説明

発光装置

【課題】複数のLEDランプ間などでの発光色のばらつきが抑制され、均一で安定した高効率の発光が得られる発光装置を提供する。
【解決手段】本発明の発光装置は、青色LEDチップのような発光素子と、近似した比重を有する2種類以上の蛍光体と、これらの蛍光体のうちで最も比重が大きい蛍光体の20%以上の比重を有する透明樹脂を含む蛍光体含有樹脂層とを備えている。2種類以上の蛍光体は、互いに類似した形状を有することが好ましく、さらに近似した平均粒径(D50が7〜20μm)を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードランプなどの発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light
Emitting Diode)を用いたLEDランプは、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末などのバックライト、屋内外広告など、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。また、LEDランプは、長寿命で信頼性が高く、低消費電力、耐衝撃性、高純度表示色、軽薄短小化の実現などの特徴を有することから、産業用途のみならず一般照明用途への適用も試みられている。このようなLEDランプを種々の用途に適用する場合、白色発光を得ることが重要となる。
【0003】
LEDランプで白色発光を実現する代表的な方式としては、(1)青、緑および赤の各色に発光する3つのLEDチップを使用する方式、(2)青色発光のLEDチップと黄色ないし橙色発光の蛍光体とを組合せる方式、(3)紫外線発光のLEDチップと青色、緑色および赤色発光の三色混合蛍光体とを組合せる方式、の3つが挙げられる。一般的には、これらのうちで(2)の方式が広く実用化されている。
【0004】
上記した(2)の方式を適用したLEDランプとしては、LEDチップを装備したカップ型のフレーム内に、透明樹脂に蛍光体を混合し分散させた蛍光体分散液を流し込み、これを固化させて蛍光体を含有する樹脂層を形成した分散型のものが提示されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような砲弾型やSMD(Surface Mounting Device)タイプのLEDランプに加えて、高輝度化を目的に、基板(ボード)の上に複数のLEDチップを搭載し、蛍光体含有樹脂層により被覆したチップオンボード(COB)タイプのものが開発され、注目されている。
【0005】
一般照明用のLEDランプに求められる特性としては、高い発光効率に加え、色の見え方の指標としての演色性がある。演色性は、自然光に近い光を基準光にして光源による色の見え方を評価したものであり、JISに定められている試験色を、試料光源と基準光でそれぞれ照明したときの色ずれの大きさを数値化したものが演色評価数である。演色評価数には、平均演色評価数Raと特殊演色評価数Riがある。平均演色評価数Raは、試験No.1〜8の演色評価数の平均値として表され、特殊演色評価数Riは、試験No.9〜15の個々の特殊演色評価数として表される。平均演色評価数Raは、基準光源である白色光源による色彩を忠実に再現しているかを指数で表したもので、原則として100に近いほど演色性が良い。
【0006】
一般に、平均演色評価数Raの高い、いわゆる高演色タイプのLEDランプにおいては、黄色光ないし橙色光を発光する黄色系蛍光体に加えて、窒化物系や硫化物系などの赤色発光の蛍光体を配合することにより、演色性を向上させることが行われていた。しかし、赤色蛍光体は、LEDチップからの波長460nmの青色発光だけでなく、黄色系蛍光体から発光される緑色光から黄色光間の光をも吸収して励起に使用するため、赤色蛍光体を使用するとLEDランプの発光効率が大幅に下がるという問題があった。
【0007】
そこで最近は、発光の主波長が500nm前後の緑色蛍光体を併せて使用して、LEDチップからの青色発光と黄色系蛍光体からの発光との間の発光スペクトルの谷間を埋めることで、できるだけ太陽光のスペクトルに近づけ、Raをさらに向上させる試みがなされている(例えば、特許文献2参照)。さらに、HIDランプ、電球、蛍光ランプなどとの対応で、光色としての色温度についても、6500K、5000K、4200K、3000K(場合によっては2850K)までのラインナップが必要とされており、各色温度において所望の効率および平均演色評価数Raが要求されている。したがって、照明用のLEDランプにおいては、いろいろな要求に応えるために蛍光体を混合する傾向はますます進行している。そして従来から、混色により所望の色調が得られるように、発光の主波長に着目して蛍光体の種類を選定し、複数種類の蛍光体を組合せて配合することが行われている。
