説明

発光装置及び画像形成装置

【課題】 多重露光を実施する場合に発光素子の特性のバラツキに起因する不具合の発生を抑止する。
【解決手段】X方向に沿って並ぶ有機EL素子(811,812,…)、及び、それら各々を先頭としY方向に沿って並ぶ1個以上の有機EL素子(例えば、821,831,841)からなる有機EL素子群(8G1,8G2,…)と、この有機EL素子群ごとの光の各パワー値を測定するパワー値測定手段と、その測定結果に基づき判明する前記各パワー値のバラツキに基づいて、当該各パワー値を一定とするような、前記発光素子群ごとに対応する各補正値を設定する補正値設定手段と、その補正値に基づいて、前記発光素子を駆動するための駆動信号を補正する補正手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)装置等の発光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(Organic Light Emitting Diode)、即ち有機EL素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機EL素子は、これら画素電極及び対向電極間に所定の電流が供給されることによって発光する。
【0003】
このような有機EL素子等の発光素子を含む発光装置は、例えば、タンデム方式や4サイクル方式等のラインプリンタ等の画像形成装置用のプリンタヘッドに利用される。ここで画像形成装置とは、例えば前記のプリンタヘッドに加えて、感光体ドラム等の像担持体、帯電器、現像器、及び転写器等を備える。像担持体は、帯電器によって帯電された後、プリンタヘッドの一部を構成する発光素子から発した光に曝される。この露光によって、像担持体の表面には静電潜像が形成される。この後、当該静電潜像は、現像器から供給されるトナーによって現像され、このトナーが転写器によって紙等の被転写媒体に転写される。これにより、被転写媒体上には、所望の画像が形成されることになる。
【0004】
このような画像形成装置等に組み込まれる発光装置としては、例えば特許文献1及び2に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2007−125705号公報
【特許文献2】特開2008−87197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような発光装置においては、通常、前記有機EL素子等の発光素子が複数備えられた形態をとるので、これら各素子間で発光強度等のバラツキが生じるという問題がある。
また、これら発光素子の発光特性(例えば、発光効率)が、過去における発光の程度(例えば、発光の回数)に応じて経時的に劣化していくという問題もある。特に、形態が共通する複数の画像が継続的に出力されるような場合(例えば、発光装置が前記プリンタヘッドとして採用された画像形成装置で同様の画像を大量に印刷する場合)には、ある発光素子は常に発光していたが、別の発光素子は殆ど発光しないという経過が辿られることになり、各発光素子の特性の劣化のバラツキが経時的に拡大していくおそれが高くなる。
このようであると、(発光素子1個1個についての「劣化」それ自体も当然問題であるが、)1個の発光装置上の各発光素子の劣化の程度が相違することとなって、当該各発光素子中のある発光素子は未だ十分に発光能力があるのに、別の発光素子は、より早い段階でもはや発光不能となってしまう、といった不都合が生じる。要するに、発光素子の「寿命」がバラつくという問題が発生してしまうのである。
【0006】
前述の特許文献1は、このような問題に対処するための技術を開示する。すなわち、特許文献1は、「第1係数と階調データ」によって発光素子の駆動信号のパルス幅を決定する「パルス幅決定手段」、及び「第2係数」によって前記駆動信号の電流値を決定する「電流値決定手段」を具備し、かつ、ここでいう「第1係数」及び「第2係数」が、複数の発光素子についての「発光特性の変化の態様」が略一致するように等の目的の下に選定される技術を開示する(以上、「」内は特許文献1の〔請求項1〕等参照)。このような技術によれば、「輝度(階調)のムラが抑制されるという効果を長期間にわたって維持することができる」という効果が奏される(以上、特許文献1の〔0007〕、あるいは〔図2〕及びその説明である〔0022〕以降等、参照)。
【0007】
このような特許文献1の技術は、たしかに、上述の問題を解決するにあたって極めて有効である。のみならず、特許文献1は、第1係数等が各発光素子の光量(発光エネルギ)が略一致するようにといった目的の下に設定される技術をも開示し、それにより、発光素子の輝度(階調)ムラの抑制という、前記とは別の効果をも導く(特許文献1の〔0007〕参照)(つまり、特許文献1の技術は、通時的な階調ムラの抑制のみならず、共時的なそれの抑制をも実現するのである。)。
【0008】
とはいえ、なお課題はある。
すなわち、前述の特許文献2において開示されているように、前記画像形成装置等においては、像担持体の露光面の上に多重露光を行う技術がある(特許文献2の〔請求項1〕等参照)。特許文献2では、かかる技術を前提に、「第1光源列」及び「第2光源列」のそれぞれに含まれる「第1光源」から「第4光源」の位置付けを好適に設定することによって、これら光源による露光領域(スポット領域)のサイズとエネルギを均一化し、もって画像解像度や階調ムラを抑制する技術が開示される(以上は、特許文献2の〔0004〕〜〔0005〕〔0037〕〔図8〕等参照)。
このような特許文献2によれば、たしかに、そのような階調ムラ抑制等の効果が実効的に奏されることにはなる。
【0009】
しかし、この特許文献2においても、多重露光技術と、前述した発光素子間にみられるバラツキ、あるいは経時的な特性劣化におけるバラツキという問題とが、重ね合わされることによって生じる新たな問題については、特別な配慮がなされているわけではない。例えば、前記像担持体上のある二点に着目するとして、そのうちの一点に対し、3個の発光素子(第1群)による多重露光を行い、残る一点に対して、別の3個の発光素子(第2群)による多重露光を行うという場合を考えると、これら6個の発光素子は、前述したような特性のバラツキをもつことが通常想定されるため、前記二点において同じ階調表現を行おうとしても、前記第1群に基づいて形成される画像と、前記第2群に基づいて形成される画像との間には、階調差が生じてしまうおそれがあるのである。
【0010】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決することの可能な、発光装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、第1方向に沿って並ぶ第1,第2,…,第nの発光素子(nは正の整数)、及び、それら各々を先頭とし前記第1方向に交差する第2方向に沿って並ぶ1個以上の発光素子、からなる、第1,第2,…,第nの発光素子群と、前記第1,第2,…,第nの発光素子群ごとに、当該発光素子群の各々から発せられる光の各パワー値のバラツキに基づいて、当該各パワー値を一定とするような、前記発光素子群ごとに対応する各補正値を設定する補正値設定手段と、前記補正値に基づいて、前記発光素子を駆動するための駆動信号を補正する補正手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、まず、第1,第2,…,第nの発光素子群ごとの、パワー値の存在が前提される。したがって、このパワー値も、発光素子群についてのナンバリングと同様、“第1,第2,…,第nの”パワー値、と区分することが可能である。そして、前記補正手段は、これら第1,第2,…,第nのパワー値のバラツキをなくすように、発光素子群ごとの補正値を定める。したがって、この補正値もやはり、“第1,第2,…,第nの”補正値、と区分可能である。
