説明

発電プラントの制御方法

本発明は、発電プラント(10)の制御方法に関し、発電プラント(10)は、有機燃料を燃焼させて、蒸気と二酸化炭素を含む処理ガスとを生成するようになっている発電プラントボイラ(11)と、蒸気システムと、処理ガスに二酸化炭素吸収溶液を接触させて処理ガスから二酸化炭素の少なくとも一部を除去するようになっている二酸化炭素捕捉システム(13)とを備える。この方法は、発電プラントボイラ(11)によって生成された蒸気の一部を、二酸化炭素捕捉システム(13)の再生機(24)に送ることと、再生機(24)において、送られた蒸気を用いて吸収溶液を加熱することにより吸収溶液を再生することと、少なくとも1つの自動制御部によって、炭素捕捉システム(13)の動作を自動制御することとを含む。本発明は、二酸化炭素捕捉システム(13)を含む発電プラント(10)にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素捕捉システムを備えた発電プラントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在世界で使用されるエネルギーのほとんどは、石炭、石油、天然ガスやその他の有機燃料等の、炭素と水素を含む燃料を燃焼させることによって得られている。この燃焼によって、高濃度の二酸化炭素を含む煙道ガスが生じる。地球温暖化への懸念により、大気への二酸化炭素の放出を低減する要求が強まっているので、二酸化炭素を、ガスが空気中に放出される前に煙道ガスから取り除く方法が開発されている。
【0003】
煙道ガスから二酸化炭素を除去するためのシステムが提案されており、このシステムでは、煙道ガスをアミノ化又はアンモニア化吸収溶液と接触させて、この吸収溶液によって煙道ガスから二酸化炭素を捕捉する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二酸化炭素捕捉システムを備えた発電プラントの制御の改良を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的及び以下の説明により明らかとなるその他の目的は、以下の発電プラントの制御方法により達成される一態様による。この発電プラント制御方法は、有機燃料を燃焼させて、蒸気と二酸化炭素を含む処理ガスとを生成するようになっている発電プラントボイラと、発電プラントボイラによって生成された蒸気の少なくとも一部のエネルギー量の少なくとも一部を利用するようになっている蒸気システムと、発電プラントボイラで生成された処理ガスの二酸化炭素を二酸化炭素吸収液によって捕捉することにより二酸化炭素吸収液が二酸化炭素を豊富に含むように、処理ガスに二酸化炭素吸収溶液を接触させて処理ガスの少なくとも一部から二酸化炭素の少なくとも一部を除去するようになっている二酸化炭素捕捉システムとを備える発電プラントの制御方法である。この制御方法は、発電プラントボイラによって生成された蒸気の再生機用部分を、二酸化炭素捕捉システムの再生機に送ることと、二酸化炭素吸収溶液が二酸化炭素を豊富に含む時に、送られた蒸気を用いて吸収溶液を加熱することにより、吸収溶液に含まれる二酸化炭素が希薄になるようにして、再生機において吸収溶液を少なくとも部分的に再生することと、少なくとも1つの自動制御部によって、二酸化炭素捕捉システムの動作を自動制御することとを含む。
【0006】
このように、ボイラからの処理ガスから二酸化炭素捕捉システムによって二酸化炭素を除去すること、及びボイラからの蒸気が二酸化炭素捕捉システムの再生機に送られることにより、二酸化炭素捕捉システムは発電プラントに統合される。二酸化炭素捕捉システムが発電プラントに統合されることにより、二酸化炭素捕捉システムの動作がより良くなり、発電プラントの他要素の動作及び要件により適応させやすくなる。更に、二酸化炭素捕捉システムを備える発電プラントの全体の出力がより観察しやすくなり制御しやすくなる。
【0007】
発電プラントボイラからの蒸気を吸収溶液の再生に使用することにより、吸収溶液を加熱する加熱源を別途設ける必要がなくなるため、発電プラントの設計が簡素化される。なお、例えば電気加熱器で吸収溶液を再生させるのに必要な電力は、ボイラにより生成されたストリームの一部を再生機に送ることにより生じる発電の損失以上となり得る。
【0008】
吸収溶液を再生する、すなわち溶液から二酸化炭素を除去して二酸化炭素に対して不飽和な又は二酸化炭素が希薄な溶液とすることにより、この吸収溶液を、処理ガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素捕捉システムにおいて再利用できる。
【0009】
例えば固定設定値に向けて動作するPIDコントローラのような少なくとも1つの自動制御部によって二酸化炭素捕捉システムの動作の少なくとも一部を自動制御することにより、動作の制御が容易となり、システム動作を手動で制御する必要性が低減される。
【0010】
蒸気の再生機用部分は、発電プラントボイラから蒸気システムを介して二酸化炭素捕捉システムの再生機に送っても良い。これは、蒸気の一部が、再生機に加えて蒸気システムによっても使用してもよいことを意味し、これにより発電プラントの蒸気の全体必要生成量が低減される。
【0011】
二酸化炭素捕捉システムの動作は、1つの自動制御のみではなく複数の自動制御部によって自動制御してもよい。これにより、システムの自動制御を増大させやすくなり、また、発電プラントの他要素に対するシステムの適応性を高めることができる。複数の自動制御部によって、該制御がより正確にきめ細やかに行うことができる。これら複数の制御部は、1つのマスター自動制御部によって制御してもよい。これは、複数の制御部を、より高いレベルで合同制御してもよいことを意味し、これにより制御部は、共同し、互いに関係して動作可能となる。
【0012】
少なくとも1つの制御部は、発電プラントの全体的な運転を最適化するために配置された最適化システムの一部であってもよい。これは、発電プラントの全体としての運転を高めるために、二酸化炭素捕捉システムが、発電プラントの他要素と関係して動作し得ることを意味する。
【0013】
