説明

発振回路およびそれを用いたスイッチング電源装置

【目的】スイッチング周波数を変えてもオン期間Tonの生成精度に影響を与えることがない発振回路、およびそれを用いたスイッチング電源装置を提供する。
【構成】この発明の発振回路は台形波を生成し、発振回路外部からの制御信号により台形波が所定時間同じ値を保持する第2期間の所定時間を変更して台形波の周期を可変とするので、それぞれの周期における台形波の立ち上がりおよび立ち下りの傾きを一定にできる。従い、この発明の発振回路を用いたこの発明のスイッチング電源装置が台形波と誤差信号からスイッチング素子のオン期間Tonを生成するとき、スイッチング周波数が変わってもオン期間Tonの生成精度を一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数を変化させることができる発振回路、およびそれを用いたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、図8により従来のスイッチング電源装置の構成例について説明する。図8は入力電圧Viより出力電圧Voを生成して負荷RLに供給するPWM(パルス幅変調)方式の降圧型DC−DCコンバータである。このDC−DCコンバータはオペアンプ(演算増幅器)からなる誤差増幅器1,発振回路2,PWMコンパレータ3,スイッチング素子としてのPチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)Q1,転流素子としてのダイオードD1,PWMコンパレータ3の出力に従いスイッチング素子Q1を駆動するドライブ回路4,インダクタL,出力コンデンサCo,電圧設定用のフィードバック手段となる抵抗R1およびR2,出力電圧を設定するための基準電圧Vrefを発生する基準電圧源5,並びに入力電圧Viを供給する直流入力電源6を有している。誤差増幅器1の非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力され、反転入力端子には出力電圧Voを抵抗R1,R2で分圧したフィードバック信号VFBが入力されている。また、出力端子と反転入力端子の間には位相補償素子として抵抗R3およびコンデンサC1からなる直列回路が接続されている。PWMコンパレータ3の非反転入力端子には誤差増幅器1の出力信号Verrが入力され、反転入力端子には発振回路2の出力信号Voscが入力される。発振回路2の出力信号Voscの波形は三角波である。PWMコンパレータ3は誤差増幅器1の出力信号Verrと三角波Voscを比較し、三角波Voscの信号レベルの方が小さければH(ハイレベル)を、三角波Voscの信号レベルの方が大きければL(ローレベル)をPWM信号としてドライブ回路4に出力する。スイッチング素子Q1のドレインおよびダイオードD1のカソードは互いに接続されるとともにインダクタLの一端に接続されている。またスイッチング素子Q1のソースおよびダイオードD1のアノードはそれぞれ直流入力電源6の高電位側端子および低電位側端子に接続されている。インダクタLの他端は負荷RLに接続されている。インダクタLの他端と直流入力電源6の低電位側端子の間には出力コンデンサCoおよび抵抗R1,R2の直列回路が並列に接続されている。抵抗R1とR2の接続点の電位は、上述のようにフィードバック信号VFBとして誤差増幅器1の反転入力端子へ入力される。
【0003】
以下、簡単にこのDC−DCコンバータの動作を説明する。誤差増幅器1は基準電圧Vrefとフィードバック信号VFBの差を増幅した誤差信号VerrをPWMコンパレータ3に入力する。PWMコンパレータ3はVerrと三角波Voscを比較することにより、周期は一定であるが1周期内のHとLの割合が誤差増幅器1の出力により変化する方形波のスイッチング信号(PWM信号)をドライブ回路4を介してスイッチング素子Q1のゲートに出力する。すなわち、(Vref−VFB)が大きい(小さい)ほど1周期内のスイッチング素子Q1がオン(導通)する期間が長く(短く)なるような方形波パルスを発生し、インダクタLに蓄積するエネルギを大きく(小さく)することにより出力電圧Voを一定に保つ。また、抵抗R1,R2はフードバック信号生成回路を構成し、抵抗R3,コンデンサC1,誤差増幅器1および基準電圧源5は誤差増幅回路を構成している。
【0004】
スイッチング素子Q1のオン期間およびオフ期間をそれぞれTonおよびToff、スイッチング周期をTs(=Ton+Toff)とすると、従来の降圧型DC−DCコンバータの入力電圧Viと出力電圧Voの関係は次の(1)式となる。
Vo=(Ton/Ts)Vi=D・Vi (1)
