説明

発光装置

【課題】高出力かつ長寿命の発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】励起光を射出する光源と、前記励起光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を射出する波長変換部材と、を有しており、前記波長変換部材は、前記励起光が最初に導入される部位に配置される円柱状の層と、該円柱状の層の外周に配置される少なくとも1つの円筒状の層とを備え、かつ前記円柱状の層が前記円筒状の層よりも、前記励起光に対する耐性の高い材料で形成されている発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として光源と、波長変換部材とを有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高い出力で色情報が正確に再現されるような発光装置が求められている。今日では、その光源として、発光ダイオード(以下「LED」ともいう。)、レーザダイオード(以下「LD」ともいう。)等の発光素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
LED及びLDは、小型で電力効率が良く、鮮やかな色で発光し、球切れ等の心配がない。特に、LDは、LEDよりも光密度が高いため、より高輝度の発光装置を実現することができる。
【0004】
【特許文献1】特表2003−515899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、特許文献1に記載されたLED及びLD等において、波長変換部材を介して、LED又はLDからの光を外部に放出する場合、波長変換部材が光に起因する熱により劣化し、発光素子からの光を十分に外部に放出できなくなったり、場合によっては波長変換部材が変色し発光装置として使用できなくなったりする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、高出力かつ長寿命の発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光装置は、
励起光を射出する光源と、
前記励起光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を射出する波長変換部材と、を有しており、
前記波長変換部材は、前記励起光が最初に導入される部位に配置される円柱状の層と、該円柱状の層の外周に配置される少なくとも1つの円筒状の層とを備え、かつ前記円柱状の層が前記円筒状の層よりも、前記励起光に対する耐性の高い材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、さらに以下の要件を備えていることが好ましい。
前記円柱状の層と前記円筒状の層とが同心円となるように配置されている。
励起光に対する耐性は、導入される励起光の出力に対する射出光の出力の直線性として表わされる。
【0009】
励起光を、光源から波長変換部材に導く導光部材を備えている。
導光部材と波長変換部材とは、励起光が波長変換部材の内側の層/領域に入射されるように、光学的に連結されている。
波長変換部材は、蛍光体と透光性材料とを含んで構成されている。
さらに、導光部材の側面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を備えている。
光源はレーザダイオードであり、導光部材は光ファイバである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光装置によれば、波長変換部材を特定の方向において複数の層/領域を積層することにより、各波長変換部材と光源とを、精度良く、かつ容易に配置することができるとともに、光源による強励起に弱い波長変換部材を光源から遠ざけるか、強励起に強い波長変換部材を光源に近いところに配置する等により、光源による熱及び高強度の光等に、強励起に弱い波長変換部材を直接さらすことなく、波長変換部材の劣化を防止し、良質の光を変化することなく長期間にわたって得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の発光装置は、少なくとも、光源10と、波長変換部材30とから構成され、例えば、図1に示すように、光源10と、導光部材20と、波長変換部材30とから主として構成されていてもよい。
【0012】
光源
光源は、励起光を射出するための光源であり、後述する蛍光体を励起することができる光を出射するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、半導体発光素子、ランプ又は電子ビーム、プラズマ、EL等をエネルギー源とするデバイス等が挙げられる。なかでも、300〜500nmの波長域に発光ピークを有する光を放出する発光素子であることが好ましく、LD、LEDが好適に用いられる。これらを使用することにより、初期駆動特性に優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強く、小型で発光出力の高い発光装置とすることができる。特に、LDは、LEDに比較して光密度が高いので、容易に輝度を向上させることができる。一方、LDは、光密度が高いために波長変換部材が発熱しやすく、劣化、変色を招く。本発明は、熱による波長変換部材への悪影響を大幅に軽減することができるため、光源としてLDを用いる場合に特に有効である。
【0013】
例えば、光源としてLDを用いる場合、その光源は、図7(a)に示したように、円盤形状のステム底部11の上に、柱状のステム柱体12が載置され、その側面に、サブマウント13を介して半導体発光素子14としてLDが、Au−Sn等の接着部材を介して装着された、光出射面を上面側とする発光素子を用いてもよい。これらのLD等を収容するキャップ本体15は、LD等を被覆して、ステム底部11の縁周近傍に抵抗溶接等により溶接されている。キャップ本体15の上面の中央部には、LDの光出射部に対応する位置に貫通孔が形成されている。半導体発光素子14の出射光軸は、キャップ本体15上面の中心軸とほぼ重なる。貫通孔内には、LDの光が透過するように透光性材料17等が、シリコーン樹脂、セラミック、低融点ガラス、半田等の接着部材により固着されており、これにより、キャップ内部が封止された状態となる。
