんDNAに対する親和性を変えることによるクロマチンの構造変化を通して起こると考えられる。ヒストンは5つのタイプが同定されている(H1、H2A、H2B、H3およびH4と命名)。ヒストンH2A、H2B、H3およびH4はヌクレオソーム内で認められ、H1はヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各ヌクレオソームはそのコア内にH1以外の各ヒストンタイプの二つを含み、H1はヌクレオソーム構造の外側部分に単独で存在する。ヒストンタンパク質が低アセチル化状態である場合、ヒストンのDNAリン酸骨格への親和性が高いと考えられる。この親和性によりDNAがヒストンに緊密に結合することになり、DNAは転写制御因子および機構に接近できなくなる。
【0007】
アセチル化状態の制御は二つの酵素複合体、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)との間の活性のバランスを通して起こる。低アセチル化状態は関連するDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態はHDAC酵素を含む大きい多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACはクロマチンコアヒストンからのアセチル基除去を触媒することが示されている。
【0008】
HDACのSAHAによる阻害は、X線結晶回折試験によって示されたとおり、酵素の触媒部位との直接相互作用によって起こる(Finnin, M.S., Donigian, J.R., Cohen, A., et al. (1999) Nature 401:188-193)。HDAC阻害の結果はゲノムに対して広汎な効果を有するとは考えられず、むしろゲノムの小さいサブセットに影響をおよぼすにすぎない(Van Lint, C., Emiliani, S., Verdin, E. (1996) Gene Expression 5:245-53)。HDAC阻害剤と共に培養した悪性細胞株を用いたDNAマイクロアレイによる証拠は、生成物が変化した限られた(1〜2%)数の遺伝子があることを示している。例えば、培養中にHDAC阻害剤で処理した細胞は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21の一貫した誘導を示す(Archer, S. Shufen, M. Shei, A., Hodin, R. (1998) PNAS 95:6791-96)。このタンパク質は細胞周期停止において重要な役割を果たす。HDAC阻害剤はp21遺伝子の領域におけるヒストンの高アセチル化状態を拡大することによりp21の転写速度を高め、それにより遺伝子を転写機構に接近できるようにすると考えられる。発現がHDAC阻害剤の影響を受けない遺伝子では、領域関連ヒストンのアセチル化において変化は見られない(Dressel U., Renkawitz, R., Baniahmad, A. (2000) Anticancer Research 20(2A):1017-22)。
【0009】
いくつかの場合に、HATまたはHDAC活性の崩壊は悪性表現型の発生に関係することが示されている。例えば、急性前骨髄球性白血病において、PMLおよびRARアルファの融合により産生される腫瘍性タンパク質はHDACの動員を通して特定の遺伝子転写を抑制すると考えられる(Lin, R.J., Nagy, L., Inoue, S., et al. (1998) Nature 391:811-14)。この様式で、新生物細胞は分化を完了することができなくなり、白血病細胞株の過剰増殖につながる。
【0010】
本発明者らのいずれかに発行された米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号は、新生物細胞の終末分化を選択的に誘導するために有用な化合物であって、柔軟なメチレン基の鎖または硬いフェニル基で分けられた二つの極性末端基を有し、極性末端基の一つまたは両方は大きい疎水性基である化合物を開示している。化合物のいくつかは、第一の疎水性基と同じ分子末端に別の大きい疎水性基を有しており、これは分化活性を酵素アッセイにおいて約100倍、細胞分化アッセイにおいて約50倍高める。本発明の方法および薬学的組成物において用いる化合物の合成法は前述の特許に詳細に記載されており、これらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0011】
複数の抗腫瘍処置因子による患者の組み合わせ処置からなる現行の癌療法が知られている。例は放射線処置と化学療法および/または細胞毒性因子との組み合わせであり、もっと最近では放射線処置と腫瘍細胞特異的処置抗体の使用などの免疫療法との組み合わせである。しかし、個々のアプローチ単独よりも有効な組み合わせを特定するために、個々の処置を互いに組み合わせる可能性は、大規模な前臨床および臨床試験を必要とし、どの組み合わせが相加的またはさらには相乗的効果を示すかを予測するための実験なしでは不可能である。
【0012】
処置の有効性を高める目標に加えて、組み合わせ処置のもう一つの目的は、個々の成分の高用量によって生じる不要または有害副作用を低減するために、得られた組み合わせにおける個々の成分の用量を下げる可能性である。
【0013】
副作用が低減し、悪性腫瘍の処置および制御において有効な、組み合わせ処置を含む適当な癌の処置法を発見することが差し迫って必要である。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を一つまたは複数の抗癌剤との組み合わせで用いて、処置上有効な抗癌効果を提供しうるという発見に基づいている。
【0015】
本明細書に記載のHDAC阻害剤の投与を含む第一の処置手順と、本明細書に記載の一つまたは複数の抗癌剤を用いた第二の処置手順との組み合わせは、処置上有効な抗癌効果を提供しうることが予想外に発見された。それぞれの処置(HDAC阻害剤の投与および抗癌剤の投与)は、もう一方との組み合わせで処置上有効な処置を提供する量または用量で用いる。
【0016】
併用療法は癌細胞分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスの誘導を通じて作用することができる。さらに、HDAC阻害剤および抗癌剤の効果は相加的または相乗的でありうる。併用療法では各薬剤の用量をその薬剤による単剤療法に比べて減らし、なおかつ総合的に抗腫瘍効果を得ることができるため、処置法の組み合わせは特に有益である。
【0017】
したがって、本発明はそれを必要としている被験者の癌の処置法であって、第一の処置手順において第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、それを必要としている被験者に投与することによる方法に関する。
【0018】
本明細書において用いられる癌の処置とは、哺乳動物、例えばヒトにおいて、癌の転移を含む癌の進行を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;癌の転移を含む癌の再発を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;または癌の発症もしくは発生を部分的もしくは完全に予防(化学的予防)することを意味する。
【0019】
本発明の方法は、固形腫瘍(例えば、肺、乳房、結腸、前立腺、膀胱、直腸、脳または子宮内膜の腫瘍)、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、癌腫(例えば、膀胱癌、腎癌、乳癌、結腸直腸癌)、神経芽細胞腫、または黒色腫を含むが、それらに限定されるわけではない、広範な癌の処置において有用である。これらの癌の非限定例には、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫、脳神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨癌、および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭、および食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、基底細胞癌、潰瘍化型および乳頭状型両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、髄様癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網細胞肉腫、カポジ肉腫、神経芽細胞腫ならびに網膜芽細胞腫などの一般的な成人固形腫瘍が含まれる。
【0020】
この方法は、第一の処置手順において第一の量のHDAC阻害剤、例えばSAHA、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤を、それを必要としている患者に投与する段階を含む。第一および第二の処置は併せて処置上有効な量を含む。
【0021】
本発明はさらに、癌の処置のために有用な薬学的組み合わせにも関する。薬学的組み合わせは、第一の量のHDAC阻害剤、例えばSAHA、および第二の量の抗癌剤を含む。第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む。
【0022】
本発明はさらに、癌処置用医薬品を製造するための、第一の量のHDAC阻害剤、および第二の量の抗癌剤の使用に関する。
【0023】
本発明の特定の態様において、HDAC阻害剤と抗癌剤との組み合わせは相加的で、すなわち組み合わせ処置法は各成分を単独で投与した場合の相加効果である結果を生じる。本態様に従い、HDAC阻害剤の量および抗癌剤の量は併せて癌を処置するのに有効な量を構成する。
【0024】
本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤と抗癌剤との組み合わせは、組み合わせ処置法が各成分を処置用量で単独投与した場合の相加効果よりも有意に良好な抗癌的結果(例えば、細胞増殖停止、アポトーシス、分化の誘導、細胞死)を生じる場合に、処置上相乗的と考えられる。標準的統計分析を用いて、結果が有意に良好である場合を調べることができる。例えば、マン-ウィットニー検定または他の一般的に受け入れられている統計分析を用いることができる。
【0025】
処置法は任意の順で逐次、同時またはその組み合わせで行うことができる。例えば、第一の処置手順、すなわちHDAC阻害剤の投与を、第二の処置手順、すなわち抗癌剤の前、抗癌剤による第二の処置の後、抗癌剤による第二の処置と同時、またはその組み合わせで行うことができる。例えば、全処置期間はHDAC阻害剤について決定することができる。抗癌剤はHDAC阻害剤による処置の開始前、またはHDAC阻害剤による処置後に投与することができる。加えて、抗癌剤による処置はHDAC阻害剤投与期間中に投与することもできるが、HDAC阻害剤処置期間の全体を通して行う必要はない。同様に、HDAC阻害剤による処置は抗癌剤投与期間中に投与することもできるが、抗癌剤処置期間の全体を通して行う必要はない。もう一つの態様において、処置法は、HDAC阻害剤または抗癌剤のいずれか一つの薬剤による予備処置と、続く処置期間中の第二の薬剤の追加を含む。
【0026】
本発明の一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は任意の一つまたは複数の追加のHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤、遺伝子治療剤、またはそれらの任意の組み合わせとの組み合わせで投与することができる。
【0027】
本発明の一つの特定の態様において、HDAC阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)で、これは任意の一つまたは複数の別のHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤、遺伝子治療剤、またはそれらの任意の組み合わせとの組み合わせで投与することができる。
【0028】
本発明において用いるのに適したHDAC阻害剤には、本明細書において定義されるヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子ケトン誘導体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の方法において用いるのに適したHDAC阻害剤の具体的な非限定例は下記である:
A)SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸、アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(Azelaic Bishydroxamic Acid:ABHA)、アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カルポ(carpoic)ヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、CHAP、MW2796、およびMW2996から選択されるヒドロキサム酸誘導体;
B)トラポキシンA、FR901228(FK 228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC-トキシン、WF27082、ならびにクラミドシンから選択される環状テトラペプチド;
C)酪酸ナトリウム、イソ吉草酸塩、吉草酸塩、4フェニル酪酸塩(4-PBA)、フェニル酪酸塩(PB)、プロピオン酸塩、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニル酢酸塩、3-ブロモプロピオン酸塩、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロ酸塩から選択される短鎖脂肪酸(SCFA);
D)CI-994、MS-27-275(MS-275)、およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体から選択されるベンズアミド誘導体;
E)トリフルオロメチルケトンおよびN-メチル-α-ケトアミドなどのα-ケトアミドから選択される求電子ケトン誘導体;ならびに
F)天然物、サマプリン、およびデプデシンを含むその他のHDAC阻害剤。
【0029】
具体的なHDAC阻害剤には、下記が含まれる:
下記の構造式で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA):

下記の構造式で表されるピロキサミド:

下記の構造式で表されるm-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA):

