説明

癌を治療するためのMEK阻害剤およびカペシタビン(CAPECITABINE)を含む併用化学療法

本発明は、公知の腫瘍崩壊物質の組合せを用いて癌を治療する方法に関する。詳しくは、本発明は、MEK阻害剤およびカペシタビンの組合せを用いて癌を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公知の腫瘍崩壊物質の組合せを用いて癌を治療する方法に関する。詳しくは、本発明は、MEK阻害剤およびカペシタビンの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
癌化学療法は、近年、劇的に進歩した。多くの腫瘍は、天然に存在する産物または合成物質のいずれかである化合物を用いて効果的に治療することができる。癌化学療法は、通常、単独で用いられる場合の個々の物質の毒性作用を軽減する手段として、そして或る場合には、その組合せがいずれかの物質を単独で用いる場合よりも高い治療効果があることから、物質の組合せの使用を伴うことがある。
【0003】
腫瘍において、Ras−Raf−MEK−ERK経路は、形質膜から核へのマイトジェンシグナル伝達のための唯一の最も重要な経路であると考えられる。活性化rafは、シグナリングキナーゼMEK1およびMEK2(MEK1/2)をリン酸化により活性化する。これらは、トレオニンおよびチロシンの両方のリン酸化によりERKファミリーキナーゼERK1およびERK2を活性化する両特異性キナーゼ(dual-specificity
kinase)である。ERK活性化は、リボソームS9キナーゼならびにc−Fos、c−Junおよびc−Mycのような転写因子のリン酸化および活性化に帰し、増殖に関与する多数の遺伝子のスイッチを入れることに帰する。erbBファミリー、PDGF、FGFおよびVEGFのような種々の増殖因子は、Ras−Raf−MEK−ERK経路を通じたシグナルを伝達する。加えて、ras癌原遺伝子における突然変異は、この経路の構造的活性化に帰すことがある。Ras遺伝子は、ヒトの全癌のおよそ30%で突然変異しており、ras突然変異の頻度は、結腸および膵臓癌で特に高い(それぞれ、50%および90%)。種々のマイトジェン因子から下流の位置にあることから、MEK1および2は、形質膜から核への増殖シグナルの伝達に中心的役割を有する。これは、それらの阻害が多数の異なるシグナリング経路を無効にするであろうことから、これらの蛋白質を癌治療の潜在的により良い標的にする。従って、MEK阻害剤は、それらに限定される訳ではないが、乳癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌および膵臓癌のような広い範囲の癌に対し有効であるかもしれない。
【0004】
CI−1040としても知られている2−(2−クロロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−N−シクロプロピルメトキシ−3,4−ジフルオロ−ベンズアミドは、両方のMEKアイソフォームMEK1およびMEK2の強力で高度な選択的阻害剤である。CI−1040によるMEK活性の阻害は、リン酸化ERK1およびERK2の水準の著しい減少に帰する。この減少は、培養およびマウスの両方においてG1ブロックをもたらし腫瘍細胞の増殖を阻害する。CI−1040は、結腸および膵臓由来のものを含む広いスペクトルの腫瘍タイプに対し抗癌活性を示してきた(セボルト−レオポルドJ.(Sebolt-Leopold
J.)等,MAPキナーゼ経路の遮断は、インビボでの結腸腫瘍の成長を抑制する(Blockade of the MAP kinase pathway
suppresses growth of colon tumors in vivo). Nature Med 1999; 5:810-16;およびセボルト−レオポルドJS,CI−1040の前臨床薬理学の概要(Summary
of the preclinical pharmacology of CI-1040).RR 700-00156,6月27日,2000)。
【0005】
CI−1040は、参照により本明細書に含めるものとするPCT公開番号WO99/01426に、CI−1040の製法、それを剤形へと処方する方法、ならびに乳、結腸、前立腺、皮膚および膵臓癌のような充実性腫瘍の長期経口治療のためのその使用法のその教示について開示されている。CI−1040は、やはり、敗血症性ショックの治療または予防における使用について米国特許第6,251,943号に開示されている。
【0006】
N−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミド(”化合物A”)は、MEK1/2の強力で高度な選択的阻害剤であり、ERK1およびERK2のリン酸化を著しく阻害する。化合物Aは、参照により本明細書に含めるものとするPCT公開番号WO02/06213に、その製法、剤形へと処方する方法、ならびに乳癌、結腸癌、前立腺癌、皮膚癌および膵臓癌のような充実性腫瘍の長期経口治療のための使用法の教示について開示されている。それは、その前身CI−1040よりも効力があり、代謝的により安定である。
【0007】
カペシタビンは、抗新生物活性を有するカルバミン酸フルオロピリミジンである。それは、5−フルオロウラシルに変換される5´−デオキシ−5−フルオロウリジン(5´−DFUR)の経口的に投与されるシステミックプロドラッグである。カペシタビンの化学名は、5´−デオキシ−5−フルオロ−N−[(ペンチルオキシ)カルボニル]−シチジンである。それは、ゼローダ(Xeloda)(商標)(Roche
Laboratories)として米国で市販されている。それは、転移性乳癌および結腸直腸腫瘍を有する患者の治療に適用される。それは、通常、各々21日周期中に14日間投与され、その後7日の休止期間が続く。カペシタビンは、米国特許第5,472,949号に開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、そのような治療を必要とする患者における癌を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量のMEK阻害剤および治療有効量のカペシタビンの組合せを患者に投与することを含む。
【0009】
本発明の組合せは同時に投与することができる、MEK阻害剤はカペシタビンの前に投与することができる、またはカペシタビンはMEK阻害剤の前に投与することができる。
【0010】
本発明の組合せまたは方法によれば、MEK阻害剤は、CI−1040またはN−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドであってもよい。
【0011】
加えて、本発明の方法は、CI−1040もしくはN−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドをカペシタビンの前に投与することができる、またはカペシタビンをCI−1040もしくはN−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドの前に投与することができることを提供するものである。
【0012】
本発明は、また、そのような治療を必要とする患者における癌を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量のカペシタビンを患者に投与し、続いて治療有効量のCI−1040を患者に投与することを含む。
【0013】
本発明により更に提供されるのは、そのような治療を必要とする患者における癌を治療する方法であり、この方法は、治療有効量のN−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドを患者に投与し、続いて治療有効量のカペシタビンを患者に投与する段階を含む。
【0014】
