発光素子の製造方法
【課題】サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することができる発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】この発光素子の製造方法は、III−V族化合物半導体層17が表面2aに形成されたサファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光L1を照射することにより、切断予定ライン5a,5bに沿って基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する工程と、その後に、基板2の裏面2bに光反射層を形成する工程と、その後に、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂を基板2の厚さ方向に伸展させることにより、基板2、半導体層17及び光反射層を切断予定ライン5a,5bに沿って切断し、発光素子を製造する工程と、を備える。
【解決手段】この発光素子の製造方法は、III−V族化合物半導体層17が表面2aに形成されたサファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光L1を照射することにより、切断予定ライン5a,5bに沿って基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する工程と、その後に、基板2の裏面2bに光反射層を形成する工程と、その後に、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂を基板2の厚さ方向に伸展させることにより、基板2、半導体層17及び光反射層を切断予定ライン5a,5bに沿って切断し、発光素子を製造する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板の表面にIII−V族化合物半導体層が形成されたウェハを切断して発光素子を製造する方法として、次のようなものが知られている。すなわち、サファイア基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成し、その改質領域を起点としてサファイア基板及びIII−V族化合物半導体層を切断する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−166728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような発光素子においては、発光効率を高めるために、サファイア基板の裏面に光反射層が形成される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することができる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光素子の製造方法は、III−V族化合物半導体層が表面に形成されたサファイア基板の内部に集光点を合わせて、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として、所定の切断予定ラインに沿って第1のレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、サファイア基板の裏面に光反射層を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断し、発光素子を製造する第4の工程と、を備える。
【0007】
この発光素子の製造方法では、サファイア基板の裏面に光反射層を形成する前に、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として第1のレーザ光を照射することにより、サファイア基板の内部に改質領域を形成する。これにより、第1のレーザ光の集光が光反射層によって阻害されないので、サファイア基板の内部に所望の改質領域を形成することができる。しかも、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面とするため、第1のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制することができる。更に、サファイア基板の内部に改質領域を形成するため、サファイア基板の裏面に所望の光反射層を形成することができる。以上のように、この発光素子の製造方法によれば、所望のIII−V族化合物半導体層及び光反射層が形成されたサファイア基板を所望の改質領域を起点として切断することができるので、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することが可能となる。なお、サファイア基板の内部とは、III−V族化合物半導体層が形成されているサファイア基板の表面上をも含む意味である。また、発光素子の製造方法は、第2の工程の前に、サファイア基板の表面にIII−V族化合物半導体層を形成する第1の工程を更に備えてもよい。
【0008】
また、第2の工程では、第4の工程においてサファイア基板の厚さ方向に伸展させられる亀裂が少なくともサファイア基板の表面に予め到達するように、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成してもよい。この場合、第4の工程において、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断することが容易となり、特に、III−V族化合物半導体層の切断精度を向上させることができる。
【0009】
或いは、第2の工程では、第4の工程においてサファイア基板の厚さ方向に伸展させられる亀裂がサファイア基板の裏面に予め到達するように、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成してもよい。この場合、第4の工程において、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断することが容易となり、特に、光反射層の切断精度を向上させることができる。
【0010】
また、第4の工程では、光反射層の側から切断予定ラインに沿ってナイフエッジを押し当てることにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。この場合、ナイフエッジの押し当てによってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って容易に切断することができる。
【0011】
また、発光素子の製造方法は、第3の工程の後かつ第4の工程の前に、光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を光反射層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、第4の工程では、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断してもよい。或いは、第4の工程では、光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を光反射層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。これらの場合、第2のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【0012】
また、発光素子の製造方法は、第3の工程の後かつ第4の工程の前に、サファイア基板の内部に集光点を合わせて、III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、第4の工程では、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断してもよい。或いは、第4の工程では、サファイア基板の内部に集光点を合わせて、III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。これらの場合、第3のレーザ光がIII−V族化合物半導体層に対して透過性を有しているため、第3のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【0013】
このとき、切断予定ラインの交差部分のみにおいて、第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射してもよい。この場合、第3のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのをより一層抑制しつつ、切断精度が要求される切断予定ラインの交差部分において、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の発光素子の製造方法において加工対象となるサファイア基板の斜視図である。
【図8】図7のサファイア基板の平面図である。
【図9】図8のサファイア基板にIII−V族化合物半導体層が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図10】図9のサファイア基板に保護テープが貼り付けられた状態でのウェハの部分断面図である。
【図11】図10のIII−V族化合物半導体層に凹部が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図12】図11のIII−V族化合物半導体層に電極が形成された状態でのウェハの部分平面図である。
【図13】図12のサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図14】図13のサファイア基板に光反射層が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図15】図14のウェハが切断されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図16】図15のウェハが発光素子に切断された状態での発光素子の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態の発光素子の製造方法においてサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図18】本発明の第3の実施形態の発光素子の製造方法においてサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図19】本発明の第4の実施形態の発光素子の製造方法において亀裂が伸展させられている状態でのウェハの部分断面図である。
【図20】本発明の第5の実施形態の発光素子の製造方法において亀裂が伸展させられている状態でのウェハの部分断面図である。
【図21】図20のウェハの部分平面図である。
【図22】発光素子の製造方法の変形例を説明するためのウェハの部分断面図である。
【図23】発光素子の製造方法の別の変形例を説明するためのウェハの部分断面図である。
【図24】基板の裏面を研磨する方法の一例を示すウェハの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成する工程を備えている。そこで、まず、サファイア基板に限定せずに、板状の加工対象物に対する改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0019】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0020】
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示すように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
【0021】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0022】
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0023】
ところで、改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0024】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
【0025】
また、改質領域7は、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)が複数形成されたものである。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
【0026】
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1の実施形態]
【0027】
