癌の診断と治療のためのAIMP2DX2の用途
本発明は、癌組織で特異的に発現する、AIMP2のエクソン2が欠損した変異体AIMP2DX2に関する。このAIMP2DX2タンパク質および遺伝子は、癌の診断および治療の発展にうまく活用できる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、AIMP2のエクソン2が欠損した変異体AIMP2DX2およびその利用に係り、具体的には、AIMP2DX2、その診断マーカーとしての用途およびその抑制剤を使用した抗癌用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
癌による死亡が世界的に増加しつつある。去る数年間、癌に対する集中的な研究が行われたにも拘わらず、癌は依然として全世界的な主要死亡原因である。
【0003】
外科切除術、放射線療法、化学療法またはその他の公知の治療方法による適切な治療作用を容易にするためには、癌の初期診断のための迅速且つ簡単な方法が要求される。
【0004】
癌特異的マーカーの開発は、癌の診断だけでなく、癌特異的な治療のためにも要求されている。細胞傷害性療法(cytotoxic therapies)は、最初に抗癌治療剤として使用されて以来、50余年間癌の治療に広範囲に使われてきたが、癌細胞の他に、分裂速度が比較的速い他の臓器の細胞に非特異的に作用して強い毒性を示し、深刻な副作用を引き起こすという問題がある。このような既存抗癌剤の副作用および耐性を克服するために、正常細胞の癌化過程に現われる癌特異的マーカー(cancer specific marker)を用いて、腫瘍細胞特異的に作用する治療剤を開発しようとする研究が行われた。抗癌剤による毒性を最小化するための方案として台頭している癌ターゲッティング療法(cancer targeted therapy)の核心は、癌細胞特異的な遺伝子を探し出すことにある。
【0005】
このような背景の下、本発明者は、AIMP2のエクソン2欠失変異体であるAIMP2DX2をマーカーとして用いる場合、非常に高い信頼度で癌発生の有無を確認することができ、且つ、AIMP2DX2の発現が癌誘発の直接的原因となるので、AIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体、AIMP2DX2 mRNAに対する特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いる場合、癌細胞特異的に癌を治療することができるということを見出し、本発明を完成した。
【0006】
〔発明の開示〕
本発明の目的は、AIMP2タンパク質のエクソン2の領域が欠失したAIMP2DX2タンパク質を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクターを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記形質転換体を培養してAIMP2DX2タンパク質を製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質に対する抗体を含む癌診断キットを提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、(a)分析する試料を提供する段階と、(b)前記試料から、AIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階とを含んで、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を含む癌治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を投与して癌を治療する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を含む癌治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を投与して癌を治療する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、AIMP2タンパク質のmRNAとAIMP2DX2タンパク質のmRNAを区分するプライマーまたはプローブを用いて癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2のmRNAを検出する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、(a)試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階と、(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階とを含んで、AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的は、(a)試験物質を、AIMP2DX2タンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含んで、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供することにある。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1a〜図1eは、TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す。AIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFsにおいてTGF−βが細胞増殖(図1a)、コロニー形成(図1b)、細胞周期の進行(図1c)、並びにSmad2およびSmad3の核移動(図1d)に及ぼす効果を測定した。図1aでは、0、2および4ng/mlのTGF−β濃度で6時間細胞を培養した。TGF−β無処理細胞におけるチミジン挿入(thymidine incorporation)を1としたとき、数値は4つの独立的実験値の平均を示す。図1bでは、AIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFs(14.5d)をTGF−β(2ng/ml)の存在下に4時間培養し、ホルムアルデヒドで固定した後、Giemsa染色によりコロニーを視覚化した。図1cでは、MEFsをTGF−βで24時間処理した後、G0/G1相細胞の占有程度をフローサイトメトリー(flow cytometry)で検査した。図1dでは、MEFSをTGF−β(2ng/ml)で1時間処理した。Smad2およびSmad3をその特異的抗体で反応させた後、FITCコンジュゲート抗体(緑色)で視覚化した。核はPI(赤色)で染色された。図1eでは、AIMP2とSmad2およびSmad3との相互作用を、Smad2およびSmad3に対する抗体を用いた共同免疫沈殿(coimmunoprecipitation)によって検査した。
【0024】
図2a〜図2fは、TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す。図2aでは、A549細胞をTGF−β(2ng/ml)で処理した後、所定の時間に収穫して抽出したタンパク質を抗−Smad2またはSmad3抗体で免疫沈殿させ、共同沈殿したAIMP2を抗−AIMP2抗体で測定した。WCLは全細胞溶解物(lysate)のタンパク質ウエスタンブロットを示す。図2bでは、TGF−βのターゲット遺伝子、p15、p21およびPAI−1の発現を、対照区およびAIMP2で形質転換されたDU145でRT−PCRによって検査した。図2cでは、AIMP2−/−MEFsにおいてSamd2のリン酸化に及ぼすAIMP2の効果を示す。図2dでは、Samd2の個別ドメイン(Mad−相同ドメイン、MH1、MH2およびリンカー)をLexA融合タンパク質で発現させ、B42融合AIMP2との相互作用をX−gal含有酵母培地におけるブルーコロニー形成によって観察した。図2eでは、Smad2とTGF−β受容体のTGF−β依存的相互作用を共同免疫沈殿で測定した。MEFsを37℃でTGF−βで処理し、免疫沈殿の前に8℃で培養した。TGF−β受容体とSmad2との結合を抗−TβRI抗体で免疫ブロットして観察した。図2fでは、TGF−β処理後のAIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFsにおける総Smad2、リン酸化Smad2(p−Smad2)およびAIMP2水準の時間別推移を示す。
【0025】
図3a〜図3fは、AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果である。様々な癌細胞株におけるAIMP2の水準をウエスタンブロット(図3a)、フローサイトメトリー(図3b)で比較した。A549、NCI−H460、−H322およびH290は肺癌細胞株であり、DU145およびHCT116はそれぞれ前立腺と大腸癌の細胞株である。図3bでは、「Negative」は2次抗体のみで処理したDU145を示す。各細胞株の2000細胞を分析した。図3cでは、AIMP2の転写水準を相異なるプライマー対を用いてRT−PCRによって比較した。エクソン3〜4および1〜3を貫通する転写物は、それぞれプライマー6/7および1/5(図8b)を用いて生成された。GAPDHをローディング対照区として用いた。エクソン1〜3の転写物に相当するプライマー対を用いる場合、小さいAIMP2転写物(smaller AIMP2 transcript)が生成された。このような小さい転写物はエクソン2が足りない、AIMP2の相異なるスプライシング型(AIMP2DX2)である。このような転写物は、プライマーDX2−F、およびエクソン1と3間の接合配列に特異的なプライマーDX2−8(図8b)を用いてRT−PCRを行うとき、低い−AIMP2水準を示す細胞株のみで生成された。図3dでは、AIMP2のTGF−β依存的誘導および核移動は、TGF−βで2時間培養した後、免疫蛍光染色して調査した。図3eでは、表示された細胞の増殖に及ぶTGF−βの効果を[3H]チミジン挿入(n=4)によって比較した。図3fでは、目的遺伝子、p21およびPAI−1のTGF−β依存的誘導を、TGF−βにより2時間処理した後でRT−PCRによって比較した。
【0026】
図4a〜図4hは、AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果である。図4aでは、TGF−βにより2時間処理または無処理されたDU145細胞にDX2をトランスフェクションした後、AIMP2水準をウエスタンブロットで測定した。c−myc、DX2およびGAPDH(対照区)の発現をRT−PCRによって検査した。図4bでは、DU145をDX2および空ベクターで形質転換した後、TGF−β依存的細胞成長抑制に及ぶ効果をチミジン挿入によって検査した(n=4)。図4cでは、AIMP2−Fおよび−DX2間の相互作用をイーストツーハイブリッドアッセイ法(Rho et al, Pro Natl Acad Sci USA 96, 4488-93(1999))で測定した。図4dでは、AIMP2−Fおよび−DX2を[35S]メチオニン存在の下にインビトロ翻訳で合成した後、GST−AIMP2−Fまたは−CDK2(対照区)と混合し、その後グルタチオン−セファロースで沈殿させた。沈殿したタンパク質をSDS−PAGEによって単離し、オートラジオグラフィー法によって検出した。図4eでは、AIMP2−Fまたは−DX2とFUSE−結合タンパク質(FBP:FUSE-binding protein)(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336, 2003))およびSmad2との相互作用をイーストツーハイブリッドによって測定した。図4fでは、プロテアソーム抑制剤、ALLN(50μM、4時間)がAIMP2−Fおよび−DX2の水準に及ぼす効果をDX2生成H322細胞において抗−AIMP2抗体を用いてウエスタンブロットで測定した。DX2形態はその試験管内合成されたカウンタパートとのゲル上の共同移動(co-migration)で確認した(資料なし)。図4gでは、ALLN(20μM、2時間)で処理した後、AIMP2の増加を、H322細胞において抗−AIMP2抗体を用いて免疫蛍光染色により調べた。図4hでは、Myc−tag付きDX2でALLN処理DU145細胞を形質転換し、抗−AIMP2抗体を用いてAIMP2を免疫沈殿させた後、ユビキチン化されたAIMP2分子を抗−ユビキチン抗体(Ubi)で免疫ブロットして観察した。
【0027】
図5a〜図5hは、TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す。図5aでは、DX2(または空ベクター)をMEFsにトランスフェクションした後、細胞成長に対する効果を観察した。細胞およびコロニ―をそれぞれ光學顯微鏡(上)およびGiemsa染色(下)で観察した。図5bでは、DX2特異的な3種のsiRNAをコーディングするヌクレオチド配列を示す。図5cでは、3種のsiRNAを発現するベクターをそれぞれ製造し、このベクターで癌細胞株としてのH322およびH460細胞株を形質転換した後、正常的AIMP2およびsmad2のリン酸化に及ぶ影響を調査した。図5dでは、4番および5番のsiRNAでH322細胞を形質転換したときのTGF−βによる細胞死滅の程度(左)と細胞周期の停止程度(右)を示した。図5eでは、AIMP2DX2をターゲッティングする4番のsiRNA(si−DX2)を発現するベクターをH322に組み込み、DX2転写抑制に対する効果をRT−PCRによって測定した(上)。si−DX2は、エクソン3〜4に相当する転写物のRT−PCRから分かるように、全長AIMP2(full-length AIMP2)転写には影響を及ぼさなかった。si−DX2がSmad2のリン酸化およびAIMP2の発現に及ぼす効果をウエスタンブロットで測定した(下)。TGF−βシグナル伝達の復旧に及ぶsi−DX2の効果を、H322を用いてSmad2の免疫蛍光(図5f)、3TPプロモータ下のTGF−β依存的レポーターアッセイ(図5g)、成長停止(図5h)で測定した。図5fでは、p−Smad2および核をTGF−β処理30分の後にFITCコンジュゲート二次抗体(緑色)およびPI(赤色)で30分間染色した。si−DX2の形質転換によってp−Smad2が増加し、核に位置する。
【0028】
図6a〜図6fは、肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果である。図6aでは、AIMP2+/+およびAIMP2+/−マウスにベンゾ−(α)−ピレン(benzo-(α)-pyrene)を腹腔内投与した後、時間間隔で肺腫瘍形成を観察した。「N」は犠牲されたマウスの数を示す。図6bでは、肺癌患者の正常および腫瘍部位から単離されたRNAをDX−2特異的プライマーでRT−PCRした。図3cでは、患者の(コード番号で表示)正常および腫瘍組織を抗−AIMP2抗体を用いてRT−PCRした。
【0029】
図7は、AIMP2との相互作用に関連したSmad2ドメインを測定した結果である。AIMP2またはCDK2をコードするcDNAを、pGEX4T−1のEcoRIおよびXhoI部位と結合させ、GST融合タンパク質としてE.coli BL21(DE3)で発現させた後、製造者の説明に従って融合タンパク質を単離した。相異なるSmad2欠失断片は、TNTカップリングされた転写キット(Promega)を用いて[35S]メチオニンの存在下に試験管内転写(in vitro translation)で合成した。グルタチオンセファロースビードに結合したGST融合タンパク質は、0.5mM EDTA、0.5mMフェニルメチルスルホニルフロライド(PMSF)、および1%トリトンX−100を含むPBS緩衝液(pH7.4)の結合緩衝液で[35S]メチオニンラベル付きSmad断片と培養した。結合混合物を4℃で回転させながら一晩培養した後、0.5%トリトンX−100を含む結合緩衝液で4回洗浄した。SDSサンプル緩衝液を添加した後、結合したタンパク質を加熱して溶出させ、SDSゲル電気泳動によって単離した。Smad2断片の存在はオートラジオグラフィー法(autoradiography)によって確認した。
【0030】
図8aおよび図8bは、AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す。図8aでは、AIMP2遺伝子は表示された大きさのポリペプチドをコーディングする4つのエクソン(青色で表示)から構成されている。図8bは、AIMP2の相異なる領域を貫通するcDNAの生成に使用されるプライマーの位置および配列を示す図式図である。
【0031】
図9a〜図9dは、癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果である。図9aでは、DX2−ポジティブおよび−ネガティブ細胞間のAIMP2水準を比較するために、一つのディッシュにDU145およびH460細胞を培養し、抗−AIMP2抗体(緑色)で免疫蛍光染色を行った。DU145細胞は突然変異のため高い水準でp53を発現するが、H460細胞は野生型のp53を持つため低い水準を保つ。よって、2つの細胞株をp53免疫蛍光染色(赤色)で区分した。細胞をTGF−βで2時間処理し、メタノールで固定した。図9bでは、AIMP2の発現にAIMP2DX2が及ぼす効果を検討するために、AIMP2水準をフローサイトメトリーで検査した。2μg/mlの空ベクターまたはDX2でDU145細胞を形質転換し、24時間培養した。細胞を70%のエタノールで固定した後、抗−AIMP2抗体で反応させ、次いでFITCコンジュゲート2次抗体で反応させた。図9cでは、TGF−β依存的細胞の周期停止に及ぶAIMP2DX2の効果をフローサイトメトリーで比較した。空ベクターで形質転換されたDU145細胞におけるG0/G1相細胞の割合は増加するに比べて、DX2で形質転換された細胞ではそうではなかった。黒色線と青色線は、それぞれTGF−βで無処理および処理された細胞を表示する。図9dでは、10μMのALLNで2時間無処理(対照区)または処理されたH460細胞におけるAIMP2水準を比較した。「ネガティブ」は、FITCコンジュゲート二次抗体のみで培養された細胞を示す。
【0032】
図10aおよび図10bは、肺癌組織におけるAIMP2DX2の生成およびAIMP2の抑制を示す。ベンゾピレンで注射されたAIMP2+/+およびAIMP2+/−マウスから肺を単離した後、AIMP2DX2の生成をRT−PCRで測定するために、各肺からRNAを単離した。DX2を生成する全ての肺は、腫瘍が生成された(+で表示)。
【0033】
図11aおよび図11bは、様々な組織と細胞におけるAIMP2DX2が発現することを示す。図11aでは、ヒト組織における肝癌とAIMP2DX2の形成をRT−PCRで検査した。図11bでは、多様な癌細胞株におけるAIMP2DX2の発現を示す結果である。
【0034】
図12は、AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す。図12aでは、AIMP2突然変異マウスの特徴をサザンブロットとPCR分析で確認した。マウスAIMP2遺伝子のイントロンI領域からプライマーf3とr2を用いて1223bp PCR断片を生成し、これをマウスゲノムDNAのSacI断片のハイブリッド化のためのプローブとして使用した。f6、r6およびpKOf2プライマーの混合物をPCR分析に使用した。野性型および突然変異された形質は、それぞれ約1.2および1.9kb PCR産物を生成した。AIMP2の発現に及ぶ突然変異効果を、AIMP2 cDNAプローブを用いたノーザンブロット、および単離されたヒトAIMP2に対して生成された多クローンウサギ抗体を用いたウエスタンブロットで測定した。ノーザンブロットの各レーンから同量のアクチンが検出された(資料なし)。+/+、+/−および−/−は、野性型、異型接合および同型接合の突然変異マウスを示す。また、gene trapの挿入位置を突然変異された形質のゲノムDNAのシーケンシングで測定した。図12bは、AIMP2+/−と野性型マウスの癌発生比率を示す。図12cは、AIMP2+/−と野性型マウスの形成された腫瘍の平均数を示す。図12dは、AIMP2+/−と野性型マウスの肉腫形成を示す。
【0035】
図13は、AIMP2DX2発現ベクターを示す。
【0036】
〔発明を実施するための最良の様態〕
AIMP2(ARS-interacting multi-functional protein 2)は、アミノアシル−tRNA合成酵素複合体(Aminoacyl-tRNA synthetase:ARSs)の形成に関連したタンパク質の一つであって、p38/JTV−1またはp38と呼ばれる。
【0037】
本発明者は、AIMP2タンパク質の新規機能によって、先行研究においてAIMP2の遺伝的崩壊がc−mycの過発現を誘導し、これにより肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)が過増殖しながら新生マウスの致死(neonatal lethality)が誘導されることを明らかにし、且つ、AIMP2がTGF−βによって誘導され、核に移動してc−mycの発現を抑制することを分子および細胞学的分析によって解明したことがある(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336(2003))。
【0038】
前述した研究に続き、本発明者は、AIMP2が、新規の癌抑制子(tumor suppressor)であって、Smad2/3との直接相互作用によってTGF−βのシグナル伝達を強化させる機能をすることを解明した。また、癌細胞株および組織において、AIMP2エクソン2欠損型の変異体であるAIMP2DX2が特異的に発現することを確認した:エクソン2が欠損したAIMP2変異体であるAIMP2DX2の存在を、RT−PCRを行い、AIMP2−特異的プライマーの組み合わせによってベンドが異なることから確認した。エクソン3と4を含むAIMP2 cDNAに由来したプライマー対をRT−PCRに使用したときは、ウエスタンブロットにおいて低いAIMP2水準を示す細胞からAIMP2転写減少が観察されなかったが、エクソン1〜3を含む転写物に由来したプライマーをもってRT−PCRを行ったとき、予想サイズの転写物と共に小さい転写物も現われた。小さいバンドの形で現われる転写物をシーケンシングした結果、AIMP2のエクソン2に相当する69アミノ酸が全て欠損したAIMP2の変異体であった。エクソン1とエクソン3との接合配列に特異的なプライマーを用いたRT−PCRを行ったとき、低いAIMP2水準を示しながら標準のAIMP2転写物の他にも、小さい転写物を生成する細胞株のみからPCR産物が生成されることを確認し、もう一度AIMP2変異体の存在を証明した。
【0039】
また、本発明者は、AIMP2DX2で形質転換された細胞では、TGF−βと関係なくAIMP2水準が極力減少することから、AIMP2DX2の生成がAIMP2活性の喪失をもたらすことを確認した。実際、細胞内にAIMP2DX2をトランスフェクションさせた結果、c−mycの発現を増加させ、AIMP2の核移動を防ぎ、細胞成長を停止させるなどのTGF−βシグナルの異常機能が招かれた。AIMP2DX2はAIMP2と不活性型のヘテロダイマーを形成し、これは癌の形成と進行に密接に連関されていることを立証した。このようなAIMP2DX2の生成は肺癌、肝癌、皮膚癌、乳癌、腎臓癌、骨肉腫などの様々な癌から観測された。
【0040】
一つの様態として、本発明は、エクソン2が欠失したAIMP2変異体であるAIMP2DX2タンパク質を提供する。
【0041】
本発明のAIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質配列のうちエクソン2の領域が欠失した変異体であって、AIMP2タンパク質の配列(312aa version:AAC50391.1またはGI:1215669;320aa version:AAH136301.1、GI:15489023、BC013630.1)は文献(312aa version: Nicolaides, N.C., Kinzler,K.W. and Vogelstein,B. Analysis of the 5’ region of PMS2 reveals heterogeneous transcripts and a novel overlapping gene, Genomics 29 (2), 329-334(1995); 320 aa version: Generation and initial analysis of more than 15,000 full-length human and mouse cDNA sequences, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99(26), 16899-16903(2002))に記述されており、この中でも、エクソン2に相当する領域が欠失したタンパク質である。本発明者によって出願された韓国特許出願10−2003−0018424はAIMP2タンパク質の癌治療効果について記述している。この特許文献に記述されたAIMP2タンパク質に関する説明が本願に引用される。
【0042】
前述したAIMP2DX2タンパク質は、全配列のAIMP2のエクソン2領域が欠失したタンパク質を含み、AIMP2等価物(アミノ酸配列の置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせによる変形体であって、AIMP2と実質的に同等な活性を持つ機能的等価物、または物理化学的性質を増加または減少させる変形を持つが、AIMP2と実質的に同等な活性を持つ機能的誘導体)のエクソン2領域が欠失したタンパク質を含む。
【0043】
本発明において、AIMP2タンパク質配列のうち「エクソン2の領域が欠失」したというのは、AIMP2タンパク質においてエクソン2領域のアミノ酸配列(アミノ酸46番〜114番)が部分的または全体的に欠失して生じた変異体がAIMP2タンパク質とヘテロダイマーを形成してAIMP2の正常的な機能を妨害することを意味する。したがって、AIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質のエクソン2のアミノ酸配列が全て欠失し、或いはこの領域のアミノ酸配列を含んでエクソン1、エクソン3、エクソン4またはこれらの領域の全てにおいてこれらの領域の一部も欠失し、或いはエクソン2のアミノ酸配列の一部のみが欠失したタンパク質を含む。好ましくは、本発明のAIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質のエクソン2のアミノ酸配列が全て欠失したタンパク質である。より好ましくは、本発明のAIMP2DX2タンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を持つタンパク質である。
【0044】
