説明

発振回路、集積回路装置及び電子機器

【課題】待機時での無駄な電力消費を抑止しながら通常動作時では高精度な発振周波数を得ることができる発振回路、集積回路装置及び電子機器等の提供。
【解決手段】発振回路は、振動子XTALの発振用のバッファー回路BFと、バッファー回路BFの入力側又は出力側の一方側である第1の接続ノードに接続され、容量値が可変に設定される可変容量回路CX1(CX2)を含む。通常動作時には、可変容量回路CX1(CX2)の容量値はCNに設定され、待機時には、可変容量回路CX1(CX2)の容量値はCSに設定され、CN>CSの関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水晶振動子等の振動子を用いた発振回路が知られている。このような振動子を用いた発振回路によれば、キャパシターと抵抗を用いたCR発振回路に比べて、高精度なクロック信号を取得できる。このような発振回路の従来技術としては例えば特許文献1に開示される技術が知られている。
【0003】
この従来技術では、温度センサーにより温度を測定し、測定された温度に応じて水晶発振回路の負荷容量を変化させる。こうすることで、温度変動があった場合にも、クロック精度を保つことができ、精度の高い温度補償を実現できる。
【0004】
しかしながら、この従来技術を例えば無線通信装置に適用した場合に、次のような問題が発生する。即ち、無線の送信動作や受信動作で高精度な発振周波数が必要な場合のみならず、無線通信装置の待機状態で、それほど高精度な発振周波数が必要でない場合にも、発振回路は、同じ負荷容量で発振することになってしまう。従って、待機時において発振回路において無駄な電力が消費されてしてしまう問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、待機時での無駄な電力消費を抑止しながら通常動作時では高精度な発振周波数を得ることができる発振回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、振動子の発振用のバッファー回路と、前記バッファー回路の入力側又は出力側の一方側である第1の接続ノードに接続され、容量値が可変に設定される可変容量回路とを含み、通常動作時には、前記可変容量回路の容量値はCNに設定され、待機時には、前記可変容量回路の容量値はCSに設定され、CN>CSである発振回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、バッファー回路と可変容量回路が設けられる。そして通常動作時では、可変容量回路の容量値はCSよりも大きいCNに設定され、待機時では、CNよりも小さいCSに設定される。従って、通常動作時では、待機時に比べて発振周波数を高精度にすることができる。一方、待機時には、負荷容量である可変容量回路の容量値が減少することで、省電力化を図れる。従って、待機時での無駄な電力消費を抑止しながら通常動作時において高精度な発振周波数を得ることが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記振動子及び前記バッファー回路により生成される発振信号の波形整形を行って、クロック信号を出力する波形整形回路を含み、前記波形整形回路は、前記バッファー回路の入力側又は出力側の波形整形ノードに一端が接続される第1の波形整形用AC結合キャパシターと、前記波形整形ノードに一端が接続される第2の波形整形用AC結合キャパシターと、前記第1の波形整形用AC結合キャパシターの他端側の第1のバイアスノードを、第1のバイアス電圧に設定する第1の自己バイアス電圧設定回路と、前記第2の波形整形用AC結合キャパシターの他端側の第2のバイアスノードを、第2のバイアス電圧に設定する第2の自己バイアス電圧設定回路と、前記第1のバイアスノードによりゲートが制御されるN型トランジスターと、前記第2のバイアスノードによりゲートが制御されるP型トランジスターを有する波形整形用バッファー回路とを含んでもよい。
【0010】
このような波形整形回路を設ければ、例えば発振信号のAC成分を取り出して、波形整形を行い、クロック信号を得ることが可能になる。従って、待機時等における電力消費の更なる低減のために、発振信号の振幅を小振幅にした場合にも、適正なクロック信号を得ることが可能になる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記振動子及び前記バッファー回路により生成される発振信号の振幅を検出し、前記発振信号の振幅が一定になるように、前記バッファー回路に流れる電流を制御する電流制御回路を含んでもよい。
【0012】
このようにすれば、例えば発振信号の振幅が小さくなった場合には、バッファー回路に流れる電流を増加させ、発振信号の振幅が大きくなった場合には、バッファー回路に流れる電流を減少させるというような電流制御が可能になる。これにより、発振信号の振幅を小振幅にした場合にも、安定した発振を維持することが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記電流制御回路は、前記バッファー回路の入力側又は出力側の振幅検出ノードに一端が接続される振幅検出用AC結合キャパシターと、前記振幅検出用AC結合キャパシターの他端に接続され、前記発振信号の振幅を電圧に変換する振幅・電圧変換回路と、前記振幅・電圧変換回路からの電圧に基づいて、前記バッファー回路に流れる電流を制御する電圧・電流変換回路とを含んでもよい。
【0014】
このようにすれば、発振信号の振幅が小振幅である場合にも、発振信号の振幅のAC成分を電圧に変換し、得られた電圧に基づいて、バッファー回路に流れる電流を制御できるようになる。これにより、発振信号の振幅を一定にする電流制御を実現できる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記可変容量回路は、容量制御信号により容量値が可変に設定されてもよい。
【0016】
このようにすれば、容量制御信号を用いて、発振周波数を所望の周波数に設定できるようになる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記可変容量回路は、前記第1の接続ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる複数のユニットキャパシターと、前記第1の接続ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる複数のスイッチ素子を含み、前記複数のスイッチ素子の各スイッチ素子は、前記複数のユニットキャパシターのうちの対応するユニットキャパシターと直列に設けられ、前記容量値制御信号により前記複数のスイッチ素子がオン・オフされることで、前記可変容量回路の容量値が設定されてもよい。
