説明

発光体

【課題】面発光する発光体の薄型化、排熱の効率化、輝度ムラの低減のうち、少なくとも1つを実現すること。
【解決手段】発光体1は、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとで構成され、第2の半導体層4Bは、同一組成かつ連続した層であり、第1の半導体層4Aは、連続した絶縁物の層4Iに、第2の半導体層4Bとは異なる組成で構成された複数の半導体領域4Sが、それぞれ別個独立して等間隔で配置された構造を持つ半導体・絶縁体複合層であり、第1の半導体層4Aと前記第2の半導体層4Bとは接合し、前記接合部近傍に発光部2が形成され、さらに、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとの接合面とは異なる面はそれぞれ第1電極5Aと第2電極5Bが接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光する発光体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDは、液晶ディスプレイのバックライトの光源として普及している。また、近年は、LEDを光源とした照明器具が製造され、普及し始めている。例えば、特許文献1には、LEDの応用製品として、基板上に複数のチップLEDを配置したLED表示ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−278481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたLED表示ユニットは、基板上に配置した複数のチップLEDにより面発光するものである。しかし、このLED表示ユニットは、別個独立の部品としてのチップLEDが基板上に実装、配置されているので、LED表示ユニットが厚みを持ち、かつ、複数のチップLEDからの発熱や、配置されたチップLED間の距離が影響し、面発光体としての輝度ムラが大きくなるおそれがある。本発明は、面発光する発光体の薄型化、放熱の効率化、輝度ムラの低減のうち、少なくとも1つを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の半導体層と第2の半導体層とで構成され、前記第2の半導体層は、同一組成かつ連続した層であり、前記第1の半導体層は、連続した絶縁物の層に、前記第2の半導体層とは異なる組成で構成された複数の半導体領域が、それぞれ別個独立して等間隔で配置された構造を持つ半導体・絶縁体複合層であり、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とは接合し、さらに、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との接合面とは異なる面は、電極と接合していることを特徴とする発光体である。
【0006】
この発光体は、異なる半導体相互の接合面を形成するとともに、少なくとも一方の半導体層は連続した層、かつ、半導体粒子により構成される。また、他方の半導体層は連続した絶縁体層中に前記一方の半導体層の組成とは異なる半導体組成が複数別個独立して配置されている。このような構造により、この発光体は、極めて薄い構造を有し、また、別個独立して配置されている複数の半導体領域において、それぞれが発光することで擬似面発光することができる。このように、それぞれの半導体領域は発光部となる。それぞれの半導体領域(発光部)で発生した熱は、発光面全体に拡散されるため、放熱効率を高められる。さらに、複数の発光部で発生した光が連続した半導体層を透過する際に、半導体層を構成する半導体粒子により散乱するので、複数の独立した発光部とそれ以外の領域との明るさの差が少なくなる。また、複数の発光部で発生した光は発光面方向だけでなく、あらゆる方向へと放射され、発光体を構成する各層で反射,散乱するため、輝度ムラを低減することができる。また、前記複数の発光部が等間隔であるので、発光面内における部分的な散乱光の強弱の発生を抑制できるので、輝度ムラを抑制することができる。
【0007】
本発明において、前記第1の半導体層又は前記第2の半導体層は、一方が連続した層であり、他方が複数の部分に分かれていて、かつ連続した層は半導体粒子により形成されていることが好ましい。このように、複数の発光部を構成する層に、連続した半導体層を設けることにより、複数の発光部で発生した光は連続した半導体層で散乱する。前記連続した半導体層は透明又は半透明の粒子で構成され、複数の発光部から発生した光が前記粒子を透過する際、散乱光となるため、面全体が発光しているような擬似面発光体として機能する。その結果、この発光体は、同一面における輝度ムラを低減することができ、また発光部からの発熱が発光体全面に伝わり放熱されるため、放熱効率が高く、更に連続した絶縁体層に熱伝導性の高い材料を用いることで、より放熱が促され、局所的な発熱を低減することができる。