最適化は例えば、少なくとも1つの制御部に対して設定値を継続的に算出及び割り当てることによって行ってもよい。制御部の設定値を再算出して再割り当てすることにより、二酸化炭素捕捉システムの動作は自動制御され、発電プラントの運転に関する動作パラメータやその他の条件が経時変化しても、発電プラント全体の運転に適応させることができる。
【0014】
発電プラントの運転は、例えば定常状態最適化を用いて、又は動的最適化を用いて最適化してもよい。
【0015】
発電プラントの運転は、オフライン又はオンラインで最適化してもよい。
【0016】
発電プラントの運転は、二酸化炭素捕捉システム及び/又は発電プラントのその他の要素(例えば蒸気システム及び/又はボイラ)を別個に、又は順番に、又は合同で最適化することによって最適化してもよい。
【0017】
発電プラントの運転は、発電プラントの運転に関する、操作変数、制御変数、及び外乱変数からなる群から選択される少なくとも1つの変数の目的関数の最小化に基づいて最適化してもよい。そして/もしくは、発電プラントの運転は、微分ゲーム及び/又はポントリャーギンの最小原理に基づいて最適化してもよい。
【0018】
二酸化炭素捕捉システムを備える発電プラントの運転は、二酸化炭素の捕捉を所定のレベルに維持しながら、発電プラントの最大出力について最適化してもよい。このレベルとは、時間単位又は処理ガスの容積単位の所定二酸化炭素捕捉総量、又は二酸化炭素捕捉システムに流入する処理ガスの二酸化炭素捕捉率、又は二酸化炭素捕捉システムを出る処理ガスの二酸化炭素濃度であってもよい。このように、例えば政府が規定する最大二酸化炭素放出量を超えないようにしながら、出力を最大化してもよい。
【0019】
二酸化炭素捕捉システムを備える発電プラントの運転は、その最適化が発電プラントの出力と二酸化炭素の捕捉レベルとのトレードオフを含むように、最適化してもよい。これは、プラントの全体の利益性が、空気中に放出された二酸化炭素の例えば政府料金でのコストに対して、例えば生成したエネルギーと捕捉した二酸化炭素を売却して得られた利益に基づいて最適化できることを意味する。
【0020】
少なくとも1つの制御部は、再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量を制御してもよい。
【0021】
少なくとも1つの制御部は、再生機に流入する吸収溶液のストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量を制御してもよい。また、再生機に流入する吸収溶液のストリームの特性に関する測定値は、制御部によって自動的に受信してもよい。このように、制御部は発電プラントの他要素から得られた、吸収溶液を再生するのに必要な蒸気量に関する値に基づいて、再生機に送られる蒸気の量を制御してもよい。これは、フィードフォワード制御部であってもよい。
【0022】
代わりに、もしくは追加的に、少なくとも1つの制御部は、発電プラントボイラからの処理ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量を制御してもよい。また、発電プラントボイラからの処理ガスのストリームの特性に関する測定値は、制御部によって自動的に受信してもよい。これは、フィードフォワード制御部であってもよい。
【0023】
代わりに、もしくは追加的に、少なくとも1つの制御部は、再生機の中の又は再生機を出る二酸化炭素豊富ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量を制御してもよい。また、再生機の中の又は再生機を出る二酸化炭素豊富ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値は、制御部によって自動的に受信してもよい。これは、フィードバック制御部であってもよい。
【0024】
再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量は、複数の自動制御部を使用して制御してもよい。これらの制御部は上述の制御部のうちの1つ又はいくつかであってよく、又は再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量を制御するのに効果的なその他の制御部であってもよい。これらの制御部は、送られる蒸気量を、協働して制御してもよい。よって、送られる蒸気量は、発電プラント内の複数の異なる場所における複数の異なる測定に依存し得るため、蒸気量は、発電プラントの運転に、より正確に適応させることができる。
【0025】
再生機に送られる蒸気の再生機用部分の少なくとも一部は、給水として発電プラントボイラに戻してもよい。よって、蒸気又は蒸気の凝縮液を、新たに蒸気を生成するボイラにおいて再利用できるため、発電プラントの自己生産性が高まるとともに、廃水量が低減される。更に、発電プラントへの二酸化炭素捕捉システムの全体的統合にも貢献する。
【0026】
二酸化炭素捕捉システムは吸収装置を備え、吸収装置において、処理ガスを吸収装置に供給された吸収溶液量と接触させることにより、該吸収溶液によって処理ガスから二酸化炭素を捕捉する。吸収装置は、処理ガスと吸収溶液との接触を容易にするように配置してもよい。吸収装置は、1つ又は複数の吸収機を備えてもよい。少なくとも1つの制御部は、処理ガスの吸収装置を出るストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、吸収装置に供給される吸収溶液量を制御してもよい。また、処理ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値は、制御部によって自動的に受信してもよい。吸収装置を出る処理ガスのストリームは、吸収装置に流入する処理ガスよりも二酸化炭素含有量が低くなることがある。これは、吸収溶液によって処理ガスから二酸化炭素が捕捉されていることがあるからである。
【0027】
考えられる多くの異なる自動制御部について上述した少なくとも1つの変数は、例えば、測定された蒸気ストリーム、処理ガス及び/又は吸収溶液のそれぞれの流量、温度、圧力、及び二酸化炭素濃度のうちの1つ又はいくつかであってもよい。
