説明

発電システムおよび超電導ケーブル

【課題】発電システムの低コスト化や高寿命化、設備の簡素化を図る。
【解決手段】発電システムとしての太陽電池ファーム100は、複数の発電要素である太陽電池パネルグループ1と、太陽電池パネルグループ1から出力される直流の電流を集約する集約機2と、集約機2に直接接続された超電導ケーブル20と、集約機2で集約された電流を直流から交流に変換する変換器3とを備える。変換器3にはサイリスタを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムおよび超電導ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の対策のため、家庭用を始めとする電力の供給源として、従来の原子力発電に代表される化石燃料資源を用いた発電に代わる手段が提案されている。なかでも太陽電池を用いた発電や、風力発電などは、次世代の発電手段として特に注目されている。
【0003】
以下、ここでは太陽電池素子が1台のパネル上に複数台集積されて1つのシステムをなすものを太陽電池パネルということとする。また、太陽電池パネルが1台のより大きなパネル上に複数台集積されたものを太陽電池パネルグループということとする。さらに、太陽電池パネルグループが複数台集まり、1つの送電経路をなすものを太陽電池ファームということとする。すなわち太陽電池ファーム単位で1つの送電経路、具体的には需要地である家庭などに電力が供給される。
【0004】
太陽電池が出力する電力は直流電流を供給するのに対し、家庭用などに供給する電力は交流電流を供給する。そこで従来から、たとえば「GENESIS計画と持続可能なエネルギーの活用」(非特許文献1)に開示されているように、発電用の各太陽電池パネルに直接、当該太陽電池パネル(太陽電池パネルグループ)が発電する電力による直流電流を交流電流に変換するための変換器を接続する。
【0005】
図6は、従来から用いられる発電システムの構成を示す概略図である。図6に示す発電システムとしての太陽電池ファーム400を構成する1台の太陽電池パネルグループ1は、およそ400V、1000kW程度の、直流電流を流す電力を発生する。これに対して図6に示す直流−交流間の変換を行なう機器(PCS5)を用いれば、およそ240V、1000kW程度の、交流電流を流す電力に変換される。個々の太陽電池パネルグループ1から出力され、PCS5にて交流に変換された電力は、常電導体からなるケーブル(常電導枝ケーブル50)を通り、トランス4に到達する。当該電力を供給する電圧は、トランス4でたとえば6KVの電圧に昇圧される。ここでトランス4を用いて昇圧を行なうのは、当該電力を供給することにより、太陽電池パネルグループ1から集約器2側へ流れる電流値を小さくするためである。電力が一定であれば、電圧を大きくすることにより電流を小さくすることができる。太陽電池パネルグループ1から集約器2、さらには需要地へ流れる電流値を小さくすることにより、当該電流が流れるケーブル(常電導枝ケーブル50や幹ケーブル60など)における電力の損失を小さくすることができる。
【0006】
複数台の太陽電池パネルグループ1から出力され、トランス4にて昇圧された各交流電力は、常電導枝ケーブル50の末端部(最下流)まで流れる。複数本の常電導枝ケーブル50は1本の幹ケーブル60に合流する。常電導枝ケーブル50から幹ケーブル60に流入した電流は、幹ケーブル60を集約器2に向けて流れ、集約器2にて1つの電流に集約される。たとえば1台の太陽電池パネルグループ1が出力する電力が1000kWすなわち1MWである。したがって当該集約器2が10MWの電力を集約可能な場合、当該集約器2は10台の太陽電池パネルグループ1が出力する電力を1つの電力に集約することができる。すなわちこの場合、10台の太陽電池パネルグループ1を1台の太陽電池ファーム400に設置することができる。
【0007】
複数台の太陽電池パネルグループ1が出力した電力を、1台の太陽電池ファーム400が出力する1つの電力として集約したものは、トランス4を用いて再度昇圧する。具体的には、たとえば昇圧前に6KVであった電圧を数10KVから数百KVに昇圧する。以上の各工程を踏むことにより、1台の太陽電池ファーム400から、上述した数10KVから数百KVの高い交流電圧が、家庭などの需要地へ送られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】畑 良輔、「GENESIS計画と持続可能なエネルギーの活用」、オーム社技術総合誌、住友電気工業株式会社、2009年1月、Vol.96、No.1別冊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来の太陽電池ファームにおいて、各太陽電池パネルグループに個々に直接接続される変換器(PCS5)は、たとえばIGBTのような自励式の電力制御用素子から構成される。これは、各太陽電池パネルグループから出力され、当該変換器にて交流に変換された電力に対して、後に集約器にて集約する際に同期を容易に取れるようにするために位相を調整するためである。上記のように変換した交流電流の位相を調整するためにはIGBTを用いることが不可欠となる。しかしながらこのIGBTは非常に高価な素子である。