【0008】
本発明において、前記第1の半導体層の前記接合面とは異なる面に設けられる前記電極は、前記複数の半導体領域にそれぞれ別個独立して通電される様パターニングされ、かつ前記パターニングされた電極下部に、前記半導体領域に対応したスイッチング素子を有することが好ましい。スイッチング素子により、複数の発光部の発光を個別に制御することができる。その結果、この発光体は、輝度ムラをより低減するような順序で発光部を発光させたり、消費電力がより低減するような方法で発光部を発光させたりすることができる。
【0009】
本発明は、第1の半導体層と第2の半導体層とが接合されるとともに、前記第2の半導体層は、同一組成かつ連続した層であり、前記第1の半導体層は、連続した絶縁物の層に、前記第2の半導体層とは異なる組成で構成された複数の半導体領域が、それぞれ別個独立して等間隔で配置された構造を持つ半導体・絶縁体複合層であるとともに、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とが接合される部分で発光する複数の発光部と、前記半導体層に電圧を印加するための電極と、を含むことを特徴とする発光体である。
【0010】
この発光体は、第1の半導体層と、前記第1の半導体層とは異なる第2の半導体層とを接合するとともに、少なくとも一方は連続した半導体層を有する。そして、半導体層は、第1の半導体層と第2の半導体層との接合部の近傍に、複数の発光部を有する。第1の半導体層及び第2の半導体層は、いずれも薄膜なので、この発光体は、極めて薄い構造とすることができる。また、この発光体は、別個独立して配置されている複数の発光部が、それぞれ発光することで擬似面発光することができる。発光部で発生した熱は、発光体の発光面全体に拡散されるため、この発光体は放熱効率が向上する。さらに、半導体層を半導体粒子で構成することにより、複数の発光部で発生した光が連続した半導体層を透過する際に、前記半導体粒子により散乱する。その結果、複数の独立した発光部とそれ以外の領域との明るさの差が少なくなる。また、複数の発光部で発生した光は発光面方向だけでなく、あらゆる方向に放射され、発光体を構成する各層で反射,散乱する。その結果、放射光は複雑に反射、散乱を繰り返し、放射光は放射面において平均化された放射光を発するため、この発光体は、放射面における輝度ムラを効率よく低減することができる。
【0011】
本発明において、前記複数の発光部は、等間隔で配置されることが好ましい。このように、複数の発光部を等間隔とすることにより、発光体の発光面内における部分的な散乱光の強弱の発生を抑制できるので、輝度ムラを効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、面発光する発光体の薄型化、放熱の効率化、輝度ムラの低減のうち、少なくとも1つを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る発光体の平面図である。
【図2−1】図2−1は、本実施形態に係る発光体の平面図である。
【図2−2】図2−2は、本実施形態に係る発光体の平面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る発光体の断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る発光体の断面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る発光体の断面図である。
【図6】図6は、スイッチング素子を有する発光体の制御回路の一例を示す回路図である。
【図7】図7は、本実施形態おける第1の発光体の製造方法を示すフローチャートである。
【図8−1】図8−1は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図8−2】図8−2は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図8−3】図8−3は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図8−4】図8−4は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図8−5】図8−5は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図9】図9は、本実施形態おける第1の発光体の製造方法を示すフローチャートである。
