説明

発光素子アレイチップの製造方法、マイクロレンズ成形型、発光素子ヘッドおよび画像形成装置

【課題】光硬化性樹脂を硬化させることでマイクロレンズをLED上に形成する際に、光硬化性樹脂のはみ出しを抑制し、マイクロレンズ成形型の離型性がよい発光素子アレイチップの製造方法等を提供する。
【解決手段】基板と、基板の表面に形成されマイクロレンズ103の形状の転写形状を有する複数の孔部205と、孔部205の外周領域に形成され底部にクロム膜203が形成された凹部202とを有するマイクロレンズ成形型200を光硬化性樹脂302に押圧することで、孔部205および凹部202に光硬化性樹脂302を収容する工程と、光を照射し、孔部205に収容した光硬化性樹脂302は硬化させ、凹部202に収容した光硬化性樹脂302は遮光膜としてのクロム膜203により未硬化にする工程と、未硬化の光硬化性樹脂302を除去する工程と、を含むことでLED102にマイクロレンズ103を形成することを特徴とする発光素子アレイチップ100の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子アレイチップの製造方法等に関し、特に発光素子にマイクロレンズを形成した発光素子アレイチップの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した、プリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、一様に帯電された感光体上に、画像情報を光記録手段によって照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行なわれる。かかる光記録手段として、レーザを用いて主走査方向にレーザ光を走査させて露光する光走査方式の他、近年では、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)アレイ光源を主走査方向に多数、配列してなるLEDヘッドを用いた光記録手段が採用されている。
【0003】
このLEDアレイ光源を用いた画像形成装置は、光走査方式の画像形成装置に比べて、スキャンする空間が不要となり、駆動系が不要となることから、画像形成装置全体が小型化し、信頼性が向上するという利点がある。また、振動や熱による光学系の変形に強いという利点もある。
【0004】
一方、LEDアレイ光源における各LED素子は、光の放射角が広いので感光ドラムに対して、効率よく光を入射させにくい。この点を解決するため、特許文献1では、各LED素子に対応させたマイクロレンズ等のレンズを組み込んだマイクロレンズアレイが提案されている。
【0005】
このマイクロレンズアレイの作製方法は、種々提案されており、例えば、特許文献2では、発光素子アレイが形成された発光素子基板上に透明樹脂層を形成し、透明樹脂層に各発光素子に対応する位置に凸状(又は凹状)の段差を形成し、段差が形成された透明樹脂層を加熱することで各段差部分を非球面性の高いレンズ形状に変形させてマイクロレンズアレイを一体に形成する方法が提案されている。
また特許文献3では、凹部群を形成した成形面の上に高屈折樹脂を塗布し、ガラス基板を押しつけ展開させ、高屈折樹脂を硬化させることでマイクロレンズアレイを製造する方法が提案されている。
そして特許文献4では、スペーサ付き成形型を用いたマイクロレンズアレイの製造方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−24042号公報
【特許文献2】特開平11−202103号公報
【特許文献3】特開平11−123771号公報
【特許文献4】特開2006−327182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂を成形型を利用して成形することにより発光素子にマイクロアレイレンズを形成する方式では、樹脂のはみ出しを抑制すると共に成形型の離型を簡単に行うことも求められる。
本発明の目的は、成形時の樹脂のはみ出しを抑制すると共に成形型の離型を簡単に行うことができる発光素子アレイチップの製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧することで、当該孔部および当該凹部に当該光硬化性樹脂を収容する工程と、光を照射し、前記孔部に収容した光硬化性樹脂は硬化させ、前記凹部に収容した光硬化性樹脂は前記遮光膜により未硬化にする工程と、未硬化の前記光硬化性樹脂を除去する工程と、を含むことで発光素子にマイクロレンズを形成することを特徴とする発光素子アレイチップの製造方法である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型の一の端部から他の端部に貫通する溝形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