第1の実施形態では、以下のように、発光素子として発光ダイオードを製造する。まず、図7及び図8に示すように、サファイア基板2を準備する。サファイア基板2は、C面を表面2a及び裏面2bとする円板状の単結晶サファイア基板である。サファイア基板2のM面は、オリエンテーションフラット(以下、「OF」という)19に略垂直となっており、サファイア基板2のA面は、OF19に略平行となっている。
【0028】
続いて、図9に示すように、サファイア基板2の表面2aにIII−V族化合物半導体層(以下、単に「半導体層」という)17を形成する。半導体層17は、サファイア基板2の表面2a上に積層された第1導電型半導体層であるn型半導体層17a、及びn型半導体層17a上に積層された第2導電型半導体層であるp型半導体層17bを有している。n型半導体層17a及びp型半導体層17bは、例えばGaN等の窒化物半導体(III−V族化合物半導体)からなり、互いにpn接合されている。
【0029】
なお、n型半導体層17a及びp型半導体層17bにおいて発生した熱を効率良く放熱させるべく、サファイア基板2の厚さは、50μm〜200μm、好ましくは50μm〜150μmとされている。また、n型半導体層17aの厚さは、例えば6μmであり、p型半導体層17bの厚さは、例えば1μmである。
【0030】
続いて、図10に示すように、サファイア基板2の裏面2bに保護テープ23を貼り付ける。そして、図11に示すように、切断予定ライン5a,5b(図8参照)によって画定される領域ごとにp型半導体層17bがアイランド状に残るように半導体層17をエッチングすることにより、凹部25を形成する。このとき、凹部25の底面をn型半導体層17aの途中に位置させる。
【0031】
なお、エッチング方法にはウェットエッチング及びドライエッチングがあるが、凹部25を形成する際にはそのいずれを用いてもよい。ウェットエッチングとしては例えばリン酸及び硫酸の混酸によるエッチングがある。また、ドライエッチングとしては例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIB)、イオンミリング等がある。また、エッチング以外の方法で凹部25を形成してもよい。
【0032】
また、切断予定ライン5a,5bは、図8に示すように、サファイア基板2に対して、例えば2mm間隔の格子状に設定される。切断予定ライン5aは、サファイア基板2のM面に沿うように複数本設定され、切断予定ライン5bは、サファイア基板2のA面に沿うように複数本設定される。ここで、M面に沿うように設定された切断予定ライン5aとは、切断予定ライン5aがM面に平行な場合だけでなく、M面に対して±10°の範囲内で傾斜している場合も含む。同様に、A面に沿うように設定された切断予定ライン5bとは、切断予定ライン5bがA面に平行な場合だけでなく、A面に対して±10°の範囲内で傾斜している場合も含む。
【0033】
続いて、図12に示すように、凹部25の底面(すなわち、エッチングにより露出したn型半導体層17aの表面)に電極18aを形成し、アイランド状に残されたp型半導体層17bの表面に電極18bを形成する。これにより、n型半導体層17aと電極18aとを電気的に接続し、p型半導体層17bと電極18bとを電気的に接続する。
【0034】
続いて、図13に示すように、半導体層17を覆うように半導体層17に保護テープ24を貼り付け、サファイア基板2の裏面2bから保護テープ23を取り除く。この状態で、上述したレーザ加工装置100を用いて、次のように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。
【0035】
すなわち、図13(a)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿って、パルスレーザ光であるレーザ光(第1のレーザ光)L1を照射する。ここでは、支持台107の移動によって、後述する第1の相対速度よりも遅い第2の相対速度で切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。
【0036】
このレーザ光L1の照射によって、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。改質領域7bとしては、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【0037】
なお、1パルスのレーザ光L1の照射によって改質部分が形成されるが、後述する第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を切断予定ライン5bに沿って並ばせることにより、改質領域7bを形成する。第2の形成ピッチは、第2の相対速度をレーザ光L1の繰り返し周波数で除した値となる。例えば、第2の相対速度を600mm/秒とし、レーザ光L1の繰り返し周波数を100kHzとすれば、第2の形成ピッチは6μm(=600mm/秒÷100kHz)となる。
【0038】
続いて、図13(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。ここでは、支持台107の移動によって、第1の相対速度で切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。
【0039】
このレーザ光L1の照射によって、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。改質領域7bとしては、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【0040】
なお、1パルスのレーザ光L1の照射によって改質部分が形成されるが、第1の形成ピッチで複数の改質部分を切断予定ライン5aに沿って並ばせることにより、改質領域7aを形成する。第1の形成ピッチは、第1の相対速度をレーザ光L1の繰り返し周波数で除した値となる。例えば、第1の相対速度を1000mm/秒とし、レーザ光L1の繰り返し周波数を100kHzとすれば、第1の形成ピッチは10μm(=1000mm/秒÷100kHz)となる。
【0041】
続いて、図14に示すように、保護テープ24が半導体層17に貼り付けられた状態でサファイア基板2を反射膜形成装置に搬送し、改質領域7a,7bが内部に形成されたサファイア基板2の裏面2bに、光反射層21を形成する。光反射層21は、DBR(Distributed Bragg Reflector)膜、及び当該DBR膜の外側に形成された金属膜を含んでおり、レーザ光L1を殆ど透過しない(若しくは反射する)。この光反射層21は、製造された発光ダイオードの発光効率を高めるためのものである。なお、保護テープ24を他の保護テープ(若しくは、保護部材)に貼り換えて、他の保護テープ(若しくは、保護部材)が半導体層17に貼り付けられた状態でサファイア基板2を反射膜形成装置に搬送してもよい。この場合、他の保護テープ(若しくは、保護部材)は、耐熱性を有することが望ましい。
【0042】
続いて、図15に示すように、光反射層21を覆うように光反射層21にエキスパンドテープ29を貼り付け、半導体層17から保護テープ24を取り除く。この状態で、次のように、サファイア基板2、半導体層17及び光反射層21(以下、「サファイア基板2等」という)を切断する。
【0043】
すなわち、図15(a)に示すように、光反射層21の側からエキスパンドテープ29を介して切断予定ライン5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。
【0044】
続いて、図15(b)に示すように、光反射層21の側からエキスパンドテープ29を介して切断予定ライン5aに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0045】
なお、第1の実施形態では、亀裂26a,26bは、サファイア基板2等をナイフエッジ28の押し当てによって切断する直前までは、サファイア基板2の表面2a及び裏面2bには到達していない。ただし、亀裂26a,26bは、サファイア基板2等をナイフエッジ28の押し当てによって切断する直前までに、改質領域7a,7bを起点としてサファイア基板2の内部に発生している場合も、発生していない場合もある。
【0046】
続いて、図16に示すように、エキスパンドテープ29を拡張させることにより、サファイア基板2等がチップ状に切断されることで形成された複数の発光ダイオード31を互いに離間させる。各発光ダイオード31は、サファイア基板2、pn接合されたn型半導体層17a及びp型半導体層17b、n型半導体層17aと電気的に接続された電極18a、p型半導体層17bと電気的に接続された電極18b、並びに光反射層21を有している。
【0047】
以上説明したように、第1の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する前に、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面としてレーザ光L1を照射することにより、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、レーザ光L1の集光が光反射層21によって阻害されないので、サファイア基板2の内部に所望の改質領域7a,7bを形成することができる。しかも、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面とするため、レーザ光L1の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制することができる。更に、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成するため、サファイア基板2の裏面2bに所望の光反射層21を形成することができる。このように、第1の実施形態の発光素子の製造方法によれば、所望の半導体層17及び光反射層21が形成されたサファイア基板2を所望の改質領域7a,7bを起点として切断することができるので、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21が形成された発光ダイオード31を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0048】
また、サファイア基板2等を切断する際には、光反射層21の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、ナイフエッジ28の押し当てによって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に切断することができる。
【0049】
また、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する。このように改質部分を形成することで、切断予定ライン5aに沿って形成された改質領域7aから発生する亀裂26a、及び切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの両方について、それらの蛇行が抑制される。
【0050】
これは、切断予定ライン5bに対して、切断予定ライン5aに対してと同様に、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成すると、切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの蛇行が大きくなる傾向があるとの知見に基づくものである。その理由としては、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってのほうが、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってよりも、劈開し難い(すなわち、大きな切断力を要する)ためと考えられる。
【0051】
また、改質領域7a,7bを形成する際には、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って改質領域7bを形成した後に、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って改質領域7aを形成する。上述したように、A面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで、より精度良く複数の改質部分を形成することが望ましい。従って、改質領域7aを形成する前に改質領域7bを形成することで、改質領域7bの形成時に、切断予定ライン5bが切断予定ライン5aと交差する部分において、改質領域7bを形成するためのレーザ光L1の照射が改質領域7aによって阻害されるのを防止することができる。これにより、切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの蛇行をより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、レーザ光L1を照射する際には、第1の相対速度で切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させ、第1の相対速度よりも遅い第2の相対速度で切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。これにより、第1の形成ピッチ、及び第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチの調節を容易にかつ正確に行うことができる。
