説明

発泡成形品の製造方法

【課題】安価な材料を用いて、軽量であり、且つ耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形することが可能な、発泡成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを所定の配合比で混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡成形する発泡成形体の製造方法である。所定の配合比は、混合する各材料のメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値、引張破壊伸びに基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用軽量空調ダクト等に用いられる発泡成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるための車両用の空調ダクトが知られている。
このような空調ダクトには、軽量性、断熱性が求められるので、一般に発泡させた樹脂の成形品が用いられる。
【0003】
ところで、このような空調ダクトは、発泡状態を調整することにより各種の機能性を向上させることが可能である。
例えば、吸音・消音効果を持たせるために、内面を破泡させた中空成形品(例えば、特許文献1参照)、表面硬度および気泡変形率を特定したダクト(例えば、特許文献2参照)、空調ダクトの外表面に結露が発生することを防止するために、表面粗さを特定した発泡体ダクト(例えば、特許文献3参照)、多層構造とした車両用空気ダクト(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平08−25230号公報
【特許文献2】特許第3997334号公報
【特許文献3】特開2005−241157号公報
【特許文献4】特開2006−205831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の空調ダクトを含めた従来の空調ダクトの製造方法においては、軽量性及び高断熱性を確保するため、発泡倍率を高くすると、耐衝撃性が不十分になってしまうため問題となっている。
例えば、車両のルーフサイドの空調ダクトにおいて、側面衝突から搭乗者を保護するためのカーテンエアバッグが加圧ガスの勢いにより展開された場合、展開の際の衝撃によって、ルーフサイドの空調ダクトが飛散割れするおそれがある。
【0006】
なお、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンなど、高価な発泡成形用のポリプロピレンを多量に使用するとともに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの高価な耐衝撃性材料を混合することで、発泡倍率が高く、且つ、耐衝撃性が高い発泡成形品を成形することも考えられるが、コスト的に問題がある。
そのため、より安価な材料を用いて、軽量であり、且つ、耐衝撃性に優れる発泡成形体が成形できることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安価な材料を用いて、軽量であり、且つ耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形することが可能な、発泡成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡成形する発泡成形体の製造方法であって、前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーは、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が30gf・g/10分以上であり、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーは、超高分子量ポリエチレンを含み、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が10gf・g/10分以上、30gf・g/10分未満であり、前記基材樹脂における、前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの重量%をW1(wt%)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの重量%をW2(wt%)、前記低密度ポリエチレンの重量%をW3(wt%)としたときに、
20≦W1≦60、10≦W2≦50、30≦W3≦50
を満たし、
前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM1(gf・g/10分)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM2(gf・g/10分)、前記低密度ポリエチレンの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM3(gf・g/10分)としたときに、
M1×W1/100+M2×W2/100+M3×W3/100≧17
を満たし、
前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの23℃での引張破壊伸びをE1(%)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの23℃での引張破壊伸びをE2(%)、前記低密度ポリエチレンの23℃での引張破壊伸びをE3(%)としたときに、
E1×W1/100+E2×W2/100+E3×W3/100≧200
を満たす、発泡成形品の製造方法に存する。
【0009】
(2)本発明は、−0.5×W3+60≦W1≦−0.5×W3+70
を満たす、上記(1)に記載の発泡成形品の製造方法に存する。
【0010】
(3)本発明は、W3≧40
を満たす、上記(2)に記載の発泡成形品の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記(1)に記載の発泡成形品の製造方法によると、発泡倍率を高くして成形することが可能であり、軽量の発泡成形品を成形することができる。
また、耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形することができる。
また、低密度ポリエチレンが30〜50wt%配合されているため、低コストで発泡成形品を成形できる。
【0012】