【0030】
本発明の方法において用いるのに適したHDAC阻害剤の他の非限定例は下記である:
下記の構造で表される化合物

(式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である);
下記の構造で表される化合物

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である);
下記の構造で表される化合物

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である)。
【0031】
本発明における使用に適したアルキル化剤には、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロリムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチンおよびシスプラチン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0032】
本発明における使用に適した抗生物質は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンである。
【0033】
本発明における使用に適した代謝拮抗剤には、フロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、およびゲムシタビンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、ゲムシタビンにおける代謝拮抗剤。
【0034】
本発明における使用に適したホルモン剤には、エストロゲン、プロゲストゲン、抗エステロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、LHRH類縁体、アロマターゼ阻害剤、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、アミノグルテチミド、テトラゾール、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、およびミフェプリストーンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0035】
本発明における使用に適した植物由来薬剤には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、エトポシド テニポシド、パクリタキセルおよびドセタキセルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0036】
本発明における使用に適した生物学的薬剤には、免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、癌抑制遺伝子、および癌ワクチンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、免疫調節タンパク質はインターロイキン2、インターロイキン4、インターロイキン12、インターフェロンE1、インターフェロンD、インターフェロンα、エリスロポエチン、顆粒球-CSF、顆粒球、マクロファージ-CSF、カルメット-ゲラン杆菌、レバミソール、またはオクトレオチドでありうる。さらに、癌抑制遺伝子はDPC-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA、またはBRCA2でありうる。
【0037】
HDAC阻害剤(例えばSAHA)および抗癌剤は、当業者には知られているいかなる公知の投与法によっても投与することができる。投与経路の例には、経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形での経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0038】
当然のことながら、SAHAまたは他のHDAC阻害剤の任意の一つの投与経路は抗癌剤の投与経路とは無関係である。SAHAの現在好ましい投与経路は経口投与である。したがって、本態様に従い、SAHAを経口投与し、第二の薬剤(抗癌剤)を経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する。
【0039】
SAHAまたはHDAC阻害剤の任意の一つは、抗癌剤の効果と併せて、癌を処置するのに有効な用量が得られる任意の用量および投与計画に従って投与することができる。例えば、SAHAまたはHDAC阻害剤の任意の一つは、1日合計用量800mgまでを、好ましくは経口で、1日1、2、または3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与することができる。
【0040】
したがって、本発明はそれを必要としている被験者の癌の処置法であって、第一の処置手順において1日合計用量800mgまでの第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、それを必要としている被験者に投与することによる方法に関する。
【0041】
一つの態様において、HDAC阻害剤、例えばSAHAを、好ましくは経口投与に適した薬学的組成物中で投与する。現在好ましい態様において、SAHAは、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を含むことができるゼラチンカプセル中で経口投与する。
【0042】
HDAC阻害剤は、患者ごとに変動しうる1日合計用量で投与することができ、変動する投与計画で投与してもよい。適当な用量は、約25〜4000mg/m2の間の1日合計用量を、経口で、1日1回、1日2回、または1日3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与するものである。さらに、組成物はサイクルの間に休止期間を含むサイクル(例えば、2から8週間の処置、および処置と処置の間に1週間までの休止期間)で投与してもよい。
【0043】
一つの態様において、組成物は約200〜600mgの用量で1日1回投与する。もう一つの態様において、組成物は約200〜400mgの用量で1日2回投与する。もう一つの態様において、組成物は約200〜400mgの用量で1日2回、間欠的に、例えば、1週間あたり3、4、または5日投与する。一つの態様において、1日用量は200mgであり、これを1日1回、1日2回、または1日3回投与することができる。一つの態様において、1日用量は300mgであり、これを1日1回、1日2回、または1日3回投与することができる。一つの態様において、1日用量は400mgであり、これを1日1回、1日2回、または1日3回投与することができる。
【0044】
当業者であれば、HDAC阻害剤の任意の一つまたは複数の特定の用量および投与計画は、組み合わせ処置において用いる抗癌剤の任意の一つまたは複数にも適用可能であることは明らかである。さらに、抗癌剤の特定の用量および投与計画はさらに変動してもよく、最適な用量、投与計画、および投与経路は、用いている特定の抗癌剤に基づいて決定することになる。
【0045】
本発明は、被験者の新生細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、第一の処置手順において第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)を被験者に投与することによる方法も提供する。
【0046】
本発明は、新生細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ法であって、細胞を第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)と接触させることによる方法も提供する。
【0047】
併用療法は、二つの処置様式に関連する区別可能な毒性の点から見て処置上の利益を提供することができる。例えば、HDAC阻害剤による処置は抗癌剤では見られない特定の毒性を引き起こすことがあり、逆もまた同じである。したがって、この区別可能な毒性により、併用療法が一緒になって処置的用量を提供する一方で、組み合わせ薬剤の各成分の毒性を避けるように、各処置を該毒性がないか、または最小限となる用量で投与することが可能になる。さらに、組み合わせ処置の結果として得られる処置効果が増強される、または相乗的である、例えば、相加的処置効果よりも有意に良好である場合、各薬剤の用量をさらに減らし、したがって関連する毒性をさらに大幅に低減することができる。
【0048】
発明の詳細な説明
本発明は、それを必要としている被験者の癌の処置法であって、第一の処置手順において第一の量のHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、それを必要としている被験者に投与することによる方法に関する。HDAC阻害剤および抗癌剤の効果は相加的であっても相乗的であってもよい。
【0049】
本発明は、それを必要としている被験者の癌の処置法であって、第一の処置手順において第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、それを必要としている被験者に投与することによる方法にも関する。
【0050】
本発明に関連して、その様々な文法上の形の「処置」という用語は、疾患状態、疾患進行、疾患の原因因子(例えば細菌またはウイルス)または他の異常な状態の有害効果を予防する(すなわち、化学的に予防する)、治癒させる、逆転させる、減弱させる、軽減する、最小化する、抑制する、または停止させることを意味する。例えば、処置は疾患の症状(すなわち、必ずしもすべての症状ではない)を軽減すること、または疾患の進行を低下させることを含みうる。本発明の方法のいくつかは病因因子の物理的除去を含むため、当業者であればこれらは本発明の化合物を病因因子への曝露前、または曝露と同時に投与する場合と、本発明の化合物を病因因子への曝露後(かなり後でも)に投与する場合とで、同等に有効であることを理解すると考えられる。
【0051】
本明細書において用いられる癌の処置とは、哺乳動物、例えばヒトにおいて、癌の転移を含む癌の進行を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;癌の転移を含む癌の再発を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;または癌の発症もしくは発生を部分的もしくは完全に予防(化学的予防)することを意味する。さらに、本発明の方法は、ヒト癌患者の化学的予防の処置を意図する。しかし本方法は、他の哺乳動物における癌の処置に有効である可能性もある。
【0052】
本明細書において用いられる「処置上有効な量」という用語は、併用療法における第一および第二の処置の併せた量(combined amount)を限定することが意図される。併せた量は、所望の生体反応を達成すると考えられる。本発明において、所望の生体反応は、哺乳動物、例えばヒトにおける、癌の転移を含む癌の進行の部分的もしくは完全な阻害、遅延、もしくは防止;癌の転移を含む癌の再発の部分的もしくは完全な阻害、遅延、もしくは防止;または癌の発症もしくは発生の部分的もしくは完全な予防(化学的予防)である。
【0053】
本明細書において用いられる「組み合わせ処置」、「併用療法」、「組み合わせ(combined)処置」または「組み合わせ(combinatorial)処置」なる用語は交換可能に用いられ、少なくとも二つの異なる治療剤による個体の処置を意味する。本発明に従い、個体を本明細書に記載の第一の治療剤、好ましくはSAHAまたは別のHDAC阻害剤で処置する。第二の治療剤は別のHDAC阻害剤であってもよく、または本明細書に記載の任意の臨床上確立された抗癌剤であってもよい。組み合わせ処置は第三またはさらなる治療剤を含んでいてもよい。
【0054】
この方法は、第一の処置手順において第一の量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えばSAHA、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤を、それを必要としている患者に投与する段階を含む。第一および第二の処置は併せて処置上有効な量を含む。
【0055】
本発明はさらに、癌の処置のために有用な薬学的組み合わせにも関する。薬学的組み合わせは、第一の量のHDAC阻害剤、例えばSAHA、および第二の量の抗癌剤を含む。第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む。
【0056】
本発明はさらに、癌処置用医薬品を製造するための、第一の量のHDAC阻害剤、および第二の量の抗癌剤の使用に関する。
【0057】
本発明の特定の態様において、HDAC阻害剤と抗癌剤との組み合わせは相加的で、すなわち組み合わせ処置法は各成分を単独で投与した場合の相加効果である結果を生じる。本態様に従い、HDAC阻害剤の量および抗癌剤の量は併せて癌を処置するのに有効な量を構成する。
【0058】
本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤と抗癌剤との組み合わせは、組み合わせ処置法が各成分を処置用量で単独投与した場合の相加効果よりも有意に良好な抗癌的結果(例えば、細胞増殖停止、アポトーシス、分化の誘導、細胞死)を生じる場合に、処置上相乗的と考えられる。標準的統計分析を用いて、結果が有意に良好である場合を調べることができる。例えば、マン-ウィットニー検定または他の一般的に受け入れられている統計分析を用いることができる。
【0059】
処置法は任意の順で逐次、同時またはその組み合わせで行うことができる。例えば、第一の処置手順、すなわちHDAC阻害剤の投与を、第二の処置手順、すなわち抗癌剤の前、抗癌剤による第二の処置の後、抗癌剤による第二の処置と同時、またはその組み合わせで行うことができる。例えば、全処置期間はHDAC阻害剤について決定することができる。抗癌剤はHDAC阻害剤による処置の開始前、またはHDAC阻害剤による処置後に投与することができる。加えて、抗癌剤による処置はHDAC阻害剤投与期間中に投与することもできるが、HDAC阻害剤処置期間の全体を通して行う必要はない。もう一つの態様において、処置法は、HDAC阻害剤または抗癌剤のいずれか一つの薬剤による予備処置と、続く第二の薬剤の追加を含む。
【0060】
本発明の方法は、固形腫瘍(例えば、肺、乳房、結腸、前立腺、膀胱、直腸、脳または子宮内膜の腫瘍)、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、癌腫(例えば、膀胱癌、腎癌、乳癌、結腸直腸癌)、神経芽細胞腫、または黒色腫を含むが、それらに限定されるわけではない、広範な癌の処置において有用である。これらの癌の非限定例には、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫、脳神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨癌、および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭、および食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、基底細胞癌、潰瘍化型および乳頭状型両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、髄様癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網細胞肉腫、カポジ肉腫、神経芽細胞腫ならびに網膜芽細胞腫などの一般的な成人固形腫瘍が含まれる。
【0061】
本発明の一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は追加のHDAC阻害剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤はアルキル化剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は抗生物質との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は代謝拮抗剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤はホルモン剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は植物由来薬剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は抗血管形成剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は分化誘導剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は細胞増殖停止誘導剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤はアポトーシス誘導剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は細胞毒性剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は生物学的薬剤との組み合わせで投与することができる。本発明のもう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤は追加のHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤または生物学的薬剤の任意の組み合わせとの組み合わせで投与することができる。
【0062】
本発明の一つの特定の態様において、HDAC阻害剤はSAHAで、これは任意の一つまたは複数の別のHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤、遺伝子治療剤、またはそれらの任意の組み合わせとの組み合わせで投与することができる。
【0063】
併用療法は、二つの処置様式に関連する区別可能な毒性の点から見て処置上の利益を提供することができる。例えば、HDAC阻害剤による処置は抗癌剤では見られない特定の毒性を引き起こすことがあり、逆もまた同じである。したがって、この区別可能な毒性により、併用療法が一緒になって処置的用量を提供する一方で、組み合わせ薬剤の各成分の毒性を避けるように、各処置を該毒性がないか、または最小限となる用量で投与することが可能になる。さらに、組み合わせ処置の結果として得られる処置効果が増強される、または相乗的である、例えば、相加的処置効果よりも有意に良好である場合、各薬剤の用量をさらに減らし、したがって関連する毒性をさらに大幅に低減することができる。
【0064】
ヒストンデアセチラーゼおよびヒストンデアセチラーゼ阻害剤
本明細書において用いられるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、本明細書において用いられるとおり、ヌクレオソームコアヒストンのアミノ末端におけるリシン残基からのアセチル基除去を触媒する酵素である。したがって、HDACはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と共に、ヒストンのアセチル化状態を制御する。ヒストンのアセチル化は遺伝子発現に影響をおよぼし、ヒドロキサム酸誘導体のハイブリッド極性化合物であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのHDAC阻害剤は、インビトロで形質転換細胞の増殖停止、分化および/またはアポトーシスを誘導し、かつインビボで腫瘍増殖を阻害する。HDACは構造上の相同性に基づき、三つのクラスに分類することができる。クラスI HDAC(HDAC 1、2、3および8)は酵母RPD3タンパク質との類似性を有し、核に局在し、転写コリプレッサーに関連する複合体で見いだされる。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7および9)は酵母HDA1タンパク質と類似で、核および細胞質両方の細胞下に局在する。クラスIおよびII HDACはいずれも、SAHAなどのヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤によって阻害される。クラスIII HDACは、酵母SIR2タンパク質に関係し、ヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤によって阻害されない、NAD依存性酵素の構造的に遠いクラスを形成する。
【0065】
本明細書において用いられるヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはHDAC阻害剤は、インビボ、インビトロまたは両方でヒストンの脱アセチル化を阻害することができる化合物である。したがって、HDAC阻害剤は少なくとも一つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも一つのヒストンの脱アセチル化を阻害した結果、アセチル化ヒストンの増加が起こり、アセチル化ヒストンの蓄積はHDAC阻害剤の活性を評価するのに適した生物マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積を分析することができる方法を用いて、目的の化合物のHDAC阻害活性を調べることができる。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害しうる化合物は他の基質にも結合することができ、したがって酵素などの他の生物活性分子を阻害することもできることが理解される。本発明の化合物は前述のヒストンデアセチラーゼのいずれも、またはいかなる他のヒストンデアセチラーゼも阻害しうることも理解されるべきである。
【0066】
例えば、HDAC阻害剤の投与を受けている患者において、末梢単核細胞ならびにHDAC阻害剤で処置した組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を適当な対照と比べて調べることができる。
【0067】
特定の化合物のHDAC阻害活性を、例えば少なくとも一つのヒストンデアセチラーゼの阻害を示す酵素アッセイを用いて、インビトロで評価することができる。さらに、特定の組成物で処置した細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積を調べることにより、化合物のHDAC阻害活性を評価することができる。
【0068】
アセチル化ヒストン蓄積の分析法は文献において周知である。例えば、Marks, P.A. et al., J. Natl. Cancer Inst., 92:1210-1215, 2000、Butler, L.M. et al., Cancer Res. 60:5165-5170 (2000)、Richon, V.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 95:3003-3007, 1998、およびYoshida, M. et al., J. Biol. Chem., 265:17174-17179, 1990参照。
【0069】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を評価するための酵素アッセイは下記のとおりに行うことができる。簡単に言うと、親和性により精製したヒトエピトープ標識(フラグ)HDAC1に対するHDAC阻害剤化合物の効果を、酵素調製物を基質非存在下、氷上で約20分間、指示された量の阻害剤化合物と共にインキュベートすることにより分析する。基質([3H]アセチル標識マウス赤白血病細胞由来ヒストン)を加え、試料を全量30μLとし、37℃で20分間インキュベートする。次いで、反応を停止し、遊離したアセテートを抽出し、放射能放出量をシンチレーション計数により定量する。HDAC阻害剤化合物の活性を評価するのに有用な代替アッセイは、BIOMOL(登録商標) Research Laboratories, Inc., Plymouth Meeting, PAから入手可能な「HDAC Fluorescent Activity Assay; Drug Discovery Kit-AK-500」である。
【0070】
インビボ試験は下記のとおりに行うことができる。動物、例えばマウスにHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射する。選択した組織、例えば脳、脾臓、肝臓などを、投与後のあらかじめ決められた時間に摘出する。ヒストンを組織から、基本的にYoshida et al., J. Biol. Chem. 265:17174-17179, 1990に記載のとおりに単離する。等量のヒストン(約1μg)を15%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、Hybond-Pフィルター(Amershamから入手可能)上に転写する。フィルターを3%ミルクでブロックし、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(α-Ac-H4)および抗アセチル化ヒストンH3抗体(α-Ac-H3)(Upstate Biotechnology, Inc.)をプローブに用いて調べる。アセチル化ヒストンのレベルを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)およびSuperSignal化学発光基質(Pierce)を用いて可視化する。ヒストンタンパク質の添加対照として、並行ゲルを行い、クーマシーブルー(CB)で染色する。
【0071】
加えて、ヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤は、p21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることが明らかにされている。p21WAF1タンパク質は、標準の方法を用いて様々な形質転換細胞でHDAC阻害剤との培養の2時間以内に誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導はこの遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積に関係している。したがって、p21WAF1の誘導は、形質転換細胞でHDAC阻害剤によって引き起こされるG1細胞周期停止に関与していると考えられる。
【0072】
HDAC阻害剤は、本明細書に記載の癌の任意の一つなどの、新生物疾患の増殖によって特徴付けられるより広い範囲の疾患を処置する際に有効である。しかし、HDAC阻害剤の処置上の有用性は癌の処置に限定されるものではない。それよりも、HDAC阻害剤が有用であることが判明している広範囲の疾患がある。
【0073】
例えば、HDAC阻害剤、特にSAHAは、様々な急性および慢性炎症疾患、自己免疫疾患、アレルギー疾患、酸化ストレスに関連する疾患、および細胞過剰増殖によって特徴付けられる疾患の処置において有用であることが明らかにされている。非限定例は、慢性関節リウマチ(RA)および乾癬性関節炎を含む関節の炎症状態;クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞仲介性乾癬を含む)および皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、じんま疹などの炎症性皮膚病;脈管炎(例えば、壊死性、皮膚、および過敏性脈管炎);好酸球性筋肉炎、好酸球性筋膜炎;皮膚もしくは臓器の白血球浸潤、脳虚血を含む虚血性傷害(例えば、外傷、てんかん、出血または卒中の結果としての脳傷害で、それぞれ神経変性を引き起こすこともある)を伴う癌;HIV、心不全、慢性、急性もしくは悪性肝疾患、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;カヘキシー/食欲不振;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱;糖尿病(例えば、インスリン性糖尿病または若年発症型糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶(例えば、移植において);出血性ショック;痛覚過敏;炎症性腸疾患;多発性硬化症;筋疾患(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝);骨粗鬆症;パーキンソン病;疼痛;早期産;乾癬;再灌流傷害;サイトカイン誘導性毒性(例えば、敗血症性ショック、エンドトキシンショック);放射線療法の副作用、側頭下顎関節疾患、腫瘍転移;または挫傷、捻挫、軟骨損傷、熱傷などの外傷、整形外科手術、感染症もしくは他の疾患過程が原因の炎症状態である。アレルギー疾患および状態には、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に関連するILD)などの呼吸器アレルギー疾患;全身アナフィラキシーまたは過敏反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対して)、昆虫刺傷アレルギーなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0074】
例えば、HDAC阻害剤、特にSAHAは、様々な神経変性疾患の処置において有用であることが明らかにされており、その非網羅リストは下記である:
I. アルツハイマー病;アルツハイマー型の老人性痴呆;およびピック病(脳葉萎縮)などの、他の顕著な神経学的徴候がない進行性痴呆によって特徴付けられる障害。
II. A)主に成人において現れる症候群(例えば、ハンチントン病、痴呆と運動失調および/またはパーキンソン病の症状とを組み合わせた多系統萎縮、進行性核上麻痺(スティール-リチャードソン-オルスゼフスキー症候群)、びまん性レビ小体疾患、ならびに皮質歯状核黒質変性症);ならびにB)主に小児および青少年において現れる症候群(例えば、ハレルフォルデン-スパッツ病および進行性家族性ミオクロニー性てんかん)などの、進行性痴呆と他の顕著な神経学的異常とを組み合わせた症候群。
III. 振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性、進行性核上麻痺、捻転性失調(捻転性痙攣;変形性筋緊張異常)、痙性斜頚および他の運動異常、家族性振戦、ならびにジル-ド-ラ-ツレット症候群などの、徐々に発生する姿勢および運動異常症候群。
IV. 小脳変性(例えば、小脳皮質変性およびオリーブ橋小脳萎縮(OPCA));および脊髄小脳変性(フリードライヒ失調症および関連障害)などの、進行性失調症候群。
V. 中枢自律神経系不全症候群(シャイ-ドレーガー症候群)。
VI. 知覚変化を伴わない筋無力および衰弱症候群(筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋萎縮(例えば、乳児脊髄筋萎縮(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、若年性脊髄筋萎縮(ウォルファルト-クーゲルベルク-ウェランダー病)および他の型の家族性脊髄筋萎縮)、原発性側索硬化症、および遺伝性痙性対麻痺などの運動神経疾患。
VII. 腓骨筋萎縮(シャルコー-マリー-ツース病)、肥厚性間質性多発神経障害(デジェリーヌ-スコッタス病)、およびその他の型の慢性進行性神経障害などの、知覚変化を伴う筋無力および衰弱症候群(進行性神経筋萎縮;慢性家族性多発神経障害)。
VIII. 網膜色素変性症(色素性網膜炎)、および遺伝性視神経萎縮(レーバー病)などの進行性視覚障害症候群。
【0075】
典型的には、HDAC阻害剤は5つの一般的クラスに分けられる:1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;および5)求電子ケトン。
【0076】
したがって、本発明はその広い範囲内に、1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;5)求電子ケトン;ならびに/あるいはヒストンデアセチラーゼ阻害において用いるためにヒストンデアセチラーゼを阻害する、新生物細胞において終末分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを誘導する、かつ/または腫瘍において腫瘍細胞の分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを誘導することができる任意の他のクラスの化合物であるHDAC阻害剤を含む組成物を含む。
【0077】
そのようなHDAC阻害剤の非限定例を以下に示す。本発明は本明細書に記載のHDAC阻害剤のいかなる塩、結晶構造、アモルファス構造、水和物、誘導体、代謝物、立体異性体、構造異性体、およびプロドラッグも含むことが理解される。
【0078】
A. ヒドロキサム酸誘導体
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95,3003-3007 (1998));m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(Richon et al., supra);ピロキサミド;トリコスタチンA(TSA)およびトリコスタチンCなどのトリコスタチン類縁体(Koghe et al. 1998. Biochem. Pharmacol. 56: 1359-1364);サリチルヒドロキサム酸(Andrews et al., International J. Parasitology 30,761-768 (2000));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許第5,608,108号);アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrews et al., supra);アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)(Qiu et al., Mol. Biol. Cell 11, 2069-2083 (2000));6-(3-クロロフェニルウレイド)carpoicヒドロキサム酸(3Cl-UCHA);オキサムフラチン[(2E)-5-[3-[(フェニルスルホニル)アミノフェニル]-ペンタ-2-エン-4-イノヒドロキサム酸](Kim et al. Oncogene, 18: 2461 2470 (1999));A-161906、スクリプタイド(Su et al. 2000 Cancer Research, 60: 3137-3142);PXD-101(Prolifix);LAQ-824;CHAP;MW2796(Andrews et al., supra);MW2996(Andrews et al., supra);または米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号に開示されているヒドロキサム酸のいずれかなど。
【0079】
B. 環状テトラペプチド
トラポキシンA(TPX)-環状テトラペプチド(シクロ-(L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカノイル))(Kijima et al., J Biol. Chem. 268,22429-22435 (1993));FR901228(FK 228、デプシペプチド)(Nakajima et al., Ex. Cell Res. 241,126-133 (1998));FR225497環状テトラペプチド(H. Mori et al., PCT出願WO 00/08048 (17 February 2000));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N-O-メチル-L-トリプトファニル-L-イソロイシニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソデカノイル)](Darkin-Rattray et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93,1314313147 (1996));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb(P. Dulski et al., PCT出願WO 97/11366);CHAP、HC-トキシン環状テトラペプチド(Bosch et al., Plant Cell 7, 1941-1950 (1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO 98/48825);ならびにクラミドシン(Bosch et al., supra)など。
【0080】
C. 短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体
酪酸ナトリウム(Cousens et al., J. Biol. Chem. 254,1716-1723 (1979));イソ吉草酸塩(McBain et al., Biochem. Pharm. 53: 1357-1368 (1997));吉草酸塩(McBain et al., supra);4-フェニル酪酸塩(4-PBA)(Lea and Tulsyan, Anticancer Research, 15,879-873 (1995));フェニル酪酸塩(PB)(Wang et al., Cancer Research, 59, 2766-2799 (1999));プロピオン酸塩(McBain et al., supra);ブチルアミド(Lea and Tulsyan, supra);イソブチルアミド(Lea and Tulsyan, supra);フェニル酢酸塩(Lea and Tulsyan, supra);3-ブロモプロピオン酸塩(Lea and Tulsyan, supra);トリブチリン(Guan et al., Cancer Research, 60,749-755 (2000));バルプロ酸、バルプロ酸塩およびPivanex(商標)など。
【0081】
D. ベンズアミド誘導体
CI-994;MS-275[N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saito et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 4592-4597 (1999));およびMS-275の3'-アミノ誘導体(Saito et al., supra)など。
【0082】
E. 求電子ケトン誘導体
トリフルオロメチルケトン(Frey et al, Bioorganic & Med. Chem. Lett. (2002), 12, 3443-3447; U.S. 6,511,990)およびN-メチル-α-ケトアミドなどのα-ケトアミドなど。
【0083】
F. その他のHDAC阻害剤
天然物、サマプリン、およびデプデシン(Kwon et al. 1998. PNAS 95: 3356-3361)など。
【0084】
好ましいヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、およびピロキサミドである。SAHAはヒストンデアセチラーゼ酵素の触媒ポケットに直接結合することが明らかにされている。SAHAは培養中の形質転換細胞の細胞周期停止、分化、および/またはアポトーシスを誘導し、齧歯類において腫瘍増殖を阻害する。SAHAは固形腫瘍および血液癌の両方でこれらの効果を誘導する際に有効である。SAHAは動物においてこれらに対する毒性なく腫瘍増殖を阻害する際に有効であることが明らかにされている。SAHAによって誘導される腫瘍増殖の阻害は、腫瘍におけるアセチル化ヒストンの蓄積に関連している。SAHAはラットの発癌物質誘導性(N-メチルニトロソ尿素)乳癌の発生および持続的増殖の阻害において有効である。SAHAをラットに130日間の試験中その飼料中で投与した。したがって、SAHAは、作用機序がヒストンデアセチラーゼ活性の阻害を含む、非毒性の経口活性抗腫瘍剤である。
【0085】
好ましいHDAC阻害剤は、本発明者らのいずれかに発行された米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号に開示されたものであり、前述の開示はその全内容が参照により本明細書に組み入れられ、その非限定例を以下に示す:
【0086】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式1の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく;R1およびR2が同じである場合、それぞれは置換または無置換アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミンまたはチアゾールアミノ基であり;R1およびR2が異なる場合、R1=R3-N-R4(R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシもしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成する)であり、R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0087】
式1の特定の態様において、R1およびR2は同じで、置換または無置換チアゾールアミノ基であり;かつnは約4から約8の整数である。
【0088】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式2の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシもしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し、R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0089】
式2の特定の態様において、R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはアルキルオキシ基であり;nは5から7の整数であり;かつR3-N-R4とR2とは異なる。
【0090】
式2のもう一つの特定の態様において、nは6である。式2のさらにもう一つの態様において、R4は水素原子であり、R3は置換または無置換フェニルであり、かつnは6である。式2のさらにもう一つの態様において、R4は水素原子であり、R3は置換フェニルであり、かつnは6である(フェニル置換基はメチル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6- ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メトキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される)。
【0091】
式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はシクロヘキシル基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はメトキシ基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、かつR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成する。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はベンジルオキシ基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はγ-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はβ-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はα-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、かつR3およびR4は両方メチル基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4はメチル基であり、かつR3はフェニル基である。
【0092】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式3の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、nは5から約8の整数である)。
【0093】
式3の好ましい態様において、nは6である。本態様にしたがい、HDAC阻害剤はSAHA(4)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤である。SAHAは下記の構造式で表される。