【図10−1】図10−1は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−2】図10−2は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−3】図10−3は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−4】図10−4は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−5】図10−5は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−6】図10−6は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−7】図10−7は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−8】図10−8は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【図10−9】図10−9は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
図1、図2−1、図2−2は、本実施形態に係る発光体の平面図である。発光体1、1’、1’’は、複数の発光部2を有する平板状の素子である。発光体1、1’、1’’は、複数の独立した発光部2を同一の面内で発光(点発光)させることにより、擬似的に面発光する発光素子である。それぞれの発光部2は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)である。すなわち、発光体1、1’、1’’は、複数のLEDを同一(共通)の基板(基板)に作製したものである。この点で、発光体1、1’、1’’は、部品としてのLEDを、例えば、一つの基板に複数実装し取り付けた発光体とは異なる。
【0016】
図1に示す発光体1は、複数の発光部2が、X−Yの二次元座標系において、格子の交点に配列(格子状に配列)されている。複数の発光部2の配列間隔Pは、等間隔であることが好ましい。等間隔とすることにより、連続した層の面内での散乱光の強度のバラツキを抑制できるので、結果として、発光体1の輝度ムラを抑制できるので好ましい。この例では、X方向に隣接する発光部2の配列間隔XpとY方向に隣接する発光部2の配列間隔Ypとが等しい、すなわち、Xp=Yp=Pである。このようにすれば、それぞれの発光部2を発光させて擬似的に面発光させた場合、発光体1の輝度ムラを低減できるので好ましい。このように、発光体1は、2方向(この例ではX方向及びY方向)において、複数の発光部2の配列間隔が等しければ、発光体1の輝度ムラ低減の効果を得ることができる。配列間隔Pの範囲としては、発光部2の等価直径をDe(De=4×S/C、Sは柱状部分の断面積、Cは柱状部分の周長)とすると、P−De=0.1mm以上10mm以下が好ましい。この配列間隔Pが狭すぎると、発光面に対する発光部が多くなり、発光部からの発熱が増加するおそれがある。また、配列間隔Pが広すぎると、連続した半導体層を構成する粒子による散乱が不十分で、輝度ムラが発生するおそれがある。上述した配列間隔Pの範囲内において、配列間隔Pをより狭くした配列の方が輝度ムラ低減に関してはより効果的である。
【0017】
図2−1に示す発光体1’は、複数の発光部2が、X−Yの二次元座標系において、千鳥状に配列されている。複数の発光部2が千鳥配列される場合でも、複数の発光部2の配列間隔Pは、等間隔であることが好ましい。等間隔とすることにより、連続した層の面内での散乱光の強度のバラツキを抑制できるので、結果として、発光体1’の輝度ムラを抑制できるので好ましい。発光体1’は、隣接する発光部2の配列間隔Pが等しくなっている。このようにすれば、それぞれの発光部2を発光させて擬似的に面発光させた場合、発光体1’の輝度ムラを低減できるので好ましい。
【0018】
図2−2に示す発光体1’’は、隣接する発光部2同士の配列間隔がすべてPとなるように複数の発光部2が配列されている。発光体1’’は、隣接する3個の発光部2で作られる三角形Sqが正三角形となっている。すなわち、三角形Sqのそれぞれの内角θは、すべて60度である。このようにすれば、隣接する発光部2同士の配列間隔がすべて等しくなるため、それぞれの発光部2を発光させて擬似的に面発光させた場合、発光体1の輝度ムラをより低減できる。次に、発光体1、1’、1’’の内部構造を説明する。以下においては、発光部2の配列は格子状、すなわち、発光体1の発光部2の配列を例とするが、他の配列でも同様である。
【0019】