本発明の態様は、カペシタビン、CI−1040および薬学的に許容することのできる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、カペシタビン、N−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドおよび薬学的に許容することのできる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、一方の仕切られた部分に1用量のCI−1040または化合物Aを、および別の仕切られた部分に1用量のカペシタビンを含むキットである。例えば、本発明は、(a)各有効成分の別々の処方物、例えばCI−1040または化合物Aの錠剤またはカプセル剤形態、およびカペシタビンの錠剤形態を入れたブリスタパック;(c)ならびに併用投与のための指示書を入れた箱の中に共に詰めた各有効成分の別々の処方物を入れたキットを含む。
【0017】
本発明により治療される患者には、それらに限定される訳ではないが、ヒト、ウマ、イヌ、モルモット、またはマウスのようないずれの温血動物も含まれる。例えば、患者は、ヒトである。医術の当業者等は、癌に苦しめられ治療を必要としている個々の患者を容易に見分けることができる。本発明により治療される代表的癌としては、それらに限定される訳ではないが、脳癌、乳癌、非小細胞肺癌のような肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、結腸癌、頚部癌、急性白血病、胃癌ならびにカペシタビンおよび/またはMEK阻害剤例えばCI−1040および化合物Aを用いる治療に感受性のある他の癌が挙げられる。本発明の目的において用語”治療”は、ひとたび命名された症状が確立されているならば、癌のような命名された症状の治療、阻害、制御、予防もしくは防止、改善または除去を含む。
【0018】
CI−1040および化合物Aは、選択的MEK1およびMEK2阻害剤である。選択的MEK1およびMEK2阻害剤は、MKK3、ERK、PKC、Cdk2A、ホスホリラーゼキナーゼ、EGFおよびPDGF受容体キナーゼ、ならびにC−srcのような他の酵素を実質的に阻害することなくMEK1またはMEK2酵素を阻害する化合物である。通常、選択的MEK1またはMEK2阻害剤は、上記で名前を挙げた他の酵素の一つに対するそのIC50のそれの少なくとも50分の1(1/50)であるMEK1またはMEK2に対するIC50を有する。選択的阻害剤は、上記で名前を挙げた他の酵素の一つ以上に対するそのIC50のそれの少なくとも1/100、1/500、またはさらに1/1000、1/5000もしくは未満であるIC50を有しても良い。
【0019】
MEK阻害剤である化合物は、MEK阻害を測定する当業者に公知の測定法を用いることにより測定することができる。例えば、MEK阻害は、米国特許第5,525,625号、6欄、35行から始まる”酵素測定法(Enzyme Assays)”と題された測定法を用いて測定することができる。米国特許第5,525,625号の完全な開示を、参照により本明細書に含めるものとする。詳しくは、化合物が、米国特許第5,525,625号の6欄36行から7欄4行の”MAPキナーゼ経路の阻害剤のためのカスケード測定法(Cascade
Assay for Inhibitors of the MAP Kinase Pathway)”と題された測定法で活性を示す、および/または上述した特許の7欄4行から27行の”インビトロMEK測定法(In
Vitro MEK Assay)”と題された測定法で活性を示すならば、化合物はMEK阻害剤である。あるいは、MEK阻害は、その完全な開示物を参照により本明細書に含めるものとするWO02/06213A1に開示された測定法で測定することができる。
【0020】
本発明によるMEK阻害剤の例としては、以下のPCT公開番号:WO99/01426、WO99/01421、WO00/42002、WO00/42022、WO00/41994、WO00/42029、WO00/41505、WO00/42003、WO01/68619およびWO02/06213に開示されたMEK阻害剤が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0021】
CI−1040、化合物Aまたはカペシタビンの薬学的または治療有効量または用量は、本発明の組合せで腫瘍細胞の増殖または癌転移の進行を予防または阻害するのに十分な量を含むと理解することができる。用量および投与方式の治療上または薬理学的効果は、また、特定の腫瘍を体験している患者における寛解を誘導、強化、維持または延長する能力として特徴付けることができる。
【0022】
本発明の方法または組合せに用いられる化合物は、臨床的に普通に用いられる用法または用量で投与することができる。当業者等は、年齢、体重、全般的健康、投与される化合物、投与経路、治療を必要とする癌の性質および進行、ならびに他の医薬の存在のような要素を考慮に入れて、患者に投与する本発明の組合せに用いる各化合物の適切な治療上効果的な量を公知の方法に従って決定することができる。このような用量は、通常の様式、例えば体表面積に基づいて算定することができる。あるいは、効果的な量または治療有効量は、mg/kg体重として算定することができる。商業的に入手可能なカプセル剤、錠剤、または他の剤形(液剤およびフィルムコート錠のような)は、開示された方法により投与することができる。
【0023】
単一療法のためのカペシタビンは、通常、1日に約2500mg/mの用量で2週間経口的に投与され、その後1週間の休止期間が続く。製品は、150mgおよび500mg錠剤で商業的に供給される。錠剤は、治療期間の間1日に約1から約4回の割合で投与される。カペシタビンの毎日の用量は、本発明の組合せにおいて、例えば、1日に約1000mg/mから約3500mg/mにわたってもよい。
【0024】
単一療法のためのCI−1040は、通常、疾患状態の進行が観察されるまで投与することができ、例えば、CI−1040は、約2−4週間から患者の存命の間毎日投与することができる。CI−1040は、食物と共に又は無しに、1日1回(”qd”)約100mgから約1600mg、または1日2もしくは3回(それぞれ、”bid”または”tid”)約400から約800mgの用量で投与することができる。例えば、CI−1040は、食物と共に1日2回800mgで投与することができる。CI−1040は、代表的には、例えば1カプセルにつき5、25および200mgの量で有効成分を有するカプセル剤として経口的に投与される。担当医ならびに治療される特定の患者および症状により指示される場合、複数の治療期間が実施されてもよい。
【0025】
単一療法のための化合物Aは、通常、疾患状態の進行が観察されるまで投与することができ、例えば、化合物Aは、約2−4週間から患者の存命の間毎日投与することができる。化合物Aは、約0.2mg/mから約2.5mg/mの用量で投与することができる。例えば、化合物Aは、60kgの患者における1から3mgに等しい約0.6mg/mから約1.8mg/mの用量で投与することができる。化合物Aは、例えば1カプセルにつき0.25、1、5、および25mgの量で有効成分を有する硬ゼラチンカプセル剤のようなカプセル剤として経口的に投与することができる。担当医ならびに治療される特定の患者および症状により指示される場合、複数の治療期間が実施されてもよい。
【0026】
当業者等により決定される場合、ある場合には、前述の範囲の下限を下回る用量水準が非常に適切であってもよく、一方、別の場合には、尚もより大きい用量を用いてもよい。
【0027】
更に詳しくは、本発明の方法によれば、MEK阻害剤の効果的な用量水準は、カペシタビン無しに用いる場合、効果的な用量水準の約5%から約100%にわたってもよい。加えて、カペシタビンの効果的な用量水準は、MEK阻害剤無しに用いる場合、効果的な用量水準の約5%から約100%にわたってもよい。
【0028】
当業界で一般的に知られ行われている手法によれば、併用剤として用いる場合、カペシタビンおよびMEK阻害剤の用量水準は、最適な効果的用量水準を達成するよう調整することができる。
【0029】
