説明

癌を治療するためのペンタミジンの組み合わせ

本発明は、ペンタミジンと、(a)オキサリプラチン、(b)ゲムシタビン、(c)タキソール、(d)5−フルオロウラシルまたは(e)CPT11とを用いる、癌、例えば卵巣癌、乳癌、膵臓癌または結腸癌の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、癌を治療するための化学療法剤の相乗的な組み合わせに関する。
【0002】
癌細胞の増殖を阻害する作用薬およびこれらの組み合わせが必要とされており、これらは従来の化学療法よりも毒性が少ないおよび/またはより活性が高いものであり、例えば特に作用薬またはこれらの作用薬の組み合わせにより、治療効力を喪失することなく、癌患者に投与される化学療法剤の低用量での使用を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】CTXの標準ラインにおけるmCRCの確認された放射線学的進行。
【図2】生存率曲線。
【図3】主要サイズに関するゲムシタビンとの組み合わせにおけるペンタミジンの経時的な作用。
【0004】
発明の概要
本発明は、癌を治療するためのペンタミジンの使用が開示されている米国特許第7,115,665号に関連する。その文献全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
本発明の一態様は、癌細胞の増殖を阻害する方法であり、それを必要とする患者に、(1)ペンタミジンと、(2)(a)オキサリプラチン、(b)ゲムシタビン、(c)タキソール、(d)5−フルオロウラシルまたは(e)CPT11(カンプトテシン−11、イリノテカンとしても知られる)とを投与することを備える方法である。当該作用薬は、別々に、例えば連日、または一緒に与えられることができる。
【0006】
本発明の別の態様によれば、当該方法は、癌細胞の増殖および腫瘍成長を阻害する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、上記化合物の組み合わせを含む癌細胞の増殖および/または腫瘍の成長を阻害するための医薬組成物が提供される。本発明は、組み合わせが相乗作用を有するという驚くべき発見に関する。
【0008】
好ましい態様において、癌細胞は、扁平上皮癌細胞、リンパ節細胞の大細胞癌、乳癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、黒色腫細胞、膵臓癌細胞、白血病細胞、非小細胞肺癌細胞、結腸癌細胞、中枢神経系(CNS)癌細胞、卵巣癌細胞、腎臓癌細胞または前立腺癌細胞である。
【0009】
好ましい態様において、癌細胞は、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、乳癌細胞、または卵巣癌細胞である。
【0010】
別の好ましい態様において、ペンタミジンは、例えば膵臓癌の治療のためにゲムシタビンと組み合わされ、またはこうした目的のために単独で使用され;あるいはペンタミジンは、例えば結腸癌の治療のためにオキサリプラチンと組み合わされる。(進行性または転移性の)乳癌または卵巣癌の治療のためには、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、カルボプラチンおよびパクリタキセルが、標準的化学療法処方計画の構成成分の例である。5−フルオロウラシルに変換される5’−デオキシ−5−フルオロウリジン(5’DFUR)の経口投与される全身性プロドラッグであるカペシタビン(ゼローダ(登録商標))も使用される。これらの治療は生存を延長するが、患者は最終的には疾患の進行を経験する。標準的化学療法、例えばドキソルビシンまたは5−フルオロウラシルまたはカルボプレイン(carboplain)またはパクリタキセルの組み合わせにペンタミジンを組み込むことは、本発明の別の態様を含む。
【0011】
ペンタミジンは、遊離の化合物、または塩の形態にある化合物、例えば市販のペンタミジンイセチオネート、または何れかの他の薬学的に許容される塩などを指す。
【0012】
本発明はまた、上記作用薬の組み合わせと、DNA切断を引き起こす更なる作用薬との更なる組み合わせに関する。これらの種類の作用薬を含むことにより、癌治療のための貴重な手段が提供される。本発明の範囲内にあるDNA切断を誘導する作用薬は、これらに限定されるものではないが、シスプラチン、マイトマイシンC、メルファラン、カルムスチン、アドリアマイシン、タキソール、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペシタビン、フォリン酸(ロイコボリンとしても既知)、イオン化照射およびブレオマイシン、または上記の組み合わせ中にはない何れかの作用薬2(a)、2(b)もしくは2(c)を伴うものが含まれる。理論に束縛されることを望むことなく、そのような組み合わせは、エンド−エキソヌクレアーゼ活性のペンタミジンによる阻害のために作用すると考えられる。(他のエンド−エキソヌクレアーゼ活性阻害剤、例えばディスタマイシンAおよびベレニルも、ペンタミジンと共にまたはペンタミジンの代わりに使用できる。)そのような阻害が、上述のDNA切断誘導剤により直接的または間接的に誘導される二重切断の修復を防止する。上述のDNA切断誘導剤は、二本鎖の切断を直接に引き起こすこと、または二本鎖の切断に進展する一本鎖切断を引き起こすことができる。これは、生物学的系において共通して引き起こされる。エンド−エキソヌクレアーゼ阻害剤、例えばペンタミジンは、二重切断修復を防止し、それにより抗癌作用を向上する。
【0013】
開示された化合物の組み合わせの組成物または混合物は、ヒトおよび動物を含む患者に投与されてもよい。そのような組成物または製剤は、従来法で製造される。組成物は、化合物のあらゆる薬学的製剤および純粋な状態の化合物を含む。組み合わせは、個々の作用薬の2つ以上の組成物を含むことができる。これらは、化合物の2つ以上の異なる剤形の化合物、例えば一方の作用薬については錠剤製剤および他方の作用薬については液体製剤を含む。同じ製剤における2つ以上の化合物の混合物も本発明の範囲内である。組成物はまた、薬学的分野において周知の通常の従来の補助剤/賦形剤を含む。
【0014】