【0028】
少なくとも1つの制御部は、ボイラに供給されるボイラ給水の加熱のために発電プラントボイラから送られる蒸気の給水加熱用部分の量を制御してもよい。この制御は、再生機に送られる蒸気の再生機用部分の量に基づいてもよい。このように、再生機に送られる蒸気の量に基づいて、ボイラ給水の加熱に用いられる蒸気の量が制御してもよい。例えば、再生機への蒸気とボイラ給水加熱用の蒸気との比率が固定されていると便利であることがある。よって、再生機へ送られる蒸気の量が増加すると、ボイラ給水加熱用の蒸気の量も増加することがある。
【0029】
少なくとも1つの制御部は、中圧蒸気タービンと低圧蒸気タービンとの間の中圧/低圧クロスオーバにおける背圧を制御してもよい。この制御は、ボイラに供給されるボイラ給水の加熱のために発電プラントボイラから送られる蒸気の量に基づいて、中圧タービンから低圧タービンに向かう蒸気の流量つまり圧力を変化させることにより行ってもよい。
【0030】
蒸気の再生機用部分の量の少なくとも一部を、蒸気ストリームが蒸気システムの少なくとも1つの蒸気タービンを通過した後に、該蒸気ストリームからサイフォンにより吸い上げられるようにすると便利であることがある。ボイラにより生成された蒸気は、再生機に向けてサイフォンで吸い上げられる前に、まず発電プラント蒸気システムの1つ又は複数のタービンによって電力を生成するのに用いてもよい。同じことが、蒸気のボイラ給水加熱用の一部についても当てはまる。
【0031】
再生機に送られる蒸気の再生機用部分は、ボイラからの直接的又は間接的な、任意の圧力と温度を有する任意の蒸気であってもよい。再生機に送られる蒸気は、例えば中圧蒸気、低圧蒸気、又は中圧と低圧の混合蒸気であってもよい。これは、蒸気が、再生機に送られる前に既に1つ又は複数のタービンにおける発電に使用されていて、高圧蒸気ではないことを意味する。しかし、高圧蒸気も、それ単体、もしくは中圧及び/又は低圧蒸気と組み合わせて使用してもよい。
【0032】
発電プラントボイラによって生成された蒸気の少なくとも一部は、凝縮液を生成する発電プラント凝縮器で凝縮してもよい。この凝縮液の少なくとも一部は、二酸化炭素捕捉システムの再生機からの二酸化炭素豊富ガスストリームを冷却するために熱交換器に送られ、その後この凝縮液の部分は給水としてボイラに戻してもよい。吸収溶液の再生、すなわち吸収溶液から二酸化炭素が離れることにより生じる二酸化炭素豊富ガスストリームを冷却するのに上記凝縮液の部分を利用することによって、二酸化炭素捕捉システムを含む発電プラントの統合及びエネルギー効率が更に高まる。熱交換器に送られる部分の凝縮液の量は、少なくとも1つの自動制御部によって自動制御してもよい。
【0033】
別の態様によると、本目的は以下の発電プラントによって達成される。この発電プラントは、有機燃料を燃焼させて、蒸気と二酸化炭素を含む処理ガスとを生成するようになっている発電プラントボイラと、発電プラントボイラによって生成された蒸気の少なくとも一部のエネルギー量の少なくとも一部を利用するようになっている蒸気システムと、発電プラントボイラで生成された処理ガスの二酸化炭素を二酸化炭素吸収液によって捕捉することにより該二酸化炭素吸収液が二酸化炭素を豊富に含むように、処理ガスに二酸化炭素吸収溶液を接触させて処理ガスの少なくとも一部から二酸化炭素の少なくとも一部を除去するようになっている二酸化炭素捕捉システムとを備える発電プラントである。この二酸化炭素捕捉システムは、処理ガスと吸収溶液との接触を容易にするように配置され、ボイラによって生成された処理ガスの少なくとも一部が発電プラントから吸収装置に送られるように発電プラントに接続された吸収装置と、捕捉した二酸化炭素を豊富に含む吸収溶液から二酸化炭素を除去することによって吸収溶液が少なくとも部分的に再生されるように配置され、ボイラによって生成された蒸気の少なくとも再生機用部分が発電プラントから再生機に送られるように発電プラントに接続された再生機と、二酸化炭素捕捉システムの動作を制御するように配置された自動制御部とを備える。
【0034】
この別の態様の発電プラントを用いて上述の方法を行うと便利であり得る。
【0035】
上述の方法に関する上記説明は、発電プラントにも関連する構成要素に適用できる。その説明について述べる。
【0036】
好適な実施形態を、以下に説明する図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態による方法の工程を説明する概略工程フローチャートである。
【図2】本発明の実施形態による発電プラントの概略前面図である。
【図3】本発明の実施形態による最適化システムの異なるレベルを概略表現した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
吸収溶液が、例えば二酸化炭素捕捉システムにおける処理ガスとの接触時や再生後に「希薄である」とされる場合、これは、吸収溶液が二酸化炭素に対して不飽和であり、処理ガスからまだ二酸化炭素を捕捉し得る状態であることを意味する。また、吸収溶液が、例えば二酸化炭素捕捉システムにおける処理ガスとの接触後や再生前に「豊富である」とされる場合、これは、吸収溶液が二酸化炭素に対して飽和、又は少なくともほぼ飽和、又は過飽和であり、処理ガスから更に二酸化炭素を捕捉できる間に再生される必要があり、さもないと、固体塩として沈殿し得る状態であることを意味する。
【0039】
吸収溶液は、アンモニア化溶液やアミノ化溶液等の、処理ガスから二酸化炭素を捕捉できる溶液であれば、任意のものでよい。
【0040】
吸収溶液を用いた処理ガスからのCO捕捉は、吸収溶液が、溶解した分子状二酸化炭素や溶解塩等の任意の状態のCOを吸収又は溶解することにより達成される。
【0041】
発電プラントは、システムの各要素を接続するとともに、蒸気や吸収溶液や処理ガス等がそれぞれ発電プラント内を必要に応じて流れるように配置される配管を備える。この配管は、流れを制御するために、バルブ、ポンプ、ノズル、熱交換器等を必要に応じて備え得る。
【0042】