また、ステム底部11の底面から、外部電極と電気的に接続するためのリード16が鉛直方向に延伸されている。なお、図示しないが、半導体発光素子14はワイヤ等を介して電気的にリード16と接続されている。これらステム底部11、ステム柱体12及びキャップ本体15等形状は、半導体発光素子14を封止できるものであれば限定されず、ステム底部11を略筒状とし、それを閉塞するキャップ本体15を略円盤状としてもよい。
【0014】
さらに、図8(a)に示したように、キャップ本体15の側面に貫通孔が形成された、側面方向に光出射面を有するサイドビュータイプの発光素子であってもよい。
なお、発光素子を構成するステムは、キャップ本体との密着性及び放熱性の良好なものであればよく、例えば、銅、銅に少なくともW又はMoを含有させた合金、鉄あるいは異種材料を重ね合わせたクラッド材等が挙げられる。ステム底部およびステム柱体は膨張係数の近い材質の組み合わせが好ましい。これにより、両者の接合性を高めることができる。
【0015】
キャップ本体は、半導体発光素子が載置される内部空間を気密封止できる材質であり、さらにステム等に対して密着性に優れた材質、熱伝導性に優れた材質であればよく、たとえば、Cu、Al、Ni、NiとFeとの合金、Fe、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)、ステンレススチール(SUS)等が挙げられる。
ステム及びキャップ等の固定には、例えば、低融点ガラス固定、有機接着剤固定(シリコーン、エポキシ等)、無機接着剤固定(セラミック:Al、ZrO、SiO等を含むもの)、半田付け(Au/Sn等)等が挙げられる。また、透光性材料等をキャップ本体に直接溶かし付けたり、いずれか一方に透明性導電膜を成膜し、その後、電着により固着させてもよい。
【0016】
波長変換部材
波長変換部材は、光源から出射される励起光の一部又は全部を吸収し、波長変換して所定の波長域の光、例えば、赤色、緑色、青色、さらにこれらの中間色である黄色、青緑色、橙色などに発光スペクトルを有する光を放出し得るものである。
また、波長変換部材は、励起光の導入方向に交差する断面において、複数の層/領域が配置されている。したがって、波長変換部材は、このような機能を実現することができる材料によって構成されるものであれば、その種類は限定されない。ここで、交差する断面とは、励起光の導入方向に対して、±90°未満で交差する断面を意味するが、好ましくは、励起光の導入方向に対して直交する断面及びその断面の±45°程度までの範囲とすることが適切である。また、複数の層/領域が配置されているとは、層毎に構成材料が異なるように(つまり、その境界が明確に)配置されているもの、領域の構成材料が徐々に異なるように(つまり、その境界が明確でないか、濃度分布が存在するかのように)配置されているものの双方を包含する。
【0017】
複数の層/領域は、励起光の導入方向に交差する断面において、ランダムに、偏在して又は均等に配置していてもよいが、内側の層/領域をその外側の層/領域が順次包囲するように配置されていることが好ましい。
さらに、複数の層/領域の少なくとも2つの層/領域は、励起光に対する耐性が異なる材料で形成されている。ここで、励起光に対する耐性とは、導入される励起光の出力に対する射出光の出力の直線性として表わされる。一般に、同一励起波長において、励起光の出力と射出光の出力とは直線関係を示すが、本発明では、射出光の出力の大小は関係なく、励起光の出力を上げた際に先に直線関係からずれる傾向となるものを耐性が小さいと判断することができる。励起光に対する耐性は、複数の層/領域の少なくとも2つの層/領域で異なっているが、3つ以上の複数層/領域が存在する場合には、その全てにおいて異なっていてもよいし、一部において同じでもよい。なお、励起光に対する耐性は、励起光の照射を受けた波長変換部材の発熱温度が大きいものが、小さいものよりも、波長変換部材からの射出光の発光強度が小さく、あるいは発光強度の直線性が悪く、すなわち、耐性が小さい場合があるが、発熱温度の大小にかかわらず、射出光の発光強度の小さく、あるいは発光強度の直線性が悪いものが、通常、励起光に対する耐性が小さいこととなる。
【0018】
波長変換部材を構成する材料は、複数の層/領域のうち少なくとも1層/領域が光を透過及び/又は散乱させる層/領域により構成されていてもよい。これらの層/領域は、蛍光体のみから構成されるもの、透光性材料に蛍光体を含有させたもの、透光性材料のみからなるもの、光拡散等のために拡散剤を含有させたもの、フィラーを含有させたもの等が挙げられる。
【0019】
蛍光体としては、例えば、(i)アルカリ土類金属ハロゲンアパタイト、(ii)アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン、(iii)アルカリ土類金属アルミン酸塩、(iv)酸窒化物又は窒化物、(v)アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類窒化ケイ素、(vi)硫化物、(vii)アルカリ土類チオガレート、(viii)ゲルマン酸塩、(ix)希土類アルミン酸塩、(x)希土類ケイ酸塩、(xi)Eu等のランタノイド系元素で主に賦活された有機及び有機錯体等の種々のものが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、(Sr,Ca)5(PO43Cl:Eu(青色発光B)と、LAG又はBaSi222:Eu(緑色から黄色発光)と、SCESN(赤色発光R)との組み合わせ;CCA、CCB、BAM(青色発光B)と、YAG(黄色発光Y)との組み合わせ;CCA、CCB又はBAM等(青色発光B)と、LAG(緑色発光G)と、SCESN(赤色発光R)との組み合わせが挙げられる。これにより、可視光の短波長領域の360〜470nmの範囲の発光ピーク波長を有する光源と組み合わせると、演色性の良好な白色系の混色光を得ることができる。また、LAG(緑色発光G)と、SESN、SCESN又はCaAlSiN3:Eu(赤色発光R)との組み合わせが挙げられる。これにより、450nm付近(例えば、400〜460nm)に発光ピーク波長を有する光源と組み合わせることにより、発光効率をさらに向上させることができる。