各発光素子を駆動するための駆動信号は、このような補正値によって補正されるが、この場合、最も好適には、第pの発光素子群(p=1,2,…,n)に含まれる複数の発光素子は、第pの補正値によって一斉に補正される(つまり、発光素子群と補正値との対応が図られた上での補正が行われる。)のがよい。
このようなことから、本発明においては、1個1個の発光素子に前述したような発光特性のバラツキがある場合であっても、各発光素子群から発せられるパワー値は、全発光素子群にわたって一定の範囲内に収められることになる。また、本発明によれば、各発光素子に関する補正を、それら発光素子毎に行うのではなく、発光素子群を一単位として行うことから、補正処理の迅速化を図ることができるという利点も得られる。
いずれにしても、本発明は、駆動信号の補正が、発光素子ごとに行われるのではなく、発光素子群を一単位として行われることに大きな特徴の1つをもつ。これによって、前記した補正処理の迅速化が達成されるし、あるいは、そのような効果が得られるにもかかわらず実用上十分な品質をもつ画像形成等が可能になるという効果をも同時に享受され得るのである。
【0013】
なお、本発明にいう「発光素子」の具体的な構造や材料は基本的に自由に定められ得るが、例えば、有機EL材料や無機EL材料からなる発光層を電極間に介在させた素子が本発明の発光素子として採用され得る。さらに、LED(Light Emitting Diode)素子や、プラズマの放電により発光する素子など様々な発光素子を本発明に利用することができる。
【0014】
この発明の発光装置では、前記発光素子を駆動するための駆動回路を更に備え、当該駆動回路は、前記発光素子群の1つの中に含まれる複数の発光素子に共通する共通回路部分を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前記共通回路部分が、1個1個の発光素子群に対応するかのように設けられるから、駆動回路の回路構成の簡易化、回路規模の縮小化等が実現される。このような効果は、本態様にいう「駆動回路」を構成するに当たり、当該回路を1個1個の発光素子に個別に対応するように形作っていく場合を想定すると、より明瞭に把握される。本態様では、少なくとも1個の発光素子群に含まれる複数の発光素子については、回路構成の共通化が図られる(即ち、共通回路部分が設けられる)ので、前述した効果が実効的に享受されるのである。
【0015】
この態様では、前記駆動回路は、前記発光素子のための駆動電流を供給する電流源素子を更に含み、前記共通回路部分は、前記駆動電流の大きさを調整するための前記電流源素子用の制御信号を、当該電流源素子へ供給する制御信号供給回路を含む、ように構成してもよい。
この態様において、まず、「電流源素子」には、例えば、飽和領域において使用されるトランジスタであって、そのゲートにかけられる電圧に応じてドレイン・ソース間電流の大きさを変えるもの、等が含まれる。この場合、ここでいう「電圧」は、本態様にいう「制御信号」の一例に該当する。
そして、本態様によれば、前記共通回路部分が、そのような制御信号を電流源素子に供給する制御信号供給回路を含む。
このように、本態様は、前述の共通回路部分をより具体化した好適な一例を提供する。
なお、本態様の「制御信号供給回路」は、より具体的には例えば、DAコンバータ(Digital Analog Converter)等を含みうるが、かかる形態については、後の実施形態においてその一例が説明される。
【0016】
また、本発明の発光装置では、前記駆動信号は、電流値及びパルス幅によって規定され、前記補正手段は、前記電流値及びパルス幅の少なくとも一方を補正することにより、前記駆動信号を補正する、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子の発光態様、あるいはその補正に係る制御が好適に行われる。
【0017】
この態様では特に、前記補正手段は、前記電流値を補正することにより、前記駆動信号を補正する、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子の発光態様あるいはその補正に係る制御が、そこに供給される電流値をもって行われる(この場合、本発明にいう「補正値」は、いわば“電流補正値”になるともいえる。)。
ところで、本発明に係る補正手段による補正は、前述のように第pの発光素子群に含まれる複数の発光素子に関し、第pの補正値によって一斉に行われることが好適であるが、これを本態様に引き直してみれば、第pの発光素子群に含まれる複数の発光素子に関しては、同じ電流補正値による補正が行われるということになる。
したがって、この場合における複数の発光素子が、例えば多重露光のために用いられる場合においては、その間、当該複数の発光素子は同じ電流値で駆動されるということになる。
このようなことは、例えば、各発光素子を個別に補正する場合に比べて、本発明に係る「発光装置」を構成する、複数の発光素子全体に関する劣化速度を鈍化させる可能性を高める。なぜなら、各発光素子に関し個別の補正を行う場合は、当該各発光素子の寿命にバラツキを生じさせるおそれが高く、したがって、ある1個の発光素子群に含まれる発光素子のうち、早くに寿命を向かえて発光不能になる発光素子を出現させるといった事態を招来しかねない(=もはや本来予定していた多重露光は不能になる)が、本態様では、ある1個の発光素子群に含まれる発光素子については、上述の意味において、同じ駆動電流が供給されることになり、したがって、それらに関する劣化速度の一定化を図ることができるからである。
【0018】
また、本発明の発光装置では、前記発光素子に対向する露光面を更に備え、前記発光素子の発光による前記露光面への露光は、前記発光素子群の1つの中に含まれる複数の発光素子の経時的な発光による多重露光によって、行われる、ように構成してもよい。
この態様によれば、本発明に係る「発光装置」の最も好適な使用例の1つが提供される。
すなわち、前記多重露光では、前述のように「発光素子群の1つの中に含まれる複数の発光素子の経時的な発光」が行われるから、前述した、本発明に係る効果、あるいはその各種態様によって奏される効果(例えば、発光素子群ごとに観測されるパワー値が揃えられ得ること、あるいは、ある1個の発光素子群に含まれる発光素子につき同じ駆動電流が供給されることで装置全体の長寿命化が図られ得ること)、といった各種の効果が、最も実効的に享受される。
【0019】
また、本発明の発光装置では、前記第1,第2,…,第nの発光素子群ごとに、当該発光素子群の各々から発せられる光の各パワー値を測定するパワー値測定手段を更に備える、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子群ごとの各パワー値が好適に測定されるので、本発明に言う駆動信号の補正も好適に行われる。
【0020】
一方、本発明に係る画像形成装置は、上述した課題を解決するため、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の画像形成装置は、上述した各種の発光装置、即ち発光素子間の発光特性バラツキが好適に抑制され得る発光装置を備えているので、例えば、当該画像形成装置によって出力される画像形成済みの印刷媒体上に、いわゆる筋ムラ等を発生させるおそれが殆どない。
なお、本発明にいう「画像形成装置」なる概念は、例えば、いわゆる有機ELディスプレイ等を含む。
あるいは、本発明にいう「画像形成装置」なる概念は、上述した例のように、感光ドラム等の像担持体、帯電器、現像器、及び転写器等を備えた、いわゆるプリンタ等を含む。この場合についての更なる具体的な構成例については、後の実施形態の<応用例>において改めて説明される。