【0010】
また、各太陽電池パネルグループは、太陽光を受光するため屋外に設置される。したがってこれらの各太陽電池パネルグループに直接接続された変換器も屋外に設置されることが多い。すると当該変換器は風雨や粉塵などに曝される機会が多くなるため、頻繁に故障が発生する問題がある。このため当該変換器に対してメンテナンスを頻繁に行なう必要が生じる。上記の問題の対策として、たとえば変換器を設置するための建屋を個別に設置することが考えられる。しかし変換器ごとに建屋を設置しようとすれば、当該建屋を設置するコストが高くなる。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストを低減し、使用時の電力損失の少ない発電システムおよび、当該発電システムに用いる超電導ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る発電システムは、複数の発電要素と、発電要素から出力される直流の電流を集約する集約機と、集約機に直接接続された超電導ケーブルと、集約機で集約された電流を直流から交流に変換する変換器とを備える。
【0013】
上述した本発明に係る発電システムにおいて、たとえば発電要素が上述した太陽電池パネルグループであり、発電システムが太陽電池ファームである場合を考える。この場合、当該太陽電池パネルグループが発生する電力による直流の電流は、集約器に直接接続された超電導ケーブルを通って、直接集約器に流入する。当該集約器において、複数の直流の電力が直流のまま集約される。そして集約されて1つの電力となったものが、変換器に送られ、直流から交流に変換されて需要地へ供給される。
【0014】
このように、集約器が処理する(集約する)電流は直流の電流である。このため、集約器が当該処理を行なう際に、集約される各電流の位相を調整したり、同期を取る必要がない。したがって、集約器に入力される電流を容易に処理することができる。また、集約器にて集約された電流が変換器に送られ、直流から交流へと変換される。すなわち1台の変換器にて、各太陽電池パネルグループが発電する電力を、まとめて直流電流から交流電流に変換する処理を行なうことができる。このため変換器を設置する台数を減らすことができることにより、当該発電システム(太陽電池ファーム)を設置するコストを低減することができる。変換器が設置される台数が少ないため、故障の発生の頻度を減少させることもできる。
【0015】
また、変換器を集約器の下流側に1台のみ設置することができるため、当該変換器を一戸の建屋の屋内に設置することができる。したがって、当該変換器が風雨や粉塵などの影響を受けて故障することを抑制できる。
【0016】
さらに、本発電システムにおいて、発電要素である太陽電池パネルグループから発電した直流電流が超電導ケーブルを通る。すなわち当該直流電流は当該発電システムの内部を流通する。超電導ケーブルを通る直流電流の抵抗値はゼロであるため、当該電流が超電導ケーブルを通ることによる電力の損失が発生しない。したがって、発電システムが発電する電力を高効率に需要地へ供給することができる。
【0017】
本発明に係る発電システムにおいて、上記変換器はサイリスタを含むことが好ましい。
上述したように、当該変換器には集約器にて1つに集約された電力(直流電流)が入力される。そして当該変換器にて直流電流から交流電流に変換された電力はそのまま家庭などの需要地へ供給される。すなわち変換器にて交流電流を流すよう変換された電力は、その後集約器にて集約されることはない。したがって当該変換器から出力される交流電流の位相の調整などを考慮する必要がない。このため変換器には交流電流の位相を調整するためのIGBTなどの高価な素子を用いる必要がなく、サイリスタなどの素子を用いることができる。サイリスタ素子はIGBTなどの自励式に対して他励式と呼ばれるものであり、自励式のIGBT素子に比べて安価である。このため発電システムを設置するコストを大幅に低減することができる。
【0018】
本発明に係る発電システムにおいて、超電導ケーブルは、その延在する方向に交差する方向に関して、円筒状の超電導体の外周面上に円筒状の絶縁体が配置され、絶縁体の外周面に交差する方向に関して、超電導体と絶縁体とが交互に複数積層された配置を備えている。上記超電導体は、上記発電要素に直接接続された枝ケーブルと電気的に接続されている。
