説明

発光標示装置

【課題】各光標示装置の標準電波の受信状態が各設置場所によって様々に異なっている場合でも、常に良好な受信結果が得られようにする。
【解決手段】太陽電池1を有する電源部と、外部の標準電波を受信するアンテナ3及び受信回路9と、ノイズにより乱調された受信信号を各々異なる解析プログラムで同時並列的に復元する2つの制御回路4,5と、復元された受信信号が正規のものに最も近似している制御回路4,5の受信信号を発光信号として選択する発光制御回路7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自発光式デリニエータ、自発光式カーブサイン及び自発光式道路鋲等の発光標示装置であって、道路等に設置され自動車の運転者及び歩行者等に注意を喚起するもの等に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、道路等には自発光式デリニエーター、自発光式カーブサイン及び自発光式道路鋲等を点滅させるなどして、自動車の運転者(以下、運転者という)及び歩行者に正しい道路状況を知らせたり、安全走行を促すようにしたものが提案されている。
【0003】このような発光標示装置は、多くの場合道路の路肩部分又は路側帯に沿って設けることで、道路の進行方向や道路形状及び曲がり具合等を運転者に知らせるという効果を有しており、そのために複数を一斉点滅等して規則的に発光させる事が望ましい。そこで、発光標示装置の発光を駆動制御する方式として、有線,電波等を使った無線同期システム等が実用化されている。
【0004】その例として、従来、外部標準信号を受信するアンテナ、受信部、発光タイミング発生部及び発光部を備え、アンテナ及び受信部で受信した外部標準信号に基づいて発光タイミングを決定するパルス信号を発生し、発光部を発光制御することにより、複数個の自発光交通制御装置の発光タイミングを容易且つ正確に制御することができる自発光交通制御装置が提案されている(従来例1:特開昭62−52799号公報参照)。
【0005】また、標準電波を受信し、且つ標準電波に掛けられた変調信号を復調する標準電波受信手段、標準電波受信手段の出力信号から所定周波数の信号を検出する周波数検出手段、所定周期の計数信号を出力するタイマー、及び制御手段を具備し、この制御手段は、周波数検出手段の出力を読取り所定周波数の信号を検出したことを示す信号Aを読み込んだ際に、経過時間の計測を開始する基準時刻を信号Aに基づいて設定し、基準時刻から所定単位時間毎の経過を計数信号により計測し、昼夜判別手段から夜間を示す信号が入力したことを確認した後、基準時刻からの所定単位時間毎の時間経過に基づいて発光部を点滅させるように構成することにより、送信手段が全く必要なく、各発光部がタイミングを合わせて点滅する視線誘導標識が公知である(従来例2:特開平10−176312号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例1,2では、外部の標準電波を受信しこれにより発光体の点滅のタイミングを取っているが、受信する標準電波は周囲の森林,山,崖等の自然環境、また建築物,ダム,橋,鉄塔等の人口的建造物によって反射を繰返し、この反射成分は正規の標準電波に干渉してノイズとなる。また、電線等の独立したノイズ源によっても干渉を受ける。このように、受信する標準電波はノイズにより常に変化しているといった問題があった。
【0007】また、外部の標準電波を利用する方式として、長波を使った標準電波を受信する方式があるが、この方式では標準電波は無変調であり、受信回路によって信号の立ち上がり及び立ち下がりを検知する必要がある。この受信回路の方式では、受信信号のON(受信開始)−OFF(受信終了)の時間長がノイズ等の電波による干渉で狂い易いものであった。
【0008】従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、発光及び点滅のタイミングを取るために受信する外部の標準信号等がノイズによって干渉されても、干渉を補正して正規の信号波形に復調すると共に、干渉の度合いや干渉による信号形態に応じて最適な補正となるよう制御することによって、発光及び点滅のタイミングの同期を妨害されないことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の発光標示装置は、太陽電池を有する電源部と、外部の標準電波を受信する受信部と、該受信部から出力された受信信号を受け取りノイズにより乱調した受信信号を各々異なる解析プログラムで同時並列的に復元する複数の制御回路と、該制御回路に接続され且つ復元された受信信号が正規のものに最も近似している制御回路の受信信号を発光信号として選択する発光制御回路とを有することを特徴とする。
