説明

癌治療の副作用予防・軽減剤

【課題】 癌治療の副作用予防・軽減剤などの提供。
【解決手段】
ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩は、癌治療の副作用予防・軽減剤などとして有用であり、配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、癌治療の副作用予防・軽減剤のスクリーニングに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療の副作用予防・軽減剤に関する。詳しくは、癌治療の副作用、例えば脱毛症、骨髄抑制、体重抑制などの予防・軽減剤、および該予防・軽減剤のスクリーニングなどに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療には、抗癌剤が単独で、または外科的療法、放射線療法と組み合わせて広く用いられている。抗癌剤として、アルキル化剤(例、シクロフォスファミド、ブスルファン、メルファランなど)、代謝拮抗剤(例、シタラビン、6−メルカプトプリン、メソトレキサート、5−フルオロウラシルなど)、抗癌性抗生物質(例、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来抗癌剤(例、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、エトポシドなど)、カンプトテシン系抗癌剤(例、イリノテカン、ノギテカンなど)、酵素製剤(例、L−アスパラギナーゼなど)、ホルモン製剤(例、プレドニゾロン、デキサメサゾン)、シスプラチン、カルボプラチン、トランスレチノイン酸、インターフェロンα、イマチニブなどが臨床で使用されている。しかしながら、抗癌剤は癌細胞に対する効果が強いほど、正常細胞または生体に対する副作用が強いため、充分な効果が上げられていない。また、放射線療法においても脱毛、呼吸器障害などの副作用が知られている。
抗癌剤等による脱毛に対して有効なペプチド(例、formyl-Met-Leu-Trpなど)を含有する抗脱毛症剤が特開2002−80494号公報などに報告されている(特許文献1)。
humaninペプチド、ホルミル化humaninペプチド(N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド)(WO 03/106683)、humanin類似ペプチド(WO 02/103018)は、G蛋白質共役型受容体であるFPRL1、FPRL2を活性化し、該ペプチドおよびFPRL1アゴニストには、例えば神経変性疾患、脳機能障害、癌、免疫疾患、感染症、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患などの予防・治療作用が、該ペプチドおよびFPRL2アゴニストには、例えば喘息、アレルギー疾患、炎症、炎症性眼疾患、アジソン病(Addison’s disease)、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリスマトーデス、乾せん、リウマチ、中枢神経障害、神経変性疾患、髄膜炎、糖尿病、関節炎、毒血症、炎症性腸疾患、炎症性肺疾患、悪液質、動脈硬化症、ウイルス感染、心疾患、肝炎、移植後の過剰免疫反応、透析低血圧、汎発性血管内凝固症候群などの予防・治療作用があることが報告されている(特許文献2 WO 03/106683号公報、特許文献3 WO 2004/008141号公報)。
【特許文献1】特開2002-80494号公報
【特許文献2】WO 03/106683号公報
【特許文献3】WO 2004/008141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
新規な作用機序による癌治療の副作用を予防または軽減する薬剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、このような現状に鑑み、鋭意検討した結果、ホルミル化ヒトhumaninペプチドが、抗癌剤によって引き起こされる脱毛を抑制することを見出し、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
〔1〕 ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤、
〔2〕 N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩を含有してなる上記〔1〕記載の剤、
〔3〕 N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはその塩を含有してなる上記〔1〕記載の剤、
〔4〕 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列である上記〔1〕記載の剤、
〔5〕 ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤、
〔6〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤、
〔6a〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩のアゴニストを含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤、
〔7〕 ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤、
〔8〕 副作用が、脱毛症、骨髄抑制または体重抑制である上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔8a〕 副作用が、脱毛症、骨髄抑制、体重抑制、悪心、嘔吐、下痢、肝障害、神経障害、頭痛、不妊症またはアレルギーである上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔9〕 副作用が、脱毛症である上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔10〕 副作用が、アポトーシスの異常またはDNA合成阻害が関与する作用である上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔11〕 毛根細胞の保護剤である上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔12〕 癌治療が、抗癌剤投与および(または)放射線照射である上記〔1〕および〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の剤、
〔12a〕 抗癌剤が、エトポシドである上記〔12〕記載の剤、
〔13〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング方法、
〔14〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング用キット、
〔15〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング方法、
〔16〕 配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング用キット、
〔16a〕 上記〔13〕記載のスクリーニング方法、上記〔14〕記載のスクリーニング用キット、上記〔15〕記載のスクリーニング方法、または上記〔16〕記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる癌治療の副作用予防・軽減用医薬、
〔17〕 哺乳動物に対して、(i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、(ii)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iv)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する化合物またはその塩、または(v)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、癌治療の副作用予防・軽減法、
〔18〕 (i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する、(ii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する、または(iv)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進することを特徴とする、癌治療の副作用予防・軽減法、
〔19〕 癌治療の副作用予防・軽減剤を製造するための(i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、(ii)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iv)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する化合物またはその塩、または(v)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩の使用、