【0094】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式5の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0095】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式6の構造(ピロキサミド)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0096】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式7の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0097】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式8の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0098】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式9の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0099】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式10の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3は水素であり、かつR4はシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ基であり;かつnは5から約8の整数である)。
【0100】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式11の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ基であり;かつnは5から約8の整数である)。
【0101】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式12の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;Rは水素原子、ヒドロキシル、基、置換または無置換アルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0102】
特定の態様において、HDAC阻害剤は、X、Y、およびRがそれぞれヒドロキシルであり、mおよびnが両方5である、式12の化合物である。
【0103】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式13の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつm、nおよびoはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0104】
式13の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、かつR1およびR2はそれぞれメチル基である。式13のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、R1およびR2はそれぞれメチル基であり、nおよびoはそれぞれ6であり、かつmは2である。
【0105】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式14の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0106】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式15の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0107】
式15の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、かつmおよびnはそれぞれ5である。
【0108】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式16の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2は独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0109】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式17の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;かつnは約0から約8の整数である)。
【0110】
式17の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1はメチル基であり、R2は水素原子であり;かつmおよびnはそれぞれ2である。式17のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1はカルボニルヒドロキシルアミノ基であり、R2は水素原子であり;かつmおよびnはそれぞれ5である、式17のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれフルオロ基であり;かつmおよびnはそれぞれ2である。
【0111】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式18の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、カルボニルヒドロキシルアミノまたはフルオロ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0112】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式19の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式19の化合物である。
【0113】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式20の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式20の化合物である。
【0114】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式21の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。
【0115】
特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式21の化合物である。
【0116】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式22の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rはシアノ、メチルシアノ、ニトロ、カルボキシル、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシルアミノカルボニル、N-ヒドロキシルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,4,5-テトラフルオロ、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロ基で置換されたフェニルアミノ基であり;かつnは4から8の整数である)。
【0117】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式23の構造(m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド−CBHA)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0118】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式24の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0119】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式25の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0120】
式25の一つの特定の態様において、Rは置換フェニル基である。式25のもう一つの特定の態様において、Rは置換基がメチル、シアノ、ニトロ、チオ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メチルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メチルオキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される置換フェニル基である。
【0121】
式25のもう一つの特定の態様において、Rは置換または無置換2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは約4から約8の整数である。
【0122】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式26の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピリジン、ピペリジン、またはチアゾール基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0123】
式26の特定の態様において、Rは置換フェニル基である。式26のもう一つの特定の態様において、Rは置換基がメチル、シアノ、ニトロ、チオ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メチルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メチルオキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される置換フェニル基である。
【0124】
式26のもう一つの特定の態様において、Rはフェニルであり、かつnは5である。もう一つの態様において、nは5であり、かつRは3-クロロフェニルである。
【0125】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式27の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ直接またはリンカーを通じて結合された、置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、またはキノリニルもしくはイソキノリニルであり;nは約3から約10の整数であり、かつR3はヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルオキシ基である)。リンカーはアミド部分、例えば、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)でありうる。
【0126】
式27の特定の態様において、R1は-NH-R4(R4は置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルである)である。
【0127】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式28の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルであり;R3はヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり;かつAは同じでも異なっていてもよく、アミド部分、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)であり;かつnおよびmはそれぞれ3から10の整数である)。
【0128】
さらなる特定の態様において、化合物27または28の範囲内のより具体的な構造を有する化合物は下記のとおりである:
【0129】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式29の構造で表される:

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;かつnは3から10の整数である)。
【0130】
例えば、式29の化合物は構造30または31を有しうる:

(式中、R1、R2、およびnは式29の意味を有する)。
【0131】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式32の構造で表される:

(式中、R7は置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニル、またはイソキノリニルから選択され;nは3から10の整数であり、かつYは

から選択される)。
【0132】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式33の構造で表される:

(式中、nは3から10の整数であり、Yは

から選択され、かつR7'は

から選択される)。
【0133】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式34の構造で表される:

アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニル;nは3から10の整数であり、かつR7'は

から選択される)。
【0134】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式35の構造で表される:

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である)。
【0135】
例えば、式35の化合物は構造36または37を有しうる:

(式中、R1、R2、R4、およびnは式35の意味を有する)。
【0136】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式38の構造で表される:

(式中、Lはアミド部分、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)からなる群より選択され;かつR7およびR8はそれぞれ独立に置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルであり;nは3から10の整数であり、かつmは0〜10の整数である)。
【0137】
例えば、式38の化合物は式(39)で表すことができる。

【0138】
本発明の方法において用いるのに適した他のHDAC阻害剤には、下記のより具体的な式に示されるものが含まれる:
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式40の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式41の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式42の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式43の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から1,0の整数である)またはその鏡像異性体。式44の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式45の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式46の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式47の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式48の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式49の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式50の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式51の一つの特定の態様において、n=5である。
【0139】
そのような化合物の他の例および他のHDAC阻害剤は、すべてBreslow et al.への1994年11月29日発行の米国特許第5,369,108号、1997年12月23日発行の米国特許第5,700,811号、1998年6月30日発行の米国特許第5,773,474号、1999年8月3日発行の米国特許第5,932,616号、および2003年1月28日発行の米国特許第6,511,990号;すべてMarks et al.への1991年10月8日発行の米国特許第5,055,608号、1992年12月29日発行の米国特許第5,175,191号、および1997年3月4日発行の米国特許第5,608,108号;ならびにYoshida, M., et al., Bioassays 17, 423-430 (1995);Saito, A., et al., PNAS USA 96, 4592-4597, (1999);Furamai, R. et al., PNAS USA 98 (1), 87-92 (2001);Komatsu, Y., et al., Cancer Res. 61(11), 4459-4466 (2001);Su, G.H., et al., Cancer Res. 60, 3137-3142 (2000);Lee, B.I. et al., Cancer Res. 61(3), 931-934;Suzuki, T., et al., J. Med. Chem. 42(15), 3001-3003 (1999);Sloan-Kettering Institute for Cancer Research and The Trustees of Columbia Universityへの2001年3月15日公開の公開PCT出願WO 01/18171;Hoffmann-La Rocheへの公開PCT出願WO02/246144;Novartisへの公開PCT出願WO02/22577;Prolifixへの公開PCT出願WO02/30879;すべてMethylgene, Inc.への公開PCT出願WO 01/38322(2001年5月31日公開)、WO 01/70675(2001年9月27日公開)およびWO 00/71703(2000年11月30日公開);Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd.への1999年10月8日公開の公開PCT出願WO 00/21979;Beacon Laboratories, L.L.C.への1998年3月11日公開の公開PCT出願WO 98/40080;およびCurtin M.(HDAC阻害剤の現在の特許状態Expert Opin. Ther. Patents (2002) 12(9): 1375-1384およびその中で引用された参照文献)において見いだすことができる。
【0140】
SAHAまたは他のHDAC阻害剤のいずれも、実験の詳細の項に概要を記載した方法、または米国特許第5,369,108号、第5,700,811号、第5,932,616号および第6,511,990号(その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の方法、または当業者には公知のいかなる他の方法に従っても合成することができる。
【0141】
HDAC阻害剤の特定の非限定例を下記の表に示す。本発明は下記に示す化合物に構造が類似であり、ヒストンデアセチラーゼを阻害することができる、いかなる化合物も含むことが理解されるべきである。