ここで、D=Ton/Toffは時比率であり、オン期間Tonとスイッチング周期Tsの比である。
近年、スイッチング電源装置のスイッチング動作に起因するスイッチングノイズが問題となっている。特に、スイッチング周波数が一定であると、当該スイッチング周波数およびその高調波にノイズスペクトルが集中してしまうので、その影響が大きくなる。これを回避するために、スイッチング周波数を決定する三角波Voscの周期Tsをランダムに変化させてノイズスペクトルを拡散させることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−266780号公報
【特許文献2】特開2003−324944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9に出力である三角波の周期Tsを変化させることのできる発振回路の構成例、図10にそのタイミングチャートを示す。図9において10,11は外部からの制御信号Isigによってその電流値IoscH,IoscLを変化させる定電流源、MP1はPチャネルMOSトランジスタ、MN1はNチャネルMOSトランジスタ、Ctはタイミングコンデンサ、20,21はコンパレータ、および30はRSフリップフロップである。定電流源10、PチャネルMOSトランジスタMP1、NチャネルMOSトランジスタMN1および定電流源11は直列に接続されるとともに、PチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1のゲートが接続されていて、これにより両者が相補的にオンオフ(一方がオンなら他方がオフ)する。PチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1の接続点は、タイミングコンデンサの一端、コンパレータ20の非反転端子およびコンパレータの反転端子に接続されている。また、この接続点の電位Voscが発振回路の出力となる。コンパレータ20の反転入力端子には第1の基準電圧VthHが入力され、コンパレータ21の非反転入力端子には第2の基準電圧VthLが入力されている。第1の基準電圧VthHと第2の基準電圧VthLの間には、VthH>VthLという関係がある。コンパレータ20の出力端子はRSフリップフロップ30のセット端子Sに接続され、コンパレータ21の出力端子はRSフリップフロップ30のリセット端子Rに接続されている。フリップフロップの出力端子Q(出力端子Qから出力される信号をQ出力とする)は、PチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1のゲートに接続されている。
【0007】
フリップフロップの出力端子QからLが出力されていると、PチャネルMOSトランジスタMP1がオン、NチャネルMOSトランジスタMN1がオフで、定電流源10の定電流IoscHによりタイミングコンデンサCtが充電され、電圧Voscは直線的に増加する。タイミングコンデンサCtの容量値もCtで表すと、電圧Voscの増加の傾きはIoscH/Ctである。フリップフロップの出力端子QからHが出力されていると、PチャネルMOSトランジスタMP1がオフ、NチャネルMOSトランジスタMN1がオンで、定電流源11の定電流IoscLによりタイミングコンデンサCtの電荷が放電され、電圧Voscは直線的に減少する。電圧Voscの減少の傾きはIoscL/Ctである。
電圧Voscが増加を続けているときに第1の基準電圧VthHに達するとコンパレータ20の出力がHに反転し、これによりRSフリップフロップ30がセットされてQ出力がHとなる。すると、上記のように電圧Voscは直線的に減少していき、第2の基準電圧VthLに達すると、コンパレータ21の出力がHに反転し、これによりRSフリップフロップ30がリセットされてQ出力がLとなる。これにより、電圧Voscが再び増加を開始する。以上の動作を繰り返すことにより、電圧Voscは第1の基準電圧VthHと第2の基準電圧VthLの間で振動する三角波となる。
【0008】
制御信号Isigにより電流値IoscH,IoscLを変化させると電圧Voscの増減の傾きが変化するので、その周期Ts、すなわちスイッチング周波数を変えることができる。その様子を図10に示す。図10は、制御信号Isigにより電流値IoscHおよびIoscLをそれぞれIoscH1,IoscH2,IoscH3(IoscH1>IoscH2>IoscH3)およびIoscL1,IoscL2,IoscL3(IoscL>IoscL2>IoscL3)に変化させたときの電圧Voscの波形である。電流値IoscH,IoscLが小さくなるにつれて電圧Voscの増減の傾きが小さくなり、周期Tsが長くなる。すなわち、スイッチング周波数が低くなる(図10における各周期のスイッチング周波数f1,f2,f3は、f1>f2>f3となる。)。