【0019】
超電導ケーブルの延在する方向に交差する方向に関しては、円筒状の超電導体の外周面に交差する方向に関して、一定の厚みを有する超電導体と絶縁体とが交互に複数積層された配置を有している。これらの超電導体は、各発電要素(たとえば太陽電池パネルグループ)に直接接続され、当該発電要素が発電する電力による電流を流通する。各発電要素に接続される超電導体同士は、超電導ケーブルの延在する方向の外周面の径方向に関して、隣接する超電導体の間に挟まれた絶縁体により電気的に絶縁されている。このため、各発電要素に直接接続される枝ケーブルを、当該超電導ケーブルの複数本の超電導体のそれぞれと電気的に接続すれば、各発電要素から発電される電力を、すべて当該1本の超電導ケーブルを流通させて(当該超電導ケーブルを構成するそれぞれの超電導体を流通させて)下流側の集約器や需要地へ送ることができる。
【0020】
このようにすれば、各発電要素から発電され、枝ケーブルの最下流に達した電流が流入される超電導ケーブルは、各発電要素から流入した電流を別々に流しながら、同一の超電導ケーブルの内部を流通させることができる。したがって、たとえば各発電要素から発電される電流を、異なる超電導体から形成される超電導線材中を流通させることにより集約器側へ流通させることができる。このようにすれば、超電導ケーブルを構成する各超電導体(超電導線材)を構成する体積を小さくすることができる。すなわち超電導ケーブルを構成する各超電導体に必要な超電導線材の量を削減することができる。したがって、当該超電導ケーブルのコストを低減することができる。
【0021】
上述した枝ケーブルは超電導体を含むことが好ましい。このようにすれば、各発電要素(太陽電池パネルグループ)から供給される電力(直流電流)の通路が、超電導ケーブルや集約器よりも上流側に存在する枝ケーブルについても超電導体となる。上述したように、電流が超電導ケーブルを通ることによる電力の損失が発生しない。したがって、発電システムが発電する電力をさらに高効率に需要地へ供給することができる。ただし、上述した枝ケーブルは常電導体を含むものであってもよい。この場合においても、枝ケーブルの最下流に達した電流は、以後超電導ケーブルの超電導体を流通する。このため、電力の損失を小さく抑えることができる。
【0022】
本発明に係る発電システムにおいて、超電導ケーブルは発電要素と直接接続されていてもよい。上述した発電システムにおいては、複数の発電要素のそれぞれと、集約器に直接接続された超電導ケーブルとを接続する、発電要素が供給する電流の流路の最上流は単独の枝ケーブルとして配置している。しかし枝ケーブルを設けず、発電要素から集約器までを直接、超電導線材にて構成される超電導ケーブルで接続してもよい。この場合においても、枝ケーブルを設けた場合と同様に、直流電流を集約器が処理することによる、変換器を構成する素子の低コスト化や、設備の構成台数の削減による低コスト化、修理の頻度の低減などの効果をもたらすことができる。
【0023】
本発明に係る超電導ケーブルは、発電システムに用いる超電導ケーブルであり、長軸状の形状を有するフォーマと、フォーマの延在する方向に関する外周面上に配置された円筒状の超電導体と、超電導体の延在する方向に関する外周面上に配置された円筒状の絶縁体とを備えている。上記超電導体と上記絶縁体とが、上記外周面に交差する方向に関して交互に複数積層された配置を備える。
【0024】
上記超電導ケーブルは、上述した発電システムを構成する超電導ケーブルと同様である。したがって、上述した発電システムにおける超電導ケーブルと同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、発電システムの低コスト化や高寿命化、設備の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発電システムの構成を示す概略図である。
【図2】図1中の線分II−IIにおける概略断面図である。
【図3】図1中の超電導ケーブルの構成を詳細に示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る、図1と別の発電システムの構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る発電システムの構成を示す概略図である。
