説明

発光装置の製造方法、発光装置および電子機器

【課題】有機EL素子を構成する各有機物層や駆動回路への熱的ダメージを低減しつつ、有機EL素子が設けられた基板と、電極とを、高い寸法精度で強固に接合し得る発光装置の製造方法、かかる発光装置の製造方法により製造された特性に優れる発光装置、および信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の発光装置の製造方法は、複数の陽極3が設けられた基板20上に、シリコーン材料を含有する液状材料を、各陽極3を区画するように供給した後、乾燥することにより隔壁部31を形成する工程と、隔壁部31によって区画された各陽極3上に、正孔輸送層4および発光層5を形成する工程と、隔壁部31の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、隔壁部31の表面付近に接着性を発現させ、隔壁部31に発現した接着性によって、隔壁部31と上基板9に設けられた陰極6とを接合する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、発光装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一層の発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が、陰極と陽極とに挟まれた構造の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称する。)は、無機EL素子に比べて印加電圧を大幅に低下させることができ、多彩な発光色の素子が作製可能である。
現在、より高性能な有機EL素子を得るため、材料の開発・改良をはじめ、様々なデバイス構造が提案されており、活発な研究が行われている。
また、この有機EL素子については既に様々な発光色の素子、また高輝度、高効率および長寿命の素子が開発されており、表示装置の画素としての利用や光源としての利用など多種多様な実用化用途が検討されている。
【0003】
ところで、このような有機EL素子を用いる発光装置は、例えば特許文献1に示すように、印刷用基板(プラスチックフィルム)上に背面電極および発光層を積層したものと、透明電極用基板(例えば、透明なプラスチックシートに透明電極を被着形成したもの)とを重ね合わせた状態で熱圧着ロールに供給し、上下から加熱下で押圧して、電極と発光層とを貼り合わせる方法によって製造される。
また、例えば特許文献2には、発光効率や輝度の安定化、さらに消費電力の低下を目的に、同一有機層同士の接合と適正な加熱温度により貼り合わせる方法が開示されている。
【0004】
ところが、これらのいずれの方法においても、十分な接合強度が得られず、発光装置の接合界面に剥離が生じるおそれがある。
また、加熱圧着の際に、比較的高温での加熱を必要とする。このため、発光層や電極に熱的ダメージが及ぶおそれがあり、得られる発光装置の発光特性が低下することが懸念されている。
【0005】
さらに、特許文献2に記載の有機発光素子では、各画素空間を仕切る隔壁(ブラックマトリックス)が、クロムや各種樹脂材料で構成されているが、このような構造では、隔壁とそれに接着される基板との間の密着性が低いため、大気中の水分や酸素等が各画素空間内に浸入するおそれがある。その結果、各画素空間内の発光層に変質・劣化を招くこととなり、発光装置の発光特性のさらなる低下を招くおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平6−283265号公報
【特許文献2】特開2002−203675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機EL素子を構成する各有機物層や駆動回路への熱的ダメージを低減しつつ、有機EL素子が設けられた基板と、電極とを、高い寸法精度で強固に接合し得る発光装置の製造方法、かかる発光装置の製造方法により製造された特性に優れる発光装置、および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光装置の製造方法は、基板上に設けられた複数の第1の電極を仕切るように、前記基板上にシリコーン材料を含有する液状材料を供給した後、乾燥させることにより隔壁部を形成する第1の工程と、
前記隔壁部によって画成された複数の画素空間内に、発光層を形成する第2の工程と、
前記隔壁部にエネルギーを付与することにより、前記隔壁部の表面付近に接着性を発現させ、この接着性により、前記隔壁部と第2の電極とを接合し、発光装置を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、有機EL素子を構成する各有機物層や駆動回路への熱的ダメージを低減しつつ、有機EL素子が設けられた基板と、電極とを、高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0009】
本発明の発光装置の製造方法では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されることが好ましい。
かかる化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、かかる化合物を含有する隔壁部にエネルギーを付与することにより、化合物を構成するメチル基が容易に切断されて、その結果として、隔壁部に確実に接着性を発現させることができるため、シリコーン材料として好適に用いられる。
【0010】
本発明の発光装置の製造方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有することが好ましい。
これにより、液状被膜を乾燥させて隔壁部を得る際に、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる隔壁部の膜強度が優れたものとなる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記液状材料は、遮光材が分散されたものであることが好ましい。
これにより、前記液状材料で形成された隔壁部が、優れた遮光性を有するものとなる。その結果、各画素空間同士で発光層から発生した光が互いに干渉し合うのを防止して、発光装置に表示ムラが発生するのを防止することができる。
【0011】
本発明の発光装置の製造方法では、前記第3の工程において、前記隔壁部と前記第2の電極とを接触させた後、前記隔壁部に前記エネルギーを付与することにより、前記隔壁部と前記第2の電極とを接合することが好ましい。
エネルギーを付与する前に、隔壁部と第2の電極とを接触させた状態では、これらの間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。これにより、最終的に得られる発光装置の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
【0012】
本発明の発光装置の製造方法では、前記第1の工程において、前記基板上に、液滴吐出法を用いて前記液状材料を供給することが好ましい。
液滴吐出法によれば、隔壁部の形成領域に、液状材料を液滴として、選択的に供給することができる。このため、液状材料を乾燥して得られる被膜の上に、レジストマスクを形成し、被膜をパターニングする工程が不要となるので、隔壁部を形成するまでの時間の短縮および製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
本発明の発光装置の製造方法では、前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記隔壁部にエネルギー線を照射する方法、前記隔壁部を加熱する方法、および前記隔壁部に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、隔壁部の表面を効率よく活性化することができる。また、隔壁部中の分子構造を必要以上に切断しないので、隔壁部の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0014】
本発明の発光装置の製造方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
エネルギー線の波長をかかる範囲内とすれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、隔壁部中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、隔壁部から表面付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、隔壁部の特性が低下するのを防止しつつ、隔壁部に接着性を確実に発現させることができる。
【0015】
本発明の発光装置の製造方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、隔壁部が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて得られる発光装置の各部に損傷等が生じるのを防止しつつ、発光装置の接合強度を確実に高めることができる。
【0016】
本発明の発光装置の製造方法では、前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記隔壁部の高さは、100nm〜100μmであることが好ましい。
これにより、隔壁部と第2の電極とを接合してなる発光装置の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。また、各第1の電極上に設けられた発光層等を確実に分離することができる。
【0017】
本発明の発光装置の製造方法では、前記基板の少なくとも前記隔壁部と接触する部分は、シリコン材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、基板の表面に表面処理を施さなくても、基板と隔壁部との接合強度を高めることができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記第2の電極の少なくとも前記隔壁部と接触する部分は、金属材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、第2の電極の表面に表面処理を施さなくても、第2の電極と隔壁部との接合強度を高めることができる。
【0018】
本発明の発光装置の製造方法では、前記基板および前記第2の電極は、前記隔壁部と接触する面に、あらかじめ、前記隔壁部との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、基板および第2の電極の隔壁部と接触する面が清浄化および活性化され、この面に対して隔壁部が化学的に作用し易くなる。その結果、基板および第2の電極と、隔壁部との接合強度を高めることができる。
【0019】
本発明の発光装置の製造方法では、前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理であることが好ましい。
これにより、隔壁部を形成するために、基板および第2の電極の隔壁部と接触する面を特に最適化することができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記第3の工程の後に、さらに、前記発光装置に対して、前記隔壁部と前記第2の電極との接合強度を高める処理を行う工程を有することが好ましい。
これにより、発光装置の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0020】
