説明

発泡樹脂建材

【課題】軽量で、低伸縮性を示し、曲げ強度及び釘やネジ等の止着具での止着時の引抜強度等の強度に優れ、電蝕の問題のない発泡樹脂建材を提供する。
【解決手段】上記発泡樹脂建材を、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる芯材が、発泡樹脂躯体材に内装されているものとする。芯材としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸する一次延伸に引き続き、引抜ロールの温度より高い温度で引抜延伸方向に二次延伸されてなるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂建材に関し、さらに詳しくは特定の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる芯材が内装され、軽量で、低伸縮性を示し、釘打性に優れる発泡樹脂建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴縁や桟等に用いられる天然木材に代わる建材としては、ポリスチレン等の発泡合成樹脂を押出成形した合成建材等の発泡樹脂建材が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような発泡樹脂建材、中でも押出成形材は、断面形状を任意に成型することができるので、 木材におけるような挽き割りや切削加工によるロスの発生がなく、資材を節約できるばかりでなく、軽量で運搬も容易であるなどの点で有利な建材とされている。
しかしながら、発泡合成樹脂を主材とする上記従来の発泡樹脂建材は、天然木材に比し線膨張率が高く、強度も弱いため、気温の変化による伸縮で継ぎ目に隙間が生じたり、曲がったり、折れたりし易く、また、発泡により低密度であるため、打ち込まれた釘やネジが抜けやすいという問題があり、用途の制限されるのを免れなかった。そこで、両側端を上記側縁部側に屈曲した帯板からなる金属補強材を、該桟材の長さ方向に沿って内装した、発泡合成樹脂製建築用桟が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、上記の桟においては、内装した補強材と釘との間で電蝕が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2584219号公報
【特許文献2】特許第3711004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような事情の下、軽量で、低伸縮性を示し、曲げ強度及び釘やネジ等の止着具での止着時の引抜強度等の強度に優れ、電蝕の問題のない発泡樹脂建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示すとおりのものである。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる芯材が、発泡樹脂躯体材に内装されていることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記芯材が、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸する一次延伸に引き続き、引抜ロールの温度より高い温度で引抜延伸方向に二次延伸されてなることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、上記芯材が、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの二次延伸後、熱固定されてなることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、上記芯材が、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定後、さらにアニールされてなることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、熱可塑性ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、発泡樹脂躯体材が、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン又は発泡ポリオレフィンを主材としてなることを特徴とする発泡樹脂建材が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡樹脂建材は、すべて樹脂で構成され、廃棄時の負荷が低く、軽量で、低伸縮性を示し、強度、耐食性に優れ、とりわけ芯材なしの発泡樹脂建材に比べそうである上に、釘やネジ等の止着具を用いる場合、止着具が芯材に引っ掛かることで引抜強度を向上できるし、また、芯材の入れ方により曲げ強度を向上できるなどの利点がある。
また、本発明の発泡樹脂建材は、アルミ芯材等の金属芯材を使用している発泡樹脂建材に比べ、芯材の線膨張係数が−0.5×10−5/℃程度と非常に小さいので本発明建材自体の線膨張係数も小さく、軽量であり、すべて樹脂なので廃棄時の負荷が低く、のこぎり等の切断具で切断し易く、釘やネジ等の金属系止着具が触れても電蝕が起きず、錆ないなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の発泡樹脂建材の一例の断面摸式図である。
【図2】本発明の発泡樹脂建材の別の一例の断面摸式図である。
【図3】本発明の発泡樹脂建材のさらに別の一例の断面摸式図である。
【図4】本発明の発泡樹脂建材の他の一例の断面摸式図である。
【図5】本発明の発泡樹脂建材の他の別の一例の断面摸式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発泡樹脂建材は発泡樹脂躯体材に内装されている芯材を有し、しかも芯材が、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸すること、さらにかかる引抜延伸による一次延伸に引き続き、引抜ロールの温度より高い温度で引抜延伸方向に二次延伸すること、更にはかかる二次延伸後に熱固定し、必要に応じ適宜さらにアニールすることにより得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなることで特徴付けられる。