【0053】
また、サファイア基板2等を切断する際には、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等をストライプ状に切断した後に、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等をチップ状に切断する。これにより、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断するのに要する力を軽減し、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度を向上させることができる。これは、M面に沿うように形成された改質領域7aを切断の起点とする場合に比べ、A面に沿うように形成された改質領域7bを切断の起点とする場合のほうが、大きな切断力を要する(切断するのに要する力が大きくなる)との知見に基づくものである。また、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されていない状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断する場合に比べ、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断する場合のほうが、大きな切断力を要するからである。
【0054】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等をストライプ状に切断した後に、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等をチップ状に切断することが好ましい場合がある。切断予定ライン5aに対しては、第2の形成ピッチよりも広い第1の形成ピッチで複数の改質部分が形成されているため、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等を切断すると、切断予定ライン5aに沿ったサファイア基板2等の切断精度が低下する場合がある。これに対し、切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分が形成されているため、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断しても、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度の低下が抑制される場合がある。そこで、改質領域7bを起点としてサファイア基板2等を切断する前に、改質領域7aを起点としてサファイア基板2等を切断することで、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度の低下を抑制しつつ、切断予定ライン5aに沿ったサファイア基板2等の切断精度を向上させることができる。
[第2の実施形態]
【0055】
第2の実施形態の発光素子の製造方法は、レーザ光L1の照射によって改質領域7a,7bを形成すると共に亀裂26a,26bを少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達させる点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0056】
すなわち、図17(a)に示すように、サファイア基板2の表面2aに半導体層17を形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件(サファイア基板2の表面2aから集光点P1までの距離等)を調節することにより、亀裂26bが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。
【0057】
続いて、図17(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件を調節することにより、亀裂26aが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。
【0058】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する点等は、第1の実施形態と同様である。また、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bは、第1の実施形態で述べたように、サファイア基板2等を切断する際に、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられるものである。この亀裂26a,26bは、改質領域7a,7bの形成時に、少なくともサファイア基板2の表面2aに到達すればよいので、改質領域7a,7bの形成時に、半導体層17の内部に到達してもよいし、半導体層17の外表面に到達してもよい。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第2の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられる亀裂26a,26bが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5a,5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、例えば、光反射層21の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てたときに、亀裂26a,26bが開かれるようにしてサファイア基板2の裏面2bの側に伸展し易くなるため、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に(比較的小さな力で)切断することができる。更に、亀裂26a,26bを少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達させることで、半導体層17の切断精度を向上させることができる。
【0060】
また、光反射層21を形成する際には、真空蒸着等のための加熱炉内にサファイア基板2が配置されるため、サファイア基板2と半導体層17との熱膨張率の差によって、サファイア基板2の裏面2bの側が伸び、かつサファイア基板2の表面2aの側が縮むように、サファイア基板2が反り易い。このとき、亀裂26a,26bがサファイア基板2の表面2aに到達しているので、サファイア基板2は、亀裂26a,26bが閉じられるように反ることになる。従って、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する際に、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bが到達し難くなる。
【0061】
なお、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する際に、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bを到達させ難くする観点からは、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bを半導体層17の外表面に到達させず、サファイア基板2の表面2a又は半導体層17の内部に止まらせることが望ましい。
[第3の実施形態]
【0062】
第3の実施形態の発光素子の製造方法は、レーザ光L1の照射によって改質領域7a,7bを形成すると共に亀裂26a,26bをサファイア基板2の裏面2bに予め到達させる点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0063】
すなわち、図18(a)に示すように、サファイア基板2の表面2aに半導体層17を形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件(サファイア基板2の表面2aから集光点P1までの距離等)を調節することにより、亀裂26bがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。
【0064】
続いて、図18(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件を調節することにより、亀裂26aがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。
【0065】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する点等は、第1の実施形態と同様である。また、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bは、第1の実施形態で述べたように、サファイア基板2等を切断する際に、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられるものである。
【0066】
以上説明したように、第3の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第3の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられる亀裂26a,26bがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5a,5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、例えば、半導体層17の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てたり、或いはサファイア基板2の裏面2bに貼り付けられたエキスパンドテープ29を拡張させたりしたときに、亀裂26a,26bが開かれるようにして半導体層17の側に伸展し易くなるため、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に(比較的小さな力で)切断することができる。更に、亀裂26a,26bをサファイア基板2の裏面2bに予め到達させることで、光反射層21の切断精度を向上させることができる。
【0067】
また、改質領域7a,7bを形成する際には、レーザ光L1の集光点P1を半導体層17から遠ざけることができるため、レーザ光L1の照射によって半導体層17に損傷が生じるのをより一層抑制することができる。
【0068】
なお、光反射層21を形成する際には、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bが到達していることになるが、この亀裂26a,26bは略閉じているため、サファイア基板2の裏面2bへの光反射層21の形成は阻害されない。
[第4の実施形態]
【0069】
第4の実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板2等をレーザ光L2の照射によって切断する点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0070】
すなわち、図19(a)に示すように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成した後に、光反射層21に集光点P2を合わせて、光反射層21に対して吸収性を有するレーザ光(第2のレーザ光)L2を光反射層21の側から切断予定ライン5bに沿って照射することにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26bの伸展は、光反射層21でレーザ光L2が吸収された結果生じる加熱誘引によるものである。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。
【0071】
続いて、図19(b)に示すように、光反射層21に集光点P2を合わせて、レーザ光L2を光反射層21の側から切断予定ライン5aに沿って照射することにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26aの伸展は、光反射層21でレーザ光L2が吸収された結果生じる加熱誘引によるものである。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0072】
なお、レーザ光L2の照射によっては、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させるだけで、半導体層17の外表面及び光反射層21の外表面の少なくとも一方に到達させなくてもよい。その場合には、ナイフエッジ28の押し当てやエキスパンドテープ29の拡張等によって切断予定ライン5a,5bに沿って外力を作用させて、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って切断すればよい。