【0008】
しかしながら、このような選定および配合方法では、複数種類の蛍光体をシリコーン樹脂などの透明樹脂に添加し混合した蛍光体分散液において、各蛍光体粒子の分散状態が不均一になりやすかった。そして、このような蛍光体分散液の各部(例えば上部と下部)での蛍光体粒子の分散状態は、時間の経過とともにますます不均一になりやすかった。
【0009】
そして、このように蛍光体粒子の分散状態が不均一である分散液を、LEDチップ上に塗布・実装して複数のLEDランプを作製したとき、各LEDランプで発光の色(色調)のばらつきが大きくなるという問題があった。また、このような複数のLEDランプ間での発光色のばらつきだけでなく、1つのLEDランプにおいても、蛍光体含有樹脂層内の発光が各部で不均一になり、安定した高効率の発光が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−148516号公報
【特許文献2】特開2003−327518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、複数のLEDランプ間などでの発光色のばらつきが抑制され、均一で安定した高効率の発光が得られる発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発光装置は、発光素子と;透明樹脂と前記発光素子から放射された光により励起されて主波長が異なる可視光を発光する2種類以上の蛍光体をそれぞれ含み、前記発光素子上に形成されてなる層であり、前記2種類以上の蛍光体は近似した比重を有し、かつ前記透明樹脂は、前記蛍光体のうちで最も比重が大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有するものであって、さらに前記2種類以上の蛍光体の粒子は、いずれも類似した形状かつ近似した粒径を有する蛍光体含有樹脂層と;を具備することを特徴としている。
【0013】
本発明において、用語の定義および技術的意味は、特に指定しない限り以下の通りである。
【0014】
発光素子は、放射した光により蛍光体を励起して可視光を発光させるものである。本発明に用いられる発光素子としては、例えば、青色発光タイプのLEDチップや紫外発光タイプのLEDチップなどが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではなく、蛍光体を励起して可視光を発光させることが可能な発光素子であれば、発光装置の用途や目的とする発光色などに応じて、種々の発光素子を使用することができる。
【0015】
このような発光素子は、例えば基材上に搭載される。基材は、例えば回路パターンやリード端子のような配線部を有する基板を有しており、この基板上に発光素子が搭載される。また、基板上に外部に開口した凹部を有するフレームを配置し、このフレームと基板とにより基材を構成してもよく、さらにフレームを使用せずに直接基板上に凹部を形成して基材としてもよい。このように基材が凹部を有する場合は、凹部内に発光素子が配置される。
【0016】
蛍光体は、このような発光素子から放射された光(例えば青色光)により励起されて可視光を発光し、この可視光と発光素子から放射される光との混色によって、発光装置として所望の発光色を得るものである。本発明において蛍光体としては、発光の主波長が異なる2種類以上の蛍光体が使用される。なお、蛍光体の種類については、蛍光体を構成する元素の種類や数、組合せが同じものは、組成が同一でなくても蛍光体の種類が同じものとする。
【0017】
これら2種類以上の蛍光体は、いずれも近似した比重を有するものである。ここで、比重が近似しているとは、本発明の作用を有する関係であればよいものであるが、好適な範囲としては、蛍光体の間の比重の差が2以下であること、すなわち、最も比重が大きい蛍光体の比重の値と最も比重が小さい蛍光体の比重の値との差が2以下であるものである。
【0018】
蛍光体の比重の差が2以下であると、蛍光体分散液を調製した後比較的長い時間が経過しても、発光色のばらつきが生じにくい。したがって、例えば任意の量の蛍光体分散液を複数の発光素子における製造工程で使用する際には、各発光素子の発光色のばらつきが抑制されるため、製品の品質および生産性を効果的に向上させることができる。各蛍光体の分散状態の均一性の点からは、蛍光体間の比重の差は小さいほどよく、同一の比重を有する2種類以上の蛍光体を使用することが最も好ましい。
【0019】
また、これら2種類以上の蛍光体の粒子は、いずれも類似した形状を有し、かつ近似した粒径を有するものであることが好ましい。
【0020】