請求項3に係る発明は、前記凹部は、複数の異なる方向に対し設けられることを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
請求項4に係る発明は、前記除去は、前記凹部に洗浄液を供給し、当該凹部を洗浄することにより行うことを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
請求項5に係る発明は、前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型を前記光硬化性樹脂に押圧する際に前記発光素子アレイチップのボンディングパッドの位置に対応する位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
請求項6に係る発明は、前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型を前記光硬化性樹脂に押圧する際に前記発光素子が形成されたウエハの端部に対応する位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
請求項7に係る発明は、前記発光素子アレイチップは、自己走査型発光素子アレイチップであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法である。
【0010】
請求項8に係る発明は、基板と、前記基板の表面に形成され、マイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、前記孔部の外周領域に形成され、底部に遮光膜が形成された凹部と、を有することを特徴とするマイクロレンズ成形型である。
【0011】
請求項9に係る発明は、前記凹部は、前記基板の一の端部から他の端部に貫通することを特徴とする請求項8に記載のマイクロレンズ成形型である。
【0012】
請求項10に係る発明は、発光素子アレイチップを主走査方向に複数配列してなる発光素子アレイと、前記発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、を有し、前記発光素子アレイチップは、基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧し、光を照射して当該マイクロレンズ成形型に遮光膜が形成されていない部分に収容された当該光硬化性樹脂は硬化させ、当該マイクロレンズ成形型の遮光膜が形成されている部分に収容された当該光硬化性樹脂は未硬化として除去することで、発光素子にマイクロレンズを有する発光素子を備えることを特徴とする発光素子ヘッドである。
【0013】
請求項11に係る発明は、トナー像を形成させるトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を有し、前記トナー像形成手段は、基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧し、光を照射して当該マイクロレンズ成形型に遮光膜が形成されていない部分に収容された当該光硬化性樹脂は硬化させ、当該マイクロレンズ成形型の遮光膜が形成されている部分に収容された当該光硬化性樹脂は未硬化として除去することで、発光素子にマイクロレンズを形成した発光素子ヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、底部に遮光膜が形成された凹部を設けたマイクロレンズ成形型を使用しマイクロレンズを成形することで、樹脂のはみ出しを抑制し、マイクロレンズ成形型の離型性に優れた発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項2の発明によれば、凹部をマイクロレンズ成形型の一の端部から他の端部へ貫通する溝形状とすることで、マイクロレンズ成形型の離型性が向上するため、より生産性の高い発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項3の発明によれば、凹部を複数の異なる方向に設けることで、更にマイクロレンズ成形型の離型性に優れた発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項4の発明によれば、凹部に洗浄液を供給し凹部を洗浄することで、より簡単に光硬化性樹脂の除去ができるため、より生産性が高い発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項5の発明によれば、ボンディングパッドに対応する位置に凹部を設けることで、ボンディングパッドの位置には、光硬化性樹脂が残存しない発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項6の発明によれば、発光素子が形成されたウエハの端部に対応する位置に凹部を設けることで、この部分が離型開始点となるため、マイクロレンズ成形型の離型性がより優れた発光素子アレイチップの製造方法が実現できる。
