説明

発泡樹脂成形体の成形方法及びその装置

【課題】 キャビティ内にガスを注入してそのガス圧により発泡樹脂材料の発泡を抑制しながら発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャ法を用いた発泡樹脂成形体の成形方法において、残留ガスによる凹跡等の発生をなくして優れた外観を呈する発泡樹脂形成体を得る。
【解決手段】
キャビティ13内にガスを注入してキャビティ13内のガス圧を一定に保持しながら発泡樹脂材料を射出充填し、この射出充填完了直前又は完了時から発泡開始に至る間に、キャビティ13内に臨ませた開口端部に焼結金属又は焼結セラミックからなる多孔質部材29を有するガス強制排出通路28を通じてキャビティ13内に緩やかな吸気力を作用させることによりキャビティ13内のガス圧を常圧にまで徐々に低下させ、キャビティ13内の全ての残留ガスを円滑に排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型のキャビティ内にガスを注入してそのガス圧により発泡樹脂材料の発泡を抑制しながらキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャー法を用いて自動車の内装部品であるドアトリム等の発泡樹脂成形体を成形する方法とその成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出機によって成形金型のキャビティ内に射出充填される発泡樹脂材料をカウンタープレッシャー法を採用して発泡成形する方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。この射出成形方法は、成形金型の型締めと同時にガス供給・排出機構からキャビティ内にガスを注入したのち、キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填する際に、成形金型内に配設している圧力センサによってキャビティ内の圧力を検出してその信号により上記圧力が規定の圧力になるように、ガス供給・排出機構の開閉弁を作動させてキャビティ内の圧力を制御することにより、発泡樹脂材料の発泡を抑制しながら安定した射出速度でもって発泡樹脂材料を射出充填し、充填完了後、真空ポンプにより上記ガス供給・排出機構を通じてキャビティ内の残留ガスを急速に排除すると共に成形金型における可動金型を微小ストロークだけ後退させて発泡させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−153446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カウンタープレッシャー法による射出成形法においては、キャビティ内に射出充填される発泡樹脂材料の発泡を、キャビティ内に注入するガス圧によって抑制しながら射出成形を行うものであるから、キャビティ内への発泡樹脂材料の充填完了後にはキャビティを形成している金型の内面とキャビティ内に充填された発泡樹脂材料との間に発泡樹脂材料を囲むようにしてガスが残留することになる。
【0005】
この残留ガスを排除するには、上記射出成形方法においては、キャビティ内への発泡樹脂材料の充填完了後に、真空ポンプにより上記ガス供給・排出機構を通じてキャビティ内の残留ガスを急速に吸引、排除しているが、このようにキャビティ内のガス圧を高圧から常圧へと急激に変化させると、キャビティ内に臨ませているガス通路の排気口からの吸引力によってこの排気口近傍部分の発泡樹脂材料の表面の一部が金型内面に向かって膨出変形し、排気口に対する通気を阻止して排気口から離れた部分に存在する残留ガスを円滑に吸引、排除することができなくなり、排除されずに残留した一部のガス溜まりによって製品表面に凹跡(ひけ)が生じて外観不良が発生し、商品価値を低下させるといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、キャビティ内にガスを注入してそのガス圧により発泡樹脂材料の発泡を抑制しながらキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャー法を用いた発泡樹脂成形体の成形方法において、残留ガスによる凹跡等の発生をなくして優れた外観を呈する発泡樹脂成形体を得ることができる成形方法とこの方法を実施するための装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の発泡樹脂成形体の成形方法は、請求項1に記載したように、固定金型と可動金型とからなる成形金型を型締めしたのち、ガス供給通路を通じてのキャビティ内へのガスの注入量と、ガス排出通路を通じてのキャビティ内からのガスの排出量とを制御することによってキャビティ内を一定のガス圧に保持しながらキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャー法を用いた発泡樹脂成形体の成形方法において、キャビティ内への発泡樹脂材料の射出充填から発泡樹脂材料の発泡開始に至る間に、キャビティ内に開口した端部に多数の微細孔を有する多孔質部材を備えたガス強制排出通路を通じてキャビティ内の残留ガスを排除してキャビティ内のガス圧を常圧にまで徐々に低下させることを特徴とする。