前者の場合、「画像形成」とは、「発光素子」たる有機EL素子が並べられた画像表示面に画像が出力されることがそれに該当することになり、後者の場合、最終的に、紙等の被転写媒体上に画像が出力されることがそれに該当することになる。要するに、本発明にいう「画像形成装置」は、人間が認識可能な画像を、何らかの意味において“形成”することの可能な装置一般を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図5を参照しながら説明する。なお、ここに言及した図1乃至図5に加え、以下で参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0022】
図1は、発光装置10を光ヘッド(発光装置)として用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、この画像形成装置は、発光装置10、集束性レンズアレイ15、感光体ドラム110、及び制御部CUを含む。
【0023】
このうち発光装置10は、図1中長手方向に沿って配列された複数の有機EL素子(発光素子)を備える。これら有機EL素子の各々は、図1中下方に向けて光を出射する(図中破線参照)。この光は、すぐ後に述べる集束性レンズアレイ15に入射する。なお、この発光装置10についてのより詳細な構成については、後に改めて述べる。
【0024】
集束性レンズアレイ15は発光装置10と感光体ドラム110との間に配置される。集束性レンズアレイ15は、各々の光軸を発光装置10に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。発光装置10の各有機EL素子からの出射光は集束性レンズアレイ15の各屈折率分布型レンズを透過したうえで感光体ドラム110の外表面に到達する。
なお、この集束性レンズアレイ15としては、具体的には例えば、日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)を用いることができる(セルフォック:SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。これを用いれば、発光装置10からの光は、感光体ドラム110の上で、正立等倍結像する。
【0025】
感光体ドラム110は略円柱形状をもつ。その中心軸には、回転軸が備えられている。感光体ドラム110は、この回転軸を中心として記録材(被転写媒体)が搬送される方向である副走査方向に回転する(図中の矢印参照)。なお、回転軸の延在方向は、主走査方向に一致する。
このような感光体ドラム110及び前記の発光装置10は、当該感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の各有機EL素子の発光タイミングとの間に所定の関係が成立するように、制御される。例えば、主走査方向に沿っては、形成しようとする画像の1ライン分の明暗に応じて、各有機EL素子の発光・非発光が制御され、副走査方向に沿っては、1ライン分の画像に関する感光工程が完了した後に感光体ドラムが所定の角度だけ回転するように、当該感光体ドラムの回転が制御される。なお、本実施形態では、後述するように多重露光が行われるが、この多重露光と、いま述べた回転制御等との関係に関しては、後に改めて触れる。
このようにして、感光ドラム110の外表面には、所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0026】
パワー測定装置23Hは、図1あるいは図2に示すように、測定部231及び支持部232からなる。
測定部231は、集束性レンズアレイ15と感光体ドラム110との間に位置付けられるように配置可能である。この測定部231には、例えばフォトダイオード等からなるパワーセンサ(光センサ)23が備えられている。
他方、支持部232は、図2に示すように、その一端が測定部231の図中左端に固着し、その他端が第1フレームF1に取り付けられている。支持部232と第1フレームF1との間には、例えばリニアモータ等からなる併進動作機構が備えられる。これにより、支持部232は図2の紙面を貫く方向に沿って走行可能であり、したがってまた、パワー測定装置23Hは、前記有機EL素子の配列方向に沿って走行可能である(図1も参照)。
なお、本実施形態では、この走行機能によって、パワー測定装置23Hは、発光装置10の設置領域以外の領域に退避可能であるようにもなっている(図1中破線参照)。これにより、発光装置10が感光体ドラム110上に静電潜像を形成する場合において、パワー測定装置23Hが、邪魔になるようなことがない。
また、集束性レンズアレイ15の性能等との関係から、当該集束性レンズアレイ15と感光体ドラム110との間の距離が十分にとれない場合があるが、そのような場合には、前記距離を可変とするための、感光体ドラム移動機構等が設けられていると好ましい。これによれば、前記走行機能がよりよく確保される。
以上の構成により、パワー測定装置23Hは、発光装置10から発せられた光、特にそれを構成する各有機EL素子から発せられた光についての各パワー値を測定することが可能である。
【0027】
制御部CUは、いずれも図示しない、CPU(Central Process Unit)、必要な情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、及び当該画像形成装置を運用する上で必要なプラグラム等を格納するROM(Read Only Memory)等を備える。前述の感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の発光タイミングとの同期も、この制御部CUによってはかられる。
また、この制御部CUは、前記パワー測定装置23Hを用いたパワー値の測定を通じて、有機EL素子8を駆動するための電流補正値を求め、かつ、この補正値に基づく電流補正を行う。この点については後に改めて述べる。
そのほか、当該制御部CUは、本実施形態に係る画像形成装置を構成する各種要素が調和的に動作するように、当該各種要素の動作を司る。
【0028】
前述の発光装置10は、より詳細には、図2乃至図5に示すような構造ないし構成を持つ。
図2等において、発光装置10は、素子基板7及びカバー基板12を備えている。このうち素子基板7は、図3に示すように、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。この素子基板7は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
このような発光装置10は、図2に示すように、断面Π字状をもつ第2フレームF2中、そのΠの字を構成する天井の面の上に取り付けられている。また、この第2フレームF2には、そのΠの字を構成する図2中左の棒に沿うようにして、フレキシブルプリント基板53が取り付けられている。フレキシブルプリント基板53の一端は、回路素子薄膜801に接続されており、その他端は、回路基板51に接続されている(以下、この順に従って、番号〔I〕〔II〕を付して説明する。)。
【0029】
〔I〕 回路素子薄膜801は、発光装置10の一部を構成するものであって、前述の有機EL素子を含む各種の回路要素からなる前記素子基板7上に形成される薄膜である。図2では極めて簡略化されたかたちで描かれているが、この回路素子薄膜801は、図3に示すように、複数の有機EL素子8及び複数の駆動回路9等を含む。
なお、図3等において示されている有機EL素子8及び駆動回路9の数、及び、配列態様は、単なる一例を示しているに過ぎない。なお、本実施形態においては特に、後述する多重露光に関する説明を簡易にすることを目的として、図3等の各図面において示されている有機EL素子8の配列態様等が定められているという事情がある。
【0030】
