説明

発光素子用封止材組成物、その硬化物および発光素子封止体

【課題】耐熱着色安定性、屈折率に優れる硬化物となりうる発光素子用封止材組成物の提供。
【解決手段】フェニル基およびシラノール基を有するシラノール基含有化合物と、アルコキシシラン化合物と、シラノール縮合触媒とを含有する発光素子用封止材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用封止材組成物、その硬化物および発光素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子を封止するための組成物としてエポキシ樹脂を含有するもの(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、白色LED素子を封止するために特許文献1のようにエポキシ樹脂を含有する場合、硬化物が白色LED素子が発光する際の発熱に長期的にさらされることによって硬化物が黄色に変色しその透明性が低下してしまうこと、および硬化物の屈折率が低いことを見出した。
そこで、本発明は、耐熱着色安定性、屈折率に優れる硬化物となりうる発光素子用封止材組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、フェニル基およびシラノール基を有するシラノール基含有化合物と、アルコキシシラン化合物と、シラノール縮合触媒とを含有する組成物が、耐熱着色安定性、屈折率に優れる硬化物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(11)を提供する。
(1) フェニル基およびシラノール基を有するシラノール基含有化合物と、アルコキシシラン化合物と、シラノール縮合触媒とを含有する発光素子用封止材組成物。
(2) 前記シラノール基含有化合物が、下記式(1)または式(2)で表されるものである上記(1)に記載の発光素子用封止材組成物。
【化1】


[式(1)中、Phはフェニル基であり、R1はアルキル基またはアルケニル基であり、mは1または2であり、nは2または3である。
式(2)中、R2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、aはそれぞれ独立に1、2または3である。]
(3) 前記シラノール基に含まれるヒドロキシ基の量が、前記シラノール基含有化合物中の1〜10重量%である上記(1)または(2)に記載の発光素子用封止材組成物。
(4) 前記フェニル基の量が、前記シラノール基含有化合物が有する全有機基中の30〜80モル%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(5) 前記シラノール基含有化合物の分子量が、1,000〜5,000である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(6) 前記アルコキシシラン化合物が、下記式(3)または式(4)で表されるものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
34-m−Si−(OR3m (3)
(式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは2、3または4である。)
【化2】


(式中、R4はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nが1以上であり、aはそれぞれ独立に0、1、2または3である。)
(7) 前記アルコキシシラン化合物の分子量が、200〜5,000である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(8) 前記アルコキシシラン化合物の量が、前記シラノール基含有化合物100質量部に対して、10〜900質量部である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
(10) LEDチップが上記(9)に記載の硬化物で封止されている発光素子封止体。
(11) 前記硬化物の厚さが0.1mm以上である上記(10)に記載の発光素子封止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光素子用封止材組成物は、耐熱着色安定性、屈折率に優れる硬化物となることができる。
本発明の発光素子封止体は、耐熱着色安定性、屈折率に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の発光素子用封止材組成物は、フェニル基およびシラノール基を有するシラノール基含有化合物と、アルコキシシラン化合物と、シラノール縮合触媒とを含有する組成物である。
なお、本発明の発光素子用封止材組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0009】
シラノール基含有化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシラノール基含有化合物は、フェニル基およびシラノール基を有し、1分子中にシラノール基内のヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に制限されない。
【0010】
シラノール基含有化合物が有するフェニル基は、置換基を有することができる。置換基は特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられる。なかでも、屈折率により優れる硬化物が得られるという観点から、無置換のフェニル基であるのが好ましい。
【0011】
シラノール基含有化合物が有するシラノール基は、ヒドロキシ基がケイ素原子に結合するもの(−Si−OH)である。1つのケイ素原子に結合するヒドロキシ基は1〜3個である。1つのケイ素原子に結合するヒドロキシ基の数が1または2である場合、ヒドロキシ基以外の置換基は特に制限されない。
シラノール基含有化合物が有するシラノール基は、硬化性に優れるという観点から、シラノール基含有化合物中の5〜7重量%であるのが好ましい。
シラノール基含有化合物としては、例えば、フェニル基およびシラノール基を有するシラン化合物、フェニル基およびシラノール基を有するシロキサン化合物が挙げられる。
【0012】
フェニル基およびシラノール基を有するシラン化合物は、1つのケイ素原子を有し、当該ケイ素原子に1つ以上のフェニル基と2つ以上のヒドロキシ基とが結合しているものである。
フェニル基およびシラノール基を有するシラン化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【化3】


