説明

発光装置

【課題】小型化、薄型化が容易な上、光取り出し効率の低下を防ぐことができる発光装置を提供する。
【解決手段】本発明は、基台と、前記基台に配置された発光素子と、前記発光素子を覆う波長変換層とを含む発光装置であって、前記波長変換層は、前記発光素子からの光の波長を変換する波長変換部と、透光性材料からなる光ガイド部とを含み、前記ガイド部の径は10〜200μmであり、前記ガイド部の間隔は30〜300μmであり、前記光ガイド部は、平均粒径が1nm〜100nmの金属酸化物粒子を含有し、且つ前記波長変換層の前記発光素子側から光取り出し側に向かって延びていることを特徴とする発光装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」と称する。)等の発光素子は、各種の発光デバイスに使用されている。LEDは、放電や輻射を使った既存光源に比べて小型で高効率であるだけでなく、近年では高光束化も進んできたことから、既存光源に取って代わる可能性がある。また、LEDは、放電や輻射を使った光源に比べて小型であることから、用途が増えること、取り扱いが容易になること、多様なデザインが期待できることなどの利点があり、付加価値の高い光源である。
【0003】
更に、LEDは、反射機能やレンズ機能を有する光学系と組み合わせることで、出射光の放射パターンを制御することができる。また、数mm角のLEDチップを用いれば、小型の点光源と見なすことが出来るので、光学系も小型にすることができる。
【0004】
一方、LEDチップと、このLEDチップからの光の一部の波長を変換する蛍光体を含む波長変換層とを組み合わせて白色LEDを構成した場合、LEDチップ以外に波長変換層も含めて発光部と見なすことになるので、発光部のサイズが少なくともLEDチップ自体より大きくなってしまう。
【0005】
発光部から発する光量をできるだけ有効に利用して、発光装置からの出射光とするためには、発光部よりも十分大きいサイズの光学系を使うか、光学系よりも十分小さい寸法の発光部であることが望ましい。光学系を出来るだけ小さくして、発光装置の小型、薄型化を実現するためには、出来るだけ小さな波長変換層であることが必要となる。波長変換層のサイズを小さくする構造として、以下の特許文献1や特許文献2のように高濃度の蛍光体を分散した樹脂ペーストを使って、LEDチップの周囲に波長変換層を立体的に形成する構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−135861号公報
【特許文献2】米国特許第6,650,044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な白色LEDでは、LEDチップからの出射光と波長変換層からの変換光とを合成して白色光を得ている。あるいは、波長変換層での変換光が白色光となる場合もある。特許文献1、2にあげた構造では、高濃度の蛍光体がLEDチップの周囲に存在することから、LEDチップからの出射光と蛍光体で変換された変換光が蛍光体に遮られ、波長変換層の通過光量が減少する。また、LEDチップからの出射光の一部が、蛍光体で反射されてLEDチップに再吸収されたり、LEDチップの電極で吸収されたりする場合もある。このため、白色光として取り出せる効率が低下する可能性がある。
【0008】
高効率で白色光を取り出すためには、蛍光体の濃度を低くすればよいが、そうすると、波長変換層のサイズが大きくなり、これに伴い光学系のサイズも大きくなるため、小型、薄型の発光装置を実現するという目的を妨げることとなる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、小型化、薄型化が容易な上、光取り出し効率の低下を防ぐことができる発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発光装置は、基台と、前記基台に配置された発光素子と、前記発光素子を覆う波長変換層とを含む発光装置であって、前記波長変換層は、前記発光素子からの光の波長を変換する波長変換部と、透光性材料からなる光ガイド部とを含み、前記ガイド部の径は、10〜200μmであり、前記ガイド部の間隔は、30〜300μmであり、前記光ガイド部は、平均粒径が1nm〜100nmの金属酸化物粒子を含有し、且つ前記波長変換層の前記発光素子側から光取り出し側に向かって延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発光装置によれば、波長変換層内に透光性材料からなる光ガイド部が配置されているため、発光素子からの光が波長変換材料で反射されて発光素子へ再吸収されることを防止できる。また、波長変換材料の濃度を低くする必要がないため、波長変換層のサイズを小さくできる。即ち、本発明の発光装置によれば、小型化、薄型化が容易な上、光取り出し効率の低下を防ぐことができる発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは本発明の第1実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図1Bは図1Aに示す発光装置の概略断面図である。
【図2】図2A〜Dは、本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す概略断面図である。