【0018】
このようにすれば、容量値制御信号によりスイッチ素子のオン・オフを制御することで、可変容量回路の容量値を可変に設定できる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記複数のユニットキャパシターは、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造のキャパシターであってもよい。
【0020】
このようにすれば、小さなレイアウト面積で大きな容量値を得ることが可能になると共に、静電気に対する耐性も向上できる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記バッファー回路の入力側又は出力側の他方側である第2の接続ノードに接続され、容量値が可変に設定される第2の可変容量回路を含んでもよい。
【0022】
このようにバッファー回路の入力側及び出力側の両方に可変容量回路を設ければ、バランスの良い発振動作を実現できる。
【0023】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の発振回路を含む集積回路装置に関係する。
【0024】
また本発明の他の態様では、前記待機時に、前記発振回路からの待機時用クロック信号に基づいて動作する待機時用回路を含み、前記待機時用回路は、前記可変容量回路の容量値がCSに設定されることで生成された前記待機時用クロック信号に基づいて、動作してもよい。
【0025】
このようにすれば、集積回路装置の待機時においても、発振回路からの待機時用クロック信号に基づいて待機時用回路を動作させて、待機時に必要な動作を実行できる。
【0026】
また本発明の他の態様では、前記待機時用回路は、待機期間をカウントする待機時用カウンターを含み、前記待機時用カウンターは、前記待機時用クロック信号を用いてカウント処理を行ってもよい。
【0027】
このようにすれば、発振回路からの待機時用クロック信号に基づいて待機期間のカウント処理を実現できる。
【0028】
また本発明の他の態様では、前記待機期間の変動が所定変動幅に収まるように、前記待機時における前記可変容量回路の容量値CSが設定されてもよい。
【0029】
このようにすれば、可変容量回路の容量値CSが小さな値に設定されることで、待機時用クロック信号の周波数精度が低くなった場合にも、待機期間の変動幅を、ある程度の変動幅に収めることが可能になる。
【0030】
また本発明の他の態様では、前記通常動作時に無線通信を行う無線回路を含み、前記無線回路は、前記可変容量回路の容量値がCNに設定されることで生成された通常動作時用クロック信号に基づいて、動作してもよい。
【0031】
このようにすれば、可変容量回路の容量値をCNに設定することで得られた高精度の通常動作時用のクロック信号を用いて、無線回路の無線通信を実現できるようになる。
【0032】
また本発明の他の態様では、前記無線通信の搬送波周波数の変動が所定変動幅に収まるように、前記通常動作時における前記可変容量回路の容量値CNが設定されてもよい。
【0033】
このようにすれば、可変容量回路の容量値CNを大きな値に設定することで、通常動作時用クロック信号の周波数精度を高めて、搬送波周波数の変動幅を狭い範囲に収めることが可能になる。
【0034】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の集積回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1(A)は本実施形態の発振回路の構成例であり、図1(B)は本実施形態の容量値設定手法の説明図。
【図2】図2(A)、図2(B)は本実施形態の容量値設定手法の説明図。
【図3】可変容量回路の構成例。
【図4】MIM構造のキャパシターの説明図。
【図5】本実施形態の発振回路の詳細な構成例。
【図6】波形整形回路の構成例。
【図7】電流制御回路の構成例。
【図8】振幅・電圧変換を説明する信号波形例。
【図9】集積回路装置の構成例。
【図10】集積回路装置の動作説明図。
【図11】集積回路装置の詳細な構成例。
【図12】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0037】
1.発振回路
図1(A)に本実施形態の発振回路の構成例を示す。なお本実施形態の発振回路は図1(A)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0038】
図1(A)の発振回路は、水晶振動子等の振動子XTALの発振用のバッファー回路BFと、可変容量回路CX1、CX2を含む。
【0039】
発振用のバッファー回路BFは、振動子XTALを発振させるためのバッファー回路(増幅回路)であり、図1(A)ではインバータ回路(反転回路)により実現される。このバッファー回路BFは、振動子XTALの一端と他端の間に設けられる。そして図1(A)では、バッファー回路BFの入力ノードがパッドP1を介して振動子XTALの一端に接続され、バッファー回路BFの出力ノードがパッドP2を介して振動子XTALの他端に接続される。
【0040】
なおバッファー回路BFの入力ノードと振動子XTALの一端との間や、バッファー回路BFの出力ノードと振動子XTALの他端のと間に、例えば静電破壊用の保護抵抗などの他の回路素子を設けてもよい。また、振動子XTALの一端での信号と他端での信号の位相差が180度になるという発振条件を満たしていれば、バッファー回路BFはインバータ回路以外の回路であってもよい。また振動子XTALは、水晶振動子には限定されず、SAW(弾性表面波)デバイスなどの種々の振動子を用いることができる。また外付け部品として、振動子XTALの帰還抵抗素子(例えば1Mオーム程度の抵抗)を設けてもよい。
【0041】
パッドP1、P2は、本実施形態の発振回路が設けられる集積回路装置(IC)と外部デバイスを接続するための外部接続端子である。図1(A)では、バッファー回路BFの入力側はパッドP1を介して、外付け部品(外部デバイス)である水晶振動子等の振動子XTALの一端に接続され、バッファー回路BFの出力側はパッドP2を介して振動子XTALの他端に接続される。
【0042】
第1の可変容量回路CX1は、バッファー回路BFの入力側の第1の接続ノードNC1に接続され、その容量値が可変に設定される。即ち可変容量回路CX1が含むキャパシターは、接続ノードNC1とVSSノード(広義には第1の電源ノード)との間に設けられ、そのキャパシターの容量値が可変に設定される。第2の可変容量回路CX2は、バッファー回路BFの出力側の第2の接続ノードNC2に接続され、その容量値が可変に設定される。即ち可変容量回路CX2が含むキャパシターは、接続ノードNC2とVSSノード(第1の電源ノード)との間に設けられ、そのキャパシターの容量値が可変に設定される。