【0020】
透光性材料は、光源からの光を透過し得る材料であれば、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機材料、低融点ガラス、結晶化ガラス等の無機材料等が挙げられる。また、これらの材料に後述するフィラーを含有してもよい。これにより、光源から得られた光を、そのまま波長変換せずに用いることができ、光の指向性を制御することができる。
【0021】
一般に、有機材料の透光性材料は、光により劣化しやすいが、本発明の構成は、特に、透光性材料が有機部材である場合に有効である。
なお、良好な演色性を得るためには、波長変換部材を通った後の照射光が、70以上、さらに80以上の平均演色評価数(Ra)となるような材料を選択することが好ましい。
【0022】
このように、波長変換部材を用いることにより、複数の波長の光を合成することができ、白色系の混色光を得ることができる。ただし、色調を調整するための各色の光は、必ずしも波長変換部材によって波長変換された光でなくてもよく、光源から得られた励起光をそのまま利用してもよい。例えば、光源からの光と、1以上の蛍光体からの光とが合成されたもの、あるいは、2以上の蛍光体からの光が合成されたものが挙げられる。
【0023】
波長変換部材には、上述したように、SiO2等のフィラーを含有させてもよい。フィラーは、照射された光を反射、散乱させるためのものである。これにより、光を散乱させて取り出すことができる。また、混色が良好になるとともに色むらを低減させることができる。さらに、波長変換部材にフィラーを混合することにより、その粘度を調整することができるため、任意の形状に、任意の部位に、容易に配置させることができる。フィラーは、波長変換部材を構成する材料により、任意の粒径、粒子形状、使用量を適宜調整して用いることができる。
【0024】
励起光の導入方向に交差する断面において、その中心から外側方向に複数の層/領域(例えば、n種の層/領域、nは2以上の整数、好ましくは2〜5程度)が配置されている態様としては、励起光が、まず、特定の蛍光体を含むか、蛍光体を含まない層/領域に導入されるように第1の層/領域が配置され、導入方向に直交する断面において、その中心から外側に射出する光が、順次第2層/領域〜第n層/領域に導入されるように第2層/領域〜第n層/領域が配置されていることが挙げられる。なお、ここでは、第1の層/領域に導入された光は、少なくとも導入方向に直交する方向のみならず、導入方向に射出されてもよい。また、ここで「直交する断面」とは、必ずしも90°で交差する断面のみならず、±10°程度のずれは許容される。
【0025】
例えば、図2(a)、(b)に示すように、波長変換部材が円柱状である場合には、最初に励起光が導入される部分、例えば、中心部分に円柱状の第1層40A、その第1層40Aの外周に、内径が順に大きくなる円筒状の第2層40B〜第n層(nが3の場合、40C)が同心円となるように配置された、断面がバウムクーヘン状の態様が挙げられる。これにより、励起光が直接導入されるために、比較的劣化しやすい部分に強励起に対して耐性がある層を配置して、第1の層の劣化を軽減し、結果として発光装置の寿命を向上させることができる。
【0026】
また、図3(a)、(b)に示すように、波長変換部材が球状である場合には、球の中心部分に第1層40A、その外周を球状に取り囲むように第2層40B〜第n層(nが3の場合、40C)が配置される態様が挙げられる。特に、波長変換部材が球状の場合には、球の外層に強励起光に耐性のある層、あるいは蛍光体を含まない層を配置することで、内層の波長変換部材(蛍光体)に導入される励起光の光密度が下がるため、波長変換部材の劣化を軽減することができる。また、球の外層に励起光の波長では励起されない蛍光体を配置し、内層に励起光を受けて外層の蛍光体を励起することが可能な波長で発光する蛍光体を配置することで、内層に導入される励起光の光密度を下げることができ、有効に波長変換部材の劣化を防止することができる。
【0027】
さらに、図4(a)、(b)に示すように、波長変換部材がドーム状である場合には、最初に励起光が導入される部分、例えば、中心部分に第1層40A、その外周をほぼ相似なドーム状に包囲するように第2層40B〜第n層(nが3の場合、40C)が配置される態様が挙げられる。これにより、励起光が、直接、強励起に耐性のある層に導入され、そこから射出される全ての光を第2〜第n層に導入することができ、より発光効率を向上させることができる。また、ドーム状である場合には、励起光導入部から外周までの距離が同じであるため、励起光が通過する光路上に存在する蛍光体の量が同じになり、色ムラをより低減することができる。
【0028】
波長変換部材の形状は、上述したように、円柱状、ドーム状、球状の他、多角形柱又はこれらの形状に近似する形状とすることができる。その大きさは、特に限定されるものではなく、用いる光源の大きさ、任意に後述する導光部材の構造及び大きさ等によって適宜調整することができる。例えば、波長変換部材の直径(又は幅)が、少なくとも導光部材の直径と同等又はそれより大きいことが好ましい。特に、最初に励起光が導入される層/領域又は最も内側の層/領域の径が、導光部材のコアの径と同等又はそれより大きいことが好ましい。また、別の観点から、球状の波長変換部材の場合には、中心の層/領域の径が、導光部材のコアの径と同等又はそれより大きいことが好ましい。なお、内側の層/領域と外側の層/領域とは必ずしも同じ形状(相似)でなくてもよく、内側の層/領域が円柱、外側の層/領域が多角形柱の組み合わせ、内側の層/領域が卵形、外側の層/領域が球形の組み合わせ、内側の層/領域が球形、外側の層/領域がドーム形状の組み合わせ等であってもよい。波長変換部材の膜厚は特に限定されるものではなく、用いる材料、蛍光体の量等によって適宜調整することができる。例えば、波長変換部材を厚膜で形成する場合には、変換効率が向上し、結果的に発光効率を上げることができるが、その一方、光の吸収等により発光効率を損なうこともあるため、これらを考慮して適切な膜厚を選択することが好ましい。なお、各層の膜厚は異なっていてもよい。