図3から図5は、本実施形態に係る発光体の断面図である。発光体1は、半導体層4と、基板3と、第1電極5A及び第2電極5Bと、複数の発光部2とを含む。本実施形態において、発光体1は、第2電極5Bの表面に透明の保護層6を有する。半導体層4は、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとが接合されているとともに、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとの少なくとも一方は、同一組成かつ連続した層であり、また、他方の半導体層は連続した絶縁体層中に前記一方の半導体層の組成とは異なる半導体組成が複数別個独立して配置されている。発光体1においては、第2の半導体層4Bが同一組成かつ連続した層であり、第1の半導体層4Aは、連続した絶縁物の層としての半導体絶縁層4Iに、第2の半導体層4Bとは異なる組成で構成された複数の半導体領域4Sが、それぞれ別個独立して等間隔で配置された構造を持つ半導体・絶縁体複合層である。本実施形態において、第2の半導体層4BはN型半導体であり、第1の半導体層4Aが有する半導体領域4SはP型半導体である。なお、第2の半導体層4BがP型半導体であり、第1の半導体層4Aの有する半導体領域4SがN型半導体であってもよい(以下同様)。なお、半導体層4Aと半導体層4Bとを構成するそれぞれの粒子サイズは5nm〜200nmが好ましい。更に、光散乱の効率を考慮すると20nm〜50nmがより好ましい。
【0020】
上述したように、発光体1は、第2の半導体層4Bが同一組成かつ連続した層である。第1の半導体層4Aは、複数の半導体領域(柱状部分)4Sを有している。複数の半導体領域4Sは、円柱形状又は多角柱形状等の柱状の形状となっている。本実施形態では、半導体絶縁層4Iに、複数の半導体領域4Sが設けられて第1の半導体層4Aとなる。半導体領域4Sは、柱状部分の直径D(柱状部分の断面が円形でない場合には等価直径De)が10μm以上1cm以下であることが好ましい。また、半導体層4の厚み(基板3の表面と直交する方向における寸法)は、50nm以上5000nm以下であることが好ましい。半導体領域4S及び半導体層4の寸法がこのような範囲であれば、発光部2としての抵抗値を抑えられ、かつ電流分布もある程度一定となるため、発光体1の輝度ムラを抑制できるので好ましい。また、半導体層4Aと半導体層4Bとのそれぞれの厚みは、前記半導体層4の厚みの範囲内であれば、特に限定されない。
【0021】
第1の半導体層4Aは、基板3の表面に形成される第1電極5Aと接するとともに、第2の半導体層4Bとも接している。第2の半導体層4Bの表面には第2電極5Bが設けられる。これら基板3上に形成された第1電極5Aと、第2の半導体層4Bの表面に設けられた第2電極5Bとを介して、半導体層4に電圧が印加される。複数の発光部2は、半導体層4に形成される。より具体的には、発光部2は、第2の半導体層4Bと第1の半導体層4Aが有する半導体領域4Sとの接合部(界面)の近傍である。すなわち、第2の半導体層4Bと第1の半導体層4Aが有する半導体領域4SとでLEDが構成される。本実施形態では、P型半導体である第1の半導体層4Aが有する半導体領域4Sに正電圧を印加することにより、半導体領域4SからN型半導体である第2の半導体層4Bに向かって電流が流れ、両者の接合部(PN接合部)近傍(より具体的には禁制帯の近傍)で発光する。発光体1は、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとの少なくとも一方(本実施形態では第2の半導体層4B)が、連続した層であり半導体粒子により構成される。このため、両者の接合部近傍に形成される複数の発光部2で発光した光は、連続した半導体層を構成する粒子により散乱される。その結果、発光体1は、半導体粒子により構成された連続した半導体層により輝度ムラが抑制できる。
【0022】
このように、発光体1は、同一の基板3に複数個の発光部2を有しているので、擬似的に面発光する。また、発光体1は、各発光部2の間、より具体的には複数の半導体領域4Sの間に、半導体絶縁層4Iを有している。LEDは、発光素子を大型化すると発熱及び電気特性が低下するという問題がある。この点について、発光体1は、大型化したLEDと比較して、小さな独立したLEDの発光部2を同一の基板3に形成して、擬似的に面発光させているので、面全体が発光部となっている面発光体と比べて発熱量は小さく、また発光面全体で発熱を放熱することができる。このため、発光体1は、全体の発熱を効率的に放熱することができる。また、発光体1は、半導体絶縁層4Iに、放熱性に優れた樹脂又は酸化物を用いることにより、発光部2で発生した熱は、発光体1の表面へ伝わりやすくなる。その結果、発光体1は、発光に起因する発光体1の昇温が抑制される。また、発光体1の昇温が抑制されることにより、発光体1は、電気特性の低下も抑制される。
【0023】
