説明

発光ダイオードおよびLEDライト

【課題】薄型化を実現するとともに生産性に優れ、配光特性のばらつきを抑えて全方向で明るさが均一な発光ダイオードおよびLEDライトを提供する。
【解決手段】近接光学系を構成するLED2の発光素子6Aを逆ピラミッド型に形成し、その配光特性I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθにおけるkを0.6以下に設定し、かつ、発光素子6Aと光学面とをトランスファーモールド法で一体的に形成する。LED2から放射されて反射鏡3に到達するX軸方向の光は、有効放射範囲の全光量偏りが殆どなく、反射鏡3によってZ軸方向へほぼ均等に放射することができる。これにより、反射鏡面が大で表面の明るさの差がなく、見栄えの良好な薄型の灯具とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light−Emitting Diode:以下「LED」という。)およびそれを用いたLEDライトに関し、特に、自動車のテールライトやブレーキライト等の灯具、または工事用の警報ランプや標識等の表示装置として用いられる発光ダイオードおよびLEDライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの高輝度化が進み、自動車のバックライト等の灯具にLEDを光源とするLEDライトが用いられることが多くなってきた。LEDは、スペクトルがシャープで視認性に優れ、点灯時の応答速度が速いことから後続車への信号伝達速度が向上するというメリットを有しており、灯具として用いることで、特に、高速走行時の安全性を高めるものとして期待されている。さらに、LEDはそれ自体単色光源であるので、白熱電球のように必要色以外の光をフィルターカットする必要もなく、単色光源として高効率であり、省エネルギー化にもつながる。
【0003】
図11は、従来のLEDライト200を示す。このLEDライト200は、レンズ型LED201として発光素子202と、1対のリードフレーム203a,203bと、発光素子202とリードフレーム203bとを電気的に接続するボンディングワイヤ204と、透明エポキシ樹脂205とを有する。発光素子202はリードフレーム203aにマウントされており、この発光素子202とリードフレーム203bとをワイヤボンディングし、全体を透明エポキシ樹脂205で凸レンズ形に封止している。
【0004】
また、LEDライト200の構成部品として、レンズ型LED201から放射される光を紙面上方に反射する回転放物面形の反射鏡206と、レンズ型LED201の上方に位置するフレネルレンズ207と、光入射側に凹凸の界面209aを有した樹脂レンズ209が設けられている。
【0005】
上記したLEDライト200は、レンズ型LED201を発光させることによって上方および斜め上方に光が放射される。レンズ型LED201の上方に放射される光は、フレネルレンズ207で集光されて平行光として放射される。また、レンズ型LED201の斜め上方に放射された光は、反射鏡206で反射されて上方に放射される。このようにしてレンズ型LED201から放射される光をすべて樹脂レンズ209側へ略平行に出射させる。樹脂レンズ209は、凹凸の界面209aで入射光を拡散して樹脂レンズ209から放射する。これにより、樹脂レンズ209からは車載用バックライトの規格である略20度の拡がりを有した光が外部放射される。
【0006】
しかし、従来のLEDライト200では、レンズ型LED201から放射された光を光放射側に配置されたフレネルレンズ207で平行光に変換し、この平行光を樹脂レンズ209で拡散しているので、光学系の厚さが大になってLEDランプを大型化させるという不都合がある。仮に、反射鏡206を省略すると、部品点数の減少と薄型化が図れるが、発光素子202から斜め上方および側面方向に放射された光が利用できなくなって放射効率が低下する。また、放射される光がフレネルレンズ207および樹脂レンズ209を透過して外部へ放射されるため、見栄えの自由度が低い。
【0007】
そこで、薄型で見栄えが良く、放射効率を高くすることが可能なLEDライトとして、例えば、特許文献1に示すものがある。
【0008】