本発明の方法の実施は、種々の投与方式を通じて成し遂げることができる。本発明の癌細胞または腫瘍を治療または阻害する一方法は、このような治療を必要とする患者への薬学的または治療有効量のMEK阻害剤、例えばCI−1040および化合物A、ならびにカペシタビンの同時期または同時投与を含む。両化合物の複合投与は、問題の受容者にとって医師により適切であると考えられる期間にわたり実施することができる。一治療方式としては、2から4週間の期間にわたる両化合物の投与を挙げることができる。癌細胞の所望の減少または縮小を達成するのに必要である場合、複合投与の反復を一連の投薬期間実施することができる。任意に、複合投与の連続を、通常の患者の休息および回復を可能にするよう例えば2から6週間の非治療期間により分断してもよい。
【0030】
本発明の方法には、また、特定の期間または治療方式の間、それを必要とする患者への薬学的または治療有効量のCI−1040または化合物Aの投与、続いて次の治療方式の薬学的または治療有効量のカペシタビンの患者への投与も含まれる。このような治療方式の一例には、14から28日間治療上または薬学的に効果的な量のCI−1040の患者への投与、続いて次の連結した7から14日の期間薬学的または治療有効量のカペシタビンの投与が含まれるであろう。カペシタビンの投与は、普通の患者の休息および回復を可能にするよう例えば2日から1週間の非治療期間により分断してもよい。
【0031】
本発明を実施する別の方法は、カペシタビン連続投与に続いてCI−1040または化合物A投与方式の連続投与を含む。このような治療方式の例には、普通の患者の休息および回復を可能にするよう2日から1週間の非治療期間をともなう7から14日間の薬学的または治療有効量のカペシタビンの初めの投与、続いて14から28日間の治療上または薬学的に効果的な量のCI−1040の投与が含まれるであろう。カペシタビン治療方式の後にCI−1040治療方式が続くこのタイプの反復的な配列は、必要に応じて医師により決定される任意の非治療期間と共に継続することができる。
【0032】
本発明の方法または組合せは、投与の前に処方することができる。これらの化合物は、別々に又は当業界で知られるような薬学的に許容することのできる担体と組み合わせてのいずれかで処方し、当業界で知られるような種々の剤形で投与することができる。本発明の医薬組成物の製造において、有効成分は、通常、担体と混合するか、または担体により希釈するか、または担体中に封入する。このような担体としては、固形希釈剤または賦形剤、医薬品添加物、滅菌水性媒体および種々の無毒の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。単回投与剤形または医薬組成物としては、錠剤、ゼラチンカプセル剤のようなカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、水性および非水性経口液剤および懸濁剤、口内錠(lozenges)、トローチ剤(troches)、ハードキャンディー剤、噴霧剤、クリーム剤、膏薬剤、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、パスタ剤、ローション剤、軟膏剤、注射用液剤、エリキシル剤、シロップ剤、ならびに個々の用量へと細分するのに適合した容器に詰められた非経口液剤が挙げられる。
【0033】
CI−1040および化合物AのようなMEK阻害剤は、経口または非経口経路による投与用に処方することができる。それらは、局所的に、例えば経皮的に、皮膚パッチ剤もしくはローション剤として、または坐剤として投与することもできる。MEK阻害剤およびカペシタビンの同時投与は、同じ(局所または全身のいずれかの注射による両方の有効成分)または異なる経路によってもよい。例えばCI−1040をカペシタビンと共に例えば静脈注射または輸液用液剤に処方することができるが、より代表的には、活性物質を、それらの通常の製剤に個々に処方し、個々に投与する。例えば、CI−1040およびカペシタビンを個々に処方し、例えば使用上の便宜のためにキットの中に共に詰めることができる。あるいは、活性物質は、単一処方物中に共に処方することができ、その場合、カペシタビンは、MEK阻害剤に対して約1から約1000重量部の範囲の濃度で存在し、そしてMEK阻害剤は、カペシタビンに対して約1000から約1重量部の濃度で存在する。通常、活性物質は、ほぼ等しい用量で、または保健規制機関(health regulatory agencies)により承認される限り異なるように投与される。
【0034】
皮下移植のような放出制御製剤を含め、種々の投与方法に合せて単回投与剤形を変えることができる。投与方法には、経口、経直腸、非経口(静脈、筋肉内および皮下)、大槽内、膣内、腹腔内、膀胱内、局所(滴剤、散剤、軟膏剤、ゲル剤、またはクリーム剤)、および吸入(口腔または鼻腔内噴霧)が含まれる。
【0035】
経口投与には、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、燐酸二カルシウムおよびグリシンのような種々の医薬品添加物を含有する錠剤が、デンプン(好ましくはトウモロコシ、バレイショまたはタピオカデンプン)、アルギン酸および特定の複合珪酸塩類のような種々の崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、白糖、ゼラチンおよびアラビアゴムのような造粒結合剤と共に用いられる。更に、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクのような滑沢剤は、錠剤化目的にはしばしば非常に有用である。同様の型の固形組成物を、ゼラチンカプセル剤中の賦形剤として用いることもでき、また、これに関連する好ましい材料としては、ラクトース即ち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール類が挙げられる。経口投与用に水性懸濁剤および/またはエリキシル剤を所望する場合、活性成分は、種々の甘味剤または着香剤、着色剤もしくは染料、ならびに、所望であれば、乳化剤および/または懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びそれらの種々の組み合わせのような希釈剤と組み合わせることができる。
【0036】
非経口処方物としては、薬学的に許容することのできる水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤、乳剤、およびその調製のための滅菌散剤が挙げられる。担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、植物油、およびオレイン酸エチルのような注射用有機酸エステル類が挙げられる。流動性は、レシチンのような被覆剤、表面活性剤の使用により、または適切な粒子サイズを維持することにより維持することができる。
【0037】
更に、本発明に従って用いる活性物質を局所的に投与することも可能であり、これは、標準製薬慣習に従いクリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、パスタ剤、パッチ剤、軟膏剤等により行うことができる。
【0038】
固形剤形のための担体としては、(a)賦形剤または増量剤、(b)結合剤、(c)湿潤剤、(d)崩壊剤、(e)溶解抑制剤、(f)吸収促進剤、(g)吸着剤、(h)滑沢剤、(i)緩衝化剤、および(j)噴射剤が挙げられる。
【0039】
医薬組成物は、また、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散化剤のような補助剤;パラベン類、クロロブタノール、フェノール、およびソルビン酸のような抗菌剤;糖または塩化ナトリウムのような等張化剤;モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を長引かせる物質;ならびに吸収徐放剤を含んでもよい。
【0040】
以下の詳細な実施例は、上記で一般的に説明した本発明の方法を更に確立する。これらの実施例は、具体的説明のためだけのものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
腫瘍モデル.