蒸気システムは、1つ又は複数の発電用ジェネレータに連結される1つ又は複数の蒸気タービンを備え得る。直列に連結され、それぞれ異なる蒸気圧で動作するようになっている少なくとも3つのタービンを使用するのが便利であり得る。これらのタービンはそれぞれ、高圧タービン、中圧タービン、及び低圧タービンと称され得る。低圧タービンを通過した蒸気は、発電プラントの凝縮器で凝縮され得る。高圧タービン通過前のボイラからの蒸気は、通常150〜350barの圧力を有し得る。高圧タービンと中圧タービンとの間における蒸気は高圧蒸気と呼ばれ、通常62〜250barの圧力を有し得る。中圧タービンと低圧タービンとの間における蒸気は中圧蒸気と呼ばれ、通常、5〜10barといった、5〜62barの圧力及び154℃〜277℃(310°F〜530°F)の温度を有し得る。低圧タービンを通過後の蒸気は低圧蒸気と呼ばれ、通常、3〜4barといった、0.01〜5barの圧力及び135℃〜143℃(275°F〜290°F)の温度を有し得る。
【0043】
上述のように、提案される発電プラントは、二酸化炭素捕捉システムと発電プラントの他要素との相互作用について、極めて高い熱統合が行われる。これにより、二酸化炭素捕捉システムによるエネルギー消費が低減され、発電プラントの発電総量が増加し得る。この統合はまた、二酸化炭素捕捉システムが発電プラントのその他要素と共に制御され得ることを意味する。二酸化炭素捕捉システムに対する発電プラントのその他要素の動作の効果及びその逆の動作の効果が、全体的な制御戦略において考慮され得る。この制御戦略は、二酸化炭素捕捉システム、発電プラントのその他要素、又はこれら両方の動作パラメータ、軌道、又は動作設定値を算出するための処理モデルの適用に基づき得る。これらの技術は、二酸化炭素捕捉システム、蒸気サイクル等の発電プラントのその他要素、又はこれら両方の定常状態モデル又は動的モデルに基づき得る。これらのモデルには、全容的なモデルや、例えば二酸化炭素捕捉システムと発電プラントのその他要素との間の支配的な相互作用のみを反映するモデル等の部分的なモデルが含まれ得る。
【0044】
全プラント制御システム(PCS:Plant-wide Control System)が使用されてもよい。この最適化システムでは、発電プラントの全て又は一部の数学的モデルが展開される。すなわち、これらのモデルはプラント全体が安全で確実に動作するのに重要な特徴を再現し得る。更に、モデリング技術は、第一原理ベースのモデリング方法論又はデータ駆動型モデリング方法論であり得るが、これらに限定はされない。これら方法論は、人工神経ネットワーク、有限インパルス応答モデル等の自己回帰移動平均モデル、又はいくつかの条件ベースのモデルやハイブリッドモデル戦略をも含むが、これらに限定はされない。
【0045】
上記のモデルは、異なるクラスの変数を含む。
【0046】
プラントの運転制御には、操作変数が用いられる。操作変数には、バルブのストローク、質量流量や回転速度等の制御入力及び制御ループのパラメータ等の可変パラメータが含まれる。典型的な操作変数を以下に挙げる。
二酸化炭素捕捉システム:
1)再生機の蒸気流量、2)希薄吸収溶液の流量、3)希薄冷却器(lean cooler)への冷却水の流量、4)CO圧縮システム内のCOが豊富な蒸気の冷却に用いられる凝縮液の流量。
発電プラントの発電部:
1)燃料の質量流量、2)蒸気の質量流量、3)給水の流量、4)蒸気ヘッダの圧力レベルの設定値、5)蒸気ヘッダの温度レベルの設定値。
【0047】
制御変数は、ある動作限度内に制御されるべき変数やその関数である。典型的な制御変数を以下に挙げる。
二酸化炭素捕捉システム:
1)CO吸収効率、2)リボイラの熱負荷/IP/LP蒸気流量、3)吸収システムを通した圧力降下、4)IP蒸気圧力、5)再生機のオーバーヘッドにおいて回収されたCOの温度、6)異なる圧縮ステージの入口におけるCOが豊富な蒸気の温度。
発電プラントの発電部:
1)出力量、2)蒸気ヘッダ等の様々な位置における蒸気の圧力及び温度、3)蒸気抽出流量。
【0048】
外乱変数は、プラントへの制御不能な入力として作用する変数である。典型的な外乱変数を以下に挙げる。
二酸化炭素捕捉システム:
1)煙道ガス中のCO濃度、2)二酸化炭素捕捉システムの入口における煙道ガスの温度。
発電プラントの発電部:
1)周囲条件、2)燃料の質、3)伝熱係数の変動等の、経年劣化による構成要素の特徴の変動、4)周波数変動や負荷遮断等の送電網の外乱により生じる計画外の負荷変化。
【0049】
全プラント制御システムの特定の実施形態は、比例・積分・微分(PID:Proportional-Integral-Derivative)コントローラに基づいて、カスケード制御や比率制御等の数々の高度制御スキームを使用して実現され得る。
【0050】
前段落の実施形態と組み合わせられ得る全プラント制御システムの別の実施形態では、定常状態最適化又は動的最適化とともにプロセスモデルを使用してプロセスの最適動作パラメータを算出する。
【0051】
最適化手続きは、操作変数、制御変数、及び任意的に、外乱変数の推定値及び/又は上述のモデルによって表現されるプラント動特性に依存するその他の未知パラメータの推定値の目的関数の最小化に基づき得る。目的関数は通常、固定の動作条件及び/又は所定の軌道及び/又はある初期条件から所定のプラント条件に達するまでの時間及び/又は燃料消費量やCO生成量等から逸脱すると、ペナルティを課す。
【0052】
最適化手続きは、オフラインとオンラインのどちらでも実行し得る。また、最適化手続きは、例えば目的関数の最小化といった最適化の目的を達成するために、例えばプラント動特性の安定化に使用され得る未知パラメータの推定を可能とする機能を含んでもよい。
【0053】
最適化手続きは、二酸化炭素捕捉システム又は発電プラントのその他の要素(ボイラ及び/又は蒸気サイクル等)のいずれにも、別々に、又は順番に、又は合同で適用され得る。最適化手続きは、特に、二酸化炭素捕捉システムとプラントのその他要素との間の微分ゲームから成ってもよく、及び/又はポントリャーギンの最小原理に基づいてもよい。
【0054】