本発明の発光装置の製造方法では、前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記隔壁部にエネルギー線を照射する方法、前記隔壁部を加熱する方法、および前記隔壁部に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、発光装置の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
本発明の発光装置は、本発明の発光装置の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い発光装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の発光装置を備えたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の発光素子の製造方法、発光素子、発光装置および電子機器について、好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<アクティブマトリクス型表示装置>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の発光装置の製造方法によって製造される発光装置の一例として、アクティブマトリクス型表示装置(第1実施形態の発光装置)について説明する。
【0022】
図1は、本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第1実施形態を示す縦断面図、図2〜図5は、図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1〜図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示すアクティブマトリクス型表示装置(以下、単に「表示装置」と言う。)10は、TFT回路基板(基板)20と、この基板20上に設けられた有機EL素子(本発明の発光素子)1と、TFT回路基板20に対向する上基板9とを有している。
【0023】
TFT回路基板20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
基板21は、表示装置10を構成する各部の支持体となるものであり、上基板9は、例えば、有機EL素子1を保護する保護膜等として機能するものである。
また、本実施形態の表示装置10は、基板21側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板21は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされ、一方、上基板9は、特に、透明性は要求されない。
このような基板21には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち比較的硬度の高いものが好適に用いられる。
【0024】
一方、上基板9には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち透明なものが選択され、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板を用いることができる。
この上基板9の下面には、陰極(第2の電極)6が全面的に設けられている。
【0025】
基板21の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30mm程度であるのが好ましく、5〜20mm程度であるのがより好ましい。一方、上基板9の平均厚さも、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
回路部22は、基板21上に形成された下地保護層23と、下地保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0026】
駆動用TFT24は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、有機EL素子1が設けられている。また、隣接する有機EL素子1同士は、隔壁部(バンク)31により区画されている。
【0027】
本実施形態では、隔壁部31は、シリコーン材料を主材料とする被膜よりなり、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより発現した接着性によって、上基板9に設けられた陰極6と接着(接合)している。すなわち、隔壁部31は、各有機EL素子1を区画する隔壁(バンク)としての機能を有するとともに、隔壁部31と陰極6とを接合する接合膜としての機能を有する。
【0028】
このように隔壁部31に発現した接着性による接合では、接合の温度条件を比較的低く設定した場合でも、隔壁部31と陰極6とが高い寸法精度で強固に接合される。したがって、正孔輸送層4や発光層5のような有機物層や駆動回路の熱的ダメージが抑えられ、光学特性および表示特性に優れるとともに、陰極6が剥離し難く、信頼性の高い表示装置10を得ることができる。この隔壁部31の構成については、後に詳述する。
【0029】
本実施形態では、各有機EL素子1の陽極(第1の電極)3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、正孔輸送層4および発光層5は、各有機EL素子1に対して個別に形成されており、陰極6は、共通電極とされている。
表示装置10は、単色表示であってもよく、各有機EL素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
【0030】
以下、有機EL素子1について詳述する。
図1に示すように、有機EL素子1は、陽極3と、陰極6と、陽極3と陰極6との間に、陽極3側から正孔輸送層4および発光層5の順で積層された有機半導体層(積層体)が設けられている。
陽極3は、正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。
【0031】
この陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムと酸化亜鉛との複合物)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、有機EL素子1の構成がトップエミッション型の場合、実用に適さなくなるおそれがある。
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
【0033】
一方、陰極6は、後述する発光層5に電子を注入する電極である。この陰極6の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極6の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0034】
特に、陰極6の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極6の構成材料として用いることにより、陰極6の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極6の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0035】
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極6に、光透過性は、特に要求されない。
正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
このような正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
正孔輸送層4上には、発光層(有機発光層)5が設けられている。この発光層5には、後述する陰極6から電子が、また、前記正孔輸送層4から正孔がそれぞれ供給(注入)される。そして、発光層5内では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出(発光)される。
【0037】
発光層5の構成材料としては、ベンゾチアジアゾールのようなチアジアゾール系化合物、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、ジオクチルフルオレンのようなフルオレン系高分子、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
このような発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、陽極3と正孔輸送層4との間には、例えば、陽極3のフェルミ準位と正孔輸送層4の最高被占軌道(電子によって占有されている分子軌道のうち、最もエネルギーの高い軌道:HOMO)準位とのエネルギー差、いわゆるキャリア注入障壁を緩和して、陽極3から正孔輸送層4への正孔の移動を容易にする陽極バッファ層を設けるようにしてもよい。
【0039】
陽極バッファ層の構成材料としては、SiO等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極バッファ層の平均厚さは、できるだけ薄いことが好ましく、具体的には、10nm以下であるのが好ましく、7nm以下であるのがより好ましい。
また、陰極6と発光層5との間には、例えば、陰極6から注入された電子を発光層5まで輸送する機能を有する電子輸送層を設けるようにしてもよい。さらには、この電子輸送層と陰極6との間に、陰極6から電子輸送層への電子の注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
【0040】
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、ベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、アクリジン系化合物、スチルベン系化合物、チオフェン系化合物、ブタジエン系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビスチリル系化合物、ピラジン系化合物、キノキサリン系化合物、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、オキサジアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロン系化合物、フルオレノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フラーレン系化合物、フタロシアニン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0041】
その他、電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、オキサジアゾール系高分子(ポリオキサジアゾール)、トリアゾール系高分子(ポリトリアゾール)等の高分子系の材料を用いることもできる。
電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0042】
また、電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、オキサジアゾール、または、これらの誘導体(例えば、8−ヒドロキシキノリンを含む金属キレートオキシノイド化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて(例えば、複数層の積層体等として)用いることができる他、各種の無機絶縁材料や、各種の無機半導体材料等を用いることができる。
【0043】