このLEDライトは、LED等の光源と、光源と対向する中心軸上の位置に配置されて光源から放射された光を、光源の中心軸と略直交する方向の光として反射する第1の反射鏡と、第1の反射鏡を中心にしてその周囲に配置され、第1の反射鏡で反射された光を、前記の中心軸方向の光にして反射する第2の反射鏡とを備えている。このような構成において、光源から放射された光が第1の反射鏡によって中心軸と略直交する方向へ反射され、この反射光が第2の反射鏡によって中心軸方向に反射されることにより、所定の放射角度を有した車両用信号光を所定の面積にわたって放射することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−93312号(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のLEDライトによると、光源の出射光の殆どが上方に放射される光であるため、第1の反射鏡に対する光源の中心軸の位置精度が低下すると、第1の反射鏡によって全反射方向に反射される反射光の光量が不均一となってLEDライト表面に明暗(明るさの差)が生じるという問題がある。特に、光源と第1の反射鏡とが近接するにつれて位置ずれによる明るさの差が顕著になる。また、光源と第1の反射鏡とが別部品であり、それぞれを位置決めしなければならないとともに位置ずれを生じないように保持する必要があり、製造に手間がかかる。さらに、物理的な力が加わると部品の位置ずれが生じる恐れがある。
【0011】
また、光源と第1の反射鏡とを高精度で位置決めしたとしても、光源の構造に起因する配光特性のばらつきを回避することは困難である。集光度の高いLEDは発光素子の位置ずれによる配光特性への影響が大きく、このような配光特性のばらつきを伴った光源を用いた場合、LEDライトの表面に明暗が生じるという課題が内在するためである。
【0012】
従って、本発明の目的は、薄型化を実現するとともに生産性に優れ、配光特性のばらつきを抑えて全方向で明るさが均一な発光ダイオードおよびLEDライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、
発光素子と、
前記発光素子を封止する透光性材料と、を備え、
前記発光素子は、中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として前記発光素子の前記出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であり、
前記透光性材料は、
前記発光素子から放射された光を前記発光素子の中心軸と直交し前記中心軸を中心とする周方向へ反射する反射面と、
前記反射面によって反射された光を放射する側面放射面と、を有し、
前記反射面の半径Rと前記側面放射面の高さHの関係がH<Rとなっている発光ダイオードを提供する。
【0014】
また、本発明は、上記目的を達成するため、
発光素子と、
前記発光素子を封止する透光性材料と、を備え、
前記発光素子は、中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として前記発光素子の前記出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であり、
前記透光性材料は、
前記発光素子から放射された光を前記発光素子の中心軸と直交し前記中心軸を中心とする周方向へ反射する反射面と、
前記反射面によって反射された光を放射する側面放射面と、を有し、
前記反射面は前記発光素子との最短距離が前記反射面の半径Rに対し1/2未満となっている発光ダイオードを提供する。
【0015】
また、本発明は、上記目的を達成するため、
上記発光ダイオードと、
前記発光ダイオードから放射される光を反射する反射鏡とを有することを特徴とするLEDライトを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発光ダイオードによれば、発光ダイオードを薄型化しながら発光素子から放射される光が中心軸方向だけでなく中心軸に直交する方向にも放射できるようになり、かつ、発光素子と反射面との近接に基づいて中心軸に直交する方向への放射性が大になることから、放射範囲の広範囲な配光特性が得られる。
【0017】
また、発光素子の中心軸と第1の反射鏡の中心軸との位置ずれが生じたとしても、LEDライトの表面の明るさに差が生じないようにすることができる。
【0018】
また、発光素子の配光特性にばらつきを有した光源を用いたとしても、広範囲な放射範囲へ光が放射されることにより、LEDライトの表面の明るさに差が生じないようにすることができる。
【0019】
また、上記発光ダイオードにおいて、発光素子は、中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として、発光素子の出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であるように設けることにより、側面方向への配光特性が向上し、広範囲に安定した光量を放射することができる。