また、本発明のAIMP2DX2タンパク質は、この天然型アミノ酸配列を持つタンパク質だけでなく、そのアミノ酸配列変異体も本発明の範囲に含まれる。AIMP2DX2タンパク質の変異体とは、AIMP2DX2の天然アミノ酸配列と一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を持つタンパク質を意味する。分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知になっている(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に発生する交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0045】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)できる。
【0046】
前記AIMP2DX2タンパク質またはその変異体は、天然から抽出し、または合成(Merrifleld, J. Amer. Chem. Soc.. 85:2149-2156(1963))またはDNA配列を基本とする組み合わせ方法によって製造できる(Sambrook et al, Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA, 2d Ed., (1989))。遺伝子組み換え技術を用いる場合、AIMP2DX2をコードする核酸を適切な発現ベクターに挿入し、組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体においてAIMP2DX2が発現するように宿主細胞を培養した後、形質転換体からAIMP2DX2を回収する過程によって得られる。
【0047】
前述したように、本発明者は、AIMP2DX2タンパク質が肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫などの癌組織で特異的に発現することを見出し、このようなタンパク質の検出が癌の診断に利用でき、AIMP2DX2は癌の診断マーカーとして使用できる。
【0048】
他の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を提供する。
【0049】
上述したようなAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列は、これと同等な活性を持つタンパク質をコーディングする限りは、一つ以上の核酸塩基が置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせによって変異できる。前記配列番号2のAIMP2DX2タンパク質は、好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列を持つ核酸分子によってコーディングされる。このような核酸分子の配列は、単鎖または二重鎖であり、DNA分子またはRNA(mRNA)分子であり得る。
【0050】
本発明のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列は、天然から単離されるか、人為的に合成または遺伝的組み換え方法によって製造できる。本発明のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列を、これを発現することが可能なベクターに作動的に連結させることにより、AIMP2DX2タンパク質を提供することができる。
【0051】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクターを提供する。
【0052】
本発明において、用語「組み換えベクター」とは、適当な宿主細胞において目的タンパク質または目的RNAを発現することが可能なベクターであって、遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子作製物をいう。
【0053】
本発明において、用語「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように、核酸発現調節配列と、目的のタンパク質またはRNAをコーディングする核酸配列とが機能的に連結(functional linkage)されていることをいう。例えば、プロモータとタンパク質またはRNAをコーディングする核酸配列が作動可能に連結され、コーディングする核酸配列の発現に影響を及ぼすことができる。組み換えベクターとの作動的連結は当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて行い、部位特異的DNAの切断および連結は当該技術分野で一般に知られている酵素などを用いて行う。
【0054】
本発明のベクターは、プラスミドベクター、コスミッドベクター、バクテリオファージベクターおよびウィルスベクターなどを含むが、これらに限定されるものではない。適切な発現ベクターは、プロモータ、オペレータ、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーなどの発現調節エレメントの他にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造できる。ベクターのプロモータは構成的または誘導性であり得る。また、発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択マーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合、複製起源を含む。
【0055】
シグナル配列には、宿主がエシェリキア属菌の場合にはPhoAシグナル配列やOmpAシグナル配列などが、宿主がバシラス属菌の場合にはα−アミラーゼシグナル配列、サブチリシンシグナル配列などが、宿主が酵母の場合にはMFαシグナル配列やSUC2シグナル配列などが、宿主が動物細胞の場合にはインシュリンシグナル配列やα−インタフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
別の様態として、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0057】
形質転換は、核酸を有機体、細胞、組織または器官に導入するいずれの方法も含む。当該分野に公知になっているように、宿主細胞に応じて適切な標準技術を選択して行うことができる。このような方法にはエレクトロポレーション法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、炭化ケイ素繊維を用いた攪拌、アグロバクテリア媒介形質転換、PEG、硫酸デキストラン、リポフェクタミンなどを含まれるが、これに限定されるものではない。
【0058】
宿主細胞によってタンパク質の発現量と修飾などが異なるので、目的に最も適した宿主細胞を選択して使用すればよい。宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)などの原核宿主細胞があるが、これらに限定されるものではない。また、真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)、酵母(例えば、ピキア酵母(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、アカバンカビ(Neurospora crassa))などの下等真核細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物などを含む高等真核生物由来の細胞を宿主細胞として使用することができる。
【0059】
別の様態として、本発明は、前記形質転換体を培養してAIMP2DX2タンパク質を製造する方法を提供する。
【0060】
形質転換体の培養は、目的のタンパク質であるAIMP2DX2の発現を可能にする適切な条件の下で行い、このような条件は、当業者に公知になっている方法によって行うことができる。
【0061】
形質転換体で発現させたタンパク質は、通常の方式で精製でき、例えば塩析(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿)、溶媒沈殿(アセトン、エタノールなどを用いたタンパク質分画沈殿)、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、および限外濾過などの技法を単独でまたは組み合わせで適用させ、本発明のAIMP2DX2タンパク質を精製することができる(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1982): Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); and Deutscher, M., Guide to Protein Purification Methods, Enzymology, vol. 182. Academic Press. Inc., San Diego, CA(1990))。
【0062】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2に特異的な抗体を提供する。
【0063】
本発明において、用語「抗体」とは、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体はAIMP2と区分してAIMP2DX2を特異的に認知する抗体を意味し、多クローン抗体および単クローン抗体を含む。
【0064】
前述したようにAIMP2DX2タンパク質が究明されたので、これを用いて抗体を生成することは、当業界の公知技術を用いて容易に行うことができる。
【0065】
多クローン抗体は、前述したAIMP2DX2タンパク質抗原を動物に注射し、動物から採血して、抗体を含む血清を得る当業界の公知方法によって生産することができる。このような多クローン抗体は、山羊、ウサギ、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの任意の動物種宿主から製造可能である。
【0066】
単クローン抗体は、当業界に広く知られている融合方法(fusion method)(Kohler and Milstein, European Journal of Immunology, 6:511-519)、組み換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)またはファージ抗体ライブラリ(Clackson et al, Nature, 352, 624-628, 1991; and Marks et al, J. Mol. Biol., 222, 58, 1-597, 1991)技術を用いて製造できる。
【0067】
本発明のAIMP2DX2タンパク質の検出に用いられる抗体は、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を持つ完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFvなどがある。
【0068】
本発明のAIMP2DX2に特異的な抗体は、癌の診断に使用されるだけでなく、患者に投与することによりAIMP2DX2の活性を抑制するので癌の治療にも使用できる。治療用抗体として用いられる場合、抗体は既存の治療剤と直接またはリンカーなどを介して間接にカップリング(例えば、共有結合)させることができる。
【0069】
抗体と結合できる治療剤には、放射性核種(radionuclide)、薬剤、リンフォカイン、毒素、異型機能性抗体などがあるが、これに限定されるものではない。放射性核種には、131I、90Y、105Rh、47Sc、67Cu、212Bi、211At、67Ga、125I、186Re、188Re、177Lu、153Sm、123I、111Inなどがある。薬剤にはメトトレキサート(methotrexate)、アドリアマイシン(adriamycin)などがあり、リンフォカインにはインターフェロンなどがある。毒素にはリシン、アブリン、ジフテリアなどがある。他の抗体と結合してその複合体が癌細胞と効能細胞(例えば、T細胞などのK細胞(killer cell))の両方ともに結合する抗体である異型機能性抗体(heterofunctional antibodies)がある。
【0070】
抗体は、それ自体または抗体を含む組成物の形で投与できる。治療用組成物の場合、投与方式に応じて、許容可能な担体を含んで適切な製剤に製造される。投与方式に適した製剤は公知になっており、典型的に、膜を通過した移動を容易にする界面活性剤を含む。このような界面活性剤は、ステロイドから誘導されたもの、或いはN−[1−(2,3−ジオレオイル)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)などの陽イオン性脂質、またはコレステロールヘミサクシネート、ホスファチジルグリセロールなどの各種化合物などがある。
【0071】
本発明の抗体を含む組成物は、癌細胞またはそれらの転移を治療するために薬学的に効果的な量で投与できる。薬学的組成物は、単一または多重投与できる。抗体を含む組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、および局部的免疫抑制治療のために必要であれば病変内投与を含む適切な方法によって投与される。非経口注入には筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。好ましい投与方式および製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。製剤のpHは、抗体安定性(化学的および物理的安定性)の均衡を合わせて、投与される患者に適するようにするが、一般にpH4とpH8の範囲である。その他にも経皮投与および経口投与などの投与のための他の技術を適切に変形させて利用し、適切な製剤を考案することができる。典型的な投与量の水準は、標準臨床的技術を用いて最適化することができる。
【0072】
また、本発明の抗体は、抗体を暗号化する核酸の形で投与されて細胞内で抗体が生成されるようにすることができる(WO96/07321)。
【0073】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2に特異的な抗体を含む癌診断キットを提供する。
【0074】
本発明の癌診断キットには、AIMP2DX2タンパク質を選択的に認知する抗体だけでなく、免疫学的分析に用いられる当分野で一般に用いられる道具や試薬などが含まれる。このような道具/試薬としては、適切な担体、検出可能なシグナルを生成することが可能な標識物質、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などを含むが、これらに限定されるものではない。標識物質が酵素の場合には、酵素活性を測定することが可能な基質および反応停止剤を含むことができる。適切な担体としては、これらに限定されるものではないが、可溶性担体、例えば、当分野に公知になっている、生理学的に許容される緩衝液、例えばPBS、不溶性担体、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子などの高分子、その他の紙、ガラス、金属、アガロースおよびこれらの組み合わせであり得る。
【0075】
本発明の癌診断キットは、これに限定されるものではないが、ELISAプレート、ディップスチックデバイス、免疫クロマトグラフィー試験ストリップおよび放射分割免疫検定デバイス、およびフロースルー(flow-through)デバイスなどの形を持つことができる。
【0076】
本発明において、用語「癌診断マーカー」とは、癌組織および細胞で発現し、その発現有無を確認することにより、癌の発病を確認することが可能な物質、好ましくは正常組織と癌組織において有意な差異を示すタンパク質またはmRNAなどの有機生体分子を意味する。本発明の目的上、癌診断マーカーは、様々な癌組織および細胞のみで特異的に発現するAIMP2DX2であり、AIMP2DX2の発現をmRNAの水準または/およびタンパク質の水準で確認することにより、癌を診断することができる。本発明の抗体は、癌、より具体的には肺癌、肝癌、 乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫癌などの診断に有用である。
【0077】
別の様態として、本発明は、(a)分析する試料を提供する段階と、(b)前記試料から、AIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階を含み、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法を提供する。
【0078】
本発明において、用語「分析する治療」とは、癌の発生によってマーカータンパク質の発現量の差異が検出できる組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、精液、脳脊髄液または尿などの生物学的試料を意味し、当業界の公知方法で処理して準備する。
【0079】
具体的に、分析試料においてAIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現は、タンパク質水準またはmRNA水準で検出することができる。
【0080】
AIMP2DX2タンパク質の検出は、前記タンパク質に特異的に認知する抗体を試料に接触させ、その抗原−抗体複合体形成を測定して行われる。
【0081】
本発明において、用語「抗原−抗体複合体」とは、生物学的試料中のAIMP2DX2タンパク質とこれを特異的に認知する抗体との結合物を意味する。抗原−抗体複合体の形成を観察する実験方法には、組織免疫染色、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット(Western Blotting)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、タンパク質チップ(protein chip)などがあり、これに限定されるものではない。
【0082】
抗原−抗体複合体の形成を定性または定量的に測定可能にするラベルには、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子、レドックス分子および放射線同位元素などがあり、必ずしもこれらに限定されるものではない。検出ラベルとして利用可能な酵素には、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼとGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼとルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ホスフェノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、β−ラクタマーゼなどがあり、これらに限定されるものではない。蛍光物にはフルオレシン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタル酸アルデヒド(o-phthaldehyde)、フルオレサミンなどがあり、これに限定されるものではない。リガンドにはビオチン誘導体などがあり、これに限定されるものではない。発光物にはアクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがあり、これに限定されるものではない。微小粒子にはコロイド金、着色されたラテックスなどがあり、これらに限定されるものではない。レドックス分子にはフェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4−ベンゾキノン、ヒドロキノン、K4W(CN)8、[Os(bpy)3]2+、[RU(bpy)3]2+、[MO(CN)8]4−などがあり、これらに限定されるものではない。放射線同位元素には3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、186Reなどがあり、これらに限定されるものではない。
【0083】
AIMP2DX2 mRNAの検出は、当分野に知られている増幅反応またはハイブリッド化反応で行われる。増幅反応またはハイブリッド化反応は、AIMP2DX2 mRNAに特異的なプライマーまたはプローブを用いて行われる。
【0084】
本発明において、用語「プライマー」とは、短い自由3末端水酸化基(free 3' hydroxyl group)を持つ核酸配列であって、相補的なテンプレートと塩基対を形成することができ、テンプレート鎖複写のための開始点として機能をする短い核酸配列を意味する。
【0085】
本発明において、用語「プローブ」とは、mRNAと特異的結合をすることが可能な、短くは数塩基、長くは数百塩基に相当するRNAまたはDNAなどの核酸断片を意味し、ラベリングされていて特定mRNAの存在有無を確認することができる。プローブは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プローブ、単鎖DNA(single stranded DNA)プローブ、二重鎖DNA(double stranded DNA)プローブ、RNAプローブなどの形に製作でき、ビオチン、FITC、ローダミン、DIGなどで或いは放射線同位元素などで標識できる。例えば、配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列をプローブとして使用することができる。
【0086】
プローブまたはプライマーを用いてAIMP2DX2 mRNAを検出することが可能な方法としては、DNAシーケンシング(DNA sequencing)、RT−PCR、プライマー延長方法(Nikiforov et al, Nucl Acids Res 22, 4167-4175, 1994)、オリゴヌクレオチド延長分析(OLA)(Nickerson et al, Pro Nat Acad Sci USA, 87, 8923-8927(1990))、対立形質特異的なPCR方法(Rust et al, Nucl Acids Res, 6, 3623-3629, 1993)、RNase不一致切断(RNase mismatch cleavage; Myers et al, Science, 230, 1242-1246, 1985)、単鎖形状多形成(single strand conformation lymorphism: SSCP; Orita et al, Pro Nat Acad Sci USA, 86, 2766-2770, 1989)、SSCPおよびヘテロデュプレックス同時分析法(Lee et al, Mol Cells, 5:668-672, 1995)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE; Cariello et al, Am J Hum Genet, 42, 726-734, 1988)、変性高圧液体クロマトグラフィー(denaturing high performance liquid chromatography: D−HPLC, Underhill et al., Genome Res, 7, 996-1005, 1997)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
好ましくは、特異的プライマーを用いてRT−PCRを行って癌診断マーカーmRNAを検出する方法である。RT−PCRは、P.Seeburg(1986)によってRNAの分析に導入された方法であって、mRNAを逆転写して得られたcDNAをPCRによって増幅して分析する。この際、増幅段階では本発明の目的に合わせて製造されたプライマーを使用するようにする。本発明の目的上、プライマーは、それぞれ正常AIMP2 mRNAと変異体AIMP2DX2 mRNAに相当する大きさの異なる2つのバンドで示すプライマーと、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相当するバンドのみで示すプライマーに製作することができる。大きさの異なる2つのバンドで示されるようにするためには、エクソン2に相当する部分が転写されるように2つのプライマーの位置を指定して製作すればよい。プライマーの種類は、特に限定されるものではないが、本発明では、配列番号5と配列番号6のヌクレオチド配列を持つプライマーを使用した。変異体に相当するバンドのみ示されるようにプライマーを製作するためには、一つのプライマーがエクソン1のC末端とエクソン3のN末端との連結地点の配列を持つように製作すればよい。本発明では、接合地点に相当する配列番号8のプライマーを配列番号7のプライマーと共に使用し、或いは接合地点に相当する配列番号16のプライマーを配列番号6のプライマーと共に用いてRT−PCRした。RT−PCRは、バンドパターンを確認することにより、診断マーカーAIMP2DX2 mRNAの発現有無を確認することができ且つ癌発生有無を診断することができる簡便な方法である。
【0088】
対照区と検出試料中のAIMP2DX2の発現に有意的な差異があるかを絶対的(例えば:μg/ml)または相対的(例えば:シグナルの相対強度)の差異から確認することにより、癌、特に肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌および骨肉腫癌を診断することができる。
【0089】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2のmRNAに特異的なsiRNA(small interfering RNA)核酸分子を提供する。
【0090】
本発明において、用語「siRNA」とは、特定のmRNAの切断(cleavage)によってRNAi(RNA interference)現象を誘導することが可能な短い二重鎖RNAを意味する。標的遺伝子のmRNAと相同の配列を持つセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を持つアンチセンスRNA鎖から構成される。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制することができるため、効率的な遺伝子ノックダウン方法または遺伝子治療(gene therapy)の方法によって提供される。
【0091】
siRNAは、RNA同士が対を成す二重鎖RNA部分が完全に対を成すことに限定されず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的ではない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などによって対を成さない部分が含まれ得る。全長は10〜100塩基、好ましくは15〜80塩基、さらに好ましくは20〜70塩基である。siRNA末端構造は、標的遺伝子の発現をRNAi効果によって抑制することが可能なものであれば、平滑(blunt)末端或いは粘着(cohesive)末端でもよい。粘着末端構造は、3末端側が突出した構造と5末端側が突出した構造の両方とも可能である。突出する塩基数は限定されない。例えば、塩基数としては1〜8塩基、好ましくは2〜6塩基とすることができる。本明細書において、siRNAの全長は、中央の二重鎖部分の長さと、両末端の単鎖突出を構成する長さとの和で示した。また、siRNAは、標的遺伝子の発現抑制効果を維持することが可能な範囲で、例えば一側末端の突出部分に低分子RNA(例えば、tRNA、rRNA、ウィルスRNAなどの天然のRNA分子または人工のRNA分子)を含むことができる。siRNA末端構造は、両側とも切断構造を持つ必要はなく、二重鎖RNAの一方の末端部位がリンカーRNAによって接続されたステムループ型構造であり得る。リンカーの長さは、ステム部分の対を成すのに支障がない長さであれば特に限定されない。
