説明

発泡ローラ製造方法及び発泡ローラ成型金型

【課題】廃棄材料や成型用金型の清掃工程が減少しており、かつ材料注入時のエア巻き込みによるボイドが発生しにくい発泡ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】両端部が開口しているパイプ金型の下端に、開口を閉塞するようにパイプ金型中心軸線上に連通穴を有した下駒を配置した状態で、芯材を下駒の下端より挿入し、及び芯材が予め決められた長さだけ下駒の下端より飛び出している状態で、芯材を保持する第1工程と、該パイプ金型の上方より、パイプ金型の壁面に落ちるように、パイプ金型内に発泡弾性層材料を注入する第2工程と、発泡弾性材料が発泡して芯材の上端部に付着する前に芯材を上方へ押し上げた後、芯材を固定する第3工程と、発泡弾性材料を加熱・硬化する第4工程とを有し、第1から第3工程において、該パイプ金型は、直立した姿勢より1から45°傾けてある発泡ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置において使用される現像装置に搭載される発泡ローラの製造方法及び成型金型に関する。詳しくは、電子写真感光体や静電記録誘導体からなる像担持体上に形成した静電潜像を現像して、可視化するのに使用される現像装置に搭載される、円筒状の発泡ゴム材と芯材からなる発泡ローラの製造方法及び成型金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置の小型化、高画質化、低価格化の要求に伴い電子写真装置に組み込まれているトナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の機能性ローラは、高精度化、低価格化が要求されている。この要求に応じ、機能性ローラの品質を向上・維持しながら製造コストを下げる努力がなされている。
【0003】
こうした中で、発泡ローラは、一般に成型用のパイプ金型に芯材と該芯材を把持固定するための上下駒を該パイプ金型両端に配置し、組んだ状態で、一端の駒に設けられた注入口よりノズルタッチもしくは液受けカップを介して材料を注入することで製作される。それは、例えば特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【特許文献1】特開2005−133820号公報
【特許文献2】特開平8−207172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの方法も製品にはならない部分(材料流路等)が存在し、その部分の材料が廃棄材料となるので、改善が求められている。また、廃材を除去するために清掃工程が必要となり、それがコスト高の要因となる。
【0005】
以上のことから、成型用パイプ金型に材料を直接注入することが廃棄材料を出さずに成型する方法として挙げられる。しかし成型用パイプ金型を立てた状態で材料を真上から注入した場合(図1参照)、先に成型用パイプ金型内に溜まった材料4’に注入中の材料4が落ちると、材料落下位置5にてエアを巻き込み易い。それによって、成型された発泡ローラにエアがボイドとして現れていた。また、該成型用パイプの壁面と該芯材との間が発泡ローラによって極狭である場合がある。そのとき、材料の落し位置が限定されるとともに、材料が、注入落下中に該芯材や該成型用パイプ金型壁面に付着してしまい、成型品である発泡ローラにエア巻き込みやセル荒れ等の悪影響を与えていた。
【0006】
本発明は、廃棄材料を極力減少させ、成型用金型の清掃工程を減らすとともに、材料注入時のエア巻き込みによるボイドが発生しない発泡ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芯材と、該芯材外周に積層された発泡弾性層とからなる発泡ローラの製造方法であって、両端部が開口しているパイプ金型の下端に、開口を閉塞するように該パイプ金型中心軸線上に連通穴を有した下駒を配置した状態で、該芯材を該下駒の下端より挿入し、及び該芯材が予め決められた長さだけ該下駒の下端より飛び出している状態で、該芯材を保持する第1工程と、該パイプ金型の上方より、該パイプ金型の壁面に落ちるように、該パイプ金型内に発泡弾性層材料を注入する第2工程と、該発泡弾性材料が発泡して該芯材の上端部に付着する前に該芯材を上方へ押し上げた後、該芯材を固定する第3工程と、該発泡弾性材料を加熱・硬化する第4工程と、を有し、該第1から第3工程において、該パイプ金型は、直立した姿勢より1から45°傾けた状態にあることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、芯材と、該芯材外周に積層された発泡弾性層とからなるローラの製造に用いる発泡ローラの成型金型であって、両端部が開口しているパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ、該パイプ金型内で該芯材を保持する少なくとも2つの駒と、該芯材を支持固定するために、該パイプ金型の一方の端部に設けられた該駒の外部に配置される芯材固定部材と、を有し、該パイプ金型の一方の端部に設けられた該駒は、該芯材を挿入するための穴を中心軸上に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を得ることが出来る。