【0029】
このような観点から、波長変換部材は、最初に励起光が導入される部分が、それ以外の部分よりも、励起光に対する耐性が高い材料で形成されていることが好ましい。つまり、例えば、図2(a)、(b)及び図4(a)、(b)では、最も内側の第1層40Aが外側の第2層40Bよりも、図3(a)、(b)では最も外側の第2層Bが内側の第1層40Aよりも、励起光に対する耐性が高い材料で形成されていることが好ましい。言い換えると、耐熱性のある透光性材料により形成されているか、蛍光体の含量が少量であるか、励起光の波長では励起されない蛍光体であるか、あるいは、励起光に対して耐性のある蛍光体により形成されている等が挙げられる。
【0030】
また、別の観点から、光源に近い側の層/領域に蛍光体を含まず、透光性材料のみを配置し、遠い側の層/領域に蛍光体等を含有させてもよい。これにより、波長変換部材の端部で光密度を低下させることができるので、遠い側の層/領域の劣化を軽減することができ、発光効率や発光出力を向上させることができる。
【0031】
さらに、光源に近い側の層/領域に、励起光によって励起せず、励起光を反射しやすい蛍光体及び/又はフィラーを含有させ、遠い側の層/領域に蛍光体等を含有させてもよい。これにより、励起光を波長変換部材の入射側において散乱させ、出射側に反射させて、波長変換した励起光のすべてを効率的に取り出すことができる。さらに、近い側の層/領域において励起光の光密度をより低下させることができるので、近い側の層/領域の劣化を軽減することができる。
【0032】
さらに、光源に近い側の層/領域に、熱及び光に耐性の高い蛍光体を含有させ、遠い側の層/領域に熱や光に対する耐性にかかわらず、蛍光体を含有させてもよい。つまり、光源に近い側から、第1の蛍光体を有する層/領域と、第2の蛍光体を有する層/領域とを順に配置させてもよい。ここで、第1の蛍光体は、第2の蛍光体よりも、励起光により生じる熱が低いもの、あるいは、耐性が高いものが好ましい。これにより、波長変換部材全体としての劣化を軽減することができる。なお、第1の蛍光体及び第2の蛍光体にそれぞれ生じる熱は、例えば、同体積の第1の蛍光体と第2の蛍光体とにそれぞれ励起光を照射し、それぞれの発熱温度を比較することにより測定することができる。また、耐性は、励起光の出力に対するそれぞれの射出光の発光強度を比較することにより測定することができる。
【0033】
波長変換部材は、例えば、上述した蛍光体等を、任意にフィラーとともに、透光性材料に混合し、必要があれば適当な溶媒を用いて、ポッティング法、スプレー法、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法等、さらに、注型法、圧縮法、トランスファー法、射出法、押し出し法、積層法、カレンダー法、インジェクションモールド法等のプラスチップの成型法等、真空被覆法、粉末噴霧被覆法、静電堆積法、電気泳動的に堆積させる方法等を利用して、上述した所望の形状に形成することができる。また、透光性材料を用いずに、例えば、蛍光体等と、任意にフィラー及び適当な溶媒とともに混合し、任意に加熱しながら、加圧により成型する方法、電着等を利用してもよい。
【0034】
特に、図2(a)、(b)に示すような円板状の場合には、n層の積層の数に応じて、透光性材料中に任意に蛍光体及び/又はフィラーを含有させたものを準備し、最も内側に配置するものを棒状に成形し、これを取り囲むように順に他のものを被覆し、次いで、所定の温度で延伸(熱引き)して所望の径を有する線状部材を形成し、この線状部材を切断することにより、円柱状の部材を得ることができる。延伸する際の温度は、透光性材料の軟化温度以上であることが好ましく、用いる透光性材料によって適宜決定することができる。線状部材の直径は、導光部材のコア径に応じて適宜決定することができる。
【0035】
また、図3(a)、(b)に示すような球状の場合には、透光性材料中に任意に蛍光体及び/又はフィラーを含有させたものを準備し、適当な大きさに分割し、これを例えば、研磨又はこれに準じた方法を利用して、球状に成形し、次いで、得られた球状物に、別の透光性材料中に任意に蛍光体及び/又はフィラーを含有させたものを被覆し、同様に、研磨等を利用して、球状に成形する工程を1回以上繰り返すことにより、球状の部材を得ることができる。研磨の方法は、用いる材料、処理する量、得ようとする球状物の大きさ等によって適宜選択することができ、例えば、バレル研磨等が適している。
【0036】
波長変換部材は、図1に示すように、励起光を導出するための導光部材が設けられている場合には、その先端部に取り付けてもよいし、光源と導光部材との接続部分に取り付けてもよいし、導光部材を用いずに光源自体に取り付けてもよい。光源と導光部材との接続部分に取り付ける場合には、導光部材の先端が汚れる箇所においても使用することができる。また、波長変換部材の取り替えが容易にできる。さらに、波長変換部材を種々の位置に設けることにより生産性の向上を図ることができる。なお、これらの場合には、励起光が、波長変換部材の内側の層に入射されるように導光部材と波長変換部材とを光学的に連結することが適している。ここで、光学的に連結するとは、光が伝達されている状態を維持していることを意味し、他に透光性部材等が間に介在していてもよい。
【0037】