【0092】
本発明において、用語「特異的」または「特異的な」は、細胞内で他の遺伝子に影響を及ぼさず、目的遺伝子のみを抑制する能力を意味し、本発明ではAIMP2DX2特異的である。本発明のsiRNAは、AIMP2DX2特異的に作動するように、AIMP2DX2のエクソン1とエクソン3との境界地点に相当するmRNAと相同の配列を含むセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を含むアンチセンスRNA鎖を持つ。
【0093】
前記において、「遺伝子発現の減少(Inhibition of gene expression)」とは、目的遺伝子から生成されたmRNAおよび/またはタンパク質の水準が除去または減少されたことを意味し、これはmRNAの切断によって起こるRNA干渉(RNAi:RNA interference)現象による。
【0094】
siRNAを製造する方法は、試験管内でsiRNAを直接合成した後、トランスフェクション(transfection)過程を経て細胞内に導入させる方法と、siRNAが細胞内で発現するように製造されたsiRNA発現ベクターまたはPCR−derived siRNA発現カセットを細胞内にトランスフェクションまたは感染させる方法がある。siRNAを製造し、細胞または動物に導入する方法の決定は、実験の目的および標的遺伝子産物の細胞生物学的機能によって異なる。
【0095】
本発明のsiRNAは、AIMP2DX2 mRNAを特異的に減少させることができれば、配列と長さは特に限定されず、本発明の具体的な実施では、3種のAIMP2DX2特異的なsiRNAを発現するベクターを製作し、siRNAが細胞内AIMP2DX2の細胞内水準を減少させ、AIMP2の機能とTGF−βシグナル伝達過程を回復することができることを確認した。
【0096】
本発明のAIMP2DX2に特異的なsiRNAは、AIMP2DX2 mRNAのエクソン1とエクソン3との連結部位に相当する配列を含む核酸である。好ましくは、それぞれ配列番号9と配列番号10のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む3番siRNA、配列番号11と配列番号12のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む4番siRNA、または配列番号13と配列番号14のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む5番siRNAである。その中でも、配列番号11と配列番号12のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含むsiRNAが最も好ましい。単一または2種以上のsiRNAを混合して使用することができる。
【0097】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的なアンチセンス核酸配列を提供する。
【0098】
本発明において、用語「アンチセンス核酸」とは、特定のmRNAの配列に相補的な核酸配列を含有しているDNAまたはRNAまたはこれらの誘導体を意味し、mRNA内の相補的な配列に結合してmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する特徴がある。本発明のアンチセンス配列は、AIMP2DX2 mRNAに相補的であり、AIMP2DX2 mRNAに結合できるDNAまたはRNA配列を意味し、AIMP2DX2 mRNAの翻訳、細胞質内への転位(translocation)、成熟(maturation)または他の全ての生物学的機能に対する必須的な活性を阻害することができる。アンチセンス核酸の長さは6〜100塩基であり、好ましくは8〜60塩基であり、より好ましくは10〜40塩基である。
【0099】
前記アンチセンス核酸は、効能を増進させるために一つ以上の塩基、糖または骨格(backbone)の位置において変形できる(De Mesmaeker et al, Curr Opin Struct Biol., 5(3):343-55, 1995)。核酸骨格は、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、単鎖アルキル、シクロアルキル、単鎖へテロアトミック、複素環式糖間結合などで変形できる。また、アンチセンス核酸は、一つ以上の置換された糖成分(sugar moiety)を含むことができる。アンチセンス核酸は、変形された塩基を含むことができる。変形された塩基には、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−meピリミジン(特に5−メチルシトシン)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、ジェントビオシルHMC、2−アミノアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン、2,6−ジアミノプリンなどがある。また、本発明のアンチセンス核酸は、前記アンチセンス核酸の活性および細胞吸着性を向上させる一つ以上の成分(moiety)またはコンジュゲート(conjugate)と化学的に結合できる。コレステロール成分、コレステリル成分、コール酸(colic acid)、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪性鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル成分、オクタデシルアミン、ヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール成分などの脂溶性成分などがあり、これに限定されるものではない。脂溶性成分を含むオリゴヌクレオチドとその製造方法は、本発明の技術分野で既によく知られている(米国特許第5,138,045号、米国特許第5,218,105号および米国特許第5,459,255号)。前記変形された核酸は、ヌクレアーゼに対する安定性を増加させ、アンチセンス核酸と標的mRNAとの結合親和力を増加させることができる。
【0100】
本発明のAIMP2DX2に特異的なアンチセンス核酸は、AIMP2DX2 mRNAのエクソン1とエクソン3とが連結される接合点部位の当該配列に相補的な配列を含むことが好ましい。
【0101】
アンチセンスRNAの場合、通常の方法によって試験管で合成されて生体内に投与し、或いは生体内でアンチセンスRNAが合成されるようにすることができる。試験管でアンチセンスRNAを合成する一例は、RNAポリメラーゼIを用いることである。生体内でアンチセンスRNAが合成されるようにする一例は、認識部位(MCS)の起源が反対方向にあるベクターを用いてアンチセンスRNAが転写されるようにすることである。このようなアンチセンスRNAは、配列内に翻訳中止コドンが存在するようにして、ペプチド配列に翻訳されないようにすることが好ましい。
【0102】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を含む癌を治療するための薬剤学的組成物、およびこれを投与して癌を治療する方法を提供する。
【0103】
本発明の具体的な実施によれば、AIMP2DX2特異的siRNAを処理する場合、AIMPDX2の発現誘導によって発生したAIMP2の機能的崩壊が復旧されることを、AIMP2の細胞内水準増加、Smad2のリン酸化が誘導されることから確認することができた。すなわち、AIMP2DX2は、AIMP2の機能を崩壊して癌を誘発する直接的な原因として作用するが、AIMP2DX2のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いる場合、細胞内AIMP2の細胞内水準が増加しながら機能が復旧されるので、癌細胞特異的な癌治療に有用である。
【0104】
本発明のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いてAIMP2DX2発現誘導によって発生した全ての癌を治療することができる。このような癌は、肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫癌などを含む。
【0105】
siRNAまたはAIMP2DX2アンチセンス核酸1種以上を含む薬学的組成物は、患者の癌細胞の増殖を阻害させる追加の物質を含むことができ、またsiRNAまたはアンチセンス核酸分子の導入を促進させる製剤、例えばリポソーム(米国特許第4,897,355号、第4,394,448号、第4,235,871号、第4,231,877号、第4,224,179号、第4,753,788号、第4,673,567号、第4,247,411号、第4,814,270号)を用いるか、コレステロール、コール酸塩よびデオキシコール酸を始めとした多数のステロール類のうち1種の新油性担体と共に配合することもできる。また、アンチセンス核酸は、細胞によって吸収されるペプチドに接合させることもできる。有用なペプチドの例としては、ペプチドホルモン、抗原または抗体およびペプチド毒素などがある(Haralambid et al, WO89/03849; Lebleu et al., EP0263740)。
【0106】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体と共に投与でき、経口投与の場合には結合剤、滑澤剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述したような薬剤学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形に製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形に製造することができる。
【0107】
本発明の薬剤学的組成物に含有されるAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸の有効投与量の範囲は、性別、重症度、年齢、投与方法、標的細胞、発現水準などの様々な要因によって異なり、当分野の専門家によって容易に決定できる。
【0108】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口的に、または静脈内、皮下、鼻腔内または腹腔内などの非経口的にヒトと動物に投与される。非経口的投与は、皮下注射や筋肉内注射、静脈注射などの注射法および点滴法を含む。この他の本発明の薬剤学的組成物は、各種剤形の形で通用される技法によって製造することができる。
【0109】
別の様態として、本発明は、(a) 試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階、および(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階を含み、AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0110】
AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成は、実施例で証明したのと同様に、癌と関連している。したがって、ヘテロダイマー形成を抑制する基質は抗癌剤と判断される。
【0111】
ヘテロダイマー形成をスクリーニングすることが可能な方法には、例えば、イーストツーハイブリッド(yeast-two-hybrid)、試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)などがある。
【0112】
イーストツーハイブリッドアッセイは、Field&Song(1989)によって最初開発された方法であって、転写調節タンパク質のDNA結合ドメイン(DNA binding domain)と転写活性ドメイン(transcription activation domain)にそれぞれベイト(bait)とプレイ(prey)タンパク質を融合タンパク質の形で発現させ、転写調節タンパク質により調節される遺伝子の発現および栄養欠乏培地での酵母の成長を観察することにより、2つのタンパク質(プレイタンパク質、ベイトタンパク質)の相互作用有無を確認することができるスクリーニング方法である。試験管内プルダウンアッセイは、タンパク質間の相互作用をタグ付きタンパク質(ベイトタンパク質)を精製し、この際、ベイトタンパク質に結合するタンパク質結合パートナ(プレイタンパク質)のプルダウン有無を確認することにより、2タンパク質の結合有無を確認することができるスクリーニング方法である。これらのスクリーニング方法を行い、AIMP2DX2とAIMP2のヘテロダイマー形成を阻害させる抑制剤を選別することができる。
【0113】
別の様態として、本発明は、(a)試験物質を、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含み、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0114】
AIMP2DX2遺伝子の発現は、mRNAまたはタンパク質の水準で測定することができる。AIMP2DX2 mRNA発現を検出しようとする場合、好ましくは前述したようなAIMP2DX2特異的なプライマーを用いてRT−PCRによって行うことができる。AIMP2DX2タンパク質の発現を検出しようとする場合、前述したようなAIMP2DX2特異的な抗体を使用する様々な免疫アッセイ方法、例えばウエスタンブロットで行うことができる。
【0115】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
〔実施例〕
(細胞培養、化合物および細胞周期の分析)
本研究に使用された細胞株は、10%FBS含有RPMI−1640で維持した。マウス胚児線維芽細胞(MEFS:Mouse embryonic fibroblasts)は、12.5日〜14.5日目の胚児から単離し、20%FBS含有DMEMで培養した。TGF−βが細胞周期に及ぼす影響を確認するために、細胞を無血清または1%FBS含有培地で2ng/mlのTGF−βで処理して培養し、細胞を集めてFACS分析した。また、細胞増殖は[3H]チミジン挿入(thymidine incorporation)で測定した。細胞を、TGF−βを処理または無処理した状態の無血清培地で20時間培養した後、[3H]チミジン1μCi/mlの存在下に4時間培養した。挿入されたチミジンは、液体閃光計算器を用いて文献(Kim et al., Nat. Genet. 34, 330-336(2003))によって定量した。TGF−βはR&D systemから購入し、抗−Smad2およびSmad4抗体はSnata Cruzから購入した。抗−AIMP2抗体は実験室で製造した。単離したAIMP2ンパク質500μg(1mg/ml)をウサギ(male、NewZealand)にcomplete adjuvant(Sigma)500μlと混ぜて皮下に注射した。7日後、AIMP2タンパク質500μgをincomplete adjuvant(Sigma)500μlと混ぜてウサギの皮下に注射し、これを7日間隔で2回さらに行った。3日後、ウサギの血液から抗体を採取する工程によって抗−AIMP2抗体を製造した。
【0117】
(免疫沈殿とウエスタンブロットの分析)
細胞をTGF−βで一定の時間処理し、プロテアーゼ含有RIPA緩衝液を用いて細胞からタンパク質を抽出し、10〜12%SDS−PAGEを用いて単離した後、特異的抗体としてECLシステムを用いて免疫ブロットした。免疫沈殿のために、細胞溶解物をIgGおよびアガロース−コンジュゲートされたタンパク質Aで処理した。遠心分離の後に、上澄み液を特異的抗体およびアガロース−コンジュゲートされたAで2時間培養した。冷たいPBSで2回、RIPAで1回洗浄した後、結合したタンパク質を特異的抗体で沈殿させ、溶出してウエスタンブロット分析を行った。
【0118】
(RT−PCR)
全RNA(total-RNA)を製造社(Qiagen)のプロトコールに従って単離した。新鮮に準備された組織(3×3×3mm)を小さい欠片に切り、350μlの溶解緩衝液と混合し、ホモジナイザーまたは注射器で均質化させた。350μlの70%エタノールを添加した後、溶解物(lysate)を多数回上下に揺らしてカラムにロードし、13,000rpmで15秒間遠心分離した。カラムを洗浄緩衝液で2回洗浄した後、RNAを40μlのRNase−free DWで溶出した。逆転写のために、1μgの単離されたRNAをAIMP2−特異的プライマー(図8b)の鋳型として使用した。逆転写の後、DWで3倍に希釈させ、1μlを、0.5μl dMTP(各2.5mM)、0.5μlの表示されたプライマー(各10pM)、1.5μl DMSOおよび0.1μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)を含む30μlPCR反応に使用した。
【0119】
(siRNAを用いたAIMP2DX2の抑制)
AIMP2DX2の発現を抑制するために、AIMP2DX2に対するsiRNAを製作した。AIMP2DX2に対するsiRNAをコーディングする配列を製作し、IMG−700(Imgenex)ベクターのSalIおよびXbaI部位と連結させ、クローニングをDNAシーケンシングで確認した。H322細胞を、si−DX2発現するベクター2μgで形質転換させた。1mlの無血清培地で3時間DNA−リポソーム複合体とインキュベーションした後、20%FBSを含む1mlのRPMI−1640をH322細胞に投与した。さらに20時間培養した後、無血清条件または指示された時間だけTGF−βを処理した。
【0120】
(イーストツーハイブリッドアッセイ)
ヒトAIMP2およびSmad2(およびその欠失断片)をコーディングするcDNAを、特異的プライマーを用いるPCRによって獲得した。SmadおよびAIMP2のPCR産物をEcoRIおよびXhoIで切断してそれぞれpEG202(LexA)およびpJG4−5(B42)のようなサイトに結合させた(Gyuris et al, a human G1 and S phase protein phosphatase that associates with Cdk2. Cell 75, 791-803, 1993)。Lex−Smad2断片とB42−AIMP2間の相互作用は、X−galを含む酵母培地で生存する能力で分析した(Rho et al, Proc Natl Acad Sci U S A 96, 4488-93, 1999)。
【0121】
(AIMP2DX2を安定的に生成する細胞の構築)
野生型MEFsをpcNDA−AIMP2DX2またはpcDNAで形質転換させ、形質転換体を、400μg/ml G418を含むDMEM培地で選択した。形質転換されていない細胞を除去した後、形質転換体を、G418を含まない培地で3日間培養した後、2%PFAで固定させ、Giemsaで染色した。
【0122】
(免疫染色と組織学的分析)
冷凍した組織スライドを2%パラホルムアルデヒドで固定し、冷たいPBSで3回洗浄した。0.2%トリトンX−100(PBST)および1%BSA含有PBSでブロッキングおよび浸潤(permeablization)した後、スライドを抗−AIMP2抗体で2時間培養した。PBSで洗浄した後、抗−ウサギ山羊IgG−FITCおよびプロピジウムヨウ化物(propidium iodide)(PI50μg/ml)で1時間培養し、その後PBSで洗浄し、固定して共焦点顕微鏡(confocal microscopy)で観察した。
【0123】
(AIMP2DX2発現ベクターの製作)
AIMP2DX2を発現するプラスミドを構築するために、AIMP2DX2のcDNAをpcDNA3.1−mycにクローニングした。まず、AIMP2DX2をH322 cDNAにおいてEcoRIおよびXhoIリンカー付きプライマーを用いて増幅させた後、EcoRIおよびXhoIを用いてpcDNA3.1−mycにクローニングした。AIMP2DXを発現するpcDNA3−myc/AIMP2DX2ベクター(図13)は、寄託名をEscherichai coli DH5alpha/AIMP2DX2として、2004年10月25日付けで、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、韓国大田市儒城區魚隠洞52番地韓国生命工学研究院)に寄託番号KCTC 10710BPで寄託した。
【0124】
(ノックアウト(knock-out)マウスの製作)
マウスゲノムDNA上の突然変異は、方法によるgene trap方法に従った(Zambrowicz et al, Nature, 9, 608-611, 1998)。gene trapベクターは、129/SvEvBrdマウスに由来した胚児幹細胞の無作為的突然変異ライブラリ(OmniBank library, Lexicon Genetics, USA)の生成に使用された。ライブラリにおいて、AIMP2遺伝子が破壊されたOST7994クローンを同定した。前記クローンを用いて、Lexicon Genetics社の標準プロトコールに従ってC57/BL6異型接合のマウスを生成した。同型接合の突然変異マウスを得るために、異型接合のマウスを交配させた。単離された13.5日目のマウスの腹をrazor bladeで切り、トリプシン酵素処理してペトリ皿に培養のためのプレーティングを行った。マウス胚児線維細胞(embryonic fibroblast cells)から単離されたゲノムDNAを用いてサザンブロットおよびPCR分析して突然変異を確認した。AIMP2発現をノーザンブロットおよびウエスタンブロットで確認した。gene trapの挿入位置をゲノムDNAシーケンシングで確認した。サザンブロットのために、マウス尻からゲノムDNAを単離し、SacIで分解した。切断されたDNA断片を変性ゲル電気泳動(denaturing gel electrophoresis)で単離し、放射学的にラベルされたAIMP2遺伝子の1.2kb PCR産物を配列番号17と18のプライマーでハイブリッドさせた。ハイブリッドされたバンドを蛍光イメージ分析器(phosphorimage analyzer)を用いて検出した。単離されたゲノムDNAを配列番号19と21、配列番号20と21の特異的プライマーでPCR分析に使用した。
【0125】
ノーザンブロット分析のために、マウス胚児線維細胞から全細胞RNAを製造社の指示に従ってRNeasy Midi kit(QIAGEN)を用いて準備した。単離されたRNA(30μg)を1.2%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲルから電気泳動によって単離し、Hybond N membranes(Amersham)に移動させ、UV照射によって膜に固定した。膜上のRNAをAIMP2 cDNAのPCRによって生成された特異的プローブでExpressHyb hybridization solution(CLONTECH)を用いてハイブリッドさせた。マウス胚児線維細胞からタンパク質を抽出し、SDS−PAGEで単離し、文献(Park et al, 274, 16673-16676, 1999; Kim et al, J Biol Chem, 275, 21768-21772, 2000)に記述した抗−AIMP2多クローン抗体でウエスタンブロットを行った。
【0126】
(肺癌形成)
AIMP2+/−マウス32匹と(雄19匹と雌13匹)AIMP2+/+マウス25匹(雄14匹および雌11匹)を実験に使用した。マウス腹腔内にベンゾピレン(100mg/kg)を単一注射した。対照区として、AIMP2+/+マウス3匹(雄2匹および雌1匹)およびAIMP2+/−マウス5匹(雄4匹および雌1匹)をバイカル溶液(生理食塩水に10%DMSOおよび35%PEG40が溶けた溶液)で注射した。
【0127】
(ノックアウトマウスにおける皮膚癌の発癌モデル)
前記で製作したAIMP2ノックアウト(KO)型と野生型(WT)マウス総33匹をWT雄対照区(3匹)、WT雄処理区(6匹)、WT雌対照区(2匹)、WT雌処理区(6匹)、KO雄対照区(2匹)、KO雄処理区(6匹)、KO雌対照区(3匹)、KO雌処理区(5匹)に分類した。
【0128】
DMBA(7,12-dimethylbenz[a]anthracene)を0.2μmol/0.2mlアセトンの濃度で処理区マウスの剃り済み背に局部的に適用した。この際、対照区に属するマウスはアセトンのみで処理した。1週間後、DMBA誘導マウスを10nmol/0.2mlアセトン濃度のTPA(12-O-tetradecanoyl-phorbol-13-acetate)で1週に2回ずつ21週間処理した。この際、対照区はアセトンのみで処理した。促進剤処理の後、1週から直径1mm以上の腫瘍の数を毎週計算した。21週にマウスを犠牲させて生化学的分析のための腫瘍試料を収集した。
【0129】
(実施例1:TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要さと作用方式)
TGF−βシグナル伝達においてAIMP2が重要に作用することを考察するために、TGF−βで誘導された細胞成長停止、Smad2/3の核移動およびSmad2/3とAIMP2との相互作用に対するAIMP2+/_+およびAIMP2−/−MEFsの反応を調べた。チミジン挿入、コロニー形成およびフローサイトメトリーで確認した結果、正常細胞の成長はTGF−βに抑制されるのに比べ、AIMP2欠乏細胞はこのようなシグナルに反応を示さなかった(各図1a、bおよびc)。MEFsをTGF−βで処理したとき、正常細胞ではSmad2およびSmad3が核に移動したが、AIMP2−/−細胞ではそうではなかった(図1d)。このような全ての結果は、Smad2および3を経由するTGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性を示す。
【0130】
