説明

発振回路装置の経年劣化補償方法及び制御モジュール

【課題】従来技術の欠点を克服する、経年劣化補償方法及び発振回路の制御モジュールの提供。
【解決手段】発振回路装置は作用端から制御電圧Vctrlを受信し、制御電圧Vctrlに応じて所定周波数のクロック信号Voutを出力し、経年劣化補償方法は、(a)作用端からの制御電圧Vctrlを検査し制御電圧Vctrlの第1の値Vを得る段階、(b)所定の時間期間ΔTが経過した後、作用端からの制御電圧Vctrlを検査し前記制御電圧の第2の値Vを得る段階、(c)制御電圧Vctrlの前記第1の値と第2の値V、Vの間に差があるかを決定する段階、(d)差があると決定された場合、前記差に基づき制御電圧Vctrlの値の補償を実行する段階、及び(e)段階(b)乃至(d)を繰り返す段階、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号補償方法及びクロック信号生成装置に関し、より詳細には、発信回路装置の経年劣化補償方法及び制御モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器技術の分野では、水晶発振器の精度は期間に渡り、又は特定の温度範囲内で一定クロック周波数を維持することにより定められ、標準的に100万分の1(PPM)で計測される。最も正確な水晶振動子を利用した、又は電圧制御水晶発振器(VCXO)のロック技術を用いたシステムは、高い精度を提供できる。しかしながら、長年に渡る使用を経て、電圧制御水晶発振器の振動周波数は、水晶発振器の経年劣化の結果として精度が低下する傾向がある。この場合、水晶自体が長年に亘り変化している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、上述の従来技術の欠点を克服する、経年劣化補償方法及び発振回路の制御モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の別の態様によると、発振回路装置の経年劣化補償方法が提供される。発振回路装置は、作用端から制御電圧を受信し、当該制御電圧に応じて所定の周波数でクロック信号を出力する。経年劣化補償方法は、(a)作用端からの制御電圧を検査し前記制御電圧の第1の値を得る段階、(b)所定の時間期間が経過した後、前記作用端からの前記制御電圧を検査し前記制御電圧の第2の値を得る段階、(c)前記制御電圧の前記第1の値と第2の値に差があるかを決定する段階、(d)差があると決定された場合、前記差に基づき前記制御電圧の値を補償する段階、及び(e)段階(b)乃至(d)を繰り返す段階、を有する。
【0005】
本発明の別の態様によると、作用端から制御電圧を受信し、当該制御電圧に応じて所定の周波数でクロック信号を出力する発振回路装置が提供される。発振回路装置は、制御モジュール及び発振調整モジュールを有する。
【0006】
制御モジュールは、所定の時間期間に渡り制御電圧の値に変化があるか否かを決定し、決定された当該変化に基づき当該制御電圧の値を自動的に補償する。
【0007】
発振調整モジュールは、制御モジュールが所定の時間期間に渡り制御電圧の値に如何なる変化もないと決定した場合に、制御モジュールから補償されていない値を有する制御電圧を受信し、その他の場合に補償された値を有する制御電圧を受信し、及び制御モジュールから受信した制御電圧に従いクロック信号の出力を制御する。
【0008】
本発明の更に別の態様によると、発振回路装置の制御モジュールが提供される。制御モジュールは、作用端から制御電圧を受信し、当該制御電圧に応じて所定の周波数でクロック信号を出力する。制御モジュールは、処理部、タイマー、受信部、及び記憶部を有する。
【0009】
タイマーは、所定の時間期間をカウントし、及び処理部に所定の時間期間が終了したことを知らせる。
【0010】
受信部は、作用端から制御電圧の第1の値を受信し、所定の時間期間が経過した後に作用端から前記制御電圧の第2の値を受信し、前記第1の値と前記第2の値を前記処理部へ供給する。
記憶部は第1の値と前記第2の値を記録する。
処理部は、第1の値及び第2の値の間に差があるか否かを決定し、決定された当該差に基づき制御電圧の値を補償する。
【0011】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載を添付の図面と関連して読むことにより明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による発振回路装置100の好適な実施例を示す。発振回路装置100は、作用端300から制御電圧(Vctrl)を受信し、制御電圧(Vctrl)に応じて所定の周波数でクロック信号(Vout)を出力する。発振回路装置100は、制御モジュール1及び発振調整モジュール1を有する。この実施例では、発振回路装置100は電圧制御水晶発振器(VXCO)である。しかしながら、本発明は同一の技術原理を利用した別の装置、例えば温度制御水晶発振器(TXCO)又は恒温槽型水晶発振器(OXCO)であって良い。