図4に示す発光体1aは、上述した発光体1と同様であるが、第1の半導体層4Aと第2の半導体層4Bとの位置関係が反転している。すなわち、第2の半導体層4Bが基板3側に、第1の半導体層4Aが第2電極5B側に配置される。第1の半導体層4Aが有する複数の半導体領域4Sと半導体絶縁層4Iとは、それぞれの表面に設けられる第2電極5Bと電気的に接続している。また、第2の半導体層4Bは、基板3上に形成された第1電極5Aと電気的に接続している。発光体1aの半導体層4は、第1電極5Aと第2電極5Bとを介して電圧が印加される。この発光体1aも、上述した発光体1と同様の作用、効果が得られる。発光体1、1aに示されるように、本実施形態において、第1の半導体層4A又は第2の半導体層4Bは、一方が同一組成かつ連続した1つの層であり、他方が複数の半導体領域4Sを有していればよい。
【0024】
図5に示す発光体1cは、上述した発光体1に、それぞれの発光部2に対応したスイッチング素子7を加えたものである。前記各スイッチング素子7は各々が独立して駆動するよう基板に配線される。各スイッチング素子7の上部には第1電極5A’が形成される。他の半導体層などの構造は、発光体1と同様である。発光体1cは、基板3と発光部2に対応して複数形成される第1の電極5A’との間にスイッチング素子7を有する。スイッチング素子7は、例えば、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)であるが、これに限定されるものではない。スイッチング素子7がTFTである場合、例えば、それぞれのスイッチング素子7のゲート等が基板3と電気的に接続される。このような構造により、発光体1cは、それぞれの発光部2と対向したスイッチング素子7を有する。発光体1cは、上述した発光体1、1aと同様の作用、効果に加え、それぞれの発光部2を独立して発光させることができるという効果を有する。このため、発光体1cは、それぞれの発光部2の発光が制御されることにより、輝度ムラがより低減される。
【0025】
図6は、スイッチング素子を有する発光体の制御回路の一例を示す回路図である。発光体1cは、制御装置8と、ゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc・・・と、ソース信号制御素子9Sa、9Sb、9Sc・・・と、電源10と、を有する。ゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc・・・及びソース信号制御素子9Sa、9Sb、9Sc・・・は、例えば、FET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)、バイポーラトランジスタ等のスイッチング素子である。この例において、スイッチング素子7は、TFTである。TFTは、FETの一種である。
【0026】
発光体1cが有する複数のスイッチング素子7は、例えば、図6に示すようなマトリックス回路により制御される。前記マトリックス回路は、複数のゲート信号ラインGa、Gb、Gc・・・と、複数のソース信号ラインSa、Sb、Sc・・・とを有している。複数のゲート信号ラインGa、Gb、Gc・・・は、それぞれ複数のスイッチング素子7のゲートに接続されている。複数のソース信号ラインSa、Sb、Sc・・・は、それぞれ複数のスイッチング素子7のソースに接続されている。それぞれのスイッチング素子7のドレインは、それぞれ第1の電極5A’を介して第1の半導体層4Aに接続されている。第2の半導体層4Bは、第2電極5Bを介してグランド11に接続されている。電源10は、ゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc及びソース信号制御素子9Sa、9Sb、9Scに正電圧を印加している。
【0027】
発光部2を点灯させる場合、制御装置8は、ゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc・・・の少なくとも一つをONにする。すると、ゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc・・・に接続されているスイッチング素子7のゲートに正電圧が印加されるので、ONになったゲート信号制御素子9Ga、9Gb、9Gc・・・に接続されているスイッチング素子7がONになる。この状態で、制御装置8は、ソース信号制御素子9Sa、9Sb、9Sc・・・の少なくとも一つをONにすると、ソース信号制御素子9Sa、9Sb、9Sc・・・に接続されているスイッチング素子7のソースとドレインとを介して、ドレインに接続されている半導体領域4Sに正電圧が印加される。すると、半導体領域4Sから第2の半導体層4Bに向かって電流が流れ、半導体層4の発光部2が発光する。
【0028】
