説明

発泡体、発泡体基板、及びこれらの製造方法

【課題】はんだ耐熱性に優れ気泡径が小さく、且つ低誘電率の熱可塑性樹脂製の発泡体と発泡体基板、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂成形体を発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上で、かつ平均気泡径が0.01〜10μmである発泡体、及び熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱・軟化により発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を有し、かつ耐熱性に優れる熱可塑性樹脂製の発泡体と発泡体基板、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なフィルム、シート等の発泡体の製造方法として、化学的発泡と物理的発泡の2種類がある。
化学的発泡は、樹脂に添加した発泡剤である化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させ、発泡体を得る方法である。しかしこの発泡方法は、発泡後に発泡剤の残渣が発泡体中に残りやすく、電子部品等の用途においては低汚染性の要求が強いため、この方法では問題が生ずる。また物理的発泡は、発泡剤である炭化水素、フルオロカーボン等の低沸点液体を樹脂に分散させた後に、加熱により発泡剤を揮発させる方法である。この方法の場合も同様に発泡剤として用いる物質の有害性による環境問題、可燃性等の問題がある。またこのような発泡方式の場合には、数十μm以上の気泡径を有する発泡体を得るのには適した方法であるが、0.01〜10μm程度の微細な気泡径を有する発泡体を得ることは困難である。
【0003】
一方、気泡径が小さくセル密度の高い発泡体を得る手法として、炭酸ガス等の気体を高圧にて樹脂成形体中に浸透させた後に、圧力を開放し、樹脂のガラス転移点温度付近まで加熱することにより発泡させる方法(以下、「マイクロセルラープロセス」ということがある。)が提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、マイクロセルラープロセスを用い、耐熱性に優れ、微細なセル構造を有する耐熱性ポリマー発泡体とその製造方法が記載されている。しかし特許文献2に開示されている熱可塑性樹脂のガラス転移温度が120℃以上であるので、発泡して得られる発泡体基板を電子回路用基板として適用する場合、はんだ耐熱性及びリフロー耐熱性が必ずしも十分とはいえない。一般に使用されるSn-Pbはんだの融点は183℃程度であることが知られており、Pbフリーのはんだに至っては、融点が220℃程度のものもある。
また耐熱性に優れた電子回路用基板として、熱硬化性ポリイミドを使用した回路基板が知られている。熱硬化性ポリイミドの可塑化温度は約420℃であるため、はんだ耐熱性、リフロー温度特性に優れた材料といえる。しかしながら材料の比誘電率が3.2〜3.8程度と比較的高く、一般的な電気通信用機器に使用する場合には支障が無いが、数GHzを超えるような高速通信帯域になると、伝送ロス等の問題が生じて好ましくない。また熱硬化性ポリイミドは明瞭なガラス転移点を持たないため、マイクロセルラープロセスにより、気泡径が小さくかつセル密度の高い発泡体を得ることは困難である。
【0004】
【特許文献1】米国特許4473665号明細書
【特許文献2】特開2001−55464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、はんだ耐熱性に優れ、気泡径が小さく、且つ低誘電率の熱可塑性樹脂製の発泡体、発泡体基板、及びこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、耐熱性樹脂であり、かつ発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体を非反応性ガス発泡剤を使用して発泡させることにより、良好な気泡径を有する、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体、及び該発泡体部分を有する発泡体基板が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)に関する発明(以下、併せて本発明ということがある。)である。
(1)熱可塑性樹脂成形体を発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上で、かつ平均気泡径が0.01〜10μmである発泡体(実施形態1)。
(2)前記(1)に記載の発泡体からなることを特徴とするプリント配線基材(実施形態2)。
(3)前記(1)に記載の発泡体の少なくとも1つの面に導電体が積層されていることを特徴とする発泡体基板(実施形態3)。
(4)前記(1)に記載の発泡体基板が折り曲げ自在であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板(実施形態4)。
(5)熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱して軟化により発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体の製造方法(実施形態5)。