【0015】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおける樹脂材の熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート等が挙げられ、中でも耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0016】
また、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは非晶状態であるのが好ましく、さらには結晶化度が10%未満、中でも5%未満であるのが好ましい。結晶化度は、例えば示差走査熱量計等で測定される。
【0017】
引抜延伸の際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、その温度が低すぎると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化したり、また、硬すぎて裂けたり、引き抜けなくなるので、引抜延伸前に、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−30℃以上の温度に予熱するのが好ましい。
【0018】
引抜ロールは、その温度が低すぎると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度が低下して該シートが白化したり、また、硬すぎて引き抜けなくなるし、また、高すぎても引抜延伸の際の摩擦熱等により樹脂温度が上昇して分子配向性が十分でなくなるので、好ましくは熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−30℃以上で、かつ該ガラス転移温度+20℃未満、より好ましくは熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上で、かつ該ガラス転移温度+10℃未満の温度に調整するのがよい。
【0019】
延伸倍率は、特に限定されるものではないが、低すぎると引張強度、引張弾性率に優れたシートが得られにくいし、また、高すぎても延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、2〜9倍が好ましく、さらに好ましくは4〜8倍である。
【0020】
一次延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、引抜ロールの温度より高い温度で引抜延伸方向に二次延伸され、好ましくは一軸延伸される。
【0021】
一次延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおけるポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているので強度及び弾性率に優れているものの、結晶化度は低いために加熱されると配向は容易に緩和され弾性率が低下してしまうという問題がある。
かかる問題は、一次延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該ロールの温度より高い温度で二次延伸することで解消され、配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸シートが得られる。
【0022】
上記一軸延伸方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。ロール延伸法とは、速度の異なる2対のロール間に熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟み、該シートを加熱しつつ引っ張る方法であり、一軸方向のみに強く分子配向させることができる。この場合、2対のロールの速度比が延伸倍率となる。
【0023】
一次延伸後に二次延伸する際の温度は、一次延伸する際の一対の引抜ロールの温度より高い温度であればよいが、高すぎると一次延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、昇温速度1℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度以上融解ピークの立ち上がり温度以下の範囲が好ましい。
【0024】
なお、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、ポリエチレンテレフタレートシートを引抜延伸方向に二次延伸する際は約120℃〜230℃の範囲の温度で行うのが好ましい。
【0025】
かかる二次延伸時の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低すぎると、引張強度、引張弾性率等の機械的強度に優れたシートが得られにくいし、また高すぎても延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、1.1〜3倍が好ましく、さらに好ましくは1.2〜2倍である。また、一次延伸と二次延伸の合計延伸倍率は、同様の理由で、2.5〜10倍が好ましい。
【0026】
また、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、上記引抜延伸の方向と直交する方向に延伸してもよく、この場合二軸延伸となり、引抜延伸方向に沿って屈曲させても割れ発生等の強度低下が抑制される。
【0027】
以上のようにして得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、さらに冷却処理に付すのが好ましい。冷却処理により、原反シートの引抜き時に該シートのロールから受けるせん断力による発熱を抑制し、それにより、該発熱に伴い該シートの結晶化が進行してしまい、後続の工程で不均一な収縮が生じたり、シート引抜が困難になるのを抑えられるようになる。
【0028】
冷却処理は、延伸シートの両面に対して施すのが好ましい。冷却方法は、シート面を冷媒に晒すようにするのが好ましく、例えばシート面に向けて冷却ノズルから冷媒を吹きつけたり、噴射したり、噴霧したりするのがよく、また、冷媒を中に入れた冷却ロールでシート面を挟持するようにするのが好ましい。これらの冷却方法は、単独で用いてもよいし、また、組み合わせて用いてもよく、例えば上記冷却ノズルによる冷却に続いて冷却ロールによる冷却を施すようにするなど適宜に行えばよい。
【0029】
冷媒としては、例えばエア、水、オイル等が挙げられ、エアはシート面に直接吹きつけるのが好ましい。冷却ロールは水やオイル等の冷却液を内部に充填したものが好ましい。
【0030】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、結晶化度が低いと耐熱性が低下し、また、高いと割れやすくなるので、結晶化度は20〜50%が好ましく、30〜45%がより好ましい。