【0043】
これらの可変容量回路CX1、CX2の容量値は、例えば外部からの容量値制御信号等により、所与の範囲内で任意に変更することができる。例えば容量値制御信号によるnビットでデジタルデータにより2段階に容量値を設定できる。或いはバラクター等の容量素子をアナログ的な制御電圧で制御して、容量値を可変に設定してもよい。
【0044】
なお図1(A)では、接続ノードNC1、NC1の両方に可変容量回路CX1、CX2を設けているが、接続ノードNC1、NC1の一方にのみ可変容量回路を設けてもよい。即ち、その容量値が可変な可変容量回路は、バッファー回路BFの入力側又は出力側の少なくとも一方側の接続ノードに設けられていればよい。例えば接続ノードNC1、NC2の一方のノードにのみ可変容量回路を接続し、他方のノードには、容量値が可変に設定されない容量回路(キャパシター)を接続してもよい。或いは他方のノードには内蔵の容量回路を設けずに、外付け部品であるキャパシターを用いるようにしてもよい。
【0045】
そして本実施形態では、通常動作時には、可変容量回路CX1の容量値はCNに設定され、待機時には、可変容量回路CX1の容量値はCSに設定され、CN>CSの関係が成り立つ。同様に、通常動作時には、可変容量回路CX2の容量値はCNに設定され、待機時には、可変容量回路CX2の容量値はCSに設定され、CN>CSの関係が成り立つ。
【0046】
なお可変容量回路CX1とCX2の容量値(CN、CS)は、発振時のバランスを考えると同じ容量値であることが望ましいが、異なる容量値であってもよい。また、待機時とは、集積回路装置が通常動作を行わずに待機モード(スリープモード、スタンバイモード)に移行している期間であり、例えば通常動作時よりも低消費電力動作になる期間である。また通常動作時とは、例えば無線用の集積回路装置であれば、無線の受信動作や送信動作など、その集積回路装置が本来予定している通常の処理・動作を行っている期間である。
【0047】
例えば本実施形態では、高精度周波数を必要とする通常動作モード(第1のモード)なのか、それほどの高精度周波数が必要ではない待機モード(第2のモード)なのかを、事前に検知する。そして通常動作モードでは、可変容量回路CX1、CX2の容量値を大きな容量値CNに設定する。こうすることで、発振信号により生成されるクロック信号の周波数精度を高くできる。一方、待機モードでは、可変容量回路CX1、CX2の容量値を小さな容量値CSに設定する。こうすることで、図1(B)に示すように動作電流を小さくすることができ、低消費電力化を図れる。
【0048】
即ち、無線の受信や送信などの通常動作時には、可変容量回路CX1、CX2は大きな容量値CNに設定されるため、バッファー回路BFの負荷容量が増えることにより、図1(B)に示すように通常動作時電流IDDNは大きくなる。一方、低消費電力動作モードである待機時には、可変容量回路は小さな容量値CSに設定されるため、バッファー回路BFの負荷容量が減ることにより、待機時電流IDDSは通常動作時電流IDDNに比べて小さくなる。従って、高精度周波数が不要な待機モードにおいて、発振回路の動作電流を低減できる。
【0049】
図2(A)は、可変容量回路の容量値と周波数偏差の関係を示す図である。ここで周波数偏差は、発振のターゲット周波数からの周波数のずれを表すものである。
【0050】
図2(A)に示すように、可変容量回路の容量値(内蔵発振容量値)が大きくなるほど、周波数偏差(ターゲット周波数からの周波数のずれ)は小さくなり、発振周波数の精度が高くなる。従って、通常動作時に、図2(A)のA1に示すように大きな容量値CNに設定することで、高い周波数精度のクロック信号を得ることができる。一方、待機時では、A2に示すように小さな容量値CSに設定することで、周波数精度は低下するが、待機モードであるため、それほど問題は生じない。
【0051】
図2(B)は、可変容量回路の容量値と動作電流の関係を示す図である。図2(B)に示すように、可変容量回路の容量値が大きくなるほど、発振回路の動作電流(消費電流)は増加する。従って、待機時に、図2(B)のA4に示すように小さな容量値CSに設定することで、A3に示す通常動作時に比べて動作電流を少なくすることができ、低消費電力化を図れる。
【0052】
例えば図2(A)のA1に示すように、ターゲット周波数(例えば16MHz)に対する周波数偏差が0付近になるように容量値をCNに設定することで、発振回路の発振周波数をターゲット周波数に設定できる。この場合に、ターゲット周波数に設定するための容量値CNは、配線・基板・素子の寄生容量やプロセス変動などの外部要因で変動するため、例えば集積回路装置の出荷時等において、周波数偏差が0付近になる最適な容量値CNに設定する。これにより、例えば通信における搬送波周波数の周波数精度に関する規格を満足することが可能になる。
【0053】
ところが、このような高精度な周波数設定は、通常動作では必要であるものの、通信等の通常動作が行われない待機時においては不要になる。そこで待機時では、周波数偏差が大きくなるにもかかわらず、敢えて図2(A)のA2に示すように小さな容量値CSに設定する。これにより図2(B)のA4に示すように待機時の動作電流を小さくできる。例えば図2(B)のA3の通常動作時では7〜8μAであった動作電流を、A4の待機時には、3〜4μAに低減できる。そして待機時において消費電流の多くを占めるものは、発振回路の消費電流であるため、A4に示すように発振回路の消費電流を低減することで、待機時における集積回路装置の消費電流を大幅に削減できる。
【0054】
なお、待機時の容量値CSは例えば0pFであってもよい。即ち可変容量回路の容量値を0にする。このようにしても、配線・基板・回路素子の寄生容量が発振用の容量として機能して、待機時における発振を維持できる。
【0055】
2.可変容量回路
図3に可変容量回路CX1、CX2の構成例を示す。例えば可変容量回路CX1は、複数のユニットキャパシターC11、C12、C13、C14と複数のスイッチ素子S11、S12、S13、S14を含む。
【0056】
ユニットキャパシターC11、C12、C13、C14は、接続ノードNC1とVSSノード(第1の電源ノード)との間に設けられる。そしてC11、C12、C13、C14の容量値は、例えば1:2:4:8になっており、バイナリーに重み付けされている。
【0057】
スイッチ素子S11、S12、S13、S14は、接続ノードNC1とVSSノード(GND)との間に設けられる。これらのスイッチ素子S11、S12、S13、S14は、例えばトランスファーゲート(トランジスター)により実現できる。