【0073】
以上説明したように、第4の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第4の実施形態の発光素子の製造方法では、光反射層21にレーザ光L2を吸収させて亀裂26a,26bを伸展させるので、レーザ光L2の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
[第5の実施形態]
【0074】
第5の実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板2等をレーザ光L3の照射によって切断する点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0075】
すなわち、図20(a)に示すように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P3を合わせて、半導体層17に対して透過性を有するレーザ光(第3のレーザ光)L3を半導体層17の側から切断予定ライン5bに沿って照射することにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26bの伸展は、既に形成されていた改質領域7bやその周辺部分で、半導体層17を透過したレーザ光L3が吸収された結果生じる加熱誘引、或いは新たな改質領域の形成によるものである。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。なお、半導体層17がGaNからなる場合、当該半導体層17に対して透過性を有するレーザ光L3の波長は、例えば1340nm(Nd:YVO4レーザを用いたもの)となる。
【0076】
続いて、図20(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P3を合わせて、レーザ光L3を半導体層17の側から切断予定ライン5aに沿って照射することにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26aの伸展は、既に形成されていた改質領域7aやその周辺部分で、半導体層17を透過したレーザ光L3が吸収された結果生じる加熱誘引、或いは新たな改質領域の形成によるものである。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0077】
なお、レーザ光L3の照射によっては、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させるだけで、半導体層17の外表面及び光反射層21の外表面の少なくとも一方に到達させなくてもよい。その場合には、ナイフエッジ28の押し当てやエキスパンドテープ29の拡張等によって切断予定ライン5a,5bに沿って外力を作用させて、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って切断すればよい。
【0078】
以上説明したように、第5の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第5の実施形態の発光素子の製造方法では、半導体層17に透過させる一方でサファイア基板2の内部における所定の部分にレーザ光L3を吸収させて亀裂26a,26bを伸展させるので、レーザ光L3の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
【0079】
また、図21に示すように、レーザ光L3の照射をON/OFF制御して、切断予定ライン5aと切断予定ライン5bとの交差部分のみにおいて、レーザ光L3の照射を行うようにしてもよい。この場合、レーザ光L3の照射によって半導体層17に損傷が生じるのをより一層抑制しつつ、切断精度が要求される切断予定ライン5a,5bの交差部分において、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、図22に示すように、改質領域7a(7b)を形成する際には、1本の切断予定ライン5a(5b)に対して、サファイア基板2の厚さ方向に並ぶように複数列の改質領域7a(7b)を形成してもよい。これによれば、サファイア基板2が比較的厚い場合であっても、サファイア基板2等をより小さな力で割って切断することができる。
【0081】
また、発光素子として半導体レーザを製造することができる。その場合、図23に示すように、サファイア基板2を準備し、第1導電型半導体層であるn型半導体層33a、活性層33b、及び第2導電型半導体層であるp型半導体層33cをこの順序でサファイア基板2の表面2aに形成する。n型半導体層33a、活性層33b及びp型半導体層33cは、例えばGaN等のIII−V族化合物半導体からなり、量子井戸構造を構成している。続いて、n型半導体層33aの途中に底面が位置するように切断予定ライン5a(5b)に沿って凹部25を形成し、これにより、活性層33bを挟んで対向する共振面35を形成する。その後は、上述した発光ダイオード31の製造方法と同様に、光反射層を形成し、n型半導体層33a、活性層33b及びp型半導体層33c、サファイア基板2並びに光反射層を切断予定ライン5a(5b)に沿って切断する。
【0082】
また、改質領域7a(7b)を形成する前に、サファイア基板2の裏面2bを研磨してサファイア基板2を薄型化してもよい。その場合、図24(a)に示すように、半導体層17を覆うように半導体層17に保護テープ24を貼り付ける。そして、図24(b)に示すように、サファイア基板2の裏面2bを研磨して、サファイア基板2を所定の厚さに薄型化する。
【0083】
また、半導体層17の材料としては、GaN等の窒化物半導体の他、GaAlAs、GaAlAsP、GaAlInP等のIII−V族化合物半導体を用いることができる。そして、半導体層17は、サファイア基板2の表面2aに直接的に形成される場合や、何らかの膜や層を介してサファイア基板2の表面2aに間接的に形成される場合がある。更に、サファイア基板2の表面2aに、電気的接続のためのコンタクト層や光反射層等が形成されていてもよい。また、上記実施形態では、第1導電型がn型とされ、第2導電型がp型とされているが、第1導電型がp型とされ、第2導電型がn型とされてもよい。
【0084】
また、改質領域は、多光子吸収のみに起因して形成される場合に限定されず、多光子吸収に相当する光吸収等その他の光吸収や熱的影響に起因して形成される場合もある。つまり、多光子吸収は、改質領域を形成し得る現象の一例である。
【0085】
また、切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させるために、レーザ光源101側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、支持台107及びレーザ光源101側の両方を移動させてもよい。
【0086】
また、保護テープ23を使用する上記実施形態のそれぞれにおいては、エッチング時にサファイア基板2を固定することができるものであれば、保護テープ23以外のものを使用してもよい。例えば、保護テープ23以外にも、半導体プロセスで通常使用されるウェハ(サファイア基板)の固定方法を利用することができる。
【0087】
また、保護テープ24を使用する上記実施形態のそれぞれにおいては、保護テープ24は、後の光反射層21の形成時に基板加熱等で150℃〜300℃の環境下に置かれるため、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有することが好ましい。また、保護テープ24としては、半導体層17を保護するために弾性の樹脂テープを使用するが、半導体層17を保護する機能があればよいので、保護テープ24以外にも、種々の保持部材が利用することができる。例えば、半導体層17と接触して固定する機能を有する接着層を表面に備えた基板(ガラスやセラミック、金属等の剛体からなる基板)を保持部材として利用することができる。このような保持部材においても、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有することが好ましい。なお、保護テープ24は、光反射層21を形成する前に、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有する他の保護テープや保護部材に貼り換えてもよい。
【符号の説明】
【0088】
2…サファイア基板、2a…表面、2b…裏面、5,5a,5b…切断予定ライン、7,7a,7b…改質領域、17…III−V族化合物半導体層、21…光反射層、26a,26b…亀裂、28…ナイフエッジ、31…発光ダイオード(発光素子)、L,L1,L2,L3…レーザ光、P,P1,P2,P3…集光点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板の表面にIII−V族化合物半導体層が形成されたウェハを切断して発光素子を製造する方法として、次のようなものが知られている。すなわち、サファイア基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成し、その改質領域を起点としてサファイア基板及びIII−V族化合物半導体層を切断する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−166728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような発光素子においては、発光効率を高めるために、サファイア基板の裏面に光反射層が形成される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することができる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光素子の製造方法は、III−V族化合物半導体層が表面に形成されたサファイア基板の内部に集光点を合わせて、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として、所定の切断予定ラインに沿って第1のレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、サファイア基板の裏面に光反射層を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断し、発光素子を製造する第4の工程と、を備える。
【0007】
この発光素子の製造方法では、サファイア基板の裏面に光反射層を形成する前に、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として第1のレーザ光を照射することにより、サファイア基板の内部に改質領域を形成する。これにより、第1のレーザ光の集光が光反射層によって阻害されないので、サファイア基板の内部に所望の改質領域を形成することができる。しかも、サファイア基板の裏面をレーザ光入射面とするため、第1のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制することができる。更に、サファイア基板の内部に改質領域を形成するため、サファイア基板の裏面に所望の光反射層を形成することができる。以上のように、この発光素子の製造方法によれば、所望のIII−V族化合物半導体層及び光反射層が形成されたサファイア基板を所望の改質領域を起点として切断することができるので、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することが可能となる。なお、サファイア基板の内部とは、III−V族化合物半導体層が形成されているサファイア基板の表面上をも含む意味である。また、発光素子の製造方法は、第2の工程の前に、サファイア基板の表面にIII−V族化合物半導体層を形成する第1の工程を更に備えてもよい。
【0008】
また、第2の工程では、第4の工程においてサファイア基板の厚さ方向に伸展させられる亀裂が少なくともサファイア基板の表面に予め到達するように、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成してもよい。この場合、第4の工程において、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断することが容易となり、特に、III−V族化合物半導体層の切断精度を向上させることができる。
【0009】
或いは、第2の工程では、第4の工程においてサファイア基板の厚さ方向に伸展させられる亀裂がサファイア基板の裏面に予め到達するように、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成してもよい。この場合、第4の工程において、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断することが容易となり、特に、光反射層の切断精度を向上させることができる。
【0010】
