発光装置
【課題】例えば、曲面を有する部分であってもELシートが破損を生じることなくインサート成形することができると共に、ELシートの防水性を高めることができる発光装置を提供する。
【解決手段】ELシート12a、12bをインサート成形した発光装置10は、ELシート12a、12bの背面側に配置され、前記インサート成形される前のELシート12a、12bを所望の位置に保持する溝部58、66及び孔部62、72を有した固定体32と、ELシート12a、12bの前面側に配置され、固定体32に保持されたELシート12a、12bを覆うように射出成形されることにより、固定体32及びELシート12a、12bを一体にインサート成形した成形体36とを有する。
【解決手段】ELシート12a、12bをインサート成形した発光装置10は、ELシート12a、12bの背面側に配置され、前記インサート成形される前のELシート12a、12bを所望の位置に保持する溝部58、66及び孔部62、72を有した固定体32と、ELシート12a、12bの前面側に配置され、固定体32に保持されたELシート12a、12bを覆うように射出成形されることにより、固定体32及びELシート12a、12bを一体にインサート成形した成形体36とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ELシートをインサート成形した発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装部品や、携帯電話・家電製品等の外装部品を発光させるため、EL(Electro Luminescence)シートをインサート成形した発光装置が提案されている。
【0003】
この種の発光装置において、特許文献1には、曲げ変形させたELシートの少なくとも背面電極層の外面、つまり、発光しない側の面の外面に樹脂成形品を一体的に設けた構成が記載されている。この場合、接着層が形成されたELシートを、湾曲部を有する形状に予め塑性変形(永久変形、曲げ加工)させておく。そして、前記塑性変形させたELシートを射出成形金型のキャビティ形成面に配置した状態で樹脂を射出すると共に、該樹脂の熱により前記接着層の接着剤を溶融させてELシートを樹脂に接着して、インサート成形している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−92189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなELシートは非常に薄く、例えば、厚さ0.3mm程度に形成されるため、外部衝撃や急激な曲げに弱い。従って、上記特許文献1に記載の技術のようにELシートを塑性変形させた場合には、該塑性変形が施された曲げ部分において電極層が破損して、短絡等により発光しない部分を生じる可能性がある。
【0006】
さらに、上記特許文献1に記載の発光装置の場合には、その外面側にELシートが露出している。従って、このような発光装置は、例えば、自動二輪車のスイッチ部分等に搭載して風雨に晒された際に、ELシート内部の発光体が吸水し、該発光体の劣化が進行して輝度が低下する。
【0007】
本発明は、係る従来の課題を考慮してなされたものであり、例えば、曲面を有する部分であってもELシートが破損を生じることなくインサート成形することができると共に、ELシートの防水性を高めることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光装置は、ELシートをインサート成形した発光装置であって、前記ELシートの一方の面側に配置され、前記インサート成形される前のELシートを所望の位置に保持する保持部を有した固定体と、前記ELシートの他方の面側に配置され、前記固定体に保持されたELシートを覆うように射出成形されることにより、前記固定体及びELシートを一体にインサート成形した成形体とを有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、前記ELシートを固定体に保持した状態で該固定体と共に前記成形体によりインサート成形しているため、該ELシートの破損を低減することができると共に、ELシートを外部環境から遮断することができる。従って、ELシートへの水分の浸入を確実に防止して、発光体等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシートが外面に露出しないため、発光装置の外観が向上する。
【0010】
この場合、前記ELシートは、前記保持部により所望の曲げ状態で保持されるように構成することもできる。
【0011】
さらに、前記ELシートは、給電用の端子のみが、前記固定体又は成形体から露出した状態でインサート成形されていると、ELシートが成形体にインサート成形された状態であっても、防水性等を確保した状態で該ELシートを外部の制御基板等に容易に接続することができる。
【0012】
この場合、1枚のELシートは2個以上の前記保持部により保持され、前記保持部の少なくとも1個は前記ELシートの一端部が挿入される溝部であり、他の少なくとも1個は前記端子が挿入される孔部であると、該端子を容易に外部へと露出させることができると共に、ELシートの保持も可能となるため好ましい。
【0013】
さらにまた、前記ELシートは、弾性変形(除荷後に元に戻る変形)域で曲げられた状態で前記保持部により保持されてインサート成形されていると、ELシートを破損することなくインサート成形することができるため好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ELシートを固定体に保持した状態で該固定体と共に成形体により一体にインサート成形しているため、該ELシートの破損を低減することができ、しかもELシートを外部環境から遮断することができる。従って、ELシートへの水分の浸入を確実に防止して、発光体等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシートが外面に露出しないため、発光装置の外観を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る発光装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置10が組み込まれた自動二輪車のハンドルスイッチ部14及びその周辺部を示す概略正面図である。本実施形態に係る発光装置10は、ELシート12a、12b(図3参照)がインサート成形されることにより、ハンドルスイッチ部14に設けられるハイビームインジケータ16及びロービームインジケータ18や、パッシングインジケータ20や、ターンシグナルインジケータ22等を点灯させるためのものである。本実施形態では、自動二輪車のハンドルスイッチ部14を例示して本発明に係る発光装置を説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、自動車のパワーウインドスイッチやコンビネーションスイッチ、ガーニッシュ等の内装部品や外装部品、携帯電話や家電製品等の外装部品等、表示部等を内側から点灯させる種類の照明部分であれば好適に用いることができる。
【0017】
図1に示すように、ハンドルスイッチ部14は、自動二輪車のハンドルを構成するハンドルパイプ24とグリップ26の間に配設されて、運転者が、例えば、グリップ26を把持したまま親指で容易に操作することができる。このようなハンドルスイッチ部14は略半円柱状に形成され(図2参照)、曲面で構成される外面側には、ハイビーム及びロービームを切り換えるビームスイッチ28と、ターンシグナルを切り換えるターンシグナルスイッチ30と、図示しないパッシングスイッチとが設けられる。そして、夜間やライト点灯中には、発光装置10により各インジケータが点灯され、運転者は各スイッチ28、30の状態や位置を確実に視認することができる。
