説明

発光装置およびその製造方法

【課題】光検出素子を実装基板に設けながらも、より構造が簡素で小型化が可能な発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】LEDチップ1と、該LEDチップ1を一表面2a側に実装する実装基板2と、該実装基板2の一表面2a側に設けられ、LEDチップ1から放射された光を検出する光検出素子3を備えた基材4と、を有する発光装置10である。特に、基材4の少なくとも一部は、一表面2a側の一面内方向においてLEDチップ1から離れるにつれ、実装基板2の一表面2a側から離間するように実装基板2の一表面2aに対して傾斜する板状体4bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子であるLEDチップを用いた発光装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDチップと、該LEDチップの光出力を検出する光検出素子と、を備えた発光装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような発光装置は、LEDチップの点灯中に光検出素子がLEDチップから放出された光を検出し、検出値を出力する。また、発光装置のLEDチップは、LEDチップの点灯を制御する制御回路によって、光検出素子の検出値が予め設定された目標値に保たれるようにLEDチップへ流れる電流をフィードバック制御されることで安定した光出力を得ることができる。
【0004】
図12に示す上述の特許文献1に記載された発光装置10’は、LEDチップ1と、LEDチップ1を一表面2a側に実装する実装基板2と、実装基板2の一表面2a側に設けられ収納凹所2dを構成する中間層基板40を介してLEDチップ1から放射された光を検出する光検出素子3を備えた基板50と、を貼り合わせた多層の積層構造に形成している。
【0005】
ここで、実装基板2は、収納凹所2dの周部から内方へ突出する突出部2cを有し、突出部2cにLEDチップ1から放射された光を検出する光検出素子3が設けられている。
【0006】
これによって、発光装置10’は、実装基板2における一表面2a側で収納凹所2dの周囲に光検出素子3を配置するためのスペースを別途に確保する必要がなく、光検出素子3を設けながらも発光装置10’の小型化を可能にしている。
【0007】
なお、光検出素子3の一方の導電側は、絶縁層20に設けられたコンタクトホールを介して導体パターン8aaと電気的に接続している。また、中間層基板40の一表面側に設けられた電極41は、導体パターン8aaと電気的に接続され、貫通孔配線42を介して中間層基板40の他表面側に設けられた電極43と接続されている。実装基板2の一表面2a側に設けられた導体パターン8abは、中間層基板40の電極43と接続して貫通孔19に設けられた貫通孔配線13を介して外部接続用電極12bと接続可能に構成している。光検出素子3の他方の導電側も、同様にして、実装基板2の他表面側と接続可能に構成している。また、実装基板2の他表面側には、放熱用パッド部17が形成されており、LEDチップ1で発生した熱をサーマルビア18を介して外部に放出できるように構成している。また、収納凹所2dを閉塞する形でLEDチップ1から放出された光の全反射を抑制するための微細凹凸構造を光取り出し面側に形成された透光性部材51を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−294834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図12の発光装置10’では、実装基板2の一表面2a側にLEDチップ1を収納する収納凹所2dを構成する中間層基板40を介して、光検出素子3を備えた光検出素子用の基板50を貼り合わせした多層積層構造としてある。そのため、発光装置10’をより小型化する場合においては、光検出素子3と実装基板2とを中間層基板40を介して接続させる導体パターン8aa,8abと電極41,43との位置合わせに高い精度が求められる。また、発光装置10’は、中間層基板40の厚みの分だけ厚くなり構造も複雑になってしまう。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、光検出素子を備えながらも、より構造が簡素で小型化が可能な発光装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、LEDチップと、該LEDチップを一表面側に実装する実装基板と、該実装基板の前記一表面側に設けられ、前記LEDチップから放射された光を検出する光検出素子を備えた基材と、を有する発光装置であり、前記基材の少なくとも一部は、前記実装基板の前記一表面側の一面内方向において前記LEDチップから離れるにつれ、前記実装基板の前記一表面側から離間するように前記実装基板の前記一表面に対して傾斜する板状体である。
【0012】
この発明によれば、光検出素子を備えた基材の一部が実装基板の一表面に対して傾斜する板状体で構成されていることにより、光検出素子を備えた基板が中間層基板を介して実装基板に実装される多層積層構造の発光装置と比較して、より構造が簡素で小型化が可能な発光装置とすることができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記実装基板の厚み方向において、前記実装基板の前記一表面と、前記基材に備えた前記光検出素子の受光部と、の間に前記LEDチップを配置してなることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記実装基板の厚み方向において、前記実装基板の前記一表面と前記光検出素子の受光部との間に前記LEDチップを配置していることにより、光検出素子を実装基板の一表面に設ける発光装置と比較して、前記光検出素子の受光部に前記LEDチップから放射された光を入射させやすくなる。これにより、前記光検出素子の感度を向上させることができる。