ここで、類似した形状とは以下のことを意味する。すなわち、蛍光体粒子の形状は、球形、楕円球形(あるいはラグビーボール形状)、板状、および針状の4つのグループに分けることができるものとし、それぞれのグループに分類されるもの同士は、類似した形状を有するものとする。
【0021】
なお、前記4つの形状の特徴は、短径/長径の値で表すことができ、この値が1.0〜0.9のものを球形、0.8〜0.4のものを楕円球形、0.35以下のものを針状と規定することもできる。なお、板状のものでもよい。そして、このような短径/長径の値で規定された形状のグループが同じ蛍光体同士を、互いに類似した形状とすることができる。また、この短径/長径の値が同一であるか、あるいは極めて近似している蛍光体同士を、類似した形状とすることも可能である。
【0022】
本発明において、蛍光体粒子の粒径は平均粒径とすることができる。特に、粒度分布の積算値50%を平均粒径としたD50を示すものとすることができる。なお、平均粒径(D50)は、低粒子径から積算し全体の蛍光体量の50容量%に至る粒子の大きさを示すものであり、例えばレーザ回折法で測定することができる。
【0023】
蛍光体含有樹脂層は、これらの蛍光体をシリコーン樹脂やエポキシ樹脂のような透明樹脂に加えて混合・分散させた層として形成される。発光素子の外側を覆うように形成することができる。透明樹脂としては、前記した蛍光体のうちで最も比重の大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有するものを使用する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発光装置によれば、蛍光体分散液における各蛍光体の分散状態が均一となるので、複数の発光装置間で生じる色調のばらつき、あるいは1つの発光装置内でも複数の発光部間で生じる色調のばらつきを低減することができる。加えて、蛍光体分散液における蛍光体の沈降が生じにくくなる。そのため、蛍光体分散液の各部(例えば、上部と下部)の蛍光体含有割合が経時的に変化しにくく安定し、発光色のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の発光装置の第1の実施形態であるLEDランプの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すLEDランプを複数配置したLEDモジュールの一例を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の発光装置の第2の実施形態であるLEDランプを示す平面図である。
【図5】図4のF−F線断面図である。
【図6】本発明の実施例1および実施例2で得られたLEDランプの各サンプルの発光の色度を示す色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に参照する複数の図面において、同一または相当部分には同一符号を付している。図1は、本発明の発光装置の第1の実施形態としてのLEDランプの構成を示す断面図、図2は、図1に示すLEDランプを例えば一平面上に3行3列のマトリックス状に複数配置したLEDモジュール21の一例を示す平面図、図3は、図2のIII−III 線断面図である。
【0027】
図1乃至図3に示すLEDランプ1は、発光素子としてLEDチップ2を有している。LEDチップ2としては、例えば青色発光タイプのLEDチップが用いられている。このLEDチップ2は、基板3上に電気絶縁層4を介して設けられた回路パターン5上に搭載されている。
【0028】
基板3は、放熱性と剛性を有するアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ガラスエポキシ等の平板から成る。また、回路パターン5は、銅(Cu)とニッケル(Ni)の合金、金(Au)等により構成され、陽極側と陰極側の回路パターン5を有している。LEDチップ2は、一方(例えば陽極側)の回路パターン5上に載置されて底面電極が電気的に接続され、上面電極が他方(例えば陰極側)の回路パターン5にボンディングワイヤ6により電気的に接続されている。基板3上には、上方に向けて徐々に拡径する円錐台状の凹部7を形成するフレーム8が設けられており、LEDチップ2はこの凹部7内に配置されている。フレーム8は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート(PC)等により形成されており、凹部7は、例えば深さが0.5〜1.0mmの円錐台状に形成されている。
【0029】
