説明

発光装置及び照明装置

【課題】封止部材に溝を形成することにより、基板の反りや変形を軽減できるとともに、発光素子の温度上昇を抑制することができる発光装置及びこの発光装置を備える照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基板2と、この基板2に複数並設して実装された複数の発光素子3と、前記基板2と複数の発光素子3を含めて覆い、前記並設方向に沿って形成された溝41を一体に有する透光性の封止部材4とを備える発光装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発光素子を用いた発光装置及びこの発光装置が配設された照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED等の発光素子を基板に実装し、これを光源として用いる発光装置が開発されている。この種、発光装置は、一般的に、基板の実装面に複数のLEDチップをボンディングワイヤで接続して配線し、その上を覆うように樹脂製の封止部材で封止している。そして、この基板の裏面側に放熱部材等を密着させて放熱の促進を図っている。
【0003】
ところが、基板と封止部材との熱膨張率等の差に起因して、基板に反りや変形が生じる場合がある。そうすると、基板と放熱部材等の密着性が悪くなり放熱効果が低下したり、封止部材が基板の実装面から剥離したり、さらには配線の接続部に応力が作用し、ボンディングワイヤが接続不良になったりする虞が生じる。
【0004】
一方、LED等の発光素子は、その温度が上昇するに従い、光出力の低下等の諸特性の変化や短寿命化をもたらすことが知られている。このため、LED等の発光素子を光源とする発光装置では、諸特性や寿命を改善するために発光素子の温度上昇を抑制する必要がある。
【0005】
従来、薄型化された半導体パッケージに、ソリが発生したり強度不足による破損や実装不良が発生したりすることを防止するために、半導体パッケージを形成する際、基板上における複数の半導体素子が実装される面に、複数の半導体素子を取り囲むように補強部材を配置し、この補強部材を半導体素子とともに封止部材で封止するものが提案されている(特許文献1、図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−228932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されたものでは、基板、補強部材及び封止部材の熱膨張率が異なると、却って、基板に反りや変形を生じることとなり、これら材料の選択が複雑となる課題が存在する。また、複数の半導体素子を取り囲むような補強部材を別部材として用意しなければならず、その製造工程も煩雑となる問題もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、封止部材に溝を形成することにより、基板の反りや変形を軽減できるとともに、発光素子の温度上昇を抑制することができる発光装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発光装置は、基板と;この基板に複数並設して実装された複数の発光素子と;前記基板と複数の発光素子を含めて覆い、前記並設方向に沿って形成された溝を一体に有する透光性の封止部材と;を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は次による。基板は、例えば、アルミニウム等の金属やガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂で形成でき、その形状は、四角形、円形、多角形等で形成でき、大きさも特段限定されるものではない。発光素子とは、LED等の固体発光素子であり、また、この発光素子の実装個数には特段制限はない。
【0011】
封止部材に形成された溝は、少なくとも発光素子の並設方向に沿って形成されている溝があればよく、例えば、格子状に形成されていてもよい。この場合には、発光素子の並設方向に沿って形成されている溝と、これに直交する溝が追加されているに過ぎない。また、溝の断面形状は、凹状、V字状、U字状又は弧状等が適用でき格別限定されるものではない。さらに、複数の発光素子は、例えば、ボンディングワイヤ等で電気的に接続されている。
【0012】
透光性の封止部材には、例えば、シリコーン系の透明又は半透明の透光性樹脂等に粒子状の蛍光体を分散されたものを適用することができる。さらに、エポキシ系の樹脂やアクリル樹脂等も適用可能である。
【0013】