波長変換部材は、導光部材の端部(端面)のみを被覆するように形成されていてもよいが、発光装置が後述する被覆部材を備えている場合には、導光部材端部のみならず、被覆部材の端面にまでわたって、その端面の一部、さらに、全部を被覆していることが好ましい。これにより、波長変換部材が広い領域に形成されることとなり、放熱性が向上するとともに、密着性が向上し、波長変換部材の剥離等を防止することができる。また、波長変換部材に照射される光の密度を低減させることができ、波長変換部材の劣化を防止することが可能となる。さらに、光の取り出し効率が向上し、高輝度の発光装置を得ることができる。波長変換部材での被覆部材の端部の被覆面積が増加するほど、この効果が向上する。
【0038】
また、波長変換部材が光源自体に取り付けられている場合、例えば、図7(b)に示すようにキャップ本体15の貫通孔内に、シリコーン樹脂、セラミック、低融点ガラス、半田等の接着部材により、波長変換部材40が固着して設けられていてもよい。また、波長変換部材40をキャップ本体15に直接溶かし付けてもよい。これにより、半導体発光素子14からの光を波長変換することができると共に、それに伴って発生する波長変換部材40からの熱を、キャップ本体15を介して外部に放出することができる。よって、波長変換部材40の劣化を抑制することができる。
【0039】
さらに、図7(c)に示したように、キャップ本体15の貫通孔内に透光性材料17を固着し、その上面に波長変換部材40が設けられてもよい。これにより、透光性材料17として波長変換部材40よりもキャップ本体15との密着性が高い材料を用いることができ、キャップ内部の気密性をさらに保つことができる。加えて、半導体発光素子14からの光は透光性材料17を介して波長変換部材40に照射されるため、波長変換部材40の劣化を抑制することができる。
【0040】
図7(d)及び(e)に示したように、透光性材料17が固着されたキャップ本体15が、さらに、上面に波長変換部材40を備える第2のキャップ本体18に被覆されていてもよい。このとき、各キャップ本体15、18に固着された透光性材料17及び波長変換部材40は、半導体発光素子から出射された光が照射される位置に設けられる。これにより、半導体発光素子を2重に包含した構造とすることができ、気密性をより一層高めることができる。また、半導体発光素子からの光は透光性材料17を介して波長変換部材40に照射されるため、波長変換部材40の劣化を抑制することができる。特に後者の場合には、各キャップ本体15、18がそれぞれ外部に露出されているため、放熱効果を高めることができる。この構造は、例えば、ステム底部11とキャップ本体15との連結は抵抗溶接にて行い、キャップ本体15と第2のキャップ本体18との連結はYAGレーザ溶接にて行うことによって実現することができる。
【0041】
また、図8(b)に示したように、透光性部材17に代えて、波長変換部材40を設けてもよいし、図8(c)に示したように、反射部材19をステム底部11に設けてもよい。この場合、反射部材19は、キャップ本体15の側面方向に射出された半導体発光素子14の光を反射し、その反射された光がキャップ本体の上面に設けられた波長変換部材40に照射され、外部に射出される。反射部材19の表面には、反射膜(Ag、Al、Au、Pt、Rh、Pd、In、Niまたはこれらの合金等の反射率が高い材質等)を設けることができる。さらに、図8(d)に示したように、反射部材19をステム底部11に設け、反射部材19と半導体発光素子14との間に波長変換部材40を配置してもよい。
【0042】
導光部材
導光部材は、光源からの光を波長変換部材に導くための透光性部材である。導光部材は、長手方向に延伸するとともに、屈曲可能に構成されていることが好ましい。この導光部材を備えることにより、所望の位置に光を容易に導出することができる。なお、導光部材の断面は円形が好ましいが、これに限定されるものではない。導光部材20の径は、特に限定されないが、例えば、3000μm以下、1000μm以下、400μm以下、さらには200μm以下のものを用いることができる。一例として、具体的には、コア/クラッド=114/125(μm)、72/80(μm)等のものが挙げられる。導光部材20の径とは、その断面が円形でない場合は、断面における平均の長さとする。
【0043】
導光部材は、その一端が光源側に配置されており、他端が後述する波長変換部材側に配置されている。導光部材としては、発光素子からの光を波長変換部材に導くものであればよく、例えば、光ファイバを用いることができる。これにより、光源からの光を効率よく導出することができる。光ファイバは、通常、内側に屈折率の高いコアが、外側に屈折率の低いクラッドが配置されて構成される。導光部材の光源側の端部及び/又は波長変換部材側の端部の形状は特に限定されず、平面、凸状レンズ、凹状レンズ、部分的に凹凸を設けた形状等、種々の形状とすることができる。例えば、導光部材として光ファイバを用いる場合、各端部においてコア及び/又はクラッドをこれらの形状とすることができる。
【0044】
導光部材は、単線ファイバ、多線ファイバのいずれでもよい。また、単一モードファイバ、多モードファイバのいずれでもよいが、多モードファイバであることが好ましい。
導光部材の材料は特に限定されるものではなく、例えば、石英ガラス、プラスチック等が挙げられる。なかでも、コアの材料がピュアシリカ(純粋石英)によって構成されているものが好ましい。これにより、伝達損失を抑えることができる。
なお、導光部材内の一部、例えば、コア材料に、前述した蛍光体等を含有させてもよい。
【0045】
被覆部材
本発明の発光装置においては、導光部材の先端、つまり光源に接続されていない端部が、被覆部材によって支持されていることが好ましい。このような被覆部材により、導光部材からの出射光を固定することが容易となる。また、その材料や形状に応じて発光効率を向上させることができるとともに、発光装置としての組み立てが容易となる。したがって、被覆部材は、導光部材を支持し得るものであれば、どのような材料及び形状で構成されていてもよい。
【0046】
被覆部材は、励起光及び/又は波長変換された光を反射する材料、つまり、これらの光に対する反射率が高い、熱伝導性が高い、いずれかの材料又はこれらの性質を2種以上備える材料で形成されていることが好ましい。例えば、励起光及び/又は波長変換された光に対して80%以上の反射率、0.1W/m・℃以上の熱伝導性を有するものが好ましい。具体的にはAg、Al、Al23、ZrO2、SiC、SiO2、ステンレス鋼(SUS)、カーボン、銅、硫酸バリウム等が挙げられる。なかでも、Agを用いた場合には、反射率が高いため、好ましい。