C26/クローン10マウス結腸癌(”C26/クローン10腫瘍”とも称する)を用いて、CI−1040をカペシタビンと組み合わせて与えた場合にもたらされる抗腫瘍活性を評価した。コルベット(Corbett)等により説明された方法を、腫瘍移植および腫瘍成長の測定(下記に説明される)に用いた[コルベットT.等”腫瘍モデルならびに充実性腫瘍活性物質の発見および二次評価(Tumor
models and the discovery and secondary evaluation of solid tumor active
agents),”Int. J. Pharmacognosy, 1995; 33 (増補):102-122;コルベットT.等,”P38マウス腫瘍は、もはや薬物発見モデルとして適切ではないのか?(Is
the P38 murine tumor no longer adequate as drug discovery model?)”Invest New
Drugs 1987; 5:3-20; コルベットTH等,”実験的癌治療における齧歯類動物腫瘍の使用:結果および推奨(The use of
rodent tumors in experimental cancer therapy: Conclusions and recommendations),”RFカールマン(RF
Kallman)(編), Rodent models in experimental chemotherapy, (パーガモン出版(Pergamon
Press), 1987), 233-247; コルベットT.、バレリオットF.(Valeriot F)等”薬物発見のための齧歯類動物充実性腫瘍の使用(Use
of rodent solid tumors for drug discovery)”BAテイチャー(BA Teicher)(編), Cancer
Drug Discovery, (ヒューマン出版社(Human Press Inc.), 1997) 75-99; コルベットTH等”化学療法評価マウスにおける移植可能な結腸癌の発生における腫瘍誘導関係、発癌物質構造に関する注記付き(Tumor
induction relationships in development of transplantable cancers of the colon
in mice of chemotherapy assays, with a note on carcinogen structure)”Cancer
Res. 1975; 35 (9):2434-2439;およびコルベットTH等”マウス結腸癌における化学療法物質の単一物質および併用の評価(Evaluation
of single agents and combinations of chemotherapeutic agents in mouse colon
carcinomas)”, Cancer, 1977; 40(5):2660-2690]。
【0042】
チャールズリバー研究所(Charles Rivers Laboratories)(ウィルミントン(Wilmington),MA)から得た雌性Balb/Cマウスを、腫瘍を維持するため及び抗腫瘍試験のために用いた。これらのマウスは、C26/クローン10腫瘍の同系宿主である。マウスは、食物および水を自由に与えられた。これらの研究におけるC26/クローン10腫瘍の平均の倍増時間は、3.6から4.5日に及んだ。試験動物は、0日に12ゲージのトロカール針を用い30から60mgの腫瘍断片を皮下的に移植された。腫瘍を、週に3回カリパスで測定した。腫瘍の重量を、以下の等式:
腫瘍重量(mg)=(axb)/2
{ここで、”a”は、ミリメートル(”mm”)での腫瘍の長さであり、そして”b”は、mmでの腫瘍の幅である}によりカリパス測定から算定した。
【0043】
腫瘍重量の中央値が220から260mgになった7日目、試験動物を対照群および治療群に無作為抽出し、化学療法を開始した。これらの腫瘍サイズは、C26/クローン10腫瘍の進行期を表す。
【0044】
抗腫瘍薬.
CI−1040を、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび0.2%Tween−80水溶液に懸濁し、0.5mLの薬物懸濁液中の種々の用量で経口的に投与した。カペシタビンを0.5%メチル−セルロース水溶液に懸濁し、0.5mLの薬物懸濁液中の種々の用量水準で経口的に投与した。
【0045】
用量および治療計画.
抗腫瘍薬CI−1040およびカペシタビンの用量水準および治療計画は、実験的充実性腫瘍を治療する前臨床試験に普通に用いられるものであった。これらの用量および計画は、ヒト用に相対成長学的基準で決めることができる。CI−1040を、1日3回(”tid”)連続14日間経口的に投与した。CI−1040の用量は、37.5、75、150および300mg/kg/回(112.5、225、450および900mg/kg/日)であった。コースとコースの間に2日の休みを入れて、2回の5日コースの間、1日1回(”qd”)カペシタビンを経口的に投与した。カペシタビンの用量は、500および750mg/kg/日であり、最も高い用量は最大許容量であった。これらの用量で単独で与えられるいずれの薬物も顕著な体重減少または中毒死を引き起こさなかった。全ての計画で、腫瘍が進行期である腫瘍移植の7日後に治療を開始した。
【0046】
抗腫瘍活性の測定.