式(1)中、Phはフェニル基であり、R1はアルキル基またはアルケニル基であり、mは1または2であり、nは2または3である。
【0013】
アルキル基としては炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
mは1または2であり、2であるのが好ましい。
nは2または3であり、2であるのが好ましい。
【0014】
式(1)で表されるシラノール基含有化合物としては、例えば、モノフェニルトリヒドロキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、トリフェニルモノヒドロキシシラン、モノフェニルジヒドロキシメチルシラン、モノフェニルモノヒドロキシジメチルシラン、ジフェニルモノヒドロキシメチルシラン、モノフェニルジヒドロキシエチルシランが挙げられる。
【0015】
フェニル基およびシラノール基を有するシロキサン化合物は、2個以上のケイ素原子を有し当該ケイ素原子がシロキサン結合を形成し、かつフェニル基およびシラノール基を有する化合物である。
フェニル基およびシラノール基を有するシロキサン化合物としては、その主鎖がポリシロキサンであるものが挙げられる。
フェニル基およびシラノール基を有するポリシロキサンは、シラノール基を片末端または両末端に有することができ、フェニル基および両末端にシラノール基を有するシロキサン化合物が好ましい態様の1つとして挙げられる。
フェニル基および両末端にシラノール基を有するシロキサン化合物としては、例えば、式(2)で表されるものが挙げられる。
【化4】


式(2)中、R2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、aはそれぞれ独立に1、2または3である。
【0016】
アルキル基またはアルケニル基は、上記と同義である。
アリール基は炭素数6〜12のものが好ましい。具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
mは、1以上の整数であり、1〜40であるのが好ましい。
nは0または1以上の整数であり、1〜70であるのが好ましい。
aはそれぞれ独立に1、2または3であり、2〜3であるのが好ましい。
フェニル基および両末端にシラノール基を有するシロキサン化合物は、耐熱性に優れるという観点から、その主鎖がポリシロキサンであるのが好ましい。
【0017】
フェニル基およびシラノール基を有するポリシロキサンの市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の217FLAKEが挙げられる。
シラノール基含有化合物は、高屈折率の硬化物が得られるという観点から、式(1)、(2)で表されるものであるのが好ましく、式(2)で表されるものがより好ましい。
【0018】
シラノール基含有化合物は、高屈折率の硬化物が得られるという観点から、シラノール基に含まれるヒドロキシ基の量が、シラノール基含有化合物中の1〜10重量%であるのが好ましい。
【0019】
シラノール基含有化合物は、フェニル基の量が、シラノール基含有化合物が有する全有機基中の30〜80モル%であるのが好ましい。
ここで、シラノール基含有化合物が有する有機基は、シラノール基含有化合物が式(1)で表される場合はフェニル基とR1とであり、シラノール基含有化合物が式(2)で表される場合はフェニル基とR2とである。
シラノール基含有化合物の分子量は、1,000〜5,000であるのが好ましく、1,000〜2,000であるのがより好ましい。
シラノール基含有化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
アルコキシシラン化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するものであれば特に制限されない。例えば、アルコキシ基含有シラン化合物、アルコキシ基含有シロキサン化合物が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基含有シラン化合物は、1個のケイ素原子を有し、当該ケイ素原子に2個以上のアルコキシ基が結合しているものである。
アルコキシ基含有シラン化合物としては、例えば、式(3)で表されるものが挙げられる。
34-m−Si−(OR3m (3)
式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは2、3または4である。
【0022】
アルキル基またはアルケニル基は上記と同義である。
アリール基は炭素数6〜12のものが好ましい。具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
mは2、3または4であり、3が好ましい。
【0023】
アルコキシ基含有シラン化合物としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、テトライソプロペノキシシランが挙げられる。
【0024】
アルコキシ基含有シロキサン化合物は、2個以上のケイ素原子を有し当該ケイ素原子がシロキサン結合を形成し、かつケイ素原子に結合している2個以上のアルコキシ基を有するものである。
アルコキシ基含有シロキサン化合物としては、例えば、式(4)で表されるものが挙げられる。
【化5】