例えば、制御装置8が、ゲート信号制御素子9Gbとソース信号制御素子9SaとをONにしたとする。すると、ゲート信号ラインGbに接続されている複数のスイッチング素子7がONになり、ソース信号ラインSaに接続されているスイッチング素子7のソースに正電圧が印加される。その結果、ゲート信号ラインGbとソース信号ラインSaとが交差する部分(図6の矢印Aで示す部分)の発光部2が発光する。制御装置8は、ゲート信号制御素子9Gbとソース信号制御素子9Saとの少なくとも一方をOFFにすることにより、ゲート信号ラインGbとソース信号ラインSaとが交差する部分の発光部2を消灯させることができる。このような回路構造により、制御装置8は、発光体1cが有する任意の発光部2を発光させることができる。次に、本実施形態に係る発光体の製造方法を説明する。
【0029】
(第1の発光体の製造方法)
図7は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示すフローチャートである。図8−1から図8−5は、本実施形態における第1の発光体の製造方法を示す説明図である。第1の発光体の製造方法は、図3に示す発光体1を製造する方法の一例である。ステップS11において、基板3を準備する。基板3は、ガラス基板、樹脂基板、フィルム等様々な種類を用いることができる。次に、ステップS12に進み、基板3の表面に、第1電極5Aを形成する。このとき、発光体全面から光を取出したい場合は、基板3、第1電極5Aともに透明なものを用い、光の取出しが積層方向の一方向のみの場合は、光をよく反射することのできる電極材を用いる。次に、ステップS13に進み、半導体絶縁層4I(絶縁部)を第1電極5Aの表面に形成する(図8−1)。
【0030】
半導体絶縁層4Iは、後述する複数の半導体領域4Sに対応する部分が除外されるように基板3の表面に形成された第1電極5Aの表面に、半導体絶縁層4Iの原料を分散させた塗料を印刷又はインクジェット印刷することにより形成する。又は、半導体絶縁層4Iは、半導体絶縁層4Iの原料となる酸化物を、真空成膜等により複数の半導体領域4Sに対応する部分が除外されるように第1電極5Aの表面に成膜することにより形成される。
【0031】
半導体絶縁層4Iに樹脂を用いる場合には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の一般的なLED封止材に、絶縁性及び放熱性に優れた無機物質(例えば、Al、MgO、AlN、BN等)が混合されたものを使用することができる。また半導体絶縁層4Iを樹脂以外で形成する場合には、Al、MgO、AlN、BN等を真空成膜して形成することができる。これらの材料は、放熱性に優れ、かつ絶縁性を有するので、発光部2で発生した熱を発光体1の外部に効率よく伝えることができる。その結果、発光体1の昇温を抑制して、耐久性低下を抑制できるので好ましい。
【0032】
印刷により半導体絶縁層4Iを形成する場合、所望のパターンのスクリーン版を使用することができる。真空成膜により半導体絶縁層4Iを形成する場合、所望のパターンに加工したメタルマスクを介して、半導体領域4Sに対応する部分が除外されるように半導体絶縁層4Iを成膜し形成する。半導体絶縁層4Iが第1電極5Aの表面に形成されたら、樹脂を使用した場合のみ乾燥して硬化させる。このようにして、半導体絶縁層4Iが第1電極5Aの表面に形成される。
【0033】
次に、半導体領域4Sを形成するステップS14に進む(図8−2)。本実施形態においては、半導体領域4Sとなる半導体の粒子を分散させた塗料を半導体絶縁層4Iの間、つまり第1電極5A表面に塗布することにより、複数の半導体領域4Sを形成する。
【0034】
前記塗料は、半導体領域4Sの材料、本実施形態ではP型の半導体材料粒子と、有機溶剤とを混合し、これらを分散させることにより作製される分散溶液である。この塗料を用いて、スクリーン印刷又はインクジェット印刷等により、半導体領域4Sのパターンで第1電極5Aの表面に印刷することにより、半導体領域4Sを形成する。印刷後、塗料を乾燥させて、圧縮加工を施す。このようにして第1の半導体層4Aが第1電極5Aの表面に形成される。
【0035】
半導体領域4Sは、透明又は半透明の半導体材料粒子の集合体である。このため、発光部2で発光した光は、半導体材料粒子を透過し散乱されることにより、発光体1の輝度ムラが低減される。
【0036】