【0031】
また、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、耐熱性や、機械的強度を向上させるために、二次延伸後、必要に応じ冷却したのち、熱固定するのが好ましい。
【0032】
熱固定温度は、上記二次延伸温度より低いと熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まないので耐熱性が向上せず、前記した熱可塑性ポリエステル系樹脂の融解ピークの立ち上がり温度より高くなると熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し、機械的強度等が低下するので、かかる融解ピークの立ち上がり温度以下であるのが好ましい。加熱手段は特に限定されず、例えば熱風、ヒーター等によればよい。
【0033】
また、熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸され、張力がかかっていないか、非常に小さい状態では収縮するので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが実質的に変化しない状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないのが好ましい。
【0034】
例えば、熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの0.95〜1.1になるように熱固定するのが好ましい。
【0035】
熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、一般に10秒〜10分が好ましい。
【0036】
二次延伸後、熱固定して得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、さらに、アニールするのが好ましい。熱固定及びアニールにより、発泡樹脂建材において芯材として使用した場合に、加熱収縮が生じにくくなる。
【0037】
アニールする際には、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸されるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに実質的に張力がかからない状態とするのが好ましい。
【0038】
即ち、アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの1.0以下になるようにアニールするのが好ましい。
【0039】
従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0040】
また、短尺シートをアニールする際には、荷重がかからないよう両端部を開放して行うのが好ましい。
【0041】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。
【0042】
アニールする時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜5分であり、更に好ましくは1〜2分である。
【0043】
以上のようにして得られる芯材としての延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートとして、好ましくは線膨張率が0〜−0.7×10−5/℃、引張弾性率が8.0GPa以上のものが用いられる。
【0044】
次に、本発明の発泡樹脂建材において上記芯材を内装する発泡樹脂躯体材については、発泡樹脂、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の発泡ポリオレフィン、好ましくは合成木材として汎用されているこれら発泡樹脂などを主材とするものが挙げられる。
【0045】
発泡樹脂躯体材や芯材、とりわけ躯体材には、本発明の効果が損なわれない範囲で、適宜添加成分を配合することができる。添加成分としては、例えば、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴剤、蛍光増白剤などの各種添加物、熱可塑性樹脂およびフィラー等が挙げられ、中でも酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤が好ましい。
【0046】
充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられ、熱可塑性樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体の様なエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリブテン−1樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0047】
躯体材や芯材の調製には、例えば、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機が用いられる。
【0048】
本発明の発泡樹脂建材において、芯材の配設形態としては、例えば図1に示されるように建材央部に1枚設け、それにより芯材なしの場合に比し、線膨張係数を低下させ、釘やネジ等の止着具の保持の確保により弾性率や引抜強度等の強度を向上させたり、また、図2に示されるように厚さ方向に2枚設け、それにより、線膨張係数を低下させ、図1の場合に比し釘やネジ等の止着具の保持機能を倍増させ、弾性率や引抜強度等の強度を向上させたり、また、図3に示されるように幅方向に2枚設け、それにより芯材なしの場合に比し、弾性率や引抜強度等の強度、とりわけ厚さ方向の曲げ弾性率を向上させたり、また、図4に示されるよう厚さ方向に1枚、幅方向に2枚に設けるか或いはコの字形シートを1枚設け、それにより芯材なしの場合に比し、線膨張係数を低下させ、釘やネジ等の止着具の保持の確保により弾性率や引抜強度等の強度を向上させ、曲げ弾性率を向上させたり、また、図5に示されるようにジグザグ状或いはV字状やW字状に設け、それにより芯材なしの場合に比し、線膨張係数を低下させ、釘やネジ等の止着具の保持の確保により弾性率や引抜強度等の強度を向上させ、曲げ弾性率を向上させたりするなど種々のものが挙げられる。
【0049】
本発明の発泡樹脂建材は、以下のようにして作製することができる。