【図6】従来から用いられる発電システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす要素には同一の参照符号を付し、その説明は、特に必要がなければ繰り返さない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る発電システムとしての太陽電池ファーム100を示している。太陽電池ファーム100は、太陽電池素子を1台のパネル上に複数台集積されて1つのシステムをなす太陽電池パネルを、太陽電池パネルよりも大きなパネル上に複数台集積した、太陽電池パネルグループ1を複数台備えている。太陽電池パネルグループ1は送電しようとする電力を、集積された太陽電池素子が発電する、発電要素としての役割を有する。図1においては一例として太陽電池パネルグループ1を10台備えている。しかし1台の太陽電池ファーム100に設置する太陽電池パネルグループ1は、任意の台数とすることができる。
【0029】
それぞれの太陽電池パネルグループ1が発電する電力に伴う電流を送電するために、当該電流が流通する経路として、枝ケーブル10が各太陽電池パネルグループ1から伸びている。これらの複数台の枝ケーブル10は、太陽電池ファーム100の幹ケーブルとしての超電導ケーブル20に接続される。超電導ケーブル20も枝ケーブル10と同様に、太陽電池パネルグループ1が発電する電力に伴う電流の経路である。超電導ケーブル20は、集約器2に直接接続されている。集約器2に達した、太陽電池パネルグループ1の電力に伴う電流は、変換器3およびトランス4を経由して、図1中に右向きの矢印で示すように需要地である家庭や工場などに供給される。
【0030】
太陽電池ファーム100において、枝ケーブル10は超電導体を含む構成である。具体的には図2の断面図に示すように、枝ケーブル10の中心部に超電導導体26が延在する。当該超電導導体26の断面(延在する方向に交差する面)の外周部は円形状である。超電導導体26の外周面上には、断面が円筒形状である絶縁体層16が延在する。以下同様に、絶縁体層16の外周面上には断面が円筒形状である超電導導体層27が、超電導導体層27の外周面上には断面が円筒形状である絶縁体層17が延在する。すなわち枝ケーブル10は、断面をなす円形状の径方向に関して、超電導導体と絶縁体とが2層ずつ積層された構造となっている。さらに絶縁体層17の外周面上には、超電導導体26や超電導導体層27を冷却するための液体窒素管30が、延在する方向に交差する断面に関して円筒形状に配置されている。液体窒素管30の外周面上には、当該枝ケーブル10の最外周を覆う断熱管40が配置されており、液体窒素管30および、これによって冷却される超電導導体26や超電導導体層27を外部に対して断熱させる。
【0031】
なお、超電導導体26や超電導導体層27は、たとえばBi(ビスマス)系やY(イットリウム)系の酸化物超電導体材料を用いることが好ましい。これらの材料は、たとえばNbSn(ニオブスズ)などの金属超電導体材料に比べて臨界温度(Tc)が高い。このため、送電用の線材として用いれば、当該線材を冷却するための設備(ここでは液体窒素管30など)を簡素化することによるコスト低減を図ることができる。また、絶縁体層16および絶縁体層17としては、絶縁性に優れたたとえばクラフト紙、ポリプロピレン・ラミネイティッド・ペーパー(polypropylene laminated paper)などを用いることが好ましい。
【0032】
超電導ケーブル20は、図1に示すように、枝ケーブル10を流通した電流を集約器2の方へ流す役割を有する。その構成を図3に示している。図3に示す超電導ケーブル20の左右方向(延在方向)は、図1に示す超電導ケーブル20の左右方向(延在方向)に対応する。超電導ケーブル20の中心部には、フォーマ29と呼ばれるケーブルの芯部に相当する、長軸形状を有する構成要素を備える。フォーマ29は機械的強度が高く、可撓性を有する材料で形成されており、たとえば銅やアルミなどで形成される。また、フォーマ29の断面は円筒形状、または円柱形状をなしている。そして図3に示すように、フォーマ29の延在する方向に交差する断面に関して、フォーマ29の外周面上には断面が円筒形状である超電導導体層21が延在する。以下同様に、超電導導体層21の外周面上には断面が円筒形状である絶縁体層11が、絶縁体層11の外周面上には断面が円筒形状である超電導導体層22が延在する。さらに同様に、図3に示すように、超電導ケーブル20の延在する方向に交差する断面に関して内側から外側へ、絶縁体層12、超電導導体層23、絶縁体層13、超電導導体層24、絶縁体層14、超電導導体層25、絶縁体層15の順に配置される。このように、超電導ケーブル20は、その延在する方向に交差する断面に関して、円筒状の超電導導体と絶縁体とが交互に複数積層された配置を備えている。図3において超電導ケーブル20の右側の端部については描写を省略しているが、省略された部分についても同様に、超電導導体と絶縁体とが交互に配置されている。
【0033】