AIMP2のSmad2および3との可能な相互作用を共同免疫沈澱によって調査した。AIMP2はSmad2/3との相互作用を示した。これはTGF−βによって強化された(図1e)。AIMP2と2つのR−Smad間の直接的相互作用をイーストツーハイブリッドおよび試験管内プルダウンアッセイで確認した(図2、図7)。Smad2/3に結合するAIMP2の量は、TGF−βによってAIMP2が誘導されるにつれて増加した(図2a)。形質転換によってAIMP2水準が増加するとき、TGF−βターゲット遺伝子の発現は強化された。これはTGF−βシグナル伝達においてAIMP2の刺激的な役割を意味する(図2b)。AIMP2はSmad2および3に結合するため、このような2つのR−Smadは同様の方式で作動すると予測することができた。よって、AIMP2とSmad2との相互作用に焦点を合わせてより詳しく考察した。TGF−β依存的Smad2のリン酸化は、AIMP2欠乏MEFsで抑制されたが、AIMP2がAIMP2−/−細胞に導入されると復旧された(図2c)。AIMP2との相互作用に関連したSmad2のドメインをイーストツーハイブリッド(図2d)および試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)(図7)で確認した。2つの実験によって、Smad2のMH2ドメインが相互作用に関連していることが明らかになった。
【0131】
TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作用方式を考察するために、正常およびAIMP2欠乏細胞においてSmad2とTGF−β受容体とのTGF−βで誘導された結合を観察した。細胞をTGF−βで処理し、Smad2と受容体との結合をSmad2とタイプI受容体の共同免疫沈澱によって時間間隔を置いてモニタリングした。野生型細胞では、TGF−βで誘導されたSmad2のTGF−β受容体との結合が初期時点で観察され減少されたが、AIMP2欠乏細胞では、Smad2に結合した受容体がTGF−β処理後の後期段階で蓄積された(図2e)。TGF−βで誘導されたSmad2のリン酸化において、野生型細胞ではリン酸化されたSmad2は益々増加したが、AIMP2−/−細胞では深刻に抑制された(図2f)。このような結果は、AIMP2が、R−Smad2との直接的相互作用によって、TGF−βで誘導されたR−Smadのリン酸化に決定的役割を果たすことを意味する。
【0132】
(実施例2:癌細胞におけるAIMP2の抑制とAIMP2の欠失型の生成)
癌形成とAIMP2との関連性を調査するために、相異なる各種癌細胞株におけるAIMP2の発現程度を観察した。観察した6つの細胞株のうち3つはウエスタンブロット(図3a)およびFACS分析(図3b)において低いAIMP2水準を示した。低いAIMP2水準を示す細胞株全てはTGF−βタイプII受容体が正常水準で発現し、キナーゼ活性も保有しているという事実は、低いAIMP2水準が受容体の機能異常による結果ではないことを意味する。AIMP2水準差が転写差異によるものかを確認するために、他の組み合わせのAIMP2特異的プライマーを用いてRT−PCRを行った。AIMP2遺伝子は4つのエクソンから構成されている(図8a)。エクソン3および4を貫通するAIMP2 cDNAを生成させる配列番号3と4のプライマーを使用したとき、減少したAIMP2水準を示す細胞からAIMP2転写の減少は観察されなかった(図3c、第1行)。これは低いAIMP2水準の低い転写の結果ではないことを意味する。エクソン1から3までの転写物を生成させる配列番号5と6のプライマーを使用したとき、予想した大きさの転写物だけでなく、小さい大きさの転写物も得ることができた(図3c、第2行)。小さい大きさの転写物の配列分析結果、AIMP2の69個のアミノ酸をコーディングするエクソン2が欠損していることが分かった(図8b)。この小さい大きさの転写物の生成を再確認するために、エクソン2欠損によって生成されるエクソン1およびエクソン3の接合配列をターゲッティングする配列番号8のプライマー(図8b、プライマーDX−B)を製作し、配列番号7プライマーを共に用いてRT−PCRを行った。低い水準のAIMP2を発生する細胞株は、小さい大きさの転写物(DX2と命名し、図3c、第2行および第3行)を生成した。
【0133】
抗−AIMP2抗体でウエスタンブロット分析すると、一般に、全長AIMP2のみが検出されDX2は検出されないので(図2a)、タンパク質水準におけるDX2は非常に不安定であることを意味する。また、H460、H322およびH290における低いAIMP2水準が免疫蛍光染色で証明された(図3d)。染色差異が発生する可能性を排除するために、H460およびDU145細胞を同じプレートに共同培養し、AIMP2を染色した。H460におけるAIMP2の染色強度は、DU145より多く弱かった(図9a)。低いAIMP2水準を示す細胞からTGF−β依存的なAIMP2の核移動が観察されなかった(図3d、下行)。AIMP2とTGF−β機能間の関連性を検討するために、前記細胞株におけるTGF−βによる成長抑制を測定した。A549およびDU145細胞はその成長がTGF−βによって抑制されるのに反し、低いAIMP2水準を示す細胞はTGF−βに反応しなかった(図3e)。このような結果は、A549細胞はTGF−βに敏感であり、H460細胞はTGF−βに鈍感であるという先行の研究と一致するものである(Osada et al. Cancer Res. 61, 8331-8339, 2001; Kim et al., Lung Cancer 31, 181-191, 2001)。また、ターゲット遺伝子はA549およびDU145細胞においてTGF−βによって誘導されたが、低いAIMP2水準を示すH322および他の2つの細胞株では誘導されなかった(図3f)。
【0134】
(実施例3:機能性のAIMP2と不活性の欠失突然変異体のヘテロダイマー形成)
DX2生成とAIMP2抑制との一般な関連性を理解するために、DX2でDU145細胞を形質転換した後、AIMP2水準の変化を調査した。ウエスタンブロット(図4a、第1行)およびFACS分析(図9b)の結果、DX2で形質転換された細胞においてAIMP2は減少した。また、AIMP2のターゲットであるc−mycの発現がDX2の導入によって増加した(図4a、第3行)。DX2はTGF−βによる成長停止を軽減させた(図4b、図9c)。
【0135】
DX2が機能的AIMP2(AIMP2−F)にどのように影響を及ぼすかを調べた。AIMP2はホモダイマーを形成することができるので(Quevillon et al, J. Mol. Biol. 285, 183-195, 1999; Kim et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 7912-7916, 2002)、AIMP2DX2がAIMP2−Fと相互作用するかをイーストツーハイブリッドアッセイで検査した。AIMP2DX2はAIMP2−Fと相互作用したが、AIMP2−DX同士は相互作用しなかった(図4c)。試験管内プルダウンアッセイにおいて、放射線的に合成されたAIMP2−Fおよび−DX2は、GST−AIMP2−Fと共同精製された(図4d)。これはAIMP2−Fと−DX2間の直接的相互作用があることを証明するものである。DX2がTGF−βシグナル伝達に活性を示すかを調べるために、イーストツーハイブリッドアッセイでSmad2との相互作用を検査した。AIMP2はAIMP2のターゲットとして知られているFBPだけでなく、Smad2とも相互作用するが(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336, 2003)、DX2はこのようなタンパク質と全く結合していない。これはDX2の機能的不活性を意味する(図4e)。
【0136】
ヘテロダイマー形成がどのようにAIMP2を抑制するかを調べるために、AIMP2水準がプロテアソーム依存的分解過程によって調節されるかをチェックした。DX2生産H322細胞をプロテアソーム抑制剤ALLN(Zhou et al, J. Biol. Chem. 271, 24769-24775, 1996)で処理し、AIMP2水準がプロテアソーム遮断によって増加するかを観察した。ウエスタンブロット(図4f)、免疫蛍光染色(図4g)およびフローサトメトリー(図9d)から分かるように、AIMP2はALLN処理によって著しく増加した。これは、細胞内のAIMP2水準がプロテアソーム媒介分解により調節されることを示す。また、AIMP2DX2型もプロテアソーム抑制によって検出された(図4f)。AIMP2DX2の低い強度は、RT−PCR分析によって証明したように、正常AIMP2と比較して低い発現(図3c)および/または抗−AIMP2抗体による不十分な認知のためである。AIMP2分解はプロテアソームによって媒介されるため、ユビキチン化がDX2によって促進されるかを観察した。ALLNで処理された、対照区およびDX2で形質転換された細胞からAIMP2を免疫沈澱させ、抗−ユビキチン抗体でブロットしたとき、対照区細胞と比較して多い量のユビキチン化AIMP2が、DX2で形質転換された細胞から観察された(図4h)。以上より、DX2はAIMP2に結合して不活性のヘテロダイマーを形成するドミナントネガティブ突然変異(dominant negative mutant)として作用するものと思われる。
【0137】
(実施例4:AIMP2DX2によるTGF−βシグナル伝達不活性化および細胞成長促進)
DX2をMEFsにトランスフェクションした後、DX2が細胞成長に及ぼす効果を顕微鏡分析およびコロニー形成によって観察した。細胞成長は、DX2導入によって著しく増加した(図5a)。また、DX2に特異的に結合できる3種のsiRNA(si−DX2)を(図5b)発現するそれぞれのベクターを製造し、DX2を発現するH322およびH460細胞を形質転換した後、正常的AIMP2およびsmad2のリン酸化に及ぼす影響を観察した(図5c)。4番または5番siRNAを発現するベクターをH322細胞にトランスフェクションしたとき、TGF−βによる細胞死滅が増加し(左)、細胞周期の停止(右)が起こることをフローサイトメトリーで観察することができた(図5d)。DX2を発現するH322細胞に、DX2の転写を特異的に抑制する4番siRNA(si−DX2)を発現するベクターを組み込み、siRNAによってAIMP2の正常的水準およびTGF−ベータシグナル伝達が復旧されるかをチェックした。si−DX2はDX2転写物を除去させ(図5eの上)、AIMP2の正常水準およびTGF−βにより誘導されたSmad2のリン酸化(図5eの下および図5f)、Smad2の核移動(図5f)、TGF−β依存的レポーターの発現(図5g)、および成長停止(図5h)を復旧させた。前記全ての結果は、TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節に及ぶDX2の崩壊的な効果を証明することである。
【0138】
(実施例5:AIMP2欠失変異体とヒト肺癌との関連性)
AIMP2の減少は様々な癌細胞株からよく発見され(図3a、bおよびd)、AIMP2の損失は肺細胞の過増殖をもたらすため(Kim et al., Nat. Genet. 34, 330-336, 2003)、本発明者はAIMP2の異常が肺癌形成と関連しているかを調べた。このような可能性を検討するために、化学的発癌物質、BP(benzo-(α)-pyrene)(Wang et al, Cancer Res. 63, 4389-4395, 2003)をAIMP2+/+およびAIMP2+/−マウス腹腔内に投与して肺腫瘍を誘導した後、肺における腫瘍形成を観察した。BP投与後6週から、AIMP2+/−マウスでは50〜70%の頻度で、正常マウスでは約30%の頻度で肺腫瘍が観察された(図6a)。これは、異型接合マウス(heterozygous mice)が、BPにより誘導された腫瘍形成にさらに敏感であることを意味する。BP注射マウスの肺におけるDX2生成有無を調査した。3匹のAIMP2+/+マウスのうち1匹のみが腫瘍を発生させるのに比べ、AIMP2+/−マウスから単離した4つの肺のうち3つから腫瘍が生成された。全てのこのような腫瘍はDX−2を生成させた(図10)。これは、肺癌形成とDX2との関連性があることを意味する。
【0139】
ヒト肺の非腫瘍の炎症性組織(the inflammatory but non-tumor)と腫瘍組織におけるAIMP2水準を比較した。DX2は腫瘍組織のみで生成された(図6b)。相異なる個体によってAIMP2水準とDX2形成が異なる可能性を排除するために、同じ患者から単離した正常および腫瘍組織においてRT−PCRを行った。AIMP2の癌特異的減少とDX2の生成とは連関していた(図6c)。癌部位における正常的AIMP2水準を示す一つの事例からDX2が観察されなかった(図6c、患者22872)。
【0140】
(実施例6:癌発生とAIMP2、AIMP2DX2との連関性)
癌発生とAIMP2、AIMP2DX2との連関性を多様な組織および癌細胞株におけるAIMP2DX2発現で検査した。
2つの肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)試料から、正常と癌組織におけるAIMP2DX2の生成有無をRT−PCRで観察した。癌組織からAIMP2DX2の形成が観察された(図11a)。その他の多様な癌細胞株におけるAIMP2DX2の生成を調べた。細胞株を6ウェルプレートに1×105ずつシードし、24時間後に細胞を収穫した。収穫した細胞を、1%β−メルカプトエタノールを含むGSS溶液を用いて溶解させ、酸性フェノール(pH4.3)とクロロホルムを含む4%イソアミルアルコールを入れて混合した。これを遠心分離し、上澄み液をイソプロパノールで沈殿させ、再び遠心分離してペレットを得た。ペレットをエタノールで洗浄し、DWに溶かしてRNAを得た。RNAをM−MLV逆転写酵素(invitrogen)を用いて42℃で1時間逆転写させ、配列番号16のプライマーと配列番号6のプライマーを用いて、95℃で1分、60℃で1分、72℃で1分を1サイクルとした条件で38サイクルのPCRを行った。その結果、肺癌細胞株(H226、H460、H322およびH290)、胚児腎臓癌細胞株(293)、骨肉腫細胞株(SaOS2)、皮膚癌細胞株(HaCAT)、乳癌細胞株(MCF7)からAIMP2DX2が発現した(図11b)。
【0141】
(実施例7:AIMP2ノックアウトマウスを用いた発癌研究)
AIMP2遺伝子をノックアウトさせたマウスにおける発癌程度を、AIMP2発現が正常な野生型マウスと比較してみた。その結果、AIMP2ノックアウトマウスにおいて、皮膚腫瘍が発生するマウス数とマウスの腫瘍の数が確然に増加することが分かった。具体的に、マウスにDMBAにより癌を誘発し、TPAで癌の誘発を促進させる場合、AIMP2ノックアウト雌マウスは雌対照区マウスに比べて腫瘍発生率が約1.3倍増加し、AIMP2ノックアウト雄マウスは雄対照区マウスに比べて腫瘍発生率が約2倍増加した(図12b)。また、腫瘍発生マウスに発生した腫瘍の数も、AIMP2ノックアウト雌マウスは雌対照区マウスに比べて約4倍増加し、AIMP2ノックアウト雄マウスは雄対照区マウスに比べて約2倍増加した(図12cおよび図12d)。
【0142】
〔産業上の利用可能性〕
本発明の癌に特異的に発現するAIMP2DX2(タンパク質、mRNA)を癌診断マーカーとして用いて癌を正確且つ容易に診断することができ、AIMP2DX2タンパク質に対する抗体、siRNA、アンチセンス核酸などのAIMP2DX2の抑制剤を用いて癌を効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1a】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1b】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1c】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1d】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1e】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図2a】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2b】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2c】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2d】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2e】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2f】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図3a】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3b】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3c】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3d】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3e】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3f】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図4a】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4b】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4c】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4d】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4e】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4f】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4g】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4h】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図5a】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5b】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5c】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5d】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5e】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5f】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5g】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5h】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図6a】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図6b】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図6c】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図7】AIMP2との相互作用に関連したSmad2ドメインを測定した結果を示す図である。
【図8a】AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す図である。
【図8b】AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す図である。
【図9a】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9b】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9c】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9d】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図10】肺癌組織におけるAIMP2DX2の生成およびAIMP2の抑制を示す図である。
【図11a】様々な組織と細胞とにおいてAIMP2DX2が発現することを示す図である。
【図11b】様々な組織と細胞とにおいてAIMP2DX2が発現することを示す図である。
【図12a】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12b】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12c】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12d】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図13】AIMP2DX2発現ベクターを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、AIMP2のエクソン2が欠損した変異体AIMP2DX2およびその利用に係り、具体的には、AIMP2DX2、その診断マーカーとしての用途およびその抑制剤を使用した抗癌用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
癌による死亡が世界的に増加しつつある。去る数年間、癌に対する集中的な研究が行われたにも拘わらず、癌は依然として全世界的な主要死亡原因である。
【0003】
外科切除術、放射線療法、化学療法またはその他の公知の治療方法による適切な治療作用を容易にするためには、癌の初期診断のための迅速且つ簡単な方法が要求される。
【0004】
癌特異的マーカーの開発は、癌の診断だけでなく、癌特異的な治療のためにも要求されている。細胞傷害性療法(cytotoxic therapies)は、最初に抗癌治療剤として使用されて以来、50余年間癌の治療に広範囲に使われてきたが、癌細胞の他に、分裂速度が比較的速い他の臓器の細胞に非特異的に作用して強い毒性を示し、深刻な副作用を引き起こすという問題がある。このような既存抗癌剤の副作用および耐性を克服するために、正常細胞の癌化過程に現われる癌特異的マーカー(cancer specific marker)を用いて、腫瘍細胞特異的に作用する治療剤を開発しようとする研究が行われた。抗癌剤による毒性を最小化するための方案として台頭している癌ターゲッティング療法(cancer targeted therapy)の核心は、癌細胞特異的な遺伝子を探し出すことにある。
【0005】
このような背景の下、本発明者は、AIMP2のエクソン2欠失変異体であるAIMP2DX2をマーカーとして用いる場合、非常に高い信頼度で癌発生の有無を確認することができ、且つ、AIMP2DX2の発現が癌誘発の直接的原因となるので、AIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体、AIMP2DX2 mRNAに対する特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いる場合、癌細胞特異的に癌を治療することができるということを見出し、本発明を完成した。
【0006】
〔発明の開示〕
本発明の目的は、AIMP2タンパク質のエクソン2の領域が欠失したAIMP2DX2タンパク質を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクターを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記形質転換体を培養してAIMP2DX2タンパク質を製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質に対する抗体を含む癌診断キットを提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、(a)分析する試料を提供する段階と、(b)前記試料から、AIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階とを含んで、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を含む癌治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子を投与して癌を治療する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を含む癌治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を持つアンチセンス核酸を投与して癌を治療する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、AIMP2タンパク質のmRNAとAIMP2DX2タンパク質のmRNAを区分するプライマーまたはプローブを用いて癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2のmRNAを検出する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、(a)試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階と、(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階とを含んで、AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的は、(a)試験物質を、AIMP2DX2タンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含んで、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供することにある。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1a〜図1eは、TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す。AIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFsにおいてTGF−βが細胞増殖(図1a)、コロニー形成(図1b)、細胞周期の進行(図1c)、並びにSmad2およびSmad3の核移動(図1d)に及ぼす効果を測定した。図1aでは、0、2および4ng/mlのTGF−β濃度で6時間細胞を培養した。TGF−β無処理細胞におけるチミジン挿入(thymidine incorporation)を1としたとき、数値は4つの独立的実験値の平均を示す。図1bでは、AIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFs(14.5d)をTGF−β(2ng/ml)の存在下に4時間培養し、ホルムアルデヒドで固定した後、Giemsa染色によりコロニーを視覚化した。図1cでは、MEFsをTGF−βで24時間処理した後、G0/G1相細胞の占有程度をフローサイトメトリー(flow cytometry)で検査した。図1dでは、MEFSをTGF−β(2ng/ml)で1時間処理した。Smad2およびSmad3をその特異的抗体で反応させた後、FITCコンジュゲート抗体(緑色)で視覚化した。核はPI(赤色)で染色された。図1eでは、AIMP2とSmad2およびSmad3との相互作用を、Smad2およびSmad3に対する抗体を用いた共同免疫沈殿(coimmunoprecipitation)によって検査した。