最適化手続きの特別な実施形態は、未来に向かうある計画対象期間における予測プラント出力に基づいて目的関数を最小化するモデル予測制御に基づく。
【0055】
図1を参照して、本発明による現在好適な発電プラントの制御方法を説明する。
【0056】
ステップ1において、発電プラントボイラが有機燃料を燃焼させ、水を沸騰させて蒸気を生成する。この蒸気は、配管を通って、発電及び電力生成用の複数の蒸気タービンを備える蒸気サイクルに送られる。有機燃料の燃焼による煙道ガスは、配管を通って、ガス浄化システムへと送られて、そこでガス浄化システム粒子や硫黄及び窒素含有汚染物質等が煙道ガスから除去される。その後、浄化された煙道ガスは二酸化炭素捕捉システムに送られて、そこで吸収溶液によって煙道ガスから二酸化炭素が捕捉される。
【0057】
ステップ2において、中圧(IP)蒸気と低圧(LP)蒸気との混合蒸気が蒸気サイクルからサイフォンで吸い上げられ、二酸化炭素捕捉システムの再生機に送られる。サイフォンで吸い上げられる蒸気の量は、少なくとも1つの自動制御部によって自動制御される。
【0058】
ステップ3において、蒸気サイクルから送られた熱蒸気は、再生機に備えられたリボイラにおいて、煙道ガスから二酸化炭素を捕捉して二酸化炭素が豊富となった吸収溶液と熱交換をする。この熱交換は熱交換器によって行われるため、蒸気は吸収溶液と直接接触しない。再生機において、二酸化炭素豊富吸収溶液は沸騰させられ、比較的純粋な二酸化炭素ガス蒸気を放出する。そしてこの蒸気は圧縮のために圧縮器と後続のストレージに送られる。これにより、吸収溶液が捕捉した二酸化炭素の少なくとも大部分は取り除かれ、不飽和又は希薄吸収溶液となる。この吸収溶液は二酸化炭素除去システムに戻されて、そこを通過する煙道ガスからまた二酸化炭素を捕捉する。
【0059】
図2を参照して、本発明による発電プラント10の現在好適な実施形態を説明する。
【0060】
発電プラント10は、ボイラ11と、蒸気サイクル12と、二酸化炭素捕捉システム13とを備える。
【0061】
蒸気サイクル12は、高圧タービン14と、中圧タービン15と、低圧タービン16と、凝縮器17とを備える。ボイラからの蒸気は、膨張・冷却を繰り返しながらタービン14,15,16を順番に通過し、低圧タービン16を通過した蒸気は、凝縮器17で低圧で凝縮される。凝縮器17からの冷凝縮液は、ボイラ給水としてボイラ11へと送られて蒸気生成のために再利用され得る。ボイラ給水は、ボイラに到着する前に、ボイラ11への加熱負荷を低減させるために2つのボイラ給水加熱器20によって加熱され、その後給水は再びボイラ11に入り、これにより蒸気サイクル12を終える。しかし、凝縮器17からの凝縮液の一部は、CO圧縮熱交換器22で冷却媒体として使用される。これにより、ボイラ給水として蒸気サイクルに戻される前に加熱されるため、ボイラ給水加熱器20の加熱負荷が低減される。
【0062】
本発明の本実施形態によると、蒸気サイクルから、中圧タービン15を通過後で低圧タービン16に流入する前の蒸気がいくらかサイフォンで吸い上げられる。この蒸気は、一部は再生機リボイラ21の加熱媒体として送られ、一部はボイラ給水加熱器20の加熱媒体として送られる。
【0063】
IP−LPクロスオーバの背圧によってLPタービンとリボリラの両方への蒸気提供が確実となるので、この背圧は、LP給水加熱器20への変化する蒸気流量に対応して一定の圧力に維持される。これは、バルブ19を制御する圧力制御器18によって達成される。
【0064】
二酸化炭素捕捉システムは、吸収機23と、再生機24と、二酸化炭素圧縮装置25とを備える。吸収機23では、ボイラ11からの煙道ガスが吸収溶液と接触して、その吸収溶液によって煙道ガスから二酸化炭素が捕捉され得る。再生機24では、吸収機23からの二酸化炭素豊富吸収溶液がリボイラ21で加熱されることにより再生され得る。これにより、吸収機23に戻され得る二酸化炭素が希薄な吸収溶液と、再生機24を出得る二酸化炭素が豊富なガスストリームとが生成される。
【0065】
吸収機23は、ボイラ11からの煙道ガスと、再生機及び任意として新鮮な希薄吸収溶液を供給する別の希薄吸収溶液供給源(不図示)からの二酸化炭素不飽和又は希薄吸収溶液とを受け入れるように配置される。吸収溶液は、吸収機23で再循環させてもよい。再生機24からの希薄溶液は、吸収機23に流入する前に、熱交換器26及び/又は27によって冷却されてもよい。熱交換器26において、希薄溶液は、吸収機23を出て再生機24に向かう豊富溶液によって冷却され得る。熱交換器27において、希薄溶液は、冷水等の通常の冷却媒体によって更に冷却され得る。また、吸収機23は、豊富吸収溶液を排出する他に、二酸化炭素が希薄な煙道ガス、つまり吸収溶液と接触後の煙道ガスを排出するように配置される。この希薄煙道ガスは、発電プラント10を出て例えば空気中に排出され得る。
【0066】
吸収機23に流入する煙道ガスの量が変化する場合にも吸収機23において捕捉されるCOの量が制御されるように、フィードバックPID制御部28が使用され得る。この制御部28は、例えば吸収機23を出る煙道ガスの二酸化炭素含有量に基づいて、例えば熱交換器26と27との間の希薄溶液ストリームのバルブを制御することにより、吸収機23に流入する希薄吸収溶液と煙道ガスとの比を、通常は設計値である設定値に維持しようとする。
【0067】
再生機24は、熱交換器26を通過した吸収機23からの二酸化炭素豊富吸収溶液を受け入れ、熱交換器26及び27を介して二酸化炭素希薄吸収溶液を吸収機23へ排出すると共に、再生機24を出て二酸化炭素圧縮装置25に流入する二酸化炭素が豊富なガスストリームを排出するように配置される。
【0068】
再生機24は、熱交換器であるリボイラ21を備える。リボイラ21では、吸収機23から再生機24に受け入れられた二酸化炭素豊富吸収溶液を加熱するために、上述の蒸気サイクルからの蒸気が使用される。この加熱時、吸収溶液によって捕捉された二酸化炭素は、二酸化炭素豊富ガス又は基本的に純粋な二酸化炭素として溶液を離れる。吸収溶液はこのように再生されて吸収機23に戻され得る。
【0069】
図2に示す1つ又はいくつかの制御部30,31,32は、発電プラント10の全体としての動作を考慮して、リボイラ21に送られる蒸気の量を制御するのに用いられ得る。