従って、薬学的製剤は、何れかの所望の適切な方法を介して、好ましくは完全に従来の方法、例えば経口(口腔または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口腔、舌下または経皮を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)方法による投与に適合され得る。そのような製剤は、薬学的分野において既知の何れかのプロセスを用いて、例えば活性成分を賦形剤または補助剤と組み合わせることによって製造される。
【0015】
経口投与に適合される薬学的製剤は、別個の単位、例えばカプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;食用泡状物質または泡状食品;または水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤として投与される。
【0016】
従って、例えば錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、活性成分の構成成分は、経口非毒性の薬学的に許容される不活性賦形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに粉砕し、これを同様の様式で粉砕された薬学的賦形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することによって製造される。フレーバ、防腐剤、分散剤および染料が同様に存在してもよい。
【0017】
カプセルは、上述のように粉末混合物を製造し、それと共に成形されたゼラチンシェルに充填することによって製造される。固体形態での流動促進剤および潤滑剤、例えば高度に分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に添加できる。カプセルが摂取された後に作用薬の利用可能性を改善するために、崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムが、同様に添加されてもよい。
【0018】
加えて、所望または必要により、適切な結合剤、潤滑剤および崩壊剤、ならびに染料が、同様に混合物に組み込まれ得る。適切な結合剤は、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、トウモロコシから作られた甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含む。これらの投与形態に使用される潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤は、これらに制限されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。錠剤は、例えば粉末混合物を製造し、この混合物を顆粒化または乾式加圧し、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体を加圧することによって製剤化され、錠剤を得る。粉末混合物は、上述のように、適切な様式において粉砕された化合物を希釈剤または基剤と、および任意に結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルキン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤、例えばパラフィン、吸収促進剤、例えば四級塩、および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することによって製造される。粉末混合物は、これを結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アカシア粘液またはセルロースまたはポリマー物質の溶液で湿潤させ、篩を通して、加圧することによって顆粒化され得る。顆粒化の代替として、粉末混合物を、錠剤成形機を経て生産し、得られた不均一な形状の塊を破壊して顆粒が形成できる。顆粒は、錠剤の鋳型に粘着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油の添加によって潤滑化され得る。潤滑化された混合物は、次いで加圧されて錠剤が得られる。本発明に従う化合物はまた、自由流動性の不活性賦形剤と混ぜ合わせ、次いで顆粒または乾式加圧工程を行うことなく直接に加圧して錠剤を得ることもできる。シェラック密封層、糖またはポリマー物質の層およびワックスの光沢層からなる透明または不透明の保護層が存在してもよい。染料は、異なる投与量単位を区別できるように、これらのコーティングに添加できる。
【0019】
経口液体、例えば液剤、シロップ剤およびエリキシル剤は、所与量が予め特定された量の化合物を含むように投与量単位の形態で製造され得る。シロップ剤は、適切なフレーバを有する水溶液中に当該化合物を溶解させることによって製造できる一方で、エリキシル剤は、非毒性アルコールビヒクルを用いて製造される。懸濁液は、非毒性のビヒクル中に当該化合物を分散させることによって製剤化できる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル、防腐剤、フレーバ添加剤、例えばペパーミント油または天然甘味料またはサッカリンもしくは他の人工甘味料なども同様に添加できる。
【0020】
経口投与のための投与量単位の製剤は、所望により、マイクロカプセル中にカプセル化できる。製剤はまた、放出が延長または遅延されるような方法で、粒子状物質を例えばポリマー、ワックスなどでコーティングする、または例えばポリマー、ワックスなどに埋め込むことによって製造できる。
【0021】
非経口投与に適合された薬学的製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質(これによって製剤は、治療されるべきレシピエントの血液と等張性になる)を含む水性および非水性の滅菌注射溶液;および懸濁媒体および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。製剤は、単一投与または複数投与用の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルに投与されることができ、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で貯蔵されてもよく、それにより注射のために滅菌担体液体、例えば水の添加だけが使用直前に必要になる。
【0022】