このうち駆動回路9は、後に参照する図5に示される、駆動トランジスタTr1、あるいはスイッチングトランジスタ(以下、「SWトランジスタ」と略すことがある。)Tr2等からなり、有機EL素子8の駆動に関与する。
一方、有機EL素子8は、相互に対向する2つの電極、及び、これら2つの電極間に少なくとも有機発光層を含む発光機能層を備えている(いずれも図3において不図示)。前記2つの電極のうち一方の電極には、共通線16が接続され、他方の電極には駆動回路9を介して電源線(図3において不図示)が接続される。
本実施形態においては特に、このような有機EL素子8は、図3に示すように、素子基板7の上でマトリクス状配列に従って並べられる。このマトリクス状配列には、第1に、図3又は図4中X方向に沿って並ぶ第1,第2,…第nの有機EL素子811,812,…,81nが含まれる(図3において、nはたまたま“10”である。)。第2に、当該マトリクス状配列には、これらの有機EL素子811,812,…,81nの各々を先頭とし、図3又は図4中Y方向に沿って並ぶ3個の有機EL素子8が含まれる。例えば、有機EL素子811を先頭に、有機EL素子821,831,841が並ぶ、というようである(なお、本明細書において、符号“8”は、以上に述べたような符号“811”,“812”,…,“81n”,“821”,…,“841”等の全部又は一部を総称する符号として用いられている。)。
この際、本実施形態においては、当該マトリクス状配列中において、「有機EL素子群8G」が観念される。すなわち例えば、前記の先頭に位置付けられる有機EL素子811に加えて、有機EL素子821,831,841からなる、都合4個の有機EL素子8は、「有機EL素子群8G1」を構成する。以下、同様に、有機EL素子群8G2は、有機EL素子812,822,832,842によって構成され、有機EL素子群8G3は、有機EL素子813,823,833,843によって構成される…、というようである(なお、本明細書において、符号“8G”は、以上に述べたような符号“8G1”,“8G2”,…等の全部又は一部を総称する符号として用いられている。)。
このような有機EL素子群8Gは、本実施形態において中心的な役割を担うが、この点については後に述べる。
【0031】
〔II〕 一方、前記の回路基板51は、図2に示すように、断面Π字状をもつ第2フレームF2中、そのΠの字を構成する図2中左の棒に係る内側面に沿うように取り付けられている。
この回路基板51は、図5に示すように、制御部CU、階調値制御回路19、電流値設定メモリ11、DAコンバータ(本発明にいう「制御信号供給回路」の一例)1D,2D,3D,…、発光制御回路21、及びパワーセンサ23等を備える。なお、図5においては、前記有機EL素子8、あるいはこれを駆動するための駆動回路9の回路構成例も併せて図示されている。
【0032】
まず、図5に示す駆動回路9は、上に説明した駆動回路9の回路構成例である。図示するように、この駆動回路9は、各有機EL素子8の別に関わらず全く同じ構成をもつ。
そこで、図中左上隅に示される駆動回路9を参照しながら説明すると、かかる駆動回路9は、2つのトランジスタ、即ち駆動トランジスタ(本発明にいう「電流源素子」の一例)Tr1,及びSWトランジスタTr2,並びに、1つのコンデンサC1を備える。
このうち駆動トランジスタTr1は、そのソースが電源線Velに接続され、そのドレインがSWトランジスタTr2のソースに接続されている。また、この駆動トランジスタTr1のゲートにはコンデンサC1の一方の電極が接続されており、このコンデンサC1の他方の電極には、当該駆動トランジスタTr1のソースが接続されている。当該のゲートはまた、DAコンバータ1Dにも接続されている。なお、この駆動トランジスタTr1は、飽和領域において使用されることが前提とされている。
一方、SWトランジスタTr2は、そのドレインが有機EL素子811の前記画素電極に接続されている。また、SWトランジスタTr2のゲートは、発光制御回路21に接続されている。なお、このSWトランジスタTr2は、線形領域において使用されることが前提とされている。
【0033】
以上の構成により、第1に、階調値制御回路19ないしDAコンバータ1Dから送られてきた階調信号のレベルに応じてコンデンサC1に電荷が蓄えられるとともに、駆動トランジスタTr1のゲートに当該レベルに応じた電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタTr1は当該レベルに応じた電流を供給する電流源として機能する。
そして第2に、かかる状況下で、SWトランジスタTr2のゲートに、発光制御回路21から発光指令信号が送られてくると、当該SWトランジスタTr2はONとなり、これにより、有機EL素子811には、電流源として機能している駆動トランジスタTr1から所定値の電流が供給される。この場合、前記発光指令信号は、SWトランジスタTr2がON状態を維持する期間を指定する意味も持ち、したがって、有機EL素子811に前記電流が供給されるべき期間(つまり、パルス幅の長短)を規定する意味をも持つ。
なお、本発明にいう「駆動信号」は、前記階調信号に加えて、前記発光制御信号をも含む概念である。前者によって、当該「駆動信号」の電流値が規定され、後者によって、そのパルス幅が規定される。
【0034】
なお、図5から明らかなように、その他の駆動回路9も、上記と同様の構成をもち、また、同様の発光制御がそれらについて行われる。
ただし、本実施形態においては、前記の各種要素のうち、DAコンバータ1D,2D,3D,…は、各有機EL素子8に個別に対応するようには設けられていない。これらDAコンバータ1D,2D,3D,…は、図5に示すように、前述した有機EL素子群8Gの1個に、1個ずつ対応するように設けられている。例えば、図5の有機EL素子群8G1に着目すれば、これに含まれる有機EL素子811,821,831,841の各々に接続された4個の駆動トランジスタTr1のゲートには、共通して、DAコンバータ1Dが接続されている。その他の有機EL素子群8G2,8G3,…についても同様である。
【0035】
次に、前述した回路基板51を構成する、その他の各種要素について説明する。
パワーセンサ23は、図5等に示す有機EL素子8が発光した場合における、そのパワー値を測定する。この場合、パワーセンサ23は、当該パワー値の測定を、前述した有機EL素子群8Gごとに行う。つまり、パワーセンサ23は、同一の有機EL素子群8Gに含まれている複数の有機EL素子8の別には拘らない。パワーセンサ23は、仮に測定パワー値P1,P2,P3,…があるとすると、それら各々が、有機EL素子群8G1,8G2,8G3,…に対応することを把握する(図5参照)。
ここで測定されるパワー値P1,P2,P3,…は、駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vth、あるいは移動度等の各種特性値のバラツキ、有機EL素子8を構成する発光機能層の特性のバラツキ、あるいは集束性レンズアレイ15内の各レンズの位置付け誤差(例えば、各レンズと各有機EL素子8との相対的位置関係に関する誤差等をいう)等に起因する各有機EL素子8間に関する光伝達効率のバラツキ等の各種の要因に応じて、ばらつく可能性がある。
【0036】
電流値設定メモリ11は、パワーセンサ23による各有機EL素子群8Gに関するパワー値の測定結果、及び、それに応じた制御部CUの指示に従って定められた電流補正値を記憶する。パワーセンサ23が、前記のように、1個1個の有機EL素子群8Gについて固有のパワー値P1,P2,P3,…を測定することに対応して、この電流値設定メモリ11も、1個1個の有機EL素子群8Gについての電流補正値J1,J2,J3,…を記憶する(なお、記号「J1,J2,J3,…」については、図5において不図示)。