また、前記光検出素子が、前記基材によって前記実装基板の前記一表面から離間することになることにより、前記LEDチップの点灯にともない生じた熱が前記光検出素子に熱伝達しにくく前記光検出素子の感度の変動を抑制することができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記基材は、前記LEDチップと対向する表面側に前記光検出素子の受光部の形成領域の一部を少なくとも除いて前記LEDチップから放射された光を反射する反射部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記基材に、前記光検出素子の前記受光部の形成領域の一部を少なくとも除いて反射部を形成することにより、前記光検出素子の前記受光部に前記LEDチップから放射された光を入射させつつ、前記LEDチップから放射された光を前記反射部によって反射させることで発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記実装基板は、シリコン基板上に絶縁層を介して設けられたシリコン層が設けられたSOI基板を用いて形成されてなり、前記基材は、少なくとも前記シリコン層を用いて形成されてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記実装基板および前記基材がSOI(Silicon On Insulator)基板を利用して形成されていることにより、前記基材を前記実装基板と一体的に形成することができる。また、前記光検出素子を前記基材に一体的に形成することができる。また、前記SOI基板を利用したウェハレベルで、前記実装基板および前記基材を形成することができるから、より小型化が可能な発光装置とすることができる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記実装基板は、該実装基板の前記一表面に対して傾斜する前記基材の角度を制御する制御手段を備えてなることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、前記光検出素子を備えた前記基材を前記実装基板の前記一表面に対して傾斜する角度を制御する制御手段を備えることにより、前記光検出素子を前記LEDチップに対して所望の位置に移動させることができる。そのため、前記LEDチップから放射された光における前記光検出素子の前記受光部で受光する量を調整することができる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の板状体を傾斜させるにあたって、前記基材に設けた金属膜の膜応力によって前記実装基板の前記一表面に対して前記板状体を傾斜させることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、前記基材に予め設けた金属膜の膜応力を利用することによって、前記光検出素子を備えた前記基材の前記板状体を前記実装基板の前記一表面に対して傾斜させるため、より構造が簡素な発光装置を比較的簡単に製造することが可能となる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の前記板状体を傾斜させるにあたって、前記基材の前記実装基板の前記一表面側から立ち上がる立ち上がり部に設けた金属部の溶融による表面張力によって前記実装基板の前記一表面に対して前記板状体を傾斜させることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、前記基材の前記実装基板の前記一表面側から立ち上がる立ち上がり部に設けた金属部の溶融による表面張力を利用することによって、前記光検出素子を備えた前記基材の前記板状体を前記実装基板の前記一表面に対して傾斜させるため、より構造が簡素な発光装置を比較的簡単に製造することが可能となる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の板状体を傾斜させるにあたって、前記基材に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜を含む積層膜の前記金属膜どうしにおける前記線膨張係数の差による曲げモーメントによって前記実装基板の前記一表面に対して前記板状体を傾斜させることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、前記基材に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜における前記線膨張係数の差による曲げモーメントを利用することによって、前記光検出素子を備えた前記基材の前記板状体を前記実装基板の前記一表面に対して傾斜させるため、より構造が簡素な発光装置を比較的簡単に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明では、光検出素子を備えた基材の一部が実装基板の一表面に対して傾斜する板状体で構成されていることにより、前記光検出素子を前記実装基板に設けながらも、より構造が簡素で小型化が可能な発光装置を提供できるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1の発光装置を示す概略断面図である。
【図2】同上の基材を設けた実装基板を示す平面説明図である。
【図3】同上の発光装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図4】実施形態2の発光装置を示す概略断面図である。
【図5】同上の基材を設けた実装基板を示す平面説明図である。
【図6】実施形態3の発光装置を示す概略断面図である。
【図7】同上の基材を設けた実装基板を示す平面説明図である。
【図8】同上の発光装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図9】実施形態4の発光装置を示す概略断面図である。
【図10】同上の基材を設けた実装基板を示す平面説明図である。
【図11】同上の発光装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図12】従来の発光装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について図1〜図3に基づいて説明する。
【0030】