【0008】
このように構成した発泡樹脂成形体の成形方法において、請求項2に係る発明は、キャビティ内にガス供給源からガス供給通路を通じてガスを供給する一方、キャビティ内のガスをキャビティ内に射出充填される発泡樹脂材料の樹脂圧に応じてガス排出通路を通じて排出しながら、キャビティ内のガス圧を圧力センサによって検出してキャビティ内に対する上記ガス供給量とガス排出量とを制御することにより、キャビティ内のガス圧を、発泡樹脂材料の発泡を抑制しながら発泡樹脂材料を所定の射出圧力でもってキャビティ内に射出充填し得る圧力に調整し、上記ガス供給源からのガスの供給を停止したのち、ガス強制排出通路を通じてキャビティ内の残留ガスを徐々に排除することを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、キャビティ内に臨ませているガス強制排出通路の開口端に設けた多孔質部材は、焼結金属又は焼結セラミックであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は上記発泡樹脂成形体の成形方法を実施するための装置であって、固定金型と可動金型とからなる成形金型のキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填して発泡させることにより発泡樹脂成形体を製造する成形装置において、成形金型にキャビティの一端部に連通するガス通路を設けてこのガス通路を金型外に設けた給気弁を有する給気通路と排気弁を有する排気通路とに連結、連通させていると共に、キャビティ内のガス圧を検出してその検出信号によりキャビティ内のガス圧を所定値に制御する圧力センサを配設してあり、さらに、成形金型内に、金型外に設けている強制排気源に排気弁を介して連通しているガス強制排出通路を設けてこのガス強制排出通路の開口端をキャビティに臨ませていると共にこの開口端部に多数の微細孔を有する焼結金属又は焼結セラミックからなる多孔質部材を設けていることを特徴とする。
【0011】
このように構成した発泡樹脂成形体の成形装置において、請求項5に係る発明は、ガス通路を固定金型内に、ガス強制排出通路を可動金型内にそれぞれ設けていると共に、このガス強制排出通路の多孔質部材を設けている開口端部をキャビティの両端間の中央部に臨ませてあり、キャビティに面した多孔質部材の端面をキャビティを形成している金型の内面と面一の平滑面に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、成形金型のキャビティ内にガスを注入してそのガス圧により発泡樹脂材料の発泡を抑制しながらキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャー法を用いた発泡樹脂成形体の成形方法において、キャビティ内に射出充填した発泡樹脂材料を発泡させる前における、キャビティ内への発泡樹脂材料の射出充填から発泡樹脂材料の発泡開始直前にかけてガス強制排出通路を通じてキャビティ内の残留ガスを緩やかに排除してキャビティ内のガス圧を常圧にまで徐々に低下させるので、キャビティ内に射出充填された発泡樹脂材料の表面を加圧して発泡樹脂材料の発泡を抑制している全ての残留ガスを、上記ガス強制排出通路の開口端に向かって円滑に流動させながらガス強制排出通路の開口端を通じて確実に排出することができ、表面にガス溜まりにる凹跡などが生じていない優れた外観を呈する成形品を製造することができる。
【0013】
この際、キャビティ内に向かって開口しているガス強制排出通路の開口端部に多孔質部材を設けているので、ガス強制排出通路側にキャビティ内の残留ガスを強制的に吸引、排除するための真空ポンプ等の排気源からの吸気力を作用させても、その吸気力は多孔質部材の多数の微細孔に分散され、且つ、微細孔の通気抵抗によってキャビティに臨んでいる多数の微細孔の開口端からの吸気力を低下させることができ、キャビティ内に射出充填した発泡樹脂材料を吸気力によって変形させることなく、発泡樹脂材料の表面と金型内面との間に残存している残留ガスをキャビティ内の隅々に至るまでその吸気力によって円滑に多孔質部材側に流動させてこの多孔質部材を通じてガス強制排出通路側に排除することができる。