【0058】
そして複数のスイッチ素子S11、S12、S13、S14の各スイッチ素子は、複数のユニットキャパシターC11、C12、C13、C14のうちの対応するユニットキャパシターと直列に設けられる。即ちC11とS11、C12とS12、C13とS13、C14とS14が直列接続される。
【0059】
そして外部の制御回路等からの容量値制御信号SCTLにより、複数のスイッチ素子S11、S12、S13、S14がオン・オフされることで、可変容量回路CX1の容量値が可変に設定される。例えば図3ではスイッチ素子S11、S12がオンであり、S13、S14がオフであるため、可変容量回路CX1の容量値は、C11とC12の並列容量値になる。
【0060】
なお可変容量回路CX2の構成は可変容量回路CX1と同様であるため、説明を省略する。また図3では可変容量回路CX1とCX2のスイッチ素子が同じ容量値制御信号SCTLにより制御される場合を示しているが、CX1とCX2とで異なる容量値制御信号を用いるようにしてもよい。
【0061】
例えば、発振回路を含む集積回路装置の出荷時(製造時)等において、可変容量回路のスイッチ素子のオン・オフを設定することで、図2(A)のA1に示すように、ターゲット周波数との周波数偏差が0付近になるように、通常動作時における可変容量回路の容量値CNを設定する。これによりクロック周波数をターゲット周波数(例えば16MHz)に設定できる。この状態で、待機時には、容量値CSに設定することで、発振周波数はターゲット周波数からずれるものの、低消費電力化を図れる。
【0062】
図3のユニットキャパシターC11〜C14、C21〜C24としては、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造のキャパシターを用いることができる。具体的には図4に示すように、キャパシターC(C11〜C14、C21〜C24)の一端の電極は、金属層ALDの下層金属層ALCで形成される。またキャパシターCの他端の電極は、金属層ALDと下層金属層ALCとの間に形成されたMIM用金属層ALMで形成される。
【0063】
このようなMIM構造のキャパシターを採用すれば、絶縁膜(誘電体、酸化膜)の厚さを薄くできるため、小さなレイアウト面積で大きな容量値を得ることができる。またMIM構造のキャパシターは、電圧依存性が少ないという利点もある。また図3では、集積回路装置のパッドP1、P2に静電気が印加される場合があり、静電気破壊(ESD)が生じるおそれがある。C11〜C14、C21〜C24としてMIM構造のキャパシターを用いれば、MIM構造のキャパシターは静電気耐圧が高いため、静電気破壊を抑止できる。
【0064】
なおC11〜C14、C21〜C24として、例えば両端の電極がポリシリコンで形成されるキャパシターや、一端の電極がポリシリコンで形成され、他端の電極が金属層で形成されるキャパシターなどを用いてもよい。
【0065】
3.詳細な構成例
図5に本実施形態の発振回路の詳細な構成例を示す。なお本実施形態の発振回路は図5の構成に限定されず、その構成要件の一部を省略したり、他の構成要件を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0066】
図5において、第1の保護抵抗素子R1は、第1のパッドP1側の第1の接続ノードNC1と、バッファー回路BFの入力ノードNIとの間に設けられる。第2の保護抵抗素子R2は、第2のパッドP2側の第2の接続ノードNC2と、バッファー回路BFの出力ノードNQとの間に設けられる。これらの保護抵抗素子R1、R2は、パッドP1、P2を介して印加される静電気から、バッファー回路BFのトランジスターのゲートやドレインを保護するためのESD保護抵抗として機能する。保護抵抗素子R1、R2は、例えば数百オームの抵抗値を有し、例えばポリシリコン抵抗、或いは拡散抵抗などで実現できる。
【0067】
I/OセルIO1は、接続ノードNC1とVSSノード(広義には第1の電源ノード)との間に設けられる保護ダイオードDI1Aと、接続ノードNC1とVDDノード(広義には第2の電源ノード)との間に設けられる保護ダイオードDI1Bを含む。I/OセルIO2は、接続ノードNC2とVSSノードとの間に設けられる保護ダイオードDI2Aと、接続ノードNC2とVDDノードとの間に設けられる保護ダイオードDI2Bを含む。これらの保護ダイオードDI1A、DI1B、DI2A、DI2Bは、パッドP1、P2からの静電気をVDD側やVSS側に逃がすためのESD保護素子として機能し、例えば半導体のPN接合により実現される。I/OセルIO1、IO2は、一般的には、信号の入出力バッファーも含むが、図5ではこの入出力バッファーは使用せずに、保護ダイオードだけを使用している。
【0068】
制御回路20は、各種の制御処理を行うロジック回路である。この制御回路20は、現在の状態(モード)が通常動作状態(通常動作モード)なのか、待機状態(待機モード)なのかを管理している。
【0069】
通常動作時用設定ファイル(通常動作時用設定レジスター)には、通常動作時に使用される容量値の設定データが記述(記憶)されている。待機時用設定ファイル(待機時用設定レジスター)には、待機時に使用される容量値の設定データが記述(記憶)されている。
【0070】
そして通常動作時には、制御回路20からの指示信号により、セレクターSELが通常動作時用設定ファイルを選択する。これにより可変容量回路CX1、CX2の容量値は、通常動作時用の容量値CNに設定される。一方、待機時には、制御回路20からの指示信号により、セレクターSELが待機時用設定ファイルを選択する。これにより可変容量回路CX1、CX2の容量値は、待機用の容量値CSに設定される。
【0071】
波形整形回路30は、発振信号SOCの波形整形を行う。具体的には振動子XTAL及びバッファー回路BFにより生成される発振信号SOCの波形整形を行って、クロック信号CLKを出力する。そして分周回路40は、クロック信号CLKの分周を行う。そして分周回路40は、通常動作時用のクロック信号CKN1、CKN2や待機時用のクロック信号CKSを出力する。
【0072】
例えば振動子XTALの発振周波数が16MHzであり、発振回路が設けられる集積回路装置が無線通信用である場合に、分周回路40は、通常動作時に、クロック信号CKN1として、ベースバンド処理用の16MHzのクロック信号を出力する。そしてこの16MHzのクロック信号CKN1を用いて、受信データの復調処理や送信データの変調処理などのベースバンド処理が実行される。
【0073】