〔19a〕 (i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、(ii)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iv)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する化合物またはその塩、または(v)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物を含有してなる脱毛症の予防・治療剤などに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリペプチド(ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩)および受容体(配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質)などは、例えば、癌治療の副作用(例、脱毛症、骨髄抑制、体重減少、嘔吐、頭痛など)予防・軽減剤などのスクリーニングに有用である。
本発明のポリペプチドおよび受容体、本発明のポリペプチドまたは受容体の機能・活性を促進する化合物またはその塩、本発明の受容体アゴニストは、優れた癌治療の副作用予防・軽減作用を有し、低毒性で安全な、例えば、癌治療の副作用(例、脱毛症、骨髄抑制、体重減少、嘔吐、頭痛など)予防・軽減剤などとして有用である。さらには、毛根細胞の保護剤としても用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドと称する場合がある)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、網膜細胞、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、毛根細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、血小板)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、網膜、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL、M1、CTLL-2、HT-2、WEHI-3、HL-60、JOSK-1、K562、ML-1、MOLT-3、MOLT-4、MOLT-10、CCRF-CEM、TALL-1、Jurkat、CCRT-HSB-2、KE-37、SKW-3、HUT-78、HUT-102、H9、U937、THP-1、HEL、JK-1、CMK、KO-812、MEG-01など)に由来するポリペプチドであってもよく、合成ポリペプチドであってもよい。
【0008】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、(i) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜10個程度、好ましくは1〜6個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜10個程度、好ましくは1〜6個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜10個程度、好ましくは1〜6個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、
(iv) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜10個程度、好ましくは1〜6個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(v) 上記(i)〜(iv)を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
【0009】
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、前記の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、本発明のポリペプチドの有する活性(例、受容体との結合活性または細胞刺激活性、癌治療の副作用予防・軽減作用、細胞死抑制作用、細胞生存維持作用、神経変性疾患、癌、免疫疾患、感染症、消化管疾患、循環器疾患または内分泌疾患などの予防・治療作用など)などがあげられる。実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。
受容体との結合活性または細胞刺激活性などの測定は、公知の方法に準じて行う。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列の具体例としては、例えば、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7で表されるアミノ酸配列などがあげられる。
【0010】
本発明のポリペプチドの部分ペプチドとしては、本発明のポリペプチドの部分ペプチドであれば、いかなるものであってもよく、例えば、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性(「実質的に同質の活性」は上記と同意義を示す)ものなどが好ましく用いられる。好ましくは配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列中の連続する6〜20個程度、好ましくは6〜15個程度、より好ましくは6〜10個程度のアミノ酸配列からなる部分ペプチドなどが用いられる。
上記部分ペプチドとして具体的には、例えば、
(i) 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7で表されるアミノ酸配列中の6〜20個程度、好ましくは6〜15個程度、より好ましくは6〜10個程度のアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii) 該アミノ酸配列中の1または2個以上(例、1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii) 該アミノ酸配列に1または2個以上(例、1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv) 該アミノ酸配列中の1または2個以上(例、1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(v) それらの欠失・付加・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなる部分ペプチドなどがあげられる。配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7で表されるアミノ酸配列中のN末端から数えて6〜20個程度、好ましくは6〜15個程度、より好ましくは6〜10個程度のアミノ酸配列からなるペプチドなどが好ましく用いられる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、特に限定されない。
具体的には、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:6で表されるアミノ酸配列の第19番目〜24番目、第5番目〜24番目、第1番目〜20番目、第5番目〜20番目または第5番目〜21番目のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号:4で表されるアミノ酸配列の第19〜24番目のアミノ酸配列からなるペプチドなどが挙げられる。
【0011】
また、本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドには、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。本発明のポリペプチドは、それぞれ単量体の他に、2量体、3量体、4量体などとして存在していてもよく、具体的には、本発明のポリペプチド同士で2量体を形成する場合、本発明のポリペプチドの部分ペプチド同士で2量体を形成する場合、本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの部分ペプチドとで2量体を形成する場合などが挙げられる。
さらに、本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチド(以下、まとめて本発明のポリペプチドと略記する)には、おのおののN末端またはC末端などにエピトープ(抗体認識部位)となりうる任意の外来ペプチド配列(例えば、FLAG、Hisタグ、HAタグ、HSVタグなど)を有しているものも含まれる。