当該組み合わせを含む個々の作用薬は、これらの生物学的利用能および毒性に依存して同時にまたは異なる時間に患者に投与できる。患者への投与のためのキットへのパッケージングも本発明の一部分を形成する。作用薬は、単一の薬学的組成物中に製剤化することも、または別々に製剤化することも可能である。
【0023】
上記組み合わせの薬学的組成物は、癌を有する患者を治療するために使用される。人体全体に亘る標的組織に対して本発明の化合物を送達するためのビヒクルは、生理食塩水およびD5W(5%デキストロースおよび水)を含む。本発明の化合物の経口投与形態の製造のために使用される賦形剤は、添加剤、例えば緩衝剤、可溶化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘度制御剤、フレーバ、ラクトース充填剤、酸化防止剤、防腐剤または染料を含む。非経口および他の投与のために慣習的に好ましい賦形剤が存在する。これらの賦形剤は、血清アルブミン、グルタミン酸またはアスパラギン酸、リン脂質および脂肪酸を含む。
【0024】
製剤は、バイアル瓶または静脈注射用バッグ中に貯蔵される液体形態にあってもよい。本発明の化合物はまた、固体または半固体形態、例えばピル、錠剤、クリーム、軟膏、粉末、乳剤、ゼラチンカプセル、カプセル、坐薬、ゲルまたは膜中に製剤化されてもよい。
【0025】
好ましい投与経路は、静脈内である。投与の他の許容可能な経路は、経口、局所、直腸、非経口(注射)、局部的、吸入および硬膜外投与を含む。本発明の組成物はまた、抱合されて分子を輸送してもよく、または輸送手段、例えばベシクル、ミセル、およびポリマー中に含まれて、分子の輸送を促進してもよい。患者に投与されることができる薬学的に許容される組成物の製造のための方法は当該技術分野において既知である。
【0026】
本発明の組成物はまた、抱合されて、分子、モノクローナル抗体または輸送手段、例えばベシクルおよびミセルなどを輸送してもよく、これらは優先的に癌細胞を標的とする、または癌細胞が薬物を受容するように促す
本発明の化合物を含む薬学的組成物は、ヒトまたは動物に投与できる。投与されるべき投与量はまた、個々の患者の状態、薬物の効能、薬物の物理的および化学的安定性、毒性、所望の作用および選択された投与経路に慣習的に依存する(Robert Rakel, de、Conn's Current Therapy、1995,W.B.Saunders Company,USA)。
【0027】
賦形剤はまた、ミセル、ベシクルおよびリポソームなどの構成成分を含み、これらは当該化合物および他の作用薬の治療性能を向上することができる。ベシクル、ミセルおよびリポソームの作用は、当該化合物および作用薬の溶解性を改善すること、それらの腫瘍細胞への送達を改善すること、および腫瘍細胞と相互作用してこれらの細胞を化合物および作用薬に対してより浸透性にすることを含む。効率を改善することは、治療を改善すること、または用量および副作用を減らして等価な結果を得ることを可能にすることを含む。
【0028】
本発明に使用するための各作用薬のための典型的な用量は、癌を治療するために個々に使用される公知の作用薬のそれぞれについて通常知られる通常の範囲である。ペンタミジンに関しては、典型的な用量は、ヒトにおいて2〜8mg/体重kgである。これらの量は、組み合わせにおける相乗作用のために本発明によって低下することができる。組み合わせにおける各作用薬の典型的な用量範囲は:ヒトにおいてペンタミジン2〜8mg/体重kg;ヒトにおいてゲムシタビン800〜1250mg/表面積m;ヒトにおいてCPT11 75〜350mg/表面積m;およびヒトでオキサリプラチン85〜130mg/表面積mである。用量は、相乗作用のために、これらの範囲の量から典型的に10〜50%低下させることができる。
【0029】
処方計画(例えば、用量のタイミング、期間など)は、これらの作用薬の慣習的な使用指針によって個々に慣習的に決定可能である。
【0030】
ペンタミジンの場合、例えば指針は、2時間の点滴において180〜200mgのペンタミジンを与えられた患者についての試験から得てもよい。血流中のレベルは、数時間にわたり迅速に下降すること;および最初の24時間では、腎臓がわずか7mgのペンタミジンだけを尿中に排出することが示された(Conte,J.E.,Jr.: J.Infect.Diseases, (1991),163,169)。ペンタミジンは肝臓で容易に代謝されないので、当該物質のほぼ全ては血流から、それが留まる体組織に分布される。加えて、尿中に見出される量は、投与を繰り返しても顕著に増大しない。これはペンタミジンが繰り返し与えられた場合に、体組織に蓄積することを意味する。ペンタミジンは最終用量の25日後に組織において検出された。従って、ペンタミジンは、組織から徐々に放出されるのみである。これはまた組織に広く分布する(Goa,K.L., Campoli-Richards,O.M.; Drugs, (1987),33,242)。従って、その有効性が長期間に亘る体組織での分布および残留に依存するために、ペンタミジンは他の化学療法の前、後または他の化学療法と同時に患者に対して投与されてよい。
【0031】
他の化学療法剤がペンタミジンと共に使用される方法は、それらの薬理学的特徴に依存する。従って、都合の良い投薬様式は、化学療法作用薬の標準的な投与サイクルが、それに先駆けてのペンタミジンの投与と共に採用される。これは、例えば、癌の成長を制御するために、ペンタミジンとの組み合わせにおいて有効に使用されるシスプラチナムの組み合わせと関連して説明され得る。シスプラチナムは、体中の水と徐々に反応して、組織に結合する活性形態を生じる。これが患者に徐々に注射される場合、尿中排泄は75%程度の高さになり得る。従って、迅速な投与が多くの場合に用いられて、これが体組織に分布される前に、腎臓が薬物を排泄しないことを保証する(Belt,RJ.,Himmelstein,KJ.,Patton,T.F.,Bannister,S.J.,Sternson,L.A.,Repta,AJ.,Cancer Treatment Rep.、(1979),63,1515)。従って、ペンタミジンがシスプラチナムと併せて使用される場合、慎重な手法は、2つの薬物の投与によって腎臓が過度の負担を受けないように、シスプラチナムの1日前に患者にペンタミジンを与えるものである。ペンタミジンの2回の投与が必要な場合、1回目は、シスプラチナムの2日前(−2日目)に投与され、2回目はシスプラチナムの1日前(−1日目)に投与される。
【0032】