【0020】
また、本発明のLEDライトによれば、発光素子から放射される光が中心軸方向だけでなく中心軸に直交する方向にも放射されるようになり、かつ、発光素子と反射面との近接に基づいて中心軸に直交する方向への放射性が大になることから、視認性に優れ、斬新な視覚をLEDライトに付与するとともに放射範囲の広範囲な配光特性が得られる。
【0021】
上記LEDライトにおいて、発光素子は、前記中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として、前記発光素子の前記出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であることを特徴とする。
このような構成によれば、発光素子から側面方向に放射される光が増大し、反射鏡との位置精度によって光照射性のばらつきを生じにくい高輝度のLEDライトが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明では、発光素子の中心軸をZ軸とし、このZ軸上の発光素子の上面位置を原点とし、原点でZ軸にそれぞれ直交するX軸とY軸を設けた座標系を定義する。但し、Z軸は中心軸Zとも称す。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るLEDライト1の全体構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のP部分の拡大図である。このLEDライト1は、円盤形状の本体の中心に所定の配光特性を有する発光素子6Aを用いたLED2と、LED2の周囲に同心円状で階段構造の反射面3aを備えた反射鏡3とを有する。
【0024】
反射鏡3は、透明アクリル樹脂によって成形されており、成形後に上面にアルミ蒸着を施して鏡面化することによって反射面3aを形成している。各反射面3aは、(c)に示すように、X−Y平面に対して約45度に傾斜しており、X(Y)方向から入射する光を反射してZ方向に放射させる。
【0025】
図2は、LED2を示し、(a)は縦断面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。このLED2は、リードフレーム5a,5bと、発光素子6Aと、リードフレーム5bと発光素子6Aとを電気的に接続するボンディングワイヤ7と、リードフレーム5a,5bおよび発光素子6Aとを一体的に封止するとともに光学面が形成される透明エポキシ樹脂8と、平坦面9aおよび反射面9bとを有する反射鏡9と、発光素子6Aを中心とする球面の一部を成して光をX−Y方向に放射する放射面10より構成されている。
【0026】
リードフレーム5a,5bは、銅合金で形成されてX−Y平面上に絶縁のための間隙を介して設けられており、面積の広いリードフレーム5aの原点位置に発光素子6Aを実装している。
【0027】
発光素子6Aは、直方体形状の底部側を斜めにカットした逆ピラミッド型を有し、リードフレーム5aにフェイスアップ接合されており、上面が発光面となっている。また、使用個数を極力少なくしてLED2の発光強度を所定値に維持する目的から、大電流タイプ(高出力タイプ)のものが用いられている。なお、発光素子6Aをフリップチップ接合によってリードフレーム5aに実装してもよい。
【0028】
透明エポキシ樹脂8は、屈折率1.55のエポキシ樹脂を使用し、その上面の中心部分(発光素子6Aの直上部分)に平坦面9aを有する。また、この平坦面9aに続いて反射面9bを設けることによって反射鏡9を形成している。この反射鏡9に発光素子6Aを近接配置して一体的にモールド成形することによって近接光学系を形成している。
【0029】
反射鏡9は、発光素子6Aから放射される光を直上方向へ放射する平坦面9aと、図の座標原点である発光素子6Aの発光面の中央部を焦点としX軸を対称軸とする放物線の一部を中心軸Zの周りに回転させた円状の反射形状を成す反射面9bとを有する。なお、用途に応じて、反射鏡9に平坦面9aを設けない構成とすることも可能である。
【0030】
また、反射鏡9は、発光素子6Aから放射された光を反射する第1の反射鏡であり、(c)に示すように反射面9bの半径Rは、発光素子6Aに対して大なる立体角を形成して放射される光の大半を有効に側面に放射できるよう、ここではH=2.0mm、R=3.5mmで形成されて放射面10の高さHと半径Rとの関係がH<Rとなっている。また、近接光学系を形成して比較的大なる立体角が形成されるように発光素子6Aと平坦面9aとの間隔(透明エポキシ樹脂8の厚さ)hは0.5mmに設定されている。
【0031】