また、第4の工程では、光反射層の側から切断予定ラインに沿ってナイフエッジを押し当てることにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。この場合、ナイフエッジの押し当てによってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って容易に切断することができる。
【0011】
また、発光素子の製造方法は、第3の工程の後かつ第4の工程の前に、光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を光反射層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、第4の工程では、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断してもよい。或いは、第4の工程では、光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を光反射層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。これらの場合、第2のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【0012】
また、発光素子の製造方法は、第3の工程の後かつ第4の工程の前に、サファイア基板の内部に集光点を合わせて、III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、第4の工程では、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板、III−V族化合物半導体層及び光反射層を切断予定ラインに沿って切断してもよい。或いは、第4の工程では、サファイア基板の内部に集光点を合わせて、III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射することにより、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させてもよい。これらの場合、第3のレーザ光がIII−V族化合物半導体層に対して透過性を有しているため、第3のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【0013】
このとき、切断予定ラインの交差部分のみにおいて、第3のレーザ光をIII−V族化合物半導体層の側から切断予定ラインに沿って照射してもよい。この場合、第3のレーザ光の照射によってIII−V族化合物半導体層に損傷が生じるのをより一層抑制しつつ、切断精度が要求される切断予定ラインの交差部分において、改質領域を起点として発生した亀裂をサファイア基板の厚さ方向に伸展させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サファイア基板の裏面に光反射層が形成された発光素子を歩留まり良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の発光素子の製造方法において加工対象となるサファイア基板の斜視図である。
【図8】図7のサファイア基板の平面図である。
【図9】図8のサファイア基板にIII−V族化合物半導体層が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図10】図9のサファイア基板に保護テープが貼り付けられた状態でのウェハの部分断面図である。
【図11】図10のIII−V族化合物半導体層に凹部が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図12】図11のIII−V族化合物半導体層に電極が形成された状態でのウェハの部分平面図である。
【図13】図12のサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図14】図13のサファイア基板に光反射層が形成された状態でのウェハの部分断面図である。
【図15】図14のウェハが切断されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図16】図15のウェハが発光素子に切断された状態での発光素子の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態の発光素子の製造方法においてサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図18】本発明の第3の実施形態の発光素子の製造方法においてサファイア基板に改質領域が形成されている状態でのウェハの部分断面図である。
【図19】本発明の第4の実施形態の発光素子の製造方法において亀裂が伸展させられている状態でのウェハの部分断面図である。
【図20】本発明の第5の実施形態の発光素子の製造方法において亀裂が伸展させられている状態でのウェハの部分断面図である。
【図21】図20のウェハの部分平面図である。
【図22】発光素子の製造方法の変形例を説明するためのウェハの部分断面図である。
【図23】発光素子の製造方法の別の変形例を説明するためのウェハの部分断面図である。
【図24】基板の裏面を研磨する方法の一例を示すウェハの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿ってサファイア基板の内部に改質領域を形成する工程を備えている。そこで、まず、サファイア基板に限定せずに、板状の加工対象物に対する改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0019】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0020】
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示すように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
【0021】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0022】
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0023】
ところで、改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0024】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
【0025】
また、改質領域7は、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)が複数形成されたものである。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
【0026】
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1の実施形態]
【0027】
第1の実施形態では、以下のように、発光素子として発光ダイオードを製造する。まず、図7及び図8に示すように、サファイア基板2を準備する。サファイア基板2は、C面を表面2a及び裏面2bとする円板状の単結晶サファイア基板である。サファイア基板2のM面は、オリエンテーションフラット(以下、「OF」という)19に略垂直となっており、サファイア基板2のA面は、OF19に略平行となっている。
【0028】
続いて、図9に示すように、サファイア基板2の表面2aにIII−V族化合物半導体層(以下、単に「半導体層」という)17を形成する。半導体層17は、サファイア基板2の表面2a上に積層された第1導電型半導体層であるn型半導体層17a、及びn型半導体層17a上に積層された第2導電型半導体層であるp型半導体層17bを有している。n型半導体層17a及びp型半導体層17bは、例えばGaN等の窒化物半導体(III−V族化合物半導体)からなり、互いにpn接合されている。
【0029】
なお、n型半導体層17a及びp型半導体層17bにおいて発生した熱を効率良く放熱させるべく、サファイア基板2の厚さは、50μm〜200μm、好ましくは50μm〜150μmとされている。また、n型半導体層17aの厚さは、例えば6μmであり、p型半導体層17bの厚さは、例えば1μmである。
【0030】
続いて、図10に示すように、サファイア基板2の裏面2bに保護テープ23を貼り付ける。そして、図11に示すように、切断予定ライン5a,5b(図8参照)によって画定される領域ごとにp型半導体層17bがアイランド状に残るように半導体層17をエッチングすることにより、凹部25を形成する。このとき、凹部25の底面をn型半導体層17aの途中に位置させる。
【0031】
なお、エッチング方法にはウェットエッチング及びドライエッチングがあるが、凹部25を形成する際にはそのいずれを用いてもよい。ウェットエッチングとしては例えばリン酸及び硫酸の混酸によるエッチングがある。また、ドライエッチングとしては例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIB)、イオンミリング等がある。また、エッチング以外の方法で凹部25を形成してもよい。
【0032】
また、切断予定ライン5a,5bは、図8に示すように、サファイア基板2に対して、例えば2mm間隔の格子状に設定される。切断予定ライン5aは、サファイア基板2のM面に沿うように複数本設定され、切断予定ライン5bは、サファイア基板2のA面に沿うように複数本設定される。ここで、M面に沿うように設定された切断予定ライン5aとは、切断予定ライン5aがM面に平行な場合だけでなく、M面に対して±10°の範囲内で傾斜している場合も含む。同様に、A面に沿うように設定された切断予定ライン5bとは、切断予定ライン5bがA面に平行な場合だけでなく、A面に対して±10°の範囲内で傾斜している場合も含む。
【0033】
続いて、図12に示すように、凹部25の底面(すなわち、エッチングにより露出したn型半導体層17aの表面)に電極18aを形成し、アイランド状に残されたp型半導体層17bの表面に電極18bを形成する。これにより、n型半導体層17aと電極18aとを電気的に接続し、p型半導体層17bと電極18bとを電気的に接続する。
【0034】
続いて、図13に示すように、半導体層17を覆うように半導体層17に保護テープ24を貼り付け、サファイア基板2の裏面2bから保護テープ23を取り除く。この状態で、上述したレーザ加工装置100を用いて、次のように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。
【0035】
すなわち、図13(a)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿って、パルスレーザ光であるレーザ光(第1のレーザ光)L1を照射する。ここでは、支持台107の移動によって、後述する第1の相対速度よりも遅い第2の相対速度で切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。
【0036】
このレーザ光L1の照射によって、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。改質領域7bとしては、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【0037】
なお、1パルスのレーザ光L1の照射によって改質部分が形成されるが、後述する第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を切断予定ライン5bに沿って並ばせることにより、改質領域7bを形成する。第2の形成ピッチは、第2の相対速度をレーザ光L1の繰り返し周波数で除した値となる。例えば、第2の相対速度を600mm/秒とし、レーザ光L1の繰り返し周波数を100kHzとすれば、第2の形成ピッチは6μm(=600mm/秒÷100kHz)となる。
【0038】
続いて、図13(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。ここでは、支持台107の移動によって、第1の相対速度で切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。
【0039】
このレーザ光L1の照射によって、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。改質領域7bとしては、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【0040】
なお、1パルスのレーザ光L1の照射によって改質部分が形成されるが、第1の形成ピッチで複数の改質部分を切断予定ライン5aに沿って並ばせることにより、改質領域7aを形成する。第1の形成ピッチは、第1の相対速度をレーザ光L1の繰り返し周波数で除した値となる。例えば、第1の相対速度を1000mm/秒とし、レーザ光L1の繰り返し周波数を100kHzとすれば、第1の形成ピッチは10μm(=1000mm/秒÷100kHz)となる。