次に、ステップS15に進み、半導体領域4S及び半導体絶縁層4Iの表面に第2の半導体層4Bを形成する(図8−3)。本実施形態においては、第2の半導体層4Bの半導体粒子を分散させた塗料を半導体領域4S及び半導体絶縁層4Iの表面に塗布することにより、第2の半導体層4Bを形成する。前記塗料は、第2の半導体層4Bの材料、本実施形態ではN型の半導体材料粒子と、有機溶剤とを混合し、これらを分散させることにより、分散溶液を作製する。この分散溶液を塗料とする。この塗料を用いて、スクリーン印刷又はインクジェット印刷等により、半導体領域4S及び半導体絶縁層4Iの表面に印刷することにより、第2の半導体層4Bを形成する。印刷後、塗料を乾燥させて、圧縮加工を施すことにより、P/N(又はN/P)接合が形成される。本実施形態においては、第2の半導体層4B及び第1の半導体層4Aが有する半導体領域4Sは、いずれも半導体材料粒子の集合体である。このため、第2の半導体層4Bと第1の半導体層4Aが有する半導体領域4SとのP/N(又はN/P)接合は、半導体粒子によるP/N(又はN/P)接合となる。
【0037】
本実施形態においては、第2の半導体層4Bと第1の半導体層4Aが有する半導体領域4Sは、半導体材料粒子の集合体である。このため、発光部2で発光した光は、前記半導体材料粒子により散乱することにより、発光体1の輝度ムラが低減される。
【0038】
次に、ステップS16に進み、第2の半導体層4Bの表面に第2電極5Bを形成する(図8−4)。この例において、第2電極5Bは、透明電極である。第1電極5A及び第2電極5Bは、P/N(又はN/P)接合部分の取出し電極となる。第2電極5Bは、光の取り出し効率を考慮して、透過率が高く、屈折率の低い材料で形成されることが好ましい。例えば、ITO、ZnO、SnO、TiO等を第2電極5Bとして用いることができる。これらの材料を、例えば、第2の半導体層4Bの表面に真空成膜又は塗布することによって第2電極5Bを形成する。
【0039】
次に、ステップS17に進み、第2電極5Bの表面に保護層6を形成して、発光体1が完成する(図8−5)。保護層6も、第2電極5B同様に、光の取り出し効率を考慮して、透過率が高く、屈折率の低い材料で形成されることが好ましい。保護層6は、材料を、例えば、第2電極5Bの表面に真空成膜又は塗布することによって形成する。このような工程により、発光体1を製造することができる。図4に示す発光体1aは、第1の発光体の製造方法を、ステップS11、ステップS12、ステップS15、ステップS13、ステップS14、ステップS16、ステップS17の順に実行することにより製造することができる。
【0040】
(第2の発光体の製造方法)
図9は、本実施形態おける第2の発光体の製造方法を示すフローチャートである。図10−1から図10−9は、本実施形態における第2の発光体の製造方法を示す説明図である。第2の発光体の製造方法は、図5に示す発光体1cを製造する方法の一例である。ステップS31において、基板3を準備する。基板3は、第1の発光体の製造方法と同様に、様々な種類を用いることができる。次に、ステップS32に進み、準備した基板3の表面に後述するそれぞれのスイッチング素子7(図10−2参照)に対応する部分を空けて半導体絶縁層4Iaを形成する(図10−1)。そして、半導体絶縁層4Iaの間に各スイッチング素子7を形成・配線する(図10−2)。次に、ステップS33に進み、基板3の表面に形成した各スイッチング素子7及び半導体絶縁層4Iaの表面に、各スイッチング素子7の表面の一部及び半導体絶縁層4Iaを覆うように半導体絶縁層4Ibを形成してから(図10−3)、第1電極5A’を形成する(図10−4)。スイッチング素子7は、真空成膜、塗布又は印刷によって形成する。発光体1cに柔軟性を持たせる必要がある場合、基板3は、例えば、樹脂のフィルム等を用いる。発光体1cに柔軟性を持たせる必要がない場合、スイッチング素子7は、Si等の一般的な材料を用いて形成される。基板3にPET(Polyethylene Terephthalate)、PEN(Polyethylene Naphthalate)等の柔軟な材料を用いる場合は、フラーレン又はペンタセン等の有機半導体等でスイッチング素子7が形成される。
【0041】
次に、ステップS34に進み、まず、それぞれの第1電極5A’表面の一部及び半導体絶縁層4Ibの表面に、後述する半導体領域4Sに対応する部分が除外されるように半導体絶縁層4Iを形成する(図10−5)。ここまでの工程で形成された、半導体絶縁層4Ia、4Ib、4Iが絶縁部となる。そして、半導体絶縁層4Iの間、つまりそれぞれの第1電極5A’の表面に半導体領域4Sを形成することにより、第1の半導体層4Aが形成される(図10−6)。次に、第1の半導体層4Aの表面に、第2の半導体層4Bが形成される(ステップ35、図10−7)。その形成方法は、第1の発光体の製造方法と同様である。次に、第2電極5Bの形成(ステップS36、図10−8)及び保護層6の形成(ステップS38、図10−9)が行われて、発光体1cが完成する。ステップS34からステップS38は、第1の発光体の製造方法におけるステップS13からステップS17と同様なので、説明は省略する。このような工程により、発光体1cを製造することができる。
【0042】