本発明の上記(2)に記載の発泡成形品の製造方法によると、発泡倍率が2.5倍以上で、且つ、衝撃強度が40kg・cm以上の発泡成形品を低コストで得ることができる。
【0013】
本発明の上記(3)に記載の発泡成形品の製造方法によると、発泡倍率が2.5倍以上で、且つ、衝撃強度が70kg・cm以上の発泡成形品を低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の製造方法により製造されたルーフサイドダクトを示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X’線矢視断面図である。
【図2】図1に記載のルーフサイドダクトを車両に取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】図1に記載のルーフサイドダクトをブロー成形する際の態様を示す断面図である。
【図4】本発明の製造方法により製造された空調用フロアダクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
実施形態として、本発明の製造方法により、車両用空調ダクト(ルーフサイドダクト)を製造する場合について説明する。
【0016】
図1に示すルーフサイドダクト1は、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるためのものである。
【0017】
かかるルーフサイドダクト1は、中空多角柱状の形状を有しており、ブロー成形により一体成形されたものである。なお、ブロー成形については後述する。
ルーフサイドダクト1は、平板上の横断ダクト3に支持されている。
横断ダクト3の一端には、空調エアを供給するためのエア供給口2が設けられており、該エア供給口から供給された空調エアは、横断ダクトの図示しない内部を流通して、ルーフサイドダクト1の中空部分に流入される。
そして、流入した空調エアは、ルーフサイドダクト1に設けられたエア排出口5から排出される。
【0018】
上記ルーフサイドダクト1は、壁部1aの平均肉厚が3.5mm以下となるように成形されている。このように、ルーフサイドダクト1の壁部1aの厚さを薄くすることにより、ルーフサイドダクト1内を流通する空調エアの流路を広く設定することができる。
【0019】
また、壁部1aの厚み方向における気泡セルの平均気泡径は300μm未満であることが好ましい。この場合、機械的強度がより高まるという利点がある。なお、平均気泡径は、100μm未満であることが更に好ましい。
【0020】
ルーフサイドダクト1は、発泡倍率が2.0倍以上の独立気泡構造を有する。ここで、発泡倍率とは、発泡ブロー成形に用いた熱可塑性樹脂の密度を発泡ブロー成形品の壁部1aの見かけ密度で割った値である。また、独立気泡構造とは、複数の気泡セル有する構造であり、少なくとも独立気泡率が70%以上のものを意味する。
発泡倍率が2.0倍未満であると、発泡倍率が上記範囲内にある場合と比較して、軽量化が不十分なものとなり、断熱性の効果も低く、結露が発生する虞がある。
【0021】
ルーフサイドダクト1は、−10℃における引張破壊伸びが40%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。ここで、引張破壊伸びとは、JIS K−7113に準じて測定した値である。
−10℃における引張破壊伸びが40%未満であると、引張破壊伸びが上記範囲内にある場合と比較して、飛散割れが生じる場合がある。
【0022】
ルーフサイドダクト1は、常温時(23℃)における引張弾性率が1000kg/cm2以上であることが好ましく、1100〜1500kg/cm2であることがより好ましい。ここで、引張弾性率とは、JIS K−7113に準じて測定した値である。
常温時における引張弾性率が1000kg/cm2未満であると、引張弾性率が上記範囲内にある場合と比較して、ルーフサイドダクト1が変形する場合がある。
【0023】
図2に示すように、ルーフサイドダクト1は、車両の内装天井材6と車体パネル4との間に、カーテンエアバッグ7と並べて配置される。
そして、カーテンエアバック7が加圧ガスにより展開された際、カーテンエアバック7の背後に配置されるルーフサイドダクト1にカーテンエアバック7の展開による衝撃が伝わることになる。
【0024】
本実施形態に係るルーフサイドダクトは、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンと、を混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡ブロー成形することにより得られる。
【0025】
長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーとしては、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が30gf・g/10分以上のものが用いられる。
例えば、ボレアリス社製の「ダプロイ(WB130、WB135)」等を用いることができる。
【0026】
プロピレン−エチレンブロックコポリマーとしては、超高分子量ポリエチレンを含み、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が10gf・g/10分以上、30gf・g/10分未満のものが用いられる。
例えば、日本ポリプロ株式会社製の「ニューフォーマー(FB3312)」等を用いることができる。
【0027】
低密度ポリエチレンとしては、例えば、住友化学株式会社製の「スミカセン(F108−1)」等を用いることができる。尚、「低密度ポリエチレン」とは、繰り返し単位としてエチレン骨格が重合したポリマーであり、分枝鎖を多数有する。低密度ポリエチレンは、一般に、ポリエチレンを1000〜3500気圧の高圧で重合させることにより得られるポリエチレンである。低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m3以上930kg/m3未満である。
【0028】
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系発泡剤、又は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系発泡剤が挙げられる。
これらの中でも、発泡剤は、空気、炭酸ガス又は窒素ガスを用いることが好ましい。この場合、有体物の混入が防げるので、耐久性等の低下が抑制される。
【0029】
また、発泡方法としては、超臨界流体を用いることが好ましい。すなわち、炭酸ガス又は窒素ガスを超臨界状態とし、基材樹脂を発泡させることが好ましい。この場合、均一且つ確実に気泡することができる。