【0047】
また、反射率を上げるために、被覆部材の端面にミラーをつけて鏡面反射をさせるか、乱反射をさせてもよいし、凹凸等の加工をしてもよい。これにより、一旦、導光部材から照射された励起光や波長変換された光が反射によって導光部材側に戻ってきた場合に、被覆部材によって再度反射させることにより、励起光及び波長変換された光を有効に外部に取り出すことができ、出力を向上させることができる。また、凹凸が形成されている場合には、波長変換部材の被覆部材への密着性が向上し、波長変換部材の放熱性を増大させるとともに、波長変換部材の剥がれや劣化を防止することができる。なお、鏡面反射及び/又は凹凸を有する面は、被覆部材のみならず、導光部材の端面にも形成されていることが好ましい。
【0048】
被覆部材は、例えば、導光部材の外周を取り囲むような円筒形状であってもよいし、導光部材の端面に種々の機能を付与するために各種の機能膜/部材等が一体的に又は別個に取り付けられたものでもよいし、導光部材の端面や各種機能膜/部材等を被覆するためのカバー又はキャップ等が一体的に又は別個に取り付けられたものでもよい。
【0049】
その他の部材
光源の射出側には、レンズが設けられていてもよい。
レンズは、光源から射出された光が、導光部材に集光される限り、どのような形状でもよく、光源と導光部材との間に、複数枚並べて配置してもよい。レンズは、無機ガラス、樹脂等により形成することができ、なかでも、無機ガラスが好ましい。光源と導光部材との間にレンズを備え、レンズを介して光源から射出された励起光を導光部材へ導入することができることにより、光源から射出された励起光の光出力を保ったまま、効率よく導光部材内に導光することができる。
【0050】
また、光源に備えられるレンズに蛍光体等を含有させてもよい。これにより、レンズ自体を波長変換部材として機能させることができる。レンズ機能により、波長変換された励起光が、確実に射出部に集光されるため、色バラツキを解消することができ、レンズの製造によって波長変換部材をも製造することができるために、波長変換部材の製造コストを抑えることができる。
【0051】
上述した被覆部材に取り付ける場合に限らず、本発明の発光装置には、適切な位置に各種機能膜/部材を取り付けることが好ましい。ここでの機能膜/部材としては、例えば、波長変換光反射膜、励起光反射膜、拡散防止部材、拡散部材、遮断部材等が挙げられる。
【0052】
波長変換光反射膜は、波長変換部材によって波長変換された光が、励起光入射側に戻ることを防止するとともに、励起光入射側に戻った光を反射させることにより光として外部に取り出すために利用することができる。したがって、波長変換反射膜は、特定波長の光のみを通過させ、特定波長、つまり波長変換された光を反射し得る材料により形成することが好ましい。これにより、励起光入射側に戻った光を反射することができ、発光効率の向上を図ることができる。
【0053】
励起光反射膜は、励起光が直接外部に照射されること、励起光が意図しない部分から漏れること等を防止するために利用することができる。これにより、例えば、波長変換部材内を通過するが、蛍光体等で波長変換されなかった励起光を再度波長変換部材内に戻すことにより、発光効率を向上させることができる。したがって、励起光反射膜は、波長変換された特定波長の光のみを通過させ、励起光を反射し得る材料により形成することが好ましい。
【0054】
拡散防止部材は、励起光及び/又は波長変換された光が意図しない方向に拡散することを防止するために利用することができる。したがって、拡散防止部材は、励起光又は波長変換された光を90%以上遮断する材料及び形状で構成されることが好ましい。例えば、導光部材と波長変換部材との間、つなぎ目などに、導光部材と波長変換部材との間で挟持するように配置してもよいし、導光部材と波長変換部材との境界部分を取り囲むように配置してもよいし、波長変換部材の波長変換光照射部分以外の外表面を被覆するように配置してもよい。
【0055】
拡散部材は、主として励起光を拡散させることにより、特に、波長変換部材の蛍光体等により多くの励起光を照射させ、発光効率を向上させるために利用することができる。したがって、拡散部材は、導光部材の光の出射口と波長変換部材との間に配置させることが好ましい。拡散部材は、例えば、上述した樹脂のうち、屈折率の比較的高いもの、上述した樹脂に上述したフィラーを含有するもの等を利用することが好ましい。なかでも、シリコーン樹脂にフィラーを含むものが好ましい。これにより、波長変換部材に照射される光の密度を低減でき、単位面積あたりの波長変換部材の負担を軽減することができるため、波長変換部材を構成する被覆部材の劣化、変色を軽減できる。したがって、発光効率及びリニアリティや発光出力の最大値を向上させることができる。
【0056】
遮断部材は、光源からの光を90%以上遮断するものであることが好ましい。これにより、所定の波長の光のみを取り出すことができる。例えば、人体に有害な紫外線を放出する発光素子を用いる場合、その紫外線を遮断するために紫外線吸収剤又は反射剤等を遮断部材として、光導出部において、波長変換部材に含有させて用いることができる。なかでも、より発光効率を向上させることができる観点から、反射剤を用いることが好ましい。遮断部材は、上述した励起光反射膜、拡散防止膜等としての機能をも有しているため、これらと厳密に区別して利用されていなくてもよい。
【0057】
発光装置の態様
本発明の発光装置は、図1に示したように、1つの光源と、一本の導光部材と、1つの波長変換部材とから構成されていてもよいし、1つの光源と、光源に内蔵される1つの波長変換部材と、一本の導光部材とから構成されていてもよいし、このような一単位の発光装置を複数個搭載した発光装置としてもよい。
