説明

発熱体ユニットおよび発熱装置

【課題】本発明は、加熱対象に応じて特殊な形状に容易に加工することが可能な反射体を有する発熱体ユニットおよび発熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の発熱体ユニットは、発熱体を内包し熱線を透過する管体の外周壁に密着して取り付けられ、複数の開口を有して屈曲可能な弾性力を持つ薄板金属材料の反射体を具備しており、当該発熱体ユニットを指向性が高く製造容易な熱源として発熱装置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた発熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発熱体ユニットにおいては、電圧が印加され電流が流れて発熱する発熱体がガラス管内に収納され、そのガラス管の周りに反射板が配置される構造を有している。反射板は発熱体から放射された熱を確実に所望の方向へ反射して被加熱領域や被加熱物を効率高く加熱するものである。このような従来の発熱体ユニットにおいて、発熱体を収納するガラス管の形状としては、直線状の他に、円弧状、円環状、U字状等の特殊形状のものがあり、加熱対象となる被加熱領域や被加熱物等に応じて色々な形状のものが提供されている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−142080号公報
【特許文献2】特開2002−184561号公報
【特許文献3】特開平05−96178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の発熱体ユニットにおいては、ガラス管の周りに反射板が設けられているが、発熱体を収納するガラス管の形状や加熱対象となる被加熱領域や被加熱物等に応じて各種形状の反射板が作製されている。従来の発熱ユニットにおける反射板は、金属、例えばステンレス綱をプレス加工等により、その加熱対象に応じて特殊形状に成形し用いられていた。
【0005】
本発明は、加熱対象に応じて特殊形状に成形することが容易な反射体を有する発熱体ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の観点の発熱体ユニットは、上記の目的を達成するために、
両端に通電し発熱する発熱体、
前記発熱体を内包し熱透過性を有する管体、および
前記管体の外周壁に少なくとも一部が密着して取り付けられ、複数の開口を有して屈曲可能で弾性力を持つ薄板金属材料の反射体、を具備する。このように構成された発熱体ユニットにおいては、反射体を発熱体ユニットの形状に合わせて特別に製造する必要がなくなり、指向性の高い発熱体ユニットを容易に、且つ高精度に製造することが可能となる。
【0007】
本発明に係る第2の観点の発熱体ユニットは、前記第1の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体の基材がエキスパンド加工、刻み加工、又はパンチング加工により複数の開口が形成されている。
【0008】
本発明に係る第3の観点の発熱体ユニットは、前記第1の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体の基材を網目状に織込み形成した金属材料を用いて、複数の開口が形成されている。
【0009】
本発明に係る第4の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第3の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体において、前記管体の長手方向に直交する断面形状が、円形または多角形の一部若しくはそれらを複合した形状である。
【0010】
本発明に係る第5の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第4の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体に形成された単位面積あたりの開口の数を示す開孔率により前記反射体の反射率を設定している。
【0011】
本発明に係る第6の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第5の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体を積層構造とし、前記反射体の各層における開口位置を特定して反射率を設定している。
【0012】
本発明に係る第7の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第6の観点の発熱体ユニットにおける前記発熱体ユニットは、前記発熱体に接続される内部リード線と、前記管体の外に導出される外部リード線と、前記内部リード線と前記外部リード線とを接続する箔体と、を具備し、
前記管体が前記箔において封止され、前記管体内部に不活性ガスが封入されて構成されている。
【0013】
本発明に係る第8の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第7の観点の発熱体ユニットにおける前記発熱体が、炭素系物質を含む材料で構成されている。
【0014】
本発明に係る第9の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第8の観点の発熱体ユニットにおいて、前記発熱体ユニットが湾曲形状を有している。
【0015】
本発明に係る第10の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第8の観点の発熱体ユニットにおいて、前記発熱体ユニットが直線形状を有している。
【0016】
本発明に係る第11の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第10の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体が、前記発熱体ユニットの長手方向の垂直断面において、前記管体の外周壁を半分以上覆って構成されている。
【0017】
本発明に係る第12の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第11の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体が前記管体の径方向に弾性を有する固定具により固定されている。
【0018】
本発明に係る第13の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第11の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体が、フックを有する固定具により、前記反射体の両端の開口が係合されて前記管体に固定されている。