この電流補正値J1,J2,J3,…の目的は、当該電流補正値J1,J2,J3,…によって補正された電流を各有機EL素子8に供給した場合、各有機EL素子群8Gがほぼ同じパワー値でもって発光するようにすることにある。
【0037】
なお、測定パワー値P1,P2,P3,…に基づいて、それら各々に対応する電流補正値J1,J2,J3,…を求める方法(即ち、前記の「制御部CUの指示」の内実)には、適当な演算式を利用する手法等、様々なものが考えられるが、本発明は、基本的にどのようなものもその範囲内に収める。最も好適な一例としていえば、測定パワー値及び電流補正値間の関係を規定する所定のテーブルないし対応表を、制御部CU内等に用意しておく等の手法が、処理速度等の観点からはこのましい。
【0038】
階調値制御回路19は、制御部CUから送られてくる、ある特定の有機EL素子8用の階調信号の入力を受けると、それに対応する有機EL素子群8G用の前記電流補正値J1,J2,J3,…を参照して、当該階調信号を当該電流補正値J1,J2,J3,…でもって補正し、かつ、この補正後の階調信号を後段のDAコンバータ1D,2D,3D,…に供給する。
DAコンバータ1Dは、階調値制御回路19から送られてくる、ある有機EL素子群8に対応するデジタル信号たる階調信号を、アナログ信号たる階調信号に変換し、これを当該有機EL素子8に対応する駆動トランジスタTr1のゲートに供給する。
【0039】
発光制御回路21は、各有機EL素子8に対応した発光制御信号L11,L12,…,L21,L22,…,L31,L32,…,L41,L42,……を、当該の有機EL素子8に向けて、あるいは、それに対応する駆動回路9内のSWトランジスタTr2のゲートに向けて供給する。この発光制御信号L11,L12,…は、既述のように、SWトランジスタTr2がON状態にあるべき期間、あるいは、有機EL素子8に電流が供給されるべき期間を規定する。
なお、以上のような事情の裏面として、発光制御信号L11,L12,…は、当然ながら、ON状態にあるSWトランジスタTr2をOFF状態へ移行させる(つまり、有機EL素子8の発光を止めさせる)際にも利用される。
【0040】
なお、本発明にいう「駆動回路」は、前述した、制御部CU、階調値制御回路19、DAコンバータ1D,2D,3D,…、及び発光制御回路21を含む、より広い概念であり、本実施形態で言う「駆動回路9」と必ずしも同視し得るものではない。
【0041】
次に、以上に述べたような構成を備える本実施形態に係る発光装置10の作用及び効果について、既に参照した図1乃至図5に加えて、図6乃至図9を参照しながら説明する。
まず、制御部CUは、電流補正値に関する初期設定を行う(図6のステップS101)。この初期値設定は、電流値設定メモリ11内に記憶されている電流補正値J1,J2,J3,…の各値を等しくする処理を含む。すなわち、J1=J2=J3=…とする。
【0042】
次に、制御部CUは、パワーばらつき測定を行う(図6のステップS102)。すなわち、制御部CUは、パワー測定装置23Hを駆動し、あるいは、パワーセンサ23を有機EL素子8の上で走査させる(図1等参照)ことによって、当該の各有機EL素子8から発せられた光のパワー値を測定する。
この際、パワーセンサ23の走査速度(あるいは移動速度)と、各有機EL素子8の発光タイミングとの間には、適当な関係が設定される。殊に、本実施形態においては、パワー測定時の有機EL素子8の発光タイミングは、有機EL素子群8Gごとに司られる。例えば、パワーセンサ23が、有機EL素子群8G1の上に到達したときには、この有機EL素子群8G1に含まれる有機EL素子811,821,831,841を一斉に発光させ、次の有機EL素子群8G2の上に到達したときには、この有機EL素子群8G2に含まれる有機EL素子812,822,832,842を一斉に発光させると同時に先の有機EL素子811,821,831,841は一斉の消灯する、などというようである。このようにして、パワーセンサ23(あるいは、制御部CU)は、測定したパワー値と個々の有機EL素子群8Gとの対応関係を把握する。
この場合、重要なのは、各有機EL素子8はすべて、同一の駆動信号の下(特に同一電流値条件下)において駆動されることである。
このことと、前記ステップS101において、電流補正値J1,J2,J3,…が等しくされていることからすると、理論的には、各有機EL素子8は同じパワー値でもって発光するはずであり、したがって、各有機EL素子群8Gについて観測されるパワー値は同じになるはずである。しかし、各有機EL素子群8Gに関して現実に観測されるパワー値P1,P2,P3,…は、前述のように駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vth等の各種特性値のバラツキ、集束性レンズアレイ15内の各レンズの位置付け誤差等に起因する各有機EL素子8間に関する光伝達効率のバラツキ等の各種の要因に応じて、ばらつく可能性がある(むしろそれが自然である。)。本処理にいう「パワーばらつき測定」とは、このような背景を含意する。
【0043】
次に、制御部CUは、測定されたパワー値P1,P2,P3,…のバラツキが所定の範囲内にあるかどうかを判断する(図6のステップS103)。すなわち、所定の下限値PL及び上限値PUを定めたとして、測定パワー値P1,P2,P3,…の各々に関するPL<P1<PU,PL<P2<PU,PL<P3<PU,…の真偽を判断する。そして、この判断が否定される場合、例えば、P1に関し、P1≦PL又はPU≦P1が成立する場合は、当該P1についての電流補正値設定処理が行われる(図6のステップS103;NOからステップS105)。つまり、このP1に対応するべく、電流補正値J1が新たに定められる。例えば、定性的にいえば、P1がより大なら、これを減少させるべくより小さな駆動電流が有機EL素子8に流されるような電流補正値J1が定められ、P1がより小なら、これを増加させるべく前記とは逆の電流補正値J1が定められる、というようである。
【0044】
以上のパワー値測定処理及び電流補正値設定処理は、発光装置10に含まれる全有機EL素子群8Gについて行われる(図6のステップS104)。これにより、これら全有機EL素子群8Gに関する電流補正値J1,J2,J3,…が定められ、これが電流値設定メモリ11に記憶されることになる。なお、図6のステップS103において肯定判断がなされる場合(図6のステップS103;YES)には、ステップS105の電流補正値設定処理は行われないが、この場合は、当該の有機EL素子群8G(Z)(Zは、その上限値が有機EL素子群8Gの数に一致する自然数。)については、ステップS101で設定された初期値がそのまま電流補正値J(Z)として利用されることになる。
【0045】
このような処理を経ることにより、以後、有機EL素子群8Gを同一の駆動信号の下に駆動させようとする限りは、全有機EL素子群8Gには、一定の範囲を超えないほぼ同じ値をもつ電流が供給されることになる。
【0046】
以上を前提に、本実施形態に係る発光装置10では、感光体ドラム110上に静電潜像を形成するに当たり、以下に説明するような多重露光が行われる。以下では、これを図7乃至図9を参照しながら説明する。
まず、感光体ドラム表面(露光面)110Sには、図7に示すように、それぞれ固有の階調値をもつ画素D11,D12,D13,…の集合としての静電潜像SZを形成することが前提に置かれる。この静電潜像SZは、画素D11,D12,D13,…がマトリクス状に配列されることで構成されるが、そのマトリクス状配列の中では、図示するように、画1列、画2列、…、とった図中上下方向に並ぶ画素の一群を観念することが可能であり、他方、画1行、画2行、…、とった図中左右方向に並ぶ画素の一群を観念することが可能である。前者において例えば、「画1列」は、画素D11,D21,D31,…から構成され、後者において例えば、「画1行」は、画素D11,D12,D13,…から構成される。