無機絶縁材料や無機半導体材料を主材料として電子注入層を構成することにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることや、耐久性の向上を図ることができる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。
また、無機半導体材料としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
次に、本発明の発光装置の製造方法を、図1に示すアクティブマトリクス型表示装置を製造する場合を例にして説明する。
本発明の発光装置の製造方法は、第1の積層体の作製工程[1]、第2の積層体の作製工程[2]、第1の積層体と第2の積層体との接合工程[3]とを有している。以下、各工程について詳述する。
【0045】
[1]第1の積層体の作製工程
まず、図2(a)に示すように、上基板9を用意し、この上基板9上に陰極6を形成する。
この陰極6は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。
【0046】
なお、これらの方法は、陰極6の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
また、本実施形態では、上基板9の全面に、陰極6を形成することから、マスクを用いる必要がないため、これらの形成には、真空蒸着法を用いた気相プロセス等が好適に用いられる。
以上のようにして、第1の積層体101が得られる。
【0047】
[2]第2の積層体の作製工程
[2A]まず、図2(b)に示すようなTFT回路基板20を作製する。
[2A−i]まず、基板21を用意し、基板21上に、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約200〜500nmの酸化シリコンを主材料として構成される下地保護層23を形成する。
【0048】
[2A−ii]次に、下地保護層23上に、駆動用TFT24を形成する。
[2A−iii]まず、基板21を約350℃に加熱した状態で、下地保護層23上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが約30〜70nmのアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
[2A−iv]次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。また、ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザー強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0049】
[2A−v]次いで、半導体膜をパターニングして島状とし、各島状の半導体層241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約60〜150nmの酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
[2A−vi]次いで、ゲート絶縁層上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
【0050】
[2A−vii]次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
[2A−viii]次に、駆動用TFT24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[2A−ix]まず、ゲート電極243を覆うように、第1層間絶縁層25を形成した後、コンタクトホールを形成する。
【0051】
[2A−x]次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[2A−xi]次に、ドレイン電極245と陽極3とを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。これは、まず、第1層間絶縁層25上に、第2層間絶縁層26を形成した後、コンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
以上のようにして、TFT回路基板20が得られる。
【0052】
[2B]次に、図2(c)に示すように、TFT回路基板20が備える第2層間絶縁層26上に、配線27に接触するように陽極(画素電極)3を形成する。
この陽極3は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。
なお、これらの方法は、陽極3の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
【0053】
[2C]次に、第2層間絶縁層26上に、各陽極3を区画するように、図3(d)に示す隔壁部(バンク)31を形成する。すなわち、各陽極3同士の間に露出する第2層間絶縁層26の表面と各陽極3の辺縁部を合わせた領域(以下、「隔壁部形成領域31a」と言う)に隔壁部31を形成する。
本実施形態では、隔壁部31は、シリコーン材料を含有する液状材料を、第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aに供給して液状被膜を形成した後、この液状被膜を乾燥することにより形成する。以下、隔壁部31の形成工程について詳述する。
【0054】
[2C−i]まず、第2層間絶縁層26および各陽極3上に、少なくとも隔壁部形成領域31aを被覆するように、シリコーン材料を含有する液状材料を供給する。
液状材料を供給する方法としては、例えば、ディッピング法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらの中でも、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法を用いることにより、第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aに、隔壁部31の非形成領域に供給することなく、液滴を選択的に供給することができる。その結果、第2層間絶縁層26および各陽極3の上面に、隔壁部形成領域31aの形状、すなわち所定形状にパターニングされた液状被膜が形成される。このため、膜の上にレジスト層を形成して、これをマスクとして膜をパターニングする工程が不要となるので、隔壁部31を形成するまでの時間の短縮および製造コストの削減を図ることができる。
【0056】
さらに、液状材料の供給方法としては、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いるインクジェット法が用いるのがより好ましい。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴として、優れた位置精度で供給することができる。また、駆動素子がピエゾ素子である場合には、その振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴のサイズを小さくすれば、たとえ隔壁部形成領域31aの形状が微細なものであったとしても、隔壁部形成領域31aの形状に対応した液状被膜を確実に形成することができる。
【0057】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の隔壁部形成領域31aを描画し得る大きさの液滴を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜を次工程[3]で乾燥させた際に、隔壁部31を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
【0058】
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、第2層間絶縁層26および各陽極3上に供給された際の液滴の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の隔壁部31を確実に形成することができる。
【0059】
さらに、第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aに供給する液滴の適宜設定することにより、形成される隔壁部31の高さの制御を比較的容易に行うことができる。
なお、液滴吐出法以外の供給方法を用いて液状材料を供給する場合には、例えば、第2層間絶縁層26上に、各陽極3を覆うように、液状材料を全面的に供給し、液状被膜を形成する。そして、後工程[2C−ii]で、この液状被膜を乾燥した後、隔壁部形成領域31aの平面形状にパターニングする。
【0060】
第2層間絶縁層26および各陽極3上に供給する液状材料は、前述のようにシリコーン材料を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料をそのまま液状材料として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料として、シリコーン材料の溶液または分散液を用いることができる。
【0061】
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0062】
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[2C−ii]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される隔壁部31の主材料として構成するものである。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
【0063】
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0064】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0065】
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、直鎖状をなすもの、すなわち上記一般式(1)の構造単位および上記一般式(2)の構造単位で構成されるものが好ましい。これにより、次工程[2D]において、液状材料中に含まれるシリコーン材料同士が絡まり合うようにして隔壁部31が形成されることから、得られる隔壁部31は膜強度に優れたものとなる。
具体的には、かかる構成のポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされるものが挙げられる。
【0066】
【化2】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、mは0または1以上の整数を表し、nは0または1以上の整数を表す。]
【0067】
上記一般式(1)〜上記一般式(4)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基、III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基、IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0068】
また、加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、上記一般式(4)中、mおよびnは、ポリオルガノシロキサンの重合度を表すものであるが、mおよびnの合計(m+n)が、5〜10000程度の整数であるのが好ましく、50〜1000程度の整数であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0069】