【0019】
本発明に係る第14の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第11の観点の発熱体ユニットにおける前記管体の外周壁に設けられた前記反射体を少なくとも2つの固定具の挟着により固定するよう構成されている。
【0020】
本発明に係る第15の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第14の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体に触媒を担持させている。
【0021】
本発明に係る第16の観点の発熱体ユニットは、前記第1乃至第14の観点の発熱体ユニットにおける前記反射体に遠赤塗料をコーティングしている。
【0022】
本発明に係る第17の観点の発熱装置は、前記第1乃至第16の観点の発熱体ユニットと、前記発熱体ユニットを被加熱物の熱源として内包する筐体とを具備する。このように構成された本発明の発熱装置は、熱源として指向性の高い発熱体ユニットを用いて容易に製造することが可能となり、加熱効率を高めることが可能となる。
【0023】
本発明に係る第18の観点の発熱装置は、前記第1乃至第16の観点の発熱体ユニットと、前記発熱体ユニットを被加熱物の熱源として内包する筐体とを具備し、前記発熱体ユニットの反射体が被加熱物に発熱体からの熱を反射するよう配置されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発熱体ユニットにおける反射体を発熱体ユニットの形状に合わせて特別に製造する必要がなくなり、指向性の高い発熱体ユニットを容易に、且つ高精度に製造することが可能となり、この発熱体ユニットを熱源として用いた発熱装置における加熱効率を高めると共に低コストで容易に製造することが可能となる。さらに、本発明によれば、反射体に消臭機能あるいは遠赤機能を有する材料を塗布することにより消臭機能あるいは遠赤機能を有する汎用性の高い発熱体ユニットおよび発熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る好適な実施の形態の発熱体ユニット及び発熱装置について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明に係る実施例1の発熱体ユニットの構成を示す側面図である。図1において、発熱体ユニット10の右側が正面側であり、左側が背面側である。
図1において、円弧状に湾曲した管体であるガラス管4の両端は溶融されて、ガラス管4の内部にはアルゴンガスまたはアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスが封入されている。ガラス管4内には電圧が印加されて高温度(約1200℃)で発熱する発熱体6が封入されている。発熱体6は、長板状であり、円弧状に湾曲しており、ガラス管4と実質的に同じ湾曲形状を有している。このため、発熱体6はガラス管4の内壁に触れることなく配置され得る構成である。実施例1の発熱体ユニット10においては、発熱体6の幅広面が正面側と背面側を向くよう配設されており、その凸面が正面側となるよう配置されている。
【0027】
発熱体6の両端には熱伝導性に優れて放熱効果を有する炭素系物質で略円柱状に形成された放熱ブロック7が接続されている。実施例1においては、放熱ブロック7に形成されたスリットに発熱体6の端部が差し込まれて互いに接合されている。また、放熱ブロック7の周りには内部リード線3が巻着されて、発熱体6を放熱ブロック7が挟着するよう構成されている。内部リード線3はコイルスプリング状に形成され弾性を有するコイル部分を有しており、発熱体6をガラス管4内に弾性的に保持している。発熱体6の両端に電気的に接続されたそれぞれの内部リード線3は、箔体であるモリブデン箔2を介して外部リード線1に接続されている。モリブデン箔2はガラス管4の封止部分に埋設されている。
【0028】
図1に示すように、実施例1の発熱体ユニット10には屈曲可能なフィルム状の反射体5がガラス管4の外周面に密着して取り付けられている。実施例1においては、反射体5が発熱体6の幅広面と対向する背面側に設けられており、発熱体6の背面側から放射された熱を正面側に反射する構成である。実施例1において、反射体5は発熱体6との対向位置に設けられている。
【0029】
上記のように構成された実施例1の発熱体ユニット10の具体的な構成について説明する。
ガラス管4は石英ガラスで管状に形成され、このガラス管4内に発熱体6が配置されている。なお、ガラス管4としては、耐熱性を有し熱透過性を有する材料であれば用いることができ、例えば石英ガラスの他に、結晶化ガラス、耐熱ガラス、硬質ガラス等が用いられる。ガラス管4内の発熱体6は、抵抗値調整物質を含む炭素系物質が焼結されて形成されている。発熱体6の具体的な製造方法については特許文献2として掲げた特開2002−184561号公報等に詳しく記載されている。
【0030】
実施例1の発熱体ユニット10における発熱体6は、細長い平板状に形成されており、その形状寸法は、例えば、板幅Wが6.0mm、板厚Tが0.5mm、長さLが300mmである。発熱体6においては、板幅と板厚との比(板幅/板厚)が5以上、即ち板幅が板厚の5倍以上であるのが望ましい。なお、実施例1においては、(板幅/板厚)の比が12.0となっている。このように板幅を板厚より5倍以上大きい平板状とすることにより、広い平面(板幅を構成する幅広面)から放射する熱量が狭い側面(板厚を構成する幅狭面)から放射する熱量より多くなり、この発熱体6により指向性を有する熱輻射が可能となる。これにより、実施形態1の発熱体ユニット10は加熱対象である被加熱領域や被加熱物に対して効率高く加熱することが可能な構成となる。
【0031】
ガラス管4の内部には不活性ガスであるアルゴンガスまたはアルゴンガスと窒素ガスの混合ガスが封入されているが、この不活性ガスは炭素系物質である発熱体6の酸化を防止するものである。実施例1の発熱体ユニット10においては、ガラス管4を封止した構造で説明したが、この構造の場合には発熱体6が空気中で高温において酸化する材料、例えばタングステン系、モリブデン系、炭素系、炭素系と抵抗調整剤とを含む材料で構成されている。しかし、発熱体が空気中で利用可能な材料、例えば炭化珪素系、二ケイ化モリブデン系、ランタンクロマイト系、ニクロム系、ステンレス系の材料で構成されている場合には、実施例1のような封止構造とする必要はない。
【0032】