なお、図を見やすくするため図3においては省略されているが、超電導ケーブル20の超電導導体層と絶縁体層とが断面の径方向に交互に配置(積層)された構成の外周側には、図2の枝ケーブル10と同様に、超電導導体層を冷却して電流を流通するための液体窒素管が配置されている。さらに液体窒素管の外周側には、当該超電導ケーブル20の最外周を覆う断熱管が配置されている。
【0034】
超電導ケーブル20を構成する超電導導体層21などの超電導体材料は、上述した枝ケーブル10の超電導導体26、超電導導体層27と同様に、たとえばBi(ビスマス)系やY(イットリウム)系の酸化物超電導体材料を用いることが好ましい。また、超電導ケーブル20の絶縁体層11などについても、上述した枝ケーブル10の絶縁体層16、17と同様に、絶縁性に優れたたとえばクラフト紙、ポリプロピレン・ラミネイティッド・ペーパー(polypropylene laminated paper)などを用いることが好ましい。
【0035】
図3において超電導ケーブル20の右側の端部は省略されている。しかし超電導ケーブル20を構成するフォーマ29、超電導導体層21、絶縁体層11、超電導導体層22、絶縁体層12、超電導導体層23などすべて、図3の右側の端部は図1における集約器2に接続される。
【0036】
集約器2とは、複数の太陽電池パネルグループ1から供給され、集約器2に到達した複数経路の直流電流を1つの経路の直流経路にまとめる(集約する)ための機器である。需要地へ送電するための電力(電流)を1まとめにすることにより、需要地までの当該電力(電流)の制御をより簡易にすることができる。したがって、たとえば太陽電池パネルグループ1が1MWの電力を発電可能であり、図1に示すように太陽電池ファーム100に太陽電池パネルグループ1が10台配置されている場合、集約器2としては最大10MW以上の電力を集約することが可能なものを用いることが好ましい。
【0037】
変換器3は、集約器2から供給された、1経路の直流電流を、交流電流に変換するための機器である。変換器3の内部には、直流電流を交流電流に変換する操作を行なうためのサイリスタ素子を備えることが好ましい。
【0038】
ここで当該太陽電池ファーム100の動作について説明する。個々の太陽電池パネルグループ1は、たとえばおよそ1MWの電力を発電し、400Vの電圧で供給することができる。太陽電池パネルグループ1が発生する電力により流れる電流は直流である。すなわち太陽電池パネルグループ1に直接接続される枝ケーブル10には2.5kAの直流電流が流れる。
【0039】
枝ケーブル10には上述したように、超電導導体26と、超電導導体層27とが配置されている。たとえば超電導導体26には太陽電池パネルグループ1から供給され、超電導ケーブル20から集約器2へ向けて流れる直流電流が流れる。逆に超電導導体層27には超電導ケーブル20から太陽電池パネルグループ1へ向けて流れる直流電流が流れる。なお、これとは逆に、超電導導体層27には太陽電池パネルグループ1から超電導ケーブル20へ向けて流れる直流電流が流れ、超電導導体26には超電導ケーブル20から太陽電池パネルグループ1へ向けて流れる直流電流が流れる構成であってもよい。
【0040】
超電導導体26と超電導導体層27とはともに液体窒素管30によって冷却されるため、太陽電池パネルグループ1から供給される直流電流を流すことができる。超電導導体を流れる電流は電気抵抗がゼロであるため、枝ケーブル10を電流が流れることによる電力損失が発生しなくなる。したがって、超電導導体を用いた枝ケーブル10を用いることにより、太陽電池パネルグループ1が発電する電力を高い効率で需要地へ向けて流すことができる。
【0041】
また、上述したように、1本の枝ケーブル10の断面における内周側から外周側へ、円形状の径方向に関して超電導導体と絶縁体とを交互に積層している。すなわちたとえば枝ケーブル10の超電導導体26は、その外周部に絶縁体層16が配置されている。超電導導体層27は、絶縁体層16と絶縁体層17とに挟まれている。このため、超電導導体26と超電導導体層27とは電気的に絶縁されており、超電導導体26に流れる電流が超電導導体層27に流入するなどの不具合が起こることはない。このように円形状の径方向に関して超電導導体と絶縁体とを交互に積層することにより、1本の枝ケーブル10で、太陽電池パネルグループ1から流出する電流と、太陽電池パネルグループ1に流入する電流との両方を流通させることができる。
【0042】
枝ケーブル10と超電導ケーブル20とは、以下に示す態様により接続されている。たとえば図1において最も左上に位置する枝ケーブル10の超電導導体26は、図3の超電導ケーブル20の最も左側に位置する超電導導体層21と接続される。同じく図1の最も左上に位置する枝ケーブル10の超電導導体層27は、図3の超電導ケーブル20の超電導導体層22と接続される。
【0043】