抗腫瘍活性を評価するのに用いた最終段階は、以下のもの:完全および部分的腫瘍応答、腫瘍の成長遅延、ならびに研究の最後に腫瘍のないマウスの数であった。完全応答を腫瘍量の100%減少として分類し、部分的応答を腫瘍量の少なくとも50%減少として分類した。腫瘍量の減少に加えて、腫瘍成長遅延(上記で挙げたコルベット等により説明された方法により測定されるような)を用いて、完全には応答しなかった、または完全応答後に再成長した腫瘍についての抗腫瘍活性を定量した。腫瘍成長遅延は、T−C値として表され、ここで”T”および”C”は、治療群および対照群(それぞれ)の腫瘍が所定のサイズ750mg(”評価サイズ”)に達するのに要した日数の中央値である。腫瘍成長遅延値から、正味のlog10腫瘍細胞死滅を、次の通りに算定した:
正味のlog10腫瘍細胞死滅=[(T−C)−Rx]/3.32xTd
ここで、”Td”は、腫瘍量が倍になる日数であり、”Rx”は、治療の全日数である。
【0047】
Tdを、指数関数的成長の対照群腫瘍の対数線形プロットの最もふさわしい直線から算出した。治療後再成長している腫瘍のTdが治療していない対照マウスのそれとほぼ同じであることから、T−C値のlog10細胞死滅への変換は可能である。正味のlog10死滅値は、種々の期間の治療方式の効力データを標準化する。正の値は、腫瘍量の実際の減少が起こったことを示す。負の値は、治療の間に腫瘍が実際に成長した(おそらく、より緩慢ではあるが)ことを示す。腫瘍がない生存動物は、これらの計算から排除した。
【0048】
結果.
CI−1040およびカペシタビンを同時に投与した場合にもたらされた抗腫瘍活性を、表1に示す。7日目に開始し20日目に終了するこの研究において、CI−1040を、1日3回経口的に投与した。CI−1040の用量は、37.5から300mg/kg/回(112.5から900mg/kg/日)の範囲である。カペシタビンを、7日目から11日目、および14日目から18日目を通して1日1回経口的に与えた。カペシタビンの用量は、500および750mg/kg/日であった。表1に示すように、賦形剤投与対照群マウスは、治療中にそれらの初めの体重の10.5%を失った。C26/クローン10癌は、非常に悪液質の腫瘍であり、この量の体重減少は予想された。賦形剤投与対照群マウスの腫瘍は、通常の速度で成長し、非治療対照群マウスの腫瘍の成長と大差なかった。CI−1040のみを投与された全ての動物が、治療の全コースを生き残り、遅発性死亡はなかった。投与したCI−1040の用量範囲にわたり、これらのマウスは、それらの初めの体重の約5%を失ったが、それは、賦形剤投与対照群マウスにおいて見られたそれの約半分である。C26/クローン10結腸がんを有するマウスにおけるより少ない量の体重減少は、常にCI−1040治療において一貫して見られる。CI−1040単独投与は、低用量の3.8日から高用量の16.7日にわたる用量に依存した腫瘍成長遅延をもたらした。300mg/kg/回で、CI−1040は、完全腫瘍応答はもたらさず、20%の部分的腫瘍応答をもたらした。150mg/kg/回の用量では、10パーセントの完全腫瘍応答がみられたが、部分的腫瘍応答はみられなかった。より低いCI−1040用量では、完全腫瘍応答も部分的腫瘍応答もみられなかった。研究が終了した時点で、腫瘍のないマウスはいなかった。
【0049】
カペシタビンのみを受領した全ての動物は、治療の全コースを生き残り、遅発性死亡はなかった。CI−1040と同様に、両方の用量でカペシタビンのみで治療したマウスは、それらの当初の体重のおよそ5%を失った。両方の用量のカペシタビンは、およそ18日の同じ腫瘍成長遅延をもたらした。500mg/kgで、カペシタビンは、40%の完全腫瘍応答および10%の部分的腫瘍応答をもたらした。腫瘍が完全に応答したマウスの内30%が、研究が93日目に終了した時点でなおも腫瘍がなかった。最も高い用量のカペシタビンは、70%の完全腫瘍応答および10%の部分的腫瘍応答をもたらした。完全腫瘍応答があった全てのマウスが、研究が終了した時点で腫瘍がなかった。
【0050】
表1に示すように、許容できない体重減少、または許容できない数の死のため、CI−1040は、カペシタビン750mg/kgとともに150または300mg/kg/回で投与することができなかった。許容できない数の死故に、やはり、500mg/kgのカペシタビンと共にその最も高い用量のCI−1040を与えることができなかった。750mg/kgのカペシタビンと組み合わせた75mg/kg/回のCI−1040は、100%の完全腫瘍応答をもたらした。これらのマウスの60パーセントは、研究が終了した時点で腫瘍がなかった。
【表1】

【0051】
実施例2
下記の表2は、実施例1の手法に従い、CI−1040をカペシタビンの前に投与した時にもたらされた抗腫瘍効果を示す。CI−1040は、37.5、75、150および300mg/kg/回の用量で1日3回経口的に与えた。実施例1の結果と一致して、C26/クローン10マウス結腸癌を有する賦形剤投与対照群マウスは、それらの初めの体重の10%を失った。300mg/kg/回でCI−1040のみを用いて治療したマウスの群で1匹が死んだ。(このマウスは、19日目に死んでいるのが発見され、その初めの体重の22%を失っていた。)この死は、薬物が関係しているとは考えられないが、その原因は分からなかった。やはり実施例1の結果と一致して、賦形剤投与対照群マウスの腫瘍は通常の速度で成長し、非治療対照群マウスの腫瘍の成長と著しく異なることはなかった。この群の残りのマウスは、19日までに体重が5.3%増えた。他のCI−1040投与群における死は見られず、実施例1と一致し、CI−1040は、抗悪液質作用を有した。CI−1040の単独投与は、0.8から9.9日にわたる腫瘍成長遅延における用量に依存した増加をもたらした。300mg/kg/回で、CI−1040は、完全腫瘍応答はもたらさず、60%の部分的腫瘍応答をもたらした。CI−1040の他の用量では、完全腫瘍応答も部分的腫瘍応答も見られなかった。
【0052】
カペシタビンを単独投与した二つの群の各々で1匹が死んだ。高用量CI−1040群で見られた死のように、これらの死は、一般的にこれらの用量のカペシタビンが死をもたらさないことから、やはり異常であった。カペシタビンを単独投与した二つの群の死は、最後の投与の数日後に起き、それらの原因は分からなかった。カペシタビンは、10.4から19.1日にわたる腫瘍成長遅延における用量に依存した増加をもたらした。500mg/kg/日で、カペシタビンは、完全腫瘍応答はもたらさず、10%の部分的腫瘍応答をもたらした。最も高い用量のカペシタビンは、50%の完全腫瘍応答および20%の部分的腫瘍応答をもたらした。完全腫瘍応答を有するマウスの30パーセントは、41日目に実験が終了した時点でまだ腫瘍がなかった。