図2は、実施例1の発熱体ユニット10の一部を拡大して示した図であり、ガラス管4と反射体5の両端を破断して示しており、その内部に発熱体6が封入されていることが示されている。実施例1において用いた反射体5は、エキスパンドメタル(メタルラス)であり、網目状に形成されている。反射体5の材料はFe−Cr−Al系耐熱鋼であり、板厚(t)が50μmの薄板金属である。この材料を、網目の短い方のピッチ(SW)が1.0mm、網目の長い方のピッチ(LW)が2.0mm、スライド幅(W)が0.3mmとなるエキスパンドメタルに加工して、実施例1における反射体5として用いている。図3は実施例1において用いた網目状の反射体5を示す拡大図であり、網目の短い方のピッチ(SW)、網目の長い方のピッチ(LW)、およびスライド幅(W)を示している。
【0033】
反射体5の取り付け方法は、反射体5自体の弾性力を利用してガラス管4に装着されており、反射体5はその断面形状が円弧状であり、ガラス管4の外周面の直径より多少小さく形成されている。ガラス管4に装着された反射体5は、ガラス管4の長手方向と直交する断面において、ガラス管4の半周以上の部分を覆うように密着して装着される。
【0034】
なお、反射体5はガラス管4に対して耐熱性を有する固定具を用いて取り付けることも可能である。その場合、反射体5はガラス管4の円周に対して半周以下の形状であってもガラス管4に取り付けることが可能となる。図4および図5は固定具の具体例を示す図である。
【0035】
図4に示す固定具はガラス管4の径方向に弾性力を有して、反射体5をガラス管4に押し付け固定するものである。図4の(a)は例えばシリコンで形成されたキャップ20であり、ガラス管4の端部に被せて反射体5の両端部分をガラス管4に密着固定している。図4の(b)は例えばシリコンで形成された弾性力を有するバンド21であり、ガラス管4の所定間隔毎に装着して、反射体5をガラス管4に密着固定している。図4の(c)は例えばステンレスで形成された弾性力を有する止め具22であり、ガラス管4に装着して反射体5をガラス管4に密着固定している。図4の(d)は例えばステンレスで形成された弾性力を有する止め輪23であり、この止め輪23ガラス管4に嵌めて、反射体5をガラス管4に密着固定している。図4の(e)は例えばステンレスで形成されたバネ材24であり、ガラス管4に装着して反射体5をガラス管4に密着固定している。尚、本発明は上記の材料に限定されるものではなく、耐熱性を有し各々の形状に必要な性能を有する材料であれば用いることが可能であり、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0036】
図5に示す固定具はガラス管4の外周面に配置された反射体5をガラス管4に固定するものである。図5の(a)は例えばステンレスで形成され、斜行した貫通孔を有するテーパー止め具25であり、反射体5が巻き付いたガラス管4を斜行した貫通孔に挿入して固定するものである。装着されたテーパー止め具25はそれ自体のアンバランスにより斜めになり、貫通孔の上下端がガラス管4の相対向する方向に押圧してガラス管4に反射体5を密着固定する。図5の(b)は例えばステンレスで形成されたフック26であり、ガラス管4に巻き付けられた反射体5の円周方向の両端部にある開口である孔にフック26の両端を引っ掛けて、反射体5をガラス管4に固定するものである。図5の(c)は例えばステンレスで形成されたピン27であり、ガラス管4に巻き付けられた反射体5の円周方向の両端部にある開口である孔にピン27に引っ掛けて、反射体5をガラス管4に固定するものである。図5の(d)は例えばステンレスで形成された挟着部材28であり、ガラス管4の外周面に密着して設けられた反射体5を2つの部材により挟着して互いに固定するよう構成されている。挟着部材28の両端にあるフランジ部分をピンやネジ等の固着部材により、挟着部材28を固定してガラス管4に装着し、反射体5をガラス管4に固定している。なお、挟着部材28としては2つの部材により挟み付ける構成だけでなく、3つ以上の部材の挟着により反射体5をガラス管4に固定することも可能である。尚、本発明は上記の材料に限定されるものではなく、耐熱性を有し各々の形状に必要な性能を有する材料であれば用いることが可能であり、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0037】
実施例1の発熱体ユニット10において、反射体5は湾曲形状のガラス管4に密着するよう屈曲可能な弾性体で構成されている。実施例1における反射体5は、図3に示したように、エキスパンド加工(ラス加工)されたエキスパンドメタル(メタルラス)で形成されており、複数の開口を有している。このようにエキスパンド加工されて複数の開口を有するエキスパンドメタルは、非常に軽量であると共に、容易に変形可能であり、且つ弾性力を有しているため、前述の図4および図5に示した固定具を用いて容易にガラス管4の外周面に密着して張り付けることが可能となる。なお、反射体5としての機能を高めるために、複数枚の反射体5を重ねて開口による貫通部分の領域が少なくなるよう構成することも可能である。
【0038】
また、実施例1においては、反射体5としてFe−Cr−Al系耐熱鋼をエキスパンド加工した薄板金属で構成した例で説明したが、複数の孔を有して弾性力を有するその他の薄板金属で構成することも可能である。
図6は反射体5として用いられる材料としての基材の一例を示す図である。図6において、(a)は実施例1において用いたエキスパンド加工(金網加工あるいはメッシュ加工)した反射体5の表面形状を示している。図6の(b)はパンチング加工した反射体5の材料である。図6の(c)は、薄板材料に対して三角突起を有するプレス板を押し付けて、薄板材料に三角突起を形成(刻み加工)したものであり、それぞれの突起には図における上下に開口が形成されている。図6の(d)は前述の(a)に示したエキスパンド加工の部分と、薄板材料の一部がエキスパンド加工されずに薄板材料のまま開口が形成されていない部分とを有する反射体5の薄板材料である。なお、反射体の基材としては、網目状に織込み形成した金属材料を用いて、複数の開口を形成してもよい。
【0039】
上記のように反射体5としての薄板材料を加工する際に開口の数や形状を選択することにより、反射体5の反射率を自在に調整することが可能となる。また、開口位置の異なる反射体を重ねて配置することにより、全体の反射体としての反射率を調整することが可能である。
【0040】
図6の(d)に示したようにエキスパンド加工をして開口を有する領域とエキスパンド加工が施されていない全反射する領域とを組み合わせた反射体5を用いることにより、発熱体ユニット10としての放熱特性を変更することが可能となる。図7は図6の(d)に示した反射体5を用いた発熱体ユニット10の一例を示す図である。図7に示すように、反射体5における全反射領域5Xが発熱体6における背面側の幅広面に対向する位置、即ち発熱体ユニット10の背面側に配置されており、その全反射領域5Xの両側にエキスパンド加工した領域5Yが配置されている。