【0142】
化学的定義
「脂肪族基」は非芳香族で、炭素および水素だけからなり、任意に一つまたは複数の不飽和の単位、例えば二重および/もしくは三重結合を含みうる。脂肪族基は直鎖、分枝または環状でありうる。直鎖または分枝の場合、脂肪族基は典型的には約1個から約12個の間の炭素原子、より典型的には約1個から約6個の間の炭素原子を含む。環状の場合、脂肪族基は典型的には約3個から約10個の間の炭素原子、より典型的には約3個から約7個の間の炭素原子を含む。脂肪族基は好ましくはC1〜C12直鎖または分枝アルキル基(すなわち、完全飽和脂肪族基)、より好ましくはC1〜C6直鎖または分枝アルキル基である。例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが含まれる。
【0143】
本明細書において用いられる「芳香族基」(「アリール基」とも呼ばれる)には、本明細書において定義される炭素環芳香族基、複素環芳香族基(「ヘテロアリールとも呼ばれる)、および縮合多環芳香環系が含まれる。
【0144】
「炭素環芳香族基」は5から14炭素原子の芳香環で、インダンなどの5または6員シクロアルキル基と縮合した炭素環芳香族基が含まれる。炭素環芳香族基の例には、フェニル、ナフチル、例えば1-ナフチルおよび2-ナフチル;アントラセニル、例えば1-アントラセニル、2-アントラセニル;フェナントレニル;フルオレノニル、例えば9-フルオレノニル、インダニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。炭素環芳香族基は下記の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0145】
「複素環芳香族基」(または「ヘテロアリール」)は、5から14環炭素原子およびO、N、またはSから選択される1から4個のヘテロ原子の単環式、二環式または三環式芳香環である。ヘテロアリールの例には、ピリジル、例えば2-ピリジル(α-ピリジルとも呼ばれる)、3-ピリジル(β-ピリジルとも呼ばれる)および4-ピリジル((γ-ピリジルとも呼ばれる);チエニル、例えば2-チエニルおよび3-チエニル;フラニル、例えば2-フラニルおよび3-フラニル;ピリミジル、例えば2-ピリミジルおよび4-ピリミジル;イミダゾリル、例えば2-イミダゾリル;ピラニル、例えば2-ピラニルおよび3-ピラニル;ピラゾリル、例えば4-ピラゾリルおよび5-ピラゾリル;チアゾリル、例えば2-チアゾリル、4-チアゾリルおよび5-チアゾリル;チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル、例えば2-オキサゾイル、4-オキサゾイルおよび5-オキサゾイル;イソキサゾイル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。前述の定義の複素環芳香族(またはヘテロアリール)は、芳香族基に関する下記の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0146】
「縮合多環芳香」環系は、一つまたは複数の他のヘテロアリールまたは非芳香族複素環と縮合した炭素環芳香族基である。例には、キノリニルおよびイソキノリニル、例えば2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニルおよび8-キノリニル、1-イソキノリニル、3-キノリニル、4-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニルおよび8-イソキノリニル;ベンゾフラニル、例えば2-ベンゾフラニルおよび3-ベンゾフラニル;ジベンゾフラニル、例えば2,3-ジヒドロベンゾフラニル;ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル、例えば2-ベンゾチエニルおよび3-ベンゾチエニル;インドリル、例えば2-インドリルおよび3-インドリル;ベンゾチアゾリル、例えば2-ベンゾチアゾリル;ベンゾオキサゾリル、例えば2-ベンゾオキサゾリル;ベンズイミダゾリル、例えば2-ベンゾイミダゾリル;イソインドリル、例えば1-イソインドリルおよび3-イソインドリル;ベンゾトリアゾリル;プリニル;チアナフテニルなどが含まれる。縮合多環芳香環系は、本明細書に記載の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0147】
「アラルキル基」(アリールアルキル)は、芳香族基、好ましくはフェニル基で置換されたアルキル基である。好ましいアラルキル基はベンジル基である。適当な芳香族基は本明細書に記載しており、適当なアルキル基は本明細書に記載している。アラルキル基に適した置換基は本明細書に記載している。
【0148】
「アリールオキシ基」は、酸素を介して化合物に結合されたアリール基(例えばフェノキシ)である。
【0149】
本明細書において用いられる「アルコキシ基」(アルキルオキシ)は、酸素を介して化合物に結合された、直鎖もしくは分枝C1〜C12または環状C3〜C12アルキル基である。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、およびプロポキシが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0150】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)は、アリールアルキルのアルキル部分上の酸素を介して化合物に結合された、アリールアルキル基(例えばフェニルメトキシ)である。
【0151】
本明細書において用いられる「アリールアミノ基」は、窒素を介して化合物に結合されたアリール基である。
【0152】
本明細書において用いられる「アリールアルキルアミノ基」は、アリールアルキルのアルキル部分上の窒素を介して化合物に結合された、アリールアルキル基である。
【0153】
本明細書において用いられる多くの部分または基は「置換または無置換」のいずれかと言われる。ある部分(moiety)が置換されていると言われる場合、これは当業者には置換に利用可能であることが公知の部分(moiety)のいかなる部分(portion)も置換されうることを意味する。例えば、置換可能な基は水素以外の基(すなわち置換基)で置き換えられた水素原子でありうる。複数の置換基が存在しうる。複数の置換基が存在する場合、置換基は同じでも異なっていてもよく、置換は置換可能部位のいずれにあってもよい。置換のそのような手段は当技術分野において周知である。例示のためであって、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではないが、置換基である基のいくつかの例は下記のとおりである:アルキル基(これも、CF3などの一つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、アルコキシ基(OCF3などで置換されていてもよい)、ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、-CN、-COH、-COOH、アミノ、アジド、N-アルキルアミノまたはN,N-ジアルキルアミノ(アルキル基も置換されていてもよい)、エステル(-C(O)-OR(Rはアルキル、アリールなどの基であって、置換されていてもよい)、アリール(最も好ましいのはフェニルで、置換されていてもよい)、アリールアルキル(置換されていてもよい)およびアリールオキシ。
【0154】
立体化学
多くの有機化合物は、直線偏光の平面を回転させる能力を有する光学活性体で存在する。光学活性化合物を記載する際、接頭辞DおよびLまたはRおよびSは分子のキラル中心の周りの絶対配置を示すために用いる。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は化合物による直線偏光の回転の徴候を示すために用い、(-)または は化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdが付いた化合物は右旋性である。所与の化学構造について、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに重ね合わせ不可能な鏡像であること以外は同じである。特定の立体異性体は鏡像異性体とも呼ばれることもあり、そのような異性体の混合物は鏡像異性混合物と呼ばれることが多い。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載の化合物の多くは一つまたは複数のキラル中心を有していてもよく、したがって異なる鏡像異性体で存在しうる。望まれる場合には、キラル炭素はアスタリスク(*)で示すことができる。本発明の式においてキラル炭素への結合を直線で示している場合、キラル炭素の(R)および(S)両方の配置、ならびに両方の鏡像異性体およびその混合物が式内に含まれることが理解される。当技術分野において用いられるとおり、キラル炭素の周りの絶対配置を明記することが望まれる場合、キラル炭素への結合の一方をくさびで示すことができ(平面よりも上の原子への結合)、他方を短い平行線の一連またはくさびで表すことができる(平面よりも下の原子への結合)。カーン-インゴールド-プレローグの表示法を用いて、キラル炭素への(R)または(S)配置を割り当てることができる。
【0155】
本発明のHDAC阻害剤が一つのキラル中心を含む場合、化合物は二つの鏡像異性体で存在し、本発明は鏡像異性体およびラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物などの鏡像異性体の混合物の両方を含む。鏡像異性体は当業者には公知の方法により、例えば結晶化によって分離することができるジアステレオ異性塩の形成(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma (CRC Press, 2001)参照);例えば結晶化、ガス-液体もしくは液体クロマトグラフィによって分離することができるジアステレオ異性誘導体もしくは複合体の形成;一方の鏡像異性体の鏡像異性体特異的試薬との選択的反応、例えば酵素によるエステル化;またはキラル環境、例えばキラルリガンドが結合したシリカなどのキラル支持体上、もしくはキラル溶媒存在下でのガス-液体もしくは液体クロマトグラフィなどにより、分割することができる。所望の鏡像異性体が前述の分離法の一つによって別の化学実体に変換される場合、所望の鏡像異性体を遊離するために、さらなる段階が必要であることが理解されると考えられる。または、特定の鏡像異性体を、光学活性試薬、基質、触媒、もしくは溶媒を用いた不斉合成により、または不斉変換により一方の鏡像異性体を他方に変換することにより、合成することもできる。
【0156】
本発明の化合物のキラル炭素における特定の絶対配置の明示は、化合物の明示された鏡像異性体が鏡像異性体過剰(ee)である、すなわち実質的に他の鏡像異性体を含まないことを意味することが理解される。例えば、化合物の「R」体は実質的に化合物の「S」体を含まず、したがって「S」体よりも鏡像異性体過剰である。反対に、化合物の「S」体は実質的に化合物の「R」体を含まず、したがって「R」体よりも鏡像異性体過剰である。本明細書において用いられる鏡像異性体過剰は、特定の鏡像異性体が50%を越えて存在することである。例えば、鏡像異性体過剰は約60%以上、約70%以上など、例えば約80%以上、約90%以上などでありうる。特定の絶対配置が明示されている特定の態様において、示された化合物の鏡像異性体過剰は少なくとも約90%である。特定の態様において、化合物の鏡像異性体過剰は少なくとも約95%、少なくとも約97.5%など、例えば少なくとも99%の鏡像異性体過剰である。
【0157】
本発明の化合物が複数のキラル炭素を有する場合、これは3つ以上の光学異性体を有する可能性があり、ジアステレオ異性体で存在しうる。例えば、二つのキラル炭素がある場合、化合物は4つまでの光学異性体および2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有する可能性がある。鏡像異性体の対(例えば(S,S)/(R,R))はお互いに鏡像の立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば(S,S)および(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体対は当業者には公知の方法、例えばクロマトグラフィまたは結晶化により分離することができ、それぞれの対の個々の鏡像異性体は前述のとおりに分離することができる。本発明はそのような化合物の各ジアステレオ異性体およびその混合物を含む。
【0158】
本明細書において用いられる「a」「an」および「the」は、文脈からそうではないことが明らかでないかぎり、単数および複数の指示物を含む。したがって、例えば、「活性物質(an active agent)」または「薬理活性物質(a pharmacologically active agent)」への言及は一つの活性物質ならびに複数の異なる活性物質の組み合わせを含み、「担体(a carrier)」への言及は複数の担体の混合物ならびに一つの担体を含み、他も同様である。
【0159】
本発明は本明細書において開示されるHDAC阻害剤のプロドラッグを含むことも意図される。任意の化合物のプロドラッグは、周知の薬理学的技術を用いて製造することができる。
【0160】
本発明は、前述の化合物に加えて、そのような化合物の同族体および類縁体の使用を含むことが意図される。この文脈において、同族体は前述の化合物に対する実質的な構造上の類似性を有する分子であり、類縁体は構造上の類似性にかかわらず実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0161】
アルキル化剤
アルキル化剤は、DNA産生のためのヌクレオチド前駆体上の化学実体などの求核残基と反応する。アルキル化剤はこれらのヌクレオチドをアルキル化し、それらのDNAへの構築を防止することにより、細胞分裂の過程に影響をおよぼす。
【0162】
アルキル化剤の例には、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロリムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチンおよびシスプラチン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの化合物はリン酸塩、アミノ、ヒドロキシル、スルフィヒドリル、カルボキシル、およびイミダゾール基と反応する。
【0163】
生理的条件下で、これらの薬物はイオン化して、感受性の核酸およびタンパク質に結合する正に荷電したイオンを生じ、細胞周期停止および/または細胞死を引き起こす。アルキル化剤は、その活性を細胞周期の特定の期とは無関係に発揮するため、細胞周期の期非特異的薬剤である。ナイトロジェンマスタードおよびアルキルアルコンスルホン酸塩は、G1またはM期の細胞に対して最も有効である。ニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード、およびアジリジンは、G1およびS期からM期への進行を損なう。Chabner and Collins eds. (1990) ''Cancer Chemotherapy: Principles and Practice'', Philadelphia: JB Lippincott.
【0164】
アルキル化剤は広範な新生物疾患に対して活性で、固形腫瘍とならんで白血病およびリンパ腫の処置において著しい活性を有する。臨床では、この薬物群は急性および慢性白血病;ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;原発性脳腫瘍;乳房、卵巣、精巣、肺、膀胱、子宮頸部、頭頸部の癌、および悪性黒色腫の処置において日常的に用いられる。
【0165】
すべてのアルキル化剤に共通の主要な毒性は骨髄抑制である。加えて、様々な重症度の胃腸有害作用が一般に発生し、特定の化合物に関連して様々な臓器の毒性が見られる。Black and Livingston (1990) Drugs 39: 489-501; and 39: 652-673.
【0166】
抗生物質
抗生物質(例えば、細胞毒性抗生物質)は、DNAまたはRNA合成を直接阻害することにより作用し、細胞周期の全体を通して有効である。抗生物質の例には、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが含まれる。これらの抗生物質は、異なる細胞成分を標的とすることにより、細胞増殖を妨害する。例えば、アントラサイクリンは、転写活性DNAの領域におけるDNAトポイソメラーゼIIの作用を妨害し、DNA鎖の切断を引き起こすと一般に考えられている。
【0167】
ブレオマイシンは鉄とキレート形成して活性化錯体を生成し、次いでこれはDNAの塩基と結合して鎖の切断および細胞死を引き起こすと一般に考えられている。
【0168】
抗生物質は、乳房、肺、胃および甲状腺の癌、リンパ腫、骨髄性白血病、骨髄腫、ならびに肉腫を含む一連の新生物疾患の治療剤として用いられてきた。このグループ内のアントラサイクリンの主な毒性は骨髄抑制、特に顆粒球減少症である。この顆粒球減少症に粘膜炎が伴うことが多く、重症度は骨髄抑制の程度に相関する。高用量のアントラサイクリン投与に関連して著しい心毒性も見られる。
【0169】
代謝拮抗剤
代謝拮抗剤(すなわち抗代謝剤)は、癌細胞の生理機能および増殖に不可欠の代謝過程を妨害する薬物群である。活動的に増殖中の癌細胞は、大量の核酸、タンパク質、脂質、および他の重要な細胞成分の連続的合成を必要とする。
【0170】
代謝拮抗剤の多くはプリンもしくはピリミジンヌクレオシドの合成を阻害するか、またはDNA複製の酵素を阻害する。いくつかの代謝拮抗剤はリボヌクレオシドおよびRNAの合成ならびに/またはアミノ酸代謝およびタンパク質合成も同様に妨害する。重要な細胞成分の合成を妨害することにより、代謝拮抗剤は癌細胞の増殖を遅延または停止させることができる。代謝拮抗剤の例には、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6-TG)、メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2-CDA)、アスパラギナーゼ、およびゲムシタビンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0171】
代謝拮抗剤は、結腸、直腸、乳房、肝臓、胃および膵臓の癌、悪性黒色腫、急性および慢性白血病ならびに有毛細胞白血病を含むいくつかの一般的な型の癌を処置するために広く用いられてきた。代謝拮抗剤処置の有害作用の多くは、骨髄または胃腸粘膜などの有糸分裂が活発な組織の細胞増殖抑制によるものである。これらの薬剤による処置を受けた患者は一般に骨髄抑制、口内炎、下痢、および
脱毛症を経験する。Chen and Grem (1992) Curr. Opin. Oncol. 4: 1089-1098.
【0172】
ホルモン剤
ホルモン剤は、その標的臓器の成長および発生を調節する薬物群である。ホルモン剤のほとんどはエストロゲン、プロゲストゲン、抗エステロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよびプロゲスチンなどの性ステロイドならびにその誘導体および類縁体である。これらのホルモン剤は性ステロイドの受容体のアンタゴニストとしてはたらき、受容体発現および重要な遺伝子の転写をダウンレギュレートすると考えられる。そのようなホルモン剤の例は、合成エストロゲン(例えばジエチルスチベストロール)、抗エステロゲン(例えばタモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロールおよびラロキシフェン)、抗アンドロゲン(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えばアミノグルテチミド、アナストロゾールおよびテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類縁体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロールおよびミフェプリストーンである。
【0173】
ホルモン剤は乳癌、前立腺癌、黒色腫および髄膜腫を処置するために用いられる。ホルモンの主要な作用はステロイド受容体を通して仲介されるため、60%の受容体陽性乳癌が第一線ホルモン療法に反応し、受容体陰性腫瘍で反応したのは10%未満であった。ホルモン剤に関連する主な副作用は発赤である。高頻度で見られる症状は骨痛の急激な増大、皮膚の傷害周辺の紅斑、および高カルシウム血症の誘導である。
【0174】
特に、子宮内膜癌はプロゲストゲンによって対抗されない高レベルのエストロゲンに曝露された女性で発生するため、プロゲストゲンは子宮内膜癌を処置するために用いられる。
【0175】
抗アンドロゲンは主にホルモン依存性の前立腺癌を処置するために用いられる。抗アンドロゲンはテストステロンのレベルを下げ、それにより腫瘍の増殖を阻害するために用いられる。
【0176】
乳癌のホルモン処置は腫瘍性乳房細胞におけるエストロゲン受容体のエストロゲン依存性活性化のレベルを下げることを含む。抗エストロゲンはエストロゲン受容体に結合することにより作用し、活性化補助因子の動員を防止し、したがってエストロゲンシグナルを阻害する。
【0177】
LHRH類縁体は前立腺癌の処置において用いられ、テストステロンのレベルを低下させ、したがって腫瘍の増殖を低減する。
【0178】
アロマターゼ阻害剤はホルモン合成に必要な酵素を阻害することにより作用する。閉経後の女性において、エストロゲンの主な供給源はアロマターゼによるアンドロステンジオンの変換を通してである。
【0179】
植物由来薬剤
植物由来薬剤は植物由来であるか、または薬剤の分子構造に基づいて修飾された薬物群である。これらは細胞分裂に必須の細胞成分の構築を妨げることにより、細胞複製を阻害する。
【0180】
植物由来薬剤の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジンおよびビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)およびテニポシド(VM-26))、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。これらの植物由来薬剤は一般にチューブリンに結合して有糸分裂を阻害する、有糸分裂阻害剤として作用する。エトポシドなどのポドフィロトキシンはトポイソメラーゼIIと相互作用することによりDNA合成を妨害し、DNA鎖切断を引き起こすと考えられている。
【0181】
植物由来薬剤は多くの型の癌を処置するために用いられる。例えば、ビンクリスチンは白血病、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、ならびに小児腫瘍神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、およびウィルムス腫瘍の処置において用いられる。ビンブラスチンはリンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉腫、およびカポジ肉腫に対して用いられる。ドキセタキセルは進行乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および卵巣癌に対し有望な活性を示した。
【0182】
エトポシドは広範な新生物に対して活性で、そのうち小細胞肺癌、精巣癌、およびNSCLCが最も反応性である。
【0183】
植物由来薬剤は処置中の患者に著しい副作用を引き起こす。ビンカアルカロイドは異なる範囲の臨床毒性を示す。ビンカアルカロイドの副作用には、神経毒性、血小板機能の変化、骨髄抑制、および白血球減少症が含まれる。パクリタキセルは用量を制限する好中球減少症を引き起こし、他の造血細胞系統は比較的控えめである。エピポフィロトキシンの主な毒性は血液関連(好中球減少症および血小板減少症)である。
【0184】
他の副作用には、一過性肝酵素異常、脱毛症、アレルギー反応、および末梢神経障害が含まれる。
【0185】
生物学的薬剤
生物学的薬剤は、単独または化学療法および/もしくは放射線療法との組み合わせで用いた場合に、癌/腫瘍の退縮を誘発する生体分子群である。生物学的薬剤の例には、サイトカインなどの免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、癌抑制遺伝子、および癌ワクチンが含まれる。
【0186】
サイトカインは顕著な免疫調節活性を有する。インターロイキン2(IL-2、アルデスロイキン)およびインターフェロン-a(IFN-a)などのいくつかのサイトカインは抗腫瘍活性を示し、転移性腎細胞癌および転移性悪性黒色腫を有する患者の処置用に認可されている。IL-2はT細胞仲介性免疫応答の中心であるT細胞増殖因子である。一部の患者におけるIL-2の選択的抗腫瘍効果は、自己と非自己とを区別する細胞仲介性免疫応答の結果であると考えられている。
【0187】
インターフェロン-αは活性が重なる23を越える関連サブタイプを含む。IFN-aは多くの固形および血液の悪性腫瘍に対して活性を示し、後者は特に感受性であると思われる。
【0188】
インターフェロンの例には、インターフェロン-α、インターフェロン-β(線維芽細胞インターフェロン)およびインターフェロン-γ(線維芽細胞インターフェロン)が含まれる。他のサイトカインの例には、エリスロポエチン(エポエチン-α)、顆粒球-CSF(フィルグラスチン)、および顆粒球、マクロファージ-CSF(サルグラモスチム)が含まれる。サイトカイン以外の他の免疫調節剤には、カルメット-ゲラン杆菌、レバミソール、および天然のホルモンであるソマトスタチンの作用を模した長期作用性オクタペプチドのオクトレオチドが含まれる。
【0189】
さらに、抗癌処置は腫瘍ワクチン接種アプローチで用いる抗体および試薬を用いた免疫療法による処置も含みうる。この療法クラスの主要な薬物は、単独または例えば癌細胞へのトキシンもしくは化学療法剤/細胞毒性剤を有する抗体である。腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は、腫瘍によって発現された抗原、好ましくは腫瘍特異抗原に対して誘発された抗体である。例えば、モノクローナル抗体登録商標HERCEPTIN(トラスツズマブ)は、転移性乳癌を含むいくつかの乳房腫瘍で過剰発現されるヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)に対して産生される。HER2タンパク質の過剰発現はより攻撃的で臨床での予後がより悪い疾患に関連する。登録商標HERCEPTINは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌の患者を処置するための単独薬剤として用いられている。
【0190】
腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のもう一つの例は、リンパ腫細胞上のCD20に対して産生され、正常および悪性CD20+前駆Bおよび成熟B細胞を選択的に枯渇させる、登録商標RITUXAN(リツキシマブ)である。
【0191】
RITUXANは、再発または抗療性の低級または濾胞性、CD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫の患者を処置するための単独薬剤として用いられている。登録商標MYELOTARG(ゲムツズマブ オゾガマイシン)および登録商標CAMPATH(アレムツズマブ)は、用いることができる腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のさらなる例である。
【0192】
腫瘍抑制遺伝子は、細胞増殖および分裂周期を阻害するよう機能し、したがって新生物の発生を防止する遺伝子である。腫瘍抑制遺伝子における突然変異によって、細胞が阻害シグナルのネットワークの一つまたは複数の成分を無視するようになり、細胞周期チェックポイントを乗り越え、制御された細胞増殖−癌の率が高くなる。腫瘍抑制遺伝子の例には、Duc-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA1およびBRCA2が含まれる。
【0193】
DPC4は膵臓癌に関係し、細胞分裂を阻害する細胞質経路に関与している。NF-1は細胞質阻害タンパク質であるRasを阻害するタンパク質をコードする。NF-1は神経系の神経線維腫および褐色細胞腫ならびに骨髄性白血病に関係している。NF-2は神経系の髄膜腫、神経鞘腫、および上衣細胞種に関係する核タンパク質をコードする。RBは細胞周期の主な阻害物質である核タンパク質のpRBタンパク質をコードする。RBは網膜芽腫ならびに骨癌、膀胱癌、小細胞肺癌および乳癌に関係している。p53は細胞分裂を制御し、アポトーシスを誘導しうるp53タンパク質をコードする。p53の突然変異および/または反応低下が広範な癌で認められる。WT1は腎臓のウィルムス腫瘍に関係している。BRCA1は乳癌および卵巣癌に、BRCA2は乳癌に関係している。腫瘍抑制遺伝子はその腫瘍抑制機能を発揮する腫瘍細胞に導入することができる。
【0194】
癌ワクチンは体の腫瘍に対する特異的免疫応答を誘導する物質群である。癌ワクチンのほとんどは研究開発中で、臨床試験は腫瘍関連抗原(TAA)について行われている。TAAは腫瘍細胞上に存在し、正常細胞には比較的存在しないか、または量が少ない構造物(すなわち、タンパク質、酵素または炭水化物)である。かなり腫瘍細胞に特異的であるため、TAAは免疫系が認識し、その破壊を引き起こす標的を提供する。TAAの例にはガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α-フェトプロテイン(AFP)、胎児性癌抗原(CEA)(結腸癌および他の腺癌、例えば、乳房、肺、胃、および膵臓癌によって産生される)、黒色腫関連抗原(MART-1、gap100、MAGE 1,3チロシナーゼ)、乳頭腫ウイルスE6およびE7断片、自己腫瘍細胞および同種腫瘍細胞の全細胞または一部/溶解物が含まれる。
【0195】
他の療法
癌を処置するために用いられる従来の細胞毒性およびホルモン療法に加えて、最近の発展により癌処置のための他の療法が導入された。
【0196】
例えば、多くの型の遺伝子療法が前臨床または臨床試験にかけられている。
【0197】
加えて、腫瘍血管新生(血管形成)の阻害に基づくアプローチが開発中である。この概念の目的は、腫瘍を新しく作られた腫瘍血管系から提供される栄養および酸素供給から遮断することである。
【0198】
加えて、癌療法は新生細胞の終末分化の誘導による試行もなされている。適当な分化剤には、下記の引用文献の任意の一つまたは複数に開示された化合物が含まれ、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0199】
a)極性化合物(Marks et al (1987);, Friend, C., Scher, W., Holland, J. W., and Sato, T. (1971) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 68: 378-382; Tanaka, M., Levy, J., Terada, M., Breslow, R., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1975) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 72: 1003-1006; Reuben, R. C., Wife, R. L., Breslow, R., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1976) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 73: 862-866);
b)ビタミンDおよびレチノイン酸の誘導体(Abe, E., Miyaura, C., Sakagami, H., Takeda, M., Konno, K., Yamazaki, T., Yoshika, S., and Suda, T. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 78: 4990-4994; Schwartz, E. L., Snoddy, J. R., Kreutter, D., Rasmussen, H., and Sartorelli, A. C. (1983) Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 24: 18; Tanenaga, K., Hozumi, M., and Sakagami, Y. (1980) Cancer Res. 40: 914-919);
c)ステロイドホルモン(Lotem, J. and Sachs, L. (1975) Int. J. Cancer 15: 731-740);
d)増殖因子(Sachs, L. (1978) Nature (Lond.) 274: 535, Metcalf, D. (1985) Science, 229: 16-22);
e)プロテアーゼ(Scher, W., Scher, B. M., and Waxman, S. (1983) Exp. Hematol. 11: 490-498; Scher, W., Scher, B. M., and Waxman, S. (1982) Biochem. & Biophys. Res. Comm. 109: 348-354);
f)発癌プロモーター(Huberman, E. and Callaham, M. F. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76: 1293-1297; Lottem, J. and Sachs, L. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76: 5158-5162);および
g)DNAまたはRNA合成の阻害剤(Schwartz, E. L. and Sartorelli, A. C. (1982) Cancer Res. 42: 2651-2655, Terada, M., Epner, E., Nudel, U., Salmon, J., Fibach, E., Rifkind, R. A., and Marks, P. A. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 75: 2795-2799; Morin, M. J. and Sartorelli, A. C. (1984) Cancer Res. 44: 2807-2812; Schwartz, E. L., Brown, B. J., Nierenberg, M., Marsh, J. C., and Sartorelli, A. C. (1983) Cancer Res. 43: 2725-2730; Sugano, H., Furusawa, M., Kawaguchi, T., and Ikawa, Y. (1973) Bibl. Hematol. 39: 943-954; Ebert, P. S., Wars, I., and Buell, D. N. (1976) Cancer Res. 36: 1809-1813; Hayashi, M., Okabe, J., and Hozumi, M. (1979) Gann 70: 235-238)。
【0200】
HDAC阻害剤、例えばSAHAと組み合わせてのこれらのアプローチすべての使用は、本発明の範囲内である。
【0201】
投与の様式および用量
本発明の方法は、第一の処置手順において第一の量のHDAC阻害剤、例えばSAHA、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤を、それを必要としている患者に投与する段階を含む。第一および第二の処置は併せて処置上有効な量を含む。
【0202】
本明細書において用いられる「患者」とは、処置の受容者を意味する。哺乳類および非哺乳類の患者が含まれる。特定の態様において、患者はヒト、イヌ、マウス、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギなどの哺乳類である。特定の態様において、患者はヒトである。
【0203】
HDAC阻害剤の投与
投与経路
HDAC阻害剤(例えばSAHA)は、当業者には知られている任意の公知の投与法によっても投与することができる。投与経路の例には、経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形での経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0204】
例えば、本発明のHDAC阻害剤は錠剤、カプセル剤(それぞれ徐放性または持効性製剤を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ、および乳剤などの経口剤形で投与することができる。同様に、HDAC阻害剤は静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内剤形で投与することができ、用いるすべての剤形は薬学分野の技術者には周知である。現在好ましいHDAC阻害剤の投与は経口投与である。
【0205】
HDAC阻害剤は、活性成分を持続放出させるような様式で製剤しうる、デポー注射または植え込み製剤の形で投与することもできる。活性成分はペレットまたは小円柱に圧縮し、デポー注射剤または植え込み剤として皮下または筋肉内に植え込むことができる。植え込み剤は生体分解性ポリマーまたは合成シリコーン、例えば、Silastic、シリコーンゴムまたはDow-Corning Corporationによって製造された他のポリマーなどの不活性材料を用いてもよい。
【0206】
HDAC阻害剤は小さいユニラメラベシクル、大きいユニラメラベシクルおよびマルチラメラベジクルなどのリポソーム送達系の形で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0207】
HDAC阻害剤は、化合物分子が結合された個々の担体としてのモノクローナル抗体を用いて送達することもできる。
【0208】
HDAC阻害剤は、標的指向可能な薬物担体として可溶性ポリマーを用いて製剤することもできる。そのようなポリマーには、polyvinlypyrrolidone、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルタミド-フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリシンが含まれうる。さらに、HDAC阻害剤は、薬物の制御放出を達成する際に有用な生体分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーにより製剤することもできる。
【0209】
現在好ましい態様において、HDAC阻害剤、例えばSAHAは、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を含むことができるゼラチンカプセル中で経口投与する。さらに好ましい態様は、ゼラチンカプセルに含まれた固体SAHA200mgと、微結晶セルロース89.5mg、クロスカルメロースナトリウム9mgおよびステアリン酸マグネシウム1.5mgである。
【0210】
用量および投与計画
HDAC阻害剤を用いる投与計画は、タイプ、種類、人種、年齢、体重、性別および処置中の癌のタイプ;処置する癌の重症度(すなわち病期);投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに用いる特定の化合物またはその塩を含む様々な因子に従って選択することができる。通常の技術を有する医師または獣医師であれば、処置する、例えば疾患の進行を予防する、阻害(完全または部分的に)する、または停止させるために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0211】
例えば、SAHAまたはHDAC阻害剤の任意の一つを800mgまでの1日合計用量で投与することができる。HDAC阻害剤は1日1回(QD)投与することもでき、または1日2回(BID)、および1日3回(TID)などの1日複数回の用量に分割することもできる。HDAC阻害剤は1日合計用量800mgまで、例えば200mg、300mg、400mg、600mgまたは800mgで投与することができ、これは前述のとおり1日1回の用量で投与してもよく、または1日複数回の用量に分割することもできる。好ましくは、投与は経口である。
【0212】
加えて、投与は連続、すなわち毎日でも、間欠的でもよい。本明細書において用いられる「間欠的」または「間欠的に」という用語は定期的または不定期いずれかの間隔で停止および開始することを意味する。例えば、HDAC阻害剤の間欠的投与は1週間に1から6日の投与であってもよく、または周期的投与(例えば、連続2から8週間の毎日投与と、次いで1週間までの投与しない休止期間)を意味することもあり、または1日おきの投与を意味することもある。
【0213】
SAHAまたは任意のHDAC阻害剤を患者に1日合計用量25〜4000mg/m2で投与する。現在好ましい処置プロトコルは1日合計用量約200mgから約600mgの範囲で1日1回、2回、または3回の連続投与(すなわち毎日)を含む。
【0214】
もう一つの現在好ましい処置プロトコルは1日合計用量約200mgから約600の範囲で1日1回、2回、または3回、1週間あたり3日から5日の間の間欠的投与を含む。
【0215】
一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回連続投与する。
【0216】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間あたり3日、間欠的に投与する。
【0217】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間に4日、間欠的に投与する。
【0218】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間に5日、間欠的に投与する。
【0219】
一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回連続投与する。
【0220】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間あたり3日、間欠的に投与する。
【0221】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間に4日、間欠的に投与する。
【0222】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間に5日、間欠的に投与する。
【0223】
加えて、HDAC阻害剤を前述の任意の計画に従い、連続2〜3週間投与した後、休止期間をとってもよい。例えば、HDAC阻害剤を前述の計画の任意の一つに従い、2から8週間投与した後、1週間の休止期間をとる、または300mgの用量で1日2回、1週間あたり3日から5日投与してもよい。もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を1日3回連続2週間投与した後、1週間の休止期間をとる。
【0224】
静脈内または皮下で、患者にHDAC阻害剤を1日に約3〜1500mg/m2の間、例えば1日に約3、30、60、90、180、300、600、900、1200または1500mg/m2送達するのに十分な量で投与することになる。そのような量をいくつかの適当な様式、例えば、大量の低濃度HDAC阻害剤を長時間かけて1回で、または1日に数回投与してもよい。この量を1週間(7日間)に1日または数日連続で、間欠的に、またはその組み合わせで投与することができる。または、少量の高濃度HDAC阻害剤を短時間で、例えば1日1回、1週間(7日間)に1日または数日、連続、間欠的またはその組み合わせのいずれかで。例えば、1回の処置につき1日に300mg/m2の用量を連続5日間、合計1500mg/m2投与することができる。もう一つの投与法では、連続日数は同様に5日間で、処置を連続2または3週間続け、合計3000mg/m2および4500mg/m2の処置を行うこともできる。
【0225】
典型的には、約1.0mg/mLから約10mg/mL、例えば、2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL、5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mLおよび10mg/mLの濃度のHDAC阻害剤を含む静脈内製剤を調製し、前述の用量が得られる量で投与してもよい。一例において、1日の合計用量が約300から約1500mg/m2の間となるように、1日に十分な量の静脈内製剤を患者に投与することもできる。
【0226】
好ましくは当技術分野において周知の方法に従い、約5から約12の範囲のpHで調製した皮下製剤は、以下に記載の適当な緩衝液および等張剤も含む。これらは1日に1回または複数回、例えば毎日1、2または3回の皮下投与で、1日用量のHDAC阻害剤を送達するために製剤することができる。
【0227】
HDAC阻害剤は、適当な鼻内媒体の局所使用により鼻内剤形で、または当業者には周知の経皮皮膚パッチの剤形を用いて経皮経路により投与することもできる。経皮送達系の剤形で投与するために、投与は、当然のことながら、投与法全体を通して間欠的ではなく連続的になる。
【0228】
当業者であれば、本明細書に記載の様々な投与様式、用量、および投与計画は単に特定の態様を示していることが明らかであるはずで、本発明の広い範囲を限定すると解釈すべきではない。用量および投与計画のいかなる交換、変動および組み合わせも、本発明の範囲内に含まれる。
【0229】
抗癌剤の投与
HDAC阻害剤の任意の一つまたは複数の特定の用量および投与計画は、組み合わせ処置において用いる抗癌剤の任意の一つまたは複数にも適用可能である。
【0230】
さらに、抗癌剤の特定の用量および投与計画はさらに変動してもよく、最適な用量、投与計画、および投与経路は、用いている特定の抗癌剤に基づいて決定することになる。
【0231】
当然のことながら、SAHAまたは他のHDAC阻害剤の任意の一つの投与経路は抗癌剤の投与経路とは無関係である。SAHAの現在好ましい投与経路は経口投与である。したがって、本態様に従い、SAHAを経口投与し、第二の薬剤(抗癌剤)を経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する。
【0232】
加えて、HDAC阻害剤および抗癌剤は同じ投与様式で、すなわち療法の薬剤を例えば経口で、IVにより、投与してもよい。しかし、HDAC阻害剤を一つの投与様式、例えば経口で投与し、抗癌剤をもう一つの投与様式、例えばIVまたは本明細書において前述した任意の他の投与様式により投与することも、本発明の範囲内である。
【0233】
一般に用いられる抗癌剤および通常投与される1日用量には下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない。