本実施形態の発光装置10は、青色光などの可視光を放射するLEDチップ1と、LEDチップ1を一表面2a側に実装する実装基板2と、該実装基板2の一表面2a側に設けられ、LEDチップ1から放射された光を検出する光検出素子3を備えた基材4と、を有している。基材4は、実装基板2の一表面2a側の一面内方向において実装基板2の一表面2a側におけるLEDチップ1が設けられた中央部から離れるにつれ、実装基板2の一表面2a側から離間するように実装基板2の一表面2aに対して傾斜する矩形の板状体4bに形成している。
【0031】
発光装置10の実装基板2における一表面2a側には、導電性部材(たとえば、AuSn、Agペーストや半田など)26によって導体パターン9aに実装されたLEDチップ1、該LEDチップ1と導体パターン9bとを電気的に接続したボンディングワイヤ(たとえば、金細線やアルミニウム細線など)16および光検出素子3を備えた基材4を封止する透光性の封止材料(たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂やガラスなど)からなる封止部材6を備えている。
【0032】
なお、基材4は、平面視が矩形状のLEDチップ1における各辺と平行になるように図2に示すように4個の矩形状の板状体4bを備えている。各板状体4bのLEDチップ1と対向することになる表面側には、光検出素子3における受光部3aの形成領域の一部を少なくとも除いて実装基板2の前記中央部側から実装基板2の周部側へ基材4の立ち上がり部4aを跨ぐようにLEDチップ1から放射された光を反射する反射部5を備えている。なお、本実施形態では、実装基板2と封止部材6とでパッケージを構成しているが、封止部材6は、必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて適宜設ければよい。
【0033】
以下、本実施形態の発光装置10に用いられる各構成について詳述する。
【0034】
本実施形態の発光装置10に用いられる実装基板2は、LEDチップ1が一表面2a側に搭載される矩形板状に形成されている。実装基板2は、シリコン基板21上に酸化シリコン(SiO)からなる絶縁層22を介してシリコン層23が設けられたSOI基板におけるシリコン基板21を利用して形成している。また、基材4は、前記SOI基板におけるシリコン層23を利用して形成している。したがって、光検出素子3が備えられた基材4の厚み寸法は、実装基板2の厚み寸法に比べて十分小さく形成している。なお、実装基板2のシリコン基板21および基材4のシリコン層23は、それぞれ主表面が(100)面であり、n形の導電性を有している。また、シリコン層23の表面には、酸化シリコン(SiO)からなる絶縁層20を形成している。
【0035】
本実施形態では、実装基板2の一表面2aに対して垂直方向となる実装基板2の厚み方向において、実装基板2の一表面2aと、基材4に備えた光検出素子3の受光部3aと、の間にLEDチップ1を配置している。また、基材4は、光検出素子3の形成とLEDチップ1から放射された光を実装基板2の一表面2aに対して垂直方向となる前方側へ反射させる板状のリフレクタを兼ねている。
【0036】
実装基板2は、図1および図2に示すように、実装基板2の一表面2a側に、LEDチップ1の正負各電極(図示せず)それぞれと電気的に接続される2つの導体パターン9a,9bが形成されるとともに、絶縁層20、シリコン層23、絶縁層22およびシリコン基板21に形成された2つの貫通孔配線13,13を介して実装基板2の一表面2a側と対向する他表面側に設けられた外部接続用電極11a,11bと電気的に接続している。同様に、基材4に設けられた光検出素子3は、導体パターン8a,8bおよび複数個の貫通孔配線13を介して実装基板2の他表面側に形成された外部接続用電極12bなどとそれぞれ電気的に接続している。
【0037】
なお、本実施形態の実装基板2は、シリコン基板(Si基板)21を用いて形成しているが、耐熱性を向上させるためにシリコン基板21の代わりにシリコンカーバイド基板(SiC基板)を用いることもできる。また、SiCの方がSiに比べて熱伝導率が高いので、前記シリコンカーバイド基板を用いた実装基板2は、LEDチップ1の点灯で生じた熱を外部に効率よく放熱させ発光装置10の放熱性を高めることができる。また、シリコン基板21に形成される絶縁層22は、酸化シリコンだけでなく窒化シリコン(たとえば、Si)を用いてもよい。
【0038】
本実施形態におけるLEDチップ1は、結晶成長用基板として導電性基板を用い厚み方向の両面に正負各電極がそれぞれ形成された可視光LEDチップを用いている。実装基板2は、LEDチップ1が電気的に接続される2つの導体パターン9a,9bを備えている。2つの導体パターン9a,9bのうちの一方の導体パターン9aは、LEDチップ1がダイボンディングされる矩形状のダイパッド部14と、矩形状のダイパッド部14の一辺から連続一体に突出して形成され貫通孔配線13との接続部位となる引き出し配線部15と、で構成してある。LEDチップ1は、前記一方の導体パターン9aのダイパッド部14にダイボンディング接続されており、LEDチップ1のダイパッド部14側の電極が導電性部材26を介してダイパッド部14に接合されて電気的に接続されている。また、LEDチップ1の光取り出し面側の電極は、ボンディングワイヤ16を介して矩形状の他方の導体パターン9bと電気的に接続されている。
【0039】
また、実装基板2は、シリコン基板21の前記他表面側に、シリコン基板21よりも熱伝導率の高い金属材料からなる矩形状の放熱用パッド部17が形成されている。ダイパッド部14と放熱用パッド部17とは、シリコン基板21よりも熱伝導率の高い金属材料(たとえば、Cuなど)からなる複数(本実施形態では、9個)の円柱状のサーマルビア18を介して熱的に結合されている。これによって、LEDチップ1で発生した熱は、各サーマルビア18および放熱用パッド部17を介して発光装置10の外部に放熱することができる。
【0040】
ところで、実装基板2は、シリコン基板21に、10個の貫通孔配線13(図2を参照)それぞれが内側に形成される10個の貫通孔19と、9個のサーマルビア18それぞれが内側に形成される9個の貫通孔27とが厚み方向に貫設されている。また、実装基板2の一表面2a側および前記他表面側と各貫通孔19,27の内面とに跨って熱酸化膜である酸化シリコンからなる絶縁層20が形成されている。そのため、各導体パターン8a,8b,9a,9b、各外部接続用電極11a,11b,12b、放熱用パッド部17、各貫通孔配線13および各サーマルビア18は、絶縁層20によってシリコン基板21と電気的に絶縁されている。