(6)熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱して軟化により発泡させてガラス転移温度が240℃以上の発泡成形体を得、更に該発泡成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層させることを特徴とする、発泡体基板の製造方法(実施形態6)。
(7)熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで少なくともその片面に導電体を該熱可塑性樹脂の軟化する温度で熱圧着させると共に、該熱可塑性樹脂成形体部分を発泡させる、該発泡成形体部のガラス転移温度が240℃以上である発泡体基板の製造方法(実施形態7)。
(8)熱可塑性樹脂成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層体を得、次いで該積層体を非反応性ガスと加圧下で接触させて、前記積層体の熱可塑性樹脂成形体部分に非反応性ガスを浸透させた後に圧力を減少し、その後該熱可塑性樹脂の軟化する温度に保持して該熱可塑性樹脂成形体部分を発泡させる、該発泡成形体部のガラス転移温度が240℃以上である発泡体基板の製造方法(実施形態8)。
(9)熱可塑性樹脂成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱、軟化により発泡させて、ガラス転移温度が240℃以上の発泡成形体を得、更に該発泡成形体の少なくとも1つの面に無電解メッキにより金属膜を形成し、更にその表面に電解メッキにより金属膜を形成することを特徴とする発泡体基板の製造方法(実施形態9)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡体、プリント配線基材、及び発泡体基板は、はんだ耐熱性に優れ気泡径が小さく、且つ低誘電率であるので、高付加価値の高速通信用・高周波対応の回路基板(フレキシブル回路基板)に使用可能であり、緩衝材、断熱材としても有用である。また、発泡体基板は、樹脂製の発泡体と導電体との間に接着層がないためハロゲンフリーで環境性能が高く、気泡径が小さいため微細なパターンが形成できる。
更に、発明の製造方法によれば、上記優れた機能を有する熱可塑性樹脂製の発泡体、及び発泡体基板を簡易にかつ効率良く製造することができ、その実用的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)物性の測定法
本明細書において、各発泡体および発泡体基板の物性の測定は以下の方法によった。
(i)ガラス転移温度
DSC法により、示差走査熱量計を用いてガラス転移温度を測定した。
(ii)平均気泡径
ASTM D3576−77に準じて平均気泡径を求めた。すなわち、成形体の断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の長さtを平均した。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
(iii)体積発泡率
水置換法により発泡体の密度(Pf)を求め、無発泡シートの密度(Po)から、以下の計算式により体積発泡率を算出した。
体積発泡率=(1−Pf/Po)×100 (%)
(iv)比誘電率
IEC 60240に準拠して比誘電率を測定した。使用した測定器は、誘電体損測定装置TR-10C(安藤電気(株)製)で、測定周波数を1kHzとした。
【0010】
(2)熱可塑性樹脂
本発明で使用する熱可塑性樹脂について以下に記載する。
本発明において使用する熱可塑性樹脂は、発泡成形後のガラス転移温度(Tg)が240℃以上となる下記に例示の熱可塑性樹脂(A)又は添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物(B)である。
尚、溶融成形して得られる成形体を発泡させる際の発泡前後のTgは殆ど同じであるので、本発明において実質的には、溶融成形(溶融成形後の熱処理も含む)して得られる成形体のTgが240℃以上となる熱可塑性樹脂が使用可能である。
(i)熱可塑性樹脂(A)
本発明の発泡体、および発泡体基材の素材として用いられる熱可塑性樹脂(A)は発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となるものであればいずれの熱可塑性樹脂でも使用でき、特に限定されるものではないが、発泡剤として用いる非反応性ガスを加圧下で浸透し易いものが好ましい。このような熱可塑性樹脂(A)としては、以下に記載のジアミンとテトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミド、又は該ポリイミドを主成分とする組成物が例示できるが、熱可塑性樹脂樹脂(A)として特に熱可塑性ポリイミドが好ましい。
【0011】
前記ジアミンとしては、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、APBIと記すことがある。)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBEと記すことがある。)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等から選ばれた少なくとも一種のジアミンであり、化合物中に芳香環を含む芳香族系ジアミンが好ましい。