図3は、発光素子6Aの構成を示し、最下層から最上層にかけて、n型GaP基板101と、このn型GaP基板101上にn型AlInGaPクラッド層102と、発光層を有する層103と、p型AlInGaPクラッド層104と、p型GaPウインドウ層105とがエピタキシャル層として順次形成されており、p型GaPウインドウ層105の上に、このウインドウ層105とオーミック接触するためのAuZnコンタクト106を介してAlボンディングパッド(正電極)107が形成されている。さらに、n型GaP基板101の下にはAu合金電極(負電極)108が形成されている。なお、n型GaP基板101は、発光層で発光する光の波長に対し透明であり、n型AlInGaPクラッド層102およびp型AlInGaPクラッド層104は、透光性があるものである。n型GaP基板101は上記したエピタキシャル層の形成後にカットして成型された斜辺部6cを有する。
【0032】
図4は、発光素子6Aの配光特性を説明する概念図である。発光素子6Aの上面6aおよび側面6b(4側面)から放射される放射強度は、上面6aから放射される放射強度と4つの側面6bから放射される放射強度との総和となり、配光特性I(θ)は以下の式(1)で表される。
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ …(1)
【0033】
ここで、k・cosθは上面6aから放射される放射強度を示し、(1−k)・sinθは側面6bから放射される放射強度を示す。θは、発光素子6AにおけるZ軸に対する角度であり、kの値が変化すると、上面6aから放射される光と側面6bから放射される光の配分が変化する。
【0034】
図5は、上記した式(1)に基づく配光特性の異なる発光素子に対して、θを変化させたときの放射強度(Z軸方向)の変化を示し、(a)は、発光素子に対する角度の定義を示す。(b)は、k=0.6で上面6aから60%の光が放射される状態(上60%)であり、直方体形状を成す発光素子である。(c)は、k=0.4で上面6aから40%、側面6bから合計60%の光が放射される状態(上60%)であり、直方体形状を成す発光素子である。また、(d)は、逆ピラミッド型を成す本発明の発光素子6Aである。配光特性は、素子サイズを変化させることによって調整することができる。例えば、k=0.4の発光素子6Aの場合、k=0.6の発光素子6Aより小サイズに形成することによって素子内の光吸収損失が小になり、そのことによって側面6bからの放射量を更に増大させることができる。
【0035】
図5(b)に示す配光特性の発光素子6では、光は上面6aおよび側面6bから放射され、θが大になるにつれて放射強度が低下している。また、(c)の配光特性の発光素子6では、側面方向への放射性が改善されていることによって、θの変化による放射強度の低下が(b)に比べて小になっている。また、(d)に示す発光素子6Aでは、n型GaP基板101に斜辺部6cを設けたことにより側面方向への光放射性が向上し、θの変化による放射強度の低下が生じにくくなっている。
【0036】
LED2の配光特性は、上記した発光素子6Aの配光特性と、発光素子6A、平坦面9a、反射面9bおよび放射面10からなる光学面の位置精度と、発光素子6Aのリードフレーム5aへの実装位置精度と、リードフレーム5aと上記した光学面とを一体的にモールド成形する際の型に対するセッティング位置精度とに依存する。図2(b)に示したθ方向の配光に偏りが生じないようにするには、Z軸を中心とする放射面10の周方向(360°)に放射される光の均一性が求められるが、発光素子6Aと光学面との位置ずれがあると、ずれ量に応じてθ方向の配光むらが生じる。特に、本発明に示すLED2の近接光学系においては、僅かな位置ずれの発生によって配光むらが発生しやすいという構成上の特性を有する。
【0037】
図6は、LED2において発光素子6Aの中心軸が光学面に対してX軸方向ずれを生じたときの配光特性の変化による、LED2から直接上方へ放射される光と反射面3aへ至る光との光量変化を示し、GaP基板を有する発光素子6Aを用いた場合、生産時にX軸方向にずれ量が生じると有効放射効率比が低下する。同図においては、特に、0.3mm以上で明確に低下している。
【0038】