【図3】図3Aは本発明の第2実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図3Bは図3Aに示す発光装置の概略断面図である。
【図4】図4A〜Cは、本発明の第3実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図5】図5A,Bは、本発明の第3実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図6】図6A〜Dは、本発明の第4実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図7】図7A,Bは、本発明の第4実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図8】図8は、本発明の第5実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【図9】図9A〜Eは、本発明の第6実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図10】図10Aは本発明の第7実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図10Bは図10Aに示す発光装置の概略断面図である。
【図11】図11A,Bは、本発明の第7実施形態に係る発光装置の変形例を示す概略上面図である。
【図12】図12A〜Cは、本発明の第8実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図13】図13A,Bは、本発明の第8実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。
【図14】図14は、本発明の第9実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【図15】図15は、本発明の第9実施形態に係る発光装置の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発光装置は、基台と、前記基台に配置された発光素子と、前記発光素子を覆う波長変換層とを含む。発光素子は、基台上に、例えばフリップチップ接合やワイヤボンディング接合により実装されている。なお、波長変換層は、発光素子に接触していなくてもよい。また、発光素子の個数は特に限定されず、要求される光量に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
基台の構成材料は特に限定されず、サファイア,Si,GaN,AlN,ZnO,SiC,BN,ZnS等の単結晶、Al23,AlN,BN,MgO,ZnO,SiC,C等のセラミックスやこれらの混合物、Al,Cu,Fe,Au,Wやこれらを含む合金等の金属、ガラスエポキシ、あるいは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂も使用することが可能である。
【0015】
発光素子は、例えば、波長が420〜500nmの青色光を発する青色LEDや、波長が500〜530nmの青緑色光を発する青緑色LEDや、波長が380〜420nmの青紫色光を発する青紫色LEDや、波長が380nm以下の紫外光を発する紫外LED等を使用することができる。上記青色LEDや上記青紫色LEDや上記紫外LEDとしては、例えばInGaAlN系材料を用いたLEDが使用できる。エピタキシャル成長で形成する各系の発光素子におけるLED材料の元素組合せ比率は、発光波長に応じて適宜調整するものである。
【0016】
波長変換層は、上記発光素子からの光の波長を変換する波長変換部と、透光性材料からなる光ガイド部とを含む。波長変換部は、例えば透光性母材と、この透光性母材に分散された波長変換材料とからなる。そして、上記光ガイド部は、波長変換層の発光素子側から光取り出し側に向かって延びており、発光素子からの光や波長変換部からの変換光を光取り出し側へガイドする。この構成により、発光素子からの光が波長変換材料で反射されて発光素子へ再吸収されることを防止できる。また、波長変換材料の濃度を低くする必要がないため、波長変換層のサイズを小さくできる。即ち、本発明の発光装置によれば、小型化、薄型化が容易な上、光取り出し効率の低下を防ぐことができる発光装置を提供できる。
【0017】
波長変換部が、透光性母材と、この透光性母材に分散された波長変換材料とからなる場合、上記光ガイド部を構成する上記透光性材料の屈折率が、上記透光性母材の屈折率と同等又はそれより高いことが好ましい。透光性材料の屈折率と透光性母材の屈折率とが同等の場合、波長変換部と光ガイド部との間の界面における光の屈折や反射を防止できるため、光取り出し効率の向上が可能となる。また、透光性材料の屈折率が透光性母材の屈折率より高い場合も、光取り出し効率の向上が可能となる。即ち、光は屈折率の高い部分に集まるので、発光素子からの光や波長変換材料からの変換光を光ガイド部へ集光させることにより、波長変換層の光取り出し側へ容易に導波することができる。よって、光取り出し効率の向上が可能となる。
【0018】