腫瘍学においては多くの場合、薬物の組み合わせが使用される。結腸癌では、例として、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル(fluorourocil)およびロイコボリン(leucovrin)「FOLFOX」またはイリノテカン(irinotican)、5−フルオロウラシルおよびロイコボリン「FOLFIRI」の投与などが含まれる。これらの組み合わせは、典型的に2週間毎に患者に投与される。従って、ペンタミジンが治療に加えられる場合、これは都合よくは、標準的な化学療法の1日または2日前に与えられる。しかし、ペンタミジンは体組織に残留するために、標準的な化学療法の数日前に与えられる場合であっても有効である。
【0033】
更なる例は、ヒトの膵臓癌に関する。ここで、典型的な治療サイクルは、3週間に亘り1週間に1回800〜1250mg/表面積mのゲムシタビンの投与を含み、これに1週間の休みが続く。ペンタミジンがゲムシタビンと共に使用される場合、ゲムシタビンの投与の前の−2日目および−1日目においてサイクルの第1週の間に都合よく投与される。
【0034】
他の癌の処方計画と組み合わせにおいて使用するための適切なペンタミジン投薬の更なる例として、ペンタミジンを、そのような化学療法に先駆けて以下の用量で患者に対して静脈内に与えることができる:
【表A】

【0035】
更に、患者のための投薬は、それぞれ副作用の不存在または存在において、より低い選択肢からより高い選択肢に引き上げられるか、または低減され、および従来通り、治療する医師の助言に従う。ペンタミジンは論じられたように体組織に蓄積するので、標準的な化学療法のサイクルの何れの時点でも投与することができるものであり、すなわち投薬は、−1日目および−2日目に限定されない。任意の投薬は、慣行通り決定できる。
【0036】
ペンタミジンは、標準的な抗癌剤の場合とは完全に異なる副作用プロファイルおよび作用機序を有するので、これは、単独で使用される作用薬により誘導される場合よりも実質的に悪い薬物有害反応を誘導することなく、標準的な抗癌剤との組み合わせにおいて使用できる。多くの癌の生命を脅かす性質を前提として、患者は、化学療法により積極的な治療を受ける。ペンタミジンとの組み合わせにおける治療は、標準的な化学療法剤の副作用が明白になるまで与えられる。この点において、標準的な化学療法剤の投与を中断し、ペンタミジン単独での治療を継続することができる。ペンタミジンの持続的な使用は、ペンタミジン自体が有効な抗癌剤であるために、患者に有益であり得る。組み合わせ療法または単一療法の何れかにおいて使用されるべきペンタミジンの合理的な用量は、6mg/体重kgまたは4mg/体重kgである。
【0037】
ペンタミジンはそれ自体の副作用を有し、本内容において最も顕著な副作用は、患者が膵炎を患う可能性である。この副作用は、ペンタミジンが連続する多くの日に亘って投与される場合、例えば寄生虫性の疾患を治療するために使用される場合などのように4〜6mg/kg/日の用量で10〜15日間投与される場合に著しい。しかしながら、1または2回の投与が2週間毎に与えられ得るような本明細書に記載される投薬計画において、膵炎の危険性は大きく低下する。膵炎が生じる場合、ペンタミジンの投与は、患者が回復するまで停止できるが、標準的な化学療法は暫定的に継続されてもよい。低用量のペンタミジン、例えば1日あたり1〜4mg/kgでの多くの日数に亘る持続的な使用は、効力を維持しながら、毒性を低減する別の手段を与える。
【0038】
全ての療法と同様に、治療する医師は、患者の身体的な状態および症状に照らして薬物の特徴および使用を考慮しなければならず、投与は、適宜慣行通りに調節されなれければならない。
【0039】
更なる詳細を必要とせずに、当業者は、先行する説明を用いて、本発明を最も十分な程度にまで利用可能であると考えられる。このため、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、如何なる方法においても、開示の残りの部分を限定するものではない。
【0040】
ここにおいて引用された全ての出願、特許および刊行物の開示物の全体は、参照によりここに組み込まれる。
【0041】
先行する例は、先行する例において使用されたものに関して、一般的にまたは詳細に記載された本発明の作用物質および/または操作条件を置換することによって同様の成功が繰り返される。
【0042】

例1
目的:
抗癌療法における相乗作用は、次のそれぞれ:タキソール、オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはCPT11との組み合わせにおけるペンタミジンの使用により得られた。
【0043】
方法:
細胞生存率−MTTアッセイ:細胞成長/細胞毒性を測定するMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5ジフェニルテトラゾリムブロミド)法を、細胞生存率を測定するために使用した。MTTは、生細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼと結合するテトラゾリウム塩である。結合により、黄色の水溶性MTTは紫色の不溶性ホルマザン結晶に変換される。結晶は、50%のN,N−ジメチルホルムアミド(vol/vol)、20%のSDS(wt/vol)溶液(pH4.7)で可溶化され、吸光度は570nmの波長で測定される。非結合MTTはこの波長では検出不可能である。アッセイにおいて測定される結合MTTの量は、存在する生細胞の数に比例する。(Niks and Otto 1990:Towards an optimized MTT assay、J. Immunol. Methods.、130,149-151,Hussain et al、1993;A new approach for measurement of cytotoxicity using colorimetric assay、J. Immunol. Methods.、160,89-96)。
【0044】
細胞は、標準的なプロトコールを用いて細胞培養液から収集された(トリプシン/EDTA)。細胞(使用される細胞の種類に依存して50μlの溶液中に1000〜5000細胞)が次いでプレートに播種され、37℃で一晩インキュベートされた後、作用薬または作用薬の組み合わせが添加された。2日間の37℃でのインキュベートの後、次いで10μlの5mg/mlのMTT溶液を全てのウェルおよび培地コントロールウェルに添加した。プレートを更に4時間インキュベートした。100μlのMTT可溶化緩衝液を添加し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。次いでプレートを570nmでの吸光度および630nmのリファレンスをELISAプレートリーダーで計測した。