【0010】本発明は、上記の構成により、同一の時間帯に受信された標準電波を複数の制御回路(解析部)に送り、それぞれ異なる解析方法から成る解析プログラムで同時並列的に受信信号を分析し復元する。その結果、発光標示装置の各設置場所におけるその時々の受信電波状態に最も適した受信信号の解析方法を選択することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の発光標示装置を以下に説明する。図1は本発明の発光標示装置のブロック回路図である。同図において、1は結晶質シリコン,アモルファスシリコン,GaAs等から成る太陽電池、2は発電電流が太陽電池1側へ逆流するのを防止するダイオード、3は外部の標準電波を受信するアンテナ、4は受信信号を解析する制御回路(解析部)A、5は制御回路A(4)と異なる解析プログラムを内蔵した制御回路(解析部)B、6はLED等の発光体、7は復元された受信信号が正規のものに最も近似した制御回路A(4),B(5)の受信信号を発光信号として選択する発光制御回路、8は鉛蓄電池,Ni−Cd電池等の二次電池であるDC電源、9は受信回路である。ここで、電源部は太陽電池1,ダイオード2及びDC電源8から成り、他は受信信号解析部であり、発光標示装置はこれら電源部と受信信号解析部の2系統の回路から構成される。
【0012】上記発光標示装置は、昼間は太陽電池1により発電した電気エネルギーをDC電源8に蓄電しておき、外界の照度を検出するセンサーを設けた発光制御回路7により外界の照度が所定以下になった時に夜と判断し、発光体6の発光及び点滅を開始する。尚、発光体を発電すると共に発光させる場合は、必ずしもDC電源8は必要ではない。
【0013】この時、アンテナ3により外部の標準電波を受信し、点滅のタイミングに利用する。前記標準電波は、例えば長波帯(30kHz〜300kHz)の電波であって、40kHzのものである。この40kHzの標準電波は、従来より電波強度が10倍と強いものが使用される予定であるが、ただエアコン等のスイッチングノイズや電離層の変化による干渉を受け易いという欠点があり、送信所からの距離が離れると前記干渉が顕著になるため、本発明の発光標示装置が有効に働くことになる。
【0014】その他、上記長波帯の電波に限らず、日本標準時(JST)を知らせる標準電波(JJY)でその搬送波の周波数が5MHz,8MHz,10MHzの短波帯のもの、日本放送協会(NHK)等のラジオ放送の時報,時刻の信号等を標準電波として用いても良い。
【0015】本発明において、発光信号とは、発光体を点滅させるためのON(発光開始)−OFF(発光終了)を指示する信号、又は連続的な発光を開始させたり発光を停止させるのを指示する信号である。
【0016】また、図2は本発明の制御回路A(4),B(5)、発光制御回路7、受信回路9を部分拡大したブロック回路図である。同図において、例えば解析プログラム(以下、ソフトという)1〜6は各々以下の〔1〕〜〔6〕のような解析及び補正を行うものである。
【0017】〔1〕ソフト1は、発光標示装置が送信所から遠方にある場合、電離層からの反射波によって地上波(正規の標準電波)と干渉を起こし、受信信号波形が時間軸方向に短く痩せる現象に対する補正を行う。
【0018】〔2〕ソフト2は、発光標示装置が送信所から遠方にある場合、上記〔1〕と同様の理由で受信信号波形が時間軸方向に短くなり過ぎパルス波形になる現象に対する補正を行う。
【0019】〔3〕ソフト3は、発光標示装置が送信所に比較的近く(500km以内)、受信信号の電波強度は十分だがビル等により反射波が発生し干渉を起こす場合の補正を行う。
【0020】〔4〕ソフト4は、発光標示装置が送信所からの標準電波を殆ど減衰なしに受信可能な環境にあり(100km以内)、補正を行わない。
【0021】〔5〕ソフト5は、発光標示装置が送信所から遠方にあり過ぎて標準電波が弱く、受信信号波形の欠落の頻度が高い場合の補正を行う。
【0022】〔6〕ソフト6は、発光標示装置の近くに電線等のノイズ源があり、ノイズ波形を間引く補正を行う。