【0053】
CI−1040をカペシタビンの前に投与した場合、これらの2種の薬物の全ての用量の組合せが十分許容された。最も大きい体重減少は、賦形剤投与対照群で見られたものと差がなく、たいていの場合、この対照群の体重減少より深刻ではなかった。死は、CI−1040およびカペシタビンを投与したいずれの併用群においても全く見られなかった。併用群において死がないということは、単一の薬物群における死が薬物と関係がないという見解を支持する。CI−1040を低用量のカペシタビンと組み合わせた群においては、完全腫瘍応答も部分腫瘍応答もなかった。腫瘍成長遅延は、最も低用量の併用の1.2日から高用量の併用の17.5日までの範囲であった。最も高用量のCI−1040および最も高用量のカペシタビンで治療した群では、完全腫瘍応答はなく、10%の部分腫瘍応答があった。750mg/kg用量のカペシタビンを用いる他の併用群では、完全腫瘍応答も部分的腫瘍応答もなかった。高用量のカペシタビンを用いる併用群における腫瘍成長遅延は、低用量のカペシタビンを用いる併用群と同様であった。
【表2】

【0054】
実施例3
下記の表3は、実施例1の手法に従い、カペシタビンを用いる治療の後にCI−1040を用いる治療が続く場合にもたらされた抗腫瘍効果を示す。実施例1と一致して、賦形剤投与対照群において腫瘍によりもたらされた10.5%の体重減少があった。賦形剤投与対照群マウスの腫瘍は、通常の速度で成長し、非治療対照群マウスの腫瘍の成長と著しく異ならなかった。CI−1040は、全用量で十分許容された。マウスの体重の改善は、実施例1および2で見られたものほど良くなかった。体重減少は、5.3%から10.5%にわたった。CI−1040単独を与えられた群のいずれにおいても完全腫瘍応答はなかった。しかしながら、40%の部分腫瘍応答が、最も高い用量のCI−1040を投与した群で見られ、そして10%の応答が75および150mg/kg/回のCI−1040を投与した群で見られた。最も低用量のCI−1040で治療した群では、完全腫瘍応答も部分腫瘍応答もみられなかった。CI−1040は、1.9日から12.5日にわたる腫瘍成長遅延における用量に依存した増加をもたらした。
【0055】
カペシタビン単独で治療した二つの群において、死はなく、体重減少は、CI−1040単独で治療した群に見られたものと同様であった。500mg/kg用量のカペシタビンは、いずれの完全または部分的腫瘍応答ももたらさなかった。750mg/kgのカペシタビンを投与した群においては、完全腫瘍応答はなく、40%の部分的腫瘍応答があった。低用量および高用量のカペシタビンは、それぞれ13.4および14.6日の実質的に同じ腫瘍成長遅延をもたらした。
【0056】
表3は、カペシタビンを用いる治療の後にCI−1040を用いる治療が続く場合に観察された相乗効果を示す。マウスを500mg/kgのカペシタビンで初めに治療し、次いで37.5から300mg/kg/回の用量でCI−1040を用いて治療した場合、死はなかった。やはり、体重減少は、賦形剤投与対照群で見られたものと同様であった。最善の抗腫瘍活性が、500mg/kgのカペシタビンを用いる治療の後に150または300mg/kg/回のいずれかのCI−1040を用いる治療が続く場合に見られた。150mg/kg/回のCI−1040を受けた群において、40%の完全腫瘍応答および10%の部分腫瘍応答があった。この組み合わせによる腫瘍成長遅延は、合計より大きい26.6日であった。完全腫瘍応答のマウスの20パーセントは、56日目に実験が終了した時尚も腫瘍がなかった。500mg/kgのカペシタビンで治療した後に300mg/kg/回のCI−1040での治療が続く群において、60%の完全腫瘍応答および10%の部分腫瘍応答があった。腫瘍成長遅延は、やはり合計より大きい27.9日であった。10パーセントのマウスは、研究が終了した時腫瘍がなかった。より低用量のCI−1040を与えられた群では、カペシタビン500mg/kgに続いて37.5mg/kg/回のCI−1040を投与した際に、わずか10%の完全腫瘍応答が見られた。カペシタビン500mg/kgと、37.5または75mg/kg/回のCI−1040との併用による腫瘍成長遅延は、いずれかの薬物単独によるものより良かった。750mg/kgのカペシタビンと、150または300mg/kg/回のCI−1040とを与えられた群における許容性は、それほど良くなかった。これらの組合せでは、10%が死んだ。しかしながら、体重減少は、賦形剤対照群におけるものよりも少なかった。高用量のカペシタビンとの全ての組合せにおいて、腫瘍の縮小が見られた。これらの組合せにおいて、完全応答の割合は、20%から60%にわたり、実験が終了した時10%から20%のマウスは腫瘍がなかった。部分腫瘍応答の割合は、0%から40%にわたり、腫瘍成長遅延は19.2から35.6日に及んだ。これらの腫瘍成長遅延は、いずれかの薬物単独によりもたらされたものより大きかった。共に用いる場合のこれらの物質の能力は、抗腫瘍薬として相乗作用がある組合せを確立する。
【表3】

【0057】
実施例4
腫瘍モデル.
COLO−205ヒト結腸癌異種移植片を、雌性NCr−nu無胸腺マウスの皮下移植片として連続移植により維持した。同様の移植片を用いて化合物Aおよびカペシタビンの抗腫瘍作用を評価した。実施例1で説明した方法を、腫瘍移植および腫瘍成長の測定に用いた。実施例4、5、および6で説明される3種の実験を、それぞれ異なる組合せの治療方式を用いて実施した。全てのマウスは、治療開始時に≧17グラムの体重があった。平均の群体重は、3種の実験の中で及びまたがって十分釣り合っていた。実施例4、5および6の初めの治療時の平均群体重および関連の範囲は、それぞれ、21.1(20−22)、22.4(21−24)、および24.2(24−25)グラムであった。マウスは、食物および水を自由に供給された。試験動物は、0日に12ゲージのトロカール針を用い30から60mgの腫瘍断片を皮下的に移植された。腫瘍を、週に2回カリパスで測定した。腫瘍の重量を、以下の等式:
腫瘍重量(mg)=(axb)/2
{ここで、”a”および”b”は、それぞれmmでの腫瘍の長さおよび幅の寸法である}によりカリパス測定から算定した。
【0058】
実施例4、5、および6の初めの腫瘍量は、やはり3種の研究の中で及びまたがって十分釣り合っていた。3種の実験の初めの腫瘍量中央値および関連の範囲は、それぞれ、230(221−237)、221(216−270)、および221(216−270)mgであった。このように、治療は、進行腫瘍期で開始した。
【0059】
抗腫瘍薬.