【0047】
このような静電潜像SZを形成するために、図5等に示す各有機EL素子8は、図8に示すような内容をもつ駆動信号によって駆動される。
すなわち、まず、第1段階においては、各有機EL素子群8Gの中で先頭に位置付けられる各有機EL素子811,812,813,…は、図7の「画1行」を構成する画素D11,D12,D13,…を形成するべく、階調値D11,D12,D13,…(以下、このように符号“D11”,“D12”,…等々は、「画素」のみならず「階調値」を表現するものとしても利用する。)をその内容とする駆動信号によって駆動される。したがって、この場合、制御部CUは、これら階調値D11,D12,D13,…に対応する階調信号SD11,SD12,SD13,…を階調値制御回路19に供給し、階調値制御回路19は、これら各々に前記電流補正値J1,J2,J3,…による補正を施した階調信号を、各有機EL素子811,812,813,…に向けて供給する。
これにより、感光体ドラム表面110Sの上には、図9(A)に示すように、有機EL素子811から発せられた光が照射されることにより、画素D11が静電潜像SZの一部として形成される。
【0048】
次に、第2段階においては、前記各有機EL素子811,812,813,…の次段(次行)に控える各有機EL素子821,822,823,…が、図7の「画1行」を構成する画素D11,D12,D13,…を形成するべく、階調値D11,D12,D13,…をその内容とする駆動信号によって駆動される(図8参照)。
また、この第2段階においては、前記各有機EL素子811,812,813,…は、図7の「画2行」を構成する画素D21,D22,D23,…を形成するべく、階調値D21,D22,D23,…をその内容とする駆動信号によって駆動される。この際、発光制御回路21は、前記の第1段階における発光をとめるため、いったんは各有機EL素子811,812,813,…に対応するSWトランジスタTr2をOFFするが、駆動トランジスタTr1の状態等を勘案して、再びSWトランジスタTr2をONにする。
このような各有機EL素子811,812,813,…の発光態様の制御に並行して、制御部CUは、かかる発光態様と適当な同期を図るべく、感光体ドラム110を、図7に示す画素1個分の距離だけ回転させる。これにより、図9(B)に示すように、画素D11の隣には、有機EL素子811の発光に起因した、画素D21が、静電潜像SZの一部として形成されることになる。
また、これと同時に、画素D11に対しては、階調値D11に基づいて駆動される有機EL素子821から発せられた光が照射される。すなわち、感光体ドラム表面110S上における画素D11の形成部位は多重露光されるのである。
【0049】
なお、前記の第1段階においては、図9(A)では示されないものの、同図の観点で紙面の向こう側においては、有機EL素子812,813,…によって、画素D12,D13,…が静電潜像SZの一部として形成されているということになる。
同様にして、前記の第2段階においても、図9(B)の観点で紙面の向こう側においては、有機EL素子812,813,…によって画素D22,D23,…が静電潜像SSZの一部として形成され、有機EL素子822,823,…によって画素D12,D13,…が多重露光されているということになる。
このように、図7に示す「画1列」、「画2列」、…という各列は、図3ないし図4に示した有機EL素子群8G1,8G2,…の各々に対応して形成されていくことになる。
【0050】
以後、第3以降の各段階においては、図8並びに図9(C)及び(D)に示されるところから明らかなように、上記と同様の処理が逐次行われる。これを要約して表現するに、ある有機EL素子群8Gに属する4個の有機EL素子8は、順番に、あるいは経時的に、同じ階調値に従って定められた駆動信号に基づき駆動されるが、同駆動信号による駆動が終了した有機EL素子8については、静電潜像SZ上、次行の画素を表現するための階調値に従って定められた駆動信号に基づき駆動される、という動作が繰り返されることになる。
本実施形態においては、このような動作により、結果的には、4重の多重露光が行われることになる。
このような多重露光の利点は、例えば1個1個の有機EL素子8の発光エネルギが十分でなくても、感光体ドラム表面110に比較的十分なエネルギを与えることが可能となり、もって好適に静電潜像SZを形成することが可能になる、などの点にある。
【0051】
以上述べた発光装置10によれば、次のような効果が奏される。
(1) 本実施形態に係る発光装置10によれば、まず、第Z番目の有機EL素子群8G(Z=1,2,…,10)に含まれる4個の有機EL素子8は、当該素子群8Gに対応する、第Z番目の電流補正値J(Z)によって一斉に補正されることから、有機EL素子8の1個1個につき前述したようなバラツキの要因がある場合であっても、有機EL素子群8Gから発せられるパワー値は、全有機EL素子群8G1,8G2,…にわたって一定の範囲内に収められることになる。
したがって、上述のように、有機EL素子群8G1,8G2,…の各々に対応して形成されていく、図7の「画1列」、「画2列」、…という各列間におけるパワー値のバラツキは所定の範囲内に収められることになり、したがって、静電潜像SZ全体で見たパワー値のバラツキもまた、所定の範囲内に収められることになる。したがって、その結果形成された静電潜像SZに基づき、印刷媒体上に画像が形成された場合、例えば筋ムラ等の印刷不良が発生する可能性は極めて小さい。
本実施形態によれば、以上のような意味において、複数の有機EL素子8間のバラツキに起因する不具合の発生が好適に抑制され得る。
【0052】
(2) 本実施形態に係る発光装置10によれば、各有機EL素子8に関する補正を、それら有機EL素子8毎に行うのではなく、有機EL素子群8Gを一単位として行うことから、補正処理の迅速化を図ることができるという利点も得られる。
【0053】
(3) 本実施形態に係る発光装置10においては、1個の有機EL素子群8Gに対応して、これに含まれる4個の有機EL素子8に共通して、1個のDAコンバータ(1D,2D,…)が接続されている。
このように、本実施形態では、1個の有機EL素子群8Gに含まれる4個の有機EL素子8について、回路構成の共通化が図られている(即ち、共通回路部分が設けられている)ので、これら4個の有機EL素子8の各々に個別にDAコンバータを設けていく形態との対比を想定すると明らかなように、有機EL素子8を駆動するための駆動回路の回路構成の簡易化、回路規模の縮小化等が実現される。
【0054】
(4) 本実施形態に係る発光装置10によれば、ある1個の画素D11,…に着目した場合(図7参照)、当該画素D11,…についての多重露光に関与する有機EL素子8はすべて、その間、同じ電流補正値に基づく同じ駆動電流でもって駆動されるということになる。
このようなことは、例えば、各有機EL素子8を個別に補正する場合に比べて、発光装置10を構成する、複数の有機EL素子8全体に関する劣化速度を鈍化させる可能性を高める。なぜなら、各有機EL素子8に関し個別の補正を行う場合は、当該各有機EL素子8の寿命にバラツキを生じさせるおそれが高く、したがって、ある1個の有機EL素子群8Gに含まれる有機EL素子8のうち、早くに寿命を向かえて発光不能になる有機EL素子8を出現させるといった事態を招来しかねない(=もはや本来予定していた多重露光は不能になる)が、本実施形態では、ある1個の有機EL素子群8Gに含まれる有機EL素子8については、上述の意味において、同じ駆動電流が供給されることになり、したがって、それらに関する劣化速度の一定化を図ることができるからである。