【0041】
続いて、図14に示すように、保護テープ24が半導体層17に貼り付けられた状態でサファイア基板2を反射膜形成装置に搬送し、改質領域7a,7bが内部に形成されたサファイア基板2の裏面2bに、光反射層21を形成する。光反射層21は、DBR(Distributed Bragg Reflector)膜、及び当該DBR膜の外側に形成された金属膜を含んでおり、レーザ光L1を殆ど透過しない(若しくは反射する)。この光反射層21は、製造された発光ダイオードの発光効率を高めるためのものである。なお、保護テープ24を他の保護テープ(若しくは、保護部材)に貼り換えて、他の保護テープ(若しくは、保護部材)が半導体層17に貼り付けられた状態でサファイア基板2を反射膜形成装置に搬送してもよい。この場合、他の保護テープ(若しくは、保護部材)は、耐熱性を有することが望ましい。
【0042】
続いて、図15に示すように、光反射層21を覆うように光反射層21にエキスパンドテープ29を貼り付け、半導体層17から保護テープ24を取り除く。この状態で、次のように、サファイア基板2、半導体層17及び光反射層21(以下、「サファイア基板2等」という)を切断する。
【0043】
すなわち、図15(a)に示すように、光反射層21の側からエキスパンドテープ29を介して切断予定ライン5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。
【0044】
続いて、図15(b)に示すように、光反射層21の側からエキスパンドテープ29を介して切断予定ライン5aに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0045】
なお、第1の実施形態では、亀裂26a,26bは、サファイア基板2等をナイフエッジ28の押し当てによって切断する直前までは、サファイア基板2の表面2a及び裏面2bには到達していない。ただし、亀裂26a,26bは、サファイア基板2等をナイフエッジ28の押し当てによって切断する直前までに、改質領域7a,7bを起点としてサファイア基板2の内部に発生している場合も、発生していない場合もある。
【0046】
続いて、図16に示すように、エキスパンドテープ29を拡張させることにより、サファイア基板2等がチップ状に切断されることで形成された複数の発光ダイオード31を互いに離間させる。各発光ダイオード31は、サファイア基板2、pn接合されたn型半導体層17a及びp型半導体層17b、n型半導体層17aと電気的に接続された電極18a、p型半導体層17bと電気的に接続された電極18b、並びに光反射層21を有している。
【0047】
以上説明したように、第1の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する前に、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面としてレーザ光L1を照射することにより、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、レーザ光L1の集光が光反射層21によって阻害されないので、サファイア基板2の内部に所望の改質領域7a,7bを形成することができる。しかも、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面とするため、レーザ光L1の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制することができる。更に、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成するため、サファイア基板2の裏面2bに所望の光反射層21を形成することができる。このように、第1の実施形態の発光素子の製造方法によれば、所望の半導体層17及び光反射層21が形成されたサファイア基板2を所望の改質領域7a,7bを起点として切断することができるので、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21が形成された発光ダイオード31を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0048】
また、サファイア基板2等を切断する際には、光反射層21の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てることにより、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。これにより、ナイフエッジ28の押し当てによって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に切断することができる。
【0049】
また、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する。このように改質部分を形成することで、切断予定ライン5aに沿って形成された改質領域7aから発生する亀裂26a、及び切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの両方について、それらの蛇行が抑制される。
【0050】
これは、切断予定ライン5bに対して、切断予定ライン5aに対してと同様に、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成すると、切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの蛇行が大きくなる傾向があるとの知見に基づくものである。その理由としては、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってのほうが、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってよりも、劈開し難い(すなわち、大きな切断力を要する)ためと考えられる。
【0051】
また、改質領域7a,7bを形成する際には、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って改質領域7bを形成した後に、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って改質領域7aを形成する。上述したように、A面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで、より精度良く複数の改質部分を形成することが望ましい。従って、改質領域7aを形成する前に改質領域7bを形成することで、改質領域7bの形成時に、切断予定ライン5bが切断予定ライン5aと交差する部分において、改質領域7bを形成するためのレーザ光L1の照射が改質領域7aによって阻害されるのを防止することができる。これにより、切断予定ライン5bに沿って形成された改質領域7bから発生する亀裂26bの蛇行をより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、レーザ光L1を照射する際には、第1の相対速度で切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させ、第1の相対速度よりも遅い第2の相対速度で切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させる。これにより、第1の形成ピッチ、及び第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチの調節を容易にかつ正確に行うことができる。
【0053】
また、サファイア基板2等を切断する際には、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等をストライプ状に切断した後に、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等をチップ状に切断する。これにより、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断するのに要する力を軽減し、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度を向上させることができる。これは、M面に沿うように形成された改質領域7aを切断の起点とする場合に比べ、A面に沿うように形成された改質領域7bを切断の起点とする場合のほうが、大きな切断力を要する(切断するのに要する力が大きくなる)との知見に基づくものである。また、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されていない状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断する場合に比べ、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断する場合のほうが、大きな切断力を要するからである。
【0054】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等をストライプ状に切断した後に、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等をチップ状に切断することが好ましい場合がある。切断予定ライン5aに対しては、第2の形成ピッチよりも広い第1の形成ピッチで複数の改質部分が形成されているため、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等を切断すると、切断予定ライン5aに沿ったサファイア基板2等の切断精度が低下する場合がある。これに対し、切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分が形成されているため、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2等が切断されている状態で切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2等を切断しても、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度の低下が抑制される場合がある。そこで、改質領域7bを起点としてサファイア基板2等を切断する前に、改質領域7aを起点としてサファイア基板2等を切断することで、切断予定ライン5bに沿ったサファイア基板2等の切断精度の低下を抑制しつつ、切断予定ライン5aに沿ったサファイア基板2等の切断精度を向上させることができる。
[第2の実施形態]
【0055】
第2の実施形態の発光素子の製造方法は、レーザ光L1の照射によって改質領域7a,7bを形成すると共に亀裂26a,26bを少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達させる点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0056】
すなわち、図17(a)に示すように、サファイア基板2の表面2aに半導体層17を形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件(サファイア基板2の表面2aから集光点P1までの距離等)を調節することにより、亀裂26bが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。
【0057】
続いて、図17(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件を調節することにより、亀裂26aが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。
【0058】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する点等は、第1の実施形態と同様である。また、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bは、第1の実施形態で述べたように、サファイア基板2等を切断する際に、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられるものである。この亀裂26a,26bは、改質領域7a,7bの形成時に、少なくともサファイア基板2の表面2aに到達すればよいので、改質領域7a,7bの形成時に、半導体層17の内部に到達してもよいし、半導体層17の外表面に到達してもよい。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第2の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられる亀裂26a,26bが少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達するように、切断予定ライン5a,5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、例えば、光反射層21の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てたときに、亀裂26a,26bが開かれるようにしてサファイア基板2の裏面2bの側に伸展し易くなるため、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に(比較的小さな力で)切断することができる。更に、亀裂26a,26bを少なくともサファイア基板2の表面2aに予め到達させることで、半導体層17の切断精度を向上させることができる。