LEDチップ2が配置された凹部7内には、透明樹脂(熱硬化性樹脂)を主体とし、主波長の異なる2種類以上の蛍光体を含有する蛍光体含有樹脂層9が設けられており、LEDチップ2はこの蛍光体含有樹脂層9により凹部7内に封止されている。主波長の異なる2種類以上の蛍光体は、蛍光体間の比重の差が2以下であり、すなわち最も比重が大きい蛍光体と最も比重が小さい蛍光体の比重の差が2以下であり、近似した比重を有している。また、これらの蛍光体を含有する透明樹脂は、最も比重の大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有している。
【0030】
さらに、2種類以上の蛍光体は、いずれも類似した形状を有するものであることが好ましい。すなわち、2種類以上の蛍光体の粒子形状は、そのいずれもが球形であるか、楕円球形(あるいはラグビーボール形状)であるか、板状であるか、針状であるかというように、同じグループの形状に属している。2種類以上の蛍光体の粒子は、いずれも球形であることがより好ましい。球形は、短径/長径の値が正確に1.0である真球形だけでなく、球形に近い形状(例えば、短径/長径の値が1.0〜0.9)も含むものとする。
【0031】
また、このような類似した粒子形状を有する2種類以上の蛍光体は、いずれも平均粒径(D50)が7〜20μmの範囲にあり、極めて近似した平均粒径(D50)を有することが好ましい。なお、平均粒径(D50)は、低粒子径から積算し全体の蛍光体量の50容量%に至る粒子の大きさを示すものであり、例えばレーザ回折法で測定することができる。
【0032】
蛍光体粒子の平均粒径(D50)が7μm未満であると、十分な発光効率が得られ難くなる。一方、20μmを超えると、例えばディスペンサを用いて蛍光体を実装する際に、ノズルが詰まってしまうといった問題が生じる。蛍光体粒子の平均粒径(D50)は、例えば、製造工程で篩い分けなどの分級処理を実施することにより制御することができる。
【0033】
蛍光体含有樹脂層9は、液状の透明樹脂(熱硬化性樹脂)に2種類以上の前記蛍光体を混合・分散させた蛍光体含有樹脂(蛍光体分散液)を、ディスペンサなどの注入装置を用いてLEDチップ2が配置された凹部7内に注入し、加熱硬化させることにより形成されている。透明樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。液状のシリコーン樹脂の使用が好ましく、注入の容易さの観点から、25℃における粘度が1〜70Pa・sのシリコーン樹脂の使用が特に好ましい。2種類以上の前記蛍光体が混合・分散された蛍光体含有樹脂の注入量は、ほぼ5〜10mgである。なお、図面では、蛍光体含有樹脂層9の上面が凹部7の上端とほぼ面一に形成されているが、特にこれに限定されるものではない。透明樹脂に含有させる2種類以上の蛍光体の主波長は、特に限定されるものではなく、目的とするLEDランプ1の発光色などに応じて適宜選択することができる。
【0034】
蛍光体としては、例えば、青色発光タイプのLEDチップ2から発光される青色光により励起されて黄色光から橙色光間の光を発光する黄色系蛍光体が用いられる。また、主波長が500〜535nmの緑色あるいは黄緑色蛍光体と、主波長が630〜650nmの赤色蛍光体の少なくとも一方を前記黄色系蛍光体とともに用いることができる。ここで、青色光により励起されて黄色光から橙色光間の光を発光する黄色系蛍光体としては、例えばRE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体(REはY、GdおよびLaから選ばれる少なくとも1種を示す。以下同じ。)等のYAG系蛍光体、AE2SiO4:Eu蛍光体(AEは、Sr、Ba、Caなどのアルカリ土類元素を示す。以下同じ。)やSr3SiO5:Eu2+蛍光体等のケイ酸塩(シリケート)蛍光体、サイアロン系蛍光体(例えば、CaxSiyAlzON:Eu2+)、およびCa3Sc2O4:Ce蛍光体等があり、これらの中から選択される。緑色あるいは黄緑色蛍光体としては、例えばRE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体等のYAG系蛍光体、AE2SiO4:Eu蛍光体やCa3Sc2Si3O12:Ce蛍光体等のケイ酸塩蛍光体、サイアロン系蛍光体(例えば、CaxSiyAlzON:Eu2+)、およびCa3Sc2O4:Ce蛍光体等があり、これらの中から選択される。赤色蛍光体としては、La2O2S:Eu蛍光体のような酸硫化物蛍光体、窒化物系蛍光体(例えば、AE2Si5N8:Eu2+やCaAlSiN3:Eu2+)等が用いられるが、特に限定されるものではない。
【0035】