本発明のポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチル等のC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチル等のC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチル等のフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチル等のα−ナフチル−C1-2アルキル基等のC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基等が用いられる。
本発明のポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本願明細書における本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステル等が用いられる。
さらに、本発明のポリペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等のC1-6アルカノイル等のC1-6アシル基等)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等のC1-6アルカノイル基等のC1-6アシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ポリペプチド等の複合ポリペプチド等も含まれる。
本発明のポリペプチドとしては、N末端のアミノ酸残基のアミノ基がホルミル化されているものが好ましく、特にN末端にメチオニン残基を有し、そのN末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されているものが好ましい。
【0012】
本発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、ホルミル化されていてもよい配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ホルミル化されていてもよい配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどがあげられる。
さらに好ましくは、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどがあげられる。
【0013】
本発明のポリペプチドに対する受容体としては、種々の受容体のうち、本発明のポリペプチドと結合活性を有し、本発明のポリペプチドにより該受容体発現細胞の細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成/抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性などを促進する活性等)が観察されるものなどがあげられる。例えば、配列番号:8で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質などがあげられる。
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質(以下、これらを本発明の受容体と称する場合がある)は、ヒトや温血動物(例、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、網膜細胞、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、毛根細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、血小板)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、網膜、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL、M1、CTLL-2、HT-2、WEHI-3、HL-60、JOSK-1、K562、ML-1、MOLT-3、MOLT-4、MOLT-10、CCRF-CEM、TALL-1、Jurkat、CCRT-HSB-2、KE-37、SKW-3、HUT-78、HUT-102、H9、U937、THP-1、HEL、JK-1、CMK、KO-812、MEG-01など)に由来する蛋白質であってもよく、合成蛋白質であってもよい。
【0014】
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:8で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、本発明のポリペプチドとの結合活性などがあげられる。実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、(i) 配列番号:8で表されるアミノ酸配列中の例えば1〜100個(好ましくは1〜50個、好ましくは1〜10個、好ましくは1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii) 配列番号:8で表されるアミノ酸配列に例えば1〜100個(好ましくは1〜50個、好ましくは1〜10個、好ましくは1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii) 配列番号:8で表されるアミノ酸配列に例えば1〜100個(好ましくは1〜50個、好ましくは1〜10個、好ましくは1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv) 配列番号:8で表されるアミノ酸配列中の例えば1〜100個(好ましくは1〜50個、好ましくは1〜10個、好ましくは1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(v) 上記(i)〜(iv)を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
本発明の受容体の具体例としては、例えば、配列番号:8で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質、配列番号:10で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質、配列番号:12で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質、配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質などが用いられる。
本発明の受容体の部分ペプチド(以下、本発明の部分ペプチドと称する場合がある)としては、医薬等のスクリーニング方法に用いることのできる部分ペプチドであれば、いかなるものであってもよいが、好ましくは、本発明のポリペプチドに対する結合能を有する部分ペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含有する部分ペプチド等が用いられる。本発明の受容体の構成アミノ酸配列のうち20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。(i)上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、(ii)上記アミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または(iii)上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【0015】
本発明の受容体またはその部分ペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明の受容体またはその部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の受容体またはその部分ペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、または糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
【0016】
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドは、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から公知のポリペプチドの精製方法によって製造することもできるし、後述するポリペプチドをコードするDNAで形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。例えば、WO 02/103018号公報、WO 03/106683号公報、WO 2004/008141号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0017】