【0234】
組み合わせ投与
第一の処置手順、すなわちHDAC阻害剤の投与を、第二の処置手順、すなわち抗癌剤の前、抗癌剤による処置の後、抗癌剤による処置と同時、またはその組み合わせで行うことができる。例えば、全処置期間はHDAC阻害剤について決定することができる。抗癌剤はHDAC阻害剤による処置の開始前、または阻害剤による処置後に投与することができる。加えて、抗癌処置は阻害剤投与期間中に投与することもできるが、阻害剤処置期間の全体を通して行う必要はない。
【0235】
SAHAまたはHDAC阻害剤の任意の一つは、抗癌剤の効果と併せて、癌を処置するのに有効な用量が得られる任意の用量および投与計画に従って投与することができる。
【0236】
薬学的組成物
前述のとおり、HDAC阻害剤および/または抗癌剤を含む組成物は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、口腔内、鼻内、リポソーム、吸入、腟内、もしくは眼内投与、カテーテルもしくはステントによる局所送達による投与、または皮下、脂肪内、関節内、クモ膜下投与、または徐放性剤形での投与に適した任意の剤形で製剤することができる。
【0237】
HDAC阻害剤および抗癌剤は同時投与用に同じ製剤に調製することもでき、または前述のとおり同時または逐次投与することができる、二つの別の剤形であってもよい。
【0238】
本発明は、HDAC阻害剤の薬学的に許容される塩および/または抗癌剤を含む薬学的組成物も含む。本明細書に記載され、本発明の方法における使用に適した、化合物の適当な薬学的に許容される塩は通常の非毒性の塩であり、無機塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩;有機塩基との塩、例えば、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩など);無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩など);有機カルボン酸またはスルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩など);塩基性または酸性アミノ酸との塩(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)などの塩基との塩または酸付加塩が含まれうる。
【0239】
本発明は、HDAC阻害剤の水和物および/または抗癌剤を含む薬学的組成物も含む。「水和物」なる用語には、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0240】
加えて、本発明はSAHAまたは任意の他のHDAC阻害剤の任意の固体または液体物理形態を含む薬学的組成物も含む。例えば、HDAC阻害剤は結晶形、アモルファス形であってもよく、いかなる粒径を有していてもよい。HDAC阻害剤粒子は微粉化することもでき、あるいは塊状、微粒子顆粒、粉末、油状物、油状懸濁液または固体もしくは液体物理形態のいかなる他の形であってもよい。
【0241】
経口投与のために、薬学的組成物は液体でも固体でもよい。適当な固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレットなどが含まれる。適当な液体経口製剤には、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、オイルなどが含まれる。
【0242】
例えば、ゴム、デンプン、糖、セルロース材料、アクリル酸エステル、またはその混合物などの、担体または希釈剤として一般に用いられるいかなる不活性賦形剤も本発明の製剤中で用いることができる。組成物は崩壊剤および滑沢剤をさらに含んでいてもよく、加えて結合剤、緩衝剤、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤、またはその任意の組み合わせから選択される一つまたは複数の添加剤を含んでいてもよい。さらに、本発明の組成物は制御放出または即時放出製剤の形であってもよい。
【0243】
HDAC阻害剤を、意図される投与形式に関して適切に選択された適切な薬学的希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書においては一括して「担体」物質または「薬学的に許容される担体」と呼ぶ)との混合物の状態で、有効成分として投与することができる。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合性の任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。
【0244】
適当な担体は、当技術分野における標準的教科書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0245】
液体製剤のために、薬学的に許容される担体は水性または非水性溶液、懸濁液、乳濁液、またはオイルであってもよい。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。オイルの例は石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、および魚肝油である。溶液または懸濁液は下記の成分も含むことができる:注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調節剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。
【0246】
リポソームおよび固定油などの非水性媒体も用いることができる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および物質の使用は当技術分野において周知である。任意の通常の媒質または物質が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が企図される。補助的活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0247】
固体担体/希釈剤には、ゴム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリル酸エステル(例えば、ポリアクリル酸メチル)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0248】
加えて、組成物は結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、ガーゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウムクロスポビドン、ガーゴム、グリコール酸デンプンナトリウム、プリモゲル)、様々なpHおよびイオン強度の緩衝剤(例えば、トリス-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加物、界面活性剤(例えば、トゥイーン20、トゥイーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、すべり促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、ガーゴム)、甘味料(例えば、ショ糖、アスパルテーム、クエン酸)、着香料(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料)、保存剤(例えば、チメロサル、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル)ならびに/または補助剤をさらに含んでいてもよい。
【0249】
一つの態様において、活性化合物を、埋込物およびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤などの、体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体と共に調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生体分解性、生体適合性ポリマーを用いることもできる。そのような製剤の調製法は当業者には明らかであると考えられる。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.からも市販されている。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞への標的指向リポソームを含む)も薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは当業者には公知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法に従って調製することができる。
【0250】
投与の容易さ、および用量の均一性のため、経口組成物を用量単位剤形に製剤することは特に有益である。本明細書において用いられる用量単位剤形とは、処置を受ける被験者の単位用量に合わせた、物理的に別個の単位を意味し、各単位は所望の処置効果が得られるよう計算された所定の量の活性化合物を、必要な薬学的担体と共に含む。本発明の用量単位剤形の明細は、活性化合物の固有の特徴および得られる特定の処置効果、ならびに個人の処置のためにそのような活性化合物を調製する技術分野の固有の制限によって決まり、これらに直接依存する。
【0251】
薬学的組成物は容器、パック、またはディスペンサーに、投与の説明書と共に入れることができる。
【0252】
活性化合物を含む薬学的組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されており、例えば、混合、造粒、または錠剤形成工程による。活性処置成分は、薬学的に許容され、活性成分と適合性の賦形剤と混合することが多い。経口投与のために、活性成分を、媒体、安定化剤、または不活性希釈剤などのこの目的のために慣例的な添加物と混合し、慣用法により前述の錠剤、コーティング錠、ゼラチン硬または軟カプセル、水性、アルコールもしくはオイル溶液などの投与に適した剤形に変換する。
【0253】
患者に投与する化合物の量は、患者において毒性を引き起こす量よりも少ない。特定の態様において、患者に投与する化合物の量は、患者の血漿中の化合物濃度を化合物の有毒レベルと同等またはそれ以上にする量よりも少ない。好ましくは、患者の血漿中の化合物濃度を約10nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約25nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約50nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約100nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約500nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約1000nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約2500nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約5000nMに維持する。HMBAで、約5g/m2/日から約30g/m2/日、特に約20g/m2/日の量での化合物の投与が患者において毒性を生じることなく有効であることが明らかにされている。本発明の実施において患者に投与すべき化合物の最適量は、用いる特定の化合物および処置中の癌のタイプに依存することになる。
【0254】
製剤中の活性成分および様々な賦形剤のパーセンテージは変動することがある。例えば、組成物は20から90重量%の間、好ましくは50〜70重量%の間の活性物質を含んでいてもよい。
【0255】
IV投与のために、静脈内投与用に許容されるpH範囲で妥当な緩衝能力を有する、グルクロン酸、L-乳酸、酢酸、クエン酸または任意の薬学的に許容される酸/共役塩基を緩衝液として用いることができる。pHを酸または塩基のいずれか、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで所望の範囲に調節した塩化ナトリウム溶液も用いることができる。典型的には、静脈内製剤のpH範囲は約5から約12の範囲でありうる。ヒドロキサム酸部分を有するHDAC阻害剤を含む静脈内製剤の好ましいpH範囲は約9から約12でありうる。
【0256】
好ましくは当技術分野において周知の方法に従い、約5から約12の範囲のpHで調製した皮下製剤は、適当な緩衝液および等張剤も含む。これらは1日に1回または複数回の皮下投与で、1日用量の活性物質を送達するために製剤することができる。適当な緩衝液および製剤のpHの選択は、投与するHDAC阻害剤の溶解性に応じて、当業者により容易に行われる。pHを酸または塩基のいずれか、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで所望の範囲に調節した塩化ナトリウム溶液も、皮下製剤において用いることができる。典型的には、皮下製剤のpH範囲は約5から約12の範囲でありうる。HDAC阻害剤ヒドロキサム酸部分の皮下製剤の好ましいpH範囲は約9から約12でありうる。
【0257】
本発明の組成物は、適当な鼻内媒体の局所使用により鼻内剤形で、または当業者には周知の経皮皮膚パッチの剤形を用いて経皮経路により投与することもできる。経皮送達系の剤形で投与するために、投与は、当然のことながら、投与法全体を通して間欠的ではなく連続的になる。
【0258】
本発明は、新生細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ法であって、細胞を第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)と接触させることによる方法も提供する。
【0259】
本発明の方法はインビトロで実施することができるが、新生細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導する方法のための好ましい態様は、細胞をインビボで、すなわち処置が必要な新生細胞または腫瘍細胞を有する被験者に化合物を投与することにより接触させる段階を含むことが企図される。
【0260】
したがって、本発明は、被験者の新生細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、第一の処置手順において第一の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)を被験者に投与することによる方法も提供する。
【0261】
本発明を下記の実験の詳細の項の実施例において例示する。本項は本発明の理解を助けるために示しているが、添付の特許請求の範囲において示す本発明をいかなる様式でも限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0262】
実験的詳細の項
実施例1
SAHAの合成
SAHAは以下に概説する方法に従い、または米国特許第5,369,108号(その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の方法に従い、または任意の他の方法に従い合成することができる。
【0263】