たとえば超電導導体26には太陽電池パネルグループ1から供給され、超電導ケーブル20から集約器2へ向けて流れる直流電流が流れ、逆に超電導導体層27には超電導ケーブル20から太陽電池パネルグループ1へ向けて流れる直流電流が流れる場合を考える。このとき、超電導導体26と接続された超電導導体層21に図1(図3)の左側から右側へ直流電流が流れ、超電導導体層27と接続された超電導導体層22には図1(図3)の右側から左側へ直流電流が流れる。このように、同一の枝ケーブル10に接続された超電導導体層21と超電導導体層22とには互いに逆向きに直流電流が流れる。また、図3における超電導導体層21、22の右側に並ぶ超電導導体層23は、図1の左から2番目、すなわち最も左下に位置する枝ケーブル10の超電導導体26に接続され、図3における超電導導体層23の右側に並ぶ超電導導体層24は、図1の左から2番目、すなわち最も左下に位置する枝ケーブル10の超電導導体層27と接続される。そして上述した超電導導体層21、22と同様に、たとえば超電導導体層23に図1(図3)の左側から右側へ直流電流が流れる場合、超電導導体層24には図1(図3)の右側から左側へ直流電流が流れる。このように図3の超電導ケーブル20の隣り合う左端から見て互いに隣り合う超電導導体層がペアをなして同一の枝ケーブル10に接続される。
【0044】
したがって、たとえば図1の太陽電池ファーム100のように枝ケーブル10を10本(10経路)備える場合には、幹ケーブルとしての超電導ケーブル20には、20本の超電導導体層を備えることが好ましい。なお、上述した20本には、断面の中央部における超電導導体26を含める。このようにすれば、10本の枝ケーブル10のそれぞれの超電導導体26(超電導導体層27)と接続する超電導導体層を独立に設け、かつそれらの超電導導体層をすべて1本の超電導ケーブル20にまとめる(束ねる)ことができる。
【0045】
超電導ケーブル20においても枝ケーブル10と同様に、たとえば超電導導体層22は断面の径方向に関して、絶縁体層11と絶縁体層12とに挟まれた態様となっている。このため、超電導導体層22がたとえば断面の径方向に関して最も近い超電導導体層21および超電導導体層23と導通することはない。したがって、超電導導体層22に接続された枝ケーブル10の超電導導体26(超電導導体層27)に流れる電流を他の電流と独立に流通させることができる。このように、枝ケーブル10から幹ケーブル(超電導ケーブル20)に流入した電流についても、超電導導体を流通する。したがって、超電導ケーブル20を電流が流れることによる電力損失が非常に少なくなり、電力を高い効率で需要地へ向けて流すことができる。
【0046】
このように、複数の枝ケーブル10に流れる電流をすべて、1本の超電導ケーブル20を構成する異なる超電導導体層に独立に流通させることにより、1本の超電導ケーブル20に異なる枝ケーブル10の電流をすべて流通させることができる。このため、たとえば太陽電池パネルグループ1が発電する電力(直流電流)を集約器2の側に流通するためのケーブルを配置するために要するスペースを節約することができ、形成する超電導ケーブル20のコストを低減することができる。当該ケーブルを配置するために要するスペースが節約できれば、太陽電池ファーム100全体の構成を簡素化することができる。このため、太陽電池ファーム100を設置するコストを低減することができる。
【0047】
また、たとえば超電導ケーブル20を構成する各超電導導体層として、互いに異なる材質の超電導体にて形成された線材を用いれば、複数の太陽電池パネルグループ1から流出する異なる直流電流を、超電導ケーブル20の異なる超電導導体層を流通させることにより分担させることができる。
【0048】
以上に述べたように、各太陽電池パネルグループ1から発電され、各枝ケーブル10の超電導導体を流通した直流電流は、超電導ケーブル20を構成するそれぞれ別の超電導導体層を通り、1台の集約器2に到達する。1台の太陽電池パネルグループ1から400Vの電圧で、1MWの電力が供給されていて、図1のように10台の太陽電池パネルグループ1を備える場合、集約器2には400Vの電圧で10MWの電力が供給される。上述したように、1台の枝ケーブル10を超電導ケーブル20に向けて流れる直流電流は、上記の例の場合、2.5kAである。したがって集約器2には、合計約25kAの直流電流が流入される。
【0049】
集約器2に到達するまでは枝ケーブル10の台数だけ存在する電流の経路が、集約器2にて1経路に集約される。そして約25kAの直流電流が変換器3、トランス4を経て需要地へ送電される。したがって集約器2と変換器3とを結ぶケーブル、変換器3とトランス4とを結ぶケーブル、およびトランス4から需要地へ送電するケーブルは、いずれも超電導ケーブルとすることが好ましい。
【0050】