本発明のポリペプチド、受容体、その部分ペプチド、もしくはそれらの塩の合成には、通常市販のポリペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチド、受容体、部分ペプチドを取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ポリペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ポリペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はポリペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0018】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
【0019】
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
【0020】
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
【0021】
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(ポリペプチド)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたポリペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両ポリペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドのアミド体と同様にして、所望のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドのエステル体を得ることができる。
【0022】
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドは、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは受容体の部分ペプチドについては、受容体を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(a)〜(e)に記載された方法があげられる。
(a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(b)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
(e)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0023】
本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明のポリペプチド、受容体またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。なかでもDNAが好ましい。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotal RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(i)配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNA、または(ii)配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNAで表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:1で表されるアミノ酸を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するポリペプチドをコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:16で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:16で表わされる塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:16で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:17で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0024】
本発明の受容体をコードするDNAとしては、例えば、(i)配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNA、または(ii)配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNAで表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:8で表されるアミノ酸を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:9で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:9で表わされる塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:9で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:10で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:11で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:12で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:13で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:15で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0025】
本発明の受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明の受容体の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明の受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:9で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:9で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:8で表されるアミノ酸を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:9で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0026】
本発明の受容体またはその部分ペプチドをコードするDNAは、公知の方法で標識化されていてもよい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素(例、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなど〕、酵素(例、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン、ランタニド元素などが用いられる。好ましくは放射性同位元素が用いられる。
本発明の受容体またはその部分ペプチド(以下、本発明の受容体と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明の受容体の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて公知のPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明の受容体の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0027】
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0028】
本発明の受容体の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明の受容体をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどがあげられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のポリペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
【0029】