また分周回路40は、通常動作時に、クロック信号CKN2として、PLL(Phase locked Loop)回路用の例えば0.5MHz又は1MHzのクロック信号を出力する。例えば受信時には0.5MHzのクロック信号がCKN2として出力され、CKN2を基準クロック信号として、PLL回路により局所周波数信号が生成される。そして例えば2.4GHzの搬送波周波数の受信信号のダウンコンバージョン処理が行われる。また送信時には1MHzのクロック信号がCKN2として出力され、CKN2を用いて送信処理が行われる。
【0074】
また分周回路40は、待機動作時に、クロック信号CKSとして、待機時用の例えば32KHzのクロック信号を出力する。そして、この32KHzの待機時用のクロック信号CKSを用いて、待機時用回路が動作する。この場合に待機時用のクロック信号CKSの周波数は32KHzというように低周波数であるため、低消費電力化を図れる。
【0075】
そして通常動作時においては、可変容量回路CX1、CX2の容量値はCNに設定されるため、例えば16MHz±50ppmというような高精度な発振信号を生成できる。従って、この高精度の発振信号を用いて適正な受信処理や送信処理を実現できる。一方、待機時においては、可変容量回路CX1、CX2の容量値はCSに設定されるため、例えば16MHz±500ppmというような低精度の発振信号が生成される。しかしながら、待機時用の32KHzのクロック信号CKSには、それほどの精度が必要ないため、問題は生じない。
【0076】
例えば本実施形態の比較例として、16MHzの振動子を用いた第1の発振回路と、32KHzの振動子を用いた第2の発振回路を別々に設ける手法も考えられる。この比較例の手法では、例えば通常動作時においては、第1の発振回路だけを動作させて、第2の発振回路を非動作にする。そして第1の発振回路からのクロック信号に基づいて、集積回路装置の通常動作を実現する。一方、待機時においては、第2の発振回路だけを動作させて、第1の発振回路を非動作にする。そして第2の発振回路からのクロック信号に基づいて、集積回路装置の待機時の動作を実現する。
【0077】
しかしながら、この比較例の手法では、外付け部品として2つの振動子が必要になってしまい、コスト増を招く。これに対して本実施形態によれば、1つの発振回路だけを用いて、通常動作時用のクロック信号と待機時用のクロック信号の両方を生成できるという利点がある。
【0078】
電流制御回路50は、バッファー回路BFに流れる電流IB(動作電流、ショート電流)を制御する。具体的には、電流制御回路50は、振動子XTAL及びバッファー回路BFにより生成される発振信号SOCの振幅を検出する。そして発振信号SOCの振幅が一定になるように、バッファー回路BFに流れる電流IBを制御する。このようにすることで、発振回路の消費電流を最小限に抑えながら、安定した発振状態を維持できるようになる。
【0079】
なお図5では、波形整形回路30は、バッファー回路BFの入力側のノードNC1からの発振信号SOCの波形整形を行っているが、バッファー回路BFの出力側のノードNC2からの発振信号の波形整形を行ってもよい。同様に、図5では電流制御回路50は、入力側のノードNC1からの発振信号SOCの振幅を検出しているが、出力側のノードNC2からの発振信号の振幅を検出して、電流IBの制御を行ってもよい。
【0080】
4.波形整形回路
本実施形態の発振回路では、発振信号の振幅を極力小さくすることで、低消費電力化を図っている。具体的には電流制御回路50により、発振信号の振幅が例えば数百mV(例えば300mV)になるように電流制御を行って、低消費電力化を図る。従って、このような数百mVの小振幅の発振信号を、CMOS電圧レベル(例えば1.8V)のクロック信号CLKに波形整形する必要があり、このために波形整形回路30が設けられている。
【0081】
図6に波形整形回路30の構成例を示す。なお本実施形態の波形整形回路30は図6の構成に限定されず、その構成要件の一部を省略したり、他の構成要件を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0082】
この波形整形回路30は、第1、第2の波形整形用のAC結合キャパシターCA1、CA2と、第1、第2の自己バイアス電圧設定回路BSC1、BSC2と、波形整形用のバッファー回路32を含む。
【0083】
AC結合キャパシターCA1、CA2は、発振用のバッファー回路BFの入力側又は出力側の波形整形ノードに一端が接続される。図5では、この波形整形ノードは、発振用のバッファー回路BFの入力側の接続ノードNC1になっている。但し、波形整形ノードは、バッファー回路BFの出力側の接続ノードNC2であってもよい。
【0084】
そしてAC結合キャパシターCA1、CA2により、発振信号SOCのDC成分がカットされて、AC成分が抽出される。なお、これらのAC結合キャパシターCA1、CA2は、MIM構造のキャパシターであることが望ましい。こうすることで、パッドP1、P2を介して印加された静電気から、内部回路を保護して、内部回路の静電気破壊を防止できる。
【0085】
自己バイアス電圧設定回路BSC1は、AC結合キャパシターCA1の他端側の第1のバイアスノードNBS1を、第1のバイアス電圧VBS1に設定する。例えばVDD=1.8Vの場合には、バイアスノードNBS1のDC電圧レベルを、例えばVBS1=0.6V〜0.8V程度に設定する。これにより、バイアス電圧VBS1を振幅中心にして、発振信号SOCのAC成分が重畳された信号が生成されるようになる。この自己バイアス電圧設定回路BSC1は、DC電圧源DC1とバイアス電圧設定用の抵抗RB1を含む。
【0086】
自己バイアス電圧設定回路BSC2は、AC結合キャパシターCA2の他端側の第2のバイアスノードNBS2を、第2のバイアス電圧VBS2に設定する。例えばVDD=1.8Vの場合には、バイアスノードNBS2のDC電圧レベルを、例えばVBS2=1.0〜1.2V程度に設定する。これにより、バイアス電圧VBS2を振幅中心にして、発振信号SOCのAC成分が重畳された信号が生成されるようになる。この自己バイアス電圧設定回路BSC2は、DC電圧源DC2とバイアス電圧設定用の抵抗RB2を含む。
【0087】
バッファー回路32は、N型トランジスターTA1とP型トランジスターTA2を含む。N型トランジスターTA1は、バイアスノードNBS1によりそのゲートが制御される。P型トランジスターTA2は、バイアスノードNBS2によりそのゲートが制御される。これらのN型トランジスターTA1とP型トランジスターTA2により、インバーターIV0が構成される。そしてインバーターIV0により波形整形されてバッファリングされた信号が、インバータIV1、IV2、IV3により更にバッファリングされて、CMOS電圧レベルの矩形波のクロック信号CLKが、バッファー回路32から出力されるようになる。
【0088】