請求項2に記載の照明装置は、装置本体と;この装置本体に配設された請求項1に記載の発光装置と;を具備することを特徴とする。本発明の照明装置は、ディスプレイ装置やいわゆる空間を照らす屋内又は屋外用の照明装置を含む概念である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、基板の反りを軽減でき、発光素子の温度上昇を抑制することができる発光装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明が奏する効果が得られる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
【図2】図1のY−Y線に沿って切断して示す断面図である。
【図3】図1のX−X線に沿って切断して示す断面図である。
【図4】同発光装置の一部を示す斜視図である。
【図5】同基板の反りの状態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態(実施例1)に係る発光装置を示す図2に相当する断面図である。
【図7】同(実施例2)に係る発光装置を示す図2に相当する断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態に係る発光装置について図1乃至図5を参照して説明する。まず、図1乃至図4において、発光装置1は、基板2、この基板2に複数実装された発光素子としてのLED3及びこれらLED3を覆う封止部材4を備えている。
【0018】
基板2は、ベース板2a、電気絶縁層2b及び配線パターン層2cを積層して構成されている。ベース板2aは、金属、例えば、熱伝導性が良好で放熱性に優れたアルミニウム製の四角形状の平板からなる。板厚寸法は、約1mmである。なお、ベース板2aに絶縁材を用いる場合には、例えば、ガラスエポキシ樹脂等で形成できる。ベース板2aの一面には、エポキシ樹脂やガラスエポキシ樹脂等からなる電気絶縁層2bが約80μmの厚さ寸法で形成されている。電気絶縁層2bの上には、配線パターン層2cが複数の列をなすように、具体的には、図1における左右方向に7列形成されている(図1、図2参照)。
【0019】
この配線パターン層2cは、LED3に電源からの電力を供給するために、銅箔等の導電性の材料にNi及びAgのめっき処理を施して形成されている。具体的には、銅箔等の厚さ寸法は、約35μmであり、この上に厚さ寸法3.0〜5.0μmのNiめっき処理が施され、さらに、その上に厚さ寸法0.3〜0.7μmのAgめっき処理が施されている。また、基板2上には、その外周縁に沿って四角形状の樹脂性枠体2dが固着されている。
【0020】
基板2上には、配線パターン層2に対応するように、LED3が複数個、図1における左右方向に7列、複数並設するように配線パターン層2c上に透光性、かつ熱硬化性を有すシリコーン樹脂系の接着剤によって接着して配設されている。
【0021】
LED3は、ベアチップであり素子基板の一面に発光層を積層して形成されている。LED3は、例えば、InGaN系の素子であり、透光性のサファイア素子基板に発光層が積層されており、発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN発光層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて形成されている。そして、発光層に電流を流すための電極は、p型窒化物半導体層上に透明電極とp型電極パッドで形成されたプラス側電極と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス側電極とで構成されている。プラス側電極及びマイナス側電極は、それぞれボンディングワイヤ3aによって配線パターン層2cに電気的に接続されて配線されている。このボンディングワイヤ3aによる配線は、全体として配線パターン層2cの列に沿って、すなわち、LED3の配設に従って順次直列に接続されて行われている(図2においては、ボンディングワイヤ3aの図示は省略しており、以降図6、図7についても同様である。)。なお、このボンディングワイヤ3aによる接続は、直線的である必要はない。例えば、電気的に接続されれば、ジグザグ状であってもよい。
【0022】
続いて、複数のLED3が実装された基板2に固着された樹脂性枠体2d内には、複数のLED3、ボンディングワイヤ3a等が配設された基板2の実装面を全体として覆うように封止する封止部材4が形成されている。封止部材4は、LED3やボンディングワイヤ3aの保護のため、外気から遮断して封止するもので、この封止部材4には、シリコーン系の透明又は半透明の透光性樹脂が用いられ、これらの樹脂に粒子状の蛍光体が分散されている。蛍光体にはLED3の青色発光により励起されて黄色に発光する蛍光体を用いており、この場合、黄色発光と青色発光とが合成されて白色光を放射するようになっている。
【0023】