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Researc),9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0030】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、In Vivo, 13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182-187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0031】
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール263-267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、本発明の受容体をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Journal of Experiments in Molecular Genetics,431-433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
【0032】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外などに本発明の受容体を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明の受容体を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
【0033】
本発明の受容体を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび(または)凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中に受容体が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる受容体の精製は、公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる受容体が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する受容体を、精製前または精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0034】
本発明のポリペプチドまたは受容体に対する抗体(以下、単に本発明の抗体と称する場合がある)は、本発明のポリペプチドまたは受容体を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のポリペプチドまたは受容体に対する抗体は、本発明のポリペプチドまたは受容体を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0035】
以下に、(a)本発明のポリペプチド(以下、その部分ペプチドも含む)、(b)本発明の受容体(以下、その部分ペプチドも含む)、(c)本発明のポリペプチドまたは本発明の受容体をコードするDNA(以下、本発明のDNAと省略することもある)などの用途を説明する。
(1)癌治療の副作用予防・低減剤
本発明のポリペプチドは、本発明の受容体発現細胞の細胞刺激活性を有し、癌治療の副作用予防・軽減作用(例、癌治療による脱毛症の予防・治療作用など)、脱毛症の予防・治療作用などを有する。
本発明のポリペプチドまたは本発明のDNAに異常があったり、欠損している場合、または本発明の受容体または該受容体をコードするDNAに異常があったり、欠損している場合には、例えば、早期脱毛などとなる可能性が高い。
従って、本発明のポリペプチドおよび本発明のDNAは、例えば、安全な癌治療(例、抗癌剤投与、放射線療法など)の副作用予防・軽減剤などとして、好ましくは脱毛症の予防・治療剤などとして使用することができる。癌治療の副作用としては、例えば、脱毛症、骨髄抑制、体重抑制、悪心、嘔吐、下痢、肝障害、神経障害、頭痛、不妊症、アレルギーなどが挙げられ、さらに、アポトーシスの異常、DNA合成阻害などが関与する作用(例、毛根細胞のアポトーシスなど)なども挙げられる。本発明のポリペプチドおよび本発明のDNAは、毛根細胞の保護剤としても用いられる。
【0036】
本発明のポリペプチド、受容体および本発明のDNAは、例えば、生体内において本発明のポリペプチド、受容体が減少あるいは欠損している患者がいる場合に、(イ)本発明のDNAを該患者に投与し、生体内で本発明のポリペプチドを発現させることによって、(ロ)細胞に本発明のDNAを挿入し、本発明のポリペプチドを発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のポリペプチドを該患者に投与することなどによって、該患者における本発明のポリペプチドの役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
本発明のDNAを上記の剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明のポリペプチドを上記の予防・治療剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のポリペプチドは、例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的(好ましくは皮下または静脈内投与に、または(必要に応じて糖衣を施した)錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に使用できる。例えば、本発明のポリペプチドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0037】
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
本発明のDNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
本発明のポリペプチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、脱毛症の治療の目的で本発明のポリペプチドを皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該ポリペプチドを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のポリペプチド、受容体または本発明のDNAは、例えばアルキル化剤(例、シクロフォスファミド、ブスルファン、メルファランなど)、代謝拮抗剤(例、シタラビン、6−メルカプトプリン、メソトレキサート、5−フルオロウラシルなど)、抗癌性抗生物質(例、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来抗癌剤(例、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、エトポシドなど)、酵素製剤(例、L-アスパラギナーゼなど)、ホルモン製剤(例、プレドニゾロン、デキサメサゾン)、シスプラチン、カルボプラチン、トランスレチノイン酸、インターフェロンα、イマチニブなどの抗癌剤投与と同時、投与前、投与後(好ましくは同時)のいずれの時期でも患者に投与してよく、放射線療法の前後のいずれの時期でも患者に投与してよい。
【0038】
(2)癌治療の副作用予防・軽減剤のスクリーニング
本発明のポリペプチドは、例えば、癌治療の副作用予防・軽減作用(例、癌治療による脱毛症の予防・治療作用など)、脱毛症の予防・治療作用などを有するため、本発明のポリペプチドおよび(または)本発明の受容体の活性を促進する化合物またはその塩は、例えば、安全な癌治療(例、抗癌剤投与、放射線療法など)の副作用予防・軽減剤などとして、好ましくは脱毛症の予防・治療剤などとして使用することができる。癌治療の副作用としては、例えば、脱毛症、骨髄抑制、体重抑制、悪心、嘔吐、下痢、肝障害、神経障害、頭痛、不妊症、アレルギーなどが挙げられ、さらに、アポトーシスの異常、DNA合成阻害などが関与する作用(例、毛根細胞のアポトーシスなど)なども挙げられる。本発明のポリペプチドおよび(または)本発明の受容体の活性を促進する化合物またはその塩は、毛根細胞の保護剤などとしても用いられる。
該スクリーニングは、本発明の受容体またはポリペプチド、または組換え型本発明の受容体の発現系を構築し、該発現系を用いた受容体結合アッセイ系や、細胞刺激活性アッセイ系を用いることによって、本発明の受容体および(または)ポリペプチドの活性を促進する化合物(例、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)またはその塩、本発明の受容体およびポリペプチドとの結合を促進する化合物またはその塩をスクリーニングすることができる。このような化合物には、本発明の受容体を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成/抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性などを促進する活性など)を有する化合物(本発明の受容体アゴニスト)などが含まれる。