【0060】
また、光反射層21を形成する際には、真空蒸着等のための加熱炉内にサファイア基板2が配置されるため、サファイア基板2と半導体層17との熱膨張率の差によって、サファイア基板2の裏面2bの側が伸び、かつサファイア基板2の表面2aの側が縮むように、サファイア基板2が反り易い。このとき、亀裂26a,26bがサファイア基板2の表面2aに到達しているので、サファイア基板2は、亀裂26a,26bが閉じられるように反ることになる。従って、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する際に、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bが到達し難くなる。
【0061】
なお、サファイア基板2の裏面2bに光反射層21を形成する際に、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bを到達させ難くする観点からは、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bを半導体層17の外表面に到達させず、サファイア基板2の表面2a又は半導体層17の内部に止まらせることが望ましい。
[第3の実施形態]
【0062】
第3の実施形態の発光素子の製造方法は、レーザ光L1の照射によって改質領域7a,7bを形成すると共に亀裂26a,26bをサファイア基板2の裏面2bに予め到達させる点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0063】
すなわち、図18(a)に示すように、サファイア基板2の表面2aに半導体層17を形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5bに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件(サファイア基板2の表面2aから集光点P1までの距離等)を調節することにより、亀裂26bがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7bを形成する。
【0064】
続いて、図18(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P1を合わせて、サファイア基板2の裏面2bをレーザ光入射面として、切断予定ライン5aに沿ってレーザ光L1を照射する。このとき、レーザ光L1の照射条件を調節することにより、亀裂26aがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5aに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7aを形成する。
【0065】
なお、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに対しては、第1の形成ピッチで複数の改質部分を形成し、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに対しては、第1の形成ピッチよりも狭い第2の形成ピッチで複数の改質部分を形成する点等は、第1の実施形態と同様である。また、改質領域7a,7bの形成時に発生する亀裂26a,26bは、第1の実施形態で述べたように、サファイア基板2等を切断する際に、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられるものである。
【0066】
以上説明したように、第3の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第3の実施形態の発光素子の製造方法では、サファイア基板2の厚さ方向に伸展させられる亀裂26a,26bがサファイア基板2の裏面2bに予め到達するように、切断予定ライン5a,5bに沿ってサファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成する。これにより、例えば、半導体層17の側から切断予定ライン5a,5bに沿ってナイフエッジ28を押し当てたり、或いはサファイア基板2の裏面2bに貼り付けられたエキスパンドテープ29を拡張させたりしたときに、亀裂26a,26bが開かれるようにして半導体層17の側に伸展し易くなるため、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って容易に(比較的小さな力で)切断することができる。更に、亀裂26a,26bをサファイア基板2の裏面2bに予め到達させることで、光反射層21の切断精度を向上させることができる。
【0067】
また、改質領域7a,7bを形成する際には、レーザ光L1の集光点P1を半導体層17から遠ざけることができるため、レーザ光L1の照射によって半導体層17に損傷が生じるのをより一層抑制することができる。
【0068】
なお、光反射層21を形成する際には、サファイア基板2の裏面2bに亀裂26a,26bが到達していることになるが、この亀裂26a,26bは略閉じているため、サファイア基板2の裏面2bへの光反射層21の形成は阻害されない。
[第4の実施形態]
【0069】
第4の実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板2等をレーザ光L2の照射によって切断する点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0070】
すなわち、図19(a)に示すように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成した後に、光反射層21に集光点P2を合わせて、光反射層21に対して吸収性を有するレーザ光(第2のレーザ光)L2を光反射層21の側から切断予定ライン5bに沿って照射することにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26bの伸展は、光反射層21でレーザ光L2が吸収された結果生じる加熱誘引によるものである。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。
【0071】
続いて、図19(b)に示すように、光反射層21に集光点P2を合わせて、レーザ光L2を光反射層21の側から切断予定ライン5aに沿って照射することにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26aの伸展は、光反射層21でレーザ光L2が吸収された結果生じる加熱誘引によるものである。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0072】
なお、レーザ光L2の照射によっては、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させるだけで、半導体層17の外表面及び光反射層21の外表面の少なくとも一方に到達させなくてもよい。その場合には、ナイフエッジ28の押し当てやエキスパンドテープ29の拡張等によって切断予定ライン5a,5bに沿って外力を作用させて、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って切断すればよい。
【0073】
以上説明したように、第4の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第4の実施形態の発光素子の製造方法では、光反射層21にレーザ光L2を吸収させて亀裂26a,26bを伸展させるので、レーザ光L2の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
[第5の実施形態]
【0074】
第5の実施形態の発光素子の製造方法は、サファイア基板2等をレーザ光L3の照射によって切断する点で、第1の実施形態の発光素子の製造方法と主に異なっている。
【0075】
すなわち、図20(a)に示すように、サファイア基板2の内部に改質領域7a,7bを形成した後に、サファイア基板2の内部に集光点P3を合わせて、半導体層17に対して透過性を有するレーザ光(第3のレーザ光)L3を半導体層17の側から切断予定ライン5bに沿って照射することにより、改質領域7bを起点として発生した亀裂26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26bの伸展は、既に形成されていた改質領域7bやその周辺部分で、半導体層17を透過したレーザ光L3が吸収された結果生じる加熱誘引、或いは新たな改質領域の形成によるものである。これにより、サファイア基板2のA面に沿うように設定された切断予定ライン5bに沿って、サファイア基板2等をストライプ状に切断する。なお、半導体層17がGaNからなる場合、当該半導体層17に対して透過性を有するレーザ光L3の波長は、例えば1340nm(Nd:YVO4レーザを用いたもの)となる。
【0076】
続いて、図20(b)に示すように、サファイア基板2の内部に集光点P3を合わせて、レーザ光L3を半導体層17の側から切断予定ライン5aに沿って照射することにより、改質領域7aを起点として発生した亀裂26aをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させる。この亀裂26aの伸展は、既に形成されていた改質領域7aやその周辺部分で、半導体層17を透過したレーザ光L3が吸収された結果生じる加熱誘引、或いは新たな改質領域の形成によるものである。これにより、サファイア基板2のM面に沿うように設定された切断予定ライン5aに沿って、サファイア基板2等をチップ状に切断する。
【0077】
なお、レーザ光L3の照射によっては、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させるだけで、半導体層17の外表面及び光反射層21の外表面の少なくとも一方に到達させなくてもよい。その場合には、ナイフエッジ28の押し当てやエキスパンドテープ29の拡張等によって切断予定ライン5a,5bに沿って外力を作用させて、亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に更に伸展させることにより、サファイア基板2等を切断予定ライン5a,5bに沿って切断すればよい。
【0078】
以上説明したように、第5の実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1の実施形態の発光素子の製造方法と同様の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、第5の実施形態の発光素子の製造方法では、半導体層17に透過させる一方でサファイア基板2の内部における所定の部分にレーザ光L3を吸収させて亀裂26a,26bを伸展させるので、レーザ光L3の照射によって半導体層17に損傷が生じるのを抑制しつつ、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
【0079】
また、図21に示すように、レーザ光L3の照射をON/OFF制御して、切断予定ライン5aと切断予定ライン5bとの交差部分のみにおいて、レーザ光L3の照射を行うようにしてもよい。この場合、レーザ光L3の照射によって半導体層17に損傷が生じるのをより一層抑制しつつ、切断精度が要求される切断予定ライン5a,5bの交差部分において、改質領域7a,7bを起点として発生した亀裂26a,26bをサファイア基板2の厚さ方向に伸展させることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、図22に示すように、改質領域7a(7b)を形成する際には、1本の切断予定ライン5a(5b)に対して、サファイア基板2の厚さ方向に並ぶように複数列の改質領域7a(7b)を形成してもよい。これによれば、サファイア基板2が比較的厚い場合であっても、サファイア基板2等をより小さな力で割って切断することができる。
【0081】