【0024】
図2a〜図2fは、TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す。図2aでは、A549細胞をTGF−β(2ng/ml)で処理した後、所定の時間に収穫して抽出したタンパク質を抗−Smad2またはSmad3抗体で免疫沈殿させ、共同沈殿したAIMP2を抗−AIMP2抗体で測定した。WCLは全細胞溶解物(lysate)のタンパク質ウエスタンブロットを示す。図2bでは、TGF−βのターゲット遺伝子、p15、p21およびPAI−1の発現を、対照区およびAIMP2で形質転換されたDU145でRT−PCRによって検査した。図2cでは、AIMP2−/−MEFsにおいてSamd2のリン酸化に及ぼすAIMP2の効果を示す。図2dでは、Samd2の個別ドメイン(Mad−相同ドメイン、MH1、MH2およびリンカー)をLexA融合タンパク質で発現させ、B42融合AIMP2との相互作用をX−gal含有酵母培地におけるブルーコロニー形成によって観察した。図2eでは、Smad2とTGF−β受容体のTGF−β依存的相互作用を共同免疫沈殿で測定した。MEFsを37℃でTGF−βで処理し、免疫沈殿の前に8℃で培養した。TGF−β受容体とSmad2との結合を抗−TβRI抗体で免疫ブロットして観察した。図2fでは、TGF−β処理後のAIMP2+/+およびAIMP2−/−MEFsにおける総Smad2、リン酸化Smad2(p−Smad2)およびAIMP2水準の時間別推移を示す。
【0025】
図3a〜図3fは、AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果である。様々な癌細胞株におけるAIMP2の水準をウエスタンブロット(図3a)、フローサイトメトリー(図3b)で比較した。A549、NCI−H460、−H322およびH290は肺癌細胞株であり、DU145およびHCT116はそれぞれ前立腺と大腸癌の細胞株である。図3bでは、「Negative」は2次抗体のみで処理したDU145を示す。各細胞株の2000細胞を分析した。図3cでは、AIMP2の転写水準を相異なるプライマー対を用いてRT−PCRによって比較した。エクソン3〜4および1〜3を貫通する転写物は、それぞれプライマー6/7および1/5(図8b)を用いて生成された。GAPDHをローディング対照区として用いた。エクソン1〜3の転写物に相当するプライマー対を用いる場合、小さいAIMP2転写物(smaller AIMP2 transcript)が生成された。このような小さい転写物はエクソン2が足りない、AIMP2の相異なるスプライシング型(AIMP2DX2)である。このような転写物は、プライマーDX2−F、およびエクソン1と3間の接合配列に特異的なプライマーDX2−8(図8b)を用いてRT−PCRを行うとき、低い−AIMP2水準を示す細胞株のみで生成された。図3dでは、AIMP2のTGF−β依存的誘導および核移動は、TGF−βで2時間培養した後、免疫蛍光染色して調査した。図3eでは、表示された細胞の増殖に及ぶTGF−βの効果を[3H]チミジン挿入(n=4)によって比較した。図3fでは、目的遺伝子、p21およびPAI−1のTGF−β依存的誘導を、TGF−βにより2時間処理した後でRT−PCRによって比較した。
【0026】
図4a〜図4hは、AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果である。図4aでは、TGF−βにより2時間処理または無処理されたDU145細胞にDX2をトランスフェクションした後、AIMP2水準をウエスタンブロットで測定した。c−myc、DX2およびGAPDH(対照区)の発現をRT−PCRによって検査した。図4bでは、DU145をDX2および空ベクターで形質転換した後、TGF−β依存的細胞成長抑制に及ぶ効果をチミジン挿入によって検査した(n=4)。図4cでは、AIMP2−Fおよび−DX2間の相互作用をイーストツーハイブリッドアッセイ法(Rho et al, Pro Natl Acad Sci USA 96, 4488-93(1999))で測定した。図4dでは、AIMP2−Fおよび−DX2を[35S]メチオニン存在の下にインビトロ翻訳で合成した後、GST−AIMP2−Fまたは−CDK2(対照区)と混合し、その後グルタチオン−セファロースで沈殿させた。沈殿したタンパク質をSDS−PAGEによって単離し、オートラジオグラフィー法によって検出した。図4eでは、AIMP2−Fまたは−DX2とFUSE−結合タンパク質(FBP:FUSE-binding protein)(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336, 2003))およびSmad2との相互作用をイーストツーハイブリッドによって測定した。図4fでは、プロテアソーム抑制剤、ALLN(50μM、4時間)がAIMP2−Fおよび−DX2の水準に及ぼす効果をDX2生成H322細胞において抗−AIMP2抗体を用いてウエスタンブロットで測定した。DX2形態はその試験管内合成されたカウンタパートとのゲル上の共同移動(co-migration)で確認した(資料なし)。図4gでは、ALLN(20μM、2時間)で処理した後、AIMP2の増加を、H322細胞において抗−AIMP2抗体を用いて免疫蛍光染色により調べた。図4hでは、Myc−tag付きDX2でALLN処理DU145細胞を形質転換し、抗−AIMP2抗体を用いてAIMP2を免疫沈殿させた後、ユビキチン化されたAIMP2分子を抗−ユビキチン抗体(Ubi)で免疫ブロットして観察した。
【0027】
図5a〜図5hは、TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す。図5aでは、DX2(または空ベクター)をMEFsにトランスフェクションした後、細胞成長に対する効果を観察した。細胞およびコロニ―をそれぞれ光學顯微鏡(上)およびGiemsa染色(下)で観察した。図5bでは、DX2特異的な3種のsiRNAをコーディングするヌクレオチド配列を示す。図5cでは、3種のsiRNAを発現するベクターをそれぞれ製造し、このベクターで癌細胞株としてのH322およびH460細胞株を形質転換した後、正常的AIMP2およびsmad2のリン酸化に及ぶ影響を調査した。図5dでは、4番および5番のsiRNAでH322細胞を形質転換したときのTGF−βによる細胞死滅の程度(左)と細胞周期の停止程度(右)を示した。図5eでは、AIMP2DX2をターゲッティングする4番のsiRNA(si−DX2)を発現するベクターをH322に組み込み、DX2転写抑制に対する効果をRT−PCRによって測定した(上)。si−DX2は、エクソン3〜4に相当する転写物のRT−PCRから分かるように、全長AIMP2(full-length AIMP2)転写には影響を及ぼさなかった。si−DX2がSmad2のリン酸化およびAIMP2の発現に及ぼす効果をウエスタンブロットで測定した(下)。TGF−βシグナル伝達の復旧に及ぶsi−DX2の効果を、H322を用いてSmad2の免疫蛍光(図5f)、3TPプロモータ下のTGF−β依存的レポーターアッセイ(図5g)、成長停止(図5h)で測定した。図5fでは、p−Smad2および核をTGF−β処理30分の後にFITCコンジュゲート二次抗体(緑色)およびPI(赤色)で30分間染色した。si−DX2の形質転換によってp−Smad2が増加し、核に位置する。
【0028】
図6a〜図6fは、肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果である。図6aでは、AIMP2+/+およびAIMP2+/−マウスにベンゾ−(α)−ピレン(benzo-(α)-pyrene)を腹腔内投与した後、時間間隔で肺腫瘍形成を観察した。「N」は犠牲されたマウスの数を示す。図6bでは、肺癌患者の正常および腫瘍部位から単離されたRNAをDX−2特異的プライマーでRT−PCRした。図3cでは、患者の(コード番号で表示)正常および腫瘍組織を抗−AIMP2抗体を用いてRT−PCRした。
【0029】
図7は、AIMP2との相互作用に関連したSmad2ドメインを測定した結果である。AIMP2またはCDK2をコードするcDNAを、pGEX4T−1のEcoRIおよびXhoI部位と結合させ、GST融合タンパク質としてE.coli BL21(DE3)で発現させた後、製造者の説明に従って融合タンパク質を単離した。相異なるSmad2欠失断片は、TNTカップリングされた転写キット(Promega)を用いて[35S]メチオニンの存在下に試験管内転写(in vitro translation)で合成した。グルタチオンセファロースビードに結合したGST融合タンパク質は、0.5mM EDTA、0.5mMフェニルメチルスルホニルフロライド(PMSF)、および1%トリトンX−100を含むPBS緩衝液(pH7.4)の結合緩衝液で[35S]メチオニンラベル付きSmad断片と培養した。結合混合物を4℃で回転させながら一晩培養した後、0.5%トリトンX−100を含む結合緩衝液で4回洗浄した。SDSサンプル緩衝液を添加した後、結合したタンパク質を加熱して溶出させ、SDSゲル電気泳動によって単離した。Smad2断片の存在はオートラジオグラフィー法(autoradiography)によって確認した。
【0030】
図8aおよび図8bは、AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す。図8aでは、AIMP2遺伝子は表示された大きさのポリペプチドをコーディングする4つのエクソン(青色で表示)から構成されている。図8bは、AIMP2の相異なる領域を貫通するcDNAの生成に使用されるプライマーの位置および配列を示す図式図である。
【0031】
図9a〜図9dは、癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果である。図9aでは、DX2−ポジティブおよび−ネガティブ細胞間のAIMP2水準を比較するために、一つのディッシュにDU145およびH460細胞を培養し、抗−AIMP2抗体(緑色)で免疫蛍光染色を行った。DU145細胞は突然変異のため高い水準でp53を発現するが、H460細胞は野生型のp53を持つため低い水準を保つ。よって、2つの細胞株をp53免疫蛍光染色(赤色)で区分した。細胞をTGF−βで2時間処理し、メタノールで固定した。図9bでは、AIMP2の発現にAIMP2DX2が及ぼす効果を検討するために、AIMP2水準をフローサイトメトリーで検査した。2μg/mlの空ベクターまたはDX2でDU145細胞を形質転換し、24時間培養した。細胞を70%のエタノールで固定した後、抗−AIMP2抗体で反応させ、次いでFITCコンジュゲート2次抗体で反応させた。図9cでは、TGF−β依存的細胞の周期停止に及ぶAIMP2DX2の効果をフローサイトメトリーで比較した。空ベクターで形質転換されたDU145細胞におけるG0/G1相細胞の割合は増加するに比べて、DX2で形質転換された細胞ではそうではなかった。黒色線と青色線は、それぞれTGF−βで無処理および処理された細胞を表示する。図9dでは、10μMのALLNで2時間無処理(対照区)または処理されたH460細胞におけるAIMP2水準を比較した。「ネガティブ」は、FITCコンジュゲート二次抗体のみで培養された細胞を示す。
【0032】
図10aおよび図10bは、肺癌組織におけるAIMP2DX2の生成およびAIMP2の抑制を示す。ベンゾピレンで注射されたAIMP2+/+およびAIMP2+/−マウスから肺を単離した後、AIMP2DX2の生成をRT−PCRで測定するために、各肺からRNAを単離した。DX2を生成する全ての肺は、腫瘍が生成された(+で表示)。
【0033】
図11aおよび図11bは、様々な組織と細胞におけるAIMP2DX2が発現することを示す。図11aでは、ヒト組織における肝癌とAIMP2DX2の形成をRT−PCRで検査した。図11bでは、多様な癌細胞株におけるAIMP2DX2の発現を示す結果である。
【0034】
図12は、AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す。図12aでは、AIMP2突然変異マウスの特徴をサザンブロットとPCR分析で確認した。マウスAIMP2遺伝子のイントロンI領域からプライマーf3とr2を用いて1223bp PCR断片を生成し、これをマウスゲノムDNAのSacI断片のハイブリッド化のためのプローブとして使用した。f6、r6およびpKOf2プライマーの混合物をPCR分析に使用した。野性型および突然変異された形質は、それぞれ約1.2および1.9kb PCR産物を生成した。AIMP2の発現に及ぶ突然変異効果を、AIMP2 cDNAプローブを用いたノーザンブロット、および単離されたヒトAIMP2に対して生成された多クローンウサギ抗体を用いたウエスタンブロットで測定した。ノーザンブロットの各レーンから同量のアクチンが検出された(資料なし)。+/+、+/−および−/−は、野性型、異型接合および同型接合の突然変異マウスを示す。また、gene trapの挿入位置を突然変異された形質のゲノムDNAのシーケンシングで測定した。図12bは、AIMP2+/−と野性型マウスの癌発生比率を示す。図12cは、AIMP2+/−と野性型マウスの形成された腫瘍の平均数を示す。図12dは、AIMP2+/−と野性型マウスの肉腫形成を示す。
【0035】
図13は、AIMP2DX2発現ベクターを示す。
【0036】
〔発明を実施するための最良の様態〕
AIMP2(ARS-interacting multi-functional protein 2)は、アミノアシル−tRNA合成酵素複合体(Aminoacyl-tRNA synthetase:ARSs)の形成に関連したタンパク質の一つであって、p38/JTV−1またはp38と呼ばれる。
【0037】
本発明者は、AIMP2タンパク質の新規機能によって、先行研究においてAIMP2の遺伝的崩壊がc−mycの過発現を誘導し、これにより肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)が過増殖しながら新生マウスの致死(neonatal lethality)が誘導されることを明らかにし、且つ、AIMP2がTGF−βによって誘導され、核に移動してc−mycの発現を抑制することを分子および細胞学的分析によって解明したことがある(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336(2003))。
【0038】
前述した研究に続き、本発明者は、AIMP2が、新規の癌抑制子(tumor suppressor)であって、Smad2/3との直接相互作用によってTGF−βのシグナル伝達を強化させる機能をすることを解明した。また、癌細胞株および組織において、AIMP2エクソン2欠損型の変異体であるAIMP2DX2が特異的に発現することを確認した:エクソン2が欠損したAIMP2変異体であるAIMP2DX2の存在を、RT−PCRを行い、AIMP2−特異的プライマーの組み合わせによってベンドが異なることから確認した。エクソン3と4を含むAIMP2 cDNAに由来したプライマー対をRT−PCRに使用したときは、ウエスタンブロットにおいて低いAIMP2水準を示す細胞からAIMP2転写減少が観察されなかったが、エクソン1〜3を含む転写物に由来したプライマーをもってRT−PCRを行ったとき、予想サイズの転写物と共に小さい転写物も現われた。小さいバンドの形で現われる転写物をシーケンシングした結果、AIMP2のエクソン2に相当する69アミノ酸が全て欠損したAIMP2の変異体であった。エクソン1とエクソン3との接合配列に特異的なプライマーを用いたRT−PCRを行ったとき、低いAIMP2水準を示しながら標準のAIMP2転写物の他にも、小さい転写物を生成する細胞株のみからPCR産物が生成されることを確認し、もう一度AIMP2変異体の存在を証明した。
【0039】
また、本発明者は、AIMP2DX2で形質転換された細胞では、TGF−βと関係なくAIMP2水準が極力減少することから、AIMP2DX2の生成がAIMP2活性の喪失をもたらすことを確認した。実際、細胞内にAIMP2DX2をトランスフェクションさせた結果、c−mycの発現を増加させ、AIMP2の核移動を防ぎ、細胞成長を停止させるなどのTGF−βシグナルの異常機能が招かれた。AIMP2DX2はAIMP2と不活性型のヘテロダイマーを形成し、これは癌の形成と進行に密接に連関されていることを立証した。このようなAIMP2DX2の生成は肺癌、肝癌、皮膚癌、乳癌、腎臓癌、骨肉腫などの様々な癌から観測された。
【0040】
一つの様態として、本発明は、エクソン2が欠失したAIMP2変異体であるAIMP2DX2タンパク質を提供する。
【0041】
本発明のAIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質配列のうちエクソン2の領域が欠失した変異体であって、AIMP2タンパク質の配列(312aa version:AAC50391.1またはGI:1215669;320aa version:AAH136301.1、GI:15489023、BC013630.1)は文献(312aa version: Nicolaides, N.C., Kinzler,K.W. and Vogelstein,B. Analysis of the 5’ region of PMS2 reveals heterogeneous transcripts and a novel overlapping gene, Genomics 29 (2), 329-334(1995); 320 aa version: Generation and initial analysis of more than 15,000 full-length human and mouse cDNA sequences, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99(26), 16899-16903(2002))に記述されており、この中でも、エクソン2に相当する領域が欠失したタンパク質である。本発明者によって出願された韓国特許出願10−2003−0018424はAIMP2タンパク質の癌治療効果について記述している。この特許文献に記述されたAIMP2タンパク質に関する説明が本願に引用される。
【0042】
前述したAIMP2DX2タンパク質は、全配列のAIMP2のエクソン2領域が欠失したタンパク質を含み、AIMP2等価物(アミノ酸配列の置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせによる変形体であって、AIMP2と実質的に同等な活性を持つ機能的等価物、または物理化学的性質を増加または減少させる変形を持つが、AIMP2と実質的に同等な活性を持つ機能的誘導体)のエクソン2領域が欠失したタンパク質を含む。
【0043】
本発明において、AIMP2タンパク質配列のうち「エクソン2の領域が欠失」したというのは、AIMP2タンパク質においてエクソン2領域のアミノ酸配列(アミノ酸46番〜114番)が部分的または全体的に欠失して生じた変異体がAIMP2タンパク質とヘテロダイマーを形成してAIMP2の正常的な機能を妨害することを意味する。したがって、AIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質のエクソン2のアミノ酸配列が全て欠失し、或いはこの領域のアミノ酸配列を含んでエクソン1、エクソン3、エクソン4またはこれらの領域の全てにおいてこれらの領域の一部も欠失し、或いはエクソン2のアミノ酸配列の一部のみが欠失したタンパク質を含む。好ましくは、本発明のAIMP2DX2タンパク質は、AIMP2タンパク質のエクソン2のアミノ酸配列が全て欠失したタンパク質である。より好ましくは、本発明のAIMP2DX2タンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を持つタンパク質である。
【0044】
また、本発明のAIMP2DX2タンパク質は、この天然型アミノ酸配列を持つタンパク質だけでなく、そのアミノ酸配列変異体も本発明の範囲に含まれる。AIMP2DX2タンパク質の変異体とは、AIMP2DX2の天然アミノ酸配列と一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を持つタンパク質を意味する。分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知になっている(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に発生する交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0045】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)できる。
【0046】
前記AIMP2DX2タンパク質またはその変異体は、天然から抽出し、または合成(Merrifleld, J. Amer. Chem. Soc.. 85:2149-2156(1963))またはDNA配列を基本とする組み合わせ方法によって製造できる(Sambrook et al, Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA, 2d Ed., (1989))。遺伝子組み換え技術を用いる場合、AIMP2DX2をコードする核酸を適切な発現ベクターに挿入し、組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体においてAIMP2DX2が発現するように宿主細胞を培養した後、形質転換体からAIMP2DX2を回収する過程によって得られる。
【0047】
前述したように、本発明者は、AIMP2DX2タンパク質が肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫などの癌組織で特異的に発現することを見出し、このようなタンパク質の検出が癌の診断に利用でき、AIMP2DX2は癌の診断マーカーとして使用できる。
【0048】
他の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を提供する。
【0049】
上述したようなAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列は、これと同等な活性を持つタンパク質をコーディングする限りは、一つ以上の核酸塩基が置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせによって変異できる。前記配列番号2のAIMP2DX2タンパク質は、好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列を持つ核酸分子によってコーディングされる。このような核酸分子の配列は、単鎖または二重鎖であり、DNA分子またはRNA(mRNA)分子であり得る。
【0050】
本発明のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列は、天然から単離されるか、人為的に合成または遺伝的組み換え方法によって製造できる。本発明のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸配列を、これを発現することが可能なベクターに作動的に連結させることにより、AIMP2DX2タンパク質を提供することができる。
【0051】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクターを提供する。
【0052】
本発明において、用語「組み換えベクター」とは、適当な宿主細胞において目的タンパク質または目的RNAを発現することが可能なベクターであって、遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子作製物をいう。
【0053】
本発明において、用語「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように、核酸発現調節配列と、目的のタンパク質またはRNAをコーディングする核酸配列とが機能的に連結(functional linkage)されていることをいう。例えば、プロモータとタンパク質またはRNAをコーディングする核酸配列が作動可能に連結され、コーディングする核酸配列の発現に影響を及ぼすことができる。組み換えベクターとの作動的連結は当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて行い、部位特異的DNAの切断および連結は当該技術分野で一般に知られている酵素などを用いて行う。
【0054】
本発明のベクターは、プラスミドベクター、コスミッドベクター、バクテリオファージベクターおよびウィルスベクターなどを含むが、これらに限定されるものではない。適切な発現ベクターは、プロモータ、オペレータ、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーなどの発現調節エレメントの他にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造できる。ベクターのプロモータは構成的または誘導性であり得る。また、発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択マーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合、複製起源を含む。
【0055】
シグナル配列には、宿主がエシェリキア属菌の場合にはPhoAシグナル配列やOmpAシグナル配列などが、宿主がバシラス属菌の場合にはα−アミラーゼシグナル配列、サブチリシンシグナル配列などが、宿主が酵母の場合にはMFαシグナル配列やSUC2シグナル配列などが、宿主が動物細胞の場合にはインシュリンシグナル配列やα−インタフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
別の様態として、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0057】