このようなシリコーン材料の中でも、特に、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されているのが好ましい。すなわち、上記一般式(4)において、各基Rはメチル基であるのが好ましい。かかる化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程[2E]において、隔壁部31にエネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、隔壁部31に確実に接着性を発現させることができるため、シリコーン材料として好適に用いられる。
【0070】
さらに、シリコーン材料は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(4)において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程[2C−ii]において、液状被膜を乾燥させて隔壁部31を得る際に、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる隔壁部31の膜強度が優れたものとなる。さらに、第2層間絶縁層26および各陽極3として、前述したように、その表面から水酸基が露出しているものを用いた場合には、シリコーン材料が備える水酸基と、第2層間絶縁層26および各陽極3が備える水酸基とが結合することから、シリコーン材料を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても第2層間絶縁層26および各陽極3に結合させることができる。その結果、隔壁部31は、第2層間絶縁層26および各陽極3に対して、強固に結合したものとなる。
【0071】
また、シリコーン材料は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後工程[3]において、隔壁部31に陰極6を接合して表示装置10を得る際に、隔壁部31と陰極6との間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる表示装置10において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
さらに、シリコーン材料は、耐薬品性(耐水性)に優れている。このため、例えば、後工程[2D]、[2E]で、正孔輸送層4および発光層5を液相プロセスによって形成する際、樹脂材料を侵食し易い有機溶媒を用いる場合でも、隔壁部31によれば、その侵食を抑えることができる。その結果、有機EL素子1同士を確実に区画することができ、得られる表示装置10において良好な表示特性を得ることができる。
【0072】
また、得られた表示装置10は、各隔壁部31と第2層間絶縁層26および各陽極3との密着性、および、各隔壁部31と陰極6との密着性が、それぞれ高いものとなるため、各正孔輸送層4および発光層5が収納される画素空間の液密性を確保することができる。このため、画素空間内に大気中の水分や酸素等が浸入するのを防止することができる。その結果、表示装置10の水分や酸素による劣化を長期にわたって確実に防止することができる。なお、シリコーン材料は、それ自体が撥水性を有しているため、画素空間に対する水分の浸入を特に確実に防止することができる。
【0073】
さらに、シリコーン材料は、耐熱性にも優れていることから、熱によって変質・変形が生じ難い隔壁部31を得ることができる。
また、第2層間絶縁層26および各陽極3上に供給する液状材料は、前述したシリコーン材料の他に、遮光材が分散されているのが好ましい。これにより、この液状材料から形成された隔壁部31が、優れた遮光性を有するものとなる。その結果、各画素空間同士で発光層5から発生した光が互いに干渉し合うのを防止して、表示装置10に表示ムラが発生するのを防止することができる。
【0074】
このような遮光材の主材料としては、例えば、クロム、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、チタンのような金属またはその合金、カーボン、カーボンを含む樹脂材料等が挙げられる。
また、遮光材の形態としては、例えば、粉末状、針状、フレーク状とされる。これにより、液状材料中に遮光材を分散させることができる。
【0075】
[2C−ii]次に、第2層間絶縁層26および各陽極3上に供給された液状材料(液状被膜)を乾燥する。
ここで、前記工程[2C−i]で、液状材料を液滴吐出法によって隔壁部形成領域31aに選択的に供給した場合には、これを乾燥することにより、隔壁部形成領域31aの形状(所定形状)に対応してパターニングされた隔壁部31が形成される。
【0076】
また、前記工程[2C−i]で、液状材料を第2層間絶縁層26および各陽極3上に全面的に供給した場合には、これを乾燥することにより、第2層間絶縁層26および各陽極3上にシリコーン材料を含有する被膜が全面的に形成される。
そして、この被膜を、隔壁部形成領域31aの形状に対応するようにフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングする。これにより、隔壁部31が形成される。
【0077】
ここで、隔壁部31の開口の形状は、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形等の多角形等、いかなるものであってもよい。
なお、隔壁部31の開口の形状を多角形とする場合には、角部は丸みを帯びているのが好ましい。これにより、正孔輸送層4および発光層5を、後述するような、液状材料を用いて形成する際に、これらの液状材料を、隔壁部31の内側の空間の隅々にまで確実に供給することができる。
【0078】
液状被膜を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜を乾燥させることにより、次工程[2F]において、エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する隔壁部31を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2C−i]で説明したようなシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、シリコーン材料が有するシラノール基と第2層間絶縁層26および各陽極3が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される隔壁部31を膜強度に優れ、かつ第2層間絶縁層26および各陽極3に対して強固に結合したものとすることができる。
【0079】
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、隔壁部31の膜密度が緻密化して、隔壁部31をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
【0080】
以上のように、隔壁部31を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される隔壁部31の膜強度等を所望のものとすることができる。
このような隔壁部31の平均高さ(平均厚さ)は、正孔輸送層4および発光層5の合計の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、100nm〜100μm程度とするのが好ましく、200nm〜10μm程度とするのがより好ましい。かかる高さとすることにより、十分に隔壁(バンク)としての機能が発揮される。
【0081】
また、隔壁部31の平均高さを前記範囲内とすることにより、隔壁部31と陰極6とを接合した表示装置10の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
すなわち、隔壁部31の平均高さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、隔壁部31の平均高さが前記上限値を上回った場合は、表示装置10の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0082】
さらに、隔壁部31の平均高さをかかる範囲とすることにより、隔壁部31がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[3]において、隔壁部31と陰極6とを接合する際に、隔壁部31と接触させる陰極6の下面にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを隔壁部31で包み込むようにして隔壁部31と陰極6とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって、隔壁部31と陰極6との界面における接合強度が低下したり、この界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
【0083】
また、本発明では、液状材料を供給して隔壁部31を形成する構成となっていることから、たとえ第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aに凹凸が存在している場合であっても、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにして隔壁部31を形成することができる。その結果、隔壁部31が凹凸を吸収して、その表面がほぼ平坦面で構成されることとなる。
【0084】
なお、第2層間絶縁層26および各陽極3の少なくとも隔壁部形成領域31aには、上記の方法により隔壁部31を形成するのに先立って、第2層間絶縁層26および各陽極3の構成材料に応じて、予め、第2層間絶縁層26および各陽極3と隔壁部31との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
これにより、第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aが清浄化および活性化され、隔壁部形成領域31aに対して隔壁部31が化学的に作用し易くなる。その結果、第2層間絶縁層26および各陽極3と隔壁部31との接合強度を高めることができる。
【0085】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第2層間絶縁層26が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
【0086】
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、隔壁部形成領域31aを、より清浄化および活性化することができる。その結果、隔壁部形成領域31aと隔壁部31との接合強度を特に高めることができる。
また、第2層間絶縁層26および各陽極3の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、隔壁部31との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2層間絶縁層26の構成材料としては、例えば、各種シリコン系材料を主材料とするものが挙げられる。また、各陽極3の構成材料としては、例えば、各種金属系材料を主材料とするものが挙げられる。
【0087】
このような材料で構成された第2層間絶縁層26および各陽極3は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2層間絶縁層26および各陽極3を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2層間絶縁層26および各陽極3と隔壁部31との接合強度を高めることができる。
【0088】