請求項7の発明によれば、発光素子アレイチップを自己走査型発光素子アレイチップとすることで、より小さい発光素子アレイチップを製造することができる。
請求項8の発明によれば、底部に遮光膜が形成された凹部を設けることで、マイクロレンズを成形する際に樹脂のはみ出しを抑制することができ、また離型性に優れたマイクロレンズ成形型を実現できる。
請求項9の発明によれば、凹部を基板の一の端部から他の端部へ貫通する溝形状とすることで、より離型性に優れたマイクロレンズ成形型を実現できる。
請求項10の発明によれば、より精度の高いマイクロレンズを形成することができるため、より光出力の強度が大きい発光素子ヘッドが実現できる。
請求項11の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より光出力の強度が大きい発光素子ヘッドを備えるため、より高い画質を有する画像形成装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明は、以下の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0016】
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した図である。
図1に示す画像形成装置1は、一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置であって、各色の階調データに対応して画像形成を行う画像プロセス系10、画像プロセス系10を制御する画像出力制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置(IIT:Image Input Terminal)3に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部(IPS:Image Processing System)40を備えている。
【0017】
画像プロセス系10は、水平方向に一定の間隔を置いて並列的に配置される複数のエンジンからなるトナー像形成手段の一例としての画像形成ユニット11を備えている。この画像形成ユニット11は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kから構成されており、夫々、静電潜像を形成してトナー像を形成させる像保持体(感光体)である感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する発光装置である発光素子ヘッド14、発光素子ヘッド14によって得られた潜像を現像する現像器15を備えている。また、画像プロセス系10は、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの感光体ドラム12にて画像形成された各色のトナー像を記録媒体の一例としての記録用紙に多重転写させるために、この記録用紙を搬送する用紙搬送ベルト21、用紙搬送ベルト21を駆動させるロールである駆動ロール22、感光体ドラム12のトナー像を記録用紙に転写させる転写手段の一例としての転写ロール23を備えている。
【0018】
PC2やIIT3から入力された画像信号は、画像処理部40によって画像処理が施され、インタフェースを介して各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに供給される。画像プロセス系10は、画像出力制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて動作する。まず、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により帯電された感光体ドラム12の表面に、画像処理部40から得られた画像信号に基づき、発光素子ヘッド14によって静電潜像を形成する。形成された静電潜像に対して現像器15によってイエローのトナー像を形成し、形成されたイエローのトナー像は、図の矢印方向に回動する用紙搬送ベルト21上の記録用紙に転写ロール23を用いて転写される。同様にして、マゼンタ、シアン、黒のトナー像が各々の感光体ドラム12上に形成され、用紙搬送ベルト21上の記録用紙に転写ロール23を用いて多重転写される。多重転写された記録用紙上のトナー像は、定着手段の一例としての定着器24に搬送されて、熱および圧力によって記録用紙に定着される。
【0019】