【0041】
発熱体6から放射された熱において、発熱体6の背面側からの熱は反射体5の全反射領域5Xにおいて反射され発熱体6を再加熱すると共に正面側に放射される。また、エキスパンド加工した領域5Yにおける開口位置が異なるように複数枚重ねて構成し、エキスパンド加工した領域5Yにおける反射率を調整することも可能である、なお、エキスパンド加工した領域5Yを中央部分に配置し、その両側に全反射領域5Xを設ける構造も可能であり、発熱体ユニット10の熱源として、その加熱対象に応じて反射体5は各種変更が可能である。
【0042】
図8は本発明に係る実施例1における反射体5の変形例を示す図である。図8の(a)は、反射体5の長手方向に直交する断面形状が複数箇所で折れ曲がった屈曲形状であり、発熱体6から放射された熱を乱反射するよう構成されている。このように構成することにより、反射体5はガラス管4内の発熱体6の向きにかかわらずいかなる位置にも取り付け可能である。図8の(b)は、反射体5の長手方向に直交する断面形状が略円弧状であり、発熱体6から放射された熱を効率高く正面側に反射することが可能となる。上記のように、本発明に係る反射体はフレキシブルな薄板で形成されているため、その使用目的に応じて各種形状に変形することが容易であり、長手方向に直交する断面が円形や多角形の一部若しくはそれらの複合形等の種々のものが制限無く適用できる。
【0043】
図9および図10は本発明に係る実施例1における発熱体ユニット10の変形例を示す側面図である。図9および図10において、発熱体ユニット10A,10Bの左側が正面側であり、右側が背面側である。
図9に示す発熱体ユニット10Aにおいて、円弧状に湾曲したガラス管4の両端は溶融されて、ガラス管4の内部にはアルゴンガスまたはアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガス、および発熱体6が封入されている。発熱体6は、ガラス管4と実質的に同じ湾曲形状を有しており、発熱体6はガラス管4の内壁に触れることなく配置されている。図9に示す発熱体ユニット10Aにおいては、発熱体6の幅広面が正面側と背面側を向くよう配設されており、その凹面が正面側となるよう配置されている。図9に示す発熱体ユニット10Aを熱源とする場合、特に加熱領域が狭く、集中的に加熱する場合に効果がある。
【0044】
図10に示す発熱体ユニット10Bは、熱源としては特殊な例であり、円弧状に湾曲したガラス管4の外周面にはフレキシブルな薄板であるエキスパンドメタルの反射体5Bが螺旋状に巻回されて、反射体5B自身の弾性力によりガラス管4に固定されている。このように構成された発熱体ユニット10Bは、その外周部分の全域が加熱領域となり、加熱温度の調整を反射体5Bの巻き付け量により可能となる。また、反射体5Bのガラス管4への装着が容易であり、製造工程の簡素化が可能となる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明に係る実施例2の発熱体ユニットについて説明する。実施例2の発熱体ユニットにおいて、前述した実施例1と異なる点はガラス管の形状であり、その他の構成は実施例1と同様であるため、同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は実施例1における説明を適用する。
図11は本発明に係る実施例2の発熱体ユニット10Cの構成を示す側面図である。図11に示すように、長板状で直線的な形状の発熱体6が棒状のガラス管4内に封入され配置されている。ガラス管4の外周の略半周部分を覆うように反射体5が密着して設けられている。
【0046】
実施例2の発熱体ユニット10Cにおいては、反射体5がガラス管4の外周面である外周壁の半周部分を越えた位置まで覆うよう構成されているため、反射体5自身の弾性力によりガラス管4を締め付け固定している。なお、反射体5のガラス管4への固定方法としては、前述の実施例1において図4および図5を用いて説明した各種固定具を用いることができる。
実施例2の発熱体ユニット10Cにおいても、反射体5に形成される開口の形状、個数を調整することにより反射体5としての反射率を自在に調整することが可能である。また、開口位置が異なる反射体を積層して設けることにより反射率を調整することも可能である。
【0047】
実施例2において用いた反射体5は、実施例1において用いたものと同じエキスパンドメタル(メタルラス)であり、網目状に形成されている。反射体5の材料はFe−Cr−Al系耐熱鋼であり、板厚(t)が50μmの薄板金属である。この材料を、網目の短い方のピッチ(SW)が1.0mm、網目の長い方のピッチ(LW)が2.0mm、スライド幅(W)が0.3mmとなるエキスパンドメタルに加工して、実施例2における反射体5として用いている。なお、実施例2における反射体5の構成としては、実施例1において図6を用いて説明した各種薄板材料を用いることも可能である。
【0048】
上記の反射体5を用いて実施例2の発熱体ユニット10Cの全周囲における放射強度配向実験を行った。その実験結果を図12の全周放射強度配光分布のグラフに示す。
図12において、「◆」は実施例2の構成において反射体5を設けていない発熱体ユニットであり、これを比較品とした。図12における「●」は、本発明に係る実施例2の発熱体ユニット10Cである。そして、「■」は発熱体ユニットにおける反射体の開孔率が実施例2における反射体より高い場合であり、「▲」は低い場合である。ここで、開孔率とは、反射体における開口の数である。
図12示すように、反射体を設けていない比較品より本発明に係る実施例2の発熱体ユニット10Cの放射強度は、180°方向(反射体5が設置されている背面側の方向)で放射の漏れが少なく、比較品に比べて約1/2倍となっている。また、反射体5の開孔率を変更することにより、背面側への熱透過を調整できることが理解できる。
上記のように、本発明に係る発熱体ユニットは、フレキシブルな反射体5を設けることにより、反射体5としての効果を十分に果たし、さらに発熱体ユニットの形状にこだわらず容易に取り付けることが可能であり、優れた効果を奏する。
【実施例3】
【0049】
次に、実施例1の発熱体ユニット10を用いた発熱装置である電気ストーブを実施例3として説明する。図13は本発明に係る実施例3の電気ストーブの概略構成を示す図である。