【0039】
本発明の受容体またはポリペプチドの活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法の具体例としては、i)本発明の受容体(以下、その部分ペプチドも含む)に、試験化合物を接触させ、該本発明の受容体に対する該試験化合物の結合量、細胞刺激活性などを測定する方法、ii)試験化合物の存在下または非存在下、本発明の受容体に、本発明のポリペプチドを接触させ、該本発明の受容体に対する該ポリペプチドの結合量、細胞刺激活性などを測定する方法などが挙げられる。
【0040】
上記スクリーニング方法のさらなる具体例としては、
(a)標識された本発明のポリペプチドを、上記した本発明の受容体に接触させた場合と、標識された本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の受容体に接触させた場合における、標識された本発明のポリペプチドの本発明の受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)またはその塩のスクリーニング方法、
(b)標識された本発明のポリペプチドを、本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識された本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識された本発明のポリペプチドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)またはその塩のスクリーニング方法、
(c)標識された本発明のポリペプチドを、本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体に接触させた場合と、標識された本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のポリペプチドの受容体に接触させた場合における、標識された本発明のポリペプチドの本発明の受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)またはその塩のスクリーニング方法、
【0041】
(d)本発明の受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチド)を本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合と、本発明の受容体を活性化する化合物および試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合における、本発明の受容体を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成/抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)またはその塩のスクリーニング方法、および
(e)本発明の受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドなど)を本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体に接触させた場合と、本発明の受容体を活性化する化合物および試験化合物を、本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体に接触させた場合における、本発明の受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成/抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)またはその塩のスクリーニング方法、
(f)試験化合物を、本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体に接触させ、本発明の受容体を介する細胞刺激活性を測定することを特徴とする本発明の受容体の活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法などである。
標識された本発明のポリペプチドの好ましい具体例は、〔125I〕でそれぞれ標識された配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0042】
上記スクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明の受容体としては、本発明のポリペプチドをリガンドとして認識するものであれば何れのものであってもよいが、ヒトや温血動物の臓器の膜画分などが好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させた本発明の受容体などが適している。
本発明の受容体を製造するには、前述の製造方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、本発明の受容体を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
本発明の受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行うことができる。
本発明の受容体を含有する細胞としては、本発明の受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。また、本発明の受容体を発現した宿主細胞は、前述の本発明のポリペプチドを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体の製造方法と同様の方法などがあげられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した本発明の受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
該本発明の受容体を含有する細胞や膜画分中の本発明の受容体の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0043】
本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(好ましくは、本発明の受容体またはポリペプチドの活性を促進する化合物)をスクリーニングする前記の(a)〜(c)を実施するためには、適当な本発明の受容体画分と、標識された本発明のポリペプチドなどが用いられる。本発明の受容体画分としては、天然型の本発明の受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型本発明の受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。標識されたポリペプチドとしては、例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたポリペプチドなどを利用することができる。このうち好ましくは、〔125I〕で標識されたポリペプチドである。
具体的には、本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、まず本発明の受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することにより受容体標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのポリペプチドと受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween-80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによる本発明の受容体や本発明のポリペプチドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E-64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該受容体溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の標識された本発明のポリペプチドを添加し、同時に10-10〜10-7Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のポリペプチドを加えた反応チューブも用意する。反応は0〜50℃、望ましくは4〜37℃で20分〜24時間、望ましくは30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0-NSB)を100%とした時、特異的結合量(B-NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0044】