形質転換は、核酸を有機体、細胞、組織または器官に導入するいずれの方法も含む。当該分野に公知になっているように、宿主細胞に応じて適切な標準技術を選択して行うことができる。このような方法にはエレクトロポレーション法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、炭化ケイ素繊維を用いた攪拌、アグロバクテリア媒介形質転換、PEG、硫酸デキストラン、リポフェクタミンなどを含まれるが、これに限定されるものではない。
【0058】
宿主細胞によってタンパク質の発現量と修飾などが異なるので、目的に最も適した宿主細胞を選択して使用すればよい。宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)などの原核宿主細胞があるが、これらに限定されるものではない。また、真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)、酵母(例えば、ピキア酵母(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、アカバンカビ(Neurospora crassa))などの下等真核細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物などを含む高等真核生物由来の細胞を宿主細胞として使用することができる。
【0059】
別の様態として、本発明は、前記形質転換体を培養してAIMP2DX2タンパク質を製造する方法を提供する。
【0060】
形質転換体の培養は、目的のタンパク質であるAIMP2DX2の発現を可能にする適切な条件の下で行い、このような条件は、当業者に公知になっている方法によって行うことができる。
【0061】
形質転換体で発現させたタンパク質は、通常の方式で精製でき、例えば塩析(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿)、溶媒沈殿(アセトン、エタノールなどを用いたタンパク質分画沈殿)、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、および限外濾過などの技法を単独でまたは組み合わせで適用させ、本発明のAIMP2DX2タンパク質を精製することができる(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1982): Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); and Deutscher, M., Guide to Protein Purification Methods, Enzymology, vol. 182. Academic Press. Inc., San Diego, CA(1990))。
【0062】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2に特異的な抗体を提供する。
【0063】
本発明において、用語「抗体」とは、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体はAIMP2と区分してAIMP2DX2を特異的に認知する抗体を意味し、多クローン抗体および単クローン抗体を含む。
【0064】
前述したようにAIMP2DX2タンパク質が究明されたので、これを用いて抗体を生成することは、当業界の公知技術を用いて容易に行うことができる。
【0065】
多クローン抗体は、前述したAIMP2DX2タンパク質抗原を動物に注射し、動物から採血して、抗体を含む血清を得る当業界の公知方法によって生産することができる。このような多クローン抗体は、山羊、ウサギ、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの任意の動物種宿主から製造可能である。
【0066】
単クローン抗体は、当業界に広く知られている融合方法(fusion method)(Kohler and Milstein, European Journal of Immunology, 6:511-519)、組み換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)またはファージ抗体ライブラリ(Clackson et al, Nature, 352, 624-628, 1991; and Marks et al, J. Mol. Biol., 222, 58, 1-597, 1991)技術を用いて製造できる。
【0067】
本発明のAIMP2DX2タンパク質の検出に用いられる抗体は、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を持つ完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFvなどがある。
【0068】
本発明のAIMP2DX2に特異的な抗体は、癌の診断に使用されるだけでなく、患者に投与することによりAIMP2DX2の活性を抑制するので癌の治療にも使用できる。治療用抗体として用いられる場合、抗体は既存の治療剤と直接またはリンカーなどを介して間接にカップリング(例えば、共有結合)させることができる。
【0069】
抗体と結合できる治療剤には、放射性核種(radionuclide)、薬剤、リンフォカイン、毒素、異型機能性抗体などがあるが、これに限定されるものではない。放射性核種には、131I、90Y、105Rh、47Sc、67Cu、212Bi、211At、67Ga、125I、186Re、188Re、177Lu、153Sm、123I、111Inなどがある。薬剤にはメトトレキサート(methotrexate)、アドリアマイシン(adriamycin)などがあり、リンフォカインにはインターフェロンなどがある。毒素にはリシン、アブリン、ジフテリアなどがある。他の抗体と結合してその複合体が癌細胞と効能細胞(例えば、T細胞などのK細胞(killer cell))の両方ともに結合する抗体である異型機能性抗体(heterofunctional antibodies)がある。
【0070】
抗体は、それ自体または抗体を含む組成物の形で投与できる。治療用組成物の場合、投与方式に応じて、許容可能な担体を含んで適切な製剤に製造される。投与方式に適した製剤は公知になっており、典型的に、膜を通過した移動を容易にする界面活性剤を含む。このような界面活性剤は、ステロイドから誘導されたもの、或いはN−[1−(2,3−ジオレオイル)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)などの陽イオン性脂質、またはコレステロールヘミサクシネート、ホスファチジルグリセロールなどの各種化合物などがある。
【0071】
本発明の抗体を含む組成物は、癌細胞またはそれらの転移を治療するために薬学的に効果的な量で投与できる。薬学的組成物は、単一または多重投与できる。抗体を含む組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、および局部的免疫抑制治療のために必要であれば病変内投与を含む適切な方法によって投与される。非経口注入には筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。好ましい投与方式および製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。製剤のpHは、抗体安定性(化学的および物理的安定性)の均衡を合わせて、投与される患者に適するようにするが、一般にpH4とpH8の範囲である。その他にも経皮投与および経口投与などの投与のための他の技術を適切に変形させて利用し、適切な製剤を考案することができる。典型的な投与量の水準は、標準臨床的技術を用いて最適化することができる。
【0072】
また、本発明の抗体は、抗体を暗号化する核酸の形で投与されて細胞内で抗体が生成されるようにすることができる(WO96/07321)。
【0073】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2に特異的な抗体を含む癌診断キットを提供する。
【0074】
本発明の癌診断キットには、AIMP2DX2タンパク質を選択的に認知する抗体だけでなく、免疫学的分析に用いられる当分野で一般に用いられる道具や試薬などが含まれる。このような道具/試薬としては、適切な担体、検出可能なシグナルを生成することが可能な標識物質、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などを含むが、これらに限定されるものではない。標識物質が酵素の場合には、酵素活性を測定することが可能な基質および反応停止剤を含むことができる。適切な担体としては、これらに限定されるものではないが、可溶性担体、例えば、当分野に公知になっている、生理学的に許容される緩衝液、例えばPBS、不溶性担体、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子などの高分子、その他の紙、ガラス、金属、アガロースおよびこれらの組み合わせであり得る。
【0075】
本発明の癌診断キットは、これに限定されるものではないが、ELISAプレート、ディップスチックデバイス、免疫クロマトグラフィー試験ストリップおよび放射分割免疫検定デバイス、およびフロースルー(flow-through)デバイスなどの形を持つことができる。
【0076】
本発明において、用語「癌診断マーカー」とは、癌組織および細胞で発現し、その発現有無を確認することにより、癌の発病を確認することが可能な物質、好ましくは正常組織と癌組織において有意な差異を示すタンパク質またはmRNAなどの有機生体分子を意味する。本発明の目的上、癌診断マーカーは、様々な癌組織および細胞のみで特異的に発現するAIMP2DX2であり、AIMP2DX2の発現をmRNAの水準または/およびタンパク質の水準で確認することにより、癌を診断することができる。本発明の抗体は、癌、より具体的には肺癌、肝癌、 乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫癌などの診断に有用である。
【0077】
別の様態として、本発明は、(a)分析する試料を提供する段階と、(b)前記試料から、AIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階を含み、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法を提供する。
【0078】
本発明において、用語「分析する治療」とは、癌の発生によってマーカータンパク質の発現量の差異が検出できる組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、精液、脳脊髄液または尿などの生物学的試料を意味し、当業界の公知方法で処理して準備する。
【0079】
具体的に、分析試料においてAIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現は、タンパク質水準またはmRNA水準で検出することができる。
【0080】
AIMP2DX2タンパク質の検出は、前記タンパク質に特異的に認知する抗体を試料に接触させ、その抗原−抗体複合体形成を測定して行われる。
【0081】
本発明において、用語「抗原−抗体複合体」とは、生物学的試料中のAIMP2DX2タンパク質とこれを特異的に認知する抗体との結合物を意味する。抗原−抗体複合体の形成を観察する実験方法には、組織免疫染色、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット(Western Blotting)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、タンパク質チップ(protein chip)などがあり、これに限定されるものではない。
【0082】
抗原−抗体複合体の形成を定性または定量的に測定可能にするラベルには、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子、レドックス分子および放射線同位元素などがあり、必ずしもこれらに限定されるものではない。検出ラベルとして利用可能な酵素には、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼとGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼとルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ホスフェノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、β−ラクタマーゼなどがあり、これらに限定されるものではない。蛍光物にはフルオレシン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタル酸アルデヒド(o-phthaldehyde)、フルオレサミンなどがあり、これに限定されるものではない。リガンドにはビオチン誘導体などがあり、これに限定されるものではない。発光物にはアクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがあり、これに限定されるものではない。微小粒子にはコロイド金、着色されたラテックスなどがあり、これらに限定されるものではない。レドックス分子にはフェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4−ベンゾキノン、ヒドロキノン、K4W(CN)8、[Os(bpy)3]2+、[RU(bpy)3]2+、[MO(CN)8]4−などがあり、これらに限定されるものではない。放射線同位元素には3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、186Reなどがあり、これらに限定されるものではない。
【0083】
AIMP2DX2 mRNAの検出は、当分野に知られている増幅反応またはハイブリッド化反応で行われる。増幅反応またはハイブリッド化反応は、AIMP2DX2 mRNAに特異的なプライマーまたはプローブを用いて行われる。
【0084】
本発明において、用語「プライマー」とは、短い自由3末端水酸化基(free 3' hydroxyl group)を持つ核酸配列であって、相補的なテンプレートと塩基対を形成することができ、テンプレート鎖複写のための開始点として機能をする短い核酸配列を意味する。
【0085】
本発明において、用語「プローブ」とは、mRNAと特異的結合をすることが可能な、短くは数塩基、長くは数百塩基に相当するRNAまたはDNAなどの核酸断片を意味し、ラベリングされていて特定mRNAの存在有無を確認することができる。プローブは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プローブ、単鎖DNA(single stranded DNA)プローブ、二重鎖DNA(double stranded DNA)プローブ、RNAプローブなどの形に製作でき、ビオチン、FITC、ローダミン、DIGなどで或いは放射線同位元素などで標識できる。例えば、配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列をプローブとして使用することができる。
【0086】
プローブまたはプライマーを用いてAIMP2DX2 mRNAを検出することが可能な方法としては、DNAシーケンシング(DNA sequencing)、RT−PCR、プライマー延長方法(Nikiforov et al, Nucl Acids Res 22, 4167-4175, 1994)、オリゴヌクレオチド延長分析(OLA)(Nickerson et al, Pro Nat Acad Sci USA, 87, 8923-8927(1990))、対立形質特異的なPCR方法(Rust et al, Nucl Acids Res, 6, 3623-3629, 1993)、RNase不一致切断(RNase mismatch cleavage; Myers et al, Science, 230, 1242-1246, 1985)、単鎖形状多形成(single strand conformation lymorphism: SSCP; Orita et al, Pro Nat Acad Sci USA, 86, 2766-2770, 1989)、SSCPおよびヘテロデュプレックス同時分析法(Lee et al, Mol Cells, 5:668-672, 1995)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE; Cariello et al, Am J Hum Genet, 42, 726-734, 1988)、変性高圧液体クロマトグラフィー(denaturing high performance liquid chromatography: D−HPLC, Underhill et al., Genome Res, 7, 996-1005, 1997)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
好ましくは、特異的プライマーを用いてRT−PCRを行って癌診断マーカーmRNAを検出する方法である。RT−PCRは、P.Seeburg(1986)によってRNAの分析に導入された方法であって、mRNAを逆転写して得られたcDNAをPCRによって増幅して分析する。この際、増幅段階では本発明の目的に合わせて製造されたプライマーを使用するようにする。本発明の目的上、プライマーは、それぞれ正常AIMP2 mRNAと変異体AIMP2DX2 mRNAに相当する大きさの異なる2つのバンドで示すプライマーと、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相当するバンドのみで示すプライマーに製作することができる。大きさの異なる2つのバンドで示されるようにするためには、エクソン2に相当する部分が転写されるように2つのプライマーの位置を指定して製作すればよい。プライマーの種類は、特に限定されるものではないが、本発明では、配列番号5と配列番号6のヌクレオチド配列を持つプライマーを使用した。変異体に相当するバンドのみ示されるようにプライマーを製作するためには、一つのプライマーがエクソン1のC末端とエクソン3のN末端との連結地点の配列を持つように製作すればよい。本発明では、接合地点に相当する配列番号8のプライマーを配列番号7のプライマーと共に使用し、或いは接合地点に相当する配列番号16のプライマーを配列番号6のプライマーと共に用いてRT−PCRした。RT−PCRは、バンドパターンを確認することにより、診断マーカーAIMP2DX2 mRNAの発現有無を確認することができ且つ癌発生有無を診断することができる簡便な方法である。
【0088】
対照区と検出試料中のAIMP2DX2の発現に有意的な差異があるかを絶対的(例えば:μg/ml)または相対的(例えば:シグナルの相対強度)の差異から確認することにより、癌、特に肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌および骨肉腫癌を診断することができる。
【0089】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2のmRNAに特異的なsiRNA(small interfering RNA)核酸分子を提供する。
【0090】
本発明において、用語「siRNA」とは、特定のmRNAの切断(cleavage)によってRNAi(RNA interference)現象を誘導することが可能な短い二重鎖RNAを意味する。標的遺伝子のmRNAと相同の配列を持つセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を持つアンチセンスRNA鎖から構成される。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制することができるため、効率的な遺伝子ノックダウン方法または遺伝子治療(gene therapy)の方法によって提供される。
【0091】
siRNAは、RNA同士が対を成す二重鎖RNA部分が完全に対を成すことに限定されず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的ではない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などによって対を成さない部分が含まれ得る。全長は10〜100塩基、好ましくは15〜80塩基、さらに好ましくは20〜70塩基である。siRNA末端構造は、標的遺伝子の発現をRNAi効果によって抑制することが可能なものであれば、平滑(blunt)末端或いは粘着(cohesive)末端でもよい。粘着末端構造は、3末端側が突出した構造と5末端側が突出した構造の両方とも可能である。突出する塩基数は限定されない。例えば、塩基数としては1〜8塩基、好ましくは2〜6塩基とすることができる。本明細書において、siRNAの全長は、中央の二重鎖部分の長さと、両末端の単鎖突出を構成する長さとの和で示した。また、siRNAは、標的遺伝子の発現抑制効果を維持することが可能な範囲で、例えば一側末端の突出部分に低分子RNA(例えば、tRNA、rRNA、ウィルスRNAなどの天然のRNA分子または人工のRNA分子)を含むことができる。siRNA末端構造は、両側とも切断構造を持つ必要はなく、二重鎖RNAの一方の末端部位がリンカーRNAによって接続されたステムループ型構造であり得る。リンカーの長さは、ステム部分の対を成すのに支障がない長さであれば特に限定されない。
【0092】
本発明において、用語「特異的」または「特異的な」は、細胞内で他の遺伝子に影響を及ぼさず、目的遺伝子のみを抑制する能力を意味し、本発明ではAIMP2DX2特異的である。本発明のsiRNAは、AIMP2DX2特異的に作動するように、AIMP2DX2のエクソン1とエクソン3との境界地点に相当するmRNAと相同の配列を含むセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を含むアンチセンスRNA鎖を持つ。
【0093】
前記において、「遺伝子発現の減少(Inhibition of gene expression)」とは、目的遺伝子から生成されたmRNAおよび/またはタンパク質の水準が除去または減少されたことを意味し、これはmRNAの切断によって起こるRNA干渉(RNAi:RNA interference)現象による。
【0094】
siRNAを製造する方法は、試験管内でsiRNAを直接合成した後、トランスフェクション(transfection)過程を経て細胞内に導入させる方法と、siRNAが細胞内で発現するように製造されたsiRNA発現ベクターまたはPCR−derived siRNA発現カセットを細胞内にトランスフェクションまたは感染させる方法がある。siRNAを製造し、細胞または動物に導入する方法の決定は、実験の目的および標的遺伝子産物の細胞生物学的機能によって異なる。
【0095】
本発明のsiRNAは、AIMP2DX2 mRNAを特異的に減少させることができれば、配列と長さは特に限定されず、本発明の具体的な実施では、3種のAIMP2DX2特異的なsiRNAを発現するベクターを製作し、siRNAが細胞内AIMP2DX2の細胞内水準を減少させ、AIMP2の機能とTGF−βシグナル伝達過程を回復することができることを確認した。
【0096】
本発明のAIMP2DX2に特異的なsiRNAは、AIMP2DX2 mRNAのエクソン1とエクソン3との連結部位に相当する配列を含む核酸である。好ましくは、それぞれ配列番号9と配列番号10のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む3番siRNA、配列番号11と配列番号12のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む4番siRNA、または配列番号13と配列番号14のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含む5番siRNAである。その中でも、配列番号11と配列番号12のヌクレオチド配列から発現するRNA配列を含むsiRNAが最も好ましい。単一または2種以上のsiRNAを混合して使用することができる。
【0097】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的なアンチセンス核酸配列を提供する。
【0098】
本発明において、用語「アンチセンス核酸」とは、特定のmRNAの配列に相補的な核酸配列を含有しているDNAまたはRNAまたはこれらの誘導体を意味し、mRNA内の相補的な配列に結合してmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する特徴がある。本発明のアンチセンス配列は、AIMP2DX2 mRNAに相補的であり、AIMP2DX2 mRNAに結合できるDNAまたはRNA配列を意味し、AIMP2DX2 mRNAの翻訳、細胞質内への転位(translocation)、成熟(maturation)または他の全ての生物学的機能に対する必須的な活性を阻害することができる。アンチセンス核酸の長さは6〜100塩基であり、好ましくは8〜60塩基であり、より好ましくは10〜40塩基である。
【0099】
前記アンチセンス核酸は、効能を増進させるために一つ以上の塩基、糖または骨格(backbone)の位置において変形できる(De Mesmaeker et al, Curr Opin Struct Biol., 5(3):343-55, 1995)。核酸骨格は、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、単鎖アルキル、シクロアルキル、単鎖へテロアトミック、複素環式糖間結合などで変形できる。また、アンチセンス核酸は、一つ以上の置換された糖成分(sugar moiety)を含むことができる。アンチセンス核酸は、変形された塩基を含むことができる。変形された塩基には、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−meピリミジン(特に5−メチルシトシン)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、ジェントビオシルHMC、2−アミノアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン、2,6−ジアミノプリンなどがある。また、本発明のアンチセンス核酸は、前記アンチセンス核酸の活性および細胞吸着性を向上させる一つ以上の成分(moiety)またはコンジュゲート(conjugate)と化学的に結合できる。コレステロール成分、コレステリル成分、コール酸(colic acid)、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪性鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル成分、オクタデシルアミン、ヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール成分などの脂溶性成分などがあり、これに限定されるものではない。脂溶性成分を含むオリゴヌクレオチドとその製造方法は、本発明の技術分野で既によく知られている(米国特許第5,138,045号、米国特許第5,218,105号および米国特許第5,459,255号)。前記変形された核酸は、ヌクレアーゼに対する安定性を増加させ、アンチセンス核酸と標的mRNAとの結合親和力を増加させることができる。