【0013】
図1乃至3を参照する。本発明による発振回路装置100の経年劣化補償方法の好適な実施例は以下の段階を有する。
【0014】
段階101で、第1の時間(T)で、発振回路装置100の制御モジュール1を通じ、作用端300からの制御電圧(Vctrl)が検査され、当該制御電圧の第1の値(V)を得て格納する。処理は次に段階102へ進む。
【0015】
段階102で、制御モジュール1を通じ、所定の時間期間(ΔT)がカウントされる。処理は次に段階103へ進む。
【0016】
段階103で、制御モジュール1を通じ、所定の時間期間(ΔT)が終了したか否かが決定される。所定の時間期間が終了した場合、処理は段階104へ進む。その他の場合、処理は次に段階103へ進む。
【0017】
段階104で、第2の時間(T)で、制御モジュール1を通じ、作用端300からの制御電圧(Vctrl)が検査され、当該制御電圧の第2の値(V)を得て格納する。処理は次に段階105へ進む。
【0018】
段階105で、制御モジュール1を通じ、第1の値と第2の値(V、V)の間に差があるか否かが決定される。差があると決定された場合、処理は段階106へ進む。その他の場合、処理は次に段階103へ進む。
【0019】
段階106で、制御モジュール1を通じ、当該差に基づき補償値(ΔV)が決定され、制御電圧(Vctrl)の値を補償するために用いられる。処理は次に段階107へ進む。
【0020】
段階107で、制御モジュール1を通じ、制御電圧(Vctrl’)の補償された値が制御電圧(Vctrl)の格納された第1の値(V)を更新するために用いられる。処理は次に段階108へ進む。
【0021】
段階108で、発信調整モジュール2を通じ、クロック信号(Vout)の出力は制御電圧の補償された値(Vctrl’)に従い制御される。処理は次に段階102へ戻る。
発振回路装置100の経年劣化補償方法のこの実施例では、所定の時間期間(ΔT)の終了時に、制御モジュール1を通じ、制御電圧(Vctrl)の第1の値と第2の値(V、V)の間に差があるか否かが自動的に決定され、制御モジュール1を通じ、決定された差に基づき制御電圧(Vctrl)の値が自動的に補償される。好適な実施例の発振回路装置100は制御電圧(Vctrl)の値を補償できるので、及び従って水晶発振器の経年劣化の影響を補償できるので、作用端300は発振回路装置100に供給される制御電圧を変更する必要がない。
【0022】
図4は、好適な実施例の制御モジュール1を示す。制御モジュール1は、処理部11、タイマー12、受信部13、及び記憶部14を有する。発信調整モジュール2は、水晶素子21、及び水晶素子21の発振周波数を調整するために制御される調整回路22を設けられる。
【0023】
処理部11は、制御モジュール1の種々の構成要素の動作を制御及び調整するために用いられる。タイマー12は、所定の時間期間をカウントするため、及び処理部11に所定の時間期間が経過したことを知らせるために用いられる。受信部13は、処理部11により制御され、作用端300から制御電圧の第1の値(V)を受信し、所定の時間期間が経過した後、当該制御電圧の第2の値(V)を受信し、処理部11に第1の値及び第2の値(V、V)を供給する。この実施例では、受信部13は、制御電圧の第1の値及び第2の値(V、V)を処理部11へ提供されるデジタル・データに変換するアナログ−デジタル変換部を有する。記憶部14は、第1の値及び第2の値(V、V)のデジタル・データを記録する。
【0024】
処理部11は、第1の値及び第2の値(V、V)の間に差があるか否かを決定し、差があると決定した場合に当該差に基づき補償値(ΔV)を決定する。補償は次に、補償値(ΔV)に基づき制御電圧の値に対し行われる。制御電圧の補償値(Vctrl’)は、次に記憶部14に記録される。制御モジュール1は次に、制御電圧を補償値(Vctrl’)で、水晶素子21の周波数を調整する調整回路22へ出力する。所定の時間期間(ΔT)の終了時に、処理部11は、制御電圧の第1の値及び第2の値(V、V)の間に差があるか否かを自動的に決定し、決定された差に基づき制御電圧の値を自動的に補償する。
【0025】
纏めると、本発明の発振回路装置100は、本発明の経年劣化補償方法を実行し、所定の時間期間(ΔT)の間に作用端300から受信した制御電圧の値に変化があるか否かを自動的に決定し、決定された変化に基づき制御電圧の値を自動的に補償し、それにより経年劣化現象の影響を補正し、高精度を達成する。
【0026】
本発明は最も実用的と考えられるもの及び好適な実施例に関し記載されたが、理解されるべき点は、本発明が開示された実施例に限定されないこと、及び全ての変更及び等価な構成を含む広範に解釈される精神及び範囲に含まれる種々の構成を包含することである。
[関連出願の相互参照]
本出願は、台湾出願番号097102170、2008年1月21日出願の優先権を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による発振回路装置の好適な実施例のブロック図である。