本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(好ましくは、本発明の受容体またはポリペプチドの活性を促進する化合物)をスクリーニングする前記の(d)〜(e)の方法を実施するためには、本発明の受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成/抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、本発明の受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当な本発明の受容体を発現した細胞が必要である。本発明の受容体を発現した細胞としては、前述の本発明の受容体発現細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられる。
【0045】
本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物(好ましくは、本発明の受容体またはポリペプチドの活性を促進する化合物)またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明の受容体またはその塩、本発明の受容体の部分ペプチドまたはその塩、本発明の受容体を含有する細胞、あるいは本発明の受容体を含有する細胞の膜画分、および本発明のポリペプチドを含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(a)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05% ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(b)本発明の受容体標品
本発明の受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5% CO2、95% airで2日間培養したもの。
(c)標識リガンド
3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識された本発明のポリペプチドを適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃または-20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(d)リガンド標準液
本発明のポリペプチドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、-20℃で保存する。
【0046】
2.測定法
(a)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明の受容体を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(b)10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識された本発明のペプチドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10-3Mの本発明のポリペプチドを5μl加えておく。
(c)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識された本発明のポリペプチドを0.2N NaOH-1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(d)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
【0047】
上記スクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合を変化させる(結合を阻害あるいは促進する)化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)であり、具体的には本発明の受容体を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆる本発明の受容体アゴニスト)、あるいは該刺激活性を有しない化合物(いわゆる本発明の受容体アンタゴニスト)である。該化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記本発明の受容体アゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)または(ii)に従えばよい。
(i)前記(a)〜(c)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のポリペプチドと本発明の受容体との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明の受容体を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の受容体アゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩は本発明の受容体アンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞に接触させ、上記本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の受容体アゴニストである。
(b) 本発明の受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドまたは本発明の受容体アゴニストなど)を本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合と、本発明の受容体を活性化する化合物および試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合における、本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明の受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩は本発明の受容体アンタゴニストである。
上記本発明の受容体アゴニストは、本発明の受容体に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のポリペプチドと同様に、安全な癌治療(例、抗癌剤投与、放射線療法など)の副作用予防・軽減剤などとして、好ましくは脱毛症の予防・治療剤などとして使用することができる。癌治療の副作用としては、例えば、脱毛症、骨髄抑制、体重抑制、悪心、嘔吐、下痢、肝障害、神経障害、頭痛、不妊症、アレルギーなどが挙げられ、さらに、アポトーシスの異常、DNA合成阻害などが関与する作用(例、毛根細胞のアポトーシスなど)なども挙げられる。本発明の受容体アゴニストは、毛根細胞の保護剤としても用いられる。
【0048】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、本発明の受容体またはポリペプチドの活性または機能を促進する化合物である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明のポリペプチドを含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、脱毛症の治療の目的で本発明の受容体の活性を促進する化合物を皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の受容体またはポリペプチドの活性を促進する化合物またはその塩(例えば、本発明の受容体アゴニストなど)は、例えばアルキル化剤(例、シクロフォスファミド、ブスルファン、メルファランなど)、代謝拮抗剤(例、シタラビン、6−メルカプトプリン、メソトレキサート、5−フルオロウラシルなど)、抗癌性抗生物質(例、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来抗癌剤(例、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、エトポシドなど)、酵素製剤(例、L-アスパラギナーゼなど)、ホルモン製剤(例、プレドニゾロン、デキサメサゾン)、シスプラチン、カルボプラチン、トランスレチノイン酸、インターフェロンα、イマチニブなどの抗癌剤投与と同時、投与前、投与後(好ましくは同時)のいずれの時期でも患者に投与してよく、放射線療法の前後のいずれの時期でも患者に投与してよい。
【0049】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BSA :ウシ血清アルブミン
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :スレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リジン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
【0050】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトhumanin(1-24)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