このように構成されるLEDランプ1では、印加された電気エネルギーがLEDチップ2で主波長が420〜480nm(例えば460nm)の青色光に変換されて放射され、放射された青色光は、蛍光体含有樹脂層9中に含有された2種類以上の蛍光体で、より長波長の光に変換される。そして、LEDチップ2から放射される青色光とこれらの蛍光体の発光色とに基づく色である白色光がLEDランプ1から放出される。そして、このLEDランプ1においては、2種類以上の蛍光体が近似した比重を有しており、かつこれらの蛍光体が混合・分散される透明樹脂が、蛍光体のうちで最も比重が大きい蛍光体の20%以上の比重を有するように構成されているので、蛍光体分散液におけるそれぞれの蛍光体粒子の分散状態が均一となるうえに、蛍光体分散液における蛍光体の沈降が生じにくくなる。したがって、蛍光体分散液の各部(例えば、上部と下部)の蛍光体含有割合が経時的に変化しにくく安定し、複数のLEDランプ1間で生じる発光色のばらつきを低減することができる。
【0036】
図4および図5は、本発明の発光装置の第2の実施形態であるLEDパッケージを形成する発光装置を示している。図4は、この発光装置の平面図であり、図5は、図4に示す発光装置をF−F線に沿って切断した縦断面図である。なお、図4および図5おいて、第1の実施形態に係る発光装置の構成と同一の構成部分には、同一の符号を付して、その説明を簡略化または省略する。
【0037】
図4および図5に示す発光装置(LEDランプ)1は、パッケージ基板例えば装置基板3と、反射層31と、回路パターン5と、複数好ましくは多数の半導体発光素子例えばLEDチップ2と、接着層32と、リフレクタ34と、蛍光体含有樹脂層9と、光拡散部材33とを備えて形成されている。蛍光体含有樹脂層9は封止部材としても機能する。
【0038】
装置基板3は、金属または絶縁材、例えば合成樹脂製の平板からなり、発光装置1に必要とされる発光面積を得るために、所定形状例えば長方形状をなしている。装置基板3を合成樹脂製とする場合、例えば、ガラス粉末入りのエポキシ樹脂などで形成することができる。装置基板3を金属製とする場合は、この装置基板3の裏面からの放熱性が向上し、装置基板3の各部温度を均一にすることができ、同じ波長域の光を発する半導体発光素子2の発光色のばらつきを抑制することができる。なお、このような作用効果を奏する金属材料としては、10W/m・K以上の熱伝導性に優れた材料、具体的にはアルミニウムまたはその合金を例示することができる。
【0039】
反射層31は、所定数の半導体発光素子2を配設し得る大きさであって、例えば、装置基板3の表面全体に被着されている。反射層31は、400〜740nmの波長領域で85%以上の反射率を有する白色の絶縁材料により構成することができる。このような白色絶縁材料としては、接着シートからなるプリプレグ(pre-preg)を使用することができる。このようなプリプレグは、例えば、酸化アルミニウムなどの白色粉末が混入された熱硬化性樹脂をシート基材に含浸させて形成することができる。反射層31はそれ自体の接着性により、装置基板3の表面となる一面に接着される。
【0040】
回路パターン5は、各半導体発光素子2への通電要素として、反射層31の装置基板3が接着された面とは反対側の面に接着されている。この回路パターン5は、例えば各半導体発光素子2を直列に接続するために、装置基板3および反射層31の長手方向に所定間隔ごとに点在して2列に形成されている。一方の回路パターン5の列の一端側に位置する端側回路パターン5aには、給電パターン部5cが一体に連続して形成され、同様に他方の回路パターン5の列の一端側に位置する端側回路パターン5aには、給電パターン部5dが一体に連続して形成されている。給電パターン部5c,5dは反射層31の長手方向一端部に並べて設けられ、互いに離間して反射層31により絶縁されている。これらの給電パターン部5c,5dのそれぞれに、電源に至る図示しない電線が個別に半田付けなどで接続されるようになっている。回路パターン5は以下に説明する手順で形成される。まず、未硬化の前記熱硬化性樹脂が含浸されたプリプレグからなる反射層31を装置基板3上に貼付けた後、反射層31上にこれと同じ大きさの銅箔を貼付ける。次に、こうして得た積層体を加熱するとともに加圧して、熱硬化性樹脂を硬化させることによって、装置基板3と銅箔を反射層31に圧着し接着を完了させる。次いで、銅箔上にレジスト層を設けて、銅箔をエッチング処理した後に、残ったレジスト層を除去することによって、回路パターン5を形成する。銅箔からなる回路パターン5の厚みは例えば35μmである。
【0041】
各半導体発光素子2は、例えば窒化物半導体を用いてなるダブルワイヤ型のLEDチップからなり、透光性を有する素子基板2b一面に半導体発光層2aを積層して形成されている。素子基板2bは、例えばサファイア基板で作られている。この素子基板2bの厚みは、回路パターン5より厚く、例えば90μmとする。半導体発光層2aは、素子基板2bの主面上に、バッファ層、n型半導体層、発光層、p型クラッド層、p型半導体層を順次積層して形成されている。発光層は、バリア層とウェル層を交互に積層した量子井戸構造をなしている。n型半導体層にはn側電極が設けられ、p型半導体層上にはp側電極が設けられている。この半導体発光層2aは、反射膜を有しておらず、厚み方向の双方に光を放射できる。