図6の構成の波形整形回路30によれば、振幅の小さい発振信号SOCを、AC結合キャパシターCA1、CA2により、低電位側のVBS1を中心とした信号と、高電位側のVBS2を中心とした信号に分離する。そして、これらの分離した各信号をバッファー回路32のトランジスターTA1、TA2の各ゲートに印加する。これにより、電源電圧VDDに対して発振信号SOCの振幅が十分に小さい場合にも、発振信号SOCの波形整形を行って、CMOS電圧レベルのクロック信号CLKを生成できるようになる。
【0089】
5.電流制御回路
本実施形態では、特に待機時における発振回路の消費電力を低減するために、電流制御回路50が、バッファー回路BFに流れる電流IBを制御する。例えば発振信号SOCの振幅が小さくなり発振が停止しそうになると、これを検知して電流IBを増加させる。これにより振幅が増加して発振が継続する。一方、発振信号SOCの振幅が大きくなると、電流IBを減少させる。これにより振幅が減少して振幅が一定に保たれる。こうすることで、発振信号SOCの振幅を小さな振幅で一定に保てるため、低消費電力化を図れる。そして、このように発振信号SOCの振幅が小さくても、図6により説明した波形整形回路30を用いることで、低振幅のサイン波の発振信号SOCから、CMOS電圧レベルの矩形波のクロック信号CLKを生成できる。
【0090】
図7に電流制御回路50の構成例を示す。なお本実施形態の電流制御回路50は図7の構成に限定されず、その構成要件の一部を省略したり、他の構成要件を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0091】
この電流制御回路50は、振幅検出用のAC結合キャパシターCBと、振幅・電圧変換回路52と、電圧・電流変換回路54を含む。
【0092】
AC結合キャパシターCBは、発振用のバッファー回路BFの入力側又は出力側の振幅検出ノードに一端が接続される。図5では、この振幅検出ノードは、発振用のバッファー回路BFの入力側の接続ノードNC1になっている。但し、振幅検出ノードは、発振用のバッファー回路BFの出力側の接続ノードNC2であってもよい。
【0093】
そしてAC結合キャパシターCBにより、発振信号SOCのDC成分がカットされて、AC成分が抽出される。なお、AC結合キャパシターCBは、MIM構造のキャパシターであることが望ましい。こうすることで、パッドP1、P2を介して印加された静電気から、内部回路を保護して、内部回路の静電気破壊を防止できる。
【0094】
振幅・電圧変換回路52は、AC結合キャパシターCBの他端に接続され、発振信号SOCの振幅を電圧に変換する。即ち発振信号SOCのAC成分の振幅を、振幅が大きくなるほど大きくなる電圧に変換する。
【0095】
図8に、振幅・電圧変換回路52による振幅・電圧変換の信号波形例を示す。図8に示すように、AC結合キャパシターCBによりDCカットを行った後の信号SBは、振幅が数百mVの信号になっている。振幅・電圧変換回路52は、この信号SBの振幅に応じた電圧VBを出力する。例えば信号SBの振幅が小さい場合には、その振幅に応じた電圧VB1を出力し、信号SBの信号が大きい場合には、その振幅に応じた電圧VB2を出力する。この振幅・電圧変換回路52は、信号SBの平滑処理を行う回路などにより実現できる。
【0096】
電圧・電流変換回路54は、振幅・電圧変換回路52からの電圧VBに基づいて、発振用のバッファー回路BFに流れる電流IBを制御する。例えば図8において、信号SBの振幅が小さく、振幅・電圧変換回路52からの電圧VB=VB1が小さい場合には、バッファー回路BFに流れる電流IBを大きくする。一方、信号SBの振幅が大きく、振幅・電圧変換回路52からの電圧VB=VB2が大きい場合には、バッファー回路BFに流れる電流IBを小さくする。
【0097】
このようにすれば、発振信号SOCの振幅が小さい場合には、バッファー回路BFのトランジスターTB1、TB2に流れる電流IB(動作電流、ショート電流)が大きくなり、発振信号SOCの振幅が増加するようになる。一方、発振信号SOCの振幅が大きい場合には、バッファー回路BFのトランジスターTB1、TB2に流れる電流IBが小さくなり、発振信号SOCの振幅が減少するようになる。従って、発振信号の振幅を、小さな振幅で一定に保てるようになり、低消費電力化を図れる。
【0098】
6.集積回路装置
図9に本実施形態の発振回路を含む集積回路装置の構成例を示す。図9は、集積回路装置が無線通信用ICである場合の構成例である。但し本実施形態の発振回路が適用される集積回路装置はこれに限定されず、例えばセンサー用ICなどの種々の集積回路装置に適用できる。
【0099】
図9の集積回路装置は、発振回路100と、無線回路110と、待機時用回路120を含む。
【0100】
発振回路100は、通常動作時用クロック信号CKN1、CKN2を生成して、無線回路110に出力する。また待機時用クロック信号CKSを生成して、待機時用回路120に出力する。
【0101】
無線回路110は、通常動作時に無線通信を行う回路である。この無線回路110は、例えば無線通信用の受信回路、送信回路や、PLL回路を含む。なお受信回路と送信回路の一方のみが設けられる構成であってもよい。
【0102】
無線回路110は、図1(B)〜図2(B)で説明したように、可変容量回路CX1、CX2の容量値がCNに設定されることで生成された通常動作時用クロック信号CKN1、CKN2に基づいて動作する。即ち高精度のクロック信号CKN1、CKN2に基づいて動作する。
【0103】
そして無線通信においては、搬送波周波数(例えば2.4GHz)の変動(周波数偏差)を、所定変動幅(所定周波数偏差)に収める必要がある。例えば通信規格で規定される変動幅(例えば50ppm)に収める必要がある。
【0104】
この点、本実施形態では、図2(A)等で説明したように無線通信の搬送波周波数の変動が所定変動幅に収まるように、通常動作時における可変容量回路の容量値CNが設定される。従って、無線通信の規格を満たすことができ、適正な無線通信を実現できる。
【0105】
待機時用回路120は、集積回路装置の待機時に、発振回路100からの待機時用クロック信号CKSに基づいて動作する。具体的には可変容量回路CX1、CX2の容量値がCSに設定されることで生成された待機時用クロック信号CKSに基づいて、動作する。
【0106】
例えば待機時においては、図5の分周回路40が、16MHzのクロック信号CLKを分周して、32KHzの待機時用クロック信号CKSを出力する。そして待機時用回路120は、この32KHzの待機時用クロック信号CKSに基づいて動作する。従って、16MHzのクロック信号で動作する場合に比べて低消費電力化を図れ、待機時における消費電力を低減できる。
【0107】