超電導ケーブル(超電導導体)を用いれば、25kAを流す場合においても、当該超電導ケーブル(超電導導体)の延在する方向に交差する断面の断面積を大きくする必要はない。超電導体を通過する電流の電気抵抗はゼロであるため、ケーブルの断面積を大きくしなくても、大電流を低損失で流すことができる。
【0051】
集約器2を経て変換器3に流入する、たとえば約25kAの直流電流は、変換器3においてまとめて、需要地へ供給するための交流電流に変換される。変換器3は、集約器2から流入した、たとえば10MWの大電力に対しても処理が可能な仕様を備えている。
【0052】
太陽電池ファーム100においては、変換器3に入力される電流は既に集約器2を経ており、1経路に集約された電流である。したがって、従来の太陽電池ファーム400(図6参照)のように変換器3(図6におけるPCS5)を通過した後に集約器2に流入されることはない。このため、変換器3において、変換器3から出力される交流電流の位相を調整するなどの処理をする必要はない。このため変換器3にて直流電流を交流電流に変換する役割を果たす素子として、たとえばIGBTのような自励式の素子を用いる必要はない。このため上述したように変換器3においてはサイリスタのような他励式で、IGBTより安価な素子を用いることができる。したがって太陽電池ファーム100の設備のコストを削減することができる。
【0053】
さらに、太陽電池ファーム100の構成においては変換器3を1台設置するのみで、すべての太陽電池パネルグループ1が発電する電力(電流)に対して処理を行なうことができる。すなわち、たとえば従来の太陽電池ファーム400(図6参照)のように太陽電池パネルグループ1ごとに変換器(図6におけるPCS5)を設置する場合に比べて、変換器を設置する台数を大幅に減少させることができる。
【0054】
また、変換器3を超電導ケーブル20よりも下流側(需要地側)に1台設置するため、変換器3を設置する場所は、通常屋外に設置される太陽電池パネルグループ1から相当離れている。このため変換器3は太陽電池パネルグループ1に付随させて屋外に設置する必要がない。たとえば当該変換器3専用の建屋を設置し、当該建屋内に設置することができる。このようにすれば、変換器3が屋外の風雨や粉塵により故障する頻度を低減することができる。また、太陽電池パネルグループごとに個々に変換器が設置されている場合に比べて、変換器の台数が少ないことからも、当該変換器3が故障する頻度を低減することができる。
【0055】
以上より、本実施の形態1の太陽電池ファーム100のような構成とすることにより、変換器3のコストを大幅に低減することができる。そして変換器3にて交流に変換された電流を需要地へ高電力で供給するため、当該電流はトランス4を経由させることにより、当該電流を供給する電圧を高くする処理を行なう。
【0056】
以上の構成により、本実施の形態1の太陽電池ファーム100は、低コストで高い電力を、高効率に需要地に供給することができる。
【0057】
なお、図4に示す太陽電池ファーム200のように、個々の太陽電池パネルグループ1から超電導ケーブル20に向けて流れる直流電流の経路として、超電導導体の代わりに通常の常電導導体を用いた常電導枝ケーブル50を用いてもよい。この場合においても、常電導枝ケーブル50を流通した電流は超電導ケーブル20に流入し、超電導導体層を流通することにより集約器2に到達する。常電導枝ケーブル50の延在する方向の長さは、幹ケーブルである超電導ケーブル20の延在する方向の長さに比べて非常に短い。このため、常電導枝ケーブル50を流れる電流により多少の電力損失が発生しても、超電導ケーブル20にて当該損失を帳消しにするだけの低損失で電流を流通することができる。したがって、太陽電池ファーム200全体としては電力の低損失を確保することができる。太陽電池ファーム200は、以上の点についてのみ太陽電池ファーム100と異なる。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態2の太陽電池ファーム300は、上述した本実施の形態1の太陽電池ファーム100と、大筋で同様の態様を備えている。しかし、図5に示すように、本実施の形態2の太陽電池ファーム300は、個々の太陽電池パネルグループ1と集約器2との間に枝ケーブルを設けず、両者の間を超電導ケーブル70で直接接続した構成となっている。
【0059】
たとえば図5に示すように、太陽電池パネルグループ1が10台備えられた太陽電池ファーム300の場合、太陽電池パネルグループ1と集約器2とを直接接続する超電導ケーブル70が10本備えられている。それぞれの超電導ケーブル70は、たとえば図2に示す太陽電池ファーム100の枝ケーブル10と同様に、超電導導体26と超電導導体層27(図2参照)とを1本ずつ備え、当該ケーブルの断面のなす円形状の径方向に関して超電導導体26と超電導導体層27との間に絶縁体層16を挟んだ構成であってもよい。