22Lフラスコにスベリン酸(3500g、20.09mol)を入れ、加熱により融解した。温度を175℃まで上げ、次いでアニリン(2040g、21.92mol)を加えた。温度を190℃まで上げ、この温度で20分間維持した。融解物を、水(50L)に溶解した水酸化カリウム(4017g)を含むナルゲンタンクに注ぎ込んだ。融解物添加後、混合物を20分間撹拌した。同じ規模で反応を繰り返し、第二の融解物を同じ水酸化カリウム溶液に注ぎ込んだ。混合物を十分に撹拌した後、撹拌機を停止し、混合物を沈降させた。次いで、混合物をセライト(4200g)パッドを通してろ過した(中性副産物(スベリン酸の両端へのアニリンによる攻撃から)を除去するために生成物をろ過した。ろ液は生成物の塩と、未反応のスベリン酸の塩も含んでいた。ろ過が非常に遅く、数日かかったため、混合物を沈降させた)。ろ液を、濃塩酸(5L)を用いて酸性化し、混合物を1時間撹拌し、次いで終夜沈降させた。生成物をろ取し、漏斗上で脱イオン水(4×5L)により洗浄した。湿ったろ過ケークを、脱イオン水(44L)を含む72Lフラスコに入れ、混合物を50℃に加熱し、熱ろ過により固体を単離した(所望の生成物には熱水への溶解性がはるかに高いスベリン酸が混入していた。熱粉砕を数回行って、スベリン酸を除去した。生成物をNMR[D6DMSO]でチェックしてスベリン酸の除去をモニターした)。熱粉砕を50℃の水(44L)で繰り返した。生成物を再度ろ過により単離し、熱水(4L)で洗浄した。減圧源としてNashポンプを用い、65℃の減圧乾燥器で週末の間乾燥した(Nashポンプは液体リングポンプ(水)で、約29インチ水銀まで減圧した。間欠的アルゴンパージを用いて水の除去を助けた);スベラニル酸(4182.8g)を得た。
【0264】
生成物はまだ少量のスベリン酸を含んでいた。したがって、熱粉砕を65℃で、1回に300gの生成物を用い、数回に分けて行った。各部分をろ過し、追加の熱水(合計約6L)で十分に洗浄した。これを繰り返して全バッチを精製した。これにより生成物からスベリン酸が完全に除去された。固体生成物をフラスコ中で混合し、メタノール/水(1:2、6L)を加えて撹拌し、次いでろ過により単離して、フィルター上で週末の間風乾した。これをトレイにのせ、Nashポンプおよびアルゴンブリードを用い、65℃の減圧乾燥器で45時間乾燥した。最終生成物の重量は3278.4gであった(収率32.7%)。
【0265】

撹拌機および冷却器を備えた50Lフラスコに、前段階からのスベラニル酸(3229g)、メタノール(20L)、およびDowex 50WX2-400樹脂(398.7g)を加えた。混合物を還流点まで加熱し、18時間還流を続けた。混合物をろ過してジ樹脂ビーズを除去し、ろ液をロータリーエバポレーターで残渣とした。
【0266】
ロータリーエバポレーターからの残渣を、冷却器および撹拌機を備えた50Lフラスコに移した。フラスコにメタノール(6L)を加え、混合物を加熱して溶液とした。次いで、脱イオン水(2L)を加え、加熱を停止した。撹拌した混合物を冷却し、次いでフラスコを氷浴中に置いて混合物を冷却した。固体生成物をろ過により単離し、ろ過ケークを冷メタノール/水(1:1、4L)で洗浄した。生成物をNashポンプを用い、45℃の減圧乾燥器で合計64時間乾燥して、スベラニル酸メチル(2850.2g、収率84%)を得た。CSL Lot # 98-794-92-31。
【0267】

撹拌機、熱電対、および不活性雰囲気用の入り口を備えた50Lフラスコに、塩酸ヒドロキシルアミン(1451.9g)、無水メタノール(19L)、およびメタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(3.93L)を加えた。次いで、フラスコにスベラニル酸メチル(2748.0g)と、続いてメタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(1.9L)を加えた。混合物を16時間と10分間撹拌した。反応混合物のおよそ2分の1を反応フラスコ(フラスコ1)から撹拌機を備えた50Lフラスコ(フラスコ2)に移した。次いで、脱イオン水(27L)をフラスコ1に加え、混合物を10分間撹拌した。pHメーターでpHを測定し、11.56であった。混合物のpHを、メタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(100ml)を加えることにより12.02に調節し、これにより澄明溶液を得た(この時点で反応混合物は少量の固体を含んでいた。pHを調節して澄明溶液を得、これから生成物を沈殿させた)。フラスコ2の反応混合物を同様に希釈した。すなわち、脱イオン水(27L)を加え、pHを、メタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(100ml)を混合物に加えることにより調節して、pHを12.01とした(澄明溶液)。
【0268】
各フラスコの反応混合物を、氷酢酸の添加によって酸性化し、生成物を沈殿させた。フラスコ1の最終pHは8.98で、フラスコ2の最終pHは8.70であった。両フラスコから生成物を、ブフナー漏斗およびろ布を用いたろ過により単離した。ろ過ケークを脱イオン水(15L)で洗浄し、漏斗を覆い、生成物を漏斗上で15.5時間部分的に減圧乾燥した。生成物を取り出し、5つのガラストレイにのせた。トレイを減圧乾燥器に入れ、生成物を一定重量になるまで乾燥した。第一の乾燥期間は、減圧源としてNashポンプおよびアルゴンブリードを用い、60℃で22時間であった。トレイを乾燥器から取り出し、秤量した。トレイを乾燥器に戻し、生成物を、減圧源としてオイルポンプを用い、アルゴンブリードは用いずに、さらに4時間と10分間乾燥した。材料を二重の4-ミルポリエチレンバッグに包装し、プラスティックの外容器に入れた。試料採取後の最終重量は2633.4g(95.6%)であった。
【0269】
段階4−粗製SAHAの再結晶
粗製SAHAをメタノール/水から再結晶した。撹拌機、熱電対、冷却器、および不活性雰囲気用の入り口を備えた50Lフラスコに、結晶化する粗製SAHA(2525.7g)と、続いて脱イオン水(2625ml)およびメタノール(15755ml)を加えた。材料を加熱還流して溶液を得た。次いで、脱イオン水(5250ml)を反応混合物に加えた。加熱を停止し、混合物を冷却した。混合物が十分に冷却されて、フラスコを安全に取り扱うことが可能になれば(28℃)、フラスコをマントルヒーターから取り出し、冷却浴として用いるための桶に入れた。氷/水を桶に加えて、混合物を-5℃に冷却した。混合物をこの温度以下で2時間維持した。生成物をろ過により単離し、ろ過ケークを冷メタノール/水(2:1、1.5L)で洗浄した。漏斗を覆い、生成物を1.75時間部分的に減圧乾燥した。生成物を漏斗から取り出し、6つのガラストレイにのせた。トレイを減圧乾燥器に入れ、生成物を、減圧源としてNashポンプおよびアルゴンブリードを用い、60℃で64.75時間乾燥した。トレイを秤量のために取り出し、次いで乾燥器に戻し、一定重量になるまで60℃でさらに4時間乾燥した。第二の乾燥期間の減圧源はオイルポンプで、アルゴンブリードは用いなかった。材料を二重の4-ミルポリエチレンバッグに包装し、プラスティックの外容器に入れた。試料採取後の最終重量は2540.9g(92.5%)であった。
【0270】
実施例2-T24細胞株におけるSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせの効果
SAHAをゲムシタビンとの組み合わせで用い、各薬剤単独で用いることにより得られる相加的効果よりも大きい組み合わせ相乗効果が観察された。
【0271】
材料と方法:
細胞を、10%FCSを含むMEMアルファ培地中1.25×104細胞/mlの密度で播種し、ウェルに接着させた。
【0272】
ゲムシタビンをMEMアルファ培地中で再構成し、1N NaOHを用いてpHを7に調節した。ゲムシタビンの濃度を完全培地中でのゲムシタビンの連続希釈により調製した。SAHAの濃度を1mM保存溶液から調製した。
【0273】
ウェルを吸引し、指定濃度の関連する培地を再充填し、次いで細胞を化合物または化合物の組み合わせを含む培地で培養することにより、細胞を未処置で放置、SAHA単独、ゲムシタビン単独、またはSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせで同時に処置した。
【0274】
増殖および生存度を調べるために、細胞の三つ組試料を回収し、指定の時点で増殖および生存度を計数した。試料回収のために、各ウェルの内容物をトリプシン0.5mlで取り出し、15mlチューブに移し、細胞を遠心分離し、培地1mlに再懸濁した。回収した細胞を、増殖について血球計数器で計数した。生存度はトリパンブルー排除法により評価した。
【0275】
結果:
T24細胞を完全培地(対照)中で、2nMゲムシタビン、5μM SAHA、または2nMゲムシタビンおよび5μM SAHAの組み合わせと共に96時間培養した。
【0276】
結果を図1A(細胞増殖)および図1B(細胞生存度)に示す。図1に示すとおり、SAHAおよびゲムシタビンの組み合わせによる細胞処置は、SAHAまたはゲムシタビンのいずれか単独よりも有意に多くの細胞の増殖を阻害する。
【0277】
ゲムシタビンおよびSAHAの組み合わせは、各成分を単独で投与した場合の相加的効果よりも有意に良好な結果−すなわち相乗的反応を示し、相加的反応に加えてさらなる利益を提供する。
【0278】
実施例3-LnCap細胞株におけるSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせの効果
材料と方法:
細胞を、10%FCSを含むRMPI培地中2.5×104細胞/mlの密度で播種し、ウェルに接着させた。
【0279】
ゲムシタビンを培地中で再構成し、1N NaOHを用いてpHを7に調節した。ゲムシタビンの濃度を完全培地中でのゲムシタビンの連続希釈により調製した。SAHAの濃度を1mM保存溶液から調製した。
【0280】
ウェルを吸引し、指定濃度の関連する培地を再充填し、次いで細胞を化合物または化合物の組み合わせを含む培地で培養することにより、細胞を未処置で放置、SAHA単独、ゲムシタビン単独、またはSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせで同時に処置した。
【0281】
実施例2で前述したとおり、増殖および生存度を調べるために、細胞の三つ組試料を回収し、指定の時点で増殖および生存度を計数した。
【0282】
結果:
LnCap細胞を完全培地(対照)中で、2nMゲムシタビン、5μM SAHA、または2nMゲムシタビンおよび5μM SAHAの組み合わせと共に72時間培養した。
【0283】
結果を図2A(細胞増殖)および図2B(細胞生存度)に示す。図2に示すとおり、ゲムシタビン単独での細胞処置は細胞に対して小さな効果しか生じなかったが、SAHAによる処置は増殖を有意に阻害した。SAHAおよびゲムシタビンの組み合わせによる処置は相加的効果を示した。
【0284】
実施例4-T24細胞株におけるSAHAおよび5-アザシチジンの組み合わせの効果
材料と方法:
細胞を、T-150フラスコで10%FCSを含むRMPI中37℃で培養した。細胞を完全培中で5.0×104細胞/mlの密度まで希釈した。細胞を37℃で14時間培養した後、5-アザシチジンで処置して、細胞をウェルに接着させた。
【0285】
5-アザシチジンの濃度を1mM保存溶液からの連続希釈により調製した。完全培地中で14時間インキュベートした後、ウェルを吸引し、培地を指定濃度の5-アザシチジン1mlに置き換えた。細胞を5-アザシチジン中で27.5時間、前もってインキュベートした後、SAHAを加えた。
【0286】
SAHAの濃度を1mM保存溶液から調製した。
【0287】
培地単独(対照)中、または5-アザシチジンと共に前もってインキュベートした後、ウェルを吸引し、ウェルの内容物を培地単独(対照)、5-アザシチジンだけを含む培地、SAHAだけを含む培地、または5-アザシチジンおよびSAHAの組み合わせを含む培地1mlで置き換えた。
【0288】
実施例2で前述したとおり、増殖および生存度を調べるために、細胞の三つ組試料を回収し、指定の時点で増殖および生存度を計数した。
【0289】
結果:
前述の方法に従い、T24細胞を完全培地(対照)中で、200nM 5-アザシチジン、5μM SAHA、または200nM 5-アザシチジンおよび5μM SAHAの組み合わせと共に培養した。
【0290】
結果を図3A(細胞増殖)および図3B(細胞生存度)に示す。図3に示すとおり、5-アザシチジン単独またはSAHA単独での細胞処置は増殖を有意に阻害した。SAHAおよび5-アザシチジンの組み合わせによる処置は相加的効果を示し、初期細胞数に比べて本質的に完全な増殖阻害が得られた。
【0291】
実施例5-乳癌、グリア細胞腫および前立腺癌細胞株におけるSAHAと、エトポシド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ミトキサントロン、およびオキサリプラチンとの組み合わせの効果
試験の目的:
これらの試験の目的は、SAHAと表1に示す治療剤との組み合わせがいずれかの薬剤単独よりも有効に細胞増殖およびコロニー形成を阻害するかどうかを調べることであった。すべての組み合わせ薬剤は市販されており、Sigmaから購入した。これらの試験のために、3種類の一般的な型の癌である5つの異なる細胞株を試験した(表2)。抗増殖効果が両方のアッセイにおいていくつかの薬剤で観察され、一般には相加的効果が見られた。
【0292】
(表1)SAHAとの組み合わせで用いた薬物