【0018】
図2は、図1に示すハンドルスイッチ部14に組み込まれる本実施形態に係る発光装置10の分解斜視図である。
【0019】
図2に示すように、発光装置10は、固定体(1次成形体)32と、該固定体32の外面側に保持されるELシート12a、12bと、前記ELシート12a、12bを覆うようにして前記固定体32の外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36とにより構成される。すなわち、前記ELシート12a、12bは固定体32と共に、成形体36により一体にインサート成形される。
【0020】
先ず、前記ELシート12a、12bの構造について、図3を参照して説明する。図3は、ELシート12aの構造の一例を示す概略縦断面図である。なお、ELシート12a、12bは、夫々の装着部分に対応する外形形状が異なる以外、その構造は略同一である。従って、ここではELシート12aの構造についての説明のみを行い、ELシート12bについての説明は省略する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の場合、ELシート12aは、発光しない側である最も背面側(図3では下面側)の層が背面保護板38により構成され、該背面保護板38上に複数の層が順次積層されて形成され、全体の厚さは0.3mm程度とされる。前記背面保護板38は、例えば、アルミニウムやポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム等により形成される。
【0022】
前記背面保護板38上には、背面電極40が形成される。該背面電極40は、例えば、アルミニウムや銅合金、カーボン等により形成される。
【0023】
前記背面電極40上には、絶縁層42が形成される。該絶縁層42は、例えば、絶縁コート剤をスクリーン印刷等により印刷することにより形成される。
【0024】
前記絶縁層42上には、発光層44が形成される。該発光層44は、例えば、銅(Cu)をドープした硫化亜鉛(ZnS)を発光体とする発光インクが印刷されて形成される。
【0025】
前記発光層44上には、透明電極46が形成される。該透明電極46は、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)が蒸着されるか、又は、該ITOの針状結晶をバインダ樹脂に分散させたものが印刷されて形成される。
【0026】
前記透明電極46上には、表面基板48が形成される。該表面基板48は、例えば、ガラス基板やPET樹脂フィルムにより形成される。
【0027】
このように各層が積層されたELシート12aでは、背面保護板38及び表面基板48を除く各層、すなわち、背面電極40から透明電極46までの各層の該端部がシール剤50によってシールされて1枚のシート体として構成される。前記シール剤50は、接着剤や熱溶着により形成される。そして、発光層44での光が、発光する側(図3では上面側)である透明電極46及び表面基板48を透過することにより発光装置10の発光部として機能する。
【0028】
図2に示すように、固定体32は、発光装置10の内側部分を構成すると共に、成形体36が射出成形される際にELシート12a、12bを固定保持する機能を果たす。該固定体32は略半円柱状且つ中空に形成され、曲面で構成される外面側には、前記ELシート12a、12bが配置される位置決め凹部52a、52bと、前記ビームスイッチ28が臨むスイッチ孔54とが形成される。前記位置決め凹部52a、52bは、夫々ELシート12a、12bと略同一形状である。このような固定体32の内側空間には、前記ビームスイッチ28やターンシグナルスイッチ30を取り付けた図示しない制御基板等が配設される。
【0029】
前記位置決め凹部52aの幅広な上端側には、ELシート12aの幅広な側の端部56が挿入される溝部58が形成される。該位置決め凹部52aの狭幅な下端側には、ELシート12aの狭幅な側の端部59に取り付けられる給電用の金属製の端子60が挿入されて貫通する孔部62が形成される。
【0030】
前記位置決め凹部52bの一端側(図2では右端側)両角部には、ELシート12bの一方の端部64の両角部が挿入される一対の溝部66、66が形成される。該位置決め凹部52bの他端側(図2では左端側)には、ELシート12bの他方の端部68に取り付けられる給電用の金属製の端子70が挿入されて貫通する孔部72が形成される。
【0031】
前記成形体36は、前記位置決め凹部52a、52bが形成されない以外は前記固定体32と外形略同形状であって、その内側空間に前記固定体32が収納されるため固定体32より多少大きく形成される。
【0032】
このような成形体36は、曲面で構成される外面側に前記固定体32のスイッチ孔54を挿通したビームスイッチ28が臨むスイッチ孔74が形成される。さらに、成形体36の外面側には、ハイビームインジケータ16、ロービームインジケータ18、パッシングインジケータ20及びターンシグナルインジケータ22が形成される。
【0033】
従って、ELシート12a、12bを保持した固定体32を覆うように、成形体36が射出されると、ELシート12a、12bは該固定体32と共に、成形体36により一体的にインサート成形される。この際、ハイビームインジケータ16、ロービームインジケータ18及びパッシングインジケータ20はELシート12aに重なり、ターンシグナルインジケータ22はELシート12bに重なるように設けられる(図6及び図7参照)。
【0034】
この場合、固定体32及び成形体36は、例えば、ガラスを添加した6ナイロンにより形成される。また成形後の成形体の外面には所望の塗料が吹き付け等により塗布されると共に、各インジケータ部分の塗装が除去されて、各インジケータを、ELシート12a、12bの発光により点灯させることが可能となる。
【0035】
次に、基本的には以上のように構成される発光装置10の成形方法について、主に図4及び図5を参照して説明する。図4は、図2に示す発光装置10を構成する固定体32を成形する様子を示す概略分解斜視図であり、図5は、図4に示す固定体32の外側に成形体36を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【0036】
この場合、先ず、1次成形体である固定体32を射出成形する。すなわち、図4に示すように、固定体32の背面側(内面側)を成形する固定金型76と、固定体32の前面側(外面側)を成形する第1移動金型78とにより形成されるキャビティに、樹脂(例えば、6ナイロン)を射出して固定体32を成形する。その後、固定金型76はそのままに、第1移動金型78を離間させる。
【0037】
次いで、このように成形された固定体32の位置決め凹部52a、52bに、夫々ELシート12a、12bの発光する側である表面基板48側が外側を指向するように位置決め固定する。
【0038】
この際、ELシート12aが固定される位置決め凹部52aは曲面で構成される。すなわち、ELシート12aを曲げ変形(弾性変形)させた状態で、該ELシート12aの端部56を溝部58へと挿入すると共に、端子60を孔部62へと挿入すると共に、固定金型76に形成された端子保持孔77へと挿入して固定する。これにより、ELシート12aは位置決め凹部52aに嵌め込まれた状態で、該位置決め凹部52aの壁面の曲面形状に沿って確実に保持される。同様にして、ELシート12bも溝部66、孔部72と、固定金型76の端子保持孔79により位置決め凹部52bに嵌め込み、保持させる。このように、前記溝部58、66及び前記孔部62、72は、位置決め凹部52a、52b及び端子保持孔77、79と共に、前記ELシート12a、12bを保持する保持部として機能する。