ここで、周期Tsが長くなるとオン期間Tonの生成精度が悪くなるという問題が生じる。オン期間Tonは、図8のPWMコンパレータ3が誤差信号Verrと三角波Voscを比較することによって決定しているが、三角波Voscの傾きが小さくなって三角波が寝てくると、誤差信号Verrと三角波Voscが等しくなる点の検出に誤差が乗りやすくなる。すなわち、ノイズやPWMコンパレータ30のオフセット電圧の影響で誤差信号Verrが少しずれただけでも、オン期間Tonが大きく変わってしまうことになる。従い、スイッチング周期をさほど大きくは変えられないという問題が生じる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は上記の課題を解決して、スイッチング周波数を変えてもオン期間Tonの生成精度に影響を与えることがない発振回路、およびそれを用いたスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、台形波を生成する発振回路であって、前記台形波が第1の基準電圧から第2の基準電圧まで第1の傾きで増加する第1期間、前記台形波が前記第2の基準電圧に達すると所定時間同じ値を保持する第2期間、および前記台形波が前記所定時間経過後に第2の傾きで前記第1の基準電圧まで減少する第3期間からなる周期を有し、前記所定時間が前記発振回路に対する制御信号により可変であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、タイミングコンデンサ、第1の定電流源および第2の定電流源を有し、前記タイミングコンデンサの両端電圧を前記台形波とし、前記第1期間は前記タイミングコンデンサが前記第1の定電流源により充電され、前記第3の期間は前記タイミングコンデンサが前記第2の定電流源により放電される期間であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記台形波が第2の基準電圧に達するとトリガーされて前記所定時間を規定する遅延回路を有し、該遅延回路の出力により前記第3の期間が開始することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記遅延回路が積分コンデンサを第3の定電流源により充電または放電を行う積分回路を有し、前記所定時間が前記積分回路の出力が前記積分コンデンサ放電時の電圧から第3の基準電圧に達するまでの時間であり、前記積分コンデンサの容量値または/かつ前記第3の定電流源の定電流値が前記制御信号により制御されることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、複数のコンデンサを有し、前記制御信号により前記複数のコンデンサが取捨選択されて前記積分回路を構成することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項4または5に係る発明において、複数の定電流源を有し、前記制御信号により前記複数の定電流源が取捨選択されて前記第3の定電流源を構成することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記遅延回路が、前記制御信号によりカウント値がプリセットされるカウンタであることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、スイッチング素子をスイッチングして所定の出力電圧を得るスイッチング電源回路であって、出力電圧と設定電圧との差を増幅した誤差信号を生成する誤差増幅器、請求項1ないし7のいずれか1項にかかる発明の発振回路、および誤差信号と前記発振回路の出力を比較するPWMコンパレータを有し、該PWMコンバレータの出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の発振回路は台形波を生成し、発振回路外部からの制御信号により台形波が所定時間同じ値を保持する第2期間の所定時間を変更して台形波の周期を可変とするので、それぞれの周期における台形波の立ち上がりおよび立ち下りの傾きを一定にできる。従い、この発明の発振回路を用いたこの発明のスイッチング電源装置が台形波と誤差信号からスイッチング素子のオン期間Tonを生成するとき、スイッチング周波数が変わってもオン期間Tonの生成精度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る発振回路の基本構成を示す図である。