図7(a)および(b)は、LED2から放射される光量の観測条件を示し、LED2の周囲全方向を32分割したΦijで示した図である。(a)に示すように、LED2のZ軸を中心とする周囲360°を8つに分割(j=1〜8)し、(b)に示すように、Z軸に対し0°〜20°までの角度範囲(i=1)、20°〜60°までの角度範囲(i=2)、60°〜100°までの角度範囲(i=3)、100°〜180°までの角度範囲(i=4)を示し、以下、LED2からこれら領域へ放射される光量について説明する。ここでは、Z軸に対し0°〜20°までの角度範囲領域はLED2から直接Z軸近傍へ外部放射される光、Z軸に対し60°〜100°までの角度範囲領域は、LED2から反射鏡3へ放射された後、反射鏡3でZ軸近傍方向へ反射され外部放射される光が想定されている。
【0039】
図8(a)は、図7に示す観測条件で上60%の配光特性を有する直方体形状の発光素子を用いたときのLED2の全光量偏りを示し、全光量偏りは、X方向に0.0から0.5mmまでの6段階のずれ量が生じた条件を設定して求めたものであり、各方向についての全光量偏りを線で結んで示す。ずれ量が大になるにつれて全光量偏りが大になっている。同図(b)は、上40%の配光特性を有する直方体形状の発光素子を用いたときのLED2の全光量偏りを示し、側面6bからの光の放射が増大することによって、全光量偏りが改善されている。同図(c)は、逆ピラミッド型の発光素子6Aを用いたときのLED2の全光量偏りを示し、斜辺部6cから光が放射されることによって、ずれ量が増大しても全光量偏りの発生が一定のレベルに抑えられている。
【0040】
このように、発光素子6Aを逆ピラミッド型に形成することによって、特に、発光素子側面から放射される光が直方体形状の発光素子に比べて増大し、そのことによって発光素子6Aと光学面との位置ずれによる有効放射範囲の全光量偏りが小になる。従って、k=0.6以下の配光特性を有する逆ピラミッド型の発光素子6Aを用いれば、リードフレーム5aに実装された発光素子6Aの位置が、Z軸からX軸(又はY軸)方向に0.1mm以内の寸法ずれを生じたとしても、発光素子6Aの配光特性によって補うことが可能になるので、有効放射範囲の全光量偏りはほぼ無くなり、視覚上影響の無いものとなる。
【0041】
上記したLED2は、例えば、トランスファーモールド法によって製造することができる。以下にトランスファーモールド法による製造方法を説明する。ここでは、k=0.6の配光特性を有する逆ピラミッド型の発光素子6Aを用いる。まず、プレス加工によって形成されたリードフレーム5aに発光素子6Aをフェイスアップ接合する。次に、発光素子6AのAlボンディングパッド107とリードフレーム5bとをボンディングワイヤ7で電気的に接続する。次に、発光素子6Aを実装されたリードフレーム5a、5bを上下に分割可能な金型に載置し、上下から挟んで位置決めをする。次に、透明エポキシ樹脂8を金型内に注入する。次に、透明エポキシ樹脂8を160℃、5分の硬化条件で硬化させる。次に、金型を上下分離して透明エポキシ樹脂8を硬化させたLED2を取り出す。なお、金型と透明エポキシ樹脂8との離型性を良好にするために、透明エポキシ樹脂8は剥離成分を含有させたもの等が用いられる。
【0042】
次に、LEDライト1の動作について説明する。
操作者によってLEDライト1の電源スイッチ(図示せず)が投入されると、図示しない電源部はリードフレーム5a,5bに電圧を印加する。発光素子6Aは電圧の印加に基づいて発光する。発光素子6Aから放射されてZ軸に沿って直上に放射される光は平坦面9aから透明エポキシ樹脂8外へ放射され、外部放射される。また、発光素子6Aから放射される光のうち50〜60%が、発光素子6Aに対する約2.7stradの立体角を有した反射面9bへ至り、発光素子6Aから放射されてZ軸に対して略水平方向に放射された光は、直接放射面10に至り、そのままX−Y平面に略平行な方向に放射面10から外部放射される。
【0043】
LED2からX−Y平面に略平行に放射された光は、反射鏡3の反射面3aで略Z軸方向へ反射され、外部へ放射される。
【0044】
上記した第1の実施の形態のLEDライト1によれば、近接光学系を構成するLED2の発光素子6Aとして、逆ピラミッド型に形成されたものを使用し、その配光特性I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθにおけるkを0.6以下に設定し、かつ、発光素子6Aと光学面とをトランスファーモールド法で一体的に形成するようにしたので、LED2から放射されて反射鏡3に到達するX軸方向の光は、有効放射範囲の全光量偏りが殆どなく、反射鏡3によってZ軸方向へほぼ均等に放射することができる。これにより、反射鏡面が大で表面の明るさの差がなく、見栄えの良好な薄型の灯具とすることができる。これにより、自動車のテールライトやブレーキライトに適用すれば、自動車の真後ろだけでなく、横方向からの光の視認性も向上させることができる。
【0045】