なお、この場合、第2層間絶縁層26および各陽極3の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも隔壁部31を形成する隔壁部形成領域31aの表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、第2層間絶縁層26および各陽極3の少なくとも隔壁部形成領域31aに、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
【0089】
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、隔壁部31との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に隔壁部31を成膜することにより、最終的に、信頼性の高い表示装置10を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第2層間絶縁層26および各陽極3と隔壁部31との間の接合強度を特に高めることができる。
【0090】
[2D]次に、図3(e)に示すように、各陽極3上に、それぞれ、正孔輸送層(半導体層)4を形成する。
この正孔輸送層4は、真空蒸着法などの気相プロセスや、スピンコート法などの液相プロセスにより形成することができる。本実施形態においては、インクジェット法(液滴吐出法)を用いた液相プロセスにより形成する。インクジェット法を用いることにより、正孔輸送層4の薄膜化、画素サイズの微小化を図ることができる。また、正孔輸送層形成用の液状材料を、隔壁部31の内側に選択的に供給することができるため、液状材料のムダを省くことができる。
【0091】
具体的には、正孔輸送層形成用の液状材料を、インクジェットプリント装置のヘッドから吐出し、各陽極3上に供給し、脱溶媒または脱分散媒した後、必要に応じて、150℃程度で短時間の加熱処理を施す。
この脱溶媒または脱分散媒は、減圧雰囲気に放置する方法、熱処理(例えば50〜60℃程度)による方法、窒素ガスのような不活性ガスのフローによる方法等が挙げられる。さらに、追加の熱処理(150℃程度で短時間)で行うことにより、残存溶媒を除去する。
【0092】
[2E]次に、図3(e)に示すように、各正孔輸送層4上(陽極3のTFT回路基板20と反対側)に、発光層(半導体層)5を形成する。
この発光層5も、液相プロセスにより形成することができるが、前述したのと同様に、インクジェット法(液滴吐出法)を用いた液相プロセスにより形成するのが好ましい。
また、複数色の発光層5を設ける場合には、インクジェット法を用いることにより、各色毎にパターンの塗り分けを容易に行うことができるという利点もある。
【0093】
なお、前記工程[2D]および本工程[2E]において、正孔輸送層4および発光層5を液相プロセスによって形成する場合、隔壁部31によって囲まれた画素空間内に、正孔輸送層形成用の液状材料や発光層形成用の液状材料を滴下するが、その際、滴下位置が目標からずれてしまうおそれがある。すなわち、前述の液状材料が、画素空間内ではなく、隔壁部31上に滴下されるおそれがある。
【0094】
ところが、隔壁部31が前述したようなシリコーン材料で構成されていることにより、隔壁部31には、液状材料に対する撥液性が付与される。これにより、たとえ隔壁部31上に液状材料が滴下されたとしても、この撥液性によって液状材料が弾かれることとなる。その結果、弾かれた液状材料は、自ずと画素空間内に移動することとなる(セルフアライメント効果)。これにより、液状材料が不本意な箇所に付着するのを防止することができる。
【0095】
[2F]次に、隔壁部31の表面310に対してエネルギーを付与する。
隔壁部31にエネルギーを付与すると、この隔壁部31では、表面310付近の分子結合の一部が切断し、表面310が活性化されることに起因して、表面310付近に陰極6に対する接着性が発現する。
このような状態の隔壁部31は、陰極6と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
【0096】
ここで、本明細書中において、表面310が「活性化された」状態とは、上述のように隔壁部31の表面310の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、隔壁部31中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、隔壁部31が「活性化された」状態と言うこととする。
【0097】
隔壁部31に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、隔壁部31にエネルギー線を照射する方法、隔壁部31を加熱する方法、隔壁部31に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、隔壁部31をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、隔壁部31をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これにより、隔壁部31の表面を効率よく活性化させることができる。また、隔壁部31中の分子構造を必要以上に切断しないので、隔壁部31の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0098】
上記の方法の中でも、本実施形態では、隔壁部31にエネルギーを付与する方法として、特に、隔壁部31にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、隔壁部31に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
【0099】
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図3(f)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、隔壁部31中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、隔壁部31から表面310付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、隔壁部31の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、隔壁部31に接着性を確実に発現させることができる。
【0100】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、隔壁部31の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと隔壁部31との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0101】
また、紫外線を照射する時間は、隔壁部31の表面310付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、隔壁部31の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、隔壁部31の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0102】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、隔壁部31のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による隔壁部31の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、隔壁部31の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0103】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って隔壁部31に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0104】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、表面310付近の分子結合を選択的に切断することができる。
【0105】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇するのを防止して、表面310付近の分子結合を選択的に切断することができる。
【0106】
また、隔壁部31に照射するレーザ光は、その焦点を、隔壁部31の表面310に合わせた状態で、この表面310に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面310付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、隔壁部31の表面310に存在する分子結合を選択的に切断することができる。
【0107】
また、隔壁部31に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0108】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、隔壁部31に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第2層間絶縁層26および各陽極3の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、隔壁部31で切断される分子結合の量を調整することが可能となる。このように切断される分子結合の量を調整することにより、隔壁部31と陰極6との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0109】
すなわち、表面310付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、隔壁部31の表面310付近に、より多くの活性手が生じるため、隔壁部31に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面310付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、隔壁部31の表面310付近に生じる活性手を少なくし、隔壁部31に発現する接着性を抑えることができる。
【0110】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
以上のようにして、第2の積層体102が得られる。
【0111】
[3]第1の積層体と第2の積層体との接合工程
次に、前記工程[1]で作製された第1の積層体101と前記工程[2]で作製された第2の積層体102とを、隔壁部31と陰極6とが密着するように貼り合わせる(図4(g)参照)。これにより、前記工程[2F]において、隔壁部31の表面310に陰極6に対する接着性が発現していることから、隔壁部31と陰極6とが化学的に結合する。その結果、第1の積層体101と第2の積層体102(隔壁部31と陰極6)とが接合され、図4(h)に示すような表示装置10が得られる。
【0112】
このようにして得られた表示装置10では、接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、隔壁部31と陰極6とが接合されている。このため、表示装置10は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要せず、正孔輸送層4や発光層5、駆動用TFT24の熱的ダメージを抑えて、隔壁部31と陰極6とを強固に接合することができる。
【0113】