【0039】
続いて、2次成形体である成形体36を射出成形する。すなわち、図5に示すように、固定金型76に支持され、且つELシート12a、12bを保持した固定体32の前面側に、成形体36の前面側(外面側)を形成する第2移動金型80を配置して形成されるキャビティに、樹脂(例えば、6ナイロン)を射出して成形体36を成形する。その後、第2移動金型80を離間させると共に、固定金型76から成形品である発光装置10を取り外す。
【0040】
これにより、図6及び図7に示すように、固定体32上にELシート12a、12bを挟んで(包んで)成形体36が成形され、すなわち、ELシート12a、12bがインサート成形された発光装置10が成形される。
【0041】
なお、図4に示す固定体32の成形時において、前記溝部58、66は、例えば、第1移動金型78をスライドさせ、該第1移動金型78又は固定金型76に形成された図示しない溝部成形部により容易に成形することができる。この場合、前記スライドによるパーティングライン(金型の分割線)がELシート12a、12bの裏側(位置決め凹部52a、52b上)に生じ、ELシート12a、12bによる発光に影響を及ぼす可能性がある。そこで、このような場合、ELシート12a、12bにより点灯されるハイビームインジケータ16等の位置に重ならない位置に前記パーティングラインが形成されるようにして、位置決め凹部52a、52bや溝部58、66の配置を設定しておくことが好ましい。
【0042】
また、上記各金型において、樹脂を射出するゲート位置は、ELシート12a、12bの発光する面側以外の部分に設けることが好ましい。ゲート付近は、高温且つ高圧になるため、発光する面が破損することを防ぐためである。
【0043】
ところで、前記2次成形体である成形体36の射出成形時において、射出される樹脂の圧力によってELシート12a、12bは、位置決め凹部52a、52bの壁面に押圧される。この際、ELシート12a、12bは、溝部58、66や孔部62、72にて多少移動が許容された余裕を持って保持されている。これにより、前記樹脂の圧力により押圧されるELシート12a、12bは、位置決め凹部52a、52bの壁面に沿って滑らかに張った状態でインサート成形されるため、該成形時におけるELシート12a、12bの破損を有効に防止することができる。すなわち、このような成形方法は、発光装置10のように、ELシートの取り付け面が曲面で構成されている場合に特に適用することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る発光装置10では、ELシート12a、12bを固定体32と共に、成形体36により一体にインサート成形することにより、該ELシート12a、12bは外部環境から遮断される。このため、ELシート12a、12bへの水分の浸入を確実に防止して、発光層44等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシート12a、12bが外面に露出しないため、発光装置10の外観を向上させることができ、すなわち、ハンドルスイッチ部14の外観を向上させることができる。また、発光装置10では、このようにELシート12a、12bを確実に封止(インサート)するためにも、固定体32は、成形体36と外形略同形状で構成されることが好ましい。
【0045】
しかも、この場合、ELシート12a、12bに給電するための端子60、70だけは、固定体32に形成される孔部62、72を介して該固定体32の内側部分に露出している。これにより、ELシート12a、12bは、上記のようにインサート成形された状態であっても、固定体32の内側空間に配設される制御基板等に容易に接続し、給電することが可能となる。なお、前記端子60、70は、成形体36側から露出させるようにしてもよい。
【0046】
また、上記従来技術では、ELシートに対して曲げ加工及びインサート成形の合計2回の負荷(ストレス)を付与していたが、本実施形態の場合には、ELシート12a、12bは弾性変形域で曲げ変形され、固定体32に保持された状態でインサート成形される。すなわち、このような弾性変形域での曲げ変形では、上記従来技術のような塑性変形とは異なり、ELシート12a、12bに破損を生じるような負荷がかかることはなく、インサート成形時での負荷のみで成形することができる。従って、発光装置10では、上記従来技術に比べて、ELシート12a、12bにおける破損の発生を大幅に低減することが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、ELシート12a、12bは固定体32に形成された溝部58、66や孔部62、72により保持するものとしたが、これに限らず、位置決め凹部52a、52bの壁面に対して、ELシート12a、12bを接着剤や両面テープ等により貼り付け固定することもできる。ただし、このようにELシート12a、12bを貼り付け固定する場合には、ELシート12a、12bに段差や撓み等が生じないようにする必要がある。すなわち、このような場合、ELシート12a、12bには移動が許容されていない状態となるため、前記段差や撓み等がある場合には、成形体36の射出成形時に射出される樹脂の圧力によって、ELシート12a、12bに破損を生じる可能性があるためである。
【0048】
上記実施形態では、固定金型76及び第1移動金型78により固定体32を成形した後、続けて、成形体36によりELシート12a、12bのインサート成形を行うものとしたが、必ずしも前記固定体32の成形を成形体36の成形直前に行う必要はない。すなわち、固定体32は、予め別途成形しておいたものを用いてもよく、さらには、金属等により形成されるものを用いてもよく、成形体36と外形略同形状で構成されていればよい。
【0049】
また、ELシート12a、12bが保持される位置決め凹部52a、52bの壁面は曲面ではなく、例えば、平面であってもよいことは言うまでもない。
【0050】
前記ELシート12a、12bの保持方法は、固定体32に保持する以外にも、例えば、固定金型76に保持してもよいし、両方にて保持するようにしてもよい。
【0051】
なお、上記したように、本発明に係る発光装置は、上記実施形態の発光装置10のような自動二輪車のハンドルスイッチ部14以外にも有効に適用することができる。
【0052】
図8は、本発明に係る発光装置の自動車のパワーウインドスイッチへの適用例を示しており、パワーウインドスイッチに組み込まれた発光装置10aの分解斜視図である。発光装置10aは、固定体(1次成形体)32aと、該固定体32aの外面側に保持されるELシート12cと、前記ELシート12cを覆うようにして前記固定体32aの外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36aとにより構成されている。
【0053】
このような発光装置10aにおいても上記発光装置10の場合と同様に、固定体32aの外面側にはELシート12cが配置される位置決め凹部52cが形成され、該位置決め凹部52cの一端側には、ELシート12cの端部56aが挿入される溝部58aが形成される。該位置決め凹部52cの他端側には、ELシート12cの端子60aが挿入されて貫通する孔部62aが形成される。そして、ELシート12cを保持した固定体32aを覆うように、成形体36aが射出されると、ELシート12cは該固定体32aと共に、成形体36aにより一体的にインサート成形される。この際、パワーウインドスイッチインジケータ(AUTO)82はELシート12cに重なるように設けられる。
【0054】