式中、R4はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nが1以上であり、aはそれぞれ独立に0、1、2または3である。
【0025】
アルキル基、アルケニル基またはアリール基は上記と同義である。
mは0または1以上の整数であり、1〜60であるのが好ましい。
nは0または1以上の整数であり、1〜75であるのが好ましい。
m+nが1以上であり、2〜3であるのが好ましい。
aはそれぞれ独立に1、2または3であり、2〜3であるのが好ましい。
アルコキシ基含有シロキサン化合物は、耐熱性に優れるという観点から、その主鎖がポリシロキサンであるのが好ましい。
【0026】
アルコキシ基含有ポリシロキサンの市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の3074が挙げられる。
アルコキシシラン化合物は、高屈折率の硬化物が得られるという観点から、式(3)、(4)で表されるものであるのが好ましく、式(4)で表されるものがより好ましい。
【0027】
アルコキシシラン化合物の分子量は、高屈折率の硬化物が得られるという観点から、200〜5,000であるのが好ましい。
アルコキシシラン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明の組成物において、アルコキシシラン化合物の量は、高屈折率の硬化物が得られるという観点から、シラノール基含有化合物100質量部に対して、10〜900質量部であるのが好ましく、30〜100質量部であるのがより好ましい。
【0029】
シラノール縮合触媒について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシラノール縮合触媒は、シラノール基同士やシラノール基とケイ素原子結合加水分解性基とを縮合反応させることが可能な化合物であれば特に制限されない。
例えば、ジ(n−ブチル)スズジアセテ−ト、ジブチルスズジオクテ−ト、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトラアルキルチタネートなどの有機チタネート化合物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどの有機金属触媒;ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等の有機ケイ素化合物を含まないアミン系触媒などが挙げられる。
【0030】
なかでも、透明性、平滑性、硬化性に優れるという観点から、有機チタネート化合物または錫系触媒が好ましい。
シラノール縮合触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シラノール縮合触媒の量は、透明性、硬化性に優れるという観点から、シラノール基含有化合物100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、シラノール基含有化合物、アルコキシシラン化合物およびシラノール縮合触媒以外に本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、顔料;炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、シリカのような充填剤;酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0032】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、シラノール基含有化合物とアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と必要に応じて使用することができる添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0033】
本発明の組成物は、1液型とすることが可能である。
本発明の組成物は、発光素子用封止材組成物として使用することができる。
本発明の組成物は、加熱によって硬化することができる。
【0034】
次に、本発明の硬化物について以下に説明する。
本発明の硬化物は、本発明の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られるものである。
【0035】
本発明の硬化物に使用される組成物は、本発明の発光素子用封止材組成物であれば特に制限されない。
組成物の硬化について以下に説明する。
本発明において、組成物は、例えば、加熱によって硬化させることができる。
【0036】
組成物を加熱によって硬化させる場合、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、組成物を例えば、(1)60〜120℃(好ましくは80℃)で30分〜2時間(好ましくは1時間)硬化させた後、120〜180℃(好ましくは150℃)で30分〜2時間(好ましくは1時間)硬化させる方法、(2)60〜120℃(好ましくは80℃)で30分〜100時間(好ましくは72時間)硬化させる方法が好ましい態様として挙げられる。
組成物を穏やかな条件下で硬化させることによって、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制することができる。
得られる硬化物は、その数平均分子量(GPC測定法による)が190〜20,000であるのが好ましい。
【0037】
本発明の硬化物は、長期のLED(なかでも白色LED)による使用に対して、透明性を保持することができ、耐熱着色安定性に優れる。
本発明の硬化物(硬化物の厚さが2mmである場合)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0038】
また、本発明の硬化物は、初期硬化の後耐熱試験(硬化物を150℃下に、10日間置く。)を行いその後の硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0039】
本発明の硬化物は、その透過性保持率(耐熱試験後の透過率/初期硬化の際の透過率×100)が、70〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。
本発明の硬化物は、LEDチップの封止材として使用することができる。
LEDチップは、その発光色について特に制限されない。例えば、青色、赤色、黄色、緑色、白色が挙げられる。
LEDチップは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
次に、本発明の発光素子封止体について以下に説明する。
本発明の発光素子封止体は、LEDチップが本発明の硬化物で封止されているものである。
【0041】
本発明の発光素子封止体に使用される硬化物は本発明の硬化物であれば特に制限されない。
また、本発明の発光素子封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。
白色LEDの場合、例えば、青色LEDチップをイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有する色変換部材でコーティングしたもの、赤色・緑色・青色のLEDチップを用いるものが挙げられる。
また、本発明の組成物にイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有させて、これで青色LEDチップを封止することができる。
また、赤色・緑色・青色のLEDチップを用いる場合、それぞれのLEDチップを封止してこれら3色のLEDチップの封止体を使用すること、または3色のLEDチップをまとめて封止し1個の光源とすることができる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。
LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED、白色LED、青色LEDが挙げられる。
【0042】
本発明の発光素子封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。
図6は本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図7は図6に示す発光素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図6において、600は本発明の発光素子封止体であり、発光素子封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止する硬化物603とを備える。
図7において、Tは、硬化物603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向に硬化物603の厚さを測定したときの値である。
本発明の発光素子封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図7におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0043】
本発明の発光素子封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。
図2は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
図3は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、本発明の発光素子封止体は添付の図面に限定されない。
【0044】
図2において、白色LED200は、基板210の上にセラミックのパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ203と色変換部材202とが配置されている。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。
色変換部材202は、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットと透光性ポリイミド樹脂とを含有することができる。
青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)とパッケージ204に設けられた外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
パッケージ204のキャビティー(図示せず。)は、硬化物206によって封止されている。
【0045】
図3において、白色LED300は、ランプ機能を有する硬化物306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
基板310には、頭部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ303と色変換部材302とが配置されている。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。
色変換部材302は、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットと透光性ポリイミド樹脂とを含有することができる。
青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0046】
なお、図2、図3においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色・緑色・青色の3色のLEDチップを配置することができる。
この場合、色変換部材202、302は配置しなくともよい。
本発明の発光素子封止体は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0047】
本発明の発光素子封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。
図4は、本発明の発光素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
なお、本発明の発光素子封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0048】
図4において、LED表示器400は、白色LED401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LED401を充填剤406で固定し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。
【0049】
図5において、LED表示装置500は、白色LED封止体を用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本発明の発光素子封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0050】
本発明の発光素子封止体は、その製造時またはLED(特に白色LED)としての使用時の発熱や光によって硬化物の透過率が低下しにくく透明性に優れ、硬化物が変色しにくく耐熱着色安定性に優れ、高屈性率、高硬度を有し、従来のシリコーン樹脂系封止材と比較して、発光素子との密着性に優れる。
また、本発明の組成物は、透明性、耐熱着色安定性、成形性に優れ、クラック、気泡が発生しにくく、機械的強度に優れる硬化物となり、作業性に優れ、1液型とすることができる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
以下に示すように透過率、透明性、耐熱着色安定性、平滑性および屈折率について評価した。結果を第1表に示す。
(1)透明性評価試験
透明性評価試験は、下記に示す、硬化直後(初期)の硬化物および耐熱試験後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。
また、耐熱試験後の透明性の保持率を下記計算式によって求めた。
保持率(%)=(耐熱試験後の透過率)/(初期の透過率)×100
【0052】
(2)耐熱着色安定性評価試験
耐熱試験後の硬化物について黄変したかどうかを目視で観察した。
(3)平滑性
硬化直後(初期)の硬化物の表面が平滑かどうかを目視で観察した。平滑な場合を○とし、凹凸がある場合を×とした。
【0053】
(4)屈折率
硬化直後(初期)の硬化物について、JIS K 7105:1981に準拠する測定法でATAGO社製アッベリフレクトメータを用いて、ナトリウムのスペクトルのD線589.6nmにおける屈折率を測定した。
【0054】
2.サンプルの作製
(1)サンプルの作製
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
まず、シリコンモールドのスーペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)をガラス2、ガラス3(ガラス2、ガラス3の大きさはそれぞれ、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)と、PETフィルム4、PETフィルム5とで挟む。ガラス2とスーペーサー1の間にPETフィルム4を、ガラス3とスーペーサー1の間にPETフィルム5をそれぞれを配置する。
次に、スーペーサー1の内部に組成物6を流し込み、ガラス2、ガラス3をジグ(図示せず。)で固定する。得られた型を型8とする。型8を用いて次のとおりサンプルの硬化を行い、組成物6を硬化させ、硬化物を型から外し、硬化物6(厚さ2mm)が得られる。
【0055】
(2)サンプルの硬化
組成物が充填された型8を電気オーブンに入れて、第1表に示す硬化条件で組成物を加熱して硬化させ、厚さ2mmの硬化物を得た。
【0056】
(3)サンプルの耐熱試験
製造から1日経過後の硬化物を150℃に設定されたオーブンに10日間置いた後取り出し、これを耐熱試験後の硬化物とする。
【0057】
3.発光素子用封止材組成物の調製
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し組成物を調製した。
【0058】
【表1】

