説明

発光ダイオードパッケージ構造

【目的】ハウジング上表面の溢れ(flash)汚染を除去できるLEDパッケージ構造を提供する。
【解決手段】LEDパッケージ構造が、キャリアと、ハウジングと、LEDチップと、封止体と、表面処理層とを含む。ハウジングがキャリア上に配置され、かつ上表面を有し、そのうち、ハウジングとキャリアとが一緒にチップ含有空洞を形成する。LEDチップがキャリア上に配置されるとともに、チップ含有空洞中に位置する。封止体がチップ含有空洞中に配置され、かつLEDチップを封止する。表面処理層がハウジングの上表面に配置されて、封止体がハウジングの上表面に粘着することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に半導体パッケージ構造に関し、特に、発光ダイオード(Light Emiting Diode = LED)パッケージ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDsは、長い寿命・小さな体積・高い抗振動性・低い発熱および電力節約のような多くの優位性があるので、家庭用および各種設備中の指示器(indicators)または光源の領域において使用されている。近年、LEDsが高い色彩性ならびに高い輝度へ向けて発展するとともに、メガサイズ(mega-size)ディスプレイボード・交通信号灯および関連領域へ既に拡張されてきている。将来、電力節減および環境保護製品を特色とする主要な照明光源にさえなっていくものと予想される。
【0003】
図1は、従来のLEDパッケージ構造を示す断面図である。図1において、LEDパッケージ構造10が、キャリア12とハウジング14とLEDチップ16と封止体(encapsulant)18とを含む。LEDチップ16がキャリア12上に配置されるとともに、キャリア12とハウジング14とにより形成されるチップ含有空洞(chip-containing cavity)C中に位置し、そのうち、LEDチップ16が2本のボンディングワイヤー19によりキャリア12に電気接続される。封止体18がチップ含有空洞C中へ充填されてLEDチップ16およびボンディングワイヤー19を封止する。封止体18の外側に露出されたキャリア12の一部分が外部電極Eとして供され、LEDパッケージ構造10が外部へ電気接続する媒体となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術中、封止体18がチップ含有空洞C中へ充填される時、封止体18およびチップ含有空洞C間の粘着力(adhesion)が、封止体18自体の凝集力(cohesion)よりも大きいため、チップ含有空洞C周囲に位置する封止体18の一部が、封止体18の中心部分よりも少し高くなり、毛管現象(capillary phenomenon)と呼ばれる。詳細には、毛管現象のために、チップ含有空洞C中に位置する封止体18が凹(へこ)んで、LEDパッケージ構造10の不安定な発光均一性という結果となる。また、チップ含有空洞C周囲に位置する封止体18の一部が、ハウジング14の上表面14aへ部分的に溢(あふ)れて(overflow)LEDパッケージ構造10が溢れ汚染(flash contamination)を引き起こす。
【0005】
そこで、この発明の目的は、そのハウジング上表面の溢れ汚染を除去できるLEDパッケージ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、LEDパッケージ構造を提供し、それが、キャリアと、ハウジングと、LEDチップと、封止体と、表面処理層とを含む。ハウジングが、キャリア上に配置されるとともに、上表面を有し、そのうち、ハウジングおよびキャリアが一緒にチップ含有空洞を形成する。LEDチップが、キャリア上に配置され、かつチップ含有空洞中に位置する。封止体が、チップ含有空洞中に充填され、LEDチップを封止する。表面処理層が、ハウジングの上表面上に配置されて、封止体がハウジングの上表面に粘着することを防止する。
【0007】
この発明の実施形態中、上記表面処理層が、インク層である。
【0008】
この発明の実施形態中、上記インク層の材料が、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-ケトン、シクロヘキサン、キシレン、ブチルグリコール-アセテート、ソルベントナフサ、メシチレン、樹脂、ブラックカーボンの組み合わせを含むものである。
【0009】
この発明の実施形態中、上記インク層の材料が、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-ケトン、シクロヘキサン、キシレン、ブチルグリコール-アセテート、ソルベントナフサ、メシチレン、樹脂、芳香族炭化水素の組み合わせを含むものである。
【0010】
この発明の実施形態中、上記表面処理層が、ローラー印刷を使用することによりハウジングの上表面に粘着されるものである。
【0011】
この発明の実施形態中、上記封止体の表面が、表面処理層の表面と実質的に同一レベルである。
【0012】
この発明の実施形態中、上記封止体がハウジングから突出するとともに、封止体の表面が表面処理層の表面よりも高いものである。
【0013】
この発明の実施形態中、上記LEDパッケージ構造が、更に、少なくとも1本のボンディングワイヤーを備え、そのうち、前記LEDチップがキャリアにボンディングワイヤーにより電気接続されるものである。
【0014】
この発明の実施形態中、更に、上記キャリアが回路板またはリードフレームを備えるものである。
【0015】
この発明の実施形態中、上記キャリアおよび上記ハウジングが一体的に成形されるものである
【0016】
上記に基づき、この発明のLEDパッケージ構造が表面処理層を有し、封止体がチップ含有空洞に充填される時、表面処理層および封止体間の結合力が、封止体およびハウジング間の結合力より小さいため、封止体が表面処理層に粘着しにくく、封止体がハウジングの上表面にオーバーフローしない。かくして、この発明のLEDパッケージ構造は、溢れ汚染(flash contamination)を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