【0045】
組み合わせの作用は、3つの代表的な癌細胞株:H661(肺癌(カルシノーマ))、MCF−7(乳癌(アデノカルシノーマ、複数の浸出液))およびHT29(結腸癌(アデノカルシノーマ、原発性腫瘍))について試験した。初期アッセイを、タキソール、オキサリプラチン、ゲムシタビン、またはCPT11(イリノテカンとしても既知)が試験下で細胞の約10%を死滅させる濃度を決定するために行った。アッセイの第2のシリーズにおいて、ペンタミジンを細胞培養物に添加した。幾つかの濃度のペンタミジンを、タキソール、オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはCPT11のそれぞれとの組み合わせにおいて試験し、LC50、すなわち残存細胞の50%を死滅させるペンタミジンの濃度を測定した。
【0046】
ペンタミジンを致死量以下の細胞毒性化学療法剤に対して添加することにより、表1に示されるように、乳癌(MCF−7)、肺癌(H661)および結腸癌(HT29)細胞に対する抗癌作用が大きく増大した(2倍から50倍)。
【表1】

【0047】
細胞毒性剤の濃度は単独で使用されたときに細胞の10%を死滅させる濃度であるために、相加作用自体は、単に、ペンタミジン単独の場合に対して、約10%の改善に大凡対応する、ペンタミジン性能における小さな改善として現れるだろう。データは当該組み合わせによって、同じ細胞死滅効率を維持しながら、ペンタミジンの濃度を100%(タキソールを用いたHT29−試験された最悪の場合)および5000%(H661に関してオキサリプラチンまたはゲムシタビン−試験された最高の場合)にまで低下させることができることを示す。全ての細胞毒性剤が、ペンタミジンとの組み合わせにおいて使用される場合に強い相乗作用を示した。
【0048】
この作用はまた表2A〜Cにおけるデータによっても例証されており、これらの表ではペンタミジンおよび種々の細胞毒性剤が上述の場合よりも高い濃度で使用される。単独で使用された場合のそれぞれが細胞を死滅させる程度を表中に報告する。そのデータに、化合物が組み合わせにおいて使用された場合の細胞死の程度を続ける。繰り返しになるが、当該組み合わせは相乗作用を示すものであり、単なる相加作用でない。
【表2】

【0049】
例2−臨床試験膵臓癌
非無作為化の非盲検第I/IIa相臨床試験は、標準的化学療法(ゲムシタビン処方計画)を受ける進行性または転移性の膵臓癌を患う対象について静脈内(I.V.)ペンタミジンの作用を評価するために設計される。
【0050】
膵臓癌を患う合計15〜20人の対象は、12ヶ月間に亘って登録される。ペンタミジンは、連続処方計画において、開始用量6mg/体重kgのペンタミジンイセチオネートを用いて、1〜2時間に亘ってI.V.投与される。ペンタミジンは、膵臓癌のための21〜28日間の標準的化学療法サイクルの開始の2日前(−2日目)に投与される。更なる用量が−1日目に与えられる。全ての対象は標準的な医療化学療法処方計画が与えられる。対象は、臨床的な利益を受ける限り、または対象疾患の進行が実証されるまで、または対象が他の理由のために試験を中止されるまで治療を継続される。
【0051】
例3−臨床試験結腸癌
非無作為化の非盲検第I/IIa相臨床試験は、第二次化学療法(修飾FOLFOX−6(mFOLFOX6)、またはカペシタビンおよびオキサリプラチン、またはFOLFIRIまたはIROX、またはカペシタビンおよびイリノテカンを含む処方計画)治療および/または化学療法を受ける転移性の結腸癌を患う対象について、I.V.ペンタミジンの作用を評価するために設計され、第三次および上記治療処方計画については医師の選択による。(FOLFOX処方計画はオキサリプラチンを含み、FOLFIRI処方計画はイリノテカンとしても既知のCPT11を含み;IROX処方計画はイリノテカンおよびオキサリプラチンを含む)。患者はまた、化学療法の一部として、ベバシズマブ(アバスタチン)またはセツキシマブ(アービタックス)またはパニツムマブ(ベクティビクス)を与えられてもよい。22人の患者がデータに登録される。
【0052】
ペンタミジンは、転移性の結腸癌のための14日間の標準的化学療法サイクルの開始の2日前(−2日目)に投与される。更なる用量が、−1日目に与えられる。ペンタミジンは、連続処方計画において、4mg/体重kgのペンタミジンイセチオネートの開始用量を用いて1〜2時間に亘ってI.V.投与される。
【0053】
試験設計は、6mg/kgのペンタミジンまで用量を増加することが可能であり、他の抗癌剤からの副作用が著しい場合には、患者にペンタミジン単独で継続させることを可能にする。用量の増加およびペンタミジン単独での治療は、治療する医師の裁量による。
【0054】
ペンタミジンとの以下の組み合わせが患者において試験される:FOLFOX(フルオロウラシル、フォリン酸およびオキサリプラチン)またはベバシズマブを用いる若しくは用いないその修飾バージョン、FOLFIRI(フルオロウラシル、フォリン酸およびイリノテカン)またはベバシズマブを用いる若しくは用いないこれらの修飾バージョン、ベバシズマブを用いる若しくは用いないCPT−11、オキサリプラチンを用いる若しくは用いないCPT−11、およびカペシタビン。ほぼ全ての患者は、彼らの現在の治療またはその組み合わせにおいて、以前には奏効していない。
【0055】
暫定的な結果は、現在最良の療法と比較した場合に、ペンタミジンが全体的な生存率を顕著に促進することを証明する。
【0056】
例4−臨床試験乳癌および卵巣癌
非無作為化の非盲検第I/IIa相臨床試験は、乳房腫瘍および/または卵巣腫瘍および/または乳房腫瘍および/または卵巣腫瘍から誘導される転移性の腫瘍を有する対象について、I.V.ペンタミジンの作用を評価するために設計される。患者は、標準的化学療法の各サイクルに先駆けて2回の投与のペンタミジンイセチオネート(6mg/kg)から開始してペンタミジンを与えられる。
【0057】
ペンタミジンは、乳癌および/または卵巣癌のための標準的化学療法サイクルの開始の2日前(−2日目)に投与される。更なる用量が−1日目に与えられる。ペンタミジンは、連続処方計画において1〜2時間に亘ってI.V.投与される。
【0058】
