説明

発電所の蒸気配管の急速加温

【課題】蒸気発生器からの蒸気を蒸気タービンにおいて受け取る蒸気発電所を提供する。
【解決手段】蒸気発生器からの蒸気を蒸気タービン30、40において、流路コンジット10と、流路コンジットに沿って配設され、蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気を蒸気タービンに流入させる主蒸気加減弁20と、蒸気発生器の過熱器及び弁の間で流路コンジットに結合されるバイパス管路12であって、バイパス管路により蒸気の一部を除去するよう、蒸気の特性が閾値に達するまで開弁するバイパス管路弁13を含むバイパス管路と、主蒸気加減弁及び蒸気タービンの間で流路コンジットに結合される排出管路21であって、始動時に蒸気タービン内の熱環境を調整するよう開弁する排出弁22を含む排出管路と、加温管路弁を含む加温管路50であって、流路コンジット上の弁15及び主蒸気加減弁の間で始端して排出管路上の排出弁の下流において終端する加温管路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発電、特に、蒸気発生器からの蒸気を蒸気タービンで受け取る蒸気発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な蒸気発電所は、熱源と、蒸気を複数の圧力レベルで発生させ、熱源からの熱によって所望の過熱レベルに加熱する蒸気発生器と、蒸気の膨張を利用して発電する蒸気タービンなどのシステムとを含む。
【0003】
かかる発電所でこのように発生した蒸気は、蒸気管路に沿って蒸気タービンに送られる。一般に、蒸気タービンのすぐ上流には、蒸気管路内に配置される主蒸気加減弁(MSCV)がある。蒸気タービンの始動時に、MSCVは、蒸気管路内の蒸気がある一定の最低条件(即ち最低温度及び/又は圧力)に達するまで閉弁状態に保たれる。
【0004】
一旦最低条件に達すると、MSCVが開弁し、蒸気の一部分は、蒸気を利用して発電する高圧蒸気タービン(HPST)に流入可能となる。HPSTに流入することができない分の蒸気は、バイパス管路に沿って配設されるバイパス弁の開弁により復水器又は蒸気発生器の再熱器へと迂回する。蒸気管路は、この蒸気管路から分岐するドレン弁を備える幾つかのドレン管路を有する。ドレン管路により、蒸気及び/又は発電所の始動時に管路内に存在する蒸気が凝縮することによって生じる水が除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成では、適切に蒸気管路を加温したり排水したりすることができず、蒸気をMSCVの入口において所要の最低条件に到達させるための所要時間が、比較的長くなる。その結果、発電所の始動時間が延びてしまい、発電所全体の効率が低下しかねない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様では、蒸気発生器による熱源の熱を利用して発生した蒸気を、蒸気タービンにおいて受け取り発電に利用する蒸気発電所を提供する。この蒸気発電所は、蒸気発生器と蒸気タービンとを結合する流路コンジットと、流路コンジットに沿って蒸気タービンの上流に配設されており、蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気を蒸気タービンに流入させる主蒸気加減弁(MSCV)と、蒸気発生器の過熱器及び弁の間で流路コンジットに結合されるバイパス管路であって、バイパス管路により流路コンジットから蒸気の一部分を除去するよう、蒸気の特性が閾値に達するまで開弁するバイパス管路弁を含むバイパス管路と、MSCV及び蒸気タービンの間で流路コンジットに結合される排出管路であって、蒸気タービンの始動時に蒸気タービン内の熱環境を調整するために開弁する排出弁を含む排出管路と、加温管路弁を含む加温管路であって、弁及びMSCVの間で流路コンジットに結合され且つ排出管路上の排出弁の下流において終端して、流路コンジットから蒸気をさらに除去する加温管路とを含む。
【0007】
本発明の別の態様では、配管を介して蒸気を蒸気タービンにおいて受け取り発電に利用する蒸気発電所の運転方法を提供する。この運転方法は、配管に沿って配設され、蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気を蒸気タービンに流入させる主蒸気加減弁(MSCV)の上流において配管から蒸気の一部分を除去するステップと、除去された蒸気を復水器に排出する排出管路に、除去された蒸気を放出するステップと、MSCVの入口における蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気の一部分の除去を停止し、MSCVを開弁して蒸気タービンに蒸気を流入させるステップとを含む。