なお、上記したLEDライト1では、一例としてk=0.6の配光特性を有する逆ピラミッド型の発光素子6Aを用いたLED2を用いた構成を説明したが、k=0.6以下の配光特性を有する発光素子6Aを用いれば発光素子6Aと光学面との位置ずれによる有効放射範囲の全光量偏りを実用上問題を生じないレベルまで小にできる。
【0046】
また、トランスファーモールド法によるLED2の製造では、金型でリードフレーム5a、5bを挟持した状態で金型内部に透明エポキシ樹脂8を注入するので、発光素子6Aと光学面との位置決め精度を±0.1mmの高精度で実現することが可能になり、k=0.6の発光素子6Aを用いて構成される近接光学系であってもLED2の個体差による配光特性のばらつきを防いで安定した品質のLEDライト1を提供することができる。
【0047】
また、発光素子6Aを封止する透光性材料として、透明エポキシ樹脂8を用いた構成を説明したが、透光性およびその他の光学的特性が同等の他の透光性材料であってもよい。また、反射鏡3を構成する樹脂材料として、透明アクリル樹脂を用いているが、その他の透明樹脂を始めとして、他の材料を用いることもできる。さらに、LEDライトのその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、実施の形態に限定されるものではない。
【0048】
また、反射面9bは、鏡面処理を施さずに樹脂の全反射を応用したものとして説明したが、金属蒸着などによる鏡面処理を施されたものであっても良い。
【0049】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るLED2aを示し、(a)はZ方向から見たLED2aの平面図、(b)は(a)の発光素子6Aの部分における縦断面図である。このLED2aは、透光性を有するn型GaP基板を用いたGaP基板AlInGaPからなり、上60%(k=0.6)の配光特性を有する逆ピラミッド型の発光素子6Aと、銅合金で構成されて樹脂封止部分を折り曲げ加工されたリードフレーム5b,5cとを有して構成されており、発光素子6Aはリードフレーム5cの先端に実装されている。その他、第1の実施の形態と同一の構成を有する部分については同一の引用数字を付しているので重複する説明を省略する。
【0050】
LED2aは、例えば、キャスティングモールド法によって製造することができる。以下にキャスティングモールド法による製造方法を説明する。ここでは、k=0.6の配光特性を有する発光素子6Aを用いる。まず、プレス加工によってリードフレーム5b,5cを打ち抜き加工する。このとき、リードフレーム5b,5cは分断せずに複数個分の後端がリードで連結された状態にする。次に、リードで連結された後端を支持部材に固定する。次に、リードフレーム5b,5cに曲げ加工を施して所望の形状にする。次に、リードフレーム5cの先端に発光素子6Aをフェイスアップ接合する。次に、発光素子6AのAlボンディングパッド107とリードフレーム5bとをボンディングワイヤ7で電気的に接続する。次に、リードフレーム5b,5cをモールド成形用のキャスティング上に移動させる。次に、キャスティング内に透明エポキシ樹脂8を注入する。次に、透明エポキシ樹脂8を注入されたキャスティング内にリードフレーム5b,5cを浸漬する。次に、キャスティングおよびリードフレーム5b,5cを配置した空間を真空にして透明エポキシ樹脂8の気泡抜きを行う。次に、透明エポキシ樹脂8を120℃、60分の硬化条件で硬化させる。次に、キャスティングから透明エポキシ樹脂8を硬化させたLED2aを取り出す。
【0051】
上記した第2の実施の形態のLED2aによれば、樹脂封止部分を折り曲げ加工されたリードフレーム5cに逆ピラミッド型の発光素子6Aを実装しているので、広範囲に均一な光を放射できるとともに、生産性に優れるキャスティングモールド法による製造が可能になる。また、発光素子6Aと光学面との位置ずれが生じたとしても、そのずれ量が小であるときは有効放射範囲の全光量偏りを実用上問題を生じないレベルに抑えることができる。
【0052】
また、キャスティングモールド法では、リードフレーム5b,5cの先端(自由端)がキャスティングで支持拘束されていないので、発光素子6Aと光学面との位置決め精度は±0.2mmとトランスファーモールド法による製造より低下する。特に、平板リードフレームの先端の板厚部に発光素子6Aがマウントされるものは、高い位置決め精度の実現が困難である。しかし、位置決め精度の許容範囲が大になることによって生産性を向上させることができ、量産性に優れる。透明エポキシ樹脂8の長時間硬化を行うことで熱応力むらは小になり、リードフレーム5b,5cと透明エポキシ樹脂8の剥離が生じにくくなる。なお、製造工程管理や発光素子6Aの配光特性を選別することで、配光特性の安定化を図ることは可能である。