上記光ガイド部を構成する透光性材料としては、発光装置から取り出す光を透過する材料であればよく、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物、あるいは金属アルコキシドやコロイドシリカを出発材料とするゾル・ゲル法により形成されたガラスや低融点ガラス等のガラスを使用することができる。また、これらの透光性材料を母材とし、この母材中に金属酸化物粒子を分散させたコンポジット材を使用することもできる。この場合、上記母材中に分散させる上記金属酸化物粒子の量を調整することにより、光ガイド部の屈折率を調整できる上、光散乱効果も得られる。また、硬化性樹脂を母材とする場合は、未硬化状態の硬化性樹脂に上記金属酸化物粒子を分散させると、硬化前における上記硬化性樹脂のチクソ性が向上するため、光ガイド部を所望の形状に容易に形成することができる。また、樹脂単独で使用する場合に比べて熱伝導性が向上するため、発光素子からの熱を効率良く放熱することができる。
【0019】
さらに、波長変換層を構成する光ガイド部の材料として、Al23,AlN,BN,MgO,ZnO,SiC等のセラミックスやこれらの混合物、また、後述の蛍光体材料を使用することも可能である。蛍光体材料を使用する場合、CeやEuなどの希土類を添加しなければ発光しないので、光ガイド部の材料として使用できる。蛍光体材料を光ガイド部の材料に用いる場合、その蛍光体材料として波長変換材料と同じ材料系を使用すれば、屈折率や熱膨張係数が一致するので、波長変換部と光ガイド部との界面での反射をなくしたり、熱応力によるクラック発生を抑えることも可能である。また、光ガイド部の材料としてセラミックス、蛍光体材料、ガラス材料等の無機材料を使用すれば、無機材料は樹脂材料に比べて熱伝導率が高いことから、基台等を通じて波長変換部で発生した熱の放熱効果を高めることができる。
【0020】
上記金属酸化物粒子としては、SiO2,Al23,ZnO,Y23,TiO2,ZrO2,HfO2,SnO2,Ta23,Nb25,BaSO4,V25やこれらの混合物からなるものが使用でき、屈折率の調整やチクソ性向上には平均粒径が1〜100nm程度のものが好ましい。また、光散乱効果を得るためには平均粒径が100nm〜1μm程度のものが好ましい。なお、上記「平均粒径」とは、例えば走査型電子顕微鏡の観察像から読み取った一次粒子の粒径の平均値(例えば100個の一次粒子の粒径の平均値)であればよい。
【0021】
上記波長変換部を構成する上記透光性母材の材料についても、上記列挙した透光性材料と同様のものが使用できる。
【0022】
上記波長変換材料としては、例えば、赤色光を発する赤色蛍光体、橙色光を発する橙色蛍光体、黄色光を発する黄色蛍光体、緑色光を発する緑色蛍光体等が使用できる。上記赤色蛍光体としては、例えばシリケート系のBa3MgSi28:Eu2+,Mn2+、ニトリドシリケート系のSr2Si58:Eu2+、ニトリドアルミノシリケート系のCaAlSiN3:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系のSr2Si4AlON7:Eu2+、硫化物系の(Sr,Ca)S:Eu2+やLa22S:Eu3+,Sm3+等を使用できる。上記橙色蛍光体としては、例えばシリケート系の(Sr,Ca)2SiO4:Eu2+、ガーネット系のGd3Al512:Ce3+、α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用できる。上記黄色蛍光体としては、例えばシリケート系の(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+やSr3SiO5:Eu2+、ガーネット系の(Y,Gd)3Al512:Ce3+、硫化物系のCaGa24:Eu2+、α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用できる。上記緑色蛍光体としては、例えばアルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+,Mn2+や(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu2+、シリケート系の(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Yb2+、β-サイアロン系のβ-Si34:Eu2+、オクソニトリドシリケート系の(Ba,Sr,Ca)Si222:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系の(Ba,Sr,Ca)2Si4AlON7:Ce3+、硫化物系のSrGa24:Eu2+、ガーネット系のY3(Al,Ga)512:Ce3+、酸化物系のCaSc24:Ce3+等を使用できる。
【0023】
また、発光素子として、青紫色LEDや紫外LEDを使用する場合は、例えば上述した蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体や青緑色光を発する青緑色蛍光体とを併用すればよい。上記青色蛍光体としては、例えばアルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+、シリケート系のBa3MgSi28:Eu2+、ハロ燐酸塩系の(Sr,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+等を使用できる。上記青緑色蛍光体としては、例えばアルミン酸塩系のSr4Al1425:Eu2+、シリケート系のSr2Si38・2SrCl2:Eu2+等を使用できる。