図9は、本発明に係る発光装置の自動車のガーニッシュへの適用例を示しており、自動車の内装や外装に用いられるガーニッシュに組み込まれた発光装置10bの分解斜視図である。発光装置10bは、固定体(1次成形体)32bと、該固定体32bの外面側に保持されるELシート12dと、前記ELシート12dを覆うようにして前記固定体32bの外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36bとにより構成されている。
【0055】
このような発光装置10bにおいても上記発光装置10等の場合と同様に、固定体32bの外面側にはELシート12dが配置される位置決め凹部52dが形成され、該位置決め凹部52dの一端側には、ELシート12dの端部56bが挿入される溝部58bが形成される。該位置決め凹部52dの他端側には、ELシート12dの端子60bが挿入されて貫通する孔部62bが形成される。そして、ELシート12dを保持した固定体32bを覆うように、成形体36bが射出されると、ELシート12dは該固定体32bと共に、成形体36bにより一体的にインサート成形される。この際、成形体36bの外表面であるガーニッシュ表面84はELシート12dに重なるように設けられる。
【0056】
図10は、本発明に係る発光装置の自動車のコンビネーションスイッチ86への適用例を示す正面図であり、図11は、図10に示すコンビネーションスイッチ86に組み込まれた発光装置10cの分解斜視図である。
【0057】
図10に示すように、コンビネーションスイッチ86は、スイッチケース88に基端側が揺動可能に取り付けられた操作レバー90を有し、該操作レバー90の先端側に発光装置10cが取り付けられている。この場合、発光装置10cを構成する成形体36c(図11参照)は、操作レバー90に対して回転可能な回転ノブとして機能する。
【0058】
このようなコンビネーションスイッチ86では、回転ノブである成形体36cを回転させることにより、該成形体36cに設けられるポジションインジケータ92の位置を、ワイパー(図示せず)の作動状態を示す表示マーク94の各位置(OFF、INT、LO)に設定することができる。
【0059】
図11に示すように、発光装置10cは、固定体(1次成形体)32cと、該固定体32cの外面側に保持されるELシート12eと、前記ELシート12eを覆うようにして前記固定体32cの外面側(前面側)に射出成形される前記回転ノブとしての成形体(2次成形体)36cとにより構成されている。
【0060】
このような発光装置10cにおいても上記発光装置10等の場合と同様に、固定体32cの外面側にはELシート12eが配置される位置決め凹部52eが形成され、該位置決め凹部52eの一端側には、ELシート12eの端部56cが挿入される溝部58cが形成される。該位置決め凹部52eの他端側には、ELシート12eの端子60cが挿入されて貫通する孔部62cが形成される。そして、ELシート12eを保持した固定体32cを覆うように、成形体36cが射出されると、ELシート12eは該固定体32cと共に、成形体36cにより一体的にインサート成形される。この際、ポジションインジケータ92は、ELシート12eに重なるように設けられる。発光装置10cでは、成形体36cが操作レバー90に回動可能に設けられることにより、該成形体36cが回転ノブとして機能する。
【0061】
なお、コンビネーションスイッチ86では、上記のようにポジションインジケータ92をELシート12eにより点灯させるだけでなく、操作レバー90に設けられた表示マーク94を点灯させるように構成してもよい。このような場合には、操作レバー90内の表示マーク94の内側位置にELシートをインサート成形すればよい。
【0062】
以上のような発光装置10a〜10cにおいても、発光装置10の場合と同様に、固定金型、第1移動金型及び第2移動金型等を用いることにより、ELシートを容易に且つ確実にインサート成形することができることは言うまでもない。
【0063】
なお、上記実施形態により本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0064】
例えば、ELシートの保持部として機能する溝部や孔部は、その保持性を確実なものとするために、1枚のELシートにつき少なくとも2個(例えば、溝部1個と孔部1個)以上設けることが好ましく、例えば、溝部を2個設置して且つ孔部を1個設置する等してもよい。
【0065】
さらにまた、本発明の発光装置に適用されるELシートは、図3に示す構成以外にも、各種構造により構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置が組み込まれた自動二輪車のハンドルスイッチ部及びその周辺部を示す概略正面図である。
【図2】図1に示すハンドルスイッチ部に組み込まれる本実施形態に係る発光装置の分解斜視図である。
【図3】ELシートの構造の一例を示す概略縦断面図である。
【図4】図2に示す発光装置を構成する固定体を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【図5】図4に示す固定体の外側に成形体を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【図6】図2に示す発光装置の概略正面図である。
【図7】図6中の線VII−VIIにおける断面図である。
【図8】本発明に係る発光装置の自動車のパワーウインドスイッチへの適用例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る発光装置の自動車のガーニッシュへの適用例を示す分解斜視図である。
【図10】本発明に係る発光装置の自動車のコンビネーションスイッチへの適用例を示す正面図である。
【図11】図10に示すコンビネーションスイッチに組み込まれた発光装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10、10a〜10c…発光装置 12a〜12e…ELシート
14…ハンドルスイッチ部 32、32a〜32c…固定体
36、36a〜36c…成形体 38…背面保護板
40…背面電極 42…絶縁層
44…発光層 46…透明電極
48…表面基板 50…シール剤
52a〜52e…位置決め凹部 54、74…スイッチ孔
58、58a〜58c、66…溝部 60、60a〜60c、70…端子
62、62a〜62c、72…孔部 76…固定金型
78…第1移動金型 80…第2移動金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、ELシートをインサート成形した発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装部品や、携帯電話・家電製品等の外装部品を発光させるため、EL(Electro Luminescence)シートをインサート成形した発光装置が提案されている。
【0003】
この種の発光装置において、特許文献1には、曲げ変形させたELシートの少なくとも背面電極層の外面、つまり、発光しない側の面の外面に樹脂成形品を一体的に設けた構成が記載されている。この場合、接着層が形成されたELシートを、湾曲部を有する形状に予め塑性変形(永久変形、曲げ加工)させておく。そして、前記塑性変形させたELシートを射出成形金型のキャビティ形成面に配置した状態で樹脂を射出すると共に、該樹脂の熱により前記接着層の接着剤を溶融させてELシートを樹脂に接着して、インサート成形している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−92189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなELシートは非常に薄く、例えば、厚さ0.3mm程度に形成されるため、外部衝撃や急激な曲げに弱い。従って、上記特許文献1に記載の技術のようにELシートを塑性変形させた場合には、該塑性変形が施された曲げ部分において電極層が破損して、短絡等により発光しない部分を生じる可能性がある。