化合物Aを、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび0.2%Tween−80水溶液に懸濁し、チューブによる強制栄養により0.5mLを経口的(p.o.)に投与した。カペシタビンを0.5%メチル−セルロース中に注射用に調製し、チューブによる強制栄養により投与した。
【0060】
抗腫瘍活性の測定.
抗腫瘍活性を評価するのに用いた指標は、以下のもの:完全および部分的腫瘍応答、腫瘍の成長遅延、ならびに研究の最後で腫瘍のないマウスの数であった。完全応答を腫瘍量の100%減少として分類し、部分的応答を腫瘍量の少なくとも50%減少として分類した。腫瘍量の減少に加えて、腫瘍成長遅延(上記で挙げたコルベット等により説明された方法により測定されるような)を用いて、完全には応答しなかった、または完全応答後に再成長した腫瘍についての抗腫瘍活性を定量した。腫瘍成長遅延は、T−C値として表され、ここで”T”および”C”は、治療群および対照群(それぞれ)の腫瘍が所定のサイズである750mg(”評価サイズ”)に達するのに要した日数の中央値である。腫瘍成長遅延値から、正味のlog10腫瘍細胞死滅を、次の通りに算定した:
正味のlog10腫瘍細胞死滅=[(T−C)−Rx]/3.32xTd
ここで、”Td”は、腫瘍量が倍になる日数であり、”Rx”は、治療の全日数である。
【0061】
Tdを、指数関数的成長(200から800mgの範囲)の対照群腫瘍の対数線形プロットの最もふさわしい直線から算出した。実施例4、5および6の対照群の平均Tdsは、それぞれ、8.8、9、および11.2日であった。個々の実験内で倍増時間における実質的変動を観察した。個々のマウスのTdsの範囲は、実施例4、5、および6でそれぞれ3.8−15.8、5.8−13.9、および5.4−20.1であった。治療後再成長している腫瘍のTdが治療していない対照マウスのそれとほぼ同じである場合のみ、T−C値のlog10細胞死滅への変換が成り立つ。正味のlog10死滅値は、種々の期間の治療方式の効力データおよび複数の実験またはモデル間の腫瘍成長速度における相違を標準化することにより、複数の実験プロトコールにまたがる及びモデルにまたがる効力の量的比較を可能にする。正の値は、前治療量と比較して治療の終点で腫瘍量の実際の減少が起こったことを示す。負の値は、治療の間に腫瘍が実際に成長した(おそらく、対照腫瘍より緩慢ではあるが)ことを示す。従って、負の正味死滅値は、必ずしも活性の完全な欠如を示唆するものではない。腫瘍がない生存動物は、正味の死滅の計算から排除した。
【0062】
対照の腫瘍成長は、全ての実験で正常の境界内であった。賦形剤を投与した及び投与しなかった動物は、おそらく疾患の進行および/または薬物服用に関連した外傷のため、治療中に0から9%の間の体重を失った。これらの研究の結果を、表4−6にまとめる。
【0063】
結果.
化合物Aをカペシタビンの前に投与した場合にもたらされた抗腫瘍活性を、表4に示す。化合物Aを、単一物質として腫瘍移植後16−29日にqdで3.13から25mg/kgの範囲の用量で与えた。25mg/kg水準は許容されず、12.5mg/kgが最大許容量(MTD)と考えられた。治療方式の初期に起こった体重減少は概ね限られており(<5%)、完全な回復は、代表的には、3.13から25mg/kgの用量での継続治療中に観察された。化合物Aは、この腫瘍モデルに対して活性であり、全ての許容量で>50%の完全な後退およびMTDで42日までの用量に依存した成長遅延をもたらした。正味の死滅算定は、>10%の腫瘍細胞が全ての許容量水準での治療を生き残ったことを示唆する。
【0064】
カペシタビンを、単一物質として腫瘍移植後16−29日にチューブによる強制栄養により500および650mg/kgの用量で与えた。どちらの用量水準も致死的ではないが、体重の19%減少が650mg/kg用量水準で観察された。650mg/kg用量水準は、この実験におけるMTDだと言明された。カペシタビンは、この腫瘍モデルに対して用量依存的に活性であり、腫瘍量のおよそ1−log減少を示唆する腫瘍後退および実質的腫瘍成長遅延をもたらした。
【0065】
この実験は、カペシタビンのコースの前に与えられるMEK阻害剤を用いる連続治療を調査した。従って、併用治療方式において、カペシタビンは30から43日目にチューブによる強制栄養により与えられ、一方、化合物Aは16から29日目に与えられた。25mg/kgの化合物Aを含む全ての併用治療方式が、毒性であった。全ての他の併用治療方式が、許容され(≦LD10および/または<20%体重減少)、従って、効力を評価された。化合物A単一物質の力の研究において認められた完全な後退の高い頻度故に、完全応答(”CR”)および部分的応答(”PR”)測定は、単一物質および併用療法間の有用な差別尺度を提供しなかった。しかしながら、腫瘍移植の188日後に腫瘍のない生存動物の頻度は、全ての併用治療方式のほうが、対応する単一物質治療方式で見られたものより一致して高かった。加えて、大抵の併用治療方式は、最善の単一物質治療方式によりもたらされたものよりも著しく長い腫瘍成長遅延をもたらした。6種の許容併用治療方式の内4種は、最適の単一物質療法より0.1から0.3logs良い正味の腫瘍細胞死滅値をもたらした。従って、化合物Aの投与の後にカペシタビンの投与が続く連続併用療法は、同等の毒性を有する最適な単一物質療法よりも僅かに活性であると考えられる。低用量群の分析は、これら2種の物質の活性がこのプロトコールに関して実質的に合計であることを示唆する。
【表4】

【0066】
実施例5
下記の表5は、実施例4の手法に従いカペシタビンでの治療の後に化合物Aでの治療が続いた場合にもたらされた抗腫瘍効果を示す。化合物Aを、単一物質として腫瘍移植後18−31日目に3.13から25mg/kgの範囲の用量で与えた。25mg/kg水準は許容されず、12.5mg/kgはMTDと考えられた。治療方式の初期に起こった体重減少は概ね限られており(0−5%)、完全な回復は、代表的には、3.13から12.5mg/kgの用量での継続治療中に観察された。化合物Aは、この腫瘍モデルに対して活性であり、全ての許容量で完全な後退および50日までの用量に依存した成長遅延をもたらした。正味の死滅算定は、>10%の腫瘍細胞が大抵の許容量水準での治療を生き残ったことを示唆する。この実験における活性は、実施例4のそれに匹敵し、用量応答にわたり、実施例6のそれより僅かに勝っていた。
【0067】
カペシタビンを、単一物質として腫瘍移植後18−31日目にチューブによる強制栄養により500および650mg/kgの用量で与えた。両方の用量水準が許容され、650mg/kgは、この実験におけるMTDだと言明された。カペシタビンは、やはり、用量依存様式で活性であり、腫瘍量のおよそ0.5log減少を示唆する腫瘍後退および実質的腫瘍成長遅延をもたらした。活性は、実験実施例4で観察されたそれより概ね低く、実施例6のそれに匹敵した。
【0068】