図13において、発熱体ユニット10は回転軸50Aを中心に回転する回転体50上に設けられている。回転体50は、正逆両方向に回転し所望の位置で固定可能である回転軸50Aと、その回転軸50Aを軸支する台60と、回転軸50Aから円周方向に延設されたアーム50Bと、回転軸50Aの突端(図13における上端)とアーム50Bの先端との間に架設された発熱体ユニット10と、を有して構成されている。実施例3においては発熱体ユニット10が1組の場合について説明するが、所定間隔毎に複数組設けてもよい。
【0050】
実施例3における発熱体ユニット10は実施例1において説明したエキスパンドメタルの反射体5がガラス管の外周面における背面側に固着されている。この固着方法としては、前述の図4に示した固定具が用いられている。また、発熱体ユニット10はその凸面が加熱対象である被加熱物と対向するよう配設されている。実施例3においては被加熱物として人を想定している。
【0051】
上記のように構成された実施例3の電気ストーブは、回転体50を所定位置に回転し、電源を投入することにより発熱体ユニット10が通電される。その結果、実施例3の電気ストーブから放射された熱は、使用者にとって所望の方向に確実に放射される。実施例3の加熱ストーブにおいては、発熱体ユニット10の凸面が斜め上方を向いており、ガラス管4の背面には反射体5が設けられているため、反射体5により反射された熱と共に、発熱体正面から放射された熱が指向性を有して被加熱物を効率高く加熱する。
なお、回転軸50Aを電動により所定角度だけ往復回転又は連続的に同じ方向に回転するよう構成して、電気ストーブの加熱領域を選択可能に構成することも可能である。
【実施例4】
【0052】
次に、実施例1の発熱体ユニット10を用いた発熱装置である調理機器を実施例4として説明する。図14は本発明に係る実施例4の調理機器の概略構成を示す図である。図14において、実施例4の調理機器には、加熱領域の天井部分に発熱体ユニット10が設けられている。
実施例4の調理機器は、その外観を構成する外部筐体13と、加熱領域を規定する内部筐体16とを有し、加熱領域の天井側には凸面を下側に向けた発熱体ユニット10が設けられている。また、加熱領域の中間部分には被加熱部を載置するための金網14が取り付けられている。金網14の取り付け位置は上下に変更可能である。さらに、加熱領域の底面には反射板15が取り付けられており、発熱体ユニット10から放射された熱を反射するよう構成されている。反射板15としては一般的な熱反射板を用いることも可能であるが、実施例1において用いたエキスパンドメタルの反射体を複数枚重ねて用いてもよい。また、反射板15は平板でもよいが、使用に応じて曲面形状、凸凹形状等に構成して、被加熱物の加熱効率をさらに高めるよう構成することも可能である。
【0053】
実施例4の調理機器において、発熱体ユニット10の両端部分は内部筐体16の側面に密閉部材17を介して支持されている。実施例4において用いた密閉部材17は、耐熱性を有する部材であり、例えば、シリコン等が用いられる。尚、本発明は上記の材料に限定されるものではなく、耐熱性を有する材料であれば用いることが可能であり、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0054】
上記のように構成された実施例4の調理機器において、電源供給回路9から供給された電源は、使用者による操作部からの指令に応じて制御回路19において制御され、発熱体ユニット10に入力される。その結果、発熱体ユニット10には、加熱領域が使用者の設定した温度となるよう所望電圧が印加され、当該発熱体ユニット10が使用者の設定した所定時間継続して加熱される。
【0055】
実施例4の調理機器においては、発熱体ユニット10の下面(被加熱物に対向する面)が凸面となっており、上面(天井側の面)にエキスパンドメタルを複数枚重ねた反射体5が設けられている。このため、加熱領域の金網14上の被加熱物を速やかに所定温度に加熱することが可能となり効率の高い加熱調理が可能となる。また、制御回路19による電圧調整により加熱領域を所定温度に維持することが容易となり被加熱物をむらなく広範囲で加熱することが可能となる。さらに、実施例4の調理機器においては発熱体ユニット10の背面側(天井側)に反射体5が設けられているため、発熱体6からの熱が被加熱物の方向に放射されるとともに、反射体5の背面側(天井側)は断熱領域となっている。即ち、反射体5は熱遮蔽板としての機能を有している。
【実施例5】
【0056】
次に、本発明に係る実施例5の発熱体ユニットについて説明する。実施例5の発熱体ユニットは、前述の実施例2において説明した発熱体ユニット10C(図11)の変形例であり、反射体に消臭機能を持たせたものである。実施例5の説明において、前述した実施例2の発熱体ユニット10Cにおける反射体5以外の構成は同じであるため、同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は実施例2の説明を適用する。なお、実施例5においては、実施例2の発熱体ユニット10Cの反射体5に消臭機能を持たせた構成について説明するが、実施例1の発熱体ユニット10における反射体5や、実施例4における反射板15においても同様に消臭機能を持たせることが可能であり、同様の効果を奏する。
【0057】
図15は本発明に係る実施例5の発熱体ユニット10Dの構成を示す側面図である。図15に示すように、長板状で直線的な形状の発熱体6が直線的な棒状のガラス管4内に封入され配置されている。ガラス管4の外周面の略半周部分を覆うように反射体40が密着して設けられている。ガラス管4内には実施例2と同様にアルゴンガスまたはアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスが封入されている。
【0058】
実施例5の発熱体ユニット10Dにおいては、反射体40がガラス管4の外周面の半周部分を越えた位置まで覆うよう構成されているため、反射体40自身の弾性力によりガラス管4を締め付け固定している。なお、反射体40のガラス管4への固定方法としては、前述の実施例1において図4および図5を用いて説明した各種固定具を用いることができる。
さらに、実施例5の発熱体ユニット10Dにおいても、反射体40に形成される開口43の形状、個数を調整することにより反射体40としての反射率を自在に調整することが可能である。また、開口位置が異なる反射体40を積層することにより反射率を調整することも可能である。
【0059】
実施例5において用いた反射体40は、実施例1において用いたものと同じエキスパンドメタル(メタルラス)であり、網目状に形成されている。反射体40の材料はFe−Cr−Al系耐熱鋼であり、板厚(t)が50μmの薄板金属である。この材料を、網目の短い方のピッチ(SW)が1.0mm、網目の長い方のピッチ(LW)が2.0mm、スライド幅(W)が0.3mmとなるエキスパンドメタルに加工して、実施例5における反射体基材44として用いている。なお、実施例5における反射体40の構成としては、実施例1において図6を用いて説明した各種薄板材料を用いることも可能である。