【0060】
あるいは図3に示す超電導ケーブル20のように、当該超電導ケーブル70が太陽電池パネルグループ1と接続される側の端部のみ超電導導体層や絶縁体層を露出させて、それ以外の領域は断面の径方向に関して積層させるために外周側を覆う構成要素で囲まれた構成としてもよい。この場合においても、各太陽電池パネルグループ1と集約器2とを直接接続するため、超電導導体層と絶縁体層とをそれぞれ1本ずつ組み合わせた構成とすればよい。
【0061】
以上の構成を有する太陽電池ファーム300においても、太陽電池ファーム100と同様に、集約器2から変換器3に流入される電流は直流電流である。そして変換器3にて交流電流に変換された電流は、その後集約器を経ることなくトランス4で昇圧され、需要地へ送られる。したがってサイリスタ素子などの他励式で安価な素子を備える変換器3を、個々の太陽電池パネルグループ1から離れた場所に設置した建屋内に設置することができる。このように変換器3の内部に用いられる素子のコスト低減や、当該変換器3の台数を減少させることによるコストの低減により、太陽電池ファーム300全体の設置コストを大幅に削減することができる。また、太陽電池パネルグループ1において発生する電力による電流を、超電導導体を流通させることによる電力損失の低減を図ることもできる。
【0062】
実施の形態2は以上に述べた各点についてのみ、実施の形態1と異なる。したがって実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て実施の形態1に順ずる。
【0063】
以上のように本発明の各実施の形態について説明を行なったが、今回開示した各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、コストを低減し、使用時の電力損失の少ない発電システムおよび、当該発電システムに用いる超電導ケーブルを提供する技術として、特に優れている。
【符号の説明】
【0065】
1 太陽電池パネルグループ、2 集約器、3 変換器、4 トランス、5 PCS、10 枝ケーブル、11,12,13,14,15,16,17 絶縁体層、20,70 超電導ケーブル、21,22,23,24,25,27 超電導導体層、26 超電導導体、29 フォーマ、30 液体窒素管、40 断熱管、50 常電導枝ケーブル、60 幹ケーブル、100,200,300,400 太陽電池ファーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電要素と、
前記発電要素から出力される直流の電流を集約する集約機と、
前記集約機に直接接続された超電導ケーブルと、
前記集約機で集約された電流を直流から交流に変換する変換器とを備える発電システム。
【請求項2】
前記変換器はサイリスタを含む、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記超電導ケーブルは、その延在する方向に交差する方向に関して、円筒状の超電導体の外周面上に円筒状の絶縁体が配置され、前記絶縁体の外周面に交差する方向に関して、前記超電導体と前記絶縁体とが交互に複数積層された配置を備えており、
前記超電導体は、前記発電要素に直接接続された枝ケーブルと電気的に接続されている、請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記枝ケーブルは超電導体を含む、請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記枝ケーブルは常電導体を含む、請求項3に記載の発電システム。
【請求項6】
前記超電導ケーブルは、前記発電要素と直接接続されている、請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項7】
発電システムに用いる超電導ケーブルであり、
長軸状の形状を有するフォーマと、
前記フォーマの延在する方向に関する外周面上に配置された円筒状の超電導体と、
前記超電導体の延在する方向に関する外周面上に配置された円筒状の絶縁体とを備えており、
前記超電導体と前記絶縁体とが、前記外周面に交差する方向に関して交互に複数積層された配置を備える、超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279223(P2010−279223A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132045(P2009−132045)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】