[Gly14]-ヒトhumanin(1-24)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトhumanin(1-21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
humanin類似ペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ラットhumanin(1-38)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ラットhumanin(1-24)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ラットhumanin(1-21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒトFPRL1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
ヒトFPRL1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
ラットFPRL1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:11〕
ラットFPRL1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
マウスFPRL2(FPRL1)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:13〕
マウスFPRL2(FPRL1)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトFPRL2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトFPRL2をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
ヒトhumanin(1-24)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
humanin類似ペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
【0051】
以下に実施例および製剤例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、ホルミル化humaninと略記)は、WO 03/106683号公報の実施例2記載の方法に準じて製造した。
実験動物として同じ母親から生まれた10日齢のSDラットを12匹用いた。
実験動物群には母親を1匹つけ、自由に哺乳させた。母親には日本クレア製の固形食CE2および飲水を自由に摂取させた。エトポシド(日本化薬製 ラステット:抗がん剤)の投与は、1日1回、午後2時より3時の間に行った。生後10日齢のSDラットを4群(各群n=3)に分け、生理食塩水(大塚製薬)に完全に溶解したホルミル化humaninを1、3、および10 mg/kg、コントロールとして生理食塩水を10 mL/kgの用量で腹腔内投与した。次に、生後11日齢から3日間連続して、エトポシド、生理食塩水に溶解したホルミル化humaninおよび生理食塩水を混和し、エトポシド 1.5 mg/kg、ホルミル化humanin 1、3、および10 mg/kgとなるよう(組み合わせは表1に記載)に腹腔内投与を行った。上記4群の投与群について、生後20日齢に、肉眼的観察により脱毛度を判定した。脱毛の判定基準は下記の基準に従って行った。試験結果を表1に示す。

脱毛度判定基準
スコア
0:0%
1:0〜20%脱毛
2:21〜40%脱毛
3:41〜60%脱毛
4:61〜80%脱毛
5:81〜100%脱毛

【表1】

上記の結果より、fHNは用量依存的にエトポシドによる脱毛の抑制作用を有することが明らかとなった。
【0052】
製剤例1
(1)ホルミル化humanin 5.0mg
(2)食塩 20.0mg
(3)蒸留水 全量2mlとする
ホルミル化humanin 5.0mgおよび食塩20.0mgを蒸留水に溶解させ、水を加えて全量2.0mlとする。溶液をろ過し、無菌条件下に2mlのアンプルに充填する。アンプルを滅菌した後、密封し注射用溶液を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤。
【請求項2】
N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩を含有してなる請求項1記載の剤。
【請求項3】
N末端メチオニン残基のアミノ基がホルミル化されている配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはその塩を含有してなる請求項1記載の剤。
【請求項4】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列である請求項1記載の剤。
【請求項5】
ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤。
【請求項6】
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤。
【請求項7】
ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩を含有してなる癌治療の副作用予防・軽減剤。
【請求項8】
副作用が、脱毛症、骨髄抑制または体重抑制である請求項1および5〜7のいずれかに記載の剤。
【請求項9】
副作用が、脱毛症である請求項1および5〜7のいずれかに記載の剤。
【請求項10】
副作用が、アポトーシスの異常またはDNA合成阻害が関与する作用である請求項1および5〜7のいずれかに記載の剤。
【請求項11】
毛根細胞の保護剤である請求項1および5〜7のいずれかに記載の剤。
【請求項12】
癌治療が、抗癌剤投与および(または)放射線照射である請求項1および5〜7のいずれかに記載の剤。
【請求項13】
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング方法。
【請求項14】
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング用キット。
【請求項15】
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング方法。
【請求項16】
配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする癌治療の副作用予防・軽減用医薬のスクリーニング用キット。
【請求項17】
哺乳動物に対して、(i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、(ii)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iv)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する化合物またはその塩、または(v)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、癌治療の副作用予防・軽減法。
【請求項18】
(i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する、(ii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する、または(iv)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進することを特徴とする、癌治療の副作用予防・軽減法。
【請求項19】
癌治療の副作用予防・軽減剤を製造するための(i)ホルミル化されていてもよい、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、(ii)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、(iv)配列番号:8で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現を促進する化合物またはその塩、または(v)上記ポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の、上記蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化を促進する化合物またはその塩の使用。

【公開番号】特開2006−213632(P2006−213632A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27618(P2005−27618)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】