以上のことから、本発明によれば、発光特性および表示特性に優れるとともに、剥離が生じ難く、高い信頼性が得られる発光装置を得ることができる。
ここで、隔壁部31の熱膨張率と陰極6の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、隔壁部31と陰極6とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる表示装置10において、剥離を確実に防止することができる。
【0114】
また、隔壁部31の熱膨張率と陰極6の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、隔壁部31と陰極6との熱膨張率の差にもよるが、隔壁部31および陰極6の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の積層体101と第2の積層体102とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、隔壁部31と陰極6との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、表示装置10における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0115】
また、この場合、具体的な隔壁部31と陰極6との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、隔壁部31と陰極6とは、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、隔壁部31と陰極6とをより強固に接合することができる。
【0116】
さらに、第1の積層体101および第2の積層体102のうち少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、隔壁部31と陰極6とを接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い表示装置10を得ることができる。
【0117】
また、第2層間絶縁層26および各陽極3と同様、陰極6の下面(少なくとも隔壁部31との接合に供される領域)にも、必要に応じて、あらかじめ隔壁部31との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、陰極6の隔壁部31との接合に供される領域を清浄化および活性化する。その結果、本工程において、陰極6と隔壁部31とを密着させ、これらを接合したとき、陰極6と隔壁部31との接合強度を高めることができる。
【0118】
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第2層間絶縁層26および各陽極3に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第2層間絶縁層26および各陽極3の場合と同様に、陰極6の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、隔壁部31との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる陰極6の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料を主材料とするものが挙げられる。
【0119】
すなわち、このような材料で構成された陰極6は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合(露出)している。したがって、このような酸化膜で覆われた陰極6を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、陰極6と隔壁部31との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、陰極6の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも隔壁部31との接合に供される領域において、その表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0120】
また、陰極6の隔壁部31との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、陰極6と隔壁部31との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
【0121】
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、隔壁部31に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する陰極6は、隔壁部31に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、陰極6の隔壁部31との接合に供される領域が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、陰極6は、隔壁部31に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に隔壁部31の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、陰極6と隔壁部31との間を短時間で強固に接合することができる。
【0122】
また、このような基や物質を有するように、陰極6の少なくとも隔壁部31との接合に供される領域に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、隔壁部31に対して強固に接合可能な陰極6が得られる。
また、表面処理に代えて、陰極6の少なくとも隔壁部31との接合に供される領域に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
【0123】
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第2層間絶縁層26および各陽極3の場合と同様に、隔壁部31との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して、陰極6と隔壁部31とを接合することにより、最終的に、信頼性の高い表示装置10を得ることができる。
【0124】
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第2層間絶縁層26および各陽極3に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
ここで、本工程において、隔壁部31と陰極6とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、陰極6の表面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、隔壁部31の上面と、陰極6の下面とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、隔壁部31の表面310に存在する水酸基と、陰極6の表面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、隔壁部31と陰極6とが接合されると推察される。
【0125】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、隔壁部31と陰極6との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、隔壁部31と陰極6とがより強固に接合されると推察される。
また、隔壁部31の表面や内部、および、陰極6の表面や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、隔壁部31と陰極6とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、隔壁部31と陰極6とが特に強固に接合される。
【0126】
なお、前記工程[2F]で活性化された隔壁部31の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2F]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2F]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、隔壁部31の表面が十分な活性状態を維持しているので、隔壁部31と陰極6とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0127】
換言すれば、活性化させる前の隔壁部31は、シリコーン材料を乾燥させて得られた隔壁部31であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の隔壁部31は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような隔壁部31を備えた第1の積層体101を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2F]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、表示装置10の製造効率の観点から有効である。
【0128】
なお、本実施形態では、前記工程[2F]および本工程[3]で示したように、隔壁部31にエネルギーを付与して、隔壁部31の表面付近に接着性を発現させた後、隔壁部31と陰極6とを接触させることにより表示装置10を得るようにしたが、これに限らず、隔壁部31と陰極6とを接触させた後、隔壁部31にエネルギーを付与することにより表示装置10を得るようにしてもよい。すなわち、前記工程[2F]と本工程[3]との順序を逆にして表示装置10を得るようにしてもよい。このような順序で各工程を施して表示装置10を得る場合においても前述したのと同様の効果が得られる。
【0129】
以上のようにして、図4(h)に示す表示装置10を得ることができる。
このようにして得られた表示装置10は、隔壁部31と陰極6との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する表示装置10は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の製造方法によれば、隔壁部31と陰極6とが上記のような大きな接合強度で接合された表示装置10を効率よく作製することができる。
なお、表示装置10を得る際、または、表示装置10を得た後に、この表示装置10に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([4A]および[4B])のうちの少なくとも1つの工程(表示装置の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、表示装置10の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0130】
[4A] 図5に示すように、得られた表示装置10を、隔壁部31と陰極6とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、隔壁部31の表面に、陰極6の表面がより近接し、表示装置10における接合強度をより高めることができる。
また、表示装置10を加圧することにより、表示装置10中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、表示装置10における接合強度をさらに高めることができる。