【0006】
さらに、上記特許文献1に記載の発光装置の場合には、その外面側にELシートが露出している。従って、このような発光装置は、例えば、自動二輪車のスイッチ部分等に搭載して風雨に晒された際に、ELシート内部の発光体が吸水し、該発光体の劣化が進行して輝度が低下する。
【0007】
本発明は、係る従来の課題を考慮してなされたものであり、例えば、曲面を有する部分であってもELシートが破損を生じることなくインサート成形することができると共に、ELシートの防水性を高めることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光装置は、ELシートをインサート成形した発光装置であって、前記ELシートの一方の面側に配置され、前記インサート成形される前のELシートを所望の位置に保持する保持部を有した固定体と、前記ELシートの他方の面側に配置され、前記固定体に保持されたELシートを覆うように射出成形されることにより、前記固定体及びELシートを一体にインサート成形した成形体とを有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、前記ELシートを固定体に保持した状態で該固定体と共に前記成形体によりインサート成形しているため、該ELシートの破損を低減することができると共に、ELシートを外部環境から遮断することができる。従って、ELシートへの水分の浸入を確実に防止して、発光体等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシートが外面に露出しないため、発光装置の外観が向上する。
【0010】
この場合、前記ELシートは、前記保持部により所望の曲げ状態で保持されるように構成することもできる。
【0011】
さらに、前記ELシートは、給電用の端子のみが、前記固定体又は成形体から露出した状態でインサート成形されていると、ELシートが成形体にインサート成形された状態であっても、防水性等を確保した状態で該ELシートを外部の制御基板等に容易に接続することができる。
【0012】
この場合、1枚のELシートは2個以上の前記保持部により保持され、前記保持部の少なくとも1個は前記ELシートの一端部が挿入される溝部であり、他の少なくとも1個は前記端子が挿入される孔部であると、該端子を容易に外部へと露出させることができると共に、ELシートの保持も可能となるため好ましい。
【0013】
さらにまた、前記ELシートは、弾性変形(除荷後に元に戻る変形)域で曲げられた状態で前記保持部により保持されてインサート成形されていると、ELシートを破損することなくインサート成形することができるため好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ELシートを固定体に保持した状態で該固定体と共に成形体により一体にインサート成形しているため、該ELシートの破損を低減することができ、しかもELシートを外部環境から遮断することができる。従って、ELシートへの水分の浸入を確実に防止して、発光体等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシートが外面に露出しないため、発光装置の外観を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る発光装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置10が組み込まれた自動二輪車のハンドルスイッチ部14及びその周辺部を示す概略正面図である。本実施形態に係る発光装置10は、ELシート12a、12b(図3参照)がインサート成形されることにより、ハンドルスイッチ部14に設けられるハイビームインジケータ16及びロービームインジケータ18や、パッシングインジケータ20や、ターンシグナルインジケータ22等を点灯させるためのものである。本実施形態では、自動二輪車のハンドルスイッチ部14を例示して本発明に係る発光装置を説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、自動車のパワーウインドスイッチやコンビネーションスイッチ、ガーニッシュ等の内装部品や外装部品、携帯電話や家電製品等の外装部品等、表示部等を内側から点灯させる種類の照明部分であれば好適に用いることができる。
【0017】
図1に示すように、ハンドルスイッチ部14は、自動二輪車のハンドルを構成するハンドルパイプ24とグリップ26の間に配設されて、運転者が、例えば、グリップ26を把持したまま親指で容易に操作することができる。このようなハンドルスイッチ部14は略半円柱状に形成され(図2参照)、曲面で構成される外面側には、ハイビーム及びロービームを切り換えるビームスイッチ28と、ターンシグナルを切り換えるターンシグナルスイッチ30と、図示しないパッシングスイッチとが設けられる。そして、夜間やライト点灯中には、発光装置10により各インジケータが点灯され、運転者は各スイッチ28、30の状態や位置を確実に視認することができる。
【0018】
図2は、図1に示すハンドルスイッチ部14に組み込まれる本実施形態に係る発光装置10の分解斜視図である。
【0019】
図2に示すように、発光装置10は、固定体(1次成形体)32と、該固定体32の外面側に保持されるELシート12a、12bと、前記ELシート12a、12bを覆うようにして前記固定体32の外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36とにより構成される。すなわち、前記ELシート12a、12bは固定体32と共に、成形体36により一体にインサート成形される。
【0020】
先ず、前記ELシート12a、12bの構造について、図3を参照して説明する。図3は、ELシート12aの構造の一例を示す概略縦断面図である。なお、ELシート12a、12bは、夫々の装着部分に対応する外形形状が異なる以外、その構造は略同一である。従って、ここではELシート12aの構造についての説明のみを行い、ELシート12bについての説明は省略する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の場合、ELシート12aは、発光しない側である最も背面側(図3では下面側)の層が背面保護板38により構成され、該背面保護板38上に複数の層が順次積層されて形成され、全体の厚さは0.3mm程度とされる。前記背面保護板38は、例えば、アルミニウムやポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム等により形成される。
【0022】
前記背面保護板38上には、背面電極40が形成される。該背面電極40は、例えば、アルミニウムや銅合金、カーボン等により形成される。
【0023】
前記背面電極40上には、絶縁層42が形成される。該絶縁層42は、例えば、絶縁コート剤をスクリーン印刷等により印刷することにより形成される。
【0024】
前記絶縁層42上には、発光層44が形成される。該発光層44は、例えば、銅(Cu)をドープした硫化亜鉛(ZnS)を発光体とする発光インクが印刷されて形成される。
【0025】
前記発光層44上には、透明電極46が形成される。該透明電極46は、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)が蒸着されるか、又は、該ITOの針状結晶をバインダ樹脂に分散させたものが印刷されて形成される。