図2は、本実施の形態が適用される発光素子ヘッド14の構成を示した図である。発光素子ヘッド14は、記録素子(発光素子)として多数のLEDが配列された発光素子アレイ51、発光素子アレイ51を支持すると共に発光素子アレイ51の駆動を制御するための回路が形成されたプリント基板52、各LEDから出射された光出力を感光体ドラム12上に結像させる光学素子であるセルフォックレンズアレイ(SLA:登録商標)53を備え、プリント基板52およびセルフォックレンズアレイ53は、ハウジング54に保持されている。発光素子アレイ51は、LEDが主走査方向に画素数分、配列されたものからなる。例えば、A3サイズの短手(297mm)を主走査方向とする場合、600dpiの解像度では、約42.3μm毎に7040個のLEDが配列されることになる。なお、本実施の形態では、LEDが一直線上に並べられており、実際にはサイドレジずれ等を考慮して7680個のLEDが配列されている。
【0020】
図3は、発光素子アレイ51の構造を説明した概略図である。
図3に示した発光素子アレイ51は、複数の発光素子アレイチップ100が主走査方向に千鳥状に配列する。
発光素子アレイチップ100は、矩形形状であり両側に配線等を行うスペースであるボンディングパッド101を備える。このようにボンディングパッド101を配すれば、ほぼボンディングパッド101自体が必要とする幅までチップ幅を小さくできる利点がある。
また発光素子アレイチップ100において両側のボンディングパッド101に挟まれる領域には、発光素子であるLED102が主走査方向である矩形の長辺に沿って直線状に等間隔で配列する。ここで、LED102は、発光素子アレイチップ100の長辺の一方に寄せて配置される。そして奇数番目の発光素子アレイチップ100と偶数番目の発光素子アレイチップ100とは、LED102が向かい合わせになるように、また、ボンディングパッド101を重ねるようにして配置される。このような配置により全てのLED102を、主走査方向に対し等間隔に並べて配置することができる。
また各LED102上には図示しないマイクロレンズ103が取り付けられている。
【0021】
図4(a)〜(b)は、発光素子アレイチップ100の構造を説明した図である。
図4(a)は、発光素子アレイチップ100をLED102の光が出射する方向から見た図である。また図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。
上述の通り、発光素子アレイチップ100には、その両側にボンディングパッド101が配され、また両側のボンディングパッド101に挟まれる領域には、LED102が直線状に等間隔に配されている。それぞれのLED102には光が出射する側にマイクロレンズ103が形成されている。このマイクロレンズ103は、LED102から出射した光を集光し、感光体ドラム12(図2参照)に対して、効率よく光を入射させることができる。
このマイクロレンズ103は、光硬化性樹脂等の透明樹脂からなり、より効率よく光を集光するためその表面は非球面形状をとることが好ましい。また、マイクロレンズ103の大きさ、厚さ、焦点距離等は、使用されるLED102の波長、使用される光硬化性樹脂の屈折率等により適宜決定される。
【0022】
なお、本実施の形態では、発光素子アレイチップ100として自己走査型発光素子アレイを使用するのが好ましい。自己走査型発光素子アレイは、発光素子アレイの構成要素としてpnpn構造を持つ発光サイリスタを用い、発光素子の自己走査が実現できるように構成したものであり、特開平1−238962号公報、特開平2−14584号公報、特開平2−92650号公報、特開平2−92651号公報に開示されている。また、特開平2−263668号公報には、転送素子アレイを転送部として、発光部である発光素子アレイと分離した構造の自己走査型発光素子アレイが開示されている。
【0023】
図5は、分離タイブの自己走査型発光素子アレイの等価回路図である。この自己走査
型発光素子アレイは、転送用サイリスタT,T,T,…、書込み用発光サイリスタL,L,L,…からなる。転送部の構成は、ダイオード接続を用いている。VGKは電源(通常5V)であり、電源ライン72から各負荷抵抗Rを経て各転送用サイリスタのゲート電極G,G,G,…に接続されている。また、転送用サイリスタのゲート電極G,G,G,…は、書込み用発光サイリスタのゲート電極にも接続される。転送用サイリスタTのゲート電極にはスタートパルスφが加えられ、転送用サイリスタのアノード電極には、交互に転送用クロックパルスφ1,φ2が加えられる。これらクロックパルスφ1,φ2は、クロックパルスライン74,76を経て供給される。書込み用発光サイリスタのアノード電極には、信号ライン78を経て、書込み信号φが加えられている。
【0024】
次に動作を簡単に説明する。まず転送用クロックパルスφ1の電圧がハイレベルで転送用サイリスタTがオン状態であるとする。このとき、ゲート電極Gの電位はVGKの5Vからほぼ0Vにまで低下する。この電位降下の影響はダイオードDによってゲート電極Gに伝えられ、その電位を約1Vに(ダイオードDの順方向立上り電圧(拡散電位に等しい))に設定する。しかし、ダイオードDは逆バイアス状態であるためゲート電極Gへの電位の接続は行われず、ゲート電極Gの電位は5Vのままとなる。発光サイリスタのオン電位は、ゲート電極電位+pn接合の拡散電位(約1V)で近似されるから、次の転送用クロックパルスφ2のHレベル電圧は約2V(転送用サイリスタTをオンさせるために必要な電圧)以上でありかつ約4V(転送用サイリスタTをオンさせるために必要な電圧)以下に設定しておけば転送用サイリスタTのみがオンし、これ以外の転送用サイリスタはオフのままにすることができる。従って2本の転送用クロックパルスでオン状態が転送されることになる。