【0293】
(表2)SAHA組み合わせ試験に用いた細胞株

【0294】
細胞増殖アッセイ:
細胞増殖アッセイは、Cell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayとも呼ばれる市販のMTSアッセイを用いた。MTS試薬は新規テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム,内部塩]および電子カップリング試薬(フェナジンエトスルフェート;PES)を含む。アッセイを、少量のMTS試薬を培養ウェルに直接加え、1〜4時間インキュベートし、次いで96穴プレート読み取り器で490nMの吸光度を記録することにより実施した。490nM吸光度の量により測定したホルマザン生成物の量は、培養中の生存細胞数に直接比例する。MTSアッセイのための処置法を二つの異なる様式で行った。一つの方法において、播種した細胞をSAHAで4時間前処置し、次いで洗浄してSAHAを除去した後、組み合わせ薬を加え残り48時間インキュベートした。他の方法において、細胞をSAHAで48時間処置した後、第二の薬剤を加えて4時間おいた。次いで、細胞を洗浄し、48時間増殖させた。
【0295】
コロニー形成アッセイ:
コロニー形成アッセイを下記のとおりに実施した。細胞を6cmの皿に200〜300細胞/皿で播種し、24時間接着させた。細胞をSAHAで48時間処置し、次いで組み合わせ薬を加えてさらに4時間おいた。次いで、細胞を洗浄し、コロニーを2〜3週間増殖させ、次いでメタノール中2%クリスタルバイオレットで染色した。各皿の臨界サイズ(約0.2mm)のすべてのコロニーを計数した。処置群ごとに二つ組の皿を計数し、コロニー数/皿の範囲を誤差バーで示す。
【0296】
結果
A. MDA-231細胞増殖に対するSAHAの組み合わせの効果(図4)
一つの態様において、MDA-231乳癌細胞を指定の濃度のSAHAで4時間前処置し、洗浄し、次いで第二の薬剤を加えて48時間おいた。細胞増殖をMTSアッセイを用いて定量した。結果を図4Aに示す。
【0297】
もう一つの態様において、細胞を指定の濃度のSAHAで48時間前処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。細胞増殖を48時間後にMTSアッセイを用いて定量した。結果を図4Bに示す。
【0298】
図4に示すとおり、指定の濃度のSAHAと治療剤エトポシド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ミトキサントロンおよびオキサリプラチンとの組み合わせ処置は、各薬剤単独での処置よりも大きい抗増殖効果を生じた。効果は相加的と思われる。
【0299】
B. DU145細胞増殖に対するSAHAの組み合わせの効果(図5)
細胞を指定の濃度のSAHAで48時間前処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。細胞増殖を48時間後にMTSアッセイを用いて定量した。
【0300】
図5に示すとおり、指定の濃度のSAHAと治療剤エトポシド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ミトキサントロンおよびオキサリプラチンとの組み合わせ処置は、各薬剤単独での処置よりも大きい抗増殖効果を生じた。効果は相加的と思われる。
【0301】
C. DU145細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果(図6)
細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【0302】
図6に示すとおり、指定の濃度のSAHAと治療剤エトポシド、ドキソルビシン、およびオキサリプラチンとの組み合わせ処置は、各薬剤単独での処置よりも大幅にコロニー数を減少させた。効果は相加的と思われる。
【0303】
D. MDA-231細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果(図7)
細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【0304】
図7に示すとおり、指定の濃度のSAHAと治療剤エトポシド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシルおよびオキサリプラチンとの組み合わせ処置は、各薬剤単独での処置よりも大幅にコロニー数を減少させた。効果は相加的と思われる。
【0305】
E. U118細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果(図8)
細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【0306】
図8に示すとおり、指定の濃度のSAHAと治療剤エトポシド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシルおよびオキサリプラチンとの組み合わせ処置は、各薬剤単独での処置よりも大幅にコロニー数を減少させた。効果は相加的と思われる。
【0307】
実施例6-SAHAと化学療法剤イリノテカン、5-フルオロウラシルおよびドセタキセルとの組み合わせの効果
試験の目的と概要:
これらの試験の目的は、形質転換膀胱癌(T24)、前立腺癌(LnCap)、乳癌(MCF7)、非ホジキンリンパ腫(DLCL)および結腸癌(LCC 18)細胞株に対し、SAHAを次の三つの臨床で用いられている抗癌剤:イリノテカン、5-フルオロウラシル(5-FU)およびドセタキセルとの対の組み合わせで投与した場合の、インビトロでの効果を評価することであった。
【0308】
それぞれの対(SAHAプラス薬剤)が相加的、相乗的、または拮抗的に抗増殖効果を発揮するかどうかを評価するために、形質転換細胞をSAHAとこれらの薬剤の一つとの様々な組み合わせで処置した。結果はSAHAとイリノテカン、5-フルオロウラシルおよびドセタキセルとの組み合わせの効果は主に相加的であることを示唆するものである。いくつかの実験において、相乗効果が観察された。最も顕著な相乗効果は、以下に記載するとおり、LnCap細胞でSAHAとドセタキセルとの組み合わせを用いた場合に認められた。
【0309】
イリノテカン、5-フルオロウラシルおよびドセタキセル
これら三つの各薬剤は現在、癌化学療法において臨床で用いられており、すべて詳細に特徴付けられている。
【0310】
イリノテカンは核トポイソメラーゼI/DNA複合体を安定化するようはたらき、その結果DNAの一本鎖切断の蓄積が起こり、したがってアポトーシスにつながる。臨床では、イリノテカンは、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌および小細胞/非小細胞肺癌を含む広範な癌の処置に用いられている(Hardman W. E. et al. (1999) Br J Cancer 81, 440-448)。
【0311】
5-フルオロウラシル(5-FU)は、デオキシウリジル酸のチミジル酸へのメチル化と、続いてDNAおよびRNAの合成を阻害する、ピリミジンアンタゴニストとして作用する(http://www.nursespdr.com/members/database/ndrhtml/fluorouracil.html)。この薬物はこの10年間、化学療法剤として広範に用いられ、臨床においてイリノテカンを含む他の抗癌剤との組み合わせでも投与されている(Awada A. et al. (2002) Eur J. Cancer 38, 773-778)。
【0312】
ドセタキセルは臨床において腫瘍細胞内の微小管ネットワークを破壊する抗新生物薬として用いられ、細胞分裂の抑制を助けることができる。遊離のチューブリンに結合することにより、微小管の構築を促進し、脱ポリマー化を阻害する(Chou T. et al. (1991) Synergism and Antagonism in Chemotherapy. New York: Academic Press)。
【0313】
材料と方法
薬物組み合わせ実験を次の5つのヒト癌細胞株で実施した:T24(膀胱癌)、LnCap(前立腺)、MCF7(乳房)、DLCL(非ホジキンリンパ腫)およびLCC18(結腸カルチノイド)。各細胞株を培養し、それぞれ下記の必要な培地中37℃でインキュベートした:MEMα(10%FCS)、RPMI 1640(10%FCS)、DME HG(10%FCS)、強化RPMI(10%FCS)、およびHites培地(5%FCS)。
【0314】
接着細胞株(T24、LnCap、MCF7およびLCC 18)を96穴プレートに、SAHAおよび抗癌剤処置の24時間前に播種し、細胞がウェルの底に接着する時間を与えた。懸濁細胞株のDLCLは96穴プレートに実験当日に播種した。T24、LnCap、DLCLおよびLCC18では、2000細胞を含む200μLを各ウェルに播いた。MCF7では、4000細胞/ウェルを播き、株の遅い細胞周期を補った。各SAHAおよび抗癌剤の組み合わせ実験ごとに、細胞を二つの96穴プレートに播種した。
【0315】
すべてのSAHAおよび組み合わせ薬処置物を、処置の当日に細胞株特異的培地を用いて調製した。処置を行わない細胞を対照群とした。
【0316】
接着細胞(T24、LnCap、MCF7)に治療剤を投与するために、各ウェルの培地を吸引し、所望の濃度の一つまたは複数の薬物を含む培地200μLで置き換えた。すべての他の細胞株(OCC18およびDLCL)については、所望の濃度の10倍の一つまたは複数の薬物を含む培地22μLを各ウェルの培地200μLに加えた。
【0317】
処置後、細胞を37℃で4日間インキュベートした。4日目に、各ウェルを水性色素である登録商標alamarBlur 20μLで処置し、37℃で4時間インキュベートした。この色素は細胞に吸収されると、増殖中の細胞では非増殖細胞よりもNADPH、FADH、FMNHおよびNADHの濃度が高いため、より高度に還元される。還元を、登録商標SpectaMax GeminiXS分光蛍光測定マイクロタイターウェルプレート読み取り器(Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)を用い、蛍光により測定した。データはインキュベーション時間の関数としての蛍光発光強度単位で表し、登録商標SOFTmax PRO v. 4.0ソフトウェア(Molecular Devices Corp. Sunnyvale, CA)を用いて解析した。薬物処置から4日後の細胞増殖の阻害パーセントを評価するために、下記の式を用いた。

【0318】
各阻害パーセント評価の標準誤差パーセントを下記の式を用いて計算した。

【0319】
各薬物での処置に用いた濃度は、各薬物が増殖を50%阻害する用量に基づいて決定した。下記の濃度を試験した:
a)50%有効量/4;b)50%有効量/2;c)50%有効量;d)50%有効量*2;およびe)50%有効量*4。細胞を広範な濃度のSAHA単独ならびにイリノテカン、5-FUおよびドセタキセル単独で処置する予備実験で、各薬物が増殖を50%阻害する用量を求めた。薬物濃度と阻害パーセントとの間の多項相関を様々な濃度を用いて決定し、この関数を用いて細胞の50%の増殖を阻害するのに必要な各薬物の濃度を予測した。
【0320】
相加的、相乗的および拮抗的相互作用を評価するために、下記の基準を確立した。
【0321】
相加的相互作用は、SAHAプラス薬剤の組み合わせで処置した細胞の阻害%がSAHA単独または抗癌剤単独で処置した細胞の阻害%よりも大きいが、純粋に相加的な場合に薬物の組み合わせで処置した細胞で予想される阻害%(すなわち、SAHA単独での阻害%+薬物単独での阻害%)以下である場合に観察された。
【0322】
相乗的相互作用は、SAHAプラス薬剤の組み合わせで処置した細胞の阻害%が純粋に相加的な場合に薬物の組み合わせで処置した細胞で予想される阻害%(SAHA単独での阻害%+薬物単独での阻害%)よりも大きい場合に観察された。
【0323】
拮抗的相互作用は、SAHA単独または薬剤単独で処置した細胞の阻害%が薬物の組み合わせで処置した細胞で予想される阻害%よりも大きい場合に観察される。
【0324】
結果:
A. 50%細胞増殖有効量の定量:
SAHAの漸増濃度と組み合わせてのイリノテカン、5-FUおよびドセタキセルの50%細胞増殖有効量を解析した。結果を表3および4に示す。SAHAと各抗癌剤との組み合わせにより、薬物が細胞増殖を50%阻害するのに必要な濃度が低下する。ほとんどすべての実験で、SAHA濃度を上げると、この阻害量に達するのに要する薬剤の濃度を引き下げることになった。例えば、T24膀胱癌細胞の50%を阻害するために、イリノテカン単独では5.1nMが必要であった;しかし、0.625μMのSAHAをイリノテカンとの組み合わせで投与すると、必要な薬物濃度は4.1nMに低下する。SAHAの濃度をさらに、例えば2.5μMまで上げると、必要なイリノテカン濃度は低下し続ける(1.9nM)。
【0325】
(表3)T24 50%阻害。代表的組み合わせ処置の有効量

*SAHAの濃度はすべてμMである。SAHA単独:5.0μM
【0326】
(表4)LnCap 50%阻害。代表的組み合わせ処置の有効量

*SAHAの濃度はすべてμMである。SAHA単独:1.7μM
【0327】
B. SAHAおよびイリノテカン:
SAHAおよびイリノテカンの組み合わせを次の4つの細胞株で試験した:T24、LnCap、DLCLおよびLCC18。4つの細胞株すべてで相互作用は主に相加的であると評価された。
【0328】
結果は、試験した組み合わせ処置の合計(100%)に対する各タイプの相互作用(相加的、相乗的および拮抗的)のパーセントについて示す。
【0329】
(表5)SAHAおよびイリノテカンによる組み合わせ処置後の異なる細胞株で観察される相互作用

【0330】
T24膀胱癌細胞において、組み合わせ処置の86%は相加的相互作用を生じた。相乗作用は報告されなかった。処置の14%は拮抗的相互作用を生じた。SAHAおよびイリノテカン両方の高および低濃度処置(SAHA:0.625〜10μM、イリノテカン:2.6〜10nM)で相加的相互作用が生じた。
【0331】
LnCap前立腺細胞株において、組み合わせ処置の25%は相乗的相互作用を生じた。組み合わせ処置の59%は相加的相互作用を生じ、これは主にSAHAの中および高濃度とイリノテカンの低から高濃度(SAHA:0.5〜2μM;イリノテカン:2.6〜10nM)で見られた。
【0332】
DLCLに対する組み合わせ処置の半分は相加的相互作用を生じ、40%は拮抗的であった。拮抗作用は主に高濃度で見られた。
【0333】
LCC18細胞に対する処置の62%は相加的相互作用を示した一方で、19%は相乗的に相互作用し、19%は拮抗的に作用した。相互作用はSAHAのいかなる濃度範囲にも特異的ではなかったが、すべての相乗的相互作用は低いイリノテカン濃度(1.9nM)で見られた。
【0334】
個々の反応を示す代表的グラフを図9に示す(LnCap)。他の細胞株でも同様のグラフとなった(示していない)。
【0335】
B. SAHAおよび5-フルオロウラシル:
イリノテカンと同様、ほとんどのSAHAおよび5-FUの組み合わせ処置は相加的相互作用を生じた。SAHAおよび5-FUの組み合わせを次の4つの細胞株で試験した:T24、LnCapおよびLCC18。
【0336】
結果は、試験した組み合わせ処置の合計(100%)に対する各タイプの相互作用(相加的、相乗的および拮抗的)のパーセントについて示す。
【0337】
(表6)SAHAおよび5-FUによる組み合わせ処置後の異なる細胞株で観察される相互作用

【0338】
T24膀胱癌細胞において、組み合わせ処置の80%は相加的相互作用を生じた。相これらは主にSAHAの中および高濃度(2.5μM〜10μM)で見られた。
【0339】
LnCap前立腺細胞株において、組み合わせ処置の33%は相乗作用を生じた。処置の60%は相加的相互作用を生じ、これは主にSAHAの中および高濃度(1.0〜2.0μM)で見られた。ほとんどの相乗作用は低いSAHA濃度(0.5μM)で見られた。
【0340】
LCC18処置の49%は相加的作用を生じた。LCC18処置の44%は拮抗作用を生じた。いずれの相互作用もいかなる濃度範囲にも特異的ではなかった。
【0341】
個々の反応を示す代表的グラフを図10に示す(LnCap)。他の細胞株でも同様のグラフとなった(示していない)。
【0342】
C. SAHAおよびドセタキセル:
SAHAおよびドセタキセルの組み合わせ実験をT24、LnCapおよびLCC18細胞で実施した。
【0343】
結果は、試験した組み合わせ処置の合計(100%)に対する各タイプの相互作用(相加的、相乗的および拮抗的)のパーセントについて示す。
【0344】
(表7)SAHAおよびドセタキセルによる組み合わせ処置後の異なる細胞株で観察される相互作用