【0008】
本発明は、特許請求の範囲に具体的かつ明瞭に記載されている。次に、本発明の上記その他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な発電所において、蒸気管路と蒸気タービンと蒸気タービンに接続される蒸気管路とを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これより、添付図面を参照しながら本発明の例示的実施形態を、その利点及び特徴と併せて詳説する。
【0011】
図1に、熱発生器と高圧蒸気タービン(HPST)30とを互いに結合する蒸気管路10などの流路コンジットと、配管に沿ってHPST30の上流に配設されて、蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気をHPST30に流入させる主蒸気加減弁(MSCV)20とを含む蒸気発電所1を示す。
【0012】
蒸気発電所1の始動時、蒸気は、HPST30の運転仕様に基づくある一定の最低温度及び/又はある一定の最低圧力を有さない限り、HPSTに流入することはできない。発電所1の始動時に、始動前の設備の状態によっては、蒸気管路10の加温と排水が適切に行われず、蒸気発生器から生じる蒸気の温度及び圧力がMSCV20の上流においてある一定の最低値を満たさなくなる。
【0013】
最低条件を満たすまでMSCV20を開弁しないことを確実にするために、MSCV20は、MSCV20に作用可能に結合され、蒸気管路10内の蒸気に接触するよう設置した温度及び圧力センサを含むことが理解できよう。
【0014】
発電所1は、MSCV20とHPST30との間の位置で蒸気管路10に結合されており、排出弁22を含む排出管路21を有している。この排出管路21は、HPST30又は中圧蒸気タービン(IPST)40の始動時に用いられ、この排出管路21を介して、HPST30及びIPST40内から蒸気を除去し、除去された蒸気を復水器70内に放出することにより、HPST30又はIPST40内の熱環境を制御する。
【0015】
加温管路50は、MSCV20の上流において蒸気管路10に結合され、排出管路21上の、排出弁22の下流において終端する。加温管路50は、加温管路弁55を含み、この加温管路弁55が開弁すると、蒸気管路10から加温管路50へと蒸気が除去され、弁55が閉弁すると、蒸気管路10からの蒸気除去が阻止される。このように、加温管路弁55を開弁し、蒸気管路10から蒸気を除去することによって、バイパス管路12と蒸気管路10との結合部よりも下流の蒸気管路10の部分を通過する蒸気の量を増加させることができる。こうして、蒸気管路10の部分を流れる蒸気流量が増加する分、蒸気をHPST30に流入させるための最低条件は、加温管路50を含まない発電所の場合よりも早期に満たされる。
【0016】
本発明において、加温管路弁55が開弁すると、HPST30へ流入可能な温度及び/又は圧力の閾値に未だ達していない蒸気の大部分が蒸気管路10から除去され、排出管路21を介して復水器70に供給される。
【0017】
これに加えて、又は代替的な方法として、別の実施形態では、加温管路50を、蒸気管35に直接結合しても、バイパス管路12を介して蒸気管35に結合してもよい。バイパス管路12は、場合によって、ドレン弁80の近接位置において蒸気管路10に結合される。この場合は、加温管路50の終端位置が弁13の上流となるので、加温管路弁55とバイパス管路弁13との各々が開弁すると、蒸気管路10からバイパス管路12に、続いて蒸気管35に加温蒸気が送られるように、接続位置の上流に圧力降下装置14を追加する。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、弁15を含む蒸気管路10を介して1以上の蒸気タービン30、40において蒸気を受け取り発電に利用する蒸気発電所1の運転方法を提供する。この方法は、弁15の下流において蒸気管路10に沿って配設されて蒸気の特性が閾値に達すると蒸気を蒸気タービン30、40に流入させる主蒸気加減弁(MSCV)20を用いて、上流の蒸気管路10から蒸気の一部分を除去するステップを含む。この方法はさらに、特性が閾値に達すると、蒸気の一部分の除去を停止し、MSCV20を開弁して、蒸気を蒸気タービン30、40に流入させるステップを含む。
【0019】
発電所1の概略図として上述した実施形態を、任意の複合サイクル発電所又はランキンサイクル発電所の一部分として適合させてもよいことが理解できよう。
【0020】