前記テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと記すことがある。)、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(以下、PSTCと記すことがある。)から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物であり、化合物中に芳香環を含む芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、上記したジアミンとテトラカルボン酸二無水物から合成される、具体的には、APBIとPMDAとの重合物(三井化学(株)製の商品名:オーラム等)、PSTCと芳香族ジアミンとの重合物(新日本理化(株)製の商品名:リカコート(SN-20、PN-20等))等が例示できる。
【0012】
熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、APBIとPMDAから合成されるポリイミド(以下、APBPMと記すことがある。)が挙げられる。
APBPMの合成法は、例えば、APBIとPMDAとを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成し、このポリイミド前駆体を脱水閉環することによりAPBPMを得ることができる。前記ポリイミド前駆体は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの略等モルを、有機溶媒中、加熱下に3〜20時間程度反応させることにより得られる。ポリイミド前駆体の脱水閉環反応は、例えば、無水酢酸とピリジンの混合物などの脱水環化剤を作用させることにより行われる。
このようにして得たニートのAPBPMはガラス転移温度が245℃であるが、成形後に熱処理することにより、260℃程度まで上げることができる。
【0013】
(ii)熱可塑性樹脂組成物(B)
本発明の熱可塑性樹脂として熱可塑性樹脂組成物(B)を使用する場合には、上記した熱可塑性樹脂(A)を主成分として、他の熱可塑性樹脂(C)を含む各種添加剤等を配合することが可能である。
例えば、APBPMは、結晶性ポリイミドであるが、結晶化速度が遅いために、結晶化を促進するAPBEとPMDAから得られるポリイミド等の他の熱可塑性樹脂(C)添加剤として配合することができる。このような改質の熱可塑性樹脂組成物(B)は、上記したポリイミドの例から適宜選択することが可能であり、その特に好ましい配合割合は、発泡成形後(又は溶融成形後)のガラス転移温度が240℃以上の熱可塑性樹脂(A)90〜100質量%、好ましくは95〜100質量%、特に好ましくは97〜100質量%と、ガラス転移温度(溶融成形前後のいずれのものも含む)が200℃以上の上記特定のジアミンと特定のテトラカルボン酸二無水物から合成される熱可塑性ポリイミド(B)0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、特に好ましくは0〜3質量%の熱可塑性ポリイミド混合物でも本発明の発泡体、および発泡体基材の素材として用いることができる。
【0014】
尚、該熱可塑性樹脂組成物(B)には、通常発泡成形に使用される各種添加剤を適宜添加することもできる。例えば、気泡核剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、可塑剤、難燃材、帯電防止剤等を用いることができる。その添加量は通常の熱可塑性樹脂の成形に用いられる添加量が望ましい。
【0015】
(3)熱可塑性樹脂成形体
非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させる際に使用する前記熱可塑性樹脂の成形体については、例えば熱可塑性ポリイミドの場合には従来の熱硬化性ポリイミドと異なり、キャスト法でなく押出法等にてもフィルム成形が可能あり、100μm程度の厚膜フィルムを製作する際は、コスト的に優位である。また、前記ポリイミド前駆体をフィルム、シート等に成形した後、脱水閉環させてポリイミドの成形体としてもよく、更に熱可塑性樹脂を溶融状態等で又は溶剤を使用して塗布した後に、シートやフィルム形状等にすることもできる。尚、本発明における成形体とは、特に形状は限定されるものではなく、シートやフィルム及び直方体等の他の角状成形品であってもよい。
【0016】
(4)非反応性ガス発泡剤
本発明の製造方法において、発泡剤として用いられるガスとしては、上記耐熱性を有する熱可塑性樹脂に対して非反応性であり且つ該熱可塑性樹脂に浸透可能なものであれば特に制限されることがなく、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。これらのうち、実用的上、熱可塑性樹脂への浸透量が多く、浸透速度も速い二酸化炭素の使用が特に好ましい。
(5)発泡体
本発明における発泡体、又は発泡体基板における発泡成形体部分は、熱可塑性樹脂(A)又は熱可塑性樹脂組成物(B)に非反応性ガス発泡剤を添加して、軟化する温度付近で発泡成形することにより得られるガラス転移温度が240℃以上の発泡体である。発泡成形方法は、前記マイクロセルラープロセスを用いることが特に望ましい。ガラス転移温度が240℃以上の熱可塑性樹脂(A)又は熱可塑性樹脂組成物(B)を用いれば、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体を容易に得ることができるが、例えばガラス転移温度が200℃程度以上の他の可塑性樹脂を使用しても、成形体を得る際の熱処理等により、その結果としてガラス転移温度が240℃以上となる物性を有していればよい。