【0023】上記ノイズ源としては、図5に示すように、道路20の路肩部に沿って設置され積雪時等に路肩部を標示する、発光標示装置の一種である自発光式矢羽サイン21,22,23の場合、自発光式矢羽サイン21は近くに存在するビル24の反射波がノイズ源となり、自発光式矢羽サイン23にとっては電線25がノイズ源であり、また自発光式矢羽サイン22に対しては電離層からの反射波26がノイズ源となり得る。
【0024】そして、前記制御回路A(4),B(5)及び発光制御回路7の動作を図4のフローチャートに示す。まず、プロセス10A,10Bにおいて、制御回路A,Bでそれぞれ動作ソフトA,Bを選択する。プロセス11A,11Bで、動作ソフトA,Bにより同時並列的に解析しその解析結果から受信信号波形を各々復元する。次いで、プロセス12では、正規の標準信号波形を記憶している発光制御回路7において、制御回路Aによる復元波形と制御回路Bによる復元波形とを比較する。その結果、プロセス13で制御回路A(又はB)の復元波形が正規の標準電波の波形により近似しているか否かを判定し、YESならばプロセス14,15、NOならプロセス16,17を実行する。
【0025】プロセス14では、制御回路Aの補正がより近似しているとしてその出力に基づき、発光制御回路7で点滅タイミングを修正する。例えば、発光体の発光開始(ON)タイミングを復元波形の立ち上がりに同期させ、発光体の発光終了(OFF)タイミングを復元波形の立ち下がりに同期させる。そして、プロセス15で制御回路Bの動作ソフトBを変更する。一方、プロセス16では、制御回路Bの補正がより近似しているとしてその出力に基づき、発光制御回路7で点滅タイミングを修正する。そして、プロセス17で制御回路Aの動作ソフトAを変更する。
【0026】このように動作ソフトA,Bを変更していき、各発光標示装置に最適な動作ソフトA,Bを最終的に選択し、受信電波状況が変化しそれに伴って最適な動作ソフトA,Bが変更されるまで、一定の動作ソフトA,Bで補正を行う。一定の動作ソフトA,Bを使用している期間中は、動作ソフトA,Bを有しない制御回路A,B側では、動作ソフトA,B以外の全ソフトについて常時それらを変更しつつ動作ソフトA,Bと解析を競わせることになる。即ち、制御回路Aのソフトを1〜3及び(4)〜(6)、制御回路Bのソフトを4〜6及び(1)〜(3)と表記したのは、例えば制御回路Aで最終的に動作ソフトAとしてソフト1を選択した場合、受信電波状況が変化するまで、制御回路B側で動作ソフトBとしてソフト2〜6の中から選択し、ソフト1と競わせるようにしたことを示す。
【0027】また、図3に標準電波の電波信号波形(以下、波形と略す)及び干渉により乱調した受信信号の波形を示す。同図において、(a)は送信局から発信された周波数40kHz,信号幅0.2secの波形「P(ポジション)」、(b)は送信局から発信された周波数40kHz,信号幅0.8secの波形「0」、(c)は送信局から発信された周波数40kHz,信号幅0.5secの波形「1」、(d)は前記波形「P」がノイズの干渉により乱調した例、(e)は前記波形「1」がノイズの干渉により乱調した例である。
【0028】このように、送信局から常時同一波形の標準電波が発信されたとしても、電波が空間を伝搬するうちに受ける様々な干渉のために、立ち上がり及び立ち下がりのタイミングが変動する。実際には、送信局からは(a),(b),(c)のような3種類の波形の標準電波が送信されており、これらを区別することで点滅のタイミングを取るためのデータとなるが、これらの違いは立ち上がり時間が異なるだけであるので、(d),(e)のように波形が変化した場合には、元の波形がどれであったかを特定するのは困難である。よって、受信状態が良好でない状況では、元の波形の判別が出来ない比率が増加し、発光体の点滅作動開始のタイミングが同期しなくなる。
【0029】尚、上記(d)の波形は、例えば電力送電線、所謂電線等から放射されているノイズが標準電波に干渉して受信されるという現象により(a)の波形が変化したものであり、(e)の波形は、例えば電離層で反射した標準電波が地上波(正規の標準電波)と干渉により打ち消し合い、波形の一部が消えてしまうという現象により(c)の波形が変化した例である。