【0041】
各導体パターン8a,8b,9a,9b、各外部接続用電極11a,11b,12b、放熱用パッド部17は、絶縁層20上に形成されたTi膜と該Ti膜上に形成されたAu膜との積層膜により構成されている。実装基板2の一表面2a側における各導体パターン8a,8b,9a,9bは、それぞれ同時にスパッタリング法や蒸着法などにより成膜して形成してある。また、実装基板2の前記他表面側における各外部接続用電極11a,11b,12b、放熱用パッド部17は、前記他表面側でそれぞれ同時にスパッタリング法や蒸着法などにより成膜して形成してある。なお、本実施形態では、絶縁層20上のTi膜の膜厚を15〜50nm、Ti膜上のAu膜の膜厚を500nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。また、各Au膜の材料は、純金に限らず不純物を添加したものでもよい。また、各Au膜と絶縁層20との間に密着性改善用の密着層としてTi膜を介在させてあるが、密着層の材料はTiに限らず、たとえば、Cr、Nb、Zr、TiN、TaNなどでもよい。また、貫通孔配線13およびサーマルビア18の材料としては、Cuを採用しているが、Cuに限らず、たとえば、Niなどを採用してもよい。
【0042】
さらに、LEDチップ1から放出される光の発光波長によって、たとえば、青色光など可視光のより短波長側においてAu膜よりも反射率の高いAg膜を実装基板2の一表面2a側の導体パターン8a,8b,9a,9bの最表面側に形成しても良い。本実施形態では、導体パターン8a,8b,9a,9bが反射部5としても機能することになる。
【0043】
反射部5は、基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜させることによりLEDチップ1から放出された光を任意の方向に放射させることができる。さらに、光検出素子3を使用しない場合などは、基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜する角度を小さくすることにより、LEDチップ1から放出する光の指向角を広げることができる。これにより、光検出素子3の感度の向上と、発光装置10の広視野角発光と、を両立することが可能となる。
【0044】
次に、本実施形態の発光装置10における基材4は、実装基板2の一表面2a側に少なくとも前記SOI基板におけるシリコン層23を用いて形成されており、基材4を構成する前記SOI基板のシリコン層23を利用して光検出素子3を形成している。
【0045】
光検出素子3は、pn接合を有するフォトダイオードの構造に形成している。前記フォトダイオードは、n形の導電性を有するシリコン層23の一部にイオン注入処理および熱処理を施すことによってp形領域3aaを形成しており、シリコン層23の残された領域が前記フォトダイオードのn形領域3abとなる。したがって、光検出素子3のp形領域3aaとn形領域3abで形成されたpn接合部が受光部3aとして機能する。また、基材4に形成された2つの導体パターン8a,8bの一方の導体パターン8aは、光検出素子3を構成するフォトダイオードのp形領域3aaに絶縁層20に設けたコンタクトホール20aを介して電気的に接続されている。また、他方の導体パターン8bは、前記フォトダイオードのn形領域3abを構成するシリコン層23と絶縁層20に設けたコンタクトホール(図示せず)を介して電気的に接続されている。また、基材4のシリコン層23における前記一表面の絶縁層20は、絶縁層20の膜厚を調整することで光検出素子3の受光部3aにおける反射防止膜の機能も兼ねることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、実装基板2の一表面2aに一個のLEDチップ1を実装しているが、発光装置10に用いられるLEDチップ1は、一個だけに限らず複数個用いることができる。この場合、LEDチップ1は、同種のものを用いてもよいし、異なる発光波長を発光する複数個のLEDチップ1を用いてもよい。たとえば、赤色光、緑色光および青色光がそれぞれ発光可能な3個のLEDチップ1を備えた発光装置10では、基材4に、各LEDチップ1から放射された光を検出する複数個(ここでは、3つ)の光検出素子3を設け、各LEDチップ1の発光色の波長域の光を選択的に透過させる3つの分光フィルタ(図示せず)を各光検出素子3の受光部3a側に設けた構成とすることができる。このような構成の発光装置10は、各LEDチップ1が発光する波長域の光を3つの光検出素子3で同時かつ各別に精度良く検出することができる。
【0047】
LEDチップ1は、通常、発光波長に応じて異なる半導体材料を用いて形成されるため、電気特性、温度特性や劣化特性などが異なる。そのため、発光装置10から混色光(たとえば、白色光など)を発光させていても、周囲温度や劣化などにより時間の経過とともに異なる色味に見えることがある。そのため、発光装置10が実装される配線基板に、発光装置10のLEDチップ1を駆動する駆動回路部と、各光検出素子3により検出される検出値が目標値に保たれるように前記駆動回路部からLEDチップ1に流れる電流をフィードバック制御する制御回路部など備えたICなどを設けておくこともできる。これにより、発光装置10は、各光検出素子3からの出力に応じて各LEDチップ1の光出力をそれぞれ制御することで、周囲温度や劣化などにより所望の混色光(たとえば、白色光)を維持することができる。なお、本実施形態の発光装置10においては、前記駆動回路部や前記制御回路部を実装基板2のシリコン基板21やシリコン層23に形成してもよい。
【0048】