【0017】
発泡体を得る方法の具体例については、後述する。
(6)実施形態1〜9
次に、発明を実施するための実施形態1〜9について記載する。
(i)実施形態1に係る発泡体
実施形態1の発泡体は、熱可塑性樹脂成形体を発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上で、かつ平均気泡径が0.01〜10μmであることを特徴とする。
実施形態1の発泡体は、熱可塑性樹脂(A)又は熱可塑性樹脂組成物(B)のいずれから形成される。尚、ガラス転移温度が240℃以下の熱可塑性樹脂を使用しても、上記したように成形体を得る際の熱処理等により、その結果としてガラス転移温度が240℃以上となればよい。
該発泡体の平均気泡径は、各発泡条件や熱可塑性樹脂成形体の形状、厚みより平均気泡径や体積発泡率は異なるが、後述する製造方法により0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μm程度の範囲にある。
【0018】
次に体積発泡率と等価比誘電率の関係は、下記の関係式(A.S.ウインデラーの式)で示されることが知られている。
(εi−εc)/(εi−εa)=(F/100)×[3εc/(2εc−εa)]
ここで εc:発泡体の比誘電率、εi:絶縁物の比誘電率、
εa:発泡の比誘電率(εa=1)、F:発泡体の容積比(%)
例えば熱可塑性樹脂、特に熱可塑性ポリイミドの比誘電率が3.0〜4.0であるとした場合、発泡により等価比誘電率を2.9以下(液晶ポリマーに相当する比誘電率)まで下げることを考慮すると、初期比誘電率が3.0の場合5%、4.0の場合22%以上の体積発泡率が必要である。なお、体積発泡率を大とすることで等価比誘電率はさらに小さくなり、低誘電率材料として知られているPTFE樹脂(比誘電率2.2)付近まで下げるためには、初期比誘電率が3.0の場合35%、4.0の場合50%以上の体積発泡率が必要となる。上記したように、シートやフィルムの厚みにより、同じ発泡条件でも体積発泡率等が異なる場合があるが、誘電率低下という点では同様の効果が得られる。
【0019】
上記から、使用目的を考慮して、比誘電率を2.9以下とするために体積発泡率は好ましくは5〜50%、より好ましくは50〜90%である。
尚、比誘電率を2.9以下とすることが望ましいが、通常その下限界は発泡体の強度等の兼ね合いから1.2程度である。
後述する方法により得られる実施形態1の発泡体は、耐熱性に優れ、均一で微細な気泡を有し、誘電率と相対密度も低い。従って、その耐熱性、機械的性質、耐摩耗性等の優れた性質により、例えば、電子機器等の回路基板などとして好適に使用できる。
(ii)実施形態2に係るプリント配線基材
実施形態1に記載した発泡体は、上記した特性を有することから、プリント配線基材の使用に適している。
【0020】
(iii)実施形態3に係る発泡体基板
実施形態2の発泡体基板は、前記(1)に記載の発泡体の少なくとも1つの面に導電体が積層されていることを特徴とする。
実施形態1に記載した発泡体を発泡体基板として使用するには、後述する方法により該発泡体の少なくとも1つの面に導電体を積層する必要がある。このような導電体としては、金属、金属合金、導電性樹脂、及びカーボンから選択された1種以上が例示できる。前記金属と金属合金としては、金、銀、白金、ルテニウム、ニッケルあるいはこれらの合金が例示できるが、銅がもっとも好ましい。
本発明の発泡体基板を製造する際に発泡体に導電体を積層させる方法として、熱圧着法又はめっき法が挙げられる。熱圧着法は発泡体と導電体を高温、高圧化で圧着させることにより、例えば、フィルム、シート等を導電体と積層させる方法である。尚、熱圧着法の場合には、高圧容器中で炭酸ガス等を加圧下に浸透させたシート、フィルム等の成形体を、圧力開放させた後に熱プレス機で導電体と熱圧着させる際に同時に発泡させることも可能である。
尚、積層構造としては、発泡体/導電体、導電体/発泡体/導電体、導電体/発泡体/導電体/発泡体/導電体のような2〜5層構造が例示できる。
(iv)実施形態4に係るフレキシブルプリント回路基板
実施形態3に係る発泡体基板は、はんだ耐熱性に優れ気泡径が小さく、且つ低誘電率であるので、高付加価値の高速通信用・高周波対応のフレキシブルプリント回路基板に使用可能である。
【0021】
(v)実施形態5に係る発泡体の製造方法
実施形態3の発泡体の製造方法は、発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得た、成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させ(ガス浸透工程)、その後に圧力を減少し(圧力減少工程)、次いで加熱・軟化により発泡させる(加熱発泡工程)、ことを特徴とする。
発泡に使用する物理的発泡剤は、適宜選択できるが、例えば二酸化炭素を用いる場合には、浸透させる際の圧力は数MPa〜100MPa、好ましくは5MPa以上である、また発泡剤ガスの臨界圧以下の条件を選択することが好ましい。ガス浸透工程における温度は、用いるガスの種類や熱可塑性樹脂のガラス転移温度等によってその好ましい条件は異なる。またガス浸透時間についても、用いるガスの種類や高圧容器の容積、浸透時の温度、熱可塑性樹脂フィルムの厚みや形状により異なる。例えば厚みが数十〜100μmの熱可塑性ポリイミドフィルムに炭酸ガスを浸透させる場合は、温度や圧力条件等にもよるが浸透時間は数十分〜数時間程度である。
【0022】