【0100】
本発明のAIMP2DX2に特異的なアンチセンス核酸は、AIMP2DX2 mRNAのエクソン1とエクソン3とが連結される接合点部位の当該配列に相補的な配列を含むことが好ましい。
【0101】
アンチセンスRNAの場合、通常の方法によって試験管で合成されて生体内に投与し、或いは生体内でアンチセンスRNAが合成されるようにすることができる。試験管でアンチセンスRNAを合成する一例は、RNAポリメラーゼIを用いることである。生体内でアンチセンスRNAが合成されるようにする一例は、認識部位(MCS)の起源が反対方向にあるベクターを用いてアンチセンスRNAが転写されるようにすることである。このようなアンチセンスRNAは、配列内に翻訳中止コドンが存在するようにして、ペプチド配列に翻訳されないようにすることが好ましい。
【0102】
別の様態として、本発明は、AIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を含む癌を治療するための薬剤学的組成物、およびこれを投与して癌を治療する方法を提供する。
【0103】
本発明の具体的な実施によれば、AIMP2DX2特異的siRNAを処理する場合、AIMPDX2の発現誘導によって発生したAIMP2の機能的崩壊が復旧されることを、AIMP2の細胞内水準増加、Smad2のリン酸化が誘導されることから確認することができた。すなわち、AIMP2DX2は、AIMP2の機能を崩壊して癌を誘発する直接的な原因として作用するが、AIMP2DX2のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いる場合、細胞内AIMP2の細胞内水準が増加しながら機能が復旧されるので、癌細胞特異的な癌治療に有用である。
【0104】
本発明のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を用いてAIMP2DX2発現誘導によって発生した全ての癌を治療することができる。このような癌は、肺癌、肝癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、骨肉腫癌などを含む。
【0105】
siRNAまたはAIMP2DX2アンチセンス核酸1種以上を含む薬学的組成物は、患者の癌細胞の増殖を阻害させる追加の物質を含むことができ、またsiRNAまたはアンチセンス核酸分子の導入を促進させる製剤、例えばリポソーム(米国特許第4,897,355号、第4,394,448号、第4,235,871号、第4,231,877号、第4,224,179号、第4,753,788号、第4,673,567号、第4,247,411号、第4,814,270号)を用いるか、コレステロール、コール酸塩よびデオキシコール酸を始めとした多数のステロール類のうち1種の新油性担体と共に配合することもできる。また、アンチセンス核酸は、細胞によって吸収されるペプチドに接合させることもできる。有用なペプチドの例としては、ペプチドホルモン、抗原または抗体およびペプチド毒素などがある(Haralambid et al, WO89/03849; Lebleu et al., EP0263740)。
【0106】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体と共に投与でき、経口投与の場合には結合剤、滑澤剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述したような薬剤学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形に製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形に製造することができる。
【0107】
本発明の薬剤学的組成物に含有されるAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNAまたはアンチセンス核酸の有効投与量の範囲は、性別、重症度、年齢、投与方法、標的細胞、発現水準などの様々な要因によって異なり、当分野の専門家によって容易に決定できる。
【0108】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口的に、または静脈内、皮下、鼻腔内または腹腔内などの非経口的にヒトと動物に投与される。非経口的投与は、皮下注射や筋肉内注射、静脈注射などの注射法および点滴法を含む。この他の本発明の薬剤学的組成物は、各種剤形の形で通用される技法によって製造することができる。
【0109】
別の様態として、本発明は、(a) 試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階、および(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階を含み、AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0110】
AIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成は、実施例で証明したのと同様に、癌と関連している。したがって、ヘテロダイマー形成を抑制する基質は抗癌剤と判断される。
【0111】
ヘテロダイマー形成をスクリーニングすることが可能な方法には、例えば、イーストツーハイブリッド(yeast-two-hybrid)、試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)などがある。
【0112】
イーストツーハイブリッドアッセイは、Field&Song(1989)によって最初開発された方法であって、転写調節タンパク質のDNA結合ドメイン(DNA binding domain)と転写活性ドメイン(transcription activation domain)にそれぞれベイト(bait)とプレイ(prey)タンパク質を融合タンパク質の形で発現させ、転写調節タンパク質により調節される遺伝子の発現および栄養欠乏培地での酵母の成長を観察することにより、2つのタンパク質(プレイタンパク質、ベイトタンパク質)の相互作用有無を確認することができるスクリーニング方法である。試験管内プルダウンアッセイは、タンパク質間の相互作用をタグ付きタンパク質(ベイトタンパク質)を精製し、この際、ベイトタンパク質に結合するタンパク質結合パートナ(プレイタンパク質)のプルダウン有無を確認することにより、2タンパク質の結合有無を確認することができるスクリーニング方法である。これらのスクリーニング方法を行い、AIMP2DX2とAIMP2のヘテロダイマー形成を阻害させる抑制剤を選別することができる。
【0113】
別の様態として、本発明は、(a)試験物質を、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含み、AIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0114】
AIMP2DX2遺伝子の発現は、mRNAまたはタンパク質の水準で測定することができる。AIMP2DX2 mRNA発現を検出しようとする場合、好ましくは前述したようなAIMP2DX2特異的なプライマーを用いてRT−PCRによって行うことができる。AIMP2DX2タンパク質の発現を検出しようとする場合、前述したようなAIMP2DX2特異的な抗体を使用する様々な免疫アッセイ方法、例えばウエスタンブロットで行うことができる。
【0115】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
〔実施例〕
(細胞培養、化合物および細胞周期の分析)
本研究に使用された細胞株は、10%FBS含有RPMI−1640で維持した。マウス胚児線維芽細胞(MEFS:Mouse embryonic fibroblasts)は、12.5日〜14.5日目の胚児から単離し、20%FBS含有DMEMで培養した。TGF−βが細胞周期に及ぼす影響を確認するために、細胞を無血清または1%FBS含有培地で2ng/mlのTGF−βで処理して培養し、細胞を集めてFACS分析した。また、細胞増殖は[3H]チミジン挿入(thymidine incorporation)で測定した。細胞を、TGF−βを処理または無処理した状態の無血清培地で20時間培養した後、[3H]チミジン1μCi/mlの存在下に4時間培養した。挿入されたチミジンは、液体閃光計算器を用いて文献(Kim et al., Nat. Genet. 34, 330-336(2003))によって定量した。TGF−βはR&D systemから購入し、抗−Smad2およびSmad4抗体はSnata Cruzから購入した。抗−AIMP2抗体は実験室で製造した。単離したAIMP2ンパク質500μg(1mg/ml)をウサギ(male、NewZealand)にcomplete adjuvant(Sigma)500μlと混ぜて皮下に注射した。7日後、AIMP2タンパク質500μgをincomplete adjuvant(Sigma)500μlと混ぜてウサギの皮下に注射し、これを7日間隔で2回さらに行った。3日後、ウサギの血液から抗体を採取する工程によって抗−AIMP2抗体を製造した。
【0117】
(免疫沈殿とウエスタンブロットの分析)
細胞をTGF−βで一定の時間処理し、プロテアーゼ含有RIPA緩衝液を用いて細胞からタンパク質を抽出し、10〜12%SDS−PAGEを用いて単離した後、特異的抗体としてECLシステムを用いて免疫ブロットした。免疫沈殿のために、細胞溶解物をIgGおよびアガロース−コンジュゲートされたタンパク質Aで処理した。遠心分離の後に、上澄み液を特異的抗体およびアガロース−コンジュゲートされたAで2時間培養した。冷たいPBSで2回、RIPAで1回洗浄した後、結合したタンパク質を特異的抗体で沈殿させ、溶出してウエスタンブロット分析を行った。
【0118】
(RT−PCR)
全RNA(total-RNA)を製造社(Qiagen)のプロトコールに従って単離した。新鮮に準備された組織(3×3×3mm)を小さい欠片に切り、350μlの溶解緩衝液と混合し、ホモジナイザーまたは注射器で均質化させた。350μlの70%エタノールを添加した後、溶解物(lysate)を多数回上下に揺らしてカラムにロードし、13,000rpmで15秒間遠心分離した。カラムを洗浄緩衝液で2回洗浄した後、RNAを40μlのRNase−free DWで溶出した。逆転写のために、1μgの単離されたRNAをAIMP2−特異的プライマー(図8b)の鋳型として使用した。逆転写の後、DWで3倍に希釈させ、1μlを、0.5μl dMTP(各2.5mM)、0.5μlの表示されたプライマー(各10pM)、1.5μl DMSOおよび0.1μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)を含む30μlPCR反応に使用した。
【0119】
(siRNAを用いたAIMP2DX2の抑制)
AIMP2DX2の発現を抑制するために、AIMP2DX2に対するsiRNAを製作した。AIMP2DX2に対するsiRNAをコーディングする配列を製作し、IMG−700(Imgenex)ベクターのSalIおよびXbaI部位と連結させ、クローニングをDNAシーケンシングで確認した。H322細胞を、si−DX2発現するベクター2μgで形質転換させた。1mlの無血清培地で3時間DNA−リポソーム複合体とインキュベーションした後、20%FBSを含む1mlのRPMI−1640をH322細胞に投与した。さらに20時間培養した後、無血清条件または指示された時間だけTGF−βを処理した。
【0120】
(イーストツーハイブリッドアッセイ)
ヒトAIMP2およびSmad2(およびその欠失断片)をコーディングするcDNAを、特異的プライマーを用いるPCRによって獲得した。SmadおよびAIMP2のPCR産物をEcoRIおよびXhoIで切断してそれぞれpEG202(LexA)およびpJG4−5(B42)のようなサイトに結合させた(Gyuris et al, a human G1 and S phase protein phosphatase that associates with Cdk2. Cell 75, 791-803, 1993)。Lex−Smad2断片とB42−AIMP2間の相互作用は、X−galを含む酵母培地で生存する能力で分析した(Rho et al, Proc Natl Acad Sci U S A 96, 4488-93, 1999)。
【0121】
(AIMP2DX2を安定的に生成する細胞の構築)
野生型MEFsをpcNDA−AIMP2DX2またはpcDNAで形質転換させ、形質転換体を、400μg/ml G418を含むDMEM培地で選択した。形質転換されていない細胞を除去した後、形質転換体を、G418を含まない培地で3日間培養した後、2%PFAで固定させ、Giemsaで染色した。
【0122】
(免疫染色と組織学的分析)
冷凍した組織スライドを2%パラホルムアルデヒドで固定し、冷たいPBSで3回洗浄した。0.2%トリトンX−100(PBST)および1%BSA含有PBSでブロッキングおよび浸潤(permeablization)した後、スライドを抗−AIMP2抗体で2時間培養した。PBSで洗浄した後、抗−ウサギ山羊IgG−FITCおよびプロピジウムヨウ化物(propidium iodide)(PI50μg/ml)で1時間培養し、その後PBSで洗浄し、固定して共焦点顕微鏡(confocal microscopy)で観察した。
【0123】
(AIMP2DX2発現ベクターの製作)
AIMP2DX2を発現するプラスミドを構築するために、AIMP2DX2のcDNAをpcDNA3.1−mycにクローニングした。まず、AIMP2DX2をH322 cDNAにおいてEcoRIおよびXhoIリンカー付きプライマーを用いて増幅させた後、EcoRIおよびXhoIを用いてpcDNA3.1−mycにクローニングした。AIMP2DXを発現するpcDNA3−myc/AIMP2DX2ベクター(図13)は、寄託名をEscherichai coli DH5alpha/AIMP2DX2として、2004年10月25日付けで、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、韓国大田市儒城區魚隠洞52番地韓国生命工学研究院)に寄託番号KCTC 10710BPで寄託した。
【0124】
(ノックアウト(knock-out)マウスの製作)
マウスゲノムDNA上の突然変異は、方法によるgene trap方法に従った(Zambrowicz et al, Nature, 9, 608-611, 1998)。gene trapベクターは、129/SvEvBrdマウスに由来した胚児幹細胞の無作為的突然変異ライブラリ(OmniBank library, Lexicon Genetics, USA)の生成に使用された。ライブラリにおいて、AIMP2遺伝子が破壊されたOST7994クローンを同定した。前記クローンを用いて、Lexicon Genetics社の標準プロトコールに従ってC57/BL6異型接合のマウスを生成した。同型接合の突然変異マウスを得るために、異型接合のマウスを交配させた。単離された13.5日目のマウスの腹をrazor bladeで切り、トリプシン酵素処理してペトリ皿に培養のためのプレーティングを行った。マウス胚児線維細胞(embryonic fibroblast cells)から単離されたゲノムDNAを用いてサザンブロットおよびPCR分析して突然変異を確認した。AIMP2発現をノーザンブロットおよびウエスタンブロットで確認した。gene trapの挿入位置をゲノムDNAシーケンシングで確認した。サザンブロットのために、マウス尻からゲノムDNAを単離し、SacIで分解した。切断されたDNA断片を変性ゲル電気泳動(denaturing gel electrophoresis)で単離し、放射学的にラベルされたAIMP2遺伝子の1.2kb PCR産物を配列番号17と18のプライマーでハイブリッドさせた。ハイブリッドされたバンドを蛍光イメージ分析器(phosphorimage analyzer)を用いて検出した。単離されたゲノムDNAを配列番号19と21、配列番号20と21の特異的プライマーでPCR分析に使用した。
【0125】
ノーザンブロット分析のために、マウス胚児線維細胞から全細胞RNAを製造社の指示に従ってRNeasy Midi kit(QIAGEN)を用いて準備した。単離されたRNA(30μg)を1.2%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲルから電気泳動によって単離し、Hybond N membranes(Amersham)に移動させ、UV照射によって膜に固定した。膜上のRNAをAIMP2 cDNAのPCRによって生成された特異的プローブでExpressHyb hybridization solution(CLONTECH)を用いてハイブリッドさせた。マウス胚児線維細胞からタンパク質を抽出し、SDS−PAGEで単離し、文献(Park et al, 274, 16673-16676, 1999; Kim et al, J Biol Chem, 275, 21768-21772, 2000)に記述した抗−AIMP2多クローン抗体でウエスタンブロットを行った。
【0126】
(肺癌形成)
AIMP2+/−マウス32匹と(雄19匹と雌13匹)AIMP2+/+マウス25匹(雄14匹および雌11匹)を実験に使用した。マウス腹腔内にベンゾピレン(100mg/kg)を単一注射した。対照区として、AIMP2+/+マウス3匹(雄2匹および雌1匹)およびAIMP2+/−マウス5匹(雄4匹および雌1匹)をバイカル溶液(生理食塩水に10%DMSOおよび35%PEG40が溶けた溶液)で注射した。
【0127】
(ノックアウトマウスにおける皮膚癌の発癌モデル)
前記で製作したAIMP2ノックアウト(KO)型と野生型(WT)マウス総33匹をWT雄対照区(3匹)、WT雄処理区(6匹)、WT雌対照区(2匹)、WT雌処理区(6匹)、KO雄対照区(2匹)、KO雄処理区(6匹)、KO雌対照区(3匹)、KO雌処理区(5匹)に分類した。
【0128】
DMBA(7,12-dimethylbenz[a]anthracene)を0.2μmol/0.2mlアセトンの濃度で処理区マウスの剃り済み背に局部的に適用した。この際、対照区に属するマウスはアセトンのみで処理した。1週間後、DMBA誘導マウスを10nmol/0.2mlアセトン濃度のTPA(12-O-tetradecanoyl-phorbol-13-acetate)で1週に2回ずつ21週間処理した。この際、対照区はアセトンのみで処理した。促進剤処理の後、1週から直径1mm以上の腫瘍の数を毎週計算した。21週にマウスを犠牲させて生化学的分析のための腫瘍試料を収集した。
【0129】
(実施例1:TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要さと作用方式)
TGF−βシグナル伝達においてAIMP2が重要に作用することを考察するために、TGF−βで誘導された細胞成長停止、Smad2/3の核移動およびSmad2/3とAIMP2との相互作用に対するAIMP2+/_+およびAIMP2−/−MEFsの反応を調べた。チミジン挿入、コロニー形成およびフローサイトメトリーで確認した結果、正常細胞の成長はTGF−βに抑制されるのに比べ、AIMP2欠乏細胞はこのようなシグナルに反応を示さなかった(各図1a、bおよびc)。MEFsをTGF−βで処理したとき、正常細胞ではSmad2およびSmad3が核に移動したが、AIMP2−/−細胞ではそうではなかった(図1d)。このような全ての結果は、Smad2および3を経由するTGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性を示す。
【0130】
AIMP2のSmad2および3との可能な相互作用を共同免疫沈澱によって調査した。AIMP2はSmad2/3との相互作用を示した。これはTGF−βによって強化された(図1e)。AIMP2と2つのR−Smad間の直接的相互作用をイーストツーハイブリッドおよび試験管内プルダウンアッセイで確認した(図2、図7)。Smad2/3に結合するAIMP2の量は、TGF−βによってAIMP2が誘導されるにつれて増加した(図2a)。形質転換によってAIMP2水準が増加するとき、TGF−βターゲット遺伝子の発現は強化された。これはTGF−βシグナル伝達においてAIMP2の刺激的な役割を意味する(図2b)。AIMP2はSmad2および3に結合するため、このような2つのR−Smadは同様の方式で作動すると予測することができた。よって、AIMP2とSmad2との相互作用に焦点を合わせてより詳しく考察した。TGF−β依存的Smad2のリン酸化は、AIMP2欠乏MEFsで抑制されたが、AIMP2がAIMP2−/−細胞に導入されると復旧された(図2c)。AIMP2との相互作用に関連したSmad2のドメインをイーストツーハイブリッド(図2d)および試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)(図7)で確認した。2つの実験によって、Smad2のMH2ドメインが相互作用に関連していることが明らかになった。
【0131】
TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作用方式を考察するために、正常およびAIMP2欠乏細胞においてSmad2とTGF−β受容体とのTGF−βで誘導された結合を観察した。細胞をTGF−βで処理し、Smad2と受容体との結合をSmad2とタイプI受容体の共同免疫沈澱によって時間間隔を置いてモニタリングした。野生型細胞では、TGF−βで誘導されたSmad2のTGF−β受容体との結合が初期時点で観察され減少されたが、AIMP2欠乏細胞では、Smad2に結合した受容体がTGF−β処理後の後期段階で蓄積された(図2e)。TGF−βで誘導されたSmad2のリン酸化において、野生型細胞ではリン酸化されたSmad2は益々増加したが、AIMP2−/−細胞では深刻に抑制された(図2f)。このような結果は、AIMP2が、R−Smad2との直接的相互作用によって、TGF−βで誘導されたR−Smadのリン酸化に決定的役割を果たすことを意味する。
【0132】
(実施例2:癌細胞におけるAIMP2の抑制とAIMP2の欠失型の生成)
癌形成とAIMP2との関連性を調査するために、相異なる各種癌細胞株におけるAIMP2の発現程度を観察した。観察した6つの細胞株のうち3つはウエスタンブロット(図3a)およびFACS分析(図3b)において低いAIMP2水準を示した。低いAIMP2水準を示す細胞株全てはTGF−βタイプII受容体が正常水準で発現し、キナーゼ活性も保有しているという事実は、低いAIMP2水準が受容体の機能異常による結果ではないことを意味する。AIMP2水準差が転写差異によるものかを確認するために、他の組み合わせのAIMP2特異的プライマーを用いてRT−PCRを行った。AIMP2遺伝子は4つのエクソンから構成されている(図8a)。エクソン3および4を貫通するAIMP2 cDNAを生成させる配列番号3と4のプライマーを使用したとき、減少したAIMP2水準を示す細胞からAIMP2転写の減少は観察されなかった(図3c、第1行)。これは低いAIMP2水準の低い転写の結果ではないことを意味する。エクソン1から3までの転写物を生成させる配列番号5と6のプライマーを使用したとき、予想した大きさの転写物だけでなく、小さい大きさの転写物も得ることができた(図3c、第2行)。小さい大きさの転写物の配列分析結果、AIMP2の69個のアミノ酸をコーディングするエクソン2が欠損していることが分かった(図8b)。この小さい大きさの転写物の生成を再確認するために、エクソン2欠損によって生成されるエクソン1およびエクソン3の接合配列をターゲッティングする配列番号8のプライマー(図8b、プライマーDX−B)を製作し、配列番号7プライマーを共に用いてRT−PCRを行った。低い水準のAIMP2を発生する細胞株は、小さい大きさの転写物(DX2と命名し、図3c、第2行および第3行)を生成した。
【0133】
抗−AIMP2抗体でウエスタンブロット分析すると、一般に、全長AIMP2のみが検出されDX2は検出されないので(図2a)、タンパク質水準におけるDX2は非常に不安定であることを意味する。また、H460、H322およびH290における低いAIMP2水準が免疫蛍光染色で証明された(図3d)。染色差異が発生する可能性を排除するために、H460およびDU145細胞を同じプレートに共同培養し、AIMP2を染色した。H460におけるAIMP2の染色強度は、DU145より多く弱かった(図9a)。低いAIMP2水準を示す細胞からTGF−β依存的なAIMP2の核移動が観察されなかった(図3d、下行)。AIMP2とTGF−β機能間の関連性を検討するために、前記細胞株におけるTGF−βによる成長抑制を測定した。A549およびDU145細胞はその成長がTGF−βによって抑制されるのに反し、低いAIMP2水準を示す細胞はTGF−βに反応しなかった(図3e)。このような結果は、A549細胞はTGF−βに敏感であり、H460細胞はTGF−βに鈍感であるという先行の研究と一致するものである(Osada et al. Cancer Res. 61, 8331-8339, 2001; Kim et al., Lung Cancer 31, 181-191, 2001)。また、ターゲット遺伝子はA549およびDU145細胞においてTGF−βによって誘導されたが、低いAIMP2水準を示すH322および他の2つの細胞株では誘導されなかった(図3f)。
【0134】
(実施例3:機能性のAIMP2と不活性の欠失突然変異体のヘテロダイマー形成)
DX2生成とAIMP2抑制との一般な関連性を理解するために、DX2でDU145細胞を形質転換した後、AIMP2水準の変化を調査した。ウエスタンブロット(図4a、第1行)およびFACS分析(図9b)の結果、DX2で形質転換された細胞においてAIMP2は減少した。また、AIMP2のターゲットであるc−mycの発現がDX2の導入によって増加した(図4a、第3行)。DX2はTGF−βによる成長停止を軽減させた(図4b、図9c)。
【0135】