【図2】本発明に係る発振回路から出力される台形波信号を示す図である。
【図3】図1に示す遅延回路の構成例を示す図である。
【図4】図3に示す電流可変の定電流源の構成例を示す図である。
【図5】図3に示す電流可変の定電流源の別の構成例を示す図である。
【図6】図3に示す容量可変のコンデンサの構成例を示す図である。
【図7】図1に示す遅延回路の別の構成例を示す図である。
【図8】スイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図9】三角波を生成する発振回路の構成例を示す図である。
【図10】図9に示す発振回路の出力信号を示すタイミングチャートで、周期が変わる三角波を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、以下説明する。図1は本発明に係る発振回路の基本構成を示す図である。図8のスイッチング電源装置の発振回路2を図1に示す発振回路に置き換えることにより、本発明に係るスイッチング電源装置が構成される。また、図2は、図1の発振回路から出力される台形波信号Vdoscを示す図である。
図1の発振回路は図9に示す三角波を生成する従来の発振回路に対し、NチャネルMOSトランジスタMN2およびディレイ回路50を追加するとともに、その電流値IoscH,IoscLを変化させる定電流源10,11を、電流値が固定の定電流源40,41に置き換えたものである。その他の部位は図9のものと共通であり、図9と同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。遅延回路50は、入力信号DLYinの立ち上がりを制御信号DLYcontで指定される所定時間だけ遅延させて信号DLYoutとして出力するものである。入力信号DLYinの立ち下がりの遅延は必要ではない。遅延回路50が入力信号DLYinの立ち上がりのみを遅延し、立ち下がりは遅延させないものであれば、NチャネルMOSトランジスタMN1は不要である。タイミングコンデンサCtの両端電圧(積分電圧)Vdoscが、本発振回路の出力信号であり、後述のように台形波となる。
【0016】
図1に示す発振回路の動作について説明する。今、RSフリップフロップのQ出力がLであるとすると、PチャネルMOSトランジスタMP1がオン、NチャネルMOSトランジスタMN1がオフで、タイミングコンデンサCtが定電流源40からの定電流IoscHで充電されている。タイミングコンデンサCtの両端電圧Vdoscが第1の基準電圧VthHに達すると、図9の発振回路と同様にRSフリップフロップ30のQ出力がHとなる。すると、PチャネルMOSトランジスタMP1がオフ、NチャネルMOSトランジスタMN1がオンとなる。また、RSフリップフロップ30のQ出力がHとなっても制御信号DLYcontで指定される所定時間が経過していないと遅延回路50の出力はLのままであり、NチャネルMOSトランジスタMN2はオフとなっている。すると、タイミングコンデンサCtは定電流源40,41のいずれとも接続されていない状態となり、タイミングコンデンサCtは充電も放電もされないから電圧Vdoscは一定の値を保つ。制御信号DLYcontで指定される所定時間が経過すると遅延回路50は入力信号DLYinのHレベルを出力信号DLYoutに伝えるから、NチャネルMOSトランジスタMN2がオンする。すると、タイミングコンデンサCtが定電流源41に接続されて、コンデンサCtは定電流IoscLで放電される。
【0017】
次に電圧Vdoscが第2の基準電圧VthLに達すると、図9の発振回路と同様にRSフリップフロップ30のQ出力がLとなり、PチャネルMOSトランジスタMP1がオン、NチャネルMOSトランジスタMN1がオフとなり、次の発振周期に移行する。図2に示すように、このような動きをする電圧信号Vdoscは台形波となる(厳密にいえば、上記所定時間がゼロのときは三角波となる。)。台形波Vdoscの1周期において、定電流源40の定電流IoscHによりタイミングコンデンサが第2の基準電圧VthLから第1の基準電圧VthHまで充電されている期間を第1期間、電圧Vdoscが第1の基準電圧VthHに留まっている期間を第2期間、定電流源41の定電流IoscLによりタイミングコンデンサが第1の基準電圧VthHから第2の基準電圧VthLまで放電されている期間を第3期間とする。第1期間において電圧Vdoscが上昇するときの傾き(第1の傾き)は定電流IoscHの電流値とコンデンサCtの容量値によって定まり、発振回路の周期には無関係となる。