また、1つの光源に複数本の導光部材と、それに対応した波長変換部材とを備えるように構成してもよい。また、1つの光源に複数本の導光部材と、これら導光部材からの光を1つの波長変換部材で波長変換する構成を有していてもよい。さらに、複数の光源と、それに対応する複数本の導光部材と、これら導光部材からの光を1つの波長変換部材で波長変換する構成を有していてもよい。複数の光源と、1つの導光部材と、その導光部材からの光を1つの
波長変換部材で波長変換する構成を有していてもよい。また、これらの発光装置を組み合わせて1つの発光装置として利用してもよい。
【0058】
発光装置の用途
本発明の発光装置は、例えば、通常の照明器具、車両搭載用の照明(具体的には、ヘッドライト用、テールランプ用光源等)、内視鏡装置、ファイバースコープ、電流の漏洩や発熱等を回避したい部材における光源、点光源を要求する場所や光源の取り替えが困難な場所などで使用する発光装置等として利用することができる。
【0059】
したがって、この発光装置は、撮像部材(つまり、光学像を電気信号に変換する電子部品(受光素子))、具体的には、CCD(charge-coupled device)、CMOS(CMOS image sensor)等を利用した撮像素子、電気信号を画像信号に変換する画像信号処理装置、電気信号又は測定値等を表示するインジケータ、画像信号を出力して画像を映し出すディスプレイ、各種の処理及び計算を行うコンピュータ等とともに使用することができる。特に、撮像部材として撮像素子を用いる場合には、被写体の光学像を、扱いやすいものとすることができる。
【0060】
例えば、受光素子(例えば、フォトダイオード等)は、発光装置と別体として設けてもよいが、光源における発光素子の近傍に、光ガイドの周辺にあるいは光ガイド先端部材内のいずれに設けてもよい。これにより、受光素子によって発光素子から発せられた光量を観測し、一定の光量以下の場合に、発光素子に投入される電流を調整するなどして一定の光量を維持することができる。
【0061】
本発明の発光装置は、色調バラつきが少なく、色再現性に非常に富み、演色性が非常に高いため、内視鏡装置のように、鮮明な撮像等が要求される装置との併用に極めて優れた効果を発揮する。
【0062】
さらに、本発明の発光装置は、可視光通信にも使用することができる。つまり、上述した発光装置により得られる可視光を利用し、例えば、発光装置に通信機能を付加することによりワイヤレス環境を構築することができる。これにより、光源としてレーザ素子を用いているために、数百MHzという変調速度を実現することができる。
【0063】
以下に、本発明の発光装置の具体例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1
この発光装置は、図1に示したように、光源10と、導光部材20と、被覆部材30と、波長変換部材40とを備えて構成される。
光源10としては、445nm近傍に発光ピーク波長を有するGaN系の半導体からなる発光素子10であるレーザダイオードを用いた。このレーザダイオードの前面には、レーザダイオードからの励起光1を集光するためのレンズ2を配置した。
【0064】
導光部材20は、その一端が、光源10の光の出射部に接続されており、他端が、アルミナからなる直径0.7mmの被覆部材30に接続されている。導光部材として、石英製の、例えば、SI型114(μm:コア径)/125(μm:クラッド径)を用いた。
【0065】
波長変換部材40は、表1に示すように、シリコーン樹脂中に、種々の蛍光体が均一に分散するように混合され、内側の層である第1の層40Aの外周に、第2の層40Bを配置する二重構造の円板状に成型され、図5(a)に示すように、導光部材20の先端に取り付けた。
【0066】
なお、表1において、蛍光体は、緑色に発光するLu3Al512:Ce(LAG:G)と、赤色に発光するCa0.99AlSiB0.103.1:Eu0.01(CASBN:R)と、青色に発光するCa10(PO46Cl2:Eu(CCA:B)と、黄色に発光するYAG(Y)とを使用した。これらの蛍光体を、シリコーン樹脂中に均一になるまで混練している。このとき、蛍光体と樹脂との割合は、重量比で2〜40:98〜60程度で、適宜調整した。
【0067】
また、この波長変換部材40には、レーザダイオードから射出される光を拡散するための拡散剤(例えば、SiO2フィラー)を混合した。この場合の波長変換部材40の膜厚は、例えば、500μm程度とした。
【表1】

【0068】
特に、表1中のNo.2で、Lu3Al512:Ce(LAG:G)と樹脂との割合が、重量比で33:67、Ca0.99AlSiB0.103.1:Eu0.01(CASBN:R)と樹脂との割合が重量比で4:96とした波長変換部材を用いて、発光させたところ、図6の実線に示すような光出力特性を示した。また、比較例として、1層構造で、LAG:CASBN:樹脂(32:1:67)を用いて波長変換部材を作製し、同様に発光させたところ、図6の破線に示すような光出力特性を示した。つまり、複数層/領域の構造を用いることにより、直線性が向上し、最大光束が増大していることが確認された。なお、これらのいずれにおいても、同じ蛍光体を用いていることから、スペクトル分布は、ほぼ同様であった。
【0069】
この発光装置では、レーザダイオードから射出された励起光1は、レンズ2を透過して射出部に集光され、集光された励起光1は、導光部材20を通して、波長変換部材40の蛍光体に照射されて波長が変換されることにより、平均演色評価数(Ra)が80以上と、良好な白色系の混色を発光した。
【0070】
得られた発光装置においては、光源に近い側(内側の第1の層、A層)に励起光に対する耐性の高い第1の蛍光体を、光源から遠い側(外側の第2の層、B層)に励起光に対する耐性の低い第2の蛍光体を、それぞれ配置させることにより、波長変換部材が熱等により劣化するのを効果的に軽減することができる。また、第1の層に含まれる第1の蛍光体により、光が散乱され、光密度が低下するので、第2の層における第2の蛍光体の発熱をより軽減させることができる。
【0071】