このような封止部材4には、LED3の並設方向に沿って、複数条の溝41が形成されている。この溝41は、各LED3の列間に位置するように、樹脂性枠体2dの内面一端から内面他端に亘って形成されており、断面が凹状をなしている。そして、この溝41の幅寸法は、LED3の幅寸法よりも大きくなるように形成されている。加えて、図2に代表して示すように、溝41の底部41aと基板2の実装面(表面)との間にも封止部材41は存在するようになっており、つまり、封止部材4は、全体として基板2を覆い、連続して一体に繋がっている状態となっている。換言すれば、溝41は、基板2の実装面までは深く形成されておらず、溝41によって封止部材41は分断される状態とはなっていないものである。
【0024】
封止部材4の形成にあたっては、ポッティングやモールディングによって基板2の実装面全体を一様に覆うように形成する。その後、溝41をカッティングして形成加工する。なお、勿論、溝41を成型加工によって形成するようにしてもよく、形成方法は格別限定されるものではない。
【0025】
なお、封止部材4には、基板2の反りの軽減や溝41の形成加工等の面から、熱膨張率が低く、日本工業規格(JIS K 6253)で規定するゴム硬度D50以上の硬度を有するシリコーン系の樹脂を用いるのが好適である。また、エポキシ系の樹脂やアクリル樹脂等も適用可能である。
【0026】
次に、本発明者は、上記のように構成された発光装置1について、基板2の反りの測定を行い、分析を試みた。本実施形態のように、封止部材4に溝41を形成したもの(溝あり)と、溝41を形成していないもの(溝なし)とを用意し、図1に示すように、基板2の中央部を基準点として、両端部(A点、B点)での寸法差を測定した。その結果、下表のとおりとなった。
【0027】
【表1】

【0028】
この結果から分かるように、比較例では、A点で58.68μm、B点で34.59μm、平均値で46.635μmとなり、本実施形態では、A点で2.94μm、B点で25.62μm、平均値で14.28μmであり、本実施形態の方が明らかに寸法差が小さく、比較例に対し、本実施形態では、平均値で約1/3以下の寸法差となっている。
【0029】
したがって、本実施形態のように、溝41を形成することによって、溝41を形成した方向に沿った基板2の反りを軽減できることが判明した。これを模式的に示すと、比較例では、図5(a)に示すように、基板の中央部に対し、両端が上方へ反って中央部が凹んだ状態となり、本実施形態では、図5(b)に示すように、基板の中央部に対し、両端の上方への反りは少なくなる。
【0030】
このような基板2の反りの発生は、封止部材4の形成の際の封止部材4の熱膨張、収縮によるものと考えられるが、溝41を形成することにより、封止部材4全体として柔軟性が向上し、基板2にかかる応力が緩和されるため、基板2の反りが軽減されるものと推測される。
【0031】
また、本実施形態の温度的特性を確認するため、同様に、封止部材4に溝41を形成したもの(溝あり)と、溝41を形成していないもの(溝なし)とを用意し、LED3に通電し、LED3のジャンクション温度(Tj)及びLED3と基板2間の熱抵抗(Rjc)を測定してみた。その結果、下表のとおりとなった。
【0032】
【表2】

【0033】
この結果から、ジャンクション温度(Tj)は、比較例では、Tj=56.26℃であるのに対し、本実施形態では、Tj=47.06℃と約9℃低下しており、熱抵抗(Rjc)は、比較例では、Rjc=2.42℃/Wであるのに対し、本実施形態では、Rjc=1.44℃/Wと低いものとなっている。
【0034】
LED3の温度が上昇すると、寿命が短くなり、故障率が増加したり、諸特性が変わったりする不具合が生じるが、本実施形態のように、封止部材4に溝41を形成することにより放熱性が高まり、LED3の温度上昇を抑制できることが分かる。これは、溝41を形成することにより、封止部材4の表面の面積が増大し、つまり、放熱面積が増大することによるものであると考えられる。したがって、LED3から発生した熱は、封止部材4へ伝わり、その面積が増加した表面から効果的に放熱される。
【0035】
以上のように構成された発光装置1によれば、基板2の反りが軽減されるので、例えば、基板2の裏面側に放熱部材を密着させて放熱を行う場合には、その密着性が良好となり、放熱効果を高めることができる。また、封止部材4が基板2の実装面から剥離する等の不具合を少なくすることが可能となる。さらに、LED3が電気的に接続されるボンディングワイヤ3aによる配線の接続部にかかる応力を少なくすることができ、接続不良等の不具合を低減でき、接続の安定性を確保することができる。
【0036】
次に、LED3に配線パターン層2c、ボンディングワイヤ3aを介して通電すると、LED3は、発光し、その光は主として封止部材4を通過し、この過程で、青色の光が蛍光体に吸収されて、蛍光体から黄色の光が発光され、この黄色の光と蛍光体に吸収されなかった青色の光が混色されて白色光に変換されて外部へ放射される。このとき、LED3から熱が発生するが、この熱は、基板3に伝導されたり、前記放熱面積が増大した封止部材4に伝導されたりして放熱される。