本実施形態の発光装置10では、LEDチップ1が結晶成長用基板として導電性材料(たとえば、ガリウム燐、窒化ガリウム、シリコンカーバイド、シリコンや酸化亜鉛など)を用いLEDチップ1の厚み方向の両面に正負各電極が形成された半導体発光素子を用いているが、前記結晶成長用基板として絶縁性材料(たとえば、サファイアなど)を用いた場合は、LEDチップ1の同一面側に正負各電極を形成させフェースアップやフェースダウンで実装基板2に実装することもできる。LEDチップ1がフェースダウンで実装される場合、LEDチップ1の正負各電極と、各導体パターン9a,9bとを半田や導電性ペーストなどを介して電気的に接続させればよい。LEDチップ1がフェースアップで実装される場合、LEDチップ1の正負各電極と、各導体パターン9a,9bとをそれぞれボンディングワイヤ16で電気的に接続させればよい。
【0049】
また、発光装置10は、LEDチップ1として、青色LEDチップを採用し、LEDチップ1からの青色光と、たとえば、封止部材6に青色光を吸収して黄色光を発光する蛍光体を含有させ該蛍光体からの黄色光と、の混色光として白色光を得るように構成することもできる。前記青色LEDチップとしては、たとえば、シリコンからなる結晶成長基板上に窒化物半導体のpn接合を形成させたものなどを利用することができる。また、黄色を発光する前記蛍光体としては、たとえば、Ceで付活されたYAl12、Ceで付活されたTbAl12などのアルミネート系の蛍光体のほか、Euが付活されたBaSiOなどのアルカリ土類珪酸塩系の蛍光体、CaBOClなどのファロボレート系の蛍光体などを採用することもできる。また、封止部材6に添加する前記蛍光体は黄色蛍光体に限らず、たとえば、赤色蛍光体と緑色蛍光体を添加しても、白色光を得ることができる。LEDチップ1の発光色も、特に限定するものではなく、所望の色の光に応じて適宜選択すればよい。また、前記蛍光体は、発光装置10に用いてもよいし、用いなくともよい。
【0050】
また、本実施形態の発光装置10では、実装基板2にLEDチップ1と熱結合するサーマルビア18を設けてあるので、LEDチップ1で発生した熱を効率よく外部へ逃がすことができる。また、基材4は、実装基板2aの一表面2aに対して傾斜して離間した板状体4bに光検出素子4を備えている。そのため、光検出素子4がLEDチップ1の点灯により生ずる熱の影響を受け難く、光検出素子4が温度上昇することによる光検出素子4の感度が変動することへの悪影響を抑制することができる。
【0051】
次に、本実施形態の発光装置10を形成する形成方法について、図3を用いて説明する。
【0052】
本実施形態において発光装置10の実装基板2は、シリコン基板21上に酸化シリコンからなる絶縁層22を介してシリコン層23が設けられたSOI基板を用いて形成している。このようなSOI基板は、貼り合わせ法やSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法などにより形成することができる。前記SOI基板を貼り合わせ法で形成する場合、たとえば、一表面側に酸化シリコンからなる絶縁層22が成膜されたシリコン材料基板と、シリコン基板21となる支持基板と、を貼り合せて、絶縁層22が成膜された前記シリコン材料基板を他表面側から研削・研磨することにより薄層化して前記SOI基板を形成することができる。また、SIMOX法で前記SOI基板を形成する場合、たとえば、シリコン基板における表面の一部に、シリコン酸化膜などのマスク膜を形成し、該マスク膜を利用して前記シリコン基板に酸素イオンを注入する。次に、前記マスク膜の除去後、前記シリコン基板を高温アニール処理することで、イオン注入された酸素を用いて前記シリコン基板中に埋め込み酸化膜となる絶縁層22を形成し、前記SOI基板を形成することができる。これにより、シリコン基板21の表面に絶縁層22を介してシリコン層23を有する前記SOI基板を形成することができる。
【0053】
こうして形成された前記SOI基板のシリコン層23の表面に絶縁層20を形成させた後、平面視矩形状の領域で発光装置10を形成させる。すなわち、基材4を設けた実装基板2の平面視矩形状の4辺側における周部に、各辺にそれぞれ平行な略長方形状の受光部3aを備えた光検出素子3を、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術およびイオン注入技術により形成する(図2を参照)。光検出素子3は、前記SOI基板のn形導電性を有するシリコン層23のn形領域3abに、たとえば、Bをイオン注入し熱処理することでp形領域3aaを形成し、前記フォトダイオードとして機能する構成を形成している。
【0054】
また、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、蒸着法やスパッタリング法などの成膜技術を用いて、各光検出素子3のp形領域3aaと、n形領域3abとに、それぞれ前記コンタクトホールを介して電気的に接続させる導体パターン8a,8bを前記SOI基板の絶縁層20上にそれぞれ形成させる。同様にして、LEDチップ1の正負各電極と電気的に接続させる導体パターン9a,9bを絶縁層20上に形成させている。これにより、発光装置10の実装基板2および基材4の基礎となる基礎基板を形成する基礎基板形成工程を行う(図3(a)を参照)。
【0055】
なお、導体パターン8a,8b,9a,9bは、前記SOI基板の厚み方向に貫設した複数個の貫通孔配線13とそれぞれ電気的に接続させている。また、複数個の貫通孔配線13は、シリコン基板21の他表面側に設けられた各外部接続用電極11a,11b,12bなどとそれぞれ電気的に接続している。これにより、LEDチップ1および光検出素子3は、発光装置10の外部と電気的に接続可能に構成することができる。LEDチップ1が搭載されるダイパッド部14を構成する導体パターン9aには、前記SOI基板の厚み方向に貫設した複数個のサーマルビア18を介してシリコン基板21の他表面側に形成している放熱用パッド部17と接続するように形成している。
【0056】
上述の基礎基板形成工程の後、立ち上がり部4aで囲まれた平面視矩形状の中央部を残して、前記SOI基板の絶縁層22をエッチングすることにより実装基板2の一表面2aを露出する犠牲層エッチング工程を行う(図3(b)を参照)。
【0057】