【0026】
前記透明電極46上には、表面基板48が形成される。該表面基板48は、例えば、ガラス基板やPET樹脂フィルムにより形成される。
【0027】
このように各層が積層されたELシート12aでは、背面保護板38及び表面基板48を除く各層、すなわち、背面電極40から透明電極46までの各層の該端部がシール剤50によってシールされて1枚のシート体として構成される。前記シール剤50は、接着剤や熱溶着により形成される。そして、発光層44での光が、発光する側(図3では上面側)である透明電極46及び表面基板48を透過することにより発光装置10の発光部として機能する。
【0028】
図2に示すように、固定体32は、発光装置10の内側部分を構成すると共に、成形体36が射出成形される際にELシート12a、12bを固定保持する機能を果たす。該固定体32は略半円柱状且つ中空に形成され、曲面で構成される外面側には、前記ELシート12a、12bが配置される位置決め凹部52a、52bと、前記ビームスイッチ28が臨むスイッチ孔54とが形成される。前記位置決め凹部52a、52bは、夫々ELシート12a、12bと略同一形状である。このような固定体32の内側空間には、前記ビームスイッチ28やターンシグナルスイッチ30を取り付けた図示しない制御基板等が配設される。
【0029】
前記位置決め凹部52aの幅広な上端側には、ELシート12aの幅広な側の端部56が挿入される溝部58が形成される。該位置決め凹部52aの狭幅な下端側には、ELシート12aの狭幅な側の端部59に取り付けられる給電用の金属製の端子60が挿入されて貫通する孔部62が形成される。
【0030】
前記位置決め凹部52bの一端側(図2では右端側)両角部には、ELシート12bの一方の端部64の両角部が挿入される一対の溝部66、66が形成される。該位置決め凹部52bの他端側(図2では左端側)には、ELシート12bの他方の端部68に取り付けられる給電用の金属製の端子70が挿入されて貫通する孔部72が形成される。
【0031】
前記成形体36は、前記位置決め凹部52a、52bが形成されない以外は前記固定体32と外形略同形状であって、その内側空間に前記固定体32が収納されるため固定体32より多少大きく形成される。
【0032】
このような成形体36は、曲面で構成される外面側に前記固定体32のスイッチ孔54を挿通したビームスイッチ28が臨むスイッチ孔74が形成される。さらに、成形体36の外面側には、ハイビームインジケータ16、ロービームインジケータ18、パッシングインジケータ20及びターンシグナルインジケータ22が形成される。
【0033】
従って、ELシート12a、12bを保持した固定体32を覆うように、成形体36が射出されると、ELシート12a、12bは該固定体32と共に、成形体36により一体的にインサート成形される。この際、ハイビームインジケータ16、ロービームインジケータ18及びパッシングインジケータ20はELシート12aに重なり、ターンシグナルインジケータ22はELシート12bに重なるように設けられる(図6及び図7参照)。
【0034】
この場合、固定体32及び成形体36は、例えば、ガラスを添加した6ナイロンにより形成される。また成形後の成形体の外面には所望の塗料が吹き付け等により塗布されると共に、各インジケータ部分の塗装が除去されて、各インジケータを、ELシート12a、12bの発光により点灯させることが可能となる。
【0035】
次に、基本的には以上のように構成される発光装置10の成形方法について、主に図4及び図5を参照して説明する。図4は、図2に示す発光装置10を構成する固定体32を成形する様子を示す概略分解斜視図であり、図5は、図4に示す固定体32の外側に成形体36を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【0036】
この場合、先ず、1次成形体である固定体32を射出成形する。すなわち、図4に示すように、固定体32の背面側(内面側)を成形する固定金型76と、固定体32の前面側(外面側)を成形する第1移動金型78とにより形成されるキャビティに、樹脂(例えば、6ナイロン)を射出して固定体32を成形する。その後、固定金型76はそのままに、第1移動金型78を離間させる。
【0037】
次いで、このように成形された固定体32の位置決め凹部52a、52bに、夫々ELシート12a、12bの発光する側である表面基板48側が外側を指向するように位置決め固定する。
【0038】
この際、ELシート12aが固定される位置決め凹部52aは曲面で構成される。すなわち、ELシート12aを曲げ変形(弾性変形)させた状態で、該ELシート12aの端部56を溝部58へと挿入すると共に、端子60を孔部62へと挿入すると共に、固定金型76に形成された端子保持孔77へと挿入して固定する。これにより、ELシート12aは位置決め凹部52aに嵌め込まれた状態で、該位置決め凹部52aの壁面の曲面形状に沿って確実に保持される。同様にして、ELシート12bも溝部66、孔部72と、固定金型76の端子保持孔79により位置決め凹部52bに嵌め込み、保持させる。このように、前記溝部58、66及び前記孔部62、72は、位置決め凹部52a、52b及び端子保持孔77、79と共に、前記ELシート12a、12bを保持する保持部として機能する。
【0039】
続いて、2次成形体である成形体36を射出成形する。すなわち、図5に示すように、固定金型76に支持され、且つELシート12a、12bを保持した固定体32の前面側に、成形体36の前面側(外面側)を形成する第2移動金型80を配置して形成されるキャビティに、樹脂(例えば、6ナイロン)を射出して成形体36を成形する。その後、第2移動金型80を離間させると共に、固定金型76から成形品である発光装置10を取り外す。
【0040】
これにより、図6及び図7に示すように、固定体32上にELシート12a、12bを挟んで(包んで)成形体36が成形され、すなわち、ELシート12a、12bがインサート成形された発光装置10が成形される。
【0041】
なお、図4に示す固定体32の成形時において、前記溝部58、66は、例えば、第1移動金型78をスライドさせ、該第1移動金型78又は固定金型76に形成された図示しない溝部成形部により容易に成形することができる。この場合、前記スライドによるパーティングライン(金型の分割線)がELシート12a、12bの裏側(位置決め凹部52a、52b上)に生じ、ELシート12a、12bによる発光に影響を及ぼす可能性がある。そこで、このような場合、ELシート12a、12bにより点灯されるハイビームインジケータ16等の位置に重ならない位置に前記パーティングラインが形成されるようにして、位置決め凹部52a、52bや溝部58、66の配置を設定しておくことが好ましい。
【0042】
また、上記各金型において、樹脂を射出するゲート位置は、ELシート12a、12bの発光する面側以外の部分に設けることが好ましい。ゲート付近は、高温且つ高圧になるため、発光する面が破損することを防ぐためである。
【0043】
