説明

発泡構造体および発泡構造体の製造方法

【課題】発泡構造体の変形を抑制する。
【解決手段】発泡構造体10は、第1の発泡材11と第2の発泡材12とを備える。第2の発泡材12は、その一部12aが第1の発泡材11に充填されて第1の発泡材11の内部に位置しているとともに他の部分12bが第1の発泡材11の外部に位置している。第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aと第1の発泡材11とからなる複合体13の剛性が、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの剛性よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡構造体および発泡構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネル等の発泡成形パネルに被取付部品を取り付ける構造として、発泡成形パネルに被取付部品を突き当てて被取付部品を位置決めし、この状態で被取付部品を発泡成形パネルに固定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この発泡成形パネルは、内部に発泡構造体としての発泡層を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−65058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来構造では、発泡成形パネルに被取付部品を突き当てると、発泡層が変形するため、被取付部品の位置決め精度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、発泡構造体の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発泡構造体は、第1の発泡材と第2の発泡材とを備え、前記第2の発泡材は、その一部が前記第1の発泡材に充填されて前記第1の発泡材の内部に位置しているとともに他の部分が前記第1の発泡材の外部に位置しており、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分と前記第1の発泡材とからなる複合体の剛性が、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の剛性よりも高いことを特徴とする。
【0007】
本発明の発泡構造体の製造方法は、基材における第1の発泡材が固定された面に間隔をあけて対向配置した対向部材と前記基材との間と、前記第1の発泡材とに、充填材を充填する工程と、前記充填材を発泡させて固体状の第2の発泡材を形成して、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分と前記第1の発泡材とからなる複合体を形成する工程と、を含み、前記複合体を形成する工程は、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の剛性よりも前記複合体の剛性を高くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2の発泡材のうち第1の発泡材内に位置する部分と第1の発泡材とからなる複合体の剛性が、第2の発泡材のうち第1の発泡材外に位置する部分の剛性よりも高いことにより、発泡構造体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車のインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる自動車のインストルメントパネルを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるトレイロアを示す斜視図である。
【図4】図1のIV部の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態の自動車のインストルメントパネル1には、トレイロア2とボックスカバー3とが取り付けられ、ボックスカバー3には、リッド4が取り付けられる。
【0012】
トレイロア2は、左側壁5と、右側壁6と、これらの左右側壁5,6を連結する連結部7とを有している。そして、左側壁5の表面9bには、ボックスカバー3の側部に形成された突当部3aが突き当てられ、これにより、ボックスカバー3の位置決めがなされるようになっている。
【0013】
トレイロア2の左側壁5は、図3および図4に示すように、基材8と、この基材8に対向配置された対向部材としての表皮材9と、これら基材8および表皮材9の間に介在した発泡構造体10と、を備えて構成されている。
【0014】
発泡構造体10は、第1の発泡材11と第2の発泡材12とを備えて層状に形成されている。第1の発泡材11は、気泡同士が繋がって形成された連続気泡構造を有し、かかる連続気泡構造によって、第1の発泡材11の内部には流路が形成されている。発泡構造体10は、例えば、ポリウレタンフォームによって形成されている。このポリウレタンフォームとしては、密度が0.0180〜0.0220g/cm、硬さが9.5〜13.5kgf、伸び率が130%以上であることが好ましい。
【0015】
第2の発泡材12は、その一部12aが第1の発泡材11の内部(流路)に充填されて第1の発泡材11の内部に位置しているとともに他の部分12bが第1の発泡材11の外部に位置している。第2の発泡材12の発泡構造は、連続気泡構造であっても良いし、気泡同士が独立している独立気泡構造であっても良い。第2の発泡材12は、ポリウレタンフォームによって形成されている。
【0016】
第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aの空隙率は、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの空隙率よりも低くなっている。そして、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aと第1の発泡材11とによって複合体13が構成されている。この複合体13の剛性は、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの剛性よりも高くなっている。
【0017】
次に、発泡構造体10の製造方法について説明する。まず、第1の工程として、固体状の第1の発泡材11を、基材8の裏面8aに例えば接着によって固定する。このとき、第1の発泡材11の流路は空であるので、流動体が第1の発泡材11の内部(流路)を通過可能となっている。ここで、基材8は、例えば樹脂の射出成形によって成形してよい。