【図2】本発明による発振回路装置の経年劣化補償方法の好適な実施例のフローチャートである。
【図3】経年劣化補償方法の好適な実施例による、異なる時刻に得た制御電圧の第1及び第2の値を示す電圧対時間のグラフである。
【図4】発振回路装置の好適な実施例の制御モジュールの回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 制御モジュール
2 発信調整モジュール
11 処理部
12 タイマー
13 受信部
14 記憶部
22 調整回路
300 作用端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路装置の経年劣化補償方法であって、前記発振回路装置は作用端から制御電圧を受信し、前記制御電圧に応じて所定周波数のクロック信号を出力し、前記経年劣化補償方法は、
(a)前記作用端からの前記制御電圧を検査し前記制御電圧の第1の値を得る段階、
(b)所定の時間期間が経過した後、前記作用端からの前記制御電圧を検査し前記制御電圧の第2の値を得る段階、
(c)前記制御電圧の前記第1の値と第2の値の間に差があるか否かを決定する段階、
(d)差があると決定された場合、前記差に基づき前記制御電圧の値の補償を実行する段階、及び
(e)段階(b)乃至(d)を繰り返す段階、を有する経年劣化補償方法。
【請求項2】
前記制御電圧の第1の値は段階(a)で格納され、及び
前記制御電圧の補償値は段階(d)で格納された前記制御電圧の値を更新するために用いられる、請求項1記載の発振回路装置の経年劣化補償方法。
【請求項3】
発振回路装置の制御モジュールであって、前記制御モジュールは作用端から制御電圧を受信し、前記制御電圧に応じて所定の周波数でクロック信号を出力し、前記制御モジュールは、
処理部、
所定の時間期間をカウントし前記処理部に前記所定の時間期間の終了を知らせるタイマー、
前記作用端から前記制御電圧の第1の値を受信し、前記所定の時間期間が経過した後に前記作用端から前記制御電圧の第2の値を受信し、前記第1の値と前記第2の値を前記処理部へ供給する受信部、及び
前記第1の値と前記第2の値を記録する記憶部、を有し、
前記処理部は前記第1の値と前記第2の値の間に差があるか否かを決定し、決定された前記差に基づき前記制御電圧の値を補償する、制御モジュール。
【請求項4】
前記処理部は前記制御電圧の補償された値を用い前記記憶部に格納された前記制御電圧の第1の値を更新する、請求項3記載の発振回路装置の制御モジュール。
【請求項5】
作用端から制御電圧を受信し前記制御電圧に応じて所定の周波数でクロック信号を出力する発振回路装置であって、前記発振回路装置は、
所定の時間期間に渡り前記制御電圧の値に変化があるか否かを決定し、決定された前記変化に基づき前記制御電圧の値を補償する制御モジュール、及び
前記制御モジュールが前記所定の時間期間に渡り前記制御電圧の値に如何なる変化もないと決定した場合に、前記制御モジュールから補償されていない値を有する前記制御電圧を受信し、その他の場合に補償された値を有する前記制御電圧を受信し、前記制御モジュールから受信した前記制御電圧に従い前記クロック信号の出力を制御する発振調整モジュール、を特徴とする発振回路装置。
【請求項6】
前記制御モジュールは、
処理部、
前記所定の時間期間をカウントし前記処理部に前記所定の時間期間の終了を知らせるタイマー、
前記作用端から前記制御電圧の第1の値を受信し、前記所定の時間期間が経過した後に前記作用端から前記制御電圧の第2の値を受信し、前記第1の値と前記第2の値を前記処理部へ供給する受信部、及び
前記第1の値と前記第2の値を記録する記憶部、を有し、
前記処理部は前記制御電圧の前記第1の値と前記第2の値の間に差があるか否かを決定し、決定された前記差に基づき前記制御電圧の値を補償する、請求項5記載の発振回路装置。
【請求項7】
前記受信部は、前記第1の値及び前記第2の値をデジタル・データに変換し及び前記デジタル・データを前記処理部へ提供するアナログ−デジタル変換部を有する、請求項6記載の発振回路装置。
【請求項8】
前記発振回路装置は電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度制御水晶発振器(TCXO)、及び恒温槽型水晶発振器(OCXO)のうちの1つである、請求項5記載の発振回路装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−177771(P2009−177771A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159233(P2008−159233)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(506354320)泰藝電子股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】