【0070】
再生機に流入する豊富吸収溶液ストリームは、例えば二酸化炭素捕捉システムの煙道ガス負荷が変化した場合には、異なる流量及び/又は異なるCO組成を有してもよい。リボイラによるエネルギー消費を最小限に抑えるために、制御部30が、再生機に流入する豊富吸収溶液ストリームに基づいて蒸気の流量を制御してもよい。このような制御部はフィードフォワード制御部30である。
【0071】
制御部30に代えて又は加えて、吸収機23への煙道ガスストリームを測定してリボイラ21への流量をフィードフォワード制御する制御部32が使用されてもよい。
【0072】
再生機における溶液再生を微細に制御するために、別の制御部31つまりフィードバック制御部31が、再生機のトレイ温度に基づいてリボイラへの流量を更に調節してもよい。測定する温度は、再生機を出るCO豊富ガスストリームの温度や、再生機の任意の中間ステージの温度であり得る。
【0073】
制御部30,31,32は、例えば、リボイラ21に流入する直前の蒸気ストリームのバルブ33及び/又はIP−LPクロスオーバに後続するスロットルバルブ34を制御する。この具体的な実施形態では、制御部30,31がバルブ33を制御し、制御部32がバルブ34を制御する。
【0074】
二酸化炭素圧縮システム25は、上述の熱交換器22と圧縮器35とを備える。圧縮器35は、再生機からの二酸化炭素豊富ガスストリームを圧縮して、基本的に純粋であり得る二酸化炭素を保存しやすくし得る。液状になるまで二酸化炭素を圧縮してもよい。圧縮された二酸化炭素は発電プラント10を離れ、空気中への排出を避けるために、例えば売却されるか、より永久的に保存されてもよい。
【0075】
図3を参照して、本発明による現在好適の最適化システムを説明する。この最適化システムは、本発明の全プラント制御戦略を実施するものである。
【0076】
図3は、本発明による全プラント最適化システム(POS:Plant-wide Optimization System)5の動作を概略的に示す。PCS6は、発電プラント内の複数の異なるセンサ7から関連データを得る。このデータに基づいて、上述のプロセスモデルと最適化手続きを用いて様々な操作変数の出力が算出され、この出力がアクチュエータに中継して送り返される。
【0077】
PCS6は例えば、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)とプログラマブル論理制御装置(PLC:Programmable Logical Controller)とを備えるデータ取得システムである。
【0078】
図3の左側の矢印は、処理データの最適化システムの上層方向の流れを表し、右側の矢印は、最適化システムの出力を表す。
【0079】
実施例1
PIDコントローラを用いた全プラント制御システムの特定の例を以下に説明する。
【0080】
1.単純なフィードバックPIDコントローラを使用して、変化する負荷に対応してCO捕捉量を制御する。このコントローラは、吸収機に流入する希薄溶液と煙道ガスとの比を、通常は設計値である設定値に維持しようとする。
【0081】
2.1に記載のコントローラに基づいて、再生機に流入する豊富溶液ストリームもまた異なる流量及び/又は異なるCO組成を有する。リボイラによるエネルギー消費を最小限に抑えるため、CO捕捉システムに流入する煙道ガスの量に基づいて蒸気流量が変更される。これは、フィードフォワード制御部となる。
【0082】
3.再生機における溶液再生を微細に制御するために、別の制御部つまりフィードバック制御部が、再生機のトレイ温度に基づいてリボイラへの蒸気流量を更に調節する。制御される温度は、再生機を出るCO豊富ガスストリームの温度や、再生機の任意の中間ステージの温度であり、ある設計におけるパイロットプラント実験により決定する。
【0083】
4.これらの制御部が共同して、「フィードバックトリムを用いたフィードフォワード」と呼ばれる高度の制御スキームを形成する。フィードフォワード制御部は、豊富吸収液の流量の変動に対応するために蒸気流量を大きく変化させる。一方、フィードバック制御部は微調節を行う。
【0084】
5.IP−LPクロスオーバの背圧によってLPタービンとリボリラの両方への蒸気提供が確実となるので、この背圧は、LP給水加熱器への蒸気流量の変化に対応して一定の圧力に維持される。これは、単純な圧力制御器によって達成される。
【0085】
6.圧縮部のCO豊富ストリームの冷却に用いられる、凝縮器からの蒸気の流量は、別の組のPIDフィードバックコントローラにより制御される。
【0086】
7.この例では更に、その他の制御部によって、吸収機に流れる希薄溶液等の温度が維持される。
【0087】
8.フィードフォワードループや設計比等の全ての計算は、各発電プラントプロセスに基づいて決定される。これらの基礎的又は経験的関係は、「プロセスモデル」を構成するものと見なされ得る。
【0088】
実施例2
代替的なスキームでは、実施例1のステップ2〜4に代えて又は加えて、リボイラ内の温度を使用して熱負荷を操作する。これによりループは遅くなるが、供給流量の変化に対する反応が良くなる。
【0089】
実施例3
別の代替的なスキームでは、実施例1のステップ2〜4又は実施例2に代えて又は加えて、IP−LPクロスオーバに後続するスロットルバルブを通る蒸気流量を操作するフィードフォワード制御部へのフィードフォワードとして煙道ガス流量信号を使用してもよい。再生機のトレイ温度に基づいてリボイラへの蒸気流量をさらに操作することにより、COを微細に調整して豊富溶液から除去してもよい。
【0090】
実施例4
モデル予測制御システムとして実施される全プラント最適化システム(POS)の典型例を以下に示す。この特定の例では、POSが以下に挙げる目的で動作する。
・蒸気サイクルからサイフォンで蒸気を吸い上げることによる、発電に対する二酸化炭素捕捉システムの寄生負荷を最小限に抑え、
・二酸化炭素捕捉システムとの熱統合によってボイラの動作が妨害されるのを最小限に抑えながら、
・COの吸収を所定レベルに維持する。
【0091】
1.発電プラントが定常状態条件で動作しているとする。