【0010】
成型用パイプ金型に発泡弾性層の材料を直接注入することにより、従来発生していた廃棄材料を大幅に減少させることが出来る。また、該材料注入時に該成型用パイプ金型を1〜45°傾けて金型壁面をつたうように注入することにより、エアの巻き込みを抑えることが出来るため、ボイドのない発泡ローラを安定して成型することが可能となる。
【0011】
更に、該下駒中心軸に設けられた穴より該芯材を挿入することにより、該材料落し位置を拡張することが出来るため、エア巻き込みのない発泡ローラを安定して成型することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図を参照しながら詳しく説明する。
【0013】
本発明の発泡ローラ製造方法は、次のとおりである。図2(a)に示すようにパイプ金型1及び下駒2をθ(1〜45°)傾けた状態で、芯材3を下駒2の芯材挿入用穴に挿入し、該芯材3を該下駒2のパイプ金型側端面より任意量飛び出した状態で保持する。ここで任意量とは、図2(b)に示すように、所定量の発泡弾性層材料を注入後、パイプ金型1下部に溜まった材料4’界面より飛び出す量とする。これにより芯材3端部を材料で汚染せず成型出来る。また傾き角θは、45°以上であると材料粘度にもよるが材料がパイプ金型下方にスムーズに流れなくなり、1°以下であると材料がパイプ壁面をつたわずに直接下部に落ちる場合があるため、1〜45°範囲であることが好ましく、10〜40°がより好適である。次いで該パイプ金型1の上方より、発泡弾性層材料4を注入する。該材料4の落し位置はパイプ金型1の壁面に落とすようにし、該材料4がパイプ金型1の壁面をつたってパイプ金型下部に溜まるように設定する。この時、材料落し位置がパイプ金型の上方であると材料がパイプ金型下部に溜まる前に発泡し該芯材に付着する等の悪影響を及ぼすため、先に下部に溜まった材料に落ちない範囲において、出来るだけ下方に設定したほうが好ましい。
【0014】
次に、パイプ金型1下部に溜まった材料4’が発泡し、該芯材1端部に付着する前に該芯材をパイプ金型1上方へ押し上げ、芯材固定部材6により芯材長手方向の位置決めをして該芯材を固定する(図2(c)参照)。この時、該芯材を押し上げる速度としては特に指定はなく、材料特性により適当に決めることが好ましい。
【0015】
該芯材押し上げ完了後、上駒を組付けて加熱・硬化し、脱型して目的の発泡ローラを得る。
【0016】
芯材を材料注入後に押し上げることにより、材料注入時の落し位置を拡張することができ、注入中のトラブルを削減出来るため、より安定した成型が可能となる。また、材料をパイプ金型に直接注入出来るため、廃棄材料を削減することが出来る。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0018】
発泡ローラの材料と成型条件、製造の手順を示す。実施にあたり、図3に示す形状をした発泡ローラを成型した。
【0019】
芯材はφ5、長さ260mmの芯金を使用し、発泡弾性層はφ13、長さ220mmである。使用した発泡ローラ成型用金型は、パイプ金型内径がφ13、外径がφ20であり、材質はSUSとした。
【0020】
まず、混合ポリオールとして、FA−908を100重量部、ジエタノールアミンを0.5重量部、L5366を1重量部、ToyoCat−ETを0.1重量部、TEDA−L33を0.5重量部、水(発泡剤)2重量部を混合した。前記FA−908とは、三洋化成株式会社製ポリエーテルポリオールである。前記L5366とは、日本ユニカー株式会社製シリコーン系整泡剤である。前記ToyoCat−ETとは、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。前記TEDA−L33とは、東ソー株式会社製第3級アミン触媒である。その後、前記混合物と、T80を29.5重量部とM200を7.4部をNCOインデックス100となるように混合攪拌したものを発泡弾性層材料とした。前記T80とは、三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=48である。前記M200とは、三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=31である。