限局性または転移性の乳癌または卵巣癌の治療のために、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、カルボプラチンおよびパクリタキセルが、標準的化学療法処方計画の構成成分の例である。カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、5−フルオロウラシルに変換される経口投与される全身性プロドラッグの5’−デオキシ−5−フルオロウリジン(5’DFUR)もまた使用される。標準的化学療法、例えばドキソルビシンまたは5−フルオロウラシルまたはカルボプレインまたはパクリタキセルとの組み合わせにペンタミジンを組み込むことは、本発明の別の態様を含む。
【0059】
試験設計は、他の抗癌剤からの副作用が著しい場合には、患者にペンタミジン単独で継続することを可能にするものである。用量の増加、減少およびペンタミジン単独での治療は治療する医師の裁量による。
【0060】
実施例5−以前に治療された転移性の結腸直腸癌(mCRC)を患う患者におけるフルオロウラシル、オキサリプラチンおよび/またはCPT−Ilを含む化学療法を併用するペンタミジンの第I/II相試験
序論
・結腸直腸癌は北アメリカにおける癌死亡の2番目の死因である
・生物学的作用薬を用いる組み合わせ化学療法により、mCRCを患う患者(pts)において、生存期間の中央値が約24ヶ月にまで延長した
・新規な作用薬が積極的に調査されている
・DNA組み換えおよび補修において重要な酵素であるエンド−エキソヌクレアーゼ(EE)は、癌細胞において過剰発現されることが示されている1、2、3
・ペンタミジンが、EEを阻害し、転移性の癌における疾患安定化活性を有することが示されている1、4
・インビトロ試験は、ペンタミジンが、悪性細胞における細胞毒性化学療法の作用を強化できることを示している;DNA修復能を障害することによって、それらは、DNA損傷剤の影響をより受け易い1、2、3
【0061】
試験目的
・標準的な治療の先行療法が奏効しなかったmCRCを患う患者において、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよび/またはCPT−Ilを含む化学療法(CTX)とペンタミジンとの組み合わせの安全性および有効性を評価すること。
【0062】
・主要評価項目:治療の安全性および忍容性
・二次目的:奏効率(RR)、進行なしの生存率(PFS)、および全体的な生存率(OS)。
【0063】
方法
・適格基準:標準CTXの1以上の先行療法におけるmCRCの進行の放射線学的証拠;18歳以上;ECOG0−2;標準EKG;適切な血液、肝臓および腎臓機能;3ヶ月よりも長い平均余命;インフォームド・コンセント
・4mg/kgのペンタミジンは、CTXの前日に開始され、CTXの前に2日連続して6mg/kgの最大用量まで徐々に上昇された(図1参照)
・CTXは、患者を治療する腫瘍学者によって選択された
・有害事象(AE)は、NCI CTCAEv3分類系に従って格付けされた
・用量制限毒性(DLT)=ペンタミジンに起因し得る治療の最初の2サイクル内で生じるグレード3または4の何れか
・この試験のために選択されるペンタミジンの最大用量は、CTX前に2日間連続して6mg/kgであった;より高い用量は試験されなかった
・28日間の開始試験治療内→q3サイクルの繰り返し内、または標準的な医療によるときの胸部/腹部/骨盤のスクリーニングCT
・放射線学的応答は、RECIST基準に従って評価した
・6サイクルのペンタミジンの後に疾患進行を伴わない患者に対しては延長相が開始された。
【0064】
結果:臨床的特徴
・現行の第I/II相試験に登録された最初の17人の患者についての予備結果が示される(表3)
・最初の17人の患者の年齢の中央値=66(範囲43〜82)
・最初の17人の患者の治療期間の中央値=15週間(範囲0.3〜58)。
【表3】

【0065】
結果:有害事象
・17人の患者のうち13人は、予備安全性および忍容性分析について評価可能であった(表4)。4人の患者についてデータ保留
・ペンタミジンに起因したグレード3/4AEは、高血糖(23%)および高リパーゼ血症(15%)であった。
【0066】
・NB.同時薬物(例えば、デカドロン)、D5W中のCTX調製および/または2型糖尿病を患う患者を含むことは、高血糖の直接的な起因をペンタミジンによるものと混同し得る
・DLTは食欲不振および高血糖症であり、患者の8%においてそれぞれ生じた
・毒性は、ペンタミジンの既知の副作用と一致した。
【表4】

【0067】
結果:臨床結果
・17人中の14人が応答に関して評価可能であった(表5)
・患者の退出時に患者の35%はSDを有し、47%がPDを有していた
・PFS時間の中央値の予備分析=4.4ヶ月(図2)
・OS時間の中央値は、今までのところ得られなかった
・CEAにおける変化は、応答と相関しなかった(データには示さず)。
【表5】

【0068】
結論
・ペンタミジンとCTXとの組み合わせに関連する毒性は、文献において認められたものと一致しており、管理可能であった
・ペンタミジンおよびCTXは、治療の標準的療法において進行したmCRCにおいて疾患安定化活性を有することは明らかである。
【0069】
参照文献
・Chow TY,Alaoui−Jamali MA,Yeh Cら、癌のための治療標的としてのDNA二重鎖破壊修復タンパク質エンド−エキソヌクレアーゼ(The DNA double-stranded break repair protein endo-exonuclease as a therapeutic target for cancer),モレキュラー・カンサー・セラピュティラス(Mol cancer Ther)2004;3(8):911−9。
【0070】
・Sibgat A.ChoudhuryおよびTerry Y−K.Chow、DNA修復タンパク質:癌治療における新境地としてのエンド−エキソヌクレアーゼ(DNA repair protein: The endo-exonuclease as a new front in cancer therapy)、フューチャー・オンコロジー(Future Oncology)1(2):265−271,2005。
【0071】