(1)延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記芯材としてインサートし、該芯材を発泡樹脂躯体材となる樹脂原材料で被覆して押出し成形する。
(2)延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記芯材として金型内にインサートし、発泡樹脂躯体材となる樹脂原材料を射出して成形する。
(3)延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記芯材として金型内にインサートし、発泡樹脂躯体材となる樹脂原材料を流し込み、プレス成形にて積層する。
【0050】
上記作製の際、上記芯材と樹脂原材料の接合性、接着性を向上させるため、以下のようにするのが好ましい。
(1)芯材と樹脂原材料間にプライマーを介在させる。
(2)芯材の表面を荒らして、物理的なアンカーを形成させる。
(3)芯材にコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト加工処理、バフ加工処理等の表面処理を施す。
上記プライマーとしては、芯材をなす延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートとの接着性が良好なポリエステル系のものが好ましい。
上記ブラスト加工処理にはショットブラスト加工、ウェットブラスト加工、サンドブラスト加工等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
次に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
厚さ2.5mm、幅200mmのポリエチレンテレフタレート製原反(帝人化成社製、商品名「A−PETシートFR」、結晶化度4%)を延伸装置(協和エンジニアリング社製)に供給し、75℃に予熱した後、80℃に加熱された一対の引抜ロール(Φ200mm、400mm、ロール間隔0.5mm)間を2.0m/minの線速度で引き抜き、延伸したのち、引き抜かれた延伸シートは、170℃に加熱した熱風加熱槽中を出口速度2.5m/minで通過させ、延伸ポリエチレンテレフタレートシート(線膨張率 −0.5×10−5/℃、引張弾性率 9.0GPa)を得た。
この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを幅35mm、所定長に裁断し、これを芯材として1枚インサートし、該芯材を発泡樹脂躯体材となる発泡ポリスチレン(線膨張率7.2×10−5/℃、引張弾性率 0.5GPa)で被覆して押出成形し、図1に示される断面形状(厚さ18mm、幅45mm)の発泡樹脂建材(線膨張率5.0×10−5/℃、引張弾性率 0.7GPa)を作製した。
【0053】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを幅35mm、所定長に裁断し、これを芯材として2枚上下に平行にインサートした他は実施例1と同様にして押出成形し、図2に示される断面形状(厚さ18mm、幅45mm)の発泡樹脂建材(線膨張率3.7×10−5/℃、引張弾性率 0.9GPa)を作製した。
【0054】
(実施例3)
実施例1と同様にして得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを幅13mm、所定長に裁断し、これを芯材として6枚ジグザグ状にインサートした他は実施例1と同様にして押出成形し、図5に示される断面形状(厚さ18mm、幅45mm)の発泡樹脂建材(線膨張率3.2×10−5/℃、引張弾性率 1.0GPa)を作製した。
【0055】
(試験例)
上記実施例1〜3の各発泡樹脂建材、これらと同大の比較のための芯材なしの発泡樹脂建材(比較建材)を桟材に用い、これらを、M4.2、長さ38mmのステンレス製タッピングビスで床材にビス止めした。これらのビスの頭部をチャックで保持し、速度10mm/分で引き抜き、その引抜時の荷重を引抜強度として測定した。その結果、引抜強度は、比較建材の150kgfに対し、実施例1〜3の各発泡樹脂建材ではそれぞれ183kgf、245kgf、238kgfと高かった。
【0056】
以上より、実施例の発泡樹脂建材は、所定の芯材の内装により、線膨張率が低下し、引張弾性率が向上し、釘やネジ等で止着した際の引抜強度が向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の発泡樹脂建材は、すべて樹脂で構成され、廃棄時の負荷が低く、軽量で、低伸縮性を示し、曲げ強度及び釘やネジ等の止着具での止着時の引抜強度等の強度に優れ、かつ電蝕の問題がないので、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートからなる芯材が、発泡樹脂躯体材に内装されていることを特徴とする発泡樹脂建材。
【請求項2】
上記芯材が、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸する一次延伸に引き続き、引抜ロールの温度より高い温度で引抜延伸方向に二次延伸されてなることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂建材。
【請求項3】
上記芯材が、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの二次延伸後、熱固定されてなることを特徴とする請求項2に記載の発泡樹脂建材。
【請求項4】
上記芯材が、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定後、さらにアニールされてなることを特徴とする請求項3に記載の発泡樹脂建材。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発泡樹脂建材。
【請求項6】
発泡樹脂躯体材が、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン又は発泡ポリオレフィンを主材としてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発泡樹脂建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102482(P2012−102482A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250069(P2010−250069)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】