【0024】
上記波長変換材料として、上述した蛍光体の代わりに金属錯体、有機染料、有機顔料、燐光体等を使用することもできる。必要な色温度、演色評価数を得るために上記波長変換材料を複数使用することも可能である。なお、本発明によれば、発光素子から発せられる光のピーク波長における外部量子効率が90%以下の波長変換材料(例えば、特開2006−49799号公報に記載の(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+や(Y,Gd)3Al512:Ce3+)を使用しても、前述の本発明の効果が発揮されることにより、小型、薄型を保持しつつ光取り出し効率の高い発光装置を実現できる。
【0025】
本発明の発光装置では、上記光ガイド部の先端が上記波長変換層の光取り出し側端面から突出していることが好ましい。波長変換層の光取り出し側端面が凹凸形状となるため、光取り出し側端面での全反射が防止でき、光取り出し効率の向上が可能となるからである。この場合、上記先端は、半球状又は円錐状であることが好ましい。光取り出し効率の更なる向上が可能となるからである。なお、上記構成においては、凸部となる上記先端の間隔が30〜300μm程度であると、光取り出し効率の向上がより容易となるため好ましい。
【0026】
本発明の発光装置では、上記光ガイド部が、上記発光素子から光取り出し側に向かって放射状に延びるように配置されていてもよい。発光素子の周囲の波長変換材料が減るため、発光素子からの光が波長変換材料で反射されて発光素子へ再吸収されることを確実に防止できる上、取り出される光の色むらを抑制できるからである。
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、参照する図面においては、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の符号で示し、重複する説明を省略する場合がある。また、図面を簡素化して理解しやすくする目的から、参照する図面には金属配線や発光装置の外側に設ける給電端子等を省略している。
【0028】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図1Bは、図1Aに示す発光装置の概略断面図である。
【0029】
図1A,Bに示すように、発光装置1は、基台10と、基台10に配置された発光素子11と、発光素子11を覆う波長変換層12とを含む。波長変換層12は、発光素子11からの光の波長を変換する波長変換材料を含む波長変換部13と、透光性材料からなる9つの光ガイド部14とを含み、光ガイド部14は、波長変換層12の発光素子11側から光取り出し側(上面)に向かって延びている。この構成により、発光素子11からの光が波長変換材料で反射されて発光素子11へ再吸収されることを防止できる。また、波長変換材料の濃度を低くする必要がないため、波長変換層12のサイズを小さくできる。即ち、発光装置1によれば、小型化、薄型化が容易な上、光取り出し効率の低下を防ぐことができる発光装置を提供できる。なお、図1Aでは、四角柱状の波長変換層12としたが、波長変換層12の形状は特に限定されず、円柱状、四角柱状以外の多角柱状、円錐状、多角錐状等であってもよい。また、図1Aでは、光ガイド部14が、3×3に整列された状態で配置されているが、光ガイド部14の数や配置形態は特に限定されず、ランダムに配置されていてもよい。
【0030】
次に、第1実施形態に係る発光装置1の変形例について、図2A〜Dの概略断面図を参照しながら説明する。
【0031】
図2Aに示す発光装置2は、光ガイド部14(一部は不図示)が、4×4に整列された状態で配置されており、いずれの光ガイド部14も、発光素子11及び基台10に接触していない。これにより、例えば発光素子11として紫外LEDを使用した場合、紫外LEDからの紫外光が光ガイド部14から外部へ直接放射されることを防止できる。なお、光ガイド部14の発光素子11側の端部が凸レンズ状や凹レンズ状に形成されていると、発光素子11からの光や、波長変換部13からの変換光を集光しやすくなるため、光取り出し効率が向上する。
【0032】
図2Bに示す発光装置3は、それぞれの光ガイド部14の長さや太さが相違する。このように、それぞれの光ガイド部14の長さや太さを調整することにより、出射光の照度むらや発光色の色むらを抑制することができる。また、発光素子11に接触する光ガイド部14が、波長変換層12の上面に露出していない。これにより、例えば発光素子11として紫外LEDを使用した場合、紫外LEDからの紫外光が光ガイド部14から外部へ直接放射されることを防止できる。
【0033】
図2Cに示す発光装置4は、光ガイド部14が、いずれも発光素子11から光取り出し側に向かって放射状に延びるように配置されている。これにより、発光素子11の周囲の波長変換材料が減るため、発光素子11からの光が波長変換材料で反射されて発光素子11へ再吸収されることを確実に防止できる上、取り出される光の色むらを抑制できる。
【0034】