発泡方法としては、前記マイクロセルラープロセスを使用できる。すなわちこの製法は、シート状、フィルム状等の成形体に対して、高圧容器中にて炭酸ガスなどの発泡剤を熱可塑性樹脂に加圧浸透させる。その後、高圧容器中のガスを急激に放出させて熱可塑性樹脂中に浸透したガスを過飽和状態にすることにより、ガスを少しだけ成長させる。これが気泡の核になり、この状態の熱可塑性樹脂シート、フィルム等をその材料の軟化する温度まで加熱することによって気泡の核を成長させ樹脂発泡体を得るものであり、本方法によれば、平均発泡径が0.01〜10μmの均一で微細な発泡成形体を得ることが可能である。
【0023】
また、本発明の方法の好ましい態様では、熱可塑性樹脂が軟らかくなりすぎて気泡が過度に成長し、ガス抜け、気泡が合一して気泡の存在密度の低下、及び気泡成長過程で熱可塑性樹脂が変形することを防止するために、例えば軟化する温度を、1×107Pa〜1×1011Pa程度(熱可塑性樹脂の未発泡状態で測定した弾性率)となる温度に設定するのが望ましい。これらの工程は、バッチ方式、又は連続方式で行うことができる。
発泡体の製造方法を以下に例示するが、実施形態3にかかる製造方法は下記方法に限定されるものではない。
【0024】
(v―1)バッチ方式
熱可塑性樹脂(A)(又は熱可塑性樹脂組成物(B))を押出成形機を使用して押出機から押し出して、Tダイ等によりシート状等の成形体に賦形する。得られた未発泡成形体を高圧容器中に入れて、二酸化炭素等の非反応性ガスを注入し、前記未発泡成形体中に非反応性ガスを浸透させ(ガス浸透工程)、非反応性ガスを十分に浸透させた後に圧力を大気圧まで減少し、成形体中に気泡核を発生させ(圧力減少工程)、そして、この成形体を軟化する温度に加熱することによって気泡を成長させた後、冷水などで急激に冷却して、形状を固定することにより発泡体を得る(加熱発泡工程)。
【0025】
(v―2)連続方式
連続方式によれば、例えば、押出成形機を使用して混練しながら非反応性ガスを注入し、十分に非反応性ガスを樹脂中に浸透させた後、押し出すことにより圧力を解放して気泡核を発生させる。そして、軟化する温度に加熱することによって気泡を成長させた後、冷水などで急激に冷却し、気泡の成長を防止して、形状を固定化すると共に発泡体を得ることができる。
【0026】
このようにして得られた発泡体は、耐熱性に優れる上、均一で微細な気泡を有し、相対密度も低い。例えば、該発泡体の平均気泡径は、0.01〜10μm、好ましくは0.01〜1μm程度の範囲にある。
【0027】
(vi)実施形態6〜9に係る発泡体基板の製造方法
本発明の発泡体基板の製造方法として、熱圧着法、めっき法等を利用することができる。本方法の製造方法は、従来法の一つである金属体と樹脂シートを熱硬化性接着剤で張り合わせる方法と異なり、接着剤を使用せずに熱可塑性樹脂成形体に導電体を直接積層させる方法のため、低コストかつハロゲンフリーな方法といえる。
熱圧着法は、発泡成形後発泡体と導電体を高温、高圧化で圧着させることにより、例えば、導電体をフィルム、シート等に積層させる方法である。尚、熱圧着法の場合には、高圧容器中で炭酸ガス等を加圧下に浸透させたシート、フィルム等の成形体を、圧力開放させた後に熱プレス機で導電体と熱圧着させる際に同時に発泡させることも可能である。
【0028】
また、めっき等のウエットプロセスを適用することで、従来のスパッタ法などの真空プロセスより低コストで、金属等を連続成膜することも可能である。この場合は、発泡樹脂体フィルムを無電解めっきで厚みが0.1から1.0μm程度の導電層を形成し、その後に電解めっき処理によって厚みが数μmの導電層を積層させることが望ましい。
また熱可塑性樹脂シートもしくはフィルム等の成形体と導電体とを複合化させた後に、該熱可塑性樹脂部分を発泡させて樹脂発泡体基板を形成することも可能である。
尚、該発泡樹脂基板は、発泡体の少なくとも1つの面に導電体が形成されていればよく、例えばシート、フィルム等の形状物の場合にはその片面又は両面に導電体が形成されていても良い。また発泡樹脂と導電体が積層されている構造でもよく、積層構造としては、発泡体/導電体、導電体/発泡体/導電体、導電体/発泡体/導電体/発泡体/導電体のような2、3、5層構造が例示できる。
尚、実施形態4ないし7で使用する導電体は、実施形態2に記載した導電体と同じである。
【0029】
(vi−1)[実施形態6]
実施形態6の発泡体基板の製造方法は、熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱・軟化により発泡させてガラス転移温度が240℃以上の発泡成形体を得、更に該発泡成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層させることを特徴とする。
実施形態6の製造方法を以下に例示するが、実施形態6の製造方法はこれに限定されるものではない。
実施形態6では、先ず、発泡溶融成形後(実質的に溶融成形後であってもよい)のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させ、次いで得られた成形体を加熱・軟化により発泡させて発泡成形体を得るがこの工程は上記した、ガス浸透工程、圧力減少工程、及び加熱発泡工程がそのまま使用できる。次に得られた発泡成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させる積層工程は、上記した熱圧着法をそのまま使用できる。
【0030】
(vi−2)[実施形態7]