【0131】
なお、この圧力は、隔壁部31および陰極6の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、隔壁部31および陰極6の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、表示装置10の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の積層体101および第2の積層体102を構成する各部の構成材料によっては、各積層体101、102に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、表示装置10を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0132】
[4B] 図5に示すように、得られた表示装置10を加熱する。
これにより、表示装置10における接合強度をより高めることができる。
このとき、表示装置10を加熱する際の温度は、室温より高く、表示装置10の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、表示装置10が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0133】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図5に示すように、表示装置10を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、表示装置10の接合強度を特に高めることができる。
【0134】
以上のような工程を行うことにより、表示装置10における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、上記では、第1の積層体101と第2の積層体102とを貼り合わせる前に、隔壁部31に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、第1の積層体101と第2の積層体102とを重ね合わせた後に行われるようにしてもよい。すなわち、まず、第1の積層体101と第2の積層体102とを重ね合わせて仮接合体とする。そして、この仮接合体中の隔壁部31に対してエネルギーを付与することにより、隔壁部31に接着性が発現し、隔壁部31を介して第1の積層体101と第2の積層体102とが接合(接着)される。
【0135】
この場合、仮接合体中の隔壁部31に対するエネルギーの付与は、前述した各種のエネルギー付与方法を用いることができる。
なお、仮接合体の状態では、第1の積層体101と第2の積層体102との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、第1の積層体101と第2の積層体102との相対位置を微調整することにより、最終的に得られる表示装置10の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
【0136】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の発光装置の製造方法によって製造される発光装置の他の例として、アクティブマトリクス型表示装置(第2実施形態に係る発光装置)について説明する。
図6は、本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第2実施形態を示す縦断面図、図7は、図6に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図6、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0137】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の表示装置10’は、隔壁部31の構成が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態では、図6に示すように、隔壁部31が、第2層間絶縁層26側に配された第1隔壁部311と、第1隔壁部311上に積層された第2隔壁部312とを有し、第2隔壁部312と陰極6とが接合されている。
【0138】
第1隔壁部311は、第2層間絶縁層26および各陽極3の隔壁部形成領域31aに、直接設けられている。
第1隔壁部311の構成材料は、耐熱性、撥液性、溶剤耐性、第2層間絶縁層26および陽極3との密着性等を考慮して選択される。
具体的には、第1隔壁部311の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素計樹脂のような有機材料や、SiOのような無機材料が挙げられ、これらの中でも、特に、陽極3が酸化物材料を主材料として構成される場合には、SiOを用いるのが好ましい。これにより、陽極3と第1隔壁部311との密着性の向上を図ることができる。
【0139】
第2隔壁部312は、第1隔壁部311上に、第1隔壁部311に比べて高い寸法で設けられている。
第2隔壁部312は、前記第1実施形態における隔壁部31と同様に、シリコーン材料を含有する被膜よりなり、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより発現した接着性によって、陰極6と接着(接合)されている。すなわち、第2隔壁部312は、各有機EL素子1を区画する隔壁(バンク)としての機能を有するとともに、第1隔壁部311と陰極6とを接合する接合膜としての機能を有する。
【0140】
このように第2隔壁部312に発現した接着性による接合では、接合の温度条件を比較的低く設定した場合でも、第2隔壁部312と陰極6とが高い寸法精度で強固に接合される。したがって、正孔輸送層4および発光層5のような有機物層や駆動回路の熱的ダメージが抑えられ、光学特性および表示特性に優れるとともに、陰極6が剥離し難く、信頼性の高い表示装置10’を得ることができる。
このような表示装置10’は、前記工程[2C]に代えて、以下の工程「2C’」を行う以外は、前記第1実施形態と同様にして製造される。
【0141】
[2C’] 第2層間絶縁層26上に、各陽極3を区画するように、第1隔壁部311および第2隔壁部312によって構成された隔壁部(バンク)31を形成する。すなわち、各陽極3同士の間に露出する第2層間絶縁層26の表面と各陽極3の辺縁部を合わせた領域(以下、「隔壁部形成領域31a」と言う。)に、第1隔壁部311および第2隔壁部312によって構成された隔壁部31を形成する。以下、隔壁部31の形成工程について詳述する。
【0142】
[2C’−i] まず、第2層間絶縁層26および各陽極3の上面全面を覆うように、第1隔壁部311を得るための第1被膜を形成する。そして、この第1被膜を、隔壁部形成領域31aの形状に対応するようにフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングすることにより、図7(a)に示す第1隔壁部311が形成される。
なお、後工程[2C’−ii]で、第2隔壁部312を形成するための第2被膜を、第2層間絶縁層26および各陽極3上に全面的に形成する場合には、第1被膜のパターニングは、本工程で行わず、第2被膜をパターニングする際に、同じレジストマスクを用いて、連続して行うようにしてもよい。
第1被膜の形成方法としては、例えば、ゾル・ゲル法等の液相プロセスや、スパッタ法のような物理蒸着法、CVD法のような化学蒸着法等が挙げられる。
【0143】
[2C’−ii] 次に、図7(b)に示すように、第1隔壁部311上に、第2隔壁部312を形成し、隔壁部31を得る。
第2隔壁部312は、第1隔壁部311の上面を隔壁部形成領域31aとして、シリコーン材料を含有する液状材料を供給する以外は、前記第1実施形態における工程[2C−i]、[2C−ii]と同様にして形成することができる。
【0144】
なお、この場合には、第1隔壁部311の上面および陰極6の少なくとも隔壁部31との接合に供される領域に、第2隔壁部312との密着性を高める表面処理を施したり、中間層を設けるのが好ましい。これらの表面処理の条件および中間層の構成は、前記第1実施形態で説明したのと同様の条件および構成とすることができる。
この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0145】
また、第2実施形態では、特に、シリコーン材料を含有する被膜によって構成された隔壁部(第2隔壁部312)の下方に第1隔壁部311が設けられており、第1隔壁部311については、構成材料が制限されない。このため、例えば、第1隔壁部311の構成材料として、第2層間絶縁層26および各陽極3と、第2隔壁部312のいずれに対しても密着性の高い材料を選択することにより、第2層間絶縁層26および各陽極3に密着性よく被着しており、強度に優れた隔壁部31を得ることができる。その結果、表示装置10’の信頼性をより高いものとすることができる。
【0146】
なお、第2実施形態において、第1隔壁部311がSiOのような酸化物材料で構成されている場合は、前述した「セルフアライメント効果」がより顕著に発揮される。これは、正孔輸送層形成用の液状材料や発光層形成用の液状材料が酸化物材料に対して高い親和性を示すため、第2隔壁部312の側面に付着した液状材料が、第1隔壁部311を構成する酸化物材料に引っ張られるようにして、第1隔壁部311側(陽極3側)に移動し易くなることに起因するものである。
【0147】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の発光装置の製造方法によって製造される発光装置の他の例として、アクティブマトリクス型表示装置(第3実施形態に係る発光装置)について説明する。
図8は、本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第3実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0148】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の表示装置10”は、隔壁部31の構成が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態では、図8に示すように、隔壁部31が、第2層間絶縁層26側に配された下部隔壁部313と、下部隔壁部上に設けられた上部隔壁部314とで構成されている。
【0149】
これらの下部隔壁部313および上部隔壁部314は、それぞれ、前記第1実施形態における隔壁部31と同様のシリコーン材料を含有する被膜よりなり、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより発現した接着性によって、互いに接着(接合)されている。
このように、本実施形態では、同種の材料で構成された下部隔壁部313と上部隔壁部314とを接着することによって隔壁部31を形成するとともに、第1の積層体101と第2の積層体102とを接着することにより、表示装置10”が形成されている。したがって、画素空間の気密性(液密性)が高くなり、表示装置10”の信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0150】
このような表示装置10”は、第2の積層体102側に下部隔壁部313を形成し、一方、第1の積層体101側に上部隔壁部314を形成した後、下部隔壁部313の上面と上部隔壁部314の下面にそれぞれエネルギーを付与して接着性を発現させる。その後、下部隔壁部313と上部隔壁部314とが密着するように、第1の積層体101と第2の積層体102とを貼り合わせることによって、表示装置10”が得られる。