図2Dに示す発光装置5は、光ガイド部14の先端14aが波長変換層12の光取り出し側端面から円錐状に突出している。これにより、波長変換層12の光取り出し側端面が凹凸形状となるため、光取り出し側端面での全反射が防止でき、光取り出し効率の向上が可能となる。なお、図2Dでは、先端14aが円錐状である例について説明したが、先端14aが他の形状(例えば半球状)であってもよい。
【0035】
(第2実施形態)
図3Aは、本発明の第2実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図3Bは、図3Aに示す発光装置の概略断面図である。
【0036】
図3A,Bに示すように、発光装置6では、波長変換部13が3層構造となっており、基台10側から順に、赤色蛍光体層131、緑色蛍光体層132及び青色蛍光体層133が積層されている。また、発光素子11として、紫外LEDを使用している。この構成により、緑色蛍光体層132からの緑色光によって赤色蛍光体層131の蛍光体が励起されることを防止でき、かつ青色蛍光体層133からの青色光によって赤色蛍光体層131の蛍光体や緑色蛍光体層132の蛍光体が励起されることを防止できる。よって、発光効率を向上させることができる。また、光ガイド部14として、光取り出し用の光ガイド部141と、励起光用の光ガイド部142とを備えているため、出射光の色度のずれを抑制できる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照して説明する。参照する図4A〜C及び図5A,Bは、第3実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。なお、第3実施形態に係る発光装置の製造方法は、上述した発光装置2(図2A参照)の好適な製造方法の一例である。
【0038】
まず、図4Aに示すように、基台10上に発光素子11を配置する。そして、基台10上に発光素子11を覆うようにして、透光性母材と、この透光性母材に分散された波長変換材料とからなる波長変換材料層20をスクリーン印刷等により形成する。
【0039】
次に、図4Bに示すように、棒状体21aを有する治具21を用いて波長変換材料層20を突き刺して、図4Cに示す穴部20aを形成する。棒状体21aの径は、例えば10〜200μm程度である。なお、治具21の構成材料としては、例えばガラス、樹脂、金属等の材料を使用できる。
【0040】
次に、図5Aに示すように、ディスペンサやインクジェット印刷機等のノズル22を用いて、真空中で穴部20aに透光性材料23(例えば熱硬化性樹脂)を充填し、この透光性材料23を硬化させる。これにより、図5Bに示すように、透光性材料23からなる光ガイド部14と、前記透光性母材及び前記波長変換材料からなる波長変換部13とを有する波長変換層12が形成されて、発光装置2が得られる。なお、上述した図4Bの工程において、ダイシングブレードを用いて波長変換材料層20に溝部を形成し、この溝部内に光ガイド部14を形成してもよい。
【0041】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照して説明する。参照する図6A〜D及び図7A,Bは、第4実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。なお、第4実施形態に係る発光装置の製造方法は、上述した発光装置2(図2A参照)の好適な製造方法の別の一例である。
【0042】
まず、図6Aに示すように、基台10上に発光素子11を配置する。
【0043】
次に、図6Bに示す型24を準備する。型24は、凹部24aと、凹部24aの底面に形成された棒状体24bとを有する。棒状体24bの径は、例えば10〜200μm程度である。なお、型24の構成材料としては、例えばガラス、樹脂、金属等の材料を使用できる。
【0044】
次に、図6Cに示すように、凹部24a内に、棒状体24bを覆うようにして波長変換部13を形成する。波長変換部13の形成方法としては、例えば、透光性母材と、この透光性母材に分散された波長変換材料とを含むペーストを凹部24a内に充填すればよい。
【0045】
次に、図6Dに示すように、基台10の発光素子11が配置された主面と、波長変換部13の露出面とを接着する。例えば、波長変換部13を構成する上記ペーストを硬化させる前に上記主面と上記露出面とを接触させて、上記ペーストを硬化させるとよい。
【0046】
そして、型24から波長変換部13を外し、図7Aに示すように、ディスペンサやインクジェット印刷機等のノズル22により、棒状体24bが配置されていた空隙13aに透光性材料23(例えば熱硬化性樹脂)を充填し、この透光性材料23を硬化させる。これにより、図7Bに示すように、透光性材料23からなる光ガイド部14と、波長変換部13とを有する波長変換層12が形成されて、発光装置2が得られる。
【0047】
(第5実施形態)
図8は、本発明の第5実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【0048】
図8に示すように、発光装置7は、光ガイド部14の内側に複数の波長変換部13が形成されている。その他の構成は、上述した発光装置2(図2A参照)と同様である。発光装置7によっても発光装置2と同様の効果が得られる。