以上、本実施形態に係る発光体は、異なる半導体層を接合するとともに、少なくとも一方の半導体は同一組成かつ連続した層とした半導体層を有し、この連続した半導体層は、半導体粒子により構成され、前記半導体層に複数の独立した発光部を形成する。このような構造により、本実施形態に係る発光体は、擬似的に面発光する。このとき、本実施形態に係る発光体は、複数の発光部で発生した光が連続した層を構成する粒子により散乱されるので、輝度ムラが低減される。また、本実施形態に係る発光体は、大型化したLEDによって面発光させる発光体と比較して、小さな発光部(LED)の集合体により擬似的に面発光させる。このため、面全体が発光する面発光体と比べ発熱量及び消費電力を低減することができ、また発光部からの発熱を面全体で放熱するため、放熱効率が高い。これらの作用により、発光体は耐久性の低下が抑制される。また、本実施形態に係る発光体は、LEDからの光を導光板に導いて面発光させる発光体と比較して、寸法を抑制できるとともに部品点数も低減できる。さらに、本実施形態に係る発光体は、複数の発光部から発生した光が、連続した半導体層を構成する粒子により、面全体に分散されるので、輝度ムラも抑制できる。
【0043】
また、本実施形態に係る発光体の製造方法は、半導体材料等と溶剤とを混合して得られた塗料を印刷又は塗布等することにより、半導体層及び電極等を形成して発光体を製造する。このように、本実施形態に係る発光体の製造方法は、半導体層及び電極の材料を含む塗料を用いるので、比較的簡易なプロセスで、比較的安価に発光体を製造することができる。また、本実施形態に係る発光体の製造方法は、半導体層等を形成する対象(基板)の形状又は材質に対する自由度が大きい。例えば、柔軟性のあるフィルムに半導体層等を形成したり、曲面に半導体層を形成したりすることができる。その結果、本実施形態に係る発光体の製造方法は、さまざまな形状又は仕様の、面発光する発光体を製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、1’、1’’、1a、1c 発光体
2 発光部
3 基板
4 半導体層
4A 第1の半導体層
4B 第2の半導体層
4I 半導体絶縁層
4S 半導体領域
5A、5A’ 第1電極
5B 第2電極
6 保護層
7 スイッチング素子
8 制御装置
9 信号制御素子
10 電源
11 グランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体層と第2の半導体層とで構成され、
前記第2の半導体層は、同一組成かつ連続した層であり、
前記第1の半導体層は、連続した絶縁物の層に、前記第2の半導体層とは異なる組成で構成された複数の半導体領域が、それぞれ別個独立して等間隔で配置された構造を持つ半導体・絶縁体複合層であり、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とは接合し、さらに、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との接合面とは異なる面は、電極と接合していることを特徴とする発光体。
【請求項2】
前記第1の半導体層の前記接合面とは異なる面に設けられる前記電極は、前記複数の半導体領域にそれぞれ別個独立して通電される様パターニングされ、かつ前記パターニングされた電極下部に、前記半導体領域に対応したスイッチング素子を有する請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
第1の半導体層と第2の半導体層とが接合されるとともに、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との少なくとも一方は、同一組成かつ連続した一つの層である半導体層と、
第1の半導体層と第2の半導体層とが接合される部分で発光する複数の発光部と、
前記半導体層に電圧を印加するための電極と、
を含むことを特徴とする発光体。
【請求項4】
前記複数の発光部は、等間隔で配置される請求項3に記載の発光体。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図10−8】
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【図10−9】
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【公開番号】特開2012−182247(P2012−182247A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43060(P2011−43060)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】