【0055】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る画像形成装置ないし発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
(1) 上述の実施形態では、有機EL素子8が、図3又は図4に示すように、いわば正規の格子を形作るように配列されているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図10に示すように、隣り合う行のそれぞれに並ぶ有機EL素子8が、当該行方向に沿って一定程度ずれているような配列態様も、本発明において採用可能である。
この図10に示すような配列態様も一種のマトリクス状配列と呼びうるが、かかるマトリクス状配列には、第1に、図10中X方向に沿って並ぶ第1,第2,…第nの有機EL素子811’,822’,813’,824’,…が含まれる。ここで、図3の場合とは異なるのは、これら有機EL素子811’,822’,813’,824’,…が、一直線には並んではおらず、図示するように、段違いに並んでいくようになっていることである。なお、このような場合も、本発明にいう「第1方向に『沿って』並ぶ」に該当することは言うまでもない。
第2に、当該マトリクス状配列には、これらの有機EL素子811’,822’,813’,824’,…の各々を先頭とし、図10中Y方向に沿って並ぶ1個の有機EL素子8が含まれる。例えば、有機EL素子811を先頭に、有機EL素子831’が並ぶ、というようである(なお、図10の説明においては特に、符号“8”は、以上に述べたような符号“811’”,“812’”,…等の全部又は一部を総称する符号として用いられている。)。
そして、このような形態においても、当該マトリクス状配列中において、「有機EL素子群8G’」が観念される。すなわち例えば、前記の先頭に位置付けられる有機EL素子811’と、有機EL素子831’とからなる、都合2個の有機EL素子8は、「有機EL素子群8G’1」を構成する。以下、同様である。図10では、一例として、「有機EL素子群8G’8」を示しておいた(なお、図10の説明においては特に、符号“8G’”は、以上に述べたような符号“8G’1”,“8G’2”,…等の全部又は一部を総称する符号として用いられている。)。
【0056】
このような形態では、前述のように有機EL素子811’,822’,813’,824’,…が段違いに並んでいくことに対応して、行番号・列番号の付された方が、図3の場合とは若干相違する。すなわち、第2列、第4列、…という偶数列の先頭に位置付けられる有機EL素子8(以下、「偶数列先頭素子」と呼ぶ。)は、第1列、第3列、…という奇数列の先頭に位置付けられる有機EL素子8(以下、「奇数列先頭素子」と呼ぶ。)に対して、図中上方から臨んで、一段、奥まった場所に位置付けられるようになっている。また、偶数列先頭素子は第1行を構成し、奇数列先頭素子は第2行を構成する。以下、奇数列中、先頭から数えて2番目以降に位置付けられる有機EL素子8は、順に、第3行、第5行、…を構成し、偶数列中、先頭から数えて2番目以降に位置付けられる有機EL素子8は、順に、第4行、第6行、…を構成する。
要するに、このような形態は、有機EL素子8が“千鳥足状”あるいは“市松模様状”に並んでいる場合の一例ということができる。
【0057】
このような図10の配列態様においても、上記実施形態で述べたような多重露光は、有機EL素子群8G’を基準単位とすることにより、同様に実行可能である。図10では、有機EL素子811’及び831’、あるいは有機EL素子824’及び844’が、多重露光(この形態では特に、二重露光)に関与することが視覚的に表現されている。
そして、かかる形態においても、上記実施形態によって奏された作用効果と本質的に異ならない作用効果が奏されることは明白である。
【0058】
(2) 上記実施形態においては、電流補正値J1,J2,J3,…が生成され、これにより、階調信号が補正されるようになっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、発光制御回路21から発せられる発光制御信号は、既述のようにパルス幅を指令する信号としての意味を持ちうるから、場合によっては、この発光制御信号に対する補正(即ち、パルス幅補正)をかけることによって、有機EL素子群8G間のバラツキを抑制するような態様が採用されてもよい。また、このようなパルス幅補正と、上記実施形態における電流値補正とを、適当な関係において並存させる態様が採用されてもよい。
【0059】
(3) 上述の実施形態では、駆動回路9が、素子基板7の上に、有機EL素子8とともに形成されている例について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、駆動回路9と同等の回路構成を備える有機EL素子ドライバを、有機EL素子8及び回路基板51間を繋ぐフレキシブルプリント基板53の上に備える態様もあり得る(図2参照。ただし、「有機EL素子ドライバ」は当然不図示)。その他、図5等では一応、回路基板51は、制御部CUと、その他の各種要素(11,19,23,…)とを備える例が開示されているが、これらの各種要素、さらには駆動回路9内の各種要素のうちのどれを「回路基板」として構成し、あるいは、発光装置10内の一部として構成するか等は、基本的に、自由に定められ得る事項である。
【0060】
(4) 上述の実施形態に係る発光装置10は、有機EL素子8から発した光が、素子基板7の側を透過して感光体ドラム110に到達する、いわゆるボトムエミッション型であるが、本発明は、かかる形態に限定されない。本発明にいう「発光装置」は、トップエミッション型、あるいはデュアルエミッション型であってよい。
【0061】
<応用例>
次に、本発明に係る発光装置を適用した応用例について説明する。
<画像形成装置>
以上の各態様に係る発光装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして利用され得る。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分及びファクシミリの印刷部分がある。図11は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0062】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yは、以上に例示した何れかの態様に係る発光装置10である。
【0063】
図11に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122とが設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0064】
この中間転写ベルト120の周囲には、外周面に感光層を有する4個の感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが互いに所定の間隔をおいて配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0065】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子Pによって感光体ドラムに光を照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0066】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされ、この結果としてフルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0067】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0068】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。図12は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図12に示す画像形成装置において、感光体ドラム165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0069】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ167は、以上に例示した各態様の発光装置10であり、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、これらの発光素子Pから感光体ドラム165に光を照射することにより行う。