【0014】
さらに、請求項2に係る発明によれば、キャビティ内にガス供給源からガス供給通路を通じてガスを供給する一方、キャビティ内のガスをキャビティ内に射出充填される発泡樹脂材料の樹脂圧に応じてガス排出通路を通じて排出しながら、キャビティ内のガス圧を圧力センサによって検出してキャビティ内に対する上記ガス供給量とガス排出量とを制御することにより、キャビティ内を所定のガス圧に調整するものであるから、キャビティ内での発泡樹脂材料の発泡反応を起こさせることなく、且つ、樹脂圧の過度の上昇を抑えて射出速度を安定した状態に維持しながら射出充填することができる。
【0015】
なお、上記請求項1に記載の発明において、請求項3に係る発明は、キャビティ内に臨ませているガス強制排出通路の開口端部に配設した多孔質部材として焼結金属又は焼結セラミックを使用しているので、略均一な孔径の多数の微細孔がキャビティに面した端面とガス強制排出通路側に面した端面とに亘って貫通した精度のよい排気口構造を得ることができ、これらの焼結金属又は焼結セラミックに設けている多数の微細孔からキャビティ内の残留ガスを均等に吸引しながらキャビティ内の残留ガスを徐々に排除してキャビティ内のガス圧を高圧から常圧への圧力低下の勾配をなだらかにすることができ、従って、上述したように、表面に凹跡が生じていない商品価値に優れた製品を得ることができる。
【0016】
また、上記発泡樹脂成形体の成形方法を実施するための装置としては、請求項4に記載したように、成形金型にキャビティの一端部に連通するガス通路を設けてこのガス通路を金型外に設けた給気弁を有する給気通路と排気弁を有する排気通路とに連結、連通させていると共に、キャビティ内のガス圧を検出してその検出信号によりキャビティ内のガス圧を所定値に制御する圧力センサを配設しているので、この圧力センサの検出信号を上記給気弁を有する給気通路と排気弁を有する排気通路にフィードバック処理して上述したように、成形機からキャビティ内に射出充填された発泡樹脂材料の発泡を抑制しながら且つ発泡樹脂材料の射出速度を安定した状態に維持しながらキャビティ内に射出充填することができる。
【0017】
その上、成形金型内に上記排気通路とは別に、金型外に設けている真空ポンプ等の強制排気源に排気弁を介して連通しているガス強制排出通路を設けてこのガス強制排出通路の開口端をキャビティに臨ませていると共にこの開口端部に多数の微細孔を有する焼結金属又は焼結セラミックからなる多孔質部材を設けているので、強制排気源からの強力な吸気力を多孔質部材の多数の微細孔の通気抵抗によって低下させ且つこれらの微細孔にその吸気力を分散させてキャビティ内に面している微細孔の開口端からキャビティ内の残留ガスを比較的弱い吸気力でもって吸引することができ、さらに、上記排気弁の開度を制御することによって給気量の調整と共に所定時間内にキャビティ内の残留ガスを吸引、排除できる吸気力に正確に調整することができ、従って、上述したようにキャビティ内のガス圧を高圧から常圧にまでなだらかに低下させながらキャビティ内に残理をする全ての残留ガスを排除したのち、発泡させることができて、表面に凹跡などの不良箇所が発生していない均一な品質の成形品を安定的に製造することができる。
【0018】
さらに、請求項5に係る発明によれば、カウンタープレッシャー法によって射出充填時にキャビティ内の圧力を一定圧に保持するためのガス通路やこのガス通路に連通した給気弁を有する給気通路及び排気弁を有する排気通路等を固定金型側に、ガス強制排出通路を可動金型内にそれぞれ設けているので、カウンタープレッシャ法によって射出充填時にキャビティ内の圧力を一定圧に保持することができる上記ガス通路等を備えた既存の成形装置に上記ガス強制排出通路を設けることによって、表面に残留ガスによる凹跡などの不良箇所が発生していない品質のよい成形品を製造できる装置に改良することができる。
【0019】
又、キャビティに面したガス強制排出通路の開口端部に設けている多孔質部材の端面をキャビティを形成している金型の内面と面一の平滑面に形成しているので、発泡樹脂材料が発泡した際に、この多孔質部材の端面に圧接する表面も金型内面に圧接する表面と同じ綺麗な面に仕上げることができ、さらに、ガス強制排出通路の多孔質部材を設けている開口端部をキャビティの両端間の中央部に臨ませているつので、キャビティの中央部からキャビティ内の両端に向かってキャビティ内の残留ガスを均等に且つ効率よく吸引、排除することができて、残留ガスの排除処理が可能となり、短時間の間にキャビティ内の全ての残留ガスを円滑且つ確実に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】射出発泡成形金型の簡略縦断側面図。