・Choudhury SA,Kauler P,Devic Sら、エンド−エキソヌクレアーゼ発現のサイレンシングがマウスB16F10黒色腫細胞をDNA損傷剤に感受性になる(Silencing of endo-exonuclease expression sensitizes mouse B16F10 melanoma cell to DNA damaging agents)、インベスト・ニュー・ドラッグ(Invest New Drugs)2007;25(5):399−410。
【0072】
・von Hoff D,Gorton M,Turner Jら、進行性充実性腫瘍を有する患者におけるCRx−026、新規な二重作用剤を用いる第I相試験(A phase I study with CRx-026, a novel dual action agent, in patients with advanced solid tumors)、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol),2005 ASCO年次総会会報、23巻、16S号、IIのパートI(6月1日補完),2005:3073
前述した記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適合するように本発明をさまざまに変化および変更することが可能である。
【0073】
例6−ヒト異種移植試験
マウスモデルにおけるヒト異種移植試験は、CB17 SCID雌性マウスにおけるBxPC3ヒト膵臓異種移植モデルにおいて1週間に2回の腹腔内投与されたゲムシタビンとの組み合わせにおいて、1週間に2回の腹腔内投与されたペンタミジンの抗腫瘍活性を明らかにするために行った。
【0074】
BxPC3細胞は、2010年1月4日(1日目)に腫瘍細胞の懸濁液(PBS0.1mL中で5×10細胞)として各動物の側腹部に皮下移植された。移植は、層流フード下で行われた。BxPC3細胞注射の4日後、腫瘍サイズに基づいてマウスをそれぞれ10匹のマウスの4つのグループに無作為化し(治療開始日)、それにより各グループの平均腫瘍サイズを比較可能にした。5匹のマウスは、腫瘍成長がない、腫瘍が小さ過ぎる、または腫瘍が大き過ぎるために、この試験から除外した。動物は、各グループについて10匹の動物全てが区別可能となるように、「耳パンチ」法を用いて標識した。10匹のマウスの各グループは、5匹ずつのマウスを2つの別個のケージ内で飼育した;動物番号1〜5をケージAで飼育し、動物番号6〜10をケージBで飼育した。
【0075】
全ての投薬注射に先駆けて、各動物を計量し、それぞれの製剤を与えた。グループ1のマウスを、0.9%NaCluspの腹腔内への直接注射によって2日間連続で腹腔内処理し、1日休止し、9週間に亘り更に2日間連続で処理をした(1匹のマウスは終了点に至った)。グループ2のマウスは、9週間に亘ってペンタミジンを45mg/kgで週2回(月曜日および木曜日)の腹腔内処理をした。グループ3のマウスは、11週間に亘ってゲムシタビンを150mg/kgで週2回(火曜日−金曜日)、腹腔内処理をした。グループ4のマウスは、表6に記載されるように、12週間に亘り、まずペンタミジンを45mg/kgで週2回(月曜日および木曜日)、腹腔内投与され、およびゲムシタビンを150mg/kgで週2回(火曜日および金曜日)、腹腔内投与されて処理された。投与体積は、腹腔内処理されるマウスについて30mL/kgであった。
【表6】

【0076】
終わりに、グループ中の1匹のマウスの腫瘍体積が1500mmに達したときに、グループ全体を屠殺し、動物をイソフルランで麻酔し、頚椎脱臼により屠殺した。
【0077】
全ての処理は良好な忍容性を示した。結果を図3に示す。
【0078】
高度な統計学的信頼のために、ペンタミジン単独、ならびにペンタミジンおよびゲムシタビンの組み合わせの使用は、膵臓癌の治療において有益な効果を有することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする患者に、(1)ペンタミジンと、(2)オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはイリノテカンとを投与することを備える方法。
【請求項2】
(1)ペンタミジンと、(2)オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはイリノテカンとを含む組成物。
【請求項3】
ペンタミジンと、オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはイリノテカンとの量が相乗的である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌細胞が、扁平上皮癌細胞、リンパ節の大細胞癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、黒色腫細胞、膵臓癌細胞、白血病細胞、非小細胞肺癌細胞、CNS癌細胞、卵巣癌細胞、腎臓癌細胞または前立腺癌細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌細胞が膵臓癌細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペンタミジンおよびオキサリプラチンが投与される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ペンタミジンおよびゲムシタビンが投与される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ペンタミジンおよびイリノテカンが投与される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌細胞が結腸癌細胞である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が限局性または転移性の膵臓癌である請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が限局性または転移性の乳癌である請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が限局性または転移性の結腸癌である請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が限局性または転移性の結腸癌である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