【0030】
なお、超臨界流体が窒素ガスの場合、条件は、臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすればよく、超臨界流体が炭酸ガスの場合、条件は、臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすればよい。
【0031】
図3は、ルーフサイドダクトをブロー成形する際の態様を示す断面図である。
【0032】
まず、押出機内で、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを所定の割合で混練して、基材樹脂を作製する。
【0033】
このとき、基材樹脂における、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの重量%をW1(wt%)、プロピレン−エチレンブロックコポリマーの重量%をW2(wt%)、低密度ポリエチレンの重量%をW3(wt%)としたときに、下記式1を満たすように、上記W1、W2、W3が決定される。
(式1)
20≦W1≦60、10≦W2≦50、30≦W3≦50
【0034】
また、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM1(gf・g/10分)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM2(gf・g/10分)、前記低密度ポリエチレンの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM3(gf・g/10分)としたときに、下記式2を満たすように、上記W1、W2、W3が決定される。
(式2)
M1×W1/100+M2×W2/100+M3×W3/100≧17
【0035】
また、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの23℃での引張破壊伸びをE1(%)、プロピレン−エチレンブロックコポリマーの23℃での引張破壊伸びをE2(%)、低密度ポリエチレンの23℃での引張破壊伸びをE3(%)としたときに、下記式3を満たすように、上記W1、W2、W3が決定される。
(式3)
E1×W1/100+E2×W2/100+E3×W3/100≧200
【0036】
即ち、基材樹脂における、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとの配合割合は、上記式(式1)、(式2)、及び(式3)を全て満たすように調整される。
【0037】
当該基材樹脂に発泡剤を添加し押出機内で混合した後、ダイ内アキュムレーター(図示せず)に貯留し、続いて、所定の樹脂量が貯留された後にリング状ピストン(図示せず)を水平方向に対して垂直に押し下げる。
そして、図3に示す押出ヘッド8のダイスリットより、押出速度700kg/時以上で円筒状のパリソン9として分割金型10同士の間に押出す。
その後、分割金型10同士を型締めしてパリソン9を挟み込んで、パリソン9内に0.05〜0.15MPaの範囲でエアを吹き込み、ルーフサイドダクト1を形成する。
【0038】
尚、上述のようにブロー成形により発泡成形体を成形する場合に限らず、押し出されたパリソンを金型に吸い付けて所定の形状の成形品を成形するバキューム成形を用いてもよい。また、エアの吹き込みや、吸引を行わず、押し出されたパリソンを金型で挟み込んで成形するコンプレッション成形を用いて、発泡成形品を成形してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
まず、実施例及び比較例として用いた、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマー(PP1、PP2)と、プロピレン−エチレンブロックコポリマー(PP3)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、以下の通りである。
【0041】
PP1:ボレアリス社製、商品名「ダプロイ(WB130)」
PP2:ボレアリス社製、商品名「ダプロイ(WB135)」
PP3:日本ポリプロ株式会社製、商品名「ニューフォーマー(FB3312)」
LDPE:住友化学株式会社製、商品名「スミカセン(F108−1)」
【0042】
また、これらの樹脂の、230℃におけるMT(メルトテンション)(gf)、MFR(メルトフローレイト)(g/10分)、MT×MFRの値(gf・g/10分)、23℃における引張弾性率(MPa)、引張破壊伸び(%)を表1に示す。
【0043】
なお、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
また、MFRは、JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定を行った値である。
また、引張弾性率は、常温(23℃)で、JIS K−7113に準じて2号形試験片とし、常温(23℃)にて、引張速度50mm/分で測定した値である。
また、引張破壊伸びは、常温(23℃)で、JIS K−7113に準じて測定した値である。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例1)
PP1を60wt%、PP3を10wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
そして、この基材樹脂に、発泡剤として超臨界状態の窒素、核剤として60wt%タルクマスターバッチ1.5重量部および着色剤として40wt%カーボンブラックマスターバッチ1.5重量部を添加して発泡させ発泡樹脂とした。これを、押出機で混練した後にマンドレルとダイ外筒の間の円筒状空間であるダイ内アキュムレーターに貯留し、リング状ピストンを用いて円筒状のパリソンとして分割金型に押出し、型締め後パリソン内に0.1MPaの圧力でエアを吹き込むことにより、ブロー成形されたサンプルを得た。
【0046】
(実施例2)
PP1を40wt%、PP3を15wt%、LDPEを45wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例3)
PP1を45wt%、PP3を20wt%、LDPEを35wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例4)
PP1を30wt%、PP3を35wt%、LDPEを35wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例5)