以上のような第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0151】
<電子機器>
このような表示装置(本発明の発光装置)10、10’、10”は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図9は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0152】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の表示装置10、10’、10”で構成されている。
【0153】
図10は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の表示装置10、10’、10”で構成されている。
【0154】
図11は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0155】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の表示装置10、10’、10”で構成されている。
【0156】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0157】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0158】
なお、本発明の電子機器は、図9のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図10の携帯電話機、図11のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。なお、本発明の電子機器は、光源など発光機能を有するものであればよく、表示機能を有するものには限られない。
以上、本発明の発光装置の製造方法、発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の発光装置の製造方法は、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。また、前記各実施形態の2つ以上を組み合わせるようにしてもよい。
【実施例】
【0159】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.有機EL素子(発光装置)の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ1mmの透明なガラス基板を用意し、このガラス基板上に回路部を形成した。
【0160】
<2> 次に、回路部上に、スパッタ法により、平均厚さ150nmのITO膜を形成し、その後、パターニングして陽極を得た。
<3> 次に、各陽極の縁部を覆うように、スパッタ法により、平均厚さ150nmのSiO膜を形成した後、パターニングして、第1隔壁部を形成した。
<4> 次に、シリコーン材料としてポリジメチルシロキサン骨格を有するものを含有し、溶媒としてトルエンおよびイソブタノールを含有する液状材料(信越化学工業社製、「KR−251」:粘度(25℃)18.0mPa・s)を用意し、インクジェット法により第1の隔壁部上に、この液状材料を5pLの液滴として供給して、液状被膜を形成した。
【0161】
<5> 次に、この液状被膜を、常温(25℃)で、24時間乾燥させることにより、第1隔壁部上に、第2隔壁部を形成した。これにより、第1隔壁部と第2隔壁部との積層体で構成された平均高さ2μmの隔壁部を得た。
<6> 次に、隔壁部で画成された画素空間内に、ポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアゾールとの共重合体)の混合溶液を供給して発光層を形成した。
<7> 次に、平均厚さ0.5mmのガラス基板を用意した。そして、このガラス基板上に、平均厚さ20nmのCa膜と、平均厚さ200nmのAl膜とを真空蒸着法により成膜し、陰極を形成した。
【0162】
<8> 次に、得られた第2の隔壁部に、以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
<9> 紫外線を照射した第2隔壁部と、陰極とが密着するように、陽極側のガラス基板と陰極側のガラス基板とを貼り合わせた。これにより、有機EL素子を得た。
<10> 次に、得られた有機EL素子を、3MPaで圧縮しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、有機EL素子の接合強度の向上を図った。
【0163】
(実施例2)
第1隔壁部を省略するようにした以外は、前記実施例1と同様にして有機EL素子を得た。
(比較例)
隔壁部を、蒸着重合により形成されたフッ素含有ポリイミド膜で構成した以外は、前記実施例1と同様にして有機EL素子を得た。
なお、この隔壁部は、前記工程<4>〜<5>を以下のように変更して形成した。
まず、真空蒸着装置に、蒸着源(原料)として、2、2’−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル(TFDB)と、2、2’−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)とを用意した。
次に、第1の隔壁部を形成したガラス基板を、真空蒸着装置内に収納し、蒸着を行った。
次に、蒸着膜を300℃×30分で加熱して、原料を重合させ、フッ素含有ポリイミド膜を得た。
【0164】
2.評価
各実施例および比較例の有機EL素子について、それぞれ、発光輝度(cd/m)が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
なお、発光輝度の測定は、直流電源から陽極と陰極との間に6Vの電圧を印加することで行った。
そして、比較例の有機EL素子で測定された半減期と、各実施例の有機EL素子で測定された半減期とを比較した。
【0165】
その結果、各実施例の有機EL素子における半減期は、いずれも、比較例の有機EL素子における半減期に対して、1.2倍以上長いことが明らかとなった。この結果は、各実施例の有機EL素子は、隔壁部と回路部との密着性、および、隔壁部と陰極との密着性が高いことから、画素空間の液密性が高く、これにより発光層の劣化が抑制されたことに起因するものであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図3】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図4】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】図6に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の発光装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0167】
1……有機EL素子 3……陽極 4……正孔輸送層 5……発光層 6……陰極 9……上基板 10、10’、10”……表示装置 20……TFT回路基板 21……基板 22……回路部 23……下地保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……隔壁部 31a……隔壁部形成領域 310……表面 311……第1隔壁部 312……第2隔壁部 313……下部隔壁部 314……上部隔壁部 101……第1の積層体 102……第2の積層体 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた複数の第1の電極を仕切るように、前記基板上にシリコーン材料を含有する液状材料を供給した後、乾燥させることにより隔壁部を形成する第1の工程と、
前記隔壁部によって画成された複数の画素空間内に、発光層を形成する第2の工程と、
前記隔壁部にエネルギーを付与することにより、前記隔壁部の表面付近に接着性を発現させ、この接着性により、前記隔壁部と第2の電極とを接合し、発光装置を得る第3の工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン材料は、シラノール基を有する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記液状材料は、遮光材が分散されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、前記隔壁部と前記第2の電極とを接触させた後、前記隔壁部に前記エネルギーを付与することにより、前記隔壁部と前記第2の電極とを接合する請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程において、前記基板上に、液滴吐出法を用いて前記液状材料を供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、前記隔壁部にエネルギー線を照射する方法、前記隔壁部を加熱する方法、および前記隔壁部に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし6のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3の工程における前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし10のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記隔壁部の高さは、100nm〜100μmである請求項1ないし11のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板の少なくとも前記隔壁部と接触する部分は、シリコン材料を主材料として構成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2の電極の少なくとも前記隔壁部と接触する部分は、金属材料を主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記基板および前記第2の電極は、前記隔壁部と接触する面に、あらかじめ、前記隔壁部との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし14のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理である請求項15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記第3の工程の後に、さらに、前記発光装置に対して、前記隔壁部と前記第2の電極との接合強度を高める処理を行う工程を有する請求項1ないし16のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記隔壁部にエネルギー線を照射する方法、前記隔壁部を加熱する方法、および前記隔壁部に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項17に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の発光装置の製造方法により製造されたことを特徴とする発光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−212012(P2009−212012A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55521(P2008−55521)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】