以上、特定の実施形態を例示し本発明を説明してきたが、当業者には明らかなように、これらの要素に様々な改変及び等価の措置を加えても、本発明の実施形態として認められる。さらに、本発明の実施形態を、様々な条件又は材料に適合するよう様々に改変しても、本発明の実施形態として認められる。従って、本発明を実施するための最良の形態として本明細書に例示した実施形態だけでなく、かかる実施形態もすべて、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1 発電所
10 管路
12 バイパス管路
13 弁
14 圧力降下装置
15 弁
20 主蒸気加減弁
21 排出管路
22 排出弁
30 高圧蒸気タービン
35 蒸気管
40 中圧蒸気タービン
50 加温管路
55 加温管路弁
70 復水器
80 ドレン弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器による熱源の熱を利用して発生した蒸気を蒸気タービン(30、40)で受け取り、発電に利用する蒸気発電所(1)であって、
蒸気発生器と蒸気タービン(30、40)とを結合する流路コンジット(10)と、
流路コンジット(10)に沿って蒸気タービン(30、40)の上流に配設されており、蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気を蒸気タービン(30、40)に流入させる主蒸気加減弁(MSCV)(20)と、
蒸気発生器の過熱器と弁(15)との間で流路コンジット(10)に結合されるバイパス管路(12)であって、バイパス管路(12)により流路コンジット(10)から蒸気の一部分を除去するよう、特性が閾値に達するまで開弁するバイパス管路弁(13)を含むバイパス管路(12)と、
MSCV(20)と蒸気タービン(30、40)との間で流路コンジット(10)に結合される排出管路(21)であって、蒸気タービン(30、40)の始動時に、蒸気タービン内の熱環境を調整するために開弁する排出弁(22)を含む排出管路(21)と、
加温管路弁(55)を含む加温管路(50)であって、弁(15)とMSCV(20)との間で流路コンジット(10)に結合されるとともに、排出管路(21)上の排出弁(22)の下流において終端して、流路コンジット(10)から蒸気をさらに除去する加温管路(50)と
を備える蒸気発電所(1)。
【請求項2】
排出管路(21)が結合される復水器(70)をさらに備える、請求項1記載の発電所。
【請求項3】
蒸気タービン(30、40)の出口と蒸気発生器の再熱器とに接続される低温再熱(CRH)管路(35)をさらに備える、請求項2記載の発電所。
【請求項4】
バイパス管路(12)が、CRH管路(35)又は復水器(70)の少なくとも一方に結合されている、請求項3記載の発電所。
【請求項5】
流路コンジット(10)を介して蒸気を蒸気タービン(30、40)において受け取り、発電に利用する蒸気発電所の運転方法において、
流路コンジット(10)に沿って配設され、蒸気の特性が閾値に達すると蒸気を蒸気タービン(30、40)に流入させる主蒸気加減弁(MSCV)(20)の上流において、流路コンジット(10)から蒸気の一部分を除去するステップと、
除去された蒸気を復水器(70)内に排出する排出管路(21)内に、除去された蒸気を放出するステップと、
MSCV(20)の入口における蒸気の特性が閾値に達すると、蒸気の一部分の除去を停止すると共に、MSCV(20)を開弁して、蒸気タービン(30、40)に蒸気を流入させるステップとを含む方法。
【請求項6】
流路コンジット(10)に沿って配設される弁(15)よりも上流において流路コンジット(10)から蒸気を除去するステップをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
弁(15)よりも上流において流路コンジット(10)から除去された蒸気を復水器(70)又は蒸気タービン(30、40)の出口に結合される低温再熱(CRH)管路(35)内に放出するステップをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
MSCV(20)の入口における蒸気の特性が閾値に達すると、弁(15)よりも上流における流路コンジット(10)からの蒸気の除去を停止するステップをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
流路コンジット(10)からの蒸気の一部分の除去が、弁(15)より下流において行われる、請求項6記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−106835(P2010−106835A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246002(P2009−246002)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】