PP1を20wt%、PP3を30wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例6)
PP1を20wt%、PP3を50wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例7)
PP1を40wt%、PP3を10wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例8)
PP2を60wt%、PP3を10wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例9)
PP2を40wt%、PP3を15wt%、LDPEを45wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例10)
PP2を45wt%、PP3を20wt%、LDPEを35wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例11)
PP2を30wt%、PP3を35wt%、LDPEを35wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例12)
PP2を20wt%、PP3を50wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(実施例13)
PP2を40wt%、PP3を10wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例1)
PP1を20wt%、PP3を20wt%、LDPEを60wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例2)
PP1を10wt%、PP3を50wt%、LDPEを40wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例3)
PP3を60wt%、LDPEを40wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例4)
PP1を80wt%、PP3を20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例5)
PP1を80wt%、LDPEを20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例6)
PP1を70wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例7)
PP1を50wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例8)
PP1を50wt%、PP3を50wt%、混合して、基材樹脂とした。
(比較例9)
PP2を20wt%、PP3を20wt%、LDPEを60wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例10)
PP2を10wt%、PP3を50wt%、LDPEを40wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例11)
PP2を80wt%、PP3を20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例12)
PP2を80wt%、LDPEを20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例13)
PP2を70wt%、LDPEを30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例14)
PP2を50wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
(比較例15)
PP2を50wt%、PP3を50wt%、混合して、基材樹脂とした。
(比較例16)
PP2を20wt%、PP3を30wt%、LDPEを50wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0047】
実施例1〜13及び比較例1〜16で得られたサンプルの物性を以下のように評価した。
<発泡倍率>
実施例1〜13及び比較例1〜16で用いた混合樹脂の密度を、対応する発泡成形体サンプルの壁部の見かけ密度で割ることにより、発泡倍率を算出した。
<衝撃強度>
衝撃強度は、発泡成形体のサンプルを−10℃の恒温槽に1時間以上放置した後に、該発泡成形体の平面部に、1kgの金属球を落下衝突させて、クラックが生じる際の、金属球の最低高さ(cm)を10cm間隔で測定することで、金属球の重量1kgと最低高さ(cm)の積により算出した。
【0048】
実施例1〜13及び比較例1〜16について、PP1、PP2、PP3、LDPEの配合比と、上記評価方法により得られた発泡倍率及び衝撃強度を表2に示す。
また、各実施例及び比較例について、基材樹脂を構成する長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマー(PP1またはPP2)の重量%(W1)及びMT×MFRの値(M1)、プロピレン−エチレンブロックコポリマー(PP3)の重量%(W2)及びMT×MFRの値(M2)、低密度ポリエチレン(LDPE)の重量%(W3)及びMT×MFRの値(M3)を、上記式2の左辺に代入して得られる値を併せて示す。
また、各実施例及び比較例について、基材樹脂を構成する長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマー(PP1またはPP2)の重量%(W1)及び引張破壊伸び(E1)、プロピレン−エチレンブロックコポリマー(PP3)の重量%(W2)及び引張破壊伸び(E2)、低密度ポリエチレン(LDPE)の重量%(W3)及び引張破壊伸び(E3)を、上記式3の左辺に代入して得られる値を併せて示す。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例1〜13のサンプルは、発泡倍率が2.0倍を超えており、且つ、衝撃強度が30kg・cmよりも大きい。
このように、実施例の製造方法においては、発泡倍率を高く、且つ、耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形することが可能である。
また、低密度ポリエチレンが30〜50wt%配合されているため、低コストで発泡成形品を成形できる。