【0049】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照して説明する。参照する図9A〜Eは、第6実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。なお、第6実施形態に係る発光装置の製造方法は、上述した発光装置7(図8参照)の好適な製造方法の一例である。
【0050】
まず、図9Aに示すように、基台10上に発光素子11を配置する。
【0051】
次に、図9Bに示すように、透光性材料からなる板状体25を準備する。
【0052】
次に、図9Cに示すように、レーザー加工やエッチングにより、板状体25の主面25aに穴部25bを形成する。次いで、レーザー加工やエッチングにより、主面25aとは反対側の主面25cに発光素子11が収容されるキャビティ25dを形成する。
【0053】
そして、図9Dに示すように、穴部25bに、透光性母材とこの透光性母材に分散された波長変換材料とからなるペースト26を、ディスペンサやインクジェット印刷機等のノズルから充填して、このペースト26からなる波長変換部13と、前記透光性材料からなる光ガイド部14とを有する波長変換層12を形成する。上記ノズルから滴下するペースト26に含まれる波長変換材料の種類を切り替えることにより、波長変換部13の深さ方向において波長変換材料を変化させて充填することができる。
【0054】
光ガイド部14の材料として前述のセラミックスや蛍光体材料を使う場合、その成型に焼成工程を伴うので、上記のように別個に成型した板状体25から光ガイド部14を形成する方法が有効となる。
【0055】
次に、図9Eに示すように、キャビティ25dに発光素子11が収容されるように、基台10と波長変換層12とを接着剤等により接着し、発光装置7が得られる。
【0056】
上記接着剤には一般的に使用される有機系接着材、例えばエポキシ系、シリコーン系に限らず、無機系接着材として、半田材となる金属材料、例えばSn,Au,In,Pb,Bi,Ag,Al等やこれらの合金材料、金属酸化物、例えばSiO2,Al23,ZnO,Y23,TiO2,ZrO2,HfO2,SnO2,Ta23,Nb25,BaSO4,ZnS,V25等やこれら混合材料を使用できる。特に、板状体25が、上述のセラミックスや蛍光体材料からなる場合、無機系接着材が有効である。
【0057】
(第7実施形態)
図10Aは、本発明の第7実施形態に係る発光装置の概略斜視図であり、図10Bは、図10Aに示す発光装置の概略断面図である。
【0058】
図10A,Bに示すように、発光装置8は、板状の波長変換部13と、板状の光ガイド部14とが積層されて波長変換層12が形成されている。波長変換部13及び光ガイド部14は、いずれも基台10に対して垂直である。また、図10Bに示すように、発光素子11は、基台10に形成された凹部10aの底面に配置されており、凹部10a内は、例えば、窒素等の不活性ガスやエポキシ樹脂等の封止樹脂(図示せず。)で充填されている。波長変換層12の幅W(図10A参照)は、例えば、1.5mm程度であればよい。また、波長変換層12の高さH(図10B参照)及び長さL(図10B参照)は、例えばそれぞれ1.5mm程度及び3mm程度であればよい。この場合、発光素子11は、1mm角程度の大きさで厚みが100〜300μm程度のものを使用することができる。なお、波長変換部13及び光ガイド部14の配置形態は、図10A,Bの形態に限定されず、例えば図11Aや図11Bに示す概略上面図のように、波長変換部13及び光ガイド部14が配置されていてもよい。また、凹部10aの底面に発光素子11が複数配置されていてもよい。
【0059】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照して説明する。参照する図12A〜C及び図13A,Bは、第8実施形態に係る発光装置の製造方法の工程別断面図である。なお、第8実施形態に係る発光装置の製造方法は、上述した発光装置8(図10A,B参照)の好適な製造方法の一例である。
【0060】
まず、図12Aに示すように、基台10に形成された凹部10aの底面に発光素子11を配置する。
【0061】
次に、図12Bに示すように、透光性母材とこの透光性母材に分散された波長変換材料とからなる板状の波長変換部13を複数形成し、さらに透光性材料(例えば半硬化状態の熱硬化性樹脂)からなる板状の光ガイド部14を複数形成する。そして、図12Cに示すように、波長変換部13と光ガイド部14とを交互に積層した後、上記透光性材料を完全硬化させることによりこれらを一体化し、波長変換部13と光ガイド部14とを有する波長変換層12を形成する。なお、面積がより広い波長変換部13と、面積がより広い光ガイド部14とを形成し、これらを同様に一体化した後でダイシングブレード等により複数に個片化すると、波長変換層12の量産化が容易となる。
【0062】
波長変換層12の構成材料に無機材料、例えば、セラミックスや蛍光体材料を使用する場合、波長変換層12は、光ガイド部14となるグリーンシートと波長変換部13となるグリーンシートとを交互に積層一体化して作製することができる。
【0063】
そして、図13Aに示すように、基台10の発光素子11が配置された主面と波長変換層12とを、エポキシ樹脂等の封止樹脂により接着する。この際、波長変換部13及び光ガイド部14が基台10に対して垂直となるようにする。これにより、図13Bに示す発光装置8が得られる。なお、発光素子11の発光波長に応じて波長変換部13を適宜選択することで、設計値通りの色度の合成光(白色光)を得ることが出来る。