ここで、基材4の一部は、実装基板2の一表面2a側から空間を介して離間するため、基材4の一部が片持ち梁となり基材4の立ち上がり部4aとなる1辺のみが実装基板2の一表面2a側で支持されるように、基材4の他の3辺を切り離している。より具体的には、基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜させるためにシリコン基板21から基材4の3辺を切り離す。そのため、酸化シリコンからなる絶縁層22を、たとえば、BHF溶液などを用いてエッチングすればよい。なお、基材4には、エッチングに先立って、予め基材4における導体パターン8b、絶縁層20およびシリコン層23を貫通する複数個のエッチングホール24を形成している。
【0058】
また、前記SOI基板の平面視矩形状の領域における四隅には、絶縁層22、シリコン層23および絶縁層20をエッチングして4つの開口部25を形成させている。開口部25は、たとえば、前記SOI基板の表面を十字形状にマスキングをした後、アルカリ系溶液(たとえば、TMAH溶液やKOH溶液など)などを利用してエッチングすることで形成することができる。
【0059】
実装基板2の一表面2a側から分離された基材3は、前記犠牲層エッチング工程により実装基板2の前記中央部側から実装基板2の前記周部側へ基材3の立ち上がり部4aを跨ぐように形成された導体パターン8aとなる金属膜7の膜応力により、実装基板2の一表面2a側に対して立ち上がることになる。すなわち、金属膜7は、残留応力が圧縮応力を持つように成膜させることで、基材4の板状体4bを立ち上げることができる。したがって、基材4は、実装基板2の一表面2a側の一面内方向においてLEDチップ1から離れるにつれ、実装基板2の一表面2a側から実装基板2の厚み方向に離間するように実装基板2の一表面2aに対して立ち上がり部4aで傾斜させる片持ち梁となり、基材4の1辺のみが実装基板2に支持されることになる。なお、このような基材4の板状体4bは、必ずしも平板でなくてもよく、湾曲していてもよいし、多段に曲がっていてもよい。
【0060】
上述の犠牲層エッチング工程の後、LEDチップ1をダイボンド部14上に導電性部材26を用いてダイボンド実装させ、LEDチップ1の光取り出し面側の電極をボンディングワイヤ16により導体パターン9bと結線させる。また、実装基板2の一表面2a側に、透光性の封止部材6によって、LEDチップ1、該LEDチップ1に接続されたボンディングワイヤ16および基材4を封止する封止工程を行い発光装置10を形成することができる(図3(c)を参照)。
【0061】
なお、前記SOI基板となるウェハを用いて上述の各工程を行う場合は、ウェハレベルパッケージ構造体を形成してから、ダイシング工程により発光装置10を実装基板2のサイズに分割することができる。したがって、発光装置10は、実装基板2と封止部材6とが同じ外形サイズとなり、小型のパッケージとすることができる。
【0062】
なお、基材4の板状体4bにおける実装基板2の一表面2aに対する傾斜は、金属膜7の膜応力を調整することで制御することができる。このような金属膜7の膜応力は、たとえば、金属膜7をスパッタリング法により成膜する場合においては、成膜時のスパッタ圧力の調整によって行うことができる。また、金属膜7の膜応力は、金属膜7の材料、金属膜7の膜厚や金属膜7の大きさによっても調整することができる。同様に、金属膜7の膜応力は、金属膜7の表面に形成させる凹凸、エッチングホール24の数や位置を変えることでも調整することもできる。
【0063】
また、基材4の板状体4bにおける実装基板2の一表面2aに対する傾斜は、犠牲層エッチング工程後に金属膜7を加熱することでも調整することができる。このような加熱は、封止部材6で封止前の発光装置10全体を加熱するだけでなく、発光装置10を局所的に加熱するものでもよい。局所的に加熱するためには、基材4の立ち上がり部4aにレーザ光や凸レンズなどで集光させた赤外線を照射させてもよい。また、発光装置10を局所的に加熱するためには、たとえば、金属膜7に外部と電気的に接続可能なポリシリコン膜を成膜させ、前記ポリシリコン膜の抵抗加熱により金属膜7を加熱することもできる。この場合、前記ポリシリコン膜が、基材4の板状体4bの角度を制御する制御手段として機能することになる。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態は、図1で示した実施形態1のように発光装置10における実装基板2を前記SOI基板のシリコン基板21により、また、基材4を前記SOI基板のシリコン層23によって形成する代わりに、図4および図5で示すように、実装基板2と、該実装基板2と別途に形成させた積層用基板29を利用した基材4と、を用いて形成している点が異なる。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0065】
積層用基板29を用いた基材4は、一部が板状体4bとして実装基板2の一表面2a側から実装基板2の厚み方向に離間できるように薄膜で形成している。積層用基板29となる基材4の4つの板状体4bには、静電引力により基材4の板状体4bの角度を制御するための平板電極29aをそれぞれ形成させている。同様に、実装基板2の一表面2a側には、各基材4の板状体4bにおける平板電極29aと対向配置し、静電引力により板状体4bの角度を制御するための平板電極29bをそれぞれ形成させている。
【0066】
また、実装基板2の一表面2a側に形成された複数個の平板電極29bは、実装基板2における一表面2aと対向する他表面側に形成された複数個の外部接続用電極30と実装基板2に設けられた複数個の貫通孔配線13を介してそれぞれ電気的に接続されている。
【0067】
また、積層用基板29と実装基板2とは、基板接合用金属膜28a,28bを介して接合される。基板接合用金属膜28a,28bの接合により、実装基板2の厚み方向に貫設された貫通孔配線13を介して各外部接続用電極11a,11b,12bなどと、積層用基板29のLEDチップ1や光検出素子3とは、電気的に接続している。
【0068】
なお、本実施形態の発光装置10では、実施形態1と同様に透光性の封止部材6により、LEDチップ1およびLEDチップ1の光取り出し面側の電極および導体パターン9bと電気的に接続されたボンディングワイヤ16を封止している。基材4の板状体4bは、実装基板2の一表面2aに対して傾斜する板状体4bの角度を制御するため、可動することが可能なように封止部材6では固定封止していない。
【0069】