実施形態7の発泡体基板の製造方法は、発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで少なくともその片面に導電体を該熱可塑性樹脂の軟化する温度で熱圧着させると共に、該成形体部分を発泡させて、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体部分を有する発泡体基板を得ることを特徴とする。
実施形態7の製造方法を以下に例示するが、実施形態7の製造方法はこれに限定されるものではない。
実施形態7では、実施形態6に記載した、発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂の成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少して、非反応性ガスを浸透させた成形体を得るが、この成形体を得る工程は上記実施形態6に記載した、ガス浸透工程及び圧力減少工程と同じである。
次に非反応性ガスを浸透させた成形体と導電体をプレス機等にセットして、使用した熱可塑性樹脂の軟化する温度近くに加熱しながら、ローラ等により加圧することにより、成形体部を発泡させると共に導電体を熱圧着させる。
【0031】
(vi−3)[実施形態8]
実施形態8の発泡体基板の製造方法は、実施形態6に記載した、発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層体を得、次いで該積層体を非反応性ガスと加圧下で接触させて、前記積層体の成形体部分に非反応性ガスを浸透させた後に圧力を減少し、その後該熱可塑性樹脂の軟化する温度に保持して該積層体部分を発泡させることを特徴とする。
実施形態8の製造方法を以下に例示するが、実施形態8の製造方法はこれに限定されるものではない。
実施形態8の成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させる方法は、実施形態6に記載した成形体と導電体をプレス機等にセットして、加熱しながら加圧して積層体を形成させる。次に該積層体を実施形態6に記載したガス浸透工程、圧力減少工程、及び加熱発泡工程がそのまま使用できる。
【0032】
(vi−4)[実施形態9]
実施形態9の発泡体基板の製造方法は、実施形態6に記載した、発泡成形後のガラス転移温度が240℃以上となる熱可塑性樹脂を成形して得られた成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱・軟化により発泡させて発泡成形体を得、更に該発泡成形体表面に無電解メッキにより金属膜を形成し、更にその表面に電解メッキにより金属膜を形成することを特徴とする。実施形態9の製造方法を以下に例示するが、実施形態9の製造方法はこれに限定されるものではない。
実施形態9では、実施形態4に記載した成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱・軟化により発泡させて発泡成形体を得るが、この発泡成形体を得る工程は上記実施形態4に記載した、ガス浸透工程、圧力減少工程、及び加熱発泡工程と同じである。
次に、発泡成形体の少なくとも1つの面に無電解メッキと電解メッキを行い、それぞれ金属膜を形成するがこれらの方法は公知の無電解メッキと電解メッキ方法を採用することができる。
尚、実施形態6〜9に記載した操作の組み合わせにより導電体/発泡体/導電体/発泡体/導電体からなる5層構造の積層体を形成することもできる。
かくして得られる発泡体は、プリント配線基材、発泡体基板、及びフレキシブルプリント回路基板に有効に使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
尚、本実施例で使用した熱可塑性ポリイミドは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(APBI)から合成された熱可塑性ポリイミド(APBPM)(商品名:「オーラム(PI-PA)」、三井化学(株)製)である。
[実施例1]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法(Tダイ法)により成形して得た厚み50μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、30分間放置して炭酸ガスを浸透させた。次に炭酸ガスを浸透したフィルムを樹脂軟化する温度(約240〜300℃)に設定した空気式循環恒温槽内にて数十秒間保持し、発泡させることにより、平均気泡径500nm程度、体積発泡率20%の発泡熱可塑性ポリイミドフィルムを作製した。
得られた発泡熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、258℃であり、その誘電率を測定した結果、比誘電率は発泡前の3.1に対し、発泡後は2.6にまで低下した。
【0034】
[比較例1]
厚さ50μmの熱硬化性ポリイミド(商品名:カプトン、東レ・デュポン(株)製)シートを用い、実施例に記載したと同様の操作を行って発泡体の製造を行った。尚、発泡温度は400℃である。しかしながら、良好な発泡成形体は得られなかった。発泡前後の該熱硬化性ポリイミドの誘電率測定値にも顕著な差は観察できなかった。
【0035】
[実施例2]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法により成形して得た厚み50μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入して、30時間放置することにより、炭酸ガスを浸透させた。