【0018】
次に、第2の工程として、基材8における第1の発泡材11が固定された面である裏面8aに間隔をあけて表皮材9を対向配置し、この表皮材9の裏面9aと基材8の裏面8aとの間と、第1の発泡材11とに、充填材を充填する。これにより第1の発泡材11に充填材が含浸する。この充填材は、発泡性および流動性を有していて未発泡状態のものであり、本実施形態では、ポリウレタンと発泡剤とを含んだ充填材が適用されている。
【0019】
次に、第3の工程として、充填材を加熱して充填材を発泡させて固体状の第2の発泡材12を形成し、これにより、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aと第1の発泡材11とからなる複合体13を形成する。この第3の工程においては、充填材のうち第1の発泡材11中の充填材の気泡の成長が第1の発泡材11によって抑制され、これにより、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aの空隙率が第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの空隙率よりも低くなり、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの剛性よりも複合体13の剛性が高くなる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の発泡構造体10は、第1の発泡材11と第2の発泡材12とを備えており、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11内に位置する部分12aと第1の発泡材11とからなる複合体13の剛性が、第2の発泡材12のうち第1の発泡材11外に位置する部分12bの剛性よりも高い。したがって、第1の発泡材が設けられず第2の発泡材だけで発泡構造体が構成された場合に比べ、複合体13の分だけ発泡構造体10の剛性が向上しているので、発泡構造体10の変形を抑制することができる。かかる構造の発泡構造体10では、複合体13を他部材の位置決め用部材として用いることができる。具体的には、複合体13に対応する部分のトレイロア2の左側壁5の表面9bに被取付部品としてのボックスカバー3を突き当てることで、複合体13によってボックスカバー3を良好に位置決めすることができる。よって、トレイロア2とボックスカバー3との組み付け寸法精度を向上することができる。また、このように、発泡構造体10の変形を抑制することができるので、トレイロア2の外観品質の向上および取付精度の向上を図ることができ、ひいては、トレイロア2と他部品との干渉を抑制して、それらの干渉による異音の発生を抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態では、第1の発泡材11および第2の発泡材12は、ポリウレタンフォームであることにより、比較的容易に発泡構造体10を製造することができる。
【0022】
また、本実施形態の発泡構造体10の製造方法では、第1の発泡材11の内部を流動体が通過可能であるので、基材8と表皮材9との間における第1の発泡材11の奥側にも第1の発泡材11を通過した充填材が行き渡るので、基材8と表皮材9との間に隙間無く第2の発泡材12を形成することができる。
【0023】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0024】
8 基材
8a 基材の裏面(面)
9 表皮材(対向部材)
10 発泡構造体
11 第1の発泡材
12 第2の発泡材
12a 第2の発泡材の一部
12b 第2の発泡材の他の部分
13 複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発泡材と第2の発泡材とを備える発泡構造体であって、
前記第2の発泡材は、その一部が前記第1の発泡材に充填されて前記第1の発泡材の内部に位置しているとともに他の部分が前記第1の発泡材の外部に位置しており、
前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分の空隙率が、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の空隙率よりも低くなっており、
前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分と前記第1の発泡材とからなる複合体の剛性が、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の剛性よりも高いことを特徴とする発泡構造体。
【請求項2】
前記第1の発泡材および前記第2の発泡材は、ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の発泡構造体。
【請求項3】
発泡構造体の製造方法であって、
流動体が内部を通過可能な固体状の第1の発泡材を、基材に固定する第1の工程と、
前記基材における前記第1の発泡材が固定された面に間隔をあけて対向配置した対向部材と前記基材との間と、前記第1の発泡材とに、発泡性および流動性を有していて未発泡状態の充填材を充填する第2の工程と、
前記充填材を発泡させて固体状の第2の発泡材を形成して、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分と前記第1の発泡材とからなる複合体を形成する第3の工程と、
を含み、
前記第3の工程は、前記充填材のうち前記第1の発泡材中の前記充填材の気泡の成長を前記第1の発泡材によって抑制して、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材内に位置する部分の空隙率を前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の空隙率よりも低くし、前記第2の発泡材のうち前記第1の発泡材外に位置する部分の剛性よりも前記複合体の剛性を高くすることを特徴とする発泡構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−162735(P2010−162735A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5762(P2009−5762)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】