本実施形態の発光装置10は、光検出素子3を備えた基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2a側に対して傾斜する角度を制御する制御手段として、平板電極29a,29bを備えている。これにより、光検出素子3をLEDチップ1に対して所望の位置に移動させることができるため、LEDチップ1から放射された光を入射させやすくすることができる。また、光検出素子3を使用しない場合は、基材4を実装基板2の一表面2a側に立ち下げることにより、LEDチップ1からの光の指向角を広げることもできる。
【0070】
(実施形態3)
本実施形態は、図1に示した実施形態1の発光装置10における基材4の板状体4bを金属膜7の膜応力を用いて実装基板2の一表面2aに対して傾斜させる代わりに、図6に示すように基材4の実装基板2の一表面2a側から立ち上がる立ち上がり部4aに設けた金属部31の溶融による表面張力によって傾斜させる点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0071】
本実施形態の発光装置10について、図6〜図8に基づいて説明する。
【0072】
本実施形態においては、4個の導体パターン8bが、前記SOI基板の平面視において、光検出素子3の受光部3aにおける矩形状の長辺に沿って平行な部位と該平行な部位の略中央部から基材4の立ち上がり部4aを跨るように突出したT字形状に形成させている。導体パターン8bは、前記T字形状の突出した部位の立ち上がり部4aを含む先端部位は、前記中央部側より後述する金属部31を搭載できるように幅広に形成している。
また、前記T字形状における光検出素子3の受光部3aにおける矩形状の長辺と平行な部位と、立ち上がり部4aと、の間の基材4には、予め絶縁層20およびシリコン層23を貫通する複数個のエッチングホール24(図7参照)を形成している。
【0073】
本実施形態の発光装置10の製造にあたっては、実施形態1と同様にして、発光装置10の実装基板2および基材4の基礎となる基礎基板を形成させた後、各導体パターン8bにおける立ち上がり部4aに、実装基板2の前記中央部側から実装基板2の前記周部側へ立ち上がり部4aを跨ぐように複数個の金属部(たとえば、低融点半田を用いた半田ボールなど)31をそれぞれ設けている。また、LEDチップ1をダイボンド部14を構成する導体パターン9a上に導電性部材(たとえば、高融点半田など)26を用いて実装させ、LEDチップ1の光取り出し面側の電極をボンディングワイヤ16により導体パターン9bと結線させることで、基礎基板形成工程を行う(図8(a)を参照)。
【0074】
次に、立ち上がり部4aで囲まれた平面視矩形状の前記中央部を残して、前記SOI基板の絶縁層22をエッチングすることにより実装基板2の一表面2aを露出する犠牲層エッチング工程を行う(図8(b)を参照)。
【0075】
本実施形態では、前記SOI基板の絶縁層22の一部を犠牲層エッチングにより除去した後、複数個の金属部31をリフローによって再び溶解させ、金属部31の表面張力を利用して、各基材4における板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜させて実装基板2から離間させている。引き続き、実装基板2の一表面2a側に、透光性の封止部材6によって、LEDチップ1、該LEDチップ1に接続されたボンディングワイヤ16および基材4を封止する封止工程を行い発光装置10を形成している(図8(c)を参照)。
【0076】
これにより本実施形態では、基材4の実装基板2の一表面2a側から立ち上がる立ち上がり部4aに設けた金属部31の溶融による表面張力を利用することによって、光検出素子3を備えた基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜させるため、発光装置10を比較的簡単に製造することが可能となる。なお、金属部31の前記溶融は、発光装置10の全体を加熱する場合だけでなく、レーザ光の照射や凸レンズなどで集光させた赤外線を金属部31に照射させるなど局所加熱することにより行ってもよい。
【0077】
(実施形態4)
本実施形態は、図1に示した実施形態1の発光装置10における基材4の板状体4bを金属膜7の膜応力を用いて実装基板2の一表面2aに対して傾斜させる代わりに、図9に示すように基材4に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜32a,32bにおける線膨張係数の差による曲げモーメントによって傾斜させる点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0078】
本実施形態の発光装置10について、図9〜図11に基づいて説明する。
【0079】
本実施形態の発光装置10の製造にあたっては、実施形態1と同様にして、発光装置10の実装基板2および基材4の基礎となる基礎基板を形成させた後、実装基板2の前記中央部側から実装基板2の前記周部側へ基材4の立ち上がり部4aを跨ぐように予め線膨張係数が異なる2つの金属膜32a,32bを含むバイメタルとなる積層膜を形成する。本実施形態においては、金属膜32bとしてAl膜を形成し、金属膜32b上にAlよりも線膨張係数の小さいNiを用いたNi膜からなる金属膜32aを成膜して形成している。また、LEDチップ1をダイボンド部14を構成する導体パターン9a上に導電性部材26を用いて実装させ、LEDチップ1の光取り出し面側の電極をボンディングワイヤ16により導体パターン9bと結線させることで、基礎基板形成工程を行う(図11(a)を参照)。
【0080】
続いて、立ち上がり部4aで囲まれた平面視矩形状の前記中央部を残して、前記SOI基板の絶縁層22をエッチングすることにより実装基板2の一表面2aを露出する犠牲層エッチング工程を行う(図11(b)を参照)。なお、基材4には、エッチングに先立って、予め基材4に、金属層32a、32b、絶縁層20およびシリコン層23を貫通する複数個のエッチングホール24を形成している。
【0081】