【0060】
図15に示す実施例5の発熱体ユニット10Dにおいて、反射体40には触媒を担持させ消臭機能を持たせている。図16は実施例5における反射体40の一部(A)を拡大して示した断面図であり、(a)は実施例5の反射体40の断面図であり、(b)はその変形例を示す断面図である。
【0061】
図16の(a)に示すように、実施例5の発熱体ユニット10Dにおける反射体40の反射体基材44には、その裏表前面に触媒層45がコーティングされている。なお、反射体40としては図16の(b)に示すように反射体基材44の片面にだけに触媒層45をコーティングしてもよい。この場合、反射体40の背面側の面に触媒層45をコーティングすることにより反射体40の反射面の機能を効果的に使用することが可能となる。
【0062】
図16の(a)に示すように、消臭機能を有する触媒層45は、触媒層45と反射体基材44との密着性向上および反射体基材44の腐食防止のためのアンダーコート層41と、このアンダーコート層41に担持された貴金属触媒42とによって構成されている。アンダーコート層41は、アルミナをベースに耐熱性を向上させるためBaO、CeO処理を行って形成されている。アンダーコート層41に担時させる貴金属触媒42として有効的なものは、Pt、Pd、Rhなどの貴金属類、またはRu、Cu、Cr、Ce、Mn、Fe、Ni、Sn、Zn、Al、Zr、W、Vなどの遷移金属があげられる。特に、有害ガスや臭気成分を含むガスの浄化(消臭)に関して優れた効果を発揮する材料としては、Pt、Pd、Rhなどの貴金属類である。
【0063】
以下、実施例5の発熱体ユニット10Dにおける反射体40の製造方法について説明する。
まず、実施例2において説明したエキスパンド加工した反射体基材44を中性洗剤で洗浄し、その後、蒸留水にて再度洗浄する。洗浄を終えた反射体基材44を圧縮空気や温風を吹きつける等の乾燥処理を行って、水分を完全に除去する。その後、焼成炉にて500℃以上(好ましくは600℃〜1000℃)で5時間以上(好ましくは5時間〜7時間)の焼成を行う。焼成後に触媒塗料であるアンダーコートスラリーをディップ(浸漬処理)若しくはスプレー噴霧により塗布する。塗布した後、常温にて10分以上乾燥を行う。ディップおよびスプレー噴霧の回数は、作製されるアンダーコート層41の厚みによって異なる。その後400℃以上(好ましくは500℃〜700℃)で10分以上(好ましくは10分〜20分)の焼成を行い、アンダーコート層41を作製する。
【0064】
上記のようにアンダーコート層41を作製した後、貴金属触媒42の担持を行う。担持方法は、アンダーコート層41の作製工程と同じようにディップ(浸漬処理)若しくはスプレー噴霧により塗布して行われる。その後、常温にて10分以上の乾燥を行う。ディップ及びスプレー噴霧の回数は、貴金属触媒42の必要担持量によって異なる。乾燥後400℃以上(好ましくは500℃〜700℃)で0.5時間以上(好ましくは1時間〜3時間)の焼成が行われる。
なお、図16の(b)に示した反射体40の片面のみに触媒層45をコーティングする場合には、例えば触媒層45のコーティング前に反射体基材44の片面をマスキングし、その後は両面触媒層作製と同様にコーティングすることにより作製することができる。
【0065】
以上の製造工程により、実施例5の発熱体ユニット10Dにおける反射体40に触媒層45が作製される。なお、上記のように触媒層45が担持される反射体40の材料としては、複数の開口を有する薄板材料が好ましく、例えば前述の実施例1における図6の(a)から(d)に示した薄板材料に触媒層45を担持させて反射体40を製造することが可能である。このように複数の開口43を有する薄板材料は凹凸があるため表面面積が大きく消臭機能が大いに発揮される。また、反射体40の形状としては、各種形状を用いることができ、例えば図8に示したような反射体の長手方向垂直断面形状が、多角形状や円形状若しくはそれらの複合形状等の各種形状に制限無く適用できる。例えば、反射体の形状を図8の(a)に示す断面多角形状とすることにより、触媒層45と空気との接触面積が増加し、消臭効果をさらに向上させることが可能である。また、開口位置の異なる反射体を積層することにより反射効率および消臭効果を高めることができる。
【0066】
上記のように作製されたフレキシブルな反射体40を有する実施例5の発熱体ユニット10Dにおいて、消臭機能に関する実験を行った。
消臭機能の効果を測定する為に、送風ファンを設置し、アンモニア(25〜30wt%溶液)を気化させたアクリルボックス(内寸;620×620×620mm、内容積;238L)を用意し、本発明に係る実施例5の発熱体ユニット10Dと、ガラス管4に直接スプレー噴霧した発熱体ユニット(以下比較品と称す)をアクリルボックスの中に交互に入れて消臭効果を測定した。ここで比較品として用いた発熱体ユニットは実施例2において説明した発熱体ユニット10Cの反射体5が設けられていない構成であり、この構成においてガラス管4の背面側に同じ材料の触媒層を膜厚が同じとなるようにスプレー噴霧によりコーティングしたものである。
【0067】
図17は実施例5の発熱体ユニット10Dと比較品との消臭効果を測定したグラフである。この実験においては、10分毎に北川式アンモニア検知管(光明理化学工業株式会社製)を用いて測定した。
図17のグラフからも明らかなように、比較品と比べて本発明に係る実施例5の発熱体ユニット10Dでは、10分経過後では1.3倍、30分経過後では3.2倍の消臭効果が発揮されている。この消臭効果は反射体40を重ねることによりさらに向上する。
【0068】
本発明に係る実施例5の発熱体ユニット10Dにおいては、反射体40に熱伝導率の良好なFe−Cr−Al系耐熱鋼を用いているので、有害ガスや臭気成分を含むガスの浄化(消臭)に関して優れた効果を奏する貴金属系触媒(活性化温度:250〜300℃)を担持することができる。なお、反射体40を複数枚重ねて設置しても、熱伝導により触媒の活性化温度に達し、触媒の消臭機能が発揮される。
【0069】
なお、除去したい物質により酸化物系触媒(活性化温度:120〜180℃)、金ナノ粒子触媒(活性化温度:室温〜800℃)等を選択することも可能である。
上記のように本発明に係る実施例5のフレキシブルな反射体40を有した発熱体ユニット10Dにおいて、反射体40に触媒層45を設けることにより消臭機能を有した熱源を提供することが可能である。上記の触媒機能付きフレキシブルな反射体を有した発熱体ユニット10Dの発熱装置としては、ストーブ等の暖房機器、調理機器およびOA機器等に熱源として取り付けることが可能である。
【実施例6】
【0070】