また、第3期間において電圧Vdoscが減少するときの傾き(第2の傾き)は定電流IoscLの電流値とコンデンサCtの容量値によって定まり、発振回路の周期には無関係となる。なお、遅延回路50が入力信号DLYinの立ち下がりを遅延させないものであれば、RSフリップフロップ30のQ出力がLになると即座にNチャネルMOSトランジスタMN2がオフするので、NチャネルMOSトランジスタMN1は不要である。遅延回路50が入力信号DLYinの立ち下がりを遅延させるものであると、その遅延の間、タイミングコンデンサCtが定電流源40,41の両方に接続されてしまうので、それを防ぐためにはNチャネルMOSトランジスタMN1は必要である。
【0018】
図2に示すように、制御信号DLYcontで遅延回路50の遅延時間である第2期間を変更することにより台形波Vdoscの周期、すなわち周波数を可変とすることができる。周期は可変であるが、第1期間における台形波Vdoscの傾き、および第3期間における台形波Vdoscの傾きは一定である。上述のように、図8のスイッチング電源装置の発振回路2を図1に示す発振回路に置き換えることにより、本発明に係るスイッチング電源装置が構成されるので、本発明に係るスイッチング電源装置は誤差信号Verrと三角波Voscが等しくなる点の検出精度を常に一定することができ、スイッチング周波数を変えてもオン期間Tonの生成精度に影響を与えることがない。
図3は遅延回路50の構成例を示す図である。図3において、51はコンパレータ、52は定電流源、53は積分コンデンサ、MN3はNチャネルMOSトランジスタ、54はインバータである。定電流源52と積分コンデンサ53は直列に接続されている。また、積分コンデンサ53にはNチャネルMOSトランジスタMN3が並列に接続され、NチャネルMOSトランジスタMN3のゲートには、インバータ54を介して遅延回路50への入力信号DLYinが印加されている。コンパレータ51の非反転入力端子は定電流源52と積分コンデンサ53との接続点に接続されている。コンパレータ51の反転入力端子には第3の基準電圧V0が入力されている。コンパレータ51の出力が、遅延回路50の出力信号DLYoutを与える。定電流源52の定電流値または/かつ積分コンデンサ53の容量値は可変であり、遅延回路50の制御信号DLYcontにより決定される。
【0019】
この遅延回路の動作について説明する。信号DLYinは図1のRSフリップフロップ30のQ出力であり、信号Vdoscが増加中でまだ第1の基準電圧VthHに達していないときはLである。このときは図3のNチャネルMOSトランジスタMN3がオンしているので、積分コンデンサ53は放電状態でその両端電圧Vdlyはゼロ(ボルト)の初期状態となっている。V0>0であるから、コンパレータ51の出力はLである。信号Vdoscが第1の基準電圧VthHに達すると信号DLYinがHとなり、NチャネルMOSトランジスタMN3がオフして定電流源52の定電流が積分コンデンサ53を充電していく(積分コンデンサ53が定電流源52の定電流を積分していく)。これにより積分コンデンサ53の両端電圧Vdlyは直線的に増加する。そしてVdlyが第3の基準電圧V0に達するとコンパレータ51の出力が反転し、信号DLYoutがHとなる。すなわち、この回路は、信号DLYinをTdly=V0*(積分コンデンサ53の容量値)/(定電流源52の定電流値)で与えられる時間Tdlyだけ遅延させて出力信号DLYoutとして出力するものである。この遅延時間Tdlyは、積分コンデンサ53の容量値または/かつ定電流源52の定電流値を変えることにより変更できる。すなわち、制御信号DLYcontによりスイッチング周期(スイッチング周波数)を変更することができる。なお、時間Tdlyだけ遅延するのは信号DLYinの立ち上がりだけである。信号DLYinが立ち下がると、トランジスタMN3がオンし、直ちにコンデンサが放電されてコンパレータ51の出力が反転するので、遅延は生じない。
【0020】
図4は電流可変の定電流源52の構成例を示す図である。電流可変の定電流源52はn個の定電流源I1〜Inとn個のPチャネルMOSトランジスタMP41〜MP4nを有している。PチャネルMOSトランジスタMP41〜MP4nのソースはそれぞれ定電流源I1〜Inに接続され、PチャネルMOSトランジスタMP41〜MP4nのドレインは共通接続されていて、図4には図示しない積分コンデンサ53に接続されている。制御信号DLYcontはnビットの信号DLYcon1〜DLYconnで構成され、nビットの信号DLYcon1〜DLYconnはそれぞれPチャネルMOSトランジスタMP41〜MP4nに接続されている。この構成により、PチャネルMOSトランジスタMP41〜MP4nのうち、nビットの信号DLYcon1〜DLYconnのうち信号の値がLであるものに対応するものがオンして、当該トランジスタに接続されている定電流源の定電流が積分コンデンサ53に供給される。従い、制御信号DLYcontにより定電流源52の定電流値を変更することができる。