DX2が機能的AIMP2(AIMP2−F)にどのように影響を及ぼすかを調べた。AIMP2はホモダイマーを形成することができるので(Quevillon et al, J. Mol. Biol. 285, 183-195, 1999; Kim et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 7912-7916, 2002)、AIMP2DX2がAIMP2−Fと相互作用するかをイーストツーハイブリッドアッセイで検査した。AIMP2DX2はAIMP2−Fと相互作用したが、AIMP2−DX同士は相互作用しなかった(図4c)。試験管内プルダウンアッセイにおいて、放射線的に合成されたAIMP2−Fおよび−DX2は、GST−AIMP2−Fと共同精製された(図4d)。これはAIMP2−Fと−DX2間の直接的相互作用があることを証明するものである。DX2がTGF−βシグナル伝達に活性を示すかを調べるために、イーストツーハイブリッドアッセイでSmad2との相互作用を検査した。AIMP2はAIMP2のターゲットとして知られているFBPだけでなく、Smad2とも相互作用するが(Kim et al, Nat. Genet. 34, 330-336, 2003)、DX2はこのようなタンパク質と全く結合していない。これはDX2の機能的不活性を意味する(図4e)。
【0136】
ヘテロダイマー形成がどのようにAIMP2を抑制するかを調べるために、AIMP2水準がプロテアソーム依存的分解過程によって調節されるかをチェックした。DX2生産H322細胞をプロテアソーム抑制剤ALLN(Zhou et al, J. Biol. Chem. 271, 24769-24775, 1996)で処理し、AIMP2水準がプロテアソーム遮断によって増加するかを観察した。ウエスタンブロット(図4f)、免疫蛍光染色(図4g)およびフローサトメトリー(図9d)から分かるように、AIMP2はALLN処理によって著しく増加した。これは、細胞内のAIMP2水準がプロテアソーム媒介分解により調節されることを示す。また、AIMP2DX2型もプロテアソーム抑制によって検出された(図4f)。AIMP2DX2の低い強度は、RT−PCR分析によって証明したように、正常AIMP2と比較して低い発現(図3c)および/または抗−AIMP2抗体による不十分な認知のためである。AIMP2分解はプロテアソームによって媒介されるため、ユビキチン化がDX2によって促進されるかを観察した。ALLNで処理された、対照区およびDX2で形質転換された細胞からAIMP2を免疫沈澱させ、抗−ユビキチン抗体でブロットしたとき、対照区細胞と比較して多い量のユビキチン化AIMP2が、DX2で形質転換された細胞から観察された(図4h)。以上より、DX2はAIMP2に結合して不活性のヘテロダイマーを形成するドミナントネガティブ突然変異(dominant negative mutant)として作用するものと思われる。
【0137】
(実施例4:AIMP2DX2によるTGF−βシグナル伝達不活性化および細胞成長促進)
DX2をMEFsにトランスフェクションした後、DX2が細胞成長に及ぼす効果を顕微鏡分析およびコロニー形成によって観察した。細胞成長は、DX2導入によって著しく増加した(図5a)。また、DX2に特異的に結合できる3種のsiRNA(si−DX2)を(図5b)発現するそれぞれのベクターを製造し、DX2を発現するH322およびH460細胞を形質転換した後、正常的AIMP2およびsmad2のリン酸化に及ぼす影響を観察した(図5c)。4番または5番siRNAを発現するベクターをH322細胞にトランスフェクションしたとき、TGF−βによる細胞死滅が増加し(左)、細胞周期の停止(右)が起こることをフローサイトメトリーで観察することができた(図5d)。DX2を発現するH322細胞に、DX2の転写を特異的に抑制する4番siRNA(si−DX2)を発現するベクターを組み込み、siRNAによってAIMP2の正常的水準およびTGF−ベータシグナル伝達が復旧されるかをチェックした。si−DX2はDX2転写物を除去させ(図5eの上)、AIMP2の正常水準およびTGF−βにより誘導されたSmad2のリン酸化(図5eの下および図5f)、Smad2の核移動(図5f)、TGF−β依存的レポーターの発現(図5g)、および成長停止(図5h)を復旧させた。前記全ての結果は、TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節に及ぶDX2の崩壊的な効果を証明することである。
【0138】
(実施例5:AIMP2欠失変異体とヒト肺癌との関連性)
AIMP2の減少は様々な癌細胞株からよく発見され(図3a、bおよびd)、AIMP2の損失は肺細胞の過増殖をもたらすため(Kim et al., Nat. Genet. 34, 330-336, 2003)、本発明者はAIMP2の異常が肺癌形成と関連しているかを調べた。このような可能性を検討するために、化学的発癌物質、BP(benzo-(α)-pyrene)(Wang et al, Cancer Res. 63, 4389-4395, 2003)をAIMP2+/+およびAIMP2+/−マウス腹腔内に投与して肺腫瘍を誘導した後、肺における腫瘍形成を観察した。BP投与後6週から、AIMP2+/−マウスでは50〜70%の頻度で、正常マウスでは約30%の頻度で肺腫瘍が観察された(図6a)。これは、異型接合マウス(heterozygous mice)が、BPにより誘導された腫瘍形成にさらに敏感であることを意味する。BP注射マウスの肺におけるDX2生成有無を調査した。3匹のAIMP2+/+マウスのうち1匹のみが腫瘍を発生させるのに比べ、AIMP2+/−マウスから単離した4つの肺のうち3つから腫瘍が生成された。全てのこのような腫瘍はDX−2を生成させた(図10)。これは、肺癌形成とDX2との関連性があることを意味する。
【0139】
ヒト肺の非腫瘍の炎症性組織(the inflammatory but non-tumor)と腫瘍組織におけるAIMP2水準を比較した。DX2は腫瘍組織のみで生成された(図6b)。相異なる個体によってAIMP2水準とDX2形成が異なる可能性を排除するために、同じ患者から単離した正常および腫瘍組織においてRT−PCRを行った。AIMP2の癌特異的減少とDX2の生成とは連関していた(図6c)。癌部位における正常的AIMP2水準を示す一つの事例からDX2が観察されなかった(図6c、患者22872)。
【0140】
(実施例6:癌発生とAIMP2、AIMP2DX2との連関性)
癌発生とAIMP2、AIMP2DX2との連関性を多様な組織および癌細胞株におけるAIMP2DX2発現で検査した。
2つの肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)試料から、正常と癌組織におけるAIMP2DX2の生成有無をRT−PCRで観察した。癌組織からAIMP2DX2の形成が観察された(図11a)。その他の多様な癌細胞株におけるAIMP2DX2の生成を調べた。細胞株を6ウェルプレートに1×105ずつシードし、24時間後に細胞を収穫した。収穫した細胞を、1%β−メルカプトエタノールを含むGSS溶液を用いて溶解させ、酸性フェノール(pH4.3)とクロロホルムを含む4%イソアミルアルコールを入れて混合した。これを遠心分離し、上澄み液をイソプロパノールで沈殿させ、再び遠心分離してペレットを得た。ペレットをエタノールで洗浄し、DWに溶かしてRNAを得た。RNAをM−MLV逆転写酵素(invitrogen)を用いて42℃で1時間逆転写させ、配列番号16のプライマーと配列番号6のプライマーを用いて、95℃で1分、60℃で1分、72℃で1分を1サイクルとした条件で38サイクルのPCRを行った。その結果、肺癌細胞株(H226、H460、H322およびH290)、胚児腎臓癌細胞株(293)、骨肉腫細胞株(SaOS2)、皮膚癌細胞株(HaCAT)、乳癌細胞株(MCF7)からAIMP2DX2が発現した(図11b)。
【0141】
(実施例7:AIMP2ノックアウトマウスを用いた発癌研究)
AIMP2遺伝子をノックアウトさせたマウスにおける発癌程度を、AIMP2発現が正常な野生型マウスと比較してみた。その結果、AIMP2ノックアウトマウスにおいて、皮膚腫瘍が発生するマウス数とマウスの腫瘍の数が確然に増加することが分かった。具体的に、マウスにDMBAにより癌を誘発し、TPAで癌の誘発を促進させる場合、AIMP2ノックアウト雌マウスは雌対照区マウスに比べて腫瘍発生率が約1.3倍増加し、AIMP2ノックアウト雄マウスは雄対照区マウスに比べて腫瘍発生率が約2倍増加した(図12b)。また、腫瘍発生マウスに発生した腫瘍の数も、AIMP2ノックアウト雌マウスは雌対照区マウスに比べて約4倍増加し、AIMP2ノックアウト雄マウスは雄対照区マウスに比べて約2倍増加した(図12cおよび図12d)。
【0142】
〔産業上の利用可能性〕
本発明の癌に特異的に発現するAIMP2DX2(タンパク質、mRNA)を癌診断マーカーとして用いて癌を正確且つ容易に診断することができ、AIMP2DX2タンパク質に対する抗体、siRNA、アンチセンス核酸などのAIMP2DX2の抑制剤を用いて癌を効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1a】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1b】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1c】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1d】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図1e】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の機能的重要性およびAIMP2とSmad2/3との相互作用を示す図である。
【図2a】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2b】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2c】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2d】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2e】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図2f】TGF−βシグナル伝達におけるAIMP2の作動メカニズムを示す図である。
【図3a】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3b】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3c】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3d】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3e】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図3f】AIMP2の差別的発現とAIMP2のエクソン2欠失型の生成を観察した結果を示す図である。
【図4a】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4b】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4c】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4d】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4e】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4f】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4g】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図4h】AIMP2DX2がAIMP2の細胞内安定性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。
【図5a】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5b】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5c】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5d】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5e】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5f】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5g】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図5h】TGF−βシグナル伝達および細胞成長調節におけるAIMP2DX2の崩壊的効果を示す図である。
【図6a】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図6b】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図6c】肺癌の形成とAIMP2との関連性を観察した結果を示す図である。
【図7】AIMP2との相互作用に関連したSmad2ドメインを測定した結果を示す図である。
【図8a】AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す図である。
【図8b】AIMP2遺伝子のエクソン配列およびAIMP2 cDNAにおけるプライマーの位置を示す図である。
【図9a】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9b】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9c】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図9d】癌細胞株におけるAIMP2の発現減少およびAIMP2DX2の生成を観察した結果を示す図である。
【図10】肺癌組織におけるAIMP2DX2の生成およびAIMP2の抑制を示す図である。
【図11a】様々な組織と細胞とにおいてAIMP2DX2が発現することを示す図である。
【図11b】様々な組織と細胞とにおいてAIMP2DX2が発現することを示す図である。
【図12a】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12b】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12c】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図12d】AIMP2遺伝子をノックアウト(AIMP2+/−)させたマウスにおける発癌程度を、AIMP2の発現が正常的な野性型マウスと比較して示す図である。
【図13】AIMP2DX2発現ベクターを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AIMP2(ARS-interacting multi-functional protein 2)タンパク質のエクソン2領域が欠失したAIMP2DX2タンパク質。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のAIMP2DX2タンパク質。
【請求項3】
癌診断マーカーである、請求項1に記載のAIMP2DX2タンパク質。
【請求項4】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子。
【請求項5】
配列番号1のヌクレオチド配列を有する、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクター。
【請求項7】
請求項6の組み換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項8】
請求項7の形質転換体を培養して請求項1のAIMP2DX2タンパク質を製造する方法。
【請求項9】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体。
【請求項10】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体を含む癌診断キット。
【請求項11】
(a)分析する試料を提供する段階と、
(b)前記試料から、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階とを含んで、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法。
【請求項12】
段階(b)において、請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体と接触させて検出する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
段階(b)において、増幅反応またはハイブリッド化反応によって検出する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
増幅反応が、AIMP2とAIMP2DX2のmRNAを区分するプライマーを用いるRT−PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)により行われるか、或いは、ハイブリッド反応が、AIMP2とAIMP2DX2のmRNAを区分するプローブを用いて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号5と6、配列番号7と8、または配列番号16と6のヌクレオチド配列を有するプライマー、または配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列を有するプローブを用いる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列を有する核酸分子。
【請求項17】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子。
【請求項18】
配列番号9と10、配列番号11と12、または配列番号13と14のヌクレオチド配列でコーディングされるセンスとアンチセンスRNAを含む、請求項17に記載のsiRNA核酸分子。
【請求項19】
請求項17のsiRNA核酸分子を含む、癌を治療するための薬剤学的組成物。
【請求項20】
請求項17のsiRNA核酸分子を投与して癌を治療する方法。
【請求項21】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を有するアンチセンス核酸分子。
【請求項22】
請求項21のアンチセンス核酸分子を含む、癌を治療するための薬剤学的組成物。
【請求項23】
請求項21のアンチセンス核酸分子を投与して癌を治療する方法。
【請求項24】
(a)試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階と、
(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階とを含んで、請求項1のAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項25】
イーストツーハイブリッド(yeast-two-hybrid)または試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)によりスクリーニングする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)試験物質を、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、
(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含んで、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現を抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項27】
RT−PCRまたはウエスタンブロットによりスクリーニングする、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
AIMP2(ARS-interacting multi-functional protein 2)タンパク質のエクソン2領域が欠失したAIMP2DX2タンパク質。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のAIMP2DX2タンパク質。
【請求項3】
癌診断マーカーである、請求項1に記載のAIMP2DX2タンパク質。
【請求項4】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子。
【請求項5】
配列番号1のヌクレオチド配列を有する、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする核酸分子を含む組み換えベクター。
【請求項7】
請求項6の組み換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項8】
請求項7の形質転換体を培養して請求項1のAIMP2DX2タンパク質を製造する方法。
【請求項9】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体。
【請求項10】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体を含む癌診断キット。
【請求項11】
(a)分析する試料を提供する段階と、
(b)前記試料から、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングするヌクレオチド配列の発現を検出する段階とを含んで、癌診断マーカータンパク質AIMP2DX2を検出する方法。
【請求項12】
段階(b)において、請求項1のAIMP2DX2タンパク質に特異的な抗体と接触させて検出する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
段階(b)において、増幅反応またはハイブリッド化反応によって検出する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
増幅反応が、AIMP2とAIMP2DX2のmRNAを区分するプライマーを用いるRT−PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)により行われるか、或いは、ハイブリッド反応が、AIMP2とAIMP2DX2のmRNAを区分するプローブを用いて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号5と6、配列番号7と8、または配列番号16と6のヌクレオチド配列を有するプライマー、または配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列を有するプローブを用いる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列を有する核酸分子。
【請求項17】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに特異的なsiRNA核酸分子。
【請求項18】
配列番号9と10、配列番号11と12、または配列番号13と14のヌクレオチド配列でコーディングされるセンスとアンチセンスRNAを含む、請求項17に記載のsiRNA核酸分子。
【請求項19】
請求項17のsiRNA核酸分子を含む、癌を治療するための薬剤学的組成物。
【請求項20】
請求項17のsiRNA核酸分子を投与して癌を治療する方法。
【請求項21】
請求項1のAIMP2DX2タンパク質のmRNAに相補的な配列を有するアンチセンス核酸分子。
【請求項22】
請求項21のアンチセンス核酸分子を含む、癌を治療するための薬剤学的組成物。
【請求項23】
請求項21のアンチセンス核酸分子を投与して癌を治療する方法。
【請求項24】
(a)試験物質を、AIMP2タンパク質とAIMP2DX2タンパク質を含む組成物と接触させる段階と、
(b)試験物質がAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制するかを測定する段階とを含んで、請求項1のAIMP2DX2タンパク質とAIMP2タンパク質間のヘテロダイマー形成を抑制する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項25】
イーストツーハイブリッド(yeast-two-hybrid)または試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay)によりスクリーニングする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)試験物質を、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子を発現する細胞と接触させる段階と、
(b)試験物質によるAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解促進を測定する段階とを含んで、請求項1のAIMP2DX2タンパク質をコーディングする遺伝子の発現を抑制またはAIMP2DX2タンパク質の分解を促進する抗癌剤をスクリーニングする方法。
【請求項27】
RT−PCRまたはウエスタンブロットによりスクリーニングする、請求項26に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図4h】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図13】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図4h】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図13】
【公表番号】特表2008−521398(P2008−521398A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542907(P2007−542907)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003924
【国際公開番号】WO2006/057500
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003924
【国際公開番号】WO2006/057500
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】
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