次に、本発明に係る実施例6の発熱体ユニットについて説明する。実施例6の発熱体ユニットは、前述の実施例2において説明した発熱体ユニット10C(図11)の変形例であり、反射体に加熱効果を高めるために遠赤外線を放射する機能である遠赤機能を持たせたものである。実施例6の説明において、前述した実施例2の発熱体ユニット10Cにおける反射体5以外の構成は同じであるため、同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は実施例2の説明を適用する。なお、実施例6においては、実施例2の発熱体ユニット10Cの反射体5に遠赤機能を持たせた構成について説明するが、実施例1の発熱体ユニット10における反射体5や、実施例4における反射板15においても同様に遠赤機能を持たせることが可能であり、同様の効果を奏する。
【0071】
図18は本発明に係る実施例6の発熱体ユニット10Eの構成を示す側面図である。図18に示すように、長板状で直線的な形状の発熱体6が直線的な棒状のガラス管4内に封入され配置されている。ガラス管4の外周面の略半周部分を覆うように反射体60が密着して設けられている。ガラス管4内には実施例2と同様にアルゴンガスまたはアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスが封入されている。
【0072】
実施例6の発熱体ユニット10Eにおいては、反射体60がガラス管4の外周面の半周部分を越えた位置まで覆うよう構成されているため、反射体60自身の弾性力によりガラス管4を締め付け固定している。なお、反射体60のガラス管4への固定方法としては、前述の実施例1において図4および図5を用いて説明した各種固定具を用いることができる。
【0073】
さらに、実施例6の発熱体ユニット10Eにおいても、反射体60に形成される開口63の形状、個数を調整することにより反射体60としての反射率を自在に調整することが可能である。また、開口位置が異なる反射体60を積層することにより反射率を調整することも可能である。
【0074】
実施例6において用いた反射体60は、実施例1において用いたものと同じエキスパンドメタル(メタルラス)であり、網目状に形成されている。反射体60の材料はFe−Cr−Al系耐熱鋼であり、板厚が50(t)μmの薄板金属である。この材料を、網目の短い方のピッチ(SW)が1.0mm、網目の長い方のピッチ(LW)が2.0mm、スライド幅(W)が0.3mmとなるエキスパンドメタルに加工して、実施例6における反射体基材62として用いている。なお、実施例6における反射体60の構成としては、実施例1において図6を用いて説明した各種薄板材料を用いることも可能である。
【0075】
図18に示す実施例6の発熱体ユニット10Eにおいて、反射体60には遠赤機能を有する材料61がコーティングされて、遠赤機能を持たせている。図18において、(a)は実施例6における反射体60の一部を拡大して示した断面図である。
以下、実施例6の発熱体ユニット10Eにおける反射体60の製造方法について説明する。
【0076】
まず、実施例2において説明したエキスパンド加工した反射体基材62を中性洗剤で洗浄し、その後、蒸留水にて再度洗浄する。洗浄を終えた反射体基材62を圧縮空気や温風を吹きつける等の乾燥処理を行って、水分を完全に除去する。その後、焼成炉にて500℃以上(好ましくは600℃〜1000℃)で5時間以上(好ましくは5時間〜7時間)の焼成を行う。焼成後に遠赤塗料ディップ若しくはスプレー噴霧により塗布する。ディップおよびスプレー噴霧の回数は、作製される遠赤コート層61の厚みによって異なる。塗布した後、常温にて10分以上乾燥を行う。その後300℃以上(好ましくは350℃〜450℃)で10分以上(好ましくは15分〜30分)の焼成を行い、遠赤コート層61を作製する。
【0077】
なお、実施例6において用いた遠赤コート層61の材料は、オキツモ株式会社No.7244を用いた。前述の実施例5において使用した触媒塗料でも遠赤効果は期待できるが、遠赤効果をさらに高めるために実施例6では、遠赤塗料はオキツモ株式会社No.7244を用いた。また、遠赤効果を高める他の材料として例えばAl2O3、ZrO2等の無機材料も有効である。
【0078】
上記のように本発明に係る発熱体ユニットにおいては、実施例6において示したように、反射体60が遠赤機能を有しているため、金属線を用いたヒーターにおいても遠赤機能を有する反射板を設けることにより、遠赤効果を発揮する熱源を提供することが可能となる。
また、上記のような遠赤機能を有するフレキシブルな反射体が設けられた発熱体ユニットを適用する発熱装置としては、ストーブ等の暖房機器、調理機器等に取り付けることが可能である。この結果、指向性の高い熱源の加熱効果を更に高めて優れた暖房機器や調理機器を提供することが可能となる。
【0079】
なお、発熱装置における消臭・遠赤機能については消臭・遠赤材料を直接石英管に塗布することは特許文献3(特開平05−96178号公報)に開示されているが、実施例5および実施例6において説明したように、本発明のように発熱体ユニットに複数の開口を有するフレキシブルな反射体に消臭・遠赤材料をコーティングして消臭機能または遠赤機能を持たせることにより、熱源としての指向性を高めつつ各種機能を持たせた熱源を容易に製造することが可能となる。また、本発明においては、反射体に消臭機能または遠赤機能を付加させることにより、これら機能が劣化した時に発熱体ユニットそのものを交換しなければならないという課題を解決することができるものである。
なお、本発明において熱源として用いられた発熱体は、長板形状に特定されるものではなく、丸棒形状、炭素繊維で形成された帯形状等の各種形状の発熱体において適用可能である。
【0080】
本発明の発熱体ユニットにおける反射体は、軽量でフレキシブルであり、容易に形状を変更することが可能であるため、熱放射体の形状に依存せず、直管および湾曲等の各種形状に取り付けることが可能であり、さらにその反射体に消臭機能又は遠赤機能を持たせることが容易となる。
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニットを用いる各種発熱装置に適用可能であり、例えば暖房器具、調理器具、OA機器等の指向性が高く加熱効率の高い熱源として用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の発熱体ユニットは熱源としての指向性を簡単な構成で高めることが可能であり熱源として優れた効果を有し、汎用性の高い有用な装置である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る実施例1の発熱体ユニットの構成を示す側面図である。