ここで、車両用ダクトにおいては、軽量化の観点から発泡倍率が2.0倍以上のものが望まれており、また、衝撃強度は、30kg・cm以上のものが望まれている。したがって、上記実施例1〜13のサンプルは車両用ダクトに適している。
【0051】
これに対して、比較例1、2、3、7、9、10、14、16のサンプルは、発泡倍率が2.0倍よりも小さく、また、比較例4、5、6、8、11、12、13、15のサンプルは、衝撃強度が30kg・cmよりも小さい。このように、比較例1〜16においては、発泡倍率と衝撃強度との両方を向上させることができない。
【0052】
また、下記の式4を満たすような配合比で構成されている実施例2、3、7、9、10、13のサンプルは、発泡倍率と衝撃強度との双方が、比較的高くなるため、より車両用ダクトに適している。
(式4)
−0.5×W3+60≦W1≦−0.5×W3+70
【0053】
具体的には、上記式4を満たす実施例のサンプルは、発泡倍率が2.5倍以上で、且つ、衝撃強度が40kg・cm以上である。そして、PP1の樹脂を配合した実施例1〜7で比較すると、実施例3では、発泡倍率が3.3倍と高い。また、実施例2、7では、衝撃強度が75kg・cm以上で高強度である。また、PP2の樹脂を配合した実施例8〜13において、実施例10では、発泡倍率が2.8倍と高い。また、実施例9、13では、衝撃強度が75kg・cm以上で高強度である。
尚、W1≦−0.5×W3+65を満たす場合より好ましい。
【0054】
また、上記式4を満たし且つ低密度ポリエチレンが40wt%以上配合されている実施例2、7、9、13のサンプルは、安価な構成で、高い発泡倍率を維持しつつ衝撃強度を高くすることができるため車両用ダクトに特に適している。
【0055】
具体的には、PP1の樹脂を配合した実施例1〜7において、上記式4を満たし且つ低密度ポリエチレンが40wt%以上配合されている実施例のサンプルは、発泡倍率が2.9倍以上で、且つ、衝撃強度が75kg・cm以上である。
また、PP2の樹脂を配合した実施例8〜13において、上記式4を満たし且つ低密度ポリエチレンが40wt%以上配合されている実施例のサンプルは、発泡倍率が2.5倍以上で、且つ、衝撃強度が75kg・cm以上である。
【0056】
尚、本発明は、車両用軽量空調ダクトに限らず、例えば、自動車用、航空機用、車両・船舶用、建材用、各種電気機器のハウジング用、スポーツ・レジャー用の構造部材等に用いられる。カーゴフロアボード、デッキボード、リアパーセルシェルフ、ルーフパネル、ドアトリム等の内装パネル、ドアインナーパネル、プラットフォーム、ハードトップ、サンルーフ、ボンネット、バンパー、フロアスペーサー、ディビアパッド等の自動車の構造部材として用いると、自動車の軽量化が測れるので、燃費が向上することになる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る発泡成形品は、車両用空調ダクト、特に、カーテンエアバッグ等に隣接して配置される耐衝撃性が要求される薄肉・軽量なルーフサイドダクト等として好適に利用できる。
また、上記車両用空調ダクトは、機械的強度等の各種物性を低下させることなく車両の軽量化に貢献するものである。
【符号の説明】
【0058】
1 ルーフサイドダクト(車両用軽量空調ダクト)
1a 壁部
1b X−X’線矢視断面図
2 エア供給口
3 横断ダクト
4 車体パネル
5 エア排出口
6 内装天井材
7 カーテンエアバッグ
8 押出ヘッド
9 パリソン
10 分割金型
11 フロアダクト(車両用軽量空調ダクト)
12 閉鎖部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡成形する発泡成形体の製造方法であって、前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーは、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が30gf・g/10分以上であり、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーは、超高分子量ポリエチレンを含み、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値が10gf・g/10分以上、30gf・g/10分未満であり、前記基材樹脂における、前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの重量%をW1(wt%)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの重量%をW2(wt%)、前記低密度ポリエチレンの重量%をW3(wt%)としたときに、
20≦W1≦60、10≦W2≦50、30≦W3≦50
を満たし、
前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの、230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM1(gf・g/10分)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM2(gf・g/10分)、前記低密度ポリエチレンの230℃におけるメルトテンションとメルトフローレイトとを乗算した値をM3(gf・g/10分)としたときに、
M1×W1/100+M2×W2/100+M3×W3/100≧17
を満たし、
前記長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーの23℃での引張破壊伸びをE1(%)、前記プロピレン−エチレンブロックコポリマーの23℃での引張破壊伸びをE2(%)、前記低密度ポリエチレンの23℃での引張破壊伸びをE3(%)としたときに、
E1×W1/100+E2×W2/100+E3×W3/100≧200
を満たす、発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
−0.5×W3+60≦W1≦−0.5×W3+70
を満たす、請求項1に記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
W3≧40
を満たす、請求項2に記載の発泡成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116804(P2011−116804A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272897(P2009−272897)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】