あるいは、光源に近い側(内側の第1の層、A層)に励起光を透過する透光性材料を、もしくは光源の波長では励起されない第1の蛍光体を配置し、光源から遠い側(外側の第2の層、B層)に励起光により波長変換する第2の蛍光体を、それぞれ配置させることにより、波長変換部材が熱等により劣化するのを効果的に軽減することができる。特に、第1の層に含まれるフィラーにより、光が散乱され、光密度が低下するので、第2の層における第2の蛍光体の発熱をより軽減させることができる。
その結果、発光出力の高い信頼性のある発光装置とすることができる。
【0072】
実施例2
この発光装置は、波長変換部材40が、表2に示すように、透光性材料中に、種々の蛍光体が均一に分散するように混合され、内側の層である第1の層40Aの外周に、第2の層40B、さらにその外側に第3の層40Cを配置する三重構造の円板状に成型され、図5(b)に示すように、導光部材20の先端に取り付けられている以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【表2】

【0073】
得られた発光装置は、実施例1と同様に、波長変換部材40の熱等による劣化を大幅に軽減させることができる。その結果、発光出力の高い信頼性のある発光装置とすることができる。
【0074】
実施例3
この発光装置は、波長変換部材40が、表3に示すように、透光性材料中に、種々の蛍光体が均一に分散するように混合され、内側の第1の層40Aの外周に第2の層40Bを配置する二重の球状に成型され、図5(c)に示すように、導光部材20の先端に取り付けられている以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【表3】

【0075】
得られた発光装置は、実施例1と同様に、波長変換部材40の熱等による劣化を大幅に軽減させることができる。その結果、発光出力の高い信頼性のある発光装置とすることができる。
特に、波長変換部材が球状に成形されることにより、内側に導入された励起光を、効率よく波長変換しながら、一般に最も劣化しやすい波長変換部材と導光部材との界面の接触面積を最小限に止め、導光部材に最も近い波長変換部材の部位を、励起光により生じる熱が低い材料又は耐性が高い材料で形成することができるために、波長変換部材の熱等による劣化をより軽減させることができる。
【0076】
実施例4
この発光装置は、波長変換部材40が、表4に示すように、透光性材料中に、種々の蛍光体が均一に分散するように混合され、内側の第1の層40Aの外周に第2の層40B、さらにその外側に第3の層40Cを配置する三重の球状に成型され、図5(d)に示すように、導光部材20の先端に取り付けられている以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【表4】

【0077】
得られた発光装置は、実施例3と同様に、波長変換部材40の熱等による劣化をより大幅に軽減させることができる。その結果、発光出力の高い信頼性のある発光装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の発光装置は、照明器具、車両搭載用照明、ディスプレイ、インジケータ等に利用することができる。また、生体内部を撮像する内視鏡装置、狭い隙間及び暗い空間等を照明することができるファイバースコープ、電流の漏洩や発熱のない照明を必要とする各種工業用の装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の発光装置の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の発光装置における波長変換部材の構造を説明するための概略構成図である。
【図3】本発明の発光装置における波長変換部材の別の構造を説明するための概略構成図である。
【図4】本発明の発光装置における波長変換部材のさらに別の構造を説明するための概略構成図である。
【図5】本発明の発光装置における先端部分の構造を示す概略構成図である。
【図6】実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の発光装置における別の光源及び/又は波長変換部材の構造を説明するための概略構成図である。
【図8】本発明の発光装置におけるさらに別の光源及び/又は波長変換部材の構造を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1 励起光
2 光
10 光源
11 ステム底部
12 ステム柱体
13 サブマウント
14 半導体発光素子
15 キャップ本体
16 リード
17 透光性材料
18 第2のキャップ本体
19 反射部材
20 導光部材
30 被覆部材
40 波長変換部材
40A 第1の層
40B 第2の層
40C 第3の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を射出する光源と、
前記励起光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を射出する波長変換部材と、を有しており、
前記波長変換部材は、前記励起光が最初に導入される部位に配置される円柱状の層と、該円柱状の層の外周に配置される少なくとも1つの円筒状の層とを備え、かつ前記円柱状の層が前記円筒状の層よりも、前記励起光に対する耐性の高い材料で形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記円柱状の層と前記円筒状の層とが同心円となるように配置されている請求項1に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−114471(P2012−114471A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58117(P2012−58117)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2007−138835(P2007−138835)の分割
【原出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】