つまり、この発明のLEDパッケージ構造は、表面処理層を有するので、封止体がチップ含有空洞を充填する時、封止体およびチップ含有空洞間の粘着力が、封止体自体の凝集力よりも大きく、チップ含有空洞の周囲に位置する封止体の一部が封止体の中心部分より少し高くなる。しかし、表面処理層および封止体間の結合力が、封止体およびハウジング間の結合力より小さいから、封止体が表面処理層に粘着しにくく、封止体がハウジングの表面に越流(overflow)しない。このようにして、この発明のLEDパッケージ構造がフラッシュ汚染を回避できる。
【0018】
また、封止体がハウジングの表面にオーバーフローしないとともに、封止体が実質的に表面処理層の表面に同一レベルであることができる又はチップ含有空洞間に充填する封止体の容量を制御することによりハウジングから突出するようにできるため、LEDチップから発射された光線が封止体を通って外へ行く時、従来技術において毛管現象により引き起こされる発光均一性の不安定問題を予防することができる。言い換えれば、この発明のLEDパッケージ構造は、光線のより良好なカラー均一性を有するため、この発明のLEDパッケージ構造は、より良い発光均一性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のLEDパッケージ構造を示す断面図である。
【図2】この発明の実施形態にかかるLEDパッケージ構造を示す断面図である。
【図3】この発明の別な実施形態にかかるLEDパッケージ構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図2は、この発明の実施形態にかかるLEDパッケージ構造を示す断面図である。図2において、実施形態中、LEDパッケージ構造100は、キャリア110と、ハウジング120と、LEDチップ130と、封止体140と、表面処理層150とを含む。特に、実施形態中のLEDパッケージ構造100は、表面実装デバイス(surface mount device = SMD様式)中のLEDパッケージ構造100である。
【0021】
より詳細には、ハウジング120がキャリア110上に配置されるとともに、上表面122を有し、そのうち、ハウジング120とキャリア110とが一緒にチップ含有空洞C`を形成し、かつキャリア110とハウジング120とが一体的に成形される。実施形態中、キャリア110が例えば回路板であり、別な実施形態中、リードフレームである。つまり、図2のキャリア110は、実例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0022】
LEDチップ130がキャリア110上に配置され、かつ光線を発射するためにチップ含有空洞C`中に位置する。実施形態中、LEDパッケージ構造100が更に少なくとも1本のボンディングワイヤー160(図2中、例えば2本のボンディングワイヤー160を図示)を含み、そのうち、LEDチップ130がボンディングワイヤー160によりキャリア110に電気接続されている。
【0023】
封止体140がチップ含有空洞C`中に配置されるとともに、LEDチップ130およびボンディングワイヤー160を封止しており、封止体140がLEDチップ130およびボンディングワイヤー160を外界温度・湿度およびノイズによる影響から保護している。封止体140から露出されるキャリア110の一部が外部電極E`であり、かつLEDパッケージ構造100を外部に電気接続する媒体として供される。
【0024】
表面処理層150がハウジング120の上表面122に配置され、かつ表面処理層150は、封止体140がハウジング120の上表面122に付着することを防止するためにある。実施形態中、封止体140の表面は、実質的に表面処理層150の表面と同一レベルである。表面処理層150は、ローラー印刷を使用することによりハウジング120の上表面122に付着される。
【0025】
特記すべきは、実施形態中、表面処理層150は、例えば、インク層であり、インク層が含有量10-22%の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-ケトン(4-hydroxy-4-methylpentan-2-ketone)、含有量1-10%のシクロヘキサノン(cyclohexanone)、含有量5-15%のキシレン、含有量1-15%のブチルグリコール-アセテート(butylglycol acetate)、含有量5%以下のソルベントナフサ(solvent naphtha)、含有量5%以下のメシチレン(mesitylene)、含有量15-20%の樹脂(resin)および含有量3-5%のブラックカーボン(black carbon)の組み合わせからなる。しかし、別な実施形態中、上記した含有量3-5%のブラックカーボンは、インク層の求められるカラーに従って含有量1-3%の芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbins)に置き換えることができ、インク層のカラーもブラックカーボンの元の黒色から透明なものへ変更される。
【0026】
注意すべきは、チップ含有空洞C`が適量の封止体140で充填される時、封止体140およびチップ含有空洞C`間の粘着力が封止体140自体の凝集力よりも大きいとともに、チップ含有空洞C`の周囲に位置する封止体140の一部がいわゆる毛管現象により引き起こされる封止体140の中心部分より少し高くなるものの、しかし、ハウジング120の上表面122上に配置された表面処理層150および封止体140間の結合力が、封止体140およびハウジング120間の結合力より小さいので、封止体140が表面処理層150に粘着しにくい。即ち、封止体140がハウジング120の上表面122上にオーバーフローしにくい;反対に、封止体140の表面が実質的に表面処理層150の表面と同一レベルなる、又は封止体140の表面が表面処理層150の表面よりも低くなる。
【0027】
要するに、実施形態のLEDパッケージ構造100が処理表面層150を有する。チップ含有空洞C`が封止体140で充填される時、表面処理層150および封止体140間の結合力が封止体140およびハウジング120間の結合力より小さいため、封止体140が表面処理層150上に粘着しにくい。即ち、封止体140がハウジング120の上表面122上にオーバーフローしにくい。このようにして、実施形態のLEDパッケージ構造100がフラッシュ汚染を回避できる。