【0059】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・シラノール基含有化合物:商品名217FLAKE、東レ・ダウコーニング社製
・アルコキシシラン化合物:商品名DC3074、東レ・ダウコーニング社製
・エポキシ変性シリコーン:エポキシ変性ポリシロキサン(商品名:KF101、信越化学工業社製)
・シラノール縮合触媒1:チタン触媒(TC−200、マツモト交商社製)
・シラノール縮合触媒2:錫触媒(ジn−ブチルジアセテート錫)
・カチオン重合触媒:BF3・Et2O(BF3エチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
【0060】
第1表に示す結果から明らかなように、比較例1は耐熱試験後の透過率、耐熱着色安定性に劣った。
これに対して、実施例1〜4は、初期硬化後の硬化物の表面に発泡がなく平滑性、成形性に優れ、得られる硬化物は屈折率、透明性、耐熱着色安定性に優れた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
【図2】図2は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の発光素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図5】図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図7】図7は、図6に示す発光素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 スーペーサー
2、3 ガラス
4、5 PETフィルム
6 組成物(硬化後硬化物6となる)
8 内部に組成物6が充填された型
200、300 白色LED
201、301 マウント部材
202、302 色変換部材
203、303 青色LEDチップ
204 パッケージ
206、306 硬化物
207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極
210、310 基板
305 インナーリード
400、501 LED表示器
401 白色LED
404 筐体
405 遮光部材
406 充填剤
500 LED表示装置
502 ドライバー
501 LED表示器
503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM)
600 本発明の発光素子封止体
601 LEDチップ
603 硬化物
605 点
607 点605が属する面
T 硬化物603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル基およびシラノール基を有するシラノール基含有化合物と、アルコキシシラン化合物と、シラノール縮合触媒とを含有する発光素子用封止材組成物。
【請求項2】
前記シラノール基含有化合物が、下記式(1)または式(2)で表されるものである請求項1に記載の発光素子用封止材組成物。
【化1】