【図2】型締めから型開きに至る成形過程のプレスチャートとこのプレスチャートに対応した型内のガス圧状態を示すチャート図。
【図3】発泡樹脂材料の射出圧力と射出速度とガス圧との相対関係を示す線図。
【図4】キャビティ内にガスを供給している状態を示す説明図。
【図5】キャビティ内からガスを排除している状態を示す説明図。
【図6】ガス強制排出通路を通じてガスを排除している状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1において、成形金型10は、キャビティ13を形成するための凹部を設けている固定金型11と、この固定金型11の凹部に摺動自在に挿嵌させて固定金型11との合わせ面間で上記キャビティ13を形成する可動金型12とからなり、固定金型11内には射出機14から射出される溶融状態の発泡樹脂材料をキャビティ13に射出充填するためのゲート21を設けていると共に、固定金型11の一端部内に、キャビティ13の一端側における可動金型12との合わせ面に設けている溝(図示せず)を通じてキャビティ13内に連通したガス通路22を設けてあり、このガス通路22を金型外で分岐させてその一方を管又はホースからなるガス供給通路23に、他方を同じく管又はホースからなるガス排出通路24にそれぞれ連結、連通させている。
【0022】
さらに、これらのガス供給通路23とガス排出通路24には給気制御弁25と排気制御弁26をそれぞれ設けていると共に、ガス供給通路23は不活性ガスを充填しているガスボンベからなる給気源27に接続している。
【0023】
一方、上記可動金型12には、固定金型11に設けている上記ガス通路22とは別にキャビティ13内の残留ガスを積極的に吸引、排除するためのガス強制排出通路28が設けられてあり、このガス強制排出通路28の一端開口部をこの通路よりも大径に形成してその開口端をキャビティ13における両端間の中央部に連通させた状態で臨ませていると共にこの開口部内に、多数の微細孔を設けている焼結金属又は焼結セラミックからなる多孔質部材29を嵌合することによって配設して、キャビティ13に面したこの多孔質部材29の平滑な端面を可動金型12の面と面一にしてキャビティ13に向けている多数の微細孔を通じてキャビティ13内のガスをガス強制排出通路28に排出可能に構成している。
【0024】
可動金型12内に設けているこのガス強制排出通路28の他端開口部は金型外に配管した管又はホースからなる型外ガス強制排出通路30に連結、連通してあり、この型外ガス強制排出通路28に排気制御弁31が設けられてあり、この排気制御弁31を有する型外ガス強制排出通路28を真空ポンプからなる排気源32に接続している。
【0025】
また、固定金型11と可動金型12内におけるキャビティ13の周囲の複数箇所には、キャビティ13内のガス圧を検出する圧力センサ33が配設されてあり、これらの圧力センサ33からの信号を制御装置(図示せず)に入力してこの制御装置を介してその信号を上記給気制御弁25を有するガス供給路と排気制御弁26を有するガス排気通路側にフィードバックさせることにより給気制御弁25と排気制御弁26とを作動させ、キャビティ13内が所定の圧力となるようにキャビティ13内に対するガスの供給、排出量を調整するように構成している。また、成形装置には、型締めから型開きまでのタイムスケジュールに応じた制御回路を有する上記制御装置やタイマー(図示せず)が設けられている。なお、以下においては、上記固定金型11に設けている上記ガス通路22に連結、連通したガス排出通路24側の排気制御弁を第1排気制御弁26とし、上記型外ガス強制排出通路28に設けている排気制御弁を第2排気制御弁31として説明する。
【0026】
このように構成した成形装置を使用して自動車の内装部品であるドアトリム等の発泡樹脂成形品を成形する方法を図2〜図6に基づいて説明すると、まず、成形金型10における可動金型12を図2に示す型開き位置Aから型締め位置Bまで固定金型11側に移動させて型締めを行う。この型締めが完了すると同時にタイマーがスタートし、制御装置を介して各部の制御が行われる。
【0027】
そして、型締め完了と同時に図4に示すように給気制御弁25が開弁して給気源17からガス給気通路23を通じて固定金型11内に設けているガス通路22に不活性ガス等のガスが供給され、このガス通路22からキャビティ13内に注入される。なお、このガス注入時には第1排気制御弁26と第2排気制御弁31とは閉止している。