ところで、前記2次成形体である成形体36の射出成形時において、射出される樹脂の圧力によってELシート12a、12bは、位置決め凹部52a、52bの壁面に押圧される。この際、ELシート12a、12bは、溝部58、66や孔部62、72にて多少移動が許容された余裕を持って保持されている。これにより、前記樹脂の圧力により押圧されるELシート12a、12bは、位置決め凹部52a、52bの壁面に沿って滑らかに張った状態でインサート成形されるため、該成形時におけるELシート12a、12bの破損を有効に防止することができる。すなわち、このような成形方法は、発光装置10のように、ELシートの取り付け面が曲面で構成されている場合に特に適用することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る発光装置10では、ELシート12a、12bを固定体32と共に、成形体36により一体にインサート成形することにより、該ELシート12a、12bは外部環境から遮断される。このため、ELシート12a、12bへの水分の浸入を確実に防止して、発光層44等の劣化を有効に抑えることができる。さらに、ELシート12a、12bが外面に露出しないため、発光装置10の外観を向上させることができ、すなわち、ハンドルスイッチ部14の外観を向上させることができる。また、発光装置10では、このようにELシート12a、12bを確実に封止(インサート)するためにも、固定体32は、成形体36と外形略同形状で構成されることが好ましい。
【0045】
しかも、この場合、ELシート12a、12bに給電するための端子60、70だけは、固定体32に形成される孔部62、72を介して該固定体32の内側部分に露出している。これにより、ELシート12a、12bは、上記のようにインサート成形された状態であっても、固定体32の内側空間に配設される制御基板等に容易に接続し、給電することが可能となる。なお、前記端子60、70は、成形体36側から露出させるようにしてもよい。
【0046】
また、上記従来技術では、ELシートに対して曲げ加工及びインサート成形の合計2回の負荷(ストレス)を付与していたが、本実施形態の場合には、ELシート12a、12bは弾性変形域で曲げ変形され、固定体32に保持された状態でインサート成形される。すなわち、このような弾性変形域での曲げ変形では、上記従来技術のような塑性変形とは異なり、ELシート12a、12bに破損を生じるような負荷がかかることはなく、インサート成形時での負荷のみで成形することができる。従って、発光装置10では、上記従来技術に比べて、ELシート12a、12bにおける破損の発生を大幅に低減することが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、ELシート12a、12bは固定体32に形成された溝部58、66や孔部62、72により保持するものとしたが、これに限らず、位置決め凹部52a、52bの壁面に対して、ELシート12a、12bを接着剤や両面テープ等により貼り付け固定することもできる。ただし、このようにELシート12a、12bを貼り付け固定する場合には、ELシート12a、12bに段差や撓み等が生じないようにする必要がある。すなわち、このような場合、ELシート12a、12bには移動が許容されていない状態となるため、前記段差や撓み等がある場合には、成形体36の射出成形時に射出される樹脂の圧力によって、ELシート12a、12bに破損を生じる可能性があるためである。
【0048】
上記実施形態では、固定金型76及び第1移動金型78により固定体32を成形した後、続けて、成形体36によりELシート12a、12bのインサート成形を行うものとしたが、必ずしも前記固定体32の成形を成形体36の成形直前に行う必要はない。すなわち、固定体32は、予め別途成形しておいたものを用いてもよく、さらには、金属等により形成されるものを用いてもよく、成形体36と外形略同形状で構成されていればよい。
【0049】
また、ELシート12a、12bが保持される位置決め凹部52a、52bの壁面は曲面ではなく、例えば、平面であってもよいことは言うまでもない。
【0050】
前記ELシート12a、12bの保持方法は、固定体32に保持する以外にも、例えば、固定金型76に保持してもよいし、両方にて保持するようにしてもよい。
【0051】
なお、上記したように、本発明に係る発光装置は、上記実施形態の発光装置10のような自動二輪車のハンドルスイッチ部14以外にも有効に適用することができる。
【0052】
図8は、本発明に係る発光装置の自動車のパワーウインドスイッチへの適用例を示しており、パワーウインドスイッチに組み込まれた発光装置10aの分解斜視図である。発光装置10aは、固定体(1次成形体)32aと、該固定体32aの外面側に保持されるELシート12cと、前記ELシート12cを覆うようにして前記固定体32aの外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36aとにより構成されている。
【0053】
このような発光装置10aにおいても上記発光装置10の場合と同様に、固定体32aの外面側にはELシート12cが配置される位置決め凹部52cが形成され、該位置決め凹部52cの一端側には、ELシート12cの端部56aが挿入される溝部58aが形成される。該位置決め凹部52cの他端側には、ELシート12cの端子60aが挿入されて貫通する孔部62aが形成される。そして、ELシート12cを保持した固定体32aを覆うように、成形体36aが射出されると、ELシート12cは該固定体32aと共に、成形体36aにより一体的にインサート成形される。この際、パワーウインドスイッチインジケータ(AUTO)82はELシート12cに重なるように設けられる。
【0054】
図9は、本発明に係る発光装置の自動車のガーニッシュへの適用例を示しており、自動車の内装や外装に用いられるガーニッシュに組み込まれた発光装置10bの分解斜視図である。発光装置10bは、固定体(1次成形体)32bと、該固定体32bの外面側に保持されるELシート12dと、前記ELシート12dを覆うようにして前記固定体32bの外面側(前面側)に射出成形される成形体(2次成形体)36bとにより構成されている。
【0055】
このような発光装置10bにおいても上記発光装置10等の場合と同様に、固定体32bの外面側にはELシート12dが配置される位置決め凹部52dが形成され、該位置決め凹部52dの一端側には、ELシート12dの端部56bが挿入される溝部58bが形成される。該位置決め凹部52dの他端側には、ELシート12dの端子60bが挿入されて貫通する孔部62bが形成される。そして、ELシート12dを保持した固定体32bを覆うように、成形体36bが射出されると、ELシート12dは該固定体32bと共に、成形体36bにより一体的にインサート成形される。この際、成形体36bの外表面であるガーニッシュ表面84はELシート12dに重なるように設けられる。
【0056】
図10は、本発明に係る発光装置の自動車のコンビネーションスイッチ86への適用例を示す正面図であり、図11は、図10に示すコンビネーションスイッチ86に組み込まれた発光装置10cの分解斜視図である。
【0057】
図10に示すように、コンビネーションスイッチ86は、スイッチケース88に基端側が揺動可能に取り付けられた操作レバー90を有し、該操作レバー90の先端側に発光装置10cが取り付けられている。この場合、発光装置10cを構成する成形体36c(図11参照)は、操作レバー90に対して回転可能な回転ノブとして機能する。
【0058】
このようなコンビネーションスイッチ86では、回転ノブである成形体36cを回転させることにより、該成形体36cに設けられるポジションインジケータ92の位置を、ワイパー(図示せず)の作動状態を示す表示マーク94の各位置(OFF、INT、LO)に設定することができる。
【0059】
図11に示すように、発光装置10cは、固定体(1次成形体)32cと、該固定体32cの外面側に保持されるELシート12eと、前記ELシート12eを覆うようにして前記固定体32cの外面側(前面側)に射出成形される前記回転ノブとしての成形体(2次成形体)36cとにより構成されている。
【0060】