【0025】
スタートパルスφは、このような転送動作を開始させるためのパルスであり、スタートパルスφをLレベル(約0V)にすると同時に転送用クロックパルスφ2をHレベル(約2〜約4V)とし、転送用サイリスタTをオンさせる。その後すぐ、スタートパルスφはHレベルに戻される。
【0026】
いま、転送用サイリスタTがオン状態にあるとすると、ゲート電極Gの電位は、VGK(ここでは5Vと想定する)より低下し、ほぼ0Vとなる。したがって、書込み信号φの電圧が、pn接合の拡散電位(約1V)以上であれば、書込み用発光サイリスタLを発光状態とすることができる。
【0027】
これに対し、ゲート電極Gは約5Vであり、ゲート電極Gは約1Vとなる。したがって、書込み用発光サイリスタLの書込み電圧は約6V、書込み用発光サイリスタLの書込み電圧は約2Vとなる。これから、書込み用発光サイリスタLのみに書き込める書込み信号φの電圧は、1〜2Vの範囲となる。書込み用発光サイリスタLがオン、すなわち発光状態に入ると、発光強度は書込み信号φに流す電流量で決められ、任意の強度にて画像書込みが可能となる。また、発光状態を次の発光素子に転送するためには、書込み信号φラインの電圧を一度0Vまでおとし、発光している発光素子をいったんオフにしておく必要がある。
【0028】
次にLED102上にマイクロレンズ103を形成し、発光素子アレイチップ100を製造する方法について説明する。
図6(a)〜(f)および図7(a)〜(e)は、LED102上にマイクロレンズ103を形成し、発光素子アレイチップ100を製造する工程を説明した図である。
この工程は、大きく分けてマイクロレンズ103を形成するためのマイクロレンズ成形型200を作成する工程(図6(a)〜(f))と、そのマイクロレンズ成形型200を使用して、実際にマイクロレンズ103を形成し、発光素子アレイチップ100を作成する工程(図7(a)〜(e))とからなる。
【0029】
最初にマイクロレンズ成形型200を作成する工程について説明を行う。
まず石英ガラスからなる基板201に凹部202を形成する(図6(a))。この凹部202は、機械的な加工で作成することができる。
【0030】
次に、凹部202が形成された基板201にクロム膜203を形成する。このクロム膜203は、蒸着等の方法で成膜することができ、厚さは0.2μm〜1μm程度とするのが好ましい。この際に、クロム膜203は、基板201の表面全体および凹部202の底部にも成膜される(図6(b))。
【0031】
次に、クロム膜203に開口部204を設ける(図6(c))。この開口部204の中央部の間隔は、マイクロレンズ103(図4参照)の中央部の間隔と同一であり、例えば約42.3μmとすることができる。開口部204を設けるには、フォトリソグラフィ法により行うことができる。即ち、開口部204に対応したレジスト層を形成させ、このレジスト層をマスクとして、ドライエッチングやウェットエッチングによりクロム膜203の開口部204に相当する部分を除去する。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチング法が利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸への浸漬を行う方法などが利用できる。そして、残ったレジスト層をレジスト除去液等を利用することにより除去すると開口部204が形成される。
【0032】
次に、基板201のウェットエッチングを行う。エッチング液としては、フッ酸水溶液等が使用できる。このときクロム膜203は、マスクとして機能し、開口部204の部分が等方的にエッチングされる。その結果、石英ガラスの基板201に略半球形状の孔部205が形成される(図6(d))。この略半球形状の孔部205の形状は、マイクロレンズ103の転写形状である。
【0033】
次に、クロム膜203を部分的に除去する(図6(e))。クロム膜203の除去には、上記の反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチング法等のドライエッチング法や、希塩酸や希硫酸への浸漬を行うウェットエッチング法が利用できるが、例えば粘着テープを貼りつけ、それを剥ぎ取る方法でも除去可能である。
そして、マイクロレンズ103を形成する際にマイクロレンズ成形型200との離型性をよりよくするため、離型処理をする(図6(f))。