【0028】
給気源17からガス給気通路23、ガス通路22を通じてキャビティ13内に注入されるガス圧は、複数個の圧力センサ33によって常時、検出されてあり、キャビティ13内のガス圧が、キャビティ13内に射出充填される発泡樹脂材料の発泡を抑制し、且つ、キャビティ13内に発泡樹脂材料を一定の射出速度でもって射出充填可能にするガス圧と同等の設定圧に達した際に、圧力センサ33からの信号によって制御装置を介して給気制御弁25を閉止させると同時に、射出機14から固定金型1に設けているゲート21を通じて、発泡剤を混練しているポリプロピレン樹脂等の溶融樹脂からなる発泡樹脂材料を所定の射出圧力でもってキャビティ3内に射出、充填する。なお、図2において、Cはキャビティ13内への射出充填開始位置であり、Dが充填完了位置である。
【0029】
射出機14からキャビティ13内に発泡樹脂材料が射出充填されると、それに伴ってキャビティ13内のガス圧が上記設定圧よりも上昇するが、この上昇を上記圧力センサ33によって検出してその検出信号により制御装置を介して図5に示すように第1排気制御弁26を開弁させ、キャビティ13内への発泡樹脂材料の射出充填量に応じた量のガスをキャビティ13内からガス通路22、ガス排出通路24を通じて排出させる。この際、ガスの排出量が多くてキャビティ13内のガス圧が上記設定圧よりも低くなった場合には、給気制御弁25を開いてキャビティ13内にガスを注入することにより所定圧に復帰させる。
【0030】
このように、キャビティ13内の圧力を圧力センサ33によって検出させ、その信号を上記給気制御弁25と第1排気制御弁26側にフィードバックさせることによってキャビティ13内を上記設定圧に制御しながらキャビティ13内への発泡樹脂材料の射出充填を行う。なお、キャビティ13内への発泡樹脂材料の射出充填の開始から発泡開始直前までのキャビティ13内のガス圧と、発泡樹脂材料の射出速度及び射出圧力の変動状態を図3に示す。
【0031】
こうして、キャビティ13内に発泡樹脂材料を射出充填し、その射出充填完了直前、又は射出充填完了時に、給気制御弁25と排気制御弁26を閉止した状態にして図6に示すようにガス強制排出通路30に設けている第2排気制御弁31を開くことにより、キャビティ13内における発泡樹脂材料の表面とキャビティ13内に面した金型内面との間に残存している残留ガスを排除する。
【0032】
詳しくは、キャビティ13内に対する発泡樹脂材料の射出充填が完了又は完了直前に、型外ガス強制排出通路30に設けている第2排気制御弁31を開くと共に真空ポンプからなる排気源32を作動させるように設定してあり、第2排気制御弁31が開くと、排気源32による吸気力が型外ガス強制排出通路30を通じて可動金型12内に設けているガス強制排出通路28に作用し、このガス強制排出通路28の先端部に設けられてキャビティ13内に臨ませている多孔質部材29の多数の微細孔を通じて上記吸気力をキャビティ13内に作用させ、発泡樹脂材料の表面とキャビティ13内に面した金型内面との間に残存している残留ガスを多孔質部材29の多数の微細孔を通じてガス強制排出通路28内に吸引し、型外ガス強制排出通路30を通じて排気源32側に排除する。
【0033】
この際、排気源32からの吸気力を多孔質部材29の多数の微細孔によって分散させることができると共に微細孔の通気抵抗によって低下させることができ、さらに、第2排気制御弁31の開弁度を制御することによって吸気力を調整することができ、従って、キャビティ13内に向かって開口している全ての微細孔からの吸気力が緩やかになってキャビティ13内に射出充填された発泡樹脂材料にその吸引力による排気を遮断する盛り上がりのような変形を生じさせることなく、残留ガスを残存させている空間部を多孔質部材29に向かって連通させた状態を保持しながら、発泡樹脂材料の表面と金型内面に沿って全ての残留ガスを多孔質部材29に向かって円滑に流動させて多孔質部材29の微細孔を通じて吸引、排除することができ、キャビティ内のガス圧を常圧にまで徐々に低下させることができる。その上、多孔質部材29をキャビティ13の中央部に臨ませているので、キャビティ13内の隅々まで残留ガスを短時間で効率よく吸引、排除することができる。
【0034】