【0021】
先に述べたパイプ金型と下駒、上駒にシリコンオイル離型剤を塗布し、その後65℃に予熱した後、該下駒を該パイプ金型下方端に組付け、該下駒の芯材挿入穴に該芯金を下駒のパイプ金型側端面より30mm飛び出した状態で保持した。この状態でパイプ金型と下駒、芯金からなる成型用金型を直立させた姿勢から2°傾け、混合攪拌した該材料をパイプ金型壁面をつたうように注入した。注入後に芯金をパイプ金型上方へ押し上げ、芯材固定部材により芯材長手方向の位置決めをして該芯材を固定し、上駒を組付けた。その後、10分間、65℃に温度制御された熱盤において挟み込み硬化させ、脱型し、目的の発泡ローラを得た。
【0022】
上記の本発明の製造方法では、従来の製造方法で発生していた廃棄材料が87%削減でき、且つ成型した発泡ローラにボイドやエア巻き込みが見られなかった。なお、廃棄材料削減の算出内容は、材料を一度カップに受けてから成型する従来成型方法と比較したものであり、廃棄材料に相当する箇所は、(1)カップ部、(2)駒流路部、(3)成型品両端の突っ切り部、にあたる。廃棄材料の内訳は、(1)カップ部80%、(2)駒流路部7%、(3)成型品両端突っ切り部13%である。本発明によって、廃棄材料の87%にあたる(1)カップ部及び(2)駒流路部の廃棄材料を削減することが出来た。
【0023】
前記と同様の手法で金型を、直立させた姿勢から1〜45°傾く範囲で、10°、20°、30°、43°傾けて実験を行ったが、いずれも良好な結果であった。
【0024】
次に比較例に相当する事例として、金型の傾き角度を、45°を越える状態にしたところ、材料の壁面上の流れが良くなく、また材料落し位置は角度が大きい程パイプ金型上方に位置するため材料流路が長くなり、途中で発泡し始めるケースがあったため不都合であった。また、垂直に立てて行った場合は、材料が注入中にパイプ金型壁面や芯金表面に付着し、及び直接に金型底面に材料が落ちることで泡が発生し、所望するローラとしての発泡状態を得ることが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の発泡ローラ製造方法の材料受け方の説明図。
【図2】本発明の発泡ローラ製造方法の材料受け方の説明図。
【図3】発泡ローラ概略図。
【符号の説明】
【0026】
1 パイプ金型
2 下駒
3 芯材
4 材料(注入中時)
4’材料(下部溜まり)
5 材料落下位置
6 芯材固定部材
7 発泡弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材外周に積層された発泡弾性層とからなる発泡ローラの製造方法であって、
両端部が開口しているパイプ金型の下端に、開口を閉塞するように該パイプ金型中心軸線上に連通穴を有した下駒を配置した状態で、該芯材を該下駒の下端より挿入し、及び該芯材が予め決められた長さだけ該下駒の下端より飛び出している状態で、該芯材を保持する第1工程と、
該パイプ金型の上方より、該パイプ金型の壁面に落ちるように、該パイプ金型内に発泡弾性層材料を注入する第2工程と、
該発泡弾性材料が発泡して該芯材の上端部に付着する前に該芯材を上方へ押し上げた後、該芯材を固定する第3工程と、
該発泡弾性材料を加熱・硬化する第4工程と、
を有し、
該第1から第3工程において、該パイプ金型は、直立した姿勢より1から45°傾けた状態にあることを特徴とするローラ製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法によって作られたことを特徴とする、円筒状の発泡ゴム材と芯材からなる発泡ローラ。
【請求項3】
芯材と、該芯材外周に積層された発泡弾性層とからなるローラの製造に用いる発泡ローラの成型金型であって、
両端部が開口しているパイプ金型と、
該パイプ金型の両端部に設けられ、該パイプ金型内で該芯材を保持する少なくとも2つの駒と、
該芯材を支持固定するために、該パイプ金型の一方の端部に設けられた該駒の外部に配置される芯材固定部材と、
を有し、
該パイプ金型の一方の端部に設けられた該駒は、該芯材を挿入するための穴を中心軸上に有していることを特徴とするローラ成型金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−90156(P2008−90156A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272941(P2006−272941)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】