この離型処理は、例えば、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂等をコーティングすることで離型膜207を形成させるような方法により行うことができる。またマイクロレンズ103を形成する際にマイクロレンズ成形型200を所定の位置に規定するための図示しないスペーサを形成するのが好ましい。スペーサは、例えば、プラスチック等からなる10μm前後の粒径を有する球状のビーズを1層塗布することにより形成させることができる。
このような一連の工程によりマイクロレンズ成形型200が作成できる。
【0034】
次に上記のようにして作成したマイクロレンズ成形型200を使用し、マイクロレンズ103を作成する工程について説明を行う。
まず、ボンディングパッド101およびLED102を形成したLEDウエハ301に紫外線(UV:Ultra Violet)により硬化する光硬化性樹脂302を滴下する(図7(a))。またこの際に、スピンコート等を行うことにより光硬化性樹脂302がLEDウエハ301上で均一になるようにするのが好ましい。使用される光硬化性樹脂302としては、LED102から出射された光を透過するものであれば、特に限定されるものではないが、一般的なエポキシ系の光硬化性樹脂やアクリル系の光硬化性樹脂が使用できる。
【0035】
次に、マイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に押付けることにより光硬化性樹脂302を展開させ、水平方向および厚さ方向に対し、微少位置合せを行う(図7(b))。このとき、光硬化性樹脂302は、マイクロレンズ成形型200に形成された孔部205に侵入し、マイクロレンズ103の形状となる。
また、孔部205に収容しきれない光硬化性樹脂302は、凹部202に収容される。このように凹部202に余分な光硬化性樹脂302を収容することで、光硬化性樹脂302のはみ出しを抑制することができる。そしてこの際に凹部202には、光硬化性樹脂302が全て満たされず、余分な空間が生じる程度である方が光硬化性樹脂302のはみ出しを抑制する観点から好ましい。
厚さ方向の位置合せは、マイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に所定の圧力で押圧を行い、LEDウエハ301と図示しないスペーサとを接触させることにより行うことができる。マイクロレンズ成形型200の厚さ方向の位置は、スペーサにより規定され、光硬化性樹脂302の厚さを全体で均一にすることができる。よって形成されるマイクロレンズ103の焦点距離も一様にそろうことになる。また、水平方向への位置合せは、図示しない所定のマーカに位置合せをする方法で行うことができる。
【0036】
マイクロレンズ成形型200の位置合せの完了後、紫外線を照射し、光硬化性樹脂302を硬化させる。このときクロム膜203の部分が遮光膜として機能し、紫外線が遮光され、このクロム膜203の下側にある光硬化性樹脂302は、未硬化のままとなる(図7(c))。
なおここで光硬化性樹脂302が未硬化であるとは、後の図7(e)の工程で洗浄により除去できる程度に硬化していない程度であれば足り、硬化が全く進行していない状態であることを意味するものではない。
【0037】
光硬化性樹脂302の硬化後、マイクロレンズ成形型200を離型させる(図7(d))。そして、硬化させなかった光硬化性樹脂302を洗浄により除去し、LEDウエハ301のダイシングを行うと、LED102上に硬化した光硬化性樹脂302よりなるマイクロレンズ103が形成された発光素子アレイチップ100が製造できる(図7(e))。
【0038】
ここで、上述した凹部202について更に詳しく説明を行う。
図8(a)〜(b)は、凹部202の第1の例について説明した図である。
図8(a)〜(b)に示した工程は、上述した図7(b)の工程に対応し、LED102を多数形成したLEDウエハ301にマイクロレンズ成形型200を押し付け、光硬化性樹脂302をマイクロレンズ103の形状にする工程についての全体図である。そして、図8(a)はマイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に押付ける方向から見た図であり、図8(b)は、図8(a)のB−B断面図である。
【0039】
この工程においてLEDウエハ301には、既にLED102が形成されている。またマイクロレンズ成形型200には、溝形状を有する複数の凹部202が図8(a)における縦方向に平行に形成されている。マイクロレンズ成形型200で凹部202が形成されている位置は、LEDウエハ301でLED102の位置に対応する位置には形成されず、ボンディングパッド101の位置に対応する位置に形成される。また凹部202は、マイクロレンズ成形型200の一の端部から他の端部へ貫通して形成されている。
【0040】
マイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に押し付けると、図7(b)において説明したのと同様に光硬化性樹脂302は、マイクロレンズ成形型200に形成された孔部205に侵入してその中に収容され、それと共に孔部205に収容しきれない光硬化性樹脂302は、凹部202に収容される。そして、図7(c)において説明したようにその後紫外線を照射し、光硬化性樹脂302を硬化させるが、溝形状の凹部202には、遮光膜としてのクロム膜203をその底部に有するので、光が照射されず、光硬化性樹脂302は、未硬化となる。よってLED102の部分には、マイクロレンズ103(図7(e)参照)が形成されるが、その他の部分は、未硬化の光硬化性樹脂302を除去することができる。溝形状の凹部202の位置は、LEDウエハ301のボンディングパッド101の位置に対応する位置であるので、ボンディングパッド101の箇所には、光硬化性樹脂302は残存せず、この部分を露出させることができる。
【0041】
この光硬化性樹脂302の除去は、図7(e)で示したようにマイクロレンズ成形型200の離型後に行ってもよいが、離型前に行うこともできる。即ち、溝形状の凹部202に、洗浄液を供給し、この洗浄液により未硬化の光硬化性樹脂302を除去することができる。具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl alcohol)などの有機溶剤を入れた図示しない洗浄槽に浸漬させ、揺動させる。凹部202は貫通した溝形状であるため、その端部から洗浄液が侵入し、凹部202の洗浄を行うことができる。
このように離型前に洗浄を行うと、凹部202の部分に未硬化の光硬化性樹脂302が存在していた部分は空隙となり、マイクロレンズ成形型200の離型をより簡単に行うことができる。
【0042】
また、図9(a)〜(b)は、凹部202の第2の例について説明した図である。
図9(a)〜(b)に示した工程は、図8(a)〜(b)で説明した場合と同様に、上述した図7(b)に対応し、LED102を多数形成したLEDウエハ301にマイクロレンズ成形型200を押し付け、光硬化性樹脂302をマイクロレンズ103の形状にする工程についての全体図である。そして、図9(a)はマイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に押付ける方向から見た図であり、図9(b)は、図9(a)のC−C断面図である。
【0043】
図9(a)〜(b)に示した工程では、図8(a)〜(b)に示した場合に対し、マイクロレンズ成形型200のLEDウエハ301の端部に対応する位置に凹部202を更に設けている。この凹部202は、LEDウエハ301の端部を覆うように形成されることが好ましい。このように凹部202を設けることで、この部分の光硬化性樹脂302は、未硬化となり、洗浄を行うことで除去することができる。LEDウエハ301の端部において光硬化性樹脂302を除去した状態で離型を行うと、この部分が離型開始点となり、マイクロレンズ成形型200の離型をより簡単に行うことができる。
【0044】
そして、図10(a)〜(b)は、凹部202の第3の例について説明した図である。
図10(a)〜(b)に示した工程は、図8(a)〜(b)で説明した場合と同様に、上述した図7(b)に対応し、LED102を多数形成したLEDウエハ301にマイクロレンズ成形型200を押し付け、光硬化性樹脂302をマイクロレンズ103の形状にする工程についての全体図である。そして、図10(a)はマイクロレンズ成形型200をLEDウエハ301に押付ける方向から見た図であり、図10(b)は、図10(a)のD−D断面図である。
【0045】
図10(a)〜(b)に示した工程では、図9(a)〜(b)に示したマイクロレンズ成形型200に対し、図10(a)における縦方向に溝形状の凹部202を設けただけではなく、横方向にも溝形状の凹部202を設けている。
このように複数の異なる方向に凹部202を設けると、離型前に凹部202の洗浄を行い、未硬化の光硬化性樹脂302を除去することにより、更に、空隙となる部分が増えることになる。よって、光硬化性樹脂302とLEDウエハ301との接触面積をより小さくできるため、マイクロレンズ成形型200の離型性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】本実施の形態が適用される発光素子ヘッドの構成を示した図である。
【図3】発光素子アレイの構造を説明した概略図である。
【図4】発光素子アレイチップの構造を説明した図である。
【図5】分離タイブの自己走査型発光素子アレイの等価回路図である。
【図6】マイクロレンズを形成するためのマイクロレンズ成形型を作成する工程を説明した図である。
【図7】マイクロレンズ成形型を使用して、マイクロレンズを形成し、発光素子アレイチップを作成する工程を説明した図である。
【図8】凹部の第1の例について説明した図である。
【図9】凹部の第2の例について説明した図である。