【0042】
各半導体発光素子2は、装置基板3の長手方向に隣接した回路パターン5間にそれぞれ配置され、白色の反射層31の同一面上に接着層32により接着されている。具体的には、半導体発光層2aが積層された素子基板2bの一面と平行な他面が、接着層32により反射層31に接着されている。この接着により、回路パターン5および半導体発光素子2は反射層31の同一面上で直線状に並べられるので、この並び方向に位置した半導体発光素子2の側面と回路パターン5とは、近接して対向するように設けられている。
【0043】
接着層32の厚みは、例えば5μm以下とすることができる。接着層32には、例えば5μm以下の厚みで光透過率が70%以上の透光性を有した接着剤、例えばシリコーン樹脂系の接着剤を好適に使用できる。各半導体発光素子2の電極と半導体発光素子2の両側に近接配置された回路パターン5とは、ボンディングワイヤ6で接続されている。さらに、前記2列の回路パターン5列の他端側に位置された端側回路パターン5b同士も、ボンディングワイヤ6で接続されている。したがって、この実施形態の場合、各半導体発光素子2は直列に接続されている。以上の装置基板3、反射層31、回路パターン5、各半導体発光素子2、接着層32、およびボンディングワイヤ6により、発光装置1の面発光源が形成されている。
【0044】
リフレクタ34は、一個一個または数個の半導体発光素子2ごとに個別に設けられるものではなく、反射層31上の全ての半導体発光素子2を包囲する単一のものであり、例えば図4に示すように、長方形の枠で形成されており、半導体発光素子2は前記枠で形成された凹部7内に配置されている。リフレクタ34は反射層31に接着止めされていて、その内部に複数の半導体発光素子2および回路パターン5が収められているとともに、前記一対の給電パターン部5c、5dはリフレクタ34の外部に位置されている。リフレクタ34は、例えば合成樹脂で成形することができ、その内周面は反射面となっている。リフレクタ34の反射面は、AlやNiなどの反射率の高い金属材料を蒸着またはメッキして形成することができる他、可視光の反射率の高い白色塗料を塗布して形成することができる。あるいは、リフレクタ34の成形材料中に白色粉末を混入して、リフレクタ34自体を可視光の反射率が高い白色にすることもできる。前記白色粉末としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどの白色フイラーを用いることができる。なお、リフレクタ34の反射面は、発光装置1の照射方向に次第に開くように形成することが望ましい。
【0045】
蛍光体含有樹脂層9は、第1の実施形態と同様に形成されている。すなわち、互いに近似した比重を有し主波長の異なる2種類以上の蛍光体を、これらの蛍光体のうちで最も比重の大きい蛍光体の20%以上の比重を有する透明樹脂中に分散させた蛍光体含有樹脂層9が設けられている。そして、このような蛍光体含有樹脂層9は、液状の透明樹脂に、前記2種類以上の蛍光体を混合・分散して得られた蛍光体分散液を、ディスペンサなどの注入装置を用いて、反射層31表面および一直線上に配列された各半導体発光素子2およびボンディングワイヤ6などを満遍なく埋めるようにして充填し、次いで熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成されている。
【0046】
このように構成される実施形態においても、蛍光体分散液におけるそれぞれの蛍光体粒子の分散状態が均一となるので、複数のLEDランプ1間あるいは1つのLEDランプ1の各部で生じる発光色のばらつきを低減することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の具体的実施例およびその評価結果について記載する。
実施例1
【0048】
極めて近似した比重(差が0.2以下)を有する3種類の蛍光体を、最も比重が大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有するシリコーン樹脂に混合し、蛍光体分散液を調製した。そして、この蛍光体分散液を使用して、図1に示す構成を有するLEDランプを3サンプル作製し、色温度5000K付近での色調のばらつきを調べた。
【0049】