[式(1)中、Phはフェニル基であり、R1はアルキル基またはアルケニル基であり、mは1または2であり、nは2または3である。
式(2)中、R2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、aはそれぞれ独立に1、2または3である。]
【請求項3】
前記シラノール基に含まれるヒドロキシ基の量が、前記シラノール基含有化合物中の1〜10重量%である請求項1または2に記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項4】
前記フェニル基の量が、前記シラノール基含有化合物が有する全有機基中の30〜80モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項5】
前記シラノール基含有化合物の分子量が、1,000〜5,000である請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項6】
前記アルコキシシラン化合物が、下記式(3)または式(4)で表されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
34-m−Si−(OR3m (3)
(式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは2、3または4である。)
【化2】


(式中、R4はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数であり、m+nが1以上であり、aはそれぞれ独立に0、1、2または3である。)
【請求項7】
前記アルコキシシラン化合物の分子量が、200〜5,000である請求項1〜6のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項8】
前記アルコキシシラン化合物の量が、前記シラノール基含有化合物100質量部に対して、10〜900質量部である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
【請求項10】
LEDチップが請求項9に記載の硬化物で封止されている発光素子封止体。
【請求項11】
前記硬化物の厚さが0.1mm以上である請求項10に記載の発光素子封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−208160(P2008−208160A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43761(P2007−43761)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】