【0037】
さらに、封止部材4は、溝41の底部41aと基板2の実装面との間にも存在するように、全体として一体に連続して繋がっているので、基板2との密着性が良好で、LED3等の電気部品の絶縁性が保たれ、さらに、気密性も向上するのでLED3等の電気部品の劣化を軽減することができる。
【0038】
よって、本実施形態によれば、基板2の反りが軽減されるので、放熱効果を高めることができ、封止部材4の剥離等を少なくすることができるとともに、LED3の配線の安定性を確保できる。また、LED3から発生した熱は、封止部材4から有効に放熱することができ、LED3の温度上昇を効果的に抑制することができる。さらに、封止部材4は、全体として一体に繋がっているので、基板2との密着性が良好となる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態に係る発光装置について図6及び図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0040】
(実施例1)本実施例では、封止部材4の厚さ方向の寸法を小さく形成したものである。したがって、LED3の主たる発光部と正対する部分の封止部材4の厚さが薄く形成されるもので、LED3から出射される光のエネルギー損失が少なく、指向性の強い光を有効に外部へ放射することができる。それゆえ、指向性の強い光を要する場合に適しているものである。
【0041】
(実施例2)本実施例では、封止部材4に形成された溝41を断面V字状に形成したものである。したがって、この溝41によりLED3の周囲を取り巻く封止部材4の厚さ寸法を略等しくすることができる。よって、LED3から放射される光の色むら等を抑制しつつ、有効に光を取り出すことが可能となる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る発光装置について図8を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0043】
本実施形態では、封止部材4に形成された溝41に連続するように樹脂性枠体2dにも溝42を形成したものである。したがって、樹脂性枠体2dの柔軟性も向上し、基板2にかかる応力を緩和できる。
【0044】
続いて、本発明の第4の実施形態に係る発光装置について図9を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0045】
本実施形態では、封止部材4の溝41を格子状に形成したものである。したがって、封止部材4全体としての柔軟性が一層向上し、基板2にかかる応力が緩和されるため、基板2の反りをさらに軽減することが可能となる。
【0046】
次に、本発明の照明装置の実施形態について説明する。図示は省略するが、上記実施形態の発光装置1は、装置本体に組込み、照明装置として構成できる。例えば、屋内又は屋外で使用される照明装置に適用可能である。よって、このような照明装置によれば、上記実施形態の発光装置1の効果を奏する照明装置を提供できる。
【0047】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光装置における封止部材に形成された溝は、発光素子が実装された並設の方向に沿って形成されていればよく、直線状に限らず、波状や曲線状であってもよい。また、必ずしも連続している必要はなく、断続的に形成されていてもよい。さらに、溝の断面形状は、凹状、V字状、U字状又は弧状等、適宜選択し得る。
【0048】
さらにまた、本発明の発光装置は、ディスプレイ装置や屋内又は屋外で使用される照明装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・発光装置、2・・・基板、3・・・発光素子(LED)、
4・・・封止部材、41・・・溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
この基板に複数並設して実装された複数の発光素子と;
前記基板と複数の発光素子を含めて覆い、前記並設方向に沿って形成された溝を一体に有する透光性の封止部材と;
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
装置本体と;
この装置本体に配設された請求項1に記載の発光装置と;
を具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−278266(P2010−278266A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129712(P2009−129712)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】