すなわち、主波長(ピーク波長)が535nmで比重が4.8の緑色蛍光体(粒子形状が球形でD50が12μm)と、ピーク波長が570nmで比重が4.9の黄色蛍光体(粒子形状が球形でD50が11μm)、およびピーク波長が615nmで比重が4.7の赤色蛍光体(粒子形状が球形でD50が15μm)を、比重1のシリコーン樹脂中に混合し分散させた。なお、緑色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体の配合割合は、それぞれシリコーン樹脂に対して4.4重量%、2.6重量%および2.0重量%とした。
【0050】
次いで、こうして得られた3種類の蛍光体を含有するシリコーン樹脂液を、波長460nmの青色光を発光するLEDチップが配置された深さ1.0mm、開口径3mmのカップ(凹部)内に、ディスペンサで塗布・充填した後、シリコーン樹脂を硬化させ、図1に示す構成を有するLEDランプを3サンプル作製した。なお、3つのサンプルの作製には30分程度の時間を要した。また、各蛍光体の平均粒径(D50)は、レーザ回折式粒度分布測定装置HOLIBA LA−300((株)堀場製作所製)により測定した値である。さらに、青色LEDチップからの発光の色度x,yのばらつきは、各サンプル間で0.0001以下になるようにした。
実施例2
【0051】
各蛍光体間の比重の差が実施例1よりも大きいが、十分に近似した比重を有する(比重の差が2以下)3種類の蛍光体を、最も比重が大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有するシリコーン樹脂に混合し、蛍光体分散液を調製した。すなわち、ピーク波長が525nmで比重が4の緑色蛍光体(粒子が針状でD50が7μm)と、ピーク波長が562nmで比重が5.0の黄色蛍光体(粒子形状が球形でD50が15μm)、およびピーク波長が650nmで比重が3の赤色蛍光体(粒子形状が球形でD50が8μm)を、比重1のシリコーン樹脂中にそれぞれ混合し、分散させた。
【0052】
次いで、こうして得られた3種類の蛍光体を含有するシリコーン樹脂液を使用し、実施例1と同様にして図1に示す構成を有するLEDランプを3サンプル作製した。
【0053】
次に、実施例1および実施例2で得られたLEDランプをそれぞれ発光させ、瞬間分光光度計MCPD−7000(大塚電子(株)社製)で発光スペクトルを測定した。そして、得られた発光スペクトルから、色度と色温度を各サンプルについてそれぞれ算出した。また、duvの値を求めた。これらの測定結果を、表1および図6(の色度座標)に示す。なお、duvは、発光装置からの発光(白色光)の色ずれを、色度図における黒体輻射の軌跡からの偏差として表したものである。
【0054】
【表1】

【0055】
表1および図6から明らかなように、実施例1および実施例2で得られたLEDランプは、色温度5000K付近で各サンプル間の色調のばらつきが少なく、蛍光体分散液調製後の時間経過による発光色のばらつきが低減されていることがわかる。特に、実施例1のLEDランプにおいては、極めて近似した比重(比重の差が0.2以下)を有し、かつ粒子形状が同一の球形で近似した平均粒径(D50)を有する3種類の蛍光体が使用されているので、各サンプル間の色調のばらつきがほとんどなく、蛍光体分散液調製後の経時的な発光色のばらつきが、実施例2のLEDランプよりさらに解消されていることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
1…LEDランプ、2…LEDチップ、3…基板、4…電気絶縁層、5…回路パターン、6…ボンディングワイヤ、7…凹部、8…フレーム、9…蛍光体含有樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と;
透明樹脂と前記発光素子から放射された光により励起されて主波長が異なる可視光を発光する2種類以上の蛍光体をそれぞれ含み、前記発光素子上に形成されてなる層であり、前記2種類以上の蛍光体は近似した比重を有し、かつ前記透明樹脂は、前記蛍光体のうちで最も比重が大きい蛍光体の比重の20%以上の比重を有するものであって、さらに前記2種類以上の蛍光体の粒子は、いずれも類似した形状かつ近似した粒径を有する蛍光体含有樹脂層と;
を具備することを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−272894(P2010−272894A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190584(P2010−190584)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【分割の表示】特願2008−129799(P2008−129799)の分割
【原出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】