【0053】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係るLED2bを示し、(a)はZ方向から見たLED2bの平面図、(b)は(a)の発光素子6Aの部分における縦断面図である。このLED2bは、透光性を有するn型GaP基板を用いたGaP基板AlInGaPからなり、上40%(k=0.4)の配光特性を有する逆ピラミッド型の発光素子6Aと、銅合金で構成された平板状のリードフレーム5b,5dとを有して構成されている。その他、第1および第2の実施の形態と同一の構成を有する部分については同一の引用数字を付しているので重複する説明を省略する。
【0054】
k=0.4の発光素子6Aは、k=0.6の発光素子6Aより小サイズ(例えば、0.3mm角)に形成されており、そのことで発光素子内部での吸収損失が小になって側面6bからの放射量が更に増大されている。
【0055】
発光素子6Aは、プレス加工により打ち抜かれたリードフレーム5cの先端に実装されている。
【0056】
上記した第3の実施の形態のLED2bによれば、リードフレーム5dの先端に逆ピラミッド型の発光素子6Aを実装しているので、有効放射範囲の全光量偏りを抑えながら量産性に優れ、リードフレーム5b,5dと透明エポキシ樹脂8との接触面積を小にでき、そのことによって剥離をより生じにくくすることができる。また、リードフレーム5b,5dの曲げ加工等の作業工程を不用にできるので、生産性を向上させることができる。
【0057】
なお、上記した各実施の形態では、発光素子6Aとして逆ピラミッド型の素子形状を有する構成を説明したが、他の素子形状として上部側(発光観測面側)を斜めにカットした斜辺部を有するピラミッド型の発光素子であってもよい。
【0058】
また、発光素子6Aは、光拡散材料を含む光透過性樹脂で覆って封止した後に透明エポキシ樹脂8でモールド成形してもよい。この場合には光拡散材料によって光が拡散され、より広範囲に光を放射することができる。
【0059】
また、光拡散材料として、発光素子6Aの発光光によって励起される蛍光体を用いてもよい。この場合には発光光によって励起された蛍光体から励起光が放射されることにより、より広範囲に均一な光を放射することができる。
【0060】
また、発光ダイオードについては、発光素子を封止するとともに反射面および側面反射面をモールド成型したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、透光性樹脂で別途形成した反射面および側面反射面を発光素子とともに光透過性材料で封止することによって取り付けることで、発光素子に対する近接光学系を形成することもできる。
【0061】
また、上記した各実施の形態では、反射鏡9が発光素子6Aの原点を焦点とし、X軸を対称軸とする放物線の一部を中心軸Zの周りに回転させた円状の反射形状を成し、放射面10が発光素子6Aを中心とする球面の一部を成す形状を有するものとして説明したが、中心軸Zに対して大きな角度を成し、発光素子6Aから放射される光を略側面方向へ放射することのできる形状であれば、特に限定されない。特に、各実施例に示す透明エポキシ樹脂8の形状およびH<Rの関係が成立する条件においては、発光素子6Aに対して反射鏡9が近接することになり、光学系の位置精度によるLEDの配光特性の安定性について同様に効果を得ることができる。なお、H<Rの関係を満たさない場合でも、h<1mmであるときは同様の効果が得られる。また、反射面9bは、発光素子6Aとの最短距離が図2(c)に示した半径Rに対して1/2未満となるようにして近接光学系を形成した場合でも配光特性の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施の形態に係るLEDを用いたLEDライトの全体構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のP部分の拡大図である。
【図2】第1の実施の形態に係るLEDの構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図、(c)は各部のサイズを示す側面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る発光素子の構成を示す側面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る発光素子の上面および側面から放射される光の放射概念図である。