また、発光素子として半導体レーザを製造することができる。その場合、図23に示すように、サファイア基板2を準備し、第1導電型半導体層であるn型半導体層33a、活性層33b、及び第2導電型半導体層であるp型半導体層33cをこの順序でサファイア基板2の表面2aに形成する。n型半導体層33a、活性層33b及びp型半導体層33cは、例えばGaN等のIII−V族化合物半導体からなり、量子井戸構造を構成している。続いて、n型半導体層33aの途中に底面が位置するように切断予定ライン5a(5b)に沿って凹部25を形成し、これにより、活性層33bを挟んで対向する共振面35を形成する。その後は、上述した発光ダイオード31の製造方法と同様に、光反射層を形成し、n型半導体層33a、活性層33b及びp型半導体層33c、サファイア基板2並びに光反射層を切断予定ライン5a(5b)に沿って切断する。
【0082】
また、改質領域7a(7b)を形成する前に、サファイア基板2の裏面2bを研磨してサファイア基板2を薄型化してもよい。その場合、図24(a)に示すように、半導体層17を覆うように半導体層17に保護テープ24を貼り付ける。そして、図24(b)に示すように、サファイア基板2の裏面2bを研磨して、サファイア基板2を所定の厚さに薄型化する。
【0083】
また、半導体層17の材料としては、GaN等の窒化物半導体の他、GaAlAs、GaAlAsP、GaAlInP等のIII−V族化合物半導体を用いることができる。そして、半導体層17は、サファイア基板2の表面2aに直接的に形成される場合や、何らかの膜や層を介してサファイア基板2の表面2aに間接的に形成される場合がある。更に、サファイア基板2の表面2aに、電気的接続のためのコンタクト層や光反射層等が形成されていてもよい。また、上記実施形態では、第1導電型がn型とされ、第2導電型がp型とされているが、第1導電型がp型とされ、第2導電型がn型とされてもよい。
【0084】
また、改質領域は、多光子吸収のみに起因して形成される場合に限定されず、多光子吸収に相当する光吸収等その他の光吸収や熱的影響に起因して形成される場合もある。つまり、多光子吸収は、改質領域を形成し得る現象の一例である。
【0085】
また、切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光L1の集光点P1を相対的に移動させるために、レーザ光源101側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、支持台107及びレーザ光源101側の両方を移動させてもよい。
【0086】
また、保護テープ23を使用する上記実施形態のそれぞれにおいては、エッチング時にサファイア基板2を固定することができるものであれば、保護テープ23以外のものを使用してもよい。例えば、保護テープ23以外にも、半導体プロセスで通常使用されるウェハ(サファイア基板)の固定方法を利用することができる。
【0087】
また、保護テープ24を使用する上記実施形態のそれぞれにおいては、保護テープ24は、後の光反射層21の形成時に基板加熱等で150℃〜300℃の環境下に置かれるため、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有することが好ましい。また、保護テープ24としては、半導体層17を保護するために弾性の樹脂テープを使用するが、半導体層17を保護する機能があればよいので、保護テープ24以外にも、種々の保持部材が利用することができる。例えば、半導体層17と接触して固定する機能を有する接着層を表面に備えた基板(ガラスやセラミック、金属等の剛体からなる基板)を保持部材として利用することができる。このような保持部材においても、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有することが好ましい。なお、保護テープ24は、光反射層21を形成する前に、光反射層21の形成時の温度において耐熱性を有する他の保護テープや保護部材に貼り換えてもよい。
【符号の説明】
【0088】
2…サファイア基板、2a…表面、2b…裏面、5,5a,5b…切断予定ライン、7,7a,7b…改質領域、17…III−V族化合物半導体層、21…光反射層、26a,26b…亀裂、28…ナイフエッジ、31…発光ダイオード(発光素子)、L,L1,L2,L3…レーザ光、P,P1,P2,P3…集光点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族化合物半導体層が表面に形成されたサファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として、所定の切断予定ラインに沿って第1のレーザ光を照射することにより、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に改質領域を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記サファイア基板の前記裏面に光反射層を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記改質領域を起点として発生した亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断し、発光素子を製造する第4の工程と、を備える、発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程では、前記第4の工程において前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させられる前記亀裂が少なくとも前記サファイア基板の前記表面に予め到達するように、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に前記改質領域を形成する、請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程では、前記第4の工程において前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させられる前記亀裂が前記サファイア基板の前記裏面に予め到達するように、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に前記改質領域を形成する、請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第4の工程では、前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿ってナイフエッジを押し当てることにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程の後かつ前記第4の工程の前に、前記光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、
前記第4の工程では、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断する、請求項1〜4のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第4の工程では、前記光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第3の工程の後かつ前記第4の工程の前に、前記サファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、
前記第4の工程では、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断する、請求項1〜4のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第4の工程では、前記サファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記切断予定ラインの交差部分のみにおいて、前記第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射する、請求項7又は8記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程の前に、前記サファイア基板の前記表面に前記III−V族化合物半導体層を形成する第1の工程を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項1】
III−V族化合物半導体層が表面に形成されたサファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記サファイア基板の裏面をレーザ光入射面として、所定の切断予定ラインに沿って第1のレーザ光を照射することにより、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に改質領域を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記サファイア基板の前記裏面に光反射層を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記改質領域を起点として発生した亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断し、発光素子を製造する第4の工程と、を備える、発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程では、前記第4の工程において前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させられる前記亀裂が少なくとも前記サファイア基板の前記表面に予め到達するように、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に前記改質領域を形成する、請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程では、前記第4の工程において前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させられる前記亀裂が前記サファイア基板の前記裏面に予め到達するように、前記切断予定ラインに沿って前記サファイア基板の内部に前記改質領域を形成する、請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第4の工程では、前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿ってナイフエッジを押し当てることにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程の後かつ前記第4の工程の前に、前記光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、
前記第4の工程では、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断する、請求項1〜4のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第4の工程では、前記光反射層に対して吸収性を有する第2のレーザ光を前記光反射層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第3の工程の後かつ前記第4の工程の前に、前記サファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる工程を更に備え、
前記第4の工程では、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に更に伸展させることにより、前記サファイア基板、前記III−V族化合物半導体層及び前記光反射層を前記切断予定ラインに沿って切断する、請求項1〜4のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第4の工程では、前記サファイア基板の内部に集光点を合わせて、前記III−V族化合物半導体層に対して透過性を有する第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射することにより、前記改質領域を起点として発生した前記亀裂を前記サファイア基板の厚さ方向に伸展させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記切断予定ラインの交差部分のみにおいて、前記第3のレーザ光を前記III−V族化合物半導体層の側から前記切断予定ラインに沿って照射する、請求項7又は8記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程の前に、前記サファイア基板の前記表面に前記III−V族化合物半導体層を形成する第1の工程を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−42119(P2013−42119A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153555(P2012−153555)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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