【0064】
波長変換層12が、セラミックス、蛍光体材料、ガラス材料等の無機材料からなる場合、前述の無機系接着材を用いて基台10と波長変換層12とを接着してもよい。無機系接着材は、樹脂材料に比べて熱伝導率が高いので、放熱の点で有利である。
【0065】
(第9実施形態)
図14は、本発明の第9実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【0066】
図14に示すように、第9実施形態に係る発光装置100は、上述した第1実施形態に係る発光装置1(図1A,B参照)に光学系を設けた例である。発光装置100では、樹脂等からなるメイン基板101上に、アルミニウム等の金属やアルミナ等のセラミック等からなる反射板102を配置し、反射板102の凹部102a内に発光装置1を配置している。そして、凹部102aの開口を覆うレンズ103を設けている。このように光学系を設けることによって、出射光の放射パターンを制御できる。なお、凹部102a内は、例えば、窒素等の不活性ガスやエポキシ樹脂等の封止樹脂(図示せず。)で充填されている。
【0067】
以上、光学系を設けた本発明の発光装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図15に示すように、波長変換層12を凹部102aの開口に設けてもよい。これにより、発光素子11と波長変換層12とが接触しなくなるため、発光素子11への光の再吸収を確実に防止できる。なお、基台10上の発光素子11の個数は限定されず、複数であってもよい。
【0068】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の発光装置は、例えば、一般照明、演出照明(スポット光、サイン灯等)、自動車用照明(特に前照灯)等に使用される照明装置や、ディスプレイ、プロジェクタ等に使用される表示装置等に有用である。また、小型、薄型化が求められるセンサー用光源としても有用である。
【符号の説明】
【0070】
1〜8,100 発光装置
10 基台
10a 凹部
11 発光素子
12 波長変換層
13 波長変換部
13a 空隙
14,141,142 光ガイド部
14a 先端
20 波長変換材料層
20a 穴部
21 治具
21a 棒状体
22 ノズル
23 透光性材料
24 型
24a 凹部
24b 棒状体
25 板状体
25a,25c 主面
25b 穴部
25d キャビティ
26 ペースト
101 メイン基板
102 反射板
102a 凹部
103 レンズ
131 赤色蛍光体層
132 緑色蛍光体層
133 青色蛍光体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台に配置された発光素子と、前記発光素子を覆う波長変換層とを含む発光装置であって、
前記波長変換層は、前記発光素子からの光の波長を変換する波長変換部と、透光性材料からなる光ガイド部とを含み、
前記ガイド部の径は、10〜200μmであり、
前記ガイド部の間隔は、30〜300μmであり、
前記光ガイド部は、平均粒径が1nm〜100nmの金属酸化物粒子を含有し、且つ前
記波長変換層の前記発光素子側から光取り出し側に向かって延びていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記光ガイド部の1つが、前記発光素子の直上に配置されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記波長変換部は、透光性母材と、前記透光性母材に分散された波長変換材料とからなり、
前記光ガイド部を構成する前記透光性材料の屈折率が、前記透光性母材の屈折率と同等又はそれより高い請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記波長変換部は、透光性母材と、前記透光性母材に分散された波長変換材料とからなり、
前記波長変換材料は、前記発光素子から発せられる光のピーク波長における外部量子効率が90%以下である請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記光ガイド部は、先端が前記波長変換層の光取り出し側端面から突出している請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記波長変換層の光取り出し側端面から突出した前記先端は、半球状又は円錐状である請求項5に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−142356(P2011−142356A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95256(P2011−95256)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【分割の表示】特願2008−538763(P2008−538763)の分割
【原出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】