こうして、キャビティ13内への発泡樹脂材料の射出充填完了又は完了直前から発泡樹脂材料の発泡開始(図2におけるEの位置)に至る間に、多孔質部材29を備えたガス強制排出通路28から型外のガス強制排出通路30を通じてキャビティ13内の残留ガスを排除してキャビティ13内のガス圧を常圧にまで低下させたのち、図2におけるEからFの位置まで可動金型12を微小ストロークだけ後退させることにより発泡樹脂材料を発泡させ、その状態でFからGに至るまで冷却させて発泡を完了させ、しかるのち、型開き(図2におけるG−H)して発泡樹脂成形体を脱型させる。なお、以上の実施例においては、ガス強制排出通路28を可動金型12側に設けているが、固定金型11側に設けてその先端開口部に設けている多孔質部材29をキャビティ13内に臨ませた構造としておいてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 成形金型
11 固定金型
12 可動金型
13 キャビティ
14 射出機
21 発泡樹脂材料狂気を通路
22 ガス通路
23 ガス供給通路
24 ガス排出通路
25 給気弁
26 第1排気弁
27 給気源
28 ガス強制排出通路
29 多孔質部材
30 型外ガス強制排出通路
31 第2排気弁
32 排気源
33 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とからなる成形金型を型締めしたのち、ガス供給通路を通じてのキャビティ内へのガスの注入量と、ガス排出通路を通じてのキャビティ内からのガスの排出量とを制御することによってキャビティ内を一定のガス圧に保持しながらキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填するカウンタープレッシャー法を用いた発泡樹脂成形体の成形方法において、キャビティ内への発泡樹脂材料の射出充填から発泡樹脂材料の発泡開始に至る間に、キャビティ内に開口した端部に多数の微細孔を有する多孔質部材を備えたガス強制排出通路を通じてキャビティ内の残留ガスを排除してキャビティ内のガス圧を常圧にまで徐々に低下させることを特徴とする発泡樹脂成形体の成形方法。
【請求項2】
キャビティ内にガス供給源からガス供給通路を通じてガスを供給する一方、キャビティ内のガスをキャビティ内に射出充填される発泡樹脂材料の樹脂圧に応じてガス排出通路を通じて排出しながら、キャビティ内のガス圧を圧力センサによって検出してキャビティ内に対する上記ガス供給量とガス排出量とを制御することにより、キャビティ内のガス圧を、発泡樹脂材料の発泡を抑制しながら発泡樹脂材料を所定の射出圧力でもってキャビティ内に射出充填し得る圧力に調整し、上記ガス供給源からのガスの供給を停止したのち、ガス強制排出通路を通じてキャビティ内の残留ガスを徐々に排除することを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体の成形方法。
【請求項3】
キャビティ内に臨ませているガス強制排出通路の開口端に設けた多孔質部材は、焼結金属又は焼結セラミックであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡樹脂成形体の成形方法。
【請求項4】
固定金型と可動金型とからなる成形金型のキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填して発泡させることにより発泡樹脂成形体を製造する成形装置において、成形金型にキャビティの一端部に連通するガス通路を設けてこのガス通路を金型外に設けた給気弁を有する給気通路と排気弁を有する排気通路とに連結、連通させていると共に、キャビティ内のガス圧を検出してその検出信号によりキャビティ内のガス圧を所定値に制御する圧力センサを配設してあり、さらに、成形金型内に、金型外に設けている強制排気源に排気弁を介して連通しているガス強制排出通路を設けてこのガス強制排出通路の開口端をキャビティに臨ませていると共にこの開口端部に多数の微細孔を有する焼結金属又は焼結セラミックからなる多孔質部材を設けていることを特徴とする発泡樹脂成形体の成形装置。
【請求項5】
ガス通路を固定金型内に、ガス強制排出通路を可動金型内にそれぞれ設けていると共に、このガス強制排出通路の多孔質部材を設けている開口端部をキャビティの両端間の中央部に臨ませてあり、キャビティに面した多孔質部材の端面をキャビティを形成している金型の内面と面一の平滑面に形成していることを特徴とする請求項4に記載の発泡樹脂成形体の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35469(P2012−35469A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176267(P2010−176267)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】