次に炭酸ガスを浸透したフィルムを該樹脂が樹脂軟化する温度(240〜300℃)に設定した空気式循環恒温槽内にて数分間保持し、発泡させることにより、平均気泡径500nm程度、体積発泡率30%の発泡熱可塑性ポリイミドフィルムを作製した。
次に該発泡体と厚み10μmの銅箔を熱プレス機にセットし、加圧・加温させることで樹脂と金属箔の複合体(発泡樹脂基板)を作製した。
該発泡樹脂基板中の発泡体部分のガラス転移温度は、258℃であった。
【0036】
[実施例3]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法により成形して得た厚み50μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、30分間放置することにより、炭酸ガスを浸透させ、その後圧力を減少させた。次に該フィルムと厚み10μmの銅箔を熱プレス機にセットし、加圧(4.9MPa)・加温(300℃)させることで樹脂と金属箔の複合体を形成した。
該複合体を形成させる際の加熱により樹脂内部の炭酸ガスが発泡し、平均気泡径500nm程度、体積発泡率10%の発泡体基板が形成された。
該発泡樹脂基板中の発泡体部分のガラス転移温度は、258℃であった。
【0037】
[実施例4]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法により成形して得た厚み50μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)と厚み10μmの銅箔を熱プレス機にセットし、加圧・加温させることで樹脂と金属箔の複合体を形成した。その後、該複合材を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、30分間放置することにより、炭酸ガスを浸透させた。次に炭酸ガス浸炭フィルムを該樹脂が軟化する温度(240〜300℃)に設定した空気式循環恒温槽内に数分間保持し、発泡させることにより、平均気泡径300nm程度、体積発泡率20%の発泡樹脂基板を作製した。
該発泡樹脂基板中の発泡体部分のガラス転移温度は、258℃であった。
【0038】
[実施例5]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法により成形して得た厚み50μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、30分間放置することにより、炭酸ガスを浸透させた。
次に炭酸ガス浸炭フィルムを該樹脂が軟化する温度(240〜300℃)に設定した空気式循環恒温槽内にて数十秒間保持し、発泡させることにより、平均気泡径500nm程度、体積発泡率20%の発泡熱可塑性ポリイミドフィルムを作製した。該発泡樹脂フィルムを、無電解ニッケルめっきにて厚み0.1μmの成膜を行った後、電解めっきにて銅を5μmの厚みに積層させた。その結果、発泡体両面に導電層を設けた発泡樹脂基板を得ることができた。
該発泡樹脂基板中の発泡体部分のガラス転移温度は、258℃であった。
更に、本発泡樹脂基板を240℃に設定した空気循環式恒温槽中に1分間放置し、樹脂と金属体の界面に膨れが生じないか確認したが、外観上の問題は観察されなかった。
【0039】
[実施例6]
前記熱可塑性ポリイミド(APBPM)を押出成形法により成形して得た厚み100μmのフィルム(ガラス転移温度:258℃)を加圧容器中に設置し、そこに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、30分間放置することにより、炭酸ガスを浸透させた。
次に炭酸ガス浸炭フィルムを該樹脂が軟化する温度(240〜300℃)に設定した空気式循環恒温槽内にて数十秒間保持し、発泡させることにより、平均気泡径500nm程度、体積発泡率45%の発泡熱可塑性ポリイミドフィルムを作製した。該発泡樹脂フィルムを、無電解ニッケルめっきにて厚み0.1μmの成膜を行った後、電解めっきにて銅を5μmの厚みに積層させた。その結果、発泡体両面に導電層を設けた可撓性を有する発泡樹脂基板(銅張積層板)を得ることができた。
該銅張積層板を使用し、銅表面をエッチング加工により回路パターン形成させた後に、導体保護を行うためカバーレイフィルムを積層した両面フレキシブルプリント回路基板を作製した。次に基板表面にPbフリー半田バンプを形成し、抵抗等の電子部品を表面実装させてリフロー半田付けを行った。この時の温度プロファイルは245℃(10秒未満)である。リフロー後に半田付け部の接合不備及び基材の膨れ等の確認を行ったが、外観上の問題は観察されなかった。
【0040】
[実施例7]