更に具体的には待機時用回路120は、待機期間をカウントする待機時用カウンター122を含む。そして待機時用カウンター122は、待機時用クロック信号CKSを用いてカウント処理を行って、待機期間をカウントする。この場合に、待機期間の変動が所定変動幅(例えば500ppm)に収まるように、待機時における可変容量回路CX1、CX2の容量値CSが設定される。
【0108】
例えば図10は、無線通信用ICである本実施形態の集積回路装置の動作説明図である。待機時においては、例えばスレーブ(クライアント)側の無線通信用ICは待機モードになっており、待機時用クロック信号に基づいて動作する。この時、マスター(ホスト)側の無線通信用ICについても、待機モードで動作するようにしてもよい。
【0109】
そして通常動作時には、無線通信用ICは待機モードから通常動作モードに移行する。そしてマスター側が無線で情報を送信(TX)して、その情報をスレーブ側が受信(RX)したり、スレーブ側が無線で情報を送信して、その情報をマスター側が受信するという一連の無線通信が実行される。そして、これらの一連の無線通信が終了すると、無線通信用ICは通常動作モードから待機モードに移行する。
【0110】
そして、このように待機モードに移行した場合に、次の一連の無線通信を開始するまでの期間である待機期間を計測する必要がある。図9の待機時用カウンター122は、この待機期間を計測するためのカウント処理を行う。そして待機時用カウンター122のカウント処理の結果に基づいて、マスター側とスレーブ側の通信処理より決められた待機期間が経過したと判断されると、無線通信用ICは、待機モードから通常動作モードに移行する。そして、一連の無線通信を実行する。
【0111】
そしてこのような待機期間のカウント処理には、例えば搬送波周波数のような高精度の周波数精度は不要である。このため、待機時用カウンター122は、容量値CSに設定することで得られる低精度のクロック信号CKSに基づいてカウント処理を行う。但し、この待機期間の長さについて、例えばマスター側とスレーブ側の間にずれが生じると、動作の不具合が生じたり、無駄な電力が消費されてしまうおそれがある。このため、待機期間の変動が所定変動幅に収まるように、待機時における可変容量回路CX1、CX2の容量値CSが設定されることになる。
【0112】
図11に無線通信用の集積回路装置の詳細な構成例を示す。この集積回路装置は、受信回路230、復調回路236、送信回路240、変調回路246、発振回路247、PLL回路248、制御回路250を含む。
【0113】
受信回路230は、低ノイズアンプLNA、ミキサー232、フィルター部234を含む。低ノイズアンプLNAは、アンテナANTから入力されるRFの受信信号を低ノイズで増幅する処理を行う。ミキサー232は、増幅後の受信信号と、PLL回路248からのローカル信号(局所周波数信号)のミキシング(混合)処理を行って、ダウンコンバージョンを実行する。フィルター部234は、ダウンコンバージョン後の受信信号のフィルター処理を行う。具体的には、フィルター部234は、複素フィルターなどで実現されるバンドパスのフィルター処理を行い、イメージ除去を行いながらベースバンド信号を抽出する。
【0114】
復調回路236は、受信回路230からの信号に基づいて復調処理を行う。例えば送信側においてFSK(周波数シフトキーイング)で変調された信号の復調処理を行い、復調後の受信信号を制御回路250に出力する。
【0115】
変調回路246は、制御回路250からの送信信号の変調処理を行う。例えば送信信号をFSKで変調し、変調後の送信信号を送信回路240に出力する。そして送信回路240は、パワーアンプPAにより増幅した送信信号をアンテナANTに対して出力する。
【0116】
PLL回路248は、VCO(電圧制御発振器)などにより構成され、発振回路247からのクロック信号に基づいて、ローカル信号等を生成する。
【0117】
制御回路250は、集積回路装置の全体の制御や、ベースバンドでのデジタル処理などを実行する。また制御回路250は、例えばリンク層回路252やホストI/F(インターフェース)254を有し、リンク層のプロトコル処理や、外部のホストとのインターフェース処理などを実行する。
【0118】
7.電子機器
図12に本実施形態の集積回路装置310を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、アンテナANT、集積回路装置310、ホスト320、検出装置330、センサー340、電源部350を含む。なお本実施形態の電子機器は図12の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば検出装置、センサー、電源部等)を省略したり、他の構成要素(例えば操作部、出力部)を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0119】
集積回路装置310は、図9、図11のような回路構成で実現される無線回路装置であり、アンテナANTからの信号の受信処理や、アンテナANTへの信号の送信処理を行う。ホスト320は、電子機器の全体の制御を行ったり、集積回路装置310や検出装置330の制御を行う。検出装置330は、センサー340(物理量トランスデューサ)からのセンサー信号に基づいて種々の検出処理(物理量の検出処理)を行う。例えばセンサー信号から所望信号を検出する処理を行って、A/D変換後のデジタルデータをホスト320に出力する。センサー340は、例えば煙センサー、光センサー、人感センサー、圧力センサー、生体センサー、ジャイロセンサーなどである。電源部350は、集積回路装置310、ホスト320、検出装置330等に電源を供給するものであり、例えば乾電池(丸形乾電池等)やバッテリーなどにより電源を供給する。
【0120】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源ノード、第2の電源ノード等)と共に記載された用語(VSSノード、VDDノード等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また発振回路、集積回路装置、電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0121】
BF 発振用バッファー回路、CX1、CX2 第1、第2の可変容量回路、
XTAL 振動子、P1、P2 第1、第2のパッド、
NC1、NC2 第1、第2の接続ノード、R1、R2 第1、第2の保護抵抗素子、
DI1A、DI1B、DI2A、DI2B 保護ダイオード、
C11〜C14、C21〜C24 ユニットキャパシター、
S11〜S14、S21〜S24 スイッチ素子、
CA1、CA2、波形整形用AC結合キャパシター、