このような発光装置10cにおいても上記発光装置10等の場合と同様に、固定体32cの外面側にはELシート12eが配置される位置決め凹部52eが形成され、該位置決め凹部52eの一端側には、ELシート12eの端部56cが挿入される溝部58cが形成される。該位置決め凹部52eの他端側には、ELシート12eの端子60cが挿入されて貫通する孔部62cが形成される。そして、ELシート12eを保持した固定体32cを覆うように、成形体36cが射出されると、ELシート12eは該固定体32cと共に、成形体36cにより一体的にインサート成形される。この際、ポジションインジケータ92は、ELシート12eに重なるように設けられる。発光装置10cでは、成形体36cが操作レバー90に回動可能に設けられることにより、該成形体36cが回転ノブとして機能する。
【0061】
なお、コンビネーションスイッチ86では、上記のようにポジションインジケータ92をELシート12eにより点灯させるだけでなく、操作レバー90に設けられた表示マーク94を点灯させるように構成してもよい。このような場合には、操作レバー90内の表示マーク94の内側位置にELシートをインサート成形すればよい。
【0062】
以上のような発光装置10a〜10cにおいても、発光装置10の場合と同様に、固定金型、第1移動金型及び第2移動金型等を用いることにより、ELシートを容易に且つ確実にインサート成形することができることは言うまでもない。
【0063】
なお、上記実施形態により本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0064】
例えば、ELシートの保持部として機能する溝部や孔部は、その保持性を確実なものとするために、1枚のELシートにつき少なくとも2個(例えば、溝部1個と孔部1個)以上設けることが好ましく、例えば、溝部を2個設置して且つ孔部を1個設置する等してもよい。
【0065】
さらにまた、本発明の発光装置に適用されるELシートは、図3に示す構成以外にも、各種構造により構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置が組み込まれた自動二輪車のハンドルスイッチ部及びその周辺部を示す概略正面図である。
【図2】図1に示すハンドルスイッチ部に組み込まれる本実施形態に係る発光装置の分解斜視図である。
【図3】ELシートの構造の一例を示す概略縦断面図である。
【図4】図2に示す発光装置を構成する固定体を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【図5】図4に示す固定体の外側に成形体を成形する様子を示す概略分解斜視図である。
【図6】図2に示す発光装置の概略正面図である。
【図7】図6中の線VII−VIIにおける断面図である。
【図8】本発明に係る発光装置の自動車のパワーウインドスイッチへの適用例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る発光装置の自動車のガーニッシュへの適用例を示す分解斜視図である。
【図10】本発明に係る発光装置の自動車のコンビネーションスイッチへの適用例を示す正面図である。
【図11】図10に示すコンビネーションスイッチに組み込まれた発光装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10、10a〜10c…発光装置 12a〜12e…ELシート
14…ハンドルスイッチ部 32、32a〜32c…固定体
36、36a〜36c…成形体 38…背面保護板
40…背面電極 42…絶縁層
44…発光層 46…透明電極
48…表面基板 50…シール剤
52a〜52e…位置決め凹部 54、74…スイッチ孔
58、58a〜58c、66…溝部 60、60a〜60c、70…端子
62、62a〜62c、72…孔部 76…固定金型
78…第1移動金型 80…第2移動金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELシートをインサート成形した発光装置であって、
前記ELシートの一方の面側に配置され、前記インサート成形される前のELシートを所望の位置に保持する保持部を有した固定体と、
前記ELシートの他方の面側に配置され、前記固定体に保持されたELシートを覆うように射出成形されることにより、前記固定体及びELシートを一体にインサート成形した成形体と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1記載の発光装置において、
前記ELシートは、前記保持部により所望の曲げ状態で保持されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発光装置において、
前記ELシートは、給電用の端子のみが、前記固定体又は成形体から露出した状態でインサート成形されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3記載の発光装置において、
1枚のELシートは2個以上の前記保持部により保持され、
前記保持部の少なくとも1個は前記ELシートの一端部が挿入される溝部であり、他の少なくとも1個は前記端子が挿入される孔部であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記ELシートは、弾性変形域で曲げられた状態で前記保持部により保持されてインサート成形されていることを特徴とする発光装置。
【請求項1】
ELシートをインサート成形した発光装置であって、
前記ELシートの一方の面側に配置され、前記インサート成形される前のELシートを所望の位置に保持する保持部を有した固定体と、
前記ELシートの他方の面側に配置され、前記固定体に保持されたELシートを覆うように射出成形されることにより、前記固定体及びELシートを一体にインサート成形した成形体と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1記載の発光装置において、
前記ELシートは、前記保持部により所望の曲げ状態で保持されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発光装置において、
前記ELシートは、給電用の端子のみが、前記固定体又は成形体から露出した状態でインサート成形されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3記載の発光装置において、
1枚のELシートは2個以上の前記保持部により保持され、
前記保持部の少なくとも1個は前記ELシートの一端部が挿入される溝部であり、他の少なくとも1個は前記端子が挿入される孔部であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光装置において、
前記ELシートは、弾性変形域で曲げられた状態で前記保持部により保持されてインサート成形されていることを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−158150(P2008−158150A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345463(P2006−345463)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000222934)東洋電装株式会社 (69)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000222934)東洋電装株式会社 (69)
【Fターム(参考)】
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