【0030】このような波形の歪みを解決する方法として、本発明では、ノイズの種類により受信信号の波形が干渉によってどのように変化をするかをデータとして持ち、且つ受信信号の波形から正規の波形(a)〜(c)を近似的に復元するソフトを複数個用意し、同一の受信信号の波形をそれぞれ異なる解析方法で同時並列的に解析する。前記ソフトは同時に何個並列処理させても良いし、適さないと判断したものを別個のソフト,補正パラメータ,補正数値等に置き換えても良く、最終的にその場所での受信電波状況に最適なソフトを選択する事を目的とする。この方式であれば、複雑な解析を専用に行う別個の解析装置を使用して電波そのものを解析する必要がないので、構造を簡略化する事ができる。
【0031】本発明において、前記制御回路A,Bは2つに限らず3つ以上あっても良く、動作ソフトA,Bの比較及び変更は受信の度に行う必要はなく、1回受信置き、2回受信置き等間欠的に行うことにより消費電力を小さくすることもできる。また、受信電波状況が変化し次の受信電波状況が確定するまで、前回の点滅タイミングを記憶しておきその状態で点滅を続行し、変化後の受信電波状況が判明した後に新たな点滅タイミングに変更するようにしても良い。
【0032】本発明の発光標示装置は、具体的には自発光式デリニエータ,自発光式カーブサイン,自発光式道路鋲,積雪時等に道路路肩部を指示する自発光式矢羽サイン等種々の自発光式の発光標示装置に適用できる。
【0033】かくして、本発明は、受信された標準電波を複数の制御回路(解析部)に送り、それぞれ異なる解析プログラムで同時並列的に受信信号を分析し復元する。その結果、各発光標示装置の各設置場所におけるその時々の電波状態に最も適した受信信号の解析及び補正方法を選択することができるという作用効果を有する。
【0034】尚、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更は何等差し支えない。
【0035】
【発明の効果】本発明は、ノイズにより乱調された受信信号を各々異なる解析プログラムで同時並列的に復元する複数の制御回路と、該制御回路に接続され且つ復元された受信信号が正規のものに最も近似している制御回路の受信信号を発光信号として選択する発光制御回路とを有することにより、各光標示装置の標準電波の受信状態が各設置場所によって様々に異なっている場合でも、常に良好な受信結果が得られ、発光体の点滅作動の開始タイミングを共に設置された他の発光体と同期させ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光標示装置のブロック回路図である。
【図2】図1の発光標示装置において、制御回路A,B及び発光制御回路を説明する部分拡大したブロック回路図である。
【図3】(a)は標準電波「P」の波形図、(b)は標準電波「0」の波形図、(c)は標準電波「1」の波形図、(d)は標準電波「P」がノイズにより干渉された場合の波形図、(e)は標準電波「1」がノイズにより干渉された場合の波形図である。
【図4】本発明の発光標示装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】発光標示装置の一種である自発光式矢羽サインのノイズ源を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1:太陽電池
2:逆流防止用のダイオード
3:アンテナ
4:制御回路A(解析部A)
5:制御回路B(解析部B)
6:発光体(LED:発光ダイオード)
7:発光制御回路
8:DC電源
9:受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】太陽電池を有する電源部と、外部の標準電波を受信する受信部と、該受信部から出力された受信信号を受け取りノイズにより乱調した受信信号を各々異なる解析プログラムで同時並列的に復元する複数の制御回路と、該制御回路に接続され且つ復元された受信信号が正規のものに最も近似している制御回路の受信信号を発光信号として選択する発光制御回路とを有することを特徴とする発光標示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−194990(P2000−194990A)
【公開日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−368289
【出願日】平成10年12月25日(1998.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】