【0092】
2.予測不能な事情によりプラント負荷は変動し得る。煙道ガスの流量/プラントの負荷が低下すると、煙道ガスのCO濃度及び煙道ガスの温度もまた変化する。これらの信号はPCSに送信され、その変化量に基づいてPCSが処置を取る。
【0093】
3.この場合、制御システムは次のように動作する。
a.プラント負荷が低下すると、PCSは、CO吸収効率を維持するために、吸収機へ流れる希薄吸収溶液の最適に低下させた流量を算出する。この最適な流量は、設定値として希薄吸収液流量制御部に渡される。
b.それと同時に、COの捕捉量が減ったことに対応するために、再生機への蒸気流量も低下させる。再生機への最適な蒸気流量設定値が算出され、調節制御部に与えられる。
c.再生機からの凝縮液の流量が低下すると、ボイラ給水(BFW:Boiler Feed Water)加熱器に対する加熱要求は高まる。凝縮液の流量の減少を補うために、PCSは、BFW加熱器へのIP/LPストリームの流量設定値を算出する。
d.同様に、凝縮器から流れる凝縮液の温度もまた、圧縮システムの、凝縮液より少量のCO豊富ストリームと熱交換をして低下する。これにより、上記(c)で述べたBFW加熱器の加熱要件も高まる。これを避けるために、PCSは凝縮器から圧縮システムへ流れる凝縮液を低減して、BFW加熱器の加熱要件が全く又はあまり増加しないようにする。
e.最後に、PCSは、CO捕捉システムの希薄吸収液を冷却するために熱交換器に供給される冷却水の流量の新たな設定値も算出する。
f.PCSの目的の1つは寄生負荷を最小限に抑えることなので、CO捕捉システムによる全寄生負荷を表す変数が用いられ、オプティマイザは、操作変数を変更してこの変数の値を最小限に抑えようとする。
g.先に述べたように、これら全ての算出は、定常状態モデルとオプティマイザを使って、又は動的モデルとオプティマイザを使って、又は定常状態最適化と動的最適化の両方を組み合わせて行われる。
【0094】
4.上記から分かるように、モデル予測制御の実現において、POSは、実際の値を変更するのではなく調整PIDコントローラの設定値を操作する。
【0095】
本例の非依存(操作又は外乱)変数及び依存(制御)変数は次の通りであり得る。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機燃料を燃焼させて、蒸気と二酸化炭素を含む処理ガスとを生成するようになっている発電プラントボイラと、
前記発電プラントボイラによって生成された前記蒸気の少なくとも一部のエネルギー量の少なくとも一部を利用するようになっている蒸気システムと、
前記発電プラントボイラで生成された前記処理ガスの二酸化炭素を二酸化炭素吸収液によって捕捉することにより前記二酸化炭素吸収液が二酸化炭素を豊富に含むように、前記処理ガスに前記二酸化炭素吸収溶液を接触させて前記処理ガスの少なくとも一部から前記二酸化炭素の少なくとも一部を除去するようになっている二酸化炭素捕捉システムと、
を備える発電プラントの制御方法において、
前記発電プラントボイラによって生成された前記蒸気の再生機用部分を、前記二酸化炭素捕捉システムの再生機に送ることと、
前記二酸化炭素吸収溶液が二酸化炭素を豊富に含む時に、前記送られた蒸気を用いて前記吸収溶液を加熱することにより、前記吸収溶液に含まれる二酸化炭素が希薄になるようにして、前記再生機において前記吸収溶液を少なくとも部分的に再生することと、
少なくとも1つの自動制御部によって、前記二酸化炭素炭素捕捉システムの動作を自動制御することと、
を含む発電プラントの制御方法。
【請求項2】
前記蒸気を、前記発電プラントボイラから前記蒸気システムを介して前記二酸化炭素捕捉システムの前記再生機に送る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素捕捉システムの動作を、複数の自動制御部によって自動制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の制御部を、1つのマスター自動制御部によって制御する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御部は、前記発電プラントの全体的な運転を最適化するために配置された最適化システムの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化は、前記少なくとも1つの制御部に対して設定値を継続的に算出及び割り当てることによって行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発電プラントの運転を、定常状態最適化を用いて最適化する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記発電プラントの運転を、動的最適化を用いて最適化する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記最適化は、前記発電プラントの運転に関する操作変数、制御変数及び外乱変数からなる群から選択される少なくとも1つの変数の目的関数の最小化に基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記最適化は、微分ゲーム及び/又はポントリャーギンの最小原理に基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素捕捉システムを備える前記発電プラントの運転を、二酸化炭素の捕捉を所定のレベルに維持しながら、前記発電プラントの最大出力について最適化する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記発電プラントの運転の前記最適化は、前記発電プラントの前記出力と前記二酸化炭素の捕捉レベルとのトレードオフを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの制御部は、前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の量を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの制御部は、前記再生機に流入する前記吸収溶液のストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の量を制御し、