実施例6で作成した発泡熱可塑性ポリイミドフィルムにおいて、容積法によりGHz帯域の比誘電率測定を実施した。使用した測定器はヒューレットパッカード製のインピーダンスアナライザ(HP4291B)である。この結果、1GHzの測定周波数において、発泡前の比誘電率3.1に対し発泡後のフィルムは2.1であった。次に発泡前、発泡後の2つのフィルムを実施例6と同様な製法で両面導電層を積層させ、エッチング加工により回路長100mmのテストプリントパターンを設けたフレキシブルプリント基板を作成した。TDR(時間領域反射)測定法より電気信号の伝播時間を測定した結果、未発泡基板では伝播時間が約1.2ns程度要していたが、発泡基板では1ns以下と、約20%程度改善される効果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂製の発泡体及び発泡体基板は、はんだ耐熱性に優れ気泡径が小さく、且つ低誘電率であるので、高付加価値の高速通信用・高周波対応の回路基板(フレキシブル回路基板、プリント配線基板)に使用可能である。また本発明の発泡体及び発泡体基板は、回路用基板のみならず、絶縁体、断熱体、緩衝材等にも応用が可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成形体を発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上で、かつ平均気泡径が0.01〜10μmである発泡体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミドである請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が芳香族系テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとを反応させて得られる熱可塑性ポリイミドである請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
前記芳香族系テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物であり、芳香族系ジアミンが4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルである請求項3に記載の発泡体。
【請求項5】
比誘電率が、2.9以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡体からなることを特徴とするプリント配線基材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発泡体の少なくとも1つの面に導電体が積層されていることを特徴とする発泡体基板。
【請求項8】
前記導電体が金属、金属合金、導電性樹脂、及びカーボンから選択された1種以上である請求項7に記載の発泡体基板。
【請求項9】
請求項7又は8記載の発泡体基板が折り曲げ自在であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板。
【請求項10】
熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱して軟化により発泡させて得られる、ガラス転移温度が240℃以上の発泡体の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が芳香族系テトラカルボン酸酸二無水物と芳香族系ジアミンとを反応させて得られる熱可塑性ポリイミドである請求項10に記載の発泡体の製造方法。
【請求項12】
熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱して軟化により発泡させてガラス転移温度が240℃以上の発泡成形体を得、更に該発泡成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層させることを特徴とする、発泡体基板の製造方法。
【請求項13】
熱可塑性樹脂成形体を非反応性ガスと加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで少なくともその片面に導電体を該熱可塑性樹脂の軟化する温度で熱圧着させると共に、該熱可塑性樹脂成形体部分を発泡させる、該発泡成形体部のガラス転移温度が240℃以上である発泡体基板の製造方法。
【請求項14】
熱可塑性樹脂成形体の少なくとも1つの面に導電体を熱圧着させて積層体を得、次いで該積層体を非反応性ガスと加圧下で接触させて、前記積層体の熱可塑性樹脂成形体部分に非反応性ガスを浸透させた後に圧力を減少し、その後該熱可塑性樹脂の軟化する温度に保持して該熱可塑性樹脂成形体部分を発泡させる、該発泡成形体部のガラス転移温度が240℃以上である発泡体基板の製造方法。
【請求項15】
熱可塑性樹脂成形体に非反応性ガスを加圧下で接触、浸透させた後に圧力を減少し、次いで加熱して軟化により発泡させて、ガラス転移温度が240℃以上の発泡成形体を得、更に該発泡成形体の少なくとも1つの面に無電解メッキにより金属膜を形成し、更にその表面に電解メッキにより金属膜を形成することを特徴とする発泡体基板の製造方法。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂が芳香族系テトラカルボン酸酸二無水物と芳香族系ジアミンとを反応させて得られる熱可塑性ポリイミドである請求項12ないし15のいずれか1項に記載の発泡体基板の製造方法。
【請求項17】
前記発泡体基板中の発泡成形体部の平均気泡径が0.01〜10μmである請求項12ないし16のいずれか1項に記載の発泡体基板の製造方法。
【請求項18】
前記導電体が金属、金属合金、導電性樹脂、及びカーボンから選択された1種以上である請求項12ないし14のいずれか1項に記載の発泡体基板の製造方法。



【公開番号】特開2007−197650(P2007−197650A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86997(P2006−86997)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】