【0021】
図5は電流可変の定電流源52の別の構成例を示す図である。図5の定電流源52は、オペアンプOPA、PチャネルMOSトランジスタMP3,MP4、NチャネルMOSトランジスタMN4および抵抗Rを有している。オペアンプOPAの非反転入力端子には制御信号DLYcontが入力され、反転入力端子はNチャネルMOSトランジスタMN4と抵抗Rの接続点に接続されている。PチャネルMOSトランジスタMP4,NチャネルMOSトランジスタMN4および抵抗Rが直列に接続されるとともに、PチャネルMOSトランジスタMP4のゲートはPチャネルMOSトランジスタMP4のドレインに接続されている。PチャネルMOSトランジスタMP4のゲートはまたPチャネルMOSトランジスタMP4のゲートにも接続されて、PチャネルMOSトランジスタMP3とMP4はカレントミラー回路を構成している。PチャネルMOSトランジスタMP4のドレインは、図5には図示しない積分コンデンサ53に接続されている。
【0022】
オペアンプOPAの2つの入力端子が仮想短絡していることにより抵抗Rには電圧DLYcontが印加され、電圧DLYcontに比例した電流がながれる。抵抗Rの電流はPチャネルMOSトランジスタMP3に流れ、PチャネルMOSトランジスタMP3とMP4がカレントミラー回路を構成していることから、定電流源52は制御信号DLYcontの値に比例した電流を供給するものとなっている。
図6は、図3に示す容量可変の積分コンデンサ53の構成例を示す図である。容量可変の積分コンデンサ53はn個のコンデンサC11〜C1n、n個のNチャネルMOSトランジスタMN51〜MN5nを有している。NチャネルMOSトランジスタMN51〜MN5nのソースはそれぞれコンデンサC11〜C1nに接続され、NチャネルMOSトランジスタMN51〜MN5nのドレインは共通接続されていて、図4には図示しない定電流源52に接続されている。制御信号DLYcontはnビットの信号DLYcon1〜DLYconnで構成され、nビットの信号DLYcon1〜DLYconnはそれぞれNチャネルMOSトランジスタMN51〜MNnに接続されている。この構成により、NチャネルMOSトランジスタMN51〜MNnのうち、nビットの信号DLYcon1〜DLYconnのうち信号の値がHであるものに対応するものがオンして、当該トランジスタに接続されているコンデンサが定電流源52に接続される。従い、制御信号DLYcontにより積分コンデンサ53の容量値を変更することができる。
【0023】
図7は、図1に示す遅延回路50の別の構成例を示す図である。この遅延回路50はプリセットカウンタからなっている。制御信号DLYcontはnビットのデジタルデータであり、プリセットカウンタは入力信号DLYinの立ち上がりで制御信号DLYcontの値を読み込んでカウンタ値としてプリセットする。プリセットカウンタには定周期のクロックφがクロック信号として入力されていて、このクロック信号φによりダウンカウントする。読み込んだ制御信号DLYcontの値を初期値としてダウンカウントし、カウント値がゼロとなると、その出力DLYoutをHにする。すなわち、この遅延回路50は、入力信号DLYinの立ち上がりに対し(クロック信号φの周期×制御信号DLYcontの値)の遅延を与えるものである。なお、入力信号DLYinはプリセットカウンタのリセット端子RESETB(この端子への入力がLになるとプリセットカウンタはリセットされる)にも入力されているので、入力信号DLYinがLになると出力信号DLYoutは遅延なくLとなる。
【0024】
遅延回路50の遅延時間である第2期間に要求される生成精度が高いものでなければ、遅延回路は信号DLYinを入力とする抵抗と容量からなる時定数回路、および当該時定数回路の出力を入力とするインバータで構成し、時定数回路の抵抗値または/かつ容量値を制御信号DLYcontで可変とする回路でもよい。この場合、抵抗値を可変とする回路は図4の回路において定電流源I1〜Inを抵抗に置き換え、各抵抗の定電流源I1〜Inと接続されていない側に信号DLYinを入力すればよく、容量値を可変とする回路は図6と同様であるので、図示は省略する。なお、本構成の場合、遅延回路は信号DLYinの立ち上がりばかりでなく、立ち下がりも遅延させる。