CB 振幅検出用AC結合キャパシター、
BSC1、BSC2 第1、第2の自己バイアス電圧設定回路、
20 制御回路、30 波形整形回路、32 バッファー回路、40 分周回路、
50 電流制御回路、52 振幅・電圧変換回路、54 電圧・電流変換回路、
100 発振回路、110 無線回路、120 待機時用回路、
122 待機時用カウンター、230 受信回路、232 ミキサー部、
234 フィルター部、236 復調回路、240 送信回路、246 変調回路、
247 発振回路、248 PLL回路、250 制御回路、
252 リンク層回路、254 ホストI/F、310 集積回路装置、
320 ホスト、330 検出装置、340 センサー、350 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子の発振用のバッファー回路と、
前記バッファー回路の入力側又は出力側の一方側である第1の接続ノードに接続され、容量値が可変に設定される可変容量回路と、
を含み、
通常動作時には、前記可変容量回路の容量値はCNに設定され、
待機時には、前記可変容量回路の容量値はCSに設定され、
CN>CSであることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動子及び前記バッファー回路により生成される発振信号の波形整形を行って、クロック信号を出力する波形整形回路を含み、
前記波形整形回路は、
前記バッファー回路の入力側又は出力側の波形整形ノードに一端が接続される第1の波形整形用AC結合キャパシターと、
前記波形整形ノードに一端が接続される第2の波形整形用AC結合キャパシターと、
前記第1の波形整形用AC結合キャパシターの他端側の第1のバイアスノードを、第1のバイアス電圧に設定する第1の自己バイアス電圧設定回路と、
前記第2の波形整形用AC結合キャパシターの他端側の第2のバイアスノードを、第2のバイアス電圧に設定する第2の自己バイアス電圧設定回路と、
前記第1のバイアスノードによりゲートが制御されるN型トランジスターと、前記第2のバイアスノードによりゲートが制御されるP型トランジスターを有する波形整形用バッファー回路とを含むことを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記振動子及び前記バッファー回路により生成される発振信号の振幅を検出し、前記発振信号の振幅が一定になるように、前記バッファー回路に流れる電流を制御する電流制御回路を含むことを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記電流制御回路は、
前記バッファー回路の入力側又は出力側の振幅検出ノードに一端が接続される振幅検出用AC結合キャパシターと、
前記振幅検出用AC結合キャパシターの他端に接続され、前記発振信号の振幅を電圧に変換する振幅・電圧変換回路と、
前記振幅・電圧変換回路からの電圧に基づいて、前記バッファー回路に流れる電流を制御する電圧・電流変換回路とを含むことを特徴とする発振回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記可変容量回路は、容量制御信号により容量値が可変に設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項6】
請求項5において、
前記可変容量回路は、
前記第1の接続ノードと第1の電源ノードとの間に設けられる複数のユニットキャパシターと、
前記第1の接続ノードと前記第1の電源ノードとの間に設けられる複数のスイッチ素子を含み、
前記複数のスイッチ素子の各スイッチ素子は、前記複数のユニットキャパシターのうちの対応するユニットキャパシターと直列に設けられ、
前記容量値制御信号により前記複数のスイッチ素子がオン・オフされることで、前記可変容量回路の容量値が設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記複数のユニットキャパシターは、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造のキャパシターであることを特徴とする発振回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記バッファー回路の入力側又は出力側の他方側である第2の接続ノードに接続され、容量値が可変に設定される第2の可変容量回路を含むことを特徴とする発振回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の発振回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記待機時に、前記発振回路からの待機時用クロック信号に基づいて動作する待機時用回路を含み、
前記待機時用回路は、
前記可変容量回路の容量値がCSに設定されることで生成された前記待機時用クロック信号に基づいて、動作することを特徴とする集積回路装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記待機時用回路は、
待機期間をカウントする待機時用カウンターを含み、
前記待機時用カウンターは、前記待機時用クロック信号を用いてカウント処理を行うことを特徴とする集積回路装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記待機期間の変動が所定変動幅に収まるように、前記待機時における前記可変容量回路の容量値CSが設定されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかにおいて、
前記通常動作時に無線通信を行う無線回路を含み、
前記無線回路は、
前記可変容量回路の容量値がCNに設定されることで生成された通常動作時用クロック信号に基づいて、動作することを特徴とする集積回路装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記無線通信の搬送波周波数の変動が所定変動幅に収まるように、前記通常動作時における前記可変容量回路の容量値CNが設定されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれかに記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−135316(P2011−135316A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292792(P2009−292792)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】