上述の犠牲層エッチング工程の後、基材4の一部が実装基板2aの一表面2a側から空間を介して分離された基材4の立ち上がり部4aをレーザ光の照射や凸レンズなどにより赤外線を集光して照射することにより局所加熱する。これによって、金属膜32a,32bどうしにおける線膨張係数の差による曲げモーメントにより、基材4は、実装基板2の一表面2aに対して傾斜させて実装基板2から離間する。この状態で実装基板2の一表面2a側に、透光性の封止部材6によって、LEDチップ1、該LEDチップ1に接続されたボンディングワイヤ16および基材4を封止する封止工程を行い発光装置10を形成することができる(図11(c)を参照)。
【0082】
なお、本実施形態における基材4に設けた他の線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜32a,32bの材料としては、たとえば、線膨張係数の小さい材料として、Ni−Fe合金を挙げることができる。同様に、Ni−Fe合金と比較して相対的に線膨張係数の大きい材料として、Cu、Ni、Cu−Zn合金、Ni−Cu合金、Ni−Mn−Fe合金、Ni−Mo−Fe合金、Ni−Mo−Fe合金やMn−Ni-Cu合金などを挙げることができる。このような金属材料を適宜組み合わせればよい。
【0083】
同様に、金属膜32bとしてPd基金属ガラス(Pd76CuSi17)を形成し、金属膜32b上にPd基金属ガラスよりも線膨張係数の小さいTiNiからなる金属膜32aをスパッタリング法およびリフトオフ法により形成してもよい。したがって、本実施形態においては、金属膜32a,32bとは、金属の単体だけでなく合金や金属ガラスを含む広義の意味である。また、線膨張係数の小さい材料と大きい材料との間には、中間層として別の金属膜を挟んでもよい。本実施形態では、線膨張係数の小さい材料を金属膜32aとし、それよりも線膨張係数の大きい材料となる金属膜32bとして形成して、金属膜32a,32bを加熱することで、基材4の板状体4bを実装基板2の一表面2aから離間させることができる。
【0084】
金属膜32a,32bを合金で形成させた場合は、合金の組成を調整することによって、基材4における板状体4bの実装基板2の一表面2aに対する傾きを調整することができる。同様に、金属膜32a,32bの大きさや形状を調整することによって、基材4における板状体4bの実装基板2の一表面2aに対する傾きを調整することができる。また、基材4に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜32a,32bに加える温度を変化させることによっても、基材4における板状体4bの実装基板2の一表面2aに対する傾きを調整することができる。
【0085】
これにより本実施形態では、基材4に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜32a,32bにおける線膨張係数の差による曲げモーメントを利用することによって、光検出素子3を備えた基材4における板状体4bを実装基板2の一表面2aに対して傾斜させるため、発光装置10を比較的簡単に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1 LEDチップ
2 実装基板
2a 一表面
3 光検出素子
3a 受光部
4 基材
4a 立ち上がり部
4b 板状体
5 反射部
10 発光装置
31 金属部
32 積層膜
32a,32b 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップと、該LEDチップを一表面側に実装する実装基板と、該実装基板の前記一表面側に設けられ、前記LEDチップから放射された光を検出する光検出素子を備えた基材と、を有する発光装置であって、
前記基材の少なくとも一部は、前記実装基板の前記一表面側の一面内方向において前記LEDチップから離れるにつれ、前記実装基板の前記一表面側から離間するように前記実装基板の前記一表面に対して傾斜する板状体であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記実装基板の厚み方向において、前記実装基板の前記一表面と、前記基材に備えた前記光検出素子の受光部と、の間に前記LEDチップを配置してなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記基材は、前記LEDチップと対向する表面側に前記光検出素子の受光部の形成領域の一部を少なくとも除いて前記LEDチップから放射された光を反射する反射部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記実装基板は、シリコン基板上に絶縁層を介して設けられたシリコン層が設けられたSOI基板を用いて形成されてなり、前記基材は、少なくとも前記シリコン層を用いて形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記実装基板は、該実装基板の前記一表面に対して傾斜する前記基材の角度を制御する制御手段を備えてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の板状体を傾斜させるにあたって、前記基材に設けた金属膜の膜応力によって前記実装基板の前記一表面に対して前記板状体を傾斜させることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の板状体を傾斜させるにあたって、前記基材の前記実装基板の前記一表面側から立ち上がる立ち上がり部に設けた金属部の溶融による表面張力によって前記実装基板の前記一表面に対して前記板状体を傾斜させることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法であって、前記基材の板状体を傾斜させるにあたって、前記基材に設けた線膨張係数の異なる少なくとも2つの金属膜を含む積層膜の前記金属膜どうしにおける前記線膨張係数の差による曲げモーメントによって前記板状体を前記実装基板の前記一表面に対して傾斜させることを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−283292(P2010−283292A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137542(P2009−137542)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】