【符号の説明】
【0025】
1 誤差増幅器
2 発振回路
3 PWMコンパレータ
4 ドライブ回路
5 基準電圧源
6 直流入力電源
10,11,40,41 定電流源
20,21 コンパレータ
30 RSフリップフロップ
50 遅延回路
51 コンパレータ
52 (電流値可変の)定電流源
53 (容量値可変の)積分コンデンサ
54 インバータ
C1,C11〜C1n コンデンサ
Co 出力コンデンサ
Ct タイミングコンデンサ
D 時比率
D1 ダイオード
I1〜In 定電流源
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
L インダクタ
MP1,MP21〜MP2n,MP3,MP4 PチャネルMOSトランジスタ
MN1〜MN4,MN51〜MN5n NチャネルMOSトランジスタ
OPA オペアンプ
Q1 スイッチング素子(PチャネルMOSトランジスタ)
R,R1〜R3 抵抗
RL 負荷
Ton オン期間
Toff オフ期間
Ts スイッチング周期
Verr 誤差信号
FB フィードバック信号
Vosc 発振回路2の出力信号(三角波)
Vdosc 本発明に係る発振回路の出力信号(台形波)
Vref 出力電圧を設定するための基準電圧
VthH 第1の基準電圧
VthL 第2の基準電圧
V0 第3の基準電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
台形波を生成する発振回路であって、
前記台形波が第1の基準電圧から第2の基準電圧まで第1の傾きで増加する第1期間、前記台形波が前記第2の基準電圧に達すると所定時間同じ値を保持する第2期間、および前記台形波が前記所定時間経過後に第2の傾きで前記第1の基準電圧まで減少する第3期間からなる周期を有し、
前記所定時間が前記発振回路に対する制御信号により可変であることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
タイミングコンデンサ、第1の定電流源および第2の定電流源を有し、前記タイミングコンデンサの両端電圧を前記台形波とし、前記第1期間は前記タイミングコンデンサが前記第1の定電流源により充電され、前記第3の期間は前記タイミングコンデンサが前記第2の定電流源により放電される期間であることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記台形波が第2の基準電圧に達するとトリガーされて前記所定時間を規定する遅延回路を有し、該遅延回路の出力により前記第3の期間が開始することを特徴とする請求項1または2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記遅延回路が積分コンデンサを第3の定電流源により充電または放電を行う積分回路を有し、前記所定時間が前記積分回路の出力が前記積分コンデンサ放電時の電圧から第3の基準電圧に達するまでの時間であり、前記積分コンデンサの容量値または/かつ前記第3の定電流源の定電流値が前記制御信号により制御されることを特徴とする請求項3に記載の発振回路。
【請求項5】
複数のコンデンサを有し、前記制御信号により前記複数のコンデンサが取捨選択されて前記積分回路を構成することを特徴とする請求項4に記載の発振回路。
【請求項6】
複数の定電流源を有し、前記制御信号により前記複数の定電流源が取捨選択されて前記第3の定電流源を構成することを特徴とする請求項4または5に記載の発振回路。
【請求項7】
前記遅延回路が、前記制御信号によりカウント値がプリセットされるカウンタであることを特徴とする請求項3に記載の発振回路。
【請求項8】
スイッチング素子をスイッチングして所定の出力電圧を得るスイッチング電源回路であって、出力電圧と設定電圧との差を増幅した誤差信号を生成する誤差増幅器、請求項1ないし7のいずれか1項記載の発振回路、および誤差信号と前記発振回路の出力を比較するPWMコンパレータを有し、該PWMコンバレータの出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングを制御することを特徴とするスイッチング電源回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−245675(P2010−245675A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90004(P2009−90004)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】