この実験は、MEK阻害剤のコースの前に与えられるカペシタビンを用いる連続療法を調査した。従って、併用治療方式において、カペシタビンは18−31日目にチューブによる強制栄養により与えられ、一方、化合物Aは32−45日目に与えられた。この実験の併用治療方式の多くが、毒性であった。650mg/kgのカペシタビンで、低用量の化合物Aのみが、併用において許容された。3.13および6.25mg/kg用量水準の化合物Aのみが、500mg/kgのカペシタビンとの併用で許容された。従って、3種の併用治療方式のみが、効力を評価することができた。これらの2種は、観察された最善の単一物質活性よりも良い1.5logs、0.2logの正味細胞死滅値をもたらした。腫瘍のない生存動物の頻度は、これらの併用治療方式のほうが、単一物質の各効力の実験のそれより高くなかった。低用量群の分析によると、合計の活性よりも少ないことが示唆された。従って、カペシタビンの投与の後に化合物Aの投与が続く連続併用は、最も活性な単一物質の最適な使用と比較して僅かな有益性を提供すると考えられる。
【表5】

【0069】
実施例6
下記の表6は、実施例4の手法に従い化合物Aおよびカペシタビンを同時に投与した場合にもたらされた抗腫瘍活性を示す。
【0070】
化合物Aを、単一物質として腫瘍移植後17−30日目に3.13から25mg/kgの範囲の用量で与えた。25mg/kg水準は許容されず、12.5mg/kgはMTDと考えられた。治療方式の初期に起こった体重減少は概ね限られており(4−8%)、完全な回復は、代表的には、3.13から12.5mg/kgの用量での継続療法中に観察された。化合物Aは、この腫瘍モデルに対してもう一度活性であり、全ての許容量で完全な後退および70日までの用量に依存した成長遅延をもたらした。正味の死滅算定は、<10%の腫瘍細胞がMTDでの治療を生き残ったことを示唆する。腫瘍量は、残りの用量水準で実質的に一定に保持された。この実験で、活性は、12.5mg/kg未満の用量水準で急速に低下すると考えられる。実際の腫瘍成長曲線の精査は、12.5mg/kg水準での腫瘍成長は治療後対照成長速度に戻ることができず、その代わり腫瘍がおよそ500mgに達した後横ばいになったことを示す。これは、実験の最終段階としての正味細胞死滅の使用を複雑にする。全体として、この実験における化合物Aの活性は、実施例4および5におけるそれと同等か又は幾分低かった。
【0071】
カペシタビンを、単一物質として腫瘍移植後17−30日目にチューブによる強制栄養により500および650mg/kgの用量で与えた。両方の用量水準が許容され、650mg/kgは、この実験におけるMTDだと言明された。カペシタビンは、この実験で活性であり、腫瘍量のおよそ0.5log減少を示唆する腫瘍後退および実質的腫瘍成長遅延をもたらした。用量応答は、この研究においては逆転しており、より高い活性が500mg/kg用量水準で見られた。全体として、カペシタビン活性は、実験実施例4のそれより概ね低く、実施例5のそれに匹敵した。
【0072】
この実験は、両方とも17−30日目に与えられるカペシタビンおよびPD325901を用いる同時療法を調査した。この実験の併用治療方式の多くが毒性であった。3種の併用治療方式のみが、効力を評価することができた。これらの1種、6.25mg/kgの化合物Aおよび650mg/kgのカペシタビンは、100%の完全な後退、1.9logsの正味細胞死滅値および129日目での40%の腫瘍のない生存動物をもたらした。これは、それらのMTDsでのどちらかの単一物質と比較して著しく卓越した活性である。他の併用治療方式は、最適の単一物質療法より劣っていた。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における癌を治療する方法であって、治療有効量のMEK阻害剤および治療有効量のカペシタビン(capecitabine)の組合せを患者に投与することを含む前記方法。
【請求項2】
MEK阻害剤およびカペシタビンが同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MEK阻害剤がカペシタビンの前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カペシタビンがMEK阻害剤の前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
MEK阻害剤がCI−1040である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
治療を必要とする患者における癌を治療する方法であって、治療有効量のカペシタビンを患者に投与し、続いて治療有効量のCI−1040を患者に投与することを含む前記方法。
【請求項7】
MEK阻害剤が、N−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドである、請求項1、2、または4の方法。
【請求項8】
治療を必要とする患者における癌を治療する方法であって、治療有効量のN−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドを患者に投与し、続いて治療有効量のカペシタビンを患者に投与するステップを含む前記方法。
【請求項9】
癌が、脳癌、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、結腸癌、頚部癌、急性白血病、胃癌、又はそれらの組合せである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カペシタビン、CI−1040および薬学的に許容することのできる担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
カペシタビン、N−[(R)−2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドおよび薬学的に許容することのできる担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2006−508974(P2006−508974A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552970(P2004−552970)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004936
【国際公開番号】WO2004/045617
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(391011308)ワーナー−ランバート・カンパニー、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (37)
【氏名又は名称原語表記】WARNER−LAMBERT COMPANYLLC
【Fターム(参考)】