【図5】第1の実施の形態に係る発光素子の配光特性曲線を示し、(a)は発光素子のZ軸に対する角度の説明図、(b)はk=0.6のときの放射強度の変化を示す特性図、(c)はk=0.4のときの放射強度の変化を示す特性図、(d)は逆ピラミッド型の発光素子のときの放射強度の変化を示す特性図である。
【図6】第1の実施の形態に係るLEDの有効放射効率比とX軸方向ずれとの関係図である。
【図7】(a)および(b)は、LEDから放射される光量の観測条件を示す概念図である。
【図8】第1の実施の形態に係るLEDの有効放射範囲の全光量偏りを示し、(a)は配光特性が上60%の発光素子を用いたLEDにおける有効放射範囲の全光量偏りを示す特性図、(b)は上40%の発光素子を用いたLEDにおける有効放射範囲の全光量偏りを示す特性図、(c)は逆ピラミッド型の発光素子を用いたLEDにおける有効放射範囲の全光量偏りを示す特性図である。
【図9】第2の実施の形態に係るLEDを用いたLEDライトの全体構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の発光素子部分の縦断面図である。
【図10】第3の実施の形態に係るLEDを用いたLEDライトの全体構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の発光素子部分の縦断面図である。
【図11】従来のLEDライトの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、LEDライト 3、反射鏡 3a、反射面
5a,5b,5c,5d、リードフレーム
6A、発光素子 6a、上面 6b、側面 6c、斜辺部
7、ボンディングワイヤ 8、透明エポキシ樹脂
8s、封止樹脂 9、反射鏡 9a、平坦面
9b、反射面 10、放射面 101、n型GaP基板
102、n型AlInGaPクラッド層 103、発光層を有する層
104、p型AlInGaPクラッド層 105、p型GaPウインドウ層
106、AuZnコンタクト 107、Alボンディングパッド
108、Au合金電極 202、発光素子
203a,203b、リードフレーム 204、ボンディングワイヤ
205、透明エポキシ樹脂 206、反射鏡 207、フレネルレンズ
209、樹脂レンズ 209a、界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を封止する透光性材料と、を備え、
前記発光素子は、中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として前記発光素子の前記出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であり、
前記透光性材料は、
前記発光素子から放射された光を前記発光素子の中心軸と直交し前記中心軸を中心とする周方向へ反射する反射面と、
前記反射面によって反射された光を放射する側面放射面と、を有し、
前記反射面の半径Rと前記側面放射面の高さHの関係がH<Rとなっている発光ダイオード。
【請求項2】
発光素子と、
前記発光素子を封止する透光性材料と、を備え、
前記発光素子は、中心軸方向に対する出射光の出射角度θにおける放射強度をI(θ)として前記発光素子の前記出射角度θに応じた放射強度によって定まる常数をkとしたとき、
I(θ)=k・cosθ+(1−k)・sinθ
(ただし、k≦0.6)
であり、
前記透光性材料は、
前記発光素子から放射された光を前記発光素子の中心軸と直交し前記中心軸を中心とする周方向へ反射する反射面と、
前記反射面によって反射された光を放射する側面放射面と、を有し、
前記反射面は前記発光素子との最短距離が前記反射面の半径Rに対し1/2未満となっている発光ダイオード。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光ダイオードと、
前記発光ダイオードから放射される光を反射する反射鏡とを有することを特徴とするLEDライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−16861(P2009−16861A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215542(P2008−215542)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2003−2036(P2003−2036)の分割
【原出願日】平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】