【0070】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0071】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166及びテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0072】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、有機アレイ167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、有機アレイ167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム165が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0073】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近及び離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0074】
以上のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再び定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0075】
図11及び図12に例示した画像形成装置は、発光素子を露光手段として利用しているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。なお、以上に例示した以外の電子写真方式の画像形成装置にも本発明の発光装置を採用することができる。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも本発明に係る発光装置を応用することが可能である。
【0076】
また、本発明に係る発光装置は、上述のような「画像形成装置」に、その適用範囲は限定されない。例えば、前記画像形成装置等の電子機器以外の各種の電子機器における照明装置としても、本発明に係る発光装置は採用される。このような電子機器としては、例えば、ファクシミリ、複写機、複合機、プリンタなどが挙げられる。これらの電子機器には、複数の発光素子を面状に配列した発光装置が好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係る発光装置を光ヘッドとして含む画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の発光装置及びその周囲の構造を示す断面図である。
【図3】図1の発光装置の平面図である。
【図4】図1の発光装置上の、有機EL素子の配列態様を概念的に示す説明図である。
【図5】図2の回路基板(51)を構成する各種回路要素に関する回路図である。
【図6】発光パワーばらつき補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】静電潜像を構成する画素及びその階調値の様子を示す説明図である。
【図8】図7の静電潜像を形成するための駆動信号の内容と各有機EL素子との関係を示す説明図である。
【図9】図8に従って駆動される有機EL素子が感光体ドラム表面に静電潜像を形成していく様子を示す説明図である。
【図10】図3と同趣旨の図であって、同図とは異なる態様となる発光装置の平面図である。
【図11】画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図12】画像形成装置の別例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10……発光装置、7……素子基板、12……カバー基板、8……有機EL素子、8G……有機EL素子群、9……駆動回路、15……集束性レンズアレイ、23H……パワー測定装置、110……感光体ドラム、110S……感光体ドラム表面、CU……制御部、51……回路基板、11……電流値設定メモリ、19……階調値制御回路、1D,2D,3D……DAコンバータ、21……発光制御回路、23……パワーセンサ、Tr1……駆動トランジスタ、J1,J2、J3……電流補正値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って並ぶ第1,第2,…,第nの発光素子(nは正の整数)、及び、それら各々を先頭とし前記第1方向に交差する第2方向に沿って並ぶ1個以上の発光素子、からなる、第1,第2,…,第nの発光素子群と、
前記第1,第2,…,第nの発光素子群の各々から発せられる光の各パワー値のバラツキに基づいて、当該各パワー値を一定とするような、前記発光素子群ごとに対応する各補正値を設定する補正値設定手段と、
前記補正値に基づいて、前記発光素子を駆動するための駆動信号を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子を駆動するための駆動回路を更に備え、
当該駆動回路は、
前記発光素子群の1つの中に含まれる複数の発光素子に共通する共通回路部分を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記発光素子のための駆動電流を供給する電流源素子を更に含み、
前記共通回路部分は、
前記駆動電流の大きさを調整するための前記電流源素子用の制御信号を、当該電流源素子へ供給する制御信号供給回路を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、電流値及びパルス幅によって規定され、
前記補正手段は、
前記電流値及びパルス幅の少なくとも一方を補正することにより、
前記駆動信号を補正する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記電流値を補正することにより、前記駆動信号を補正する、
ことを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子に対向する露光面を更に備え、
前記発光素子の発光による前記露光面への露光は、
前記発光素子群の1つの中に含まれる複数の発光素子の経時的な発光による多重露光によって、
行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1,第2,…,第nの発光素子群ごとに、当該発光素子群の各々から発せられる光の各パワー値を測定するパワー値測定手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−93048(P2010−93048A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261381(P2008−261381)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】