患者の癌を治療する方法であって、前記患者に、(1)ペンタミジンと、(2)オキサリプラチン、ゲムシタビンまたはイリノテカンとを投与することを備え、それぞれの場合において任意に、フォリン酸、フルオロウラシル、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブまたはその組み合わせの更なる投与を含む方法。
【請求項15】
患者にペンタミジンを投与することを備える前記患者における膵臓癌を治療する方法。
【請求項16】
前記癌が限局性または転移性膵臓癌である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者における限局性または転移性の膵臓癌または卵巣癌を治療する方法であって、前記癌の標準的な化学療法との組み合わせにおいてペンタミジンを前記患者に投与することを備える方法。
【請求項18】
ペンタミジンを患者に投与することを備える、前記患者の卵巣癌を治療する方法。
【請求項19】
前記癌が限局性または転移性の卵巣癌である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者における黒色腫、白血病、非小細胞肺癌、CNS癌、腎臓癌または前立腺癌を治療する方法であって、前記患者にペンタミジンを投与することを備える方法。
【請求項21】
前記癌が前立腺癌である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする患者に、(1)ペンタミジンと、(2)タキソールまたは5−フルオロウラシルとを投与することを備え、前記癌細胞が、黒色腫細胞、膵臓癌細胞、白血病細胞、非小細胞肺癌細胞、CNS癌細胞、卵巣癌、腎臓癌細胞、または前立腺癌細胞である方法。
【請求項23】
第二次化学療法を受ける癌患者において癌を治療する方法であって、
前記患者に:
(1)ペンタミジン、および
(2)フォリン酸、オキサリプラチン、および5−フルオロウラシル
を投与することを備え、
前記癌患者が、フォリン酸、5−フルオロウラシルおよびイリノテカンを含むファーストライン化学療法を以前に受けている;または
前記患者に:
(1)ペンタミジン、および
(2)フォリン酸、5−フルオロウラシル、およびイリノテカン
を投与することを備え、
前記癌患者が、フォリン酸、オキサリプラチンおよび5−フルオロウラシルを含むファーストライン化学療法を以前に受けている
方法。
【請求項24】
前記癌が、限局性または転移性の膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、黒色腫、白血病、非小細胞肺癌、CNS癌、腎臓癌または前立腺癌である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が転移性結腸癌である請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ペンタミジンが、フォリン酸、オキサリプラチンおよび5−フルオロウラシルのサイクル、またはフォリン酸、5−フルオロウラシルおよびイリノテカンのサイクルを投与する前に前記癌患者に投与される請求項23、24または25に記載の方法。
【請求項27】
ペンタミジンが、フォリン酸、オキサリプラチンおよび5−フルオロウラシルのサイクル、またはフォリン酸、5−フルオロウラシルおよびイリノテカンのサイクルを投与する前の−2日目および/または−1日目に前記癌患者に投与される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ペンタミジンが、約4mg/kg/日〜約6mg/kg/日の用量で前記患者に投与される請求項23、24、25、26または27に記載の方法。
【請求項29】
ペンタミジンが、約4mg/kg/日〜約6mg/kg/日の用量で前記患者に静脈内投与される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第二次または第三次化学療法を受けた癌患者における、限局性または転移性の膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、黒色腫、白血病、非小細胞肺癌、CNS癌、腎臓癌または前立腺癌を治療する方法であって、治療に有効な量の標準的な化学療法剤を投与する前に前記患者に治療的に有効な量のペンタミジンを投与することを備える方法。
【請求項31】
ペンタミジンは、治療に有効な量の標準的な化学療法剤を投与する前の−2日目および/または−1日目に投与される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記癌が転移性の結腸癌である請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
ペンタミジンが、約4mg/kg/日〜約6mg/kg/日の用量で前記患者に投与される請求項30、31または32に記載の方法。
【請求項34】
ペンタミジンが、約4mg/kg/日〜約6mg/kg/日の用量で前記患者に静脈内投与される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌患者の全体的な生存率が、標準の第二次または第三次化学療法に関連する全体的な生存率と比較した場合に向上される請求項23から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
ペンタミジンがペンタミジンイセチオネートである請求項1から35の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−525371(P2012−525371A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507844(P2012−507844)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001012
【国際公開番号】WO2010/125462
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511265811)オンコザイム・ファーマ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ONCOZYME PHARMA INC.
【住所又は居所原語表記】555 Rene Levesque Boulevard West, 9th Floor, Montreal, Quebec, H2Z 1B1, CANADA
【Fターム(参考)】