【図10】凹部の第3の例について説明した図である。
【符号の説明】
【0047】
1…画像形成装置、11K,11C,11M,11Y…画像形成ユニット、14…発光素子ヘッド、23…転写ロール、24…定着器、51…発光素子アレイ、53…セルフォックレンズアレイ、100…発光素子アレイチップ、101…ボンディングパッド、102…LED、103…マイクロレンズ、200…マイクロレンズ成形型、201…基板、202…凹部、203…クロム膜、205…孔部、301…LEDウエハ、302…光硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧することで、当該孔部および当該凹部に当該光硬化性樹脂を収容する工程と、
光を照射し、前記孔部に収容した光硬化性樹脂は硬化させ、前記凹部に収容した光硬化性樹脂は前記遮光膜により未硬化にする工程と、
未硬化の前記光硬化性樹脂を除去する工程と、
を含むことで発光素子にマイクロレンズを形成することを特徴とする発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型の一の端部から他の端部に貫通する溝形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項3】
前記凹部は、複数の異なる方向に対し設けられることを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項4】
前記除去は、前記凹部に洗浄液を供給し、当該凹部を洗浄することにより行うことを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項5】
前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型を前記光硬化性樹脂に押圧する際に前記発光素子アレイチップのボンディングパッドの位置に対応する位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項6】
前記凹部は、前記マイクロレンズ成形型を前記光硬化性樹脂に押圧する際に前記発光素子が形成されたウエハの端部に対応する位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項7】
前記発光素子アレイチップは、自己走査型発光素子アレイチップであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイチップの製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板の表面に形成され、マイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、
前記孔部の外周領域に形成され、底部に遮光膜が形成された凹部と、
を有することを特徴とするマイクロレンズ成形型。
【請求項9】
前記凹部は、前記基板の一の端部から他の端部に貫通することを特徴とする請求項8に記載のマイクロレンズ成形型。
【請求項10】
発光素子アレイチップを主走査方向に複数配列してなる発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、を有し、
前記発光素子アレイチップは、
基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧し、光を照射して当該マイクロレンズ成形型に遮光膜が形成されていない部分に収容された当該光硬化性樹脂は硬化させ、当該マイクロレンズ成形型の遮光膜が形成されている部分に収容された当該光硬化性樹脂は未硬化として除去することで、発光素子にマイクロレンズを有する発光素子を備えることを特徴とする発光素子ヘッド。
【請求項11】
トナー像を形成させるトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を有し、
前記トナー像形成手段は、
基板と、当該基板の表面に形成されマイクロレンズの形状の転写形状を有する複数の孔部と、当該孔部の外周領域に形成され底部に遮光膜が形成された凹部とを有するマイクロレンズ成形型を光硬化性樹脂に押圧し、光を照射して当該マイクロレンズ成形型に遮光膜が形成されていない部分に収容された当該光硬化性樹脂は硬化させ、当該マイクロレンズ成形型の遮光膜が形成されている部分に収容された当該光硬化性樹脂は未硬化として除去することで、発光素子にマイクロレンズを形成した発光素子ヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−188237(P2009−188237A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27534(P2008−27534)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】