【0028】
図3は、この発明の別な実施形態にかかるLEDパッケージ構造を示す断面図である。図3と図2とにおいて、実施形態中、図3のLEDパッケージ構造100aは、図3の封止体140aがハウジング120から突出しているとともに、封止体140aが表面処理層150の表面より高いことを除いて、図2のLEDパッケージ構造100に類似している。
【0029】
詳細には、実施形態中、封止体140aが過剰な容量でチップ含有空洞C`中へ充填される時、封止体140aおよびチップ含有空洞C`間の粘着力が封止体140a自体の凝集力より大きく、チップ含有空洞C`周囲に位置する封止体140aの一部が封止体140aの中心部分より少し高くなる。しかし、ハウジング120の上表面122に配置された表面処理層150および封止体140a間の結合力が、封止体140aおよびパッケージのハウジング120間の結合力よりも小さく、かつ表面処理層150および封止体140a間の表面張力が、封止体140a自体の凝集力より遙かに大きいので、過剰な封止体140aがハウジング120から突出するとともに、封止体140aが表面処理層150に粘着しない。つまり、封止体140aがハウジング120の上表面122にオーバーフローしない。
【0030】
注意すべきは、実施形態中、封止体140aがハウジング120の上表面122にオーバーフローしないため、チップ含有空洞C`中に位置する封止体140aが凹(へこ)まないことである。従来技術と比較して、実施形態のLEDパッケージ構造100aの発光均一性がより安定する。とりわけ、ハウジング120から突出する封止体140aの部分が凸レンズと見なされる。その結果、LEDチップ130から発射される光線が、封止体140aを通って外部へ行く時、LEDパッケージ構造100aがより良好な発光均一性を備えることができる。
【0031】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0032】
10 LED(発光ダイオード)パッケージ構造
12 キャリア
14 ハウジング
14a 上表面
16 LED(発光ダイオード)チップ
18 封止体
19 ボンディングワイヤー
100,100a LED(発光ダイオード)パッケージ構造
110 キャリア
120 ハウジング
122 上表面
130 LED(発光ダイオード)チップ
140,140a ハウジング
150 表面処理層
160 ボンディングワイヤー
C,C` チップ含有空洞
E,E` 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードパッケージ構造であり、
キャリアと;
ハウジングであり、前記キャリア上に配置されるとともに、上表面を有し、前記ハウジングおよび前記キャリアが一緒にチップ含有空洞を成形するハウジングと;
前記キャリア上に配置され、かつ前記チップ含有空洞中に位置する発光ダイオードチップと;
前記チップ含有空洞中に充填され、前記発光ダイオードチップを封止する封止体と;
前記ハウジングの前記上表面に配置され、前記封止体が前記ハウジングの前記上表面に粘着することを防止するためのものである表面処理層とを備える発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項2】
前記表面処理層が、インク層である請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項3】
前記インク層の材料が、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-ケトン、シクロヘキサン、キシレン、ブチルグリコール-アセテート、ソルベントナフサ、メシチレン、樹脂、ブラックカーボンの組み合わせを含むものである請求項2記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項4】
前記インク層の材料が、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-ケトン、シクロヘキサン、キシレン、ブチルグリコール-アセテート、ソルベントナフサ、メシチレン、樹脂、芳香族炭化水素の組み合わせを含むものである請求項2記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項5】
前記表面処理層が、ローラー印刷を使用することにより前記ハウジングの前記上表面に粘着される請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項6】
前記封止体の表面が、前記表面処理層の表面と実質的に同一レベルである請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項7】
前記封止体が前記ハウジングから突出するとともに、前記封止体の表面が前記表面処理層の表面よりも高いものである請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項8】
更に、少なくとも1本のボンディングワイヤーを備え、前記発光ダイオードチップが前記キャリアに前記ボンディングワイヤーにより電気接続される請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項9】
前記キャリアが、回路板またはリードフレームを備える請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。
【請求項10】
前記キャリアおよび前記ハウジングが一体的に成形されるものである請求項1記載の発光ダイオードパッケージ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−171424(P2010−171424A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−5523(P2010−5523)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(599037300)億光電子工業股▲ふん▼有限公司 (69)
【Fターム(参考)】