【0345】
T24膀胱癌細胞において、組み合わせ処置の80%は相加的相互作用を生じ、相互作用の5%は相乗的であった。
【0346】
最大の相乗効果はLnCap前立腺細胞株におけるSAHA/ドセタキセル組み合わせ実験で見られた(56%)。この相乗作用は主にSAHAの低および中濃度範囲(0.25〜1μM)で見られた。処置の38%は、主に高いSAHA濃度(2.0μM)で相加的相互作用を生じた。
【0347】
LCC18細胞における組み合わせ処置の72%および8%で、それぞれ相加的相互作用および相乗作用が生じた。
【0348】
個々の反応を示す代表的グラフを図11に示す(LnCap)。他の細胞株でも同様のグラフとなった(示していない)。
【0349】
要約すると、結果は、一般にSAHAはイリノテカン、5-FUおよびドセタキセルと主に相加的に相互作用することを示している。しかし、重要なことに、SAHAはLnCap細胞ではドセタキセルと主に相乗的に相互作用する。他の相乗作用は試験した濃度のいくつかで、特にLnCap細胞株で見られた。
【0350】
結論:
本明細書において前述したすべての組み合わせ試験の結果は、SAHAと他の抗癌剤との併用療法では各薬剤の用量をその薬剤による単剤療法に比べて減らし、なおかつ総合的に抗腫瘍効果を得ることができるため、組み合わせ処置は癌療法において有用でありうることを示している。組み合わせ処置は、本明細書において前述したとおり、二剤の間で相乗効果が観察される場合に特に有用である。
【0351】
本発明を詳細に示し、その好ましい態様に関して記載してきたが、当業者であれば記載の発明の意味から逸脱することなく、形態および詳細において様々な変更を加えうることが理解されると思われる。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0352】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面(図面中、同様の参照文字は異なる図を通して同じ部分を意味する)に示すとおり、下記の本発明の好ましい態様のより詳細な説明から明らかであると考えられる。本図面は必ずしも同じ縮尺で作成されておらず、むしろ本発明の原理を説明することが強調されている。
【図1】T24細胞株におけるSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせの効果を示す図である。細胞を実験項に記載のとおり、未処置で放置(□)、2nMゲムシタイン(◇)、5μM SAHA(○)、または2nMゲムシタビンおよび5μM SAHAの組み合わせ(△)により指定の時点で処置した。図1Aは細胞増殖を示し、図1Bは細胞生存度を示している。
【図2】LnCaP細胞株におけるSAHAおよびゲムシタビンの組み合わせの効果を示す図である。細胞を実験項に記載のとおり、未処置で放置(□)、2nMゲムシタイン(◇)、5μM SAHA(○)、または2nMゲムシタビンおよび5μM SAHAの組み合わせ(△)により指定の時点で処置した。図2Aは細胞増殖を示し、図2Bは細胞生存度を示している。
【図3】T24細胞株におけるSAHAおよび5-アザシチジンの組み合わせの効果を示す図である。細胞を実験項に記載のとおり、未処置で放置(□)、200nM 5-アザシチジン(AZ)(◇)、5μM SAHA(○)、または200nM 5-アザシチジンおよび5μM SAHAの組み合わせ(△)により指定の時点で処置した。図3Aは細胞増殖を示し、図3Bは細胞生存度を示している。アステリスク(*)はSAHA添加の時点を示している。
【図4】MDA-231細胞増殖に対するSAHAの組み合わせの効果を示す図である。図4A:細胞を指定の濃度のSAHAで4時間前処置し、洗浄し、次いで第二の薬剤を加えて48時間おいた。図4B:細胞を指定の濃度のSAHAで48時間前処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。細胞増殖を48時間後にMTSアッセイを用いて定量した。
【図5】DU145細胞増殖に対するSAHAの組み合わせの効果を示す図である。細胞を指定の濃度のSAHAで48時間前処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。細胞増殖を48時間後にMTSアッセイを用いて定量した。
【図6】DU145細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果を示す図である。細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【図7】MDA-231細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果を示す図である。細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【図8】U118細胞クローン原性に対するSAHAの組み合わせの効果を示す図である。細胞をSAHAで48時間処置し、第二の薬剤を加えて4時間おき、次いで細胞を洗浄した。コロニー形成を2〜3週間後に評価した。
【図9】SAHAおよびイリノテカンで処置したLnCap細胞の阻害パーセントを示す図である。細胞を指定の濃度のSAHA単独、イリノテカン単独、およびSAHAとイリノテカンとの組み合わせと共にインキュベートした。各実験の右側のバーは相加的相互作用について計算した効果を示している。
【図10】SAHAおよび5-フルオロウラシル(5-FU)で処置したLnCap細胞の阻害パーセントを示す図である。細胞を指定の濃度のSAHA単独、5-FU単独、およびSAHAと5-FUとの組み合わせと共にインキュベートした。各実験の右側のバーは相加的相互作用について計算した効果を示している。
【図11】SAHAおよびドセタキセルで処置したLnCap細胞の阻害パーセントを示す図である。細胞を指定の濃度のSAHA単独、ドセタキセル単独、およびSAHAとドセタキセルとの組み合わせと共にインキュベートした。各実験の右側のバーは相加的相互作用について計算した効果を示している。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項2】
抗癌剤がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤、遺伝子治療剤、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗癌化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
HDAC阻害剤がヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子ケトン誘導体である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
HDAC阻害剤がSAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルビスヒドロキサム酸、アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(Azelaic Bishydroxamic Acid:ABHA)、アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カルポ(carpoic)ヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、CHAP、MW2796、およびMW2996からなる群より選択されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
HDAC阻害剤がトラポキシンA、FR901228(FK 228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC-トキシン、WF27082、およびクラミドシンからなる群より選択される環状テトラペプチドである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
HDAC阻害剤が酪酸ナトリウム、イソ吉草酸塩、吉草酸塩、4フェニル酪酸塩(4-PBA)、フェニル酪酸塩(PB)、プロピオン酸塩、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニル酢酸塩、3-ブロモプロピオン酸塩、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロ酸塩からなる群より選択される短鎖脂肪酸(SCFA)である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
HDAC阻害剤がCI-994、MS-27-275(MS-275)およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体からなる群より選択されるベンズアミド誘導体である、請求項3記載の方法。
【請求項9】
HDAC阻害剤がトリフルオロメチルケトンおよびα-ケトアミドからなる群より選択される求電子ケトン誘導体である、請求項3記載の方法。
【請求項10】
HDAC阻害剤が天然物、サマプリン、またはデプデシンである、請求項3記載の方法。
【請求項11】
HDAC阻害剤が下記の構造で表されるピロキサミド

またはその薬学的に許容される塩である、請求項3記載の方法。
【請求項12】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項3記載の方法:

式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換の、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である。
【請求項13】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項3記載の方法:

式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である。
【請求項14】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項3記載の方法:

式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である。
【請求項15】
抗癌剤がビスクロロエチルアミン、アジリジン、アルキルアルコンスルホン酸塩、ニトロソ尿素、非古典的アルキル化剤および白金化合物からなる群より選択されるアルキル化剤である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
抗癌剤がドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ならびにプリカトマイシンからなる群より選択される抗生物質である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
抗癌剤がフロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、およびゲムシタビンからなる群より選択される代謝拮抗剤である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
代謝拮抗剤がゲムシタビンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗癌剤がエストロゲン、プロゲストゲン、抗エステロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、LHRH類縁体、アロマターゼ阻害剤、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、アミノグルテチミド、テトラゾール、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、およびミフェプリストーンからなる群より選択されるホルモン剤である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
抗癌剤がビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、エトポシド テニポシド、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される植物由来薬剤である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
抗癌剤が免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、癌抑制遺伝子、および癌ワクチンからなる群より選択される生物学的薬剤である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
免疫調節タンパク質がインターロイキン2、インターロイキン4、インターロイキン12、インターフェロンE1、インターフェロンD、インターフェロンα、エリスロポエチン、顆粒球-CSF、顆粒球、マクロファージ-CSF、カルメット-ゲラン杆菌、レバミソール、およびオクトレオチドからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
癌抑制遺伝子がDPC-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA、およびBRCA2からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
抗癌剤が分化誘導剤である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
SAHAおよび抗癌剤の処置効果が相加的である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
SAHAが患者の癌細胞を抗癌剤に対して感作させる、請求項1記載の方法。
【請求項27】
抗癌剤が患者の癌細胞をSAHAに対して感作させる、請求項1記載の方法。
【請求項28】
SAHAおよび抗癌剤を同時投与する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
SAHAおよび抗癌剤を逐次投与する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
SAHAを抗癌剤投与の前に投与する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
SAHAを抗癌剤投与の後に投与する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
SAHAを経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
抗癌剤を経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項34】
SAHAを、SAHAおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物中で経口投与する、請求項1記載の方法。
【請求項35】
SAHA組成物がゼラチンカプセル中に含まれる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
担体または希釈剤が微結晶セルロースである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
SAHA組成物が崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
SAHA組成物が滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
SAHA組成物を被験者に約25mg/m2〜4000mg/m2の間の1日合計用量で投与する、請求項34記載の方法。
【請求項40】
SAHA組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する、請求項34記載の方法。
【請求項41】
SAHA組成物を約200mg〜600mgの用量で1日1回投与する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日2回投与する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日3回投与する、請求項40記載の方法。
【請求項44】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日2回、間欠的に投与する、請求項40記載の方法。
【請求項45】
SAHA組成物を1週間あたり3日から5日投与する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
SAHA組成物を1週間あたり3日投与する、請求項44記載の方法。
【請求項47】
SAHA組成物を約200mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
SAHA組成物を約300mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項49】
SAHA組成物を約400mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項50】
癌が白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、癌腫、固形腫瘍またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項51】
癌が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫、脳神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨癌、および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭、および食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、基底細胞癌、潰瘍化型および乳頭状型両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、髄様癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網細胞肉腫、カポジ肉腫、神経芽細胞腫ならびに網膜芽細胞腫などの一般的な成人固形腫瘍からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項52】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において、1日合計用量最大約800mgを含む第一の量の下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項53】
抗癌剤がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、抗血管形成剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤、遺伝子治療剤、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
抗癌化合物がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤である、請求項52記載の方法。
【請求項55】
HDAC阻害剤がヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子ケトン誘導体である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
HDAC阻害剤がSAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルビスヒドロキサム酸、アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カルポ(carpoic)ヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、CHAP、MW2796、およびMW2996からなる群より選択されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
HDAC阻害剤がトラポキシンA、FR901228(FK 228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC-トキシン、WF27082、およびクラミドシンからなる群より選択される環状テトラペプチドである、請求項54記載の方法。
【請求項58】
HDAC阻害剤が酪酸ナトリウム、イソ吉草酸塩、吉草酸塩、4フェニル酪酸塩(4-PBA)、フェニル酪酸塩(PB)、プロピオン酸塩、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニル酢酸塩、3-ブロモプロピオン酸塩、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロ酸塩からなる群より選択される短鎖脂肪酸(SCFA)である、請求項54記載の方法。
【請求項59】
HDAC阻害剤がCI-994、MS-27-275(MS-275)およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体からなる群より選択されるベンズアミド誘導体である、請求項54記載の方法。
【請求項60】
HDAC阻害剤がトリフルオロメチルケトンおよびα-ケトアミドからなる群より選択される求電子ケトン誘導体である、請求項54記載の方法。
【請求項61】
HDAC阻害剤が天然物、サマプリン、またはデプデシンである、請求項54記載の方法。
【請求項62】
HDAC阻害剤が下記の構造で表されるピロキサミド

またはその薬学的に許容される塩である、請求項54記載の方法。
【請求項63】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項54記載の方法:

式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換の、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である。
【請求項64】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項54記載の方法:

式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である。
【請求項65】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項54記載の方法:

式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である。
【請求項66】
抗癌剤がビスクロロエチルアミン、アジリジン、アルキルアルコンスルホン酸塩、ニトロソ尿素、非古典的アルキル化剤および白金化合物からなる群より選択されるアルキル化剤である、請求項52記載の方法。
【請求項67】
抗癌剤がドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ならびにプリカトマイシンからなる群より選択される抗生物質である、請求項52記載の方法。
【請求項68】
抗癌剤がフロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、およびゲムシタビンからなる群より選択される代謝拮抗剤である、請求項52記載の方法。
【請求項69】
代謝拮抗剤がゲムシタビンである、請求項68記載の方法。
【請求項70】
抗癌剤がエストロゲン、プロゲストゲン、抗エステロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、LHRH類縁体、アロマターゼ阻害剤、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、アミノグルテチミド、テトラゾール、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、およびミフェプリストーンからなる群より選択されるホルモン剤である、請求項52記載の方法。
【請求項71】
抗癌剤がビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、エトポシド テニポシド、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される植物由来薬剤である、請求項52記載の方法。
【請求項72】
抗癌剤が免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、癌抑制遺伝子、および癌ワクチンからなる群より選択される生物学的薬剤である、請求項52記載の方法。
【請求項73】
免疫調節タンパク質がインターロイキン2、インターロイキン4、インターロイキン12、インターフェロンE1、インターフェロンD、インターフェロンα、エリスロポエチン、顆粒球-CSF、顆粒球、マクロファージ-CSF、カルメット-ゲラン杆菌、レバミソール、およびオクトレオチドからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項74】
癌抑制遺伝子がDPC-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA、およびBRCA2からなる群より選択される、請求項73記載の方法。
【請求項75】
抗癌剤が分化誘導剤である、請求項52記載の方法。
【請求項76】
SAHAおよび抗癌剤の処置効果が相加的である、請求項52記載の方法。
【請求項77】
SAHAが患者の癌細胞を抗癌剤に対して感作させる、請求項52記載の方法。
【請求項78】
抗癌剤が患者の癌細胞をSAHAに対して感作させる、請求項52記載の方法。
【請求項79】
SAHAおよび抗癌剤を同時投与する、請求項52記載の方法。
【請求項80】
SAHAおよび抗癌剤を逐次投与する、請求項52記載の方法。
【請求項81】
SAHAを抗癌剤投与の前に投与する、請求項80記載の方法。
【請求項82】
SAHAを抗癌剤投与の後に投与する、請求項80記載の方法。
【請求項83】
SAHAを経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する、請求項52記載の方法。
【請求項84】
抗癌剤を経口で、非経口で、腹腔内で、静脈内で、動脈内で、経皮で、舌下で、筋肉内で、直腸内で、口腔内で、鼻内で、リポソーム的に、吸入により、腟内で、眼内で、カテーテルもしくはステントによる局所送達により、皮下で、脂肪内で、関節内で、クモ膜下で、または徐放性剤形で投与する、請求項52記載の方法。
【請求項85】
SAHAを、SAHAおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物中で経口投与する、請求項52記載の方法。
【請求項86】
SAHA組成物がゼラチンカプセル中に含まれる、請求項85記載の方法。
【請求項87】
担体または希釈剤が微結晶セルロースである、請求項86記載の方法。
【請求項88】
SAHA組成物が崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
SAHA組成物が滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
SAHA組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する、請求項52記載の方法。
【請求項91】
SAHA組成物を約200mg〜600mgの用量で1日1回投与する、請求項90記載の方法。
【請求項92】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日2回投与する、請求項90記載の方法。
【請求項93】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日3回投与する、請求項90記載の方法。
【請求項94】
SAHA組成物を約200mg〜400mgの用量で1日2回、間欠的に投与する、請求項90記載の方法。
【請求項95】
SAHA組成物を1週間あたり3日から5日投与する、請求項94記載の方法。
【請求項96】
SAHA組成物を1週間あたり3日投与する、請求項94記載の方法。
【請求項97】
SAHA組成物を約200mgの用量で投与する、請求項96記載の方法。
【請求項98】
SAHA組成物を約300mgの用量で投与する、請求項96記載の方法。
【請求項99】
SAHA組成物を約400mgの用量で投与する、請求項96記載の方法。
【請求項100】
癌が白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、癌腫、固形腫瘍またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項101】
癌が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫、脳神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨癌、および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭、および食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、基底細胞癌、潰瘍化型および乳頭状型両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、髄様癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網細胞肉腫、カポジ肉腫、神経芽細胞腫ならびに網膜芽細胞腫などの一般的な成人固形腫瘍からなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項102】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表されるピロキサミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項103】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表される化合物:

(式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換の、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項104】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表される化合物:

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項105】
それを必要としている被験者の癌の処置法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表される化合物:

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて処置上有効な量を含む)を、被験者に投与する段階。
【請求項106】
被験者における新生細胞(neoplastic cell)の終末分化を選択的に誘導し、それにより被験者における該細胞の増殖を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化を誘導するのに有効な量を含む)を被験者に投与する段階。
【請求項107】
被験者の新生細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それにより被験者における該細胞の増殖を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の細胞増殖停止を誘導するのに有効な量を含む)を被験者に投与する段階。
【請求項108】
被験者の新生細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それにより被験者における該細胞の増殖を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
第一の処置手順において第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の処置手順において第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞のアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)を被験者に投与する段階。
【請求項109】
新生細胞の終末分化を選択的に誘導し、それにより該細胞の増殖を阻害するインビトロ法であって、以下の段階を含む方法:
細胞を第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の終末分化を誘導するのに有効な量を含む)と接触させる段階。
【請求項110】
新生細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それにより該細胞の増殖を阻害するインビトロ法であって、以下の段階を含む方法:
細胞を第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞の細胞増殖停止を誘導するのに有効な量を含む)と接触させる段階。
【請求項111】
新生細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それにより該細胞の増殖を阻害するインビトロ法であって、以下の段階を含む方法:
細胞を第一の量の、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

、および第二の量の抗癌剤(第一および第二の量は併せて該細胞のアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む)と接触させる段階。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−504131(P2007−504131A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524699(P2006−524699)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026161
【国際公開番号】WO2005/023179
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506066814)エートン ファーマ インコーポレーティッド (5)
【出願人】(599158890)スローン−ケターリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】