前記再生機に流入する前記吸収溶液のストリームの特性に関する前記測定値を、前記制御部によって自動的に受信する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの制御部は、前記発電プラントボイラからの前記処理ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の量を制御し、
前記発電プラントボイラからの前記処理ガスのストリームの特性に関する前記測定値を、前記制御部によって自動的に受信する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの制御部は、前記再生機の中の又は前記再生機を出る二酸化炭素豊富ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の量を制御し、
前記再生機の中の又は前記再生機を出る二酸化炭素豊富ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の前記測定値を、前記制御部によって自動的に受信する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の量を、複数の自動制御部が協働して制御する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記再生機に送られる前記蒸気の前記再生機用部分の少なくとも一部を、給水として前記発電プラントボイラに戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記二酸化炭素捕捉システムは吸収装置を備え、
前記吸収装置において、前記処理ガスを前記吸収装置に供給された吸収溶液量と接触させることにより、前記吸収溶液によって前記処理ガスから二酸化炭素を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの制御部は、前記処理ガスの前記吸収装置を出るストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記吸収装置に供給される前記吸収溶液量を制御し、
前記処理ガスのストリームの特性に関する少なくとも1つの変数の前記測定値を、前記制御部によって自動的に受信する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの変数は、流量、温度、圧力及び二酸化炭素濃度のうちの1つ又はいくつかである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
蒸気の前記再生機用部分の量の少なくとも一部を、蒸気ストリームが少なくとも1つの蒸気タービンを通過した後に、該蒸気ストリームからサイフォンで吸い上げる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記再生機に送られる蒸気の前記再生機用部分は、中圧蒸気、低圧蒸気、又は中圧と低圧との混合蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記発電プラントボイラによって生成された前記蒸気の少なくとも一部を、凝縮液を生成する発電プラント凝縮器で凝縮し、
前記凝縮液の少なくとも一部を、前記二酸化炭素捕捉システムの前記再生機からの二酸化炭素豊富ガスストリームを冷却するために熱交換器に送り、
その後前記凝縮液の部分を給水として前記ボイラに戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記熱交換器に送られる前記凝縮液部分の量を、前記少なくとも1つの自動制御部によって自動的に制御する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有機燃料を燃焼させて、蒸気と二酸化炭素を含む処理ガスとを生成するようになっている発電プラントボイラと、
前記発電プラントボイラによって生成された前記蒸気の少なくとも一部のエネルギー量の少なくとも一部を利用するようになっている蒸気システムと、
前記発電プラントボイラで生成された前記処理ガスの二酸化炭素を二酸化炭素吸収液によって捕捉することにより前記二酸化炭素吸収液が二酸化炭素を豊富に含むように、前記処理ガスに前記二酸化炭素吸収溶液を接触させて前記処理ガスの少なくとも一部から前記二酸化炭素の少なくとも一部を除去するようになっている二酸化炭素捕捉システムと、
を備える発電プラントにおいて、
前記二酸化炭素捕捉システムは、
前記処理ガスと吸収溶液との接触を容易にするように配置され、前記ボイラによって生成された前記処理ガスの少なくとも一部が前記発電プラントから前記吸収装置に送られるように前記発電プラントに接続された吸収装置と、
捕捉した二酸化炭素を豊富に含む吸収溶液から二酸化炭素を除去することによって前記吸収溶液が少なくとも部分的に再生されるように配置され、前記ボイラによって生成された前記蒸気の少なくとも再生機用部分が前記発電プラントから前記再生機に送られるように前記発電プラントに接続された再生機と、
前記二酸化炭素捕捉システムの動作を制御するように配置された自動制御部と、
を備える、発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511387(P2013−511387A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539912(P2012−539912)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052593
【国際公開番号】WO2011/062710
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】