【図2】実施例1の発熱体ユニットにおける一部を示す図である。
【図3】実施例1の発熱体ユニットにおける反射体の拡大図である。
【図4】実施例1の発熱体ユニットにおける反射体のための各種固定具を示す図である。
【図5】実施例1の発熱体ユニットにおける反射体のための各種固定具を示す図である。
【図6】実施例1の発熱体ユニットにおける反射体の各種基材を示す図である。
【図7】実施例1の発熱体ユニットにおける特定の基材を用いた場合の発熱体ユニットを示す図である。
【図8】実施例1の発熱体ユニットにおける反射体の各種基材の形状を示す斜視図である。
【図9】実施例1の発熱体ユニットの変形例を示す側面図である。
【図10】実施例1の発熱体ユニットの他の変形例を示す側面図である。
【図11】本発明に係る実施例2の発熱体ユニットの構成を示す側面図である。
【図12】実施例2の発熱体ユニットとその他の構成の全周放射強度配光分布を示すグラフである。
【図13】本発明に係る実施例3の暖房機器の概略的な構成を示す図である。
【図14】本発明に係る実施例4の調理機器の概略的な構成を示す図である。
【図15】本発明に係る実施例5の脱臭機能付反射体を有した発熱体ユニットの構成を示す側面図である。
【図16】実施例5における脱臭機能付反射体の断面形状を示す断面図である。
【図17】実施例5の脱臭機能付の発熱体ユニットにおける脱臭効果を示すグラフである。
【図18】本発明に係る実施例6における遠赤機能付反射体を有した発熱体ユニットの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 外部リード線
2 モリブデン箔
3 内部リード線
4 ガラス管
5 反射体
6 発熱体
7 放熱ブロック
9 電源供給回路
10 発熱ユニット
13 外部筺体
14 金網
15 反射体
16 内部筺体
17 密閉用部材
19 制御回路
20 キャップ
21 バンド
22 止め具
23 止め輪
24 ばね
25 テーパー止め具
26 フック
27 ピン
28 挟着部材
40 反射体
41 アンダーコート層
42 貴金属触媒
43 開口
44 反射体基材
45 触媒層
60 反射体
61 遠赤コート層
62 反射体基材
63 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に通電し発熱する発熱体、
前記発熱体を内包し熱透過性を有する管体、および
前記管体の外周壁に少なくとも一部が密着して取り付けられ、複数の開口を有して屈曲可能で弾性力を持つ薄板金属材料の反射体、
を具備する発熱体ユニット。
【請求項2】
前記反射体の基材がエキスパンド加工、刻み加工、又はパンチング加工により複数の開口が形成された請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記反射体の基材を網目状に織込み形成した金属材料を用いて、複数の開口が形成された請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項4】
前記反射体において、前記管体の長手方向に直交する断面形状が、円形または多角形の一部若しくはそれらを複合した形状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項5】
前記反射体に形成された単位面積あたりの開口の数を示す開孔率により前記反射体の反射率を設定して構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項6】
前記反射体を積層構造とし、前記反射体の各層における開口位置を特定して反射率を設定して構成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項7】
前記発熱体ユニットは、前記発熱体に接続される内部リード線と、前記管体の外に導出される外部リード線と、前記内部リード線と前記外部リード線とを接続する箔体と、を具備し、
前記管体が前記箔体において封止され、前記管体内部に不活性ガスが封入されて構成された請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項8】
前記発熱体が、炭素系物質を含む材料で構成された請求項1乃至7記載の発熱体ユニット。
【請求項9】
前記発熱体ユニットが湾曲形状を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項10】
前記発熱体ユニットが直線形状を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項11】
前記反射体が、前記発熱体ユニットの長手方向の垂直断面において、前記管体の外周壁を半分以上覆って構成された請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項12】
前記反射体が前記管体の径方向に弾性を有する固定具により固定された請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項13】
前記反射体は、フックを有する固定具により前記反射体の両端の開口が係合されて前記管体に固定された請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項14】
前記管体の外周壁に設けられた前記反射体を少なくとも2つの固定具の挟着により前記管体に固定するよう構成された請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項15】
前記反射体に触媒を担持させた請求項1乃至14のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項16】
前記反射体に遠赤塗料をコーティングした請求項1乃至14のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項17】
請求項1乃至16に記載の発熱体ユニットと、前記発熱体ユニットを被加熱物の熱源として内包する筐体とを具備する発熱装置。
【請求項18】
請求項1乃至16に記載の発熱体ユニットと、前記発熱体ユニットを被加熱物の熱源として内包する筐体とを具備し、前記発熱体ユニットの反射体が被加熱物に発熱体からの熱を反射するよう配置された発熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−97897(P2008−97897A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276016(P2006−276016)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】