説明

発電装置

【課題】駆動機側の駆動トルクが過大となることを防止し、あるいは、万が一、駆動トルクが過大となりそれによる不具合が発生してもその影響を極力小さくせしめ、後のメンテナンスの容易な発電装置を提供する。
【解決手段】第1圧力センサ52と、第2圧力センサ56と、蒸気タービン22への供給圧を調整するための流量調整弁44と、第1圧力センサ52によって検出された蒸気供給圧の検出値と第2圧力センサ56によって検出された蒸気排出圧の検出値とが入力され、それら検出値と予め設定された蒸気タービン22の仕様値とに基づいて、蒸気タービン22の駆動トルクを算出し、この駆動トルクが予め設定された最大負荷トルクを超えないように流量調整弁44を制御するコントローラ28と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気等の流体によって駆動される蒸気タービン等の駆動機(駆動源)によって、更に発電機を駆動する発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電設備を系統連系するには、発電周波数を商用周波数(50Hz/60Hz)にする必要がある。このため、商用周波数が60Hzの場合には、発電機の回転数が3600rpmとなるようにしている。
【0003】
ところで、発電機の駆動源となるタービンにおいて、そのタービンがガスタービンの場合には供給される燃料ガス(及び空気)の量によって駆動トルクが決定され、タービンが蒸気タービンの場合には供給される蒸気量によって駆動トルクが決定される。そして、この駆動トルクと発電機側の負荷トルクによって発電機の回転数が決まることになる。しかしながら、タービンの駆動トルクが十分に大きい場合であっても、前述のように発電機が3600rpmとなるように設定する必要があることから、タービンの上流側に燃料ガス量又は蒸気量を調節する調節手段を設けるとともに、タービンの駆動軸に減速機を設けることが行われている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、図4に示すように、燃料供給量を調節する燃料流量制御弁120と、タービン回転数を減速させる減速機122とが設けられた構成が開示されている。すなわち、圧縮機124で圧縮された空気が燃焼用空気として燃焼器126に供給される一方、この燃焼器126には燃料流量制御弁120を介して燃料が供給されて燃焼が行われる。この燃焼器126からの燃焼ガスは、タービン128に導入されてタービン128を回転駆動し、このタービン128の駆動軸に設けられた減速機122で回転数が減速されて発電機130を駆動する構成となっている。
【0005】
一方、下記特許文献2には、図5に示すように、ガスタービンエンジン140を発電機142の駆動源とする発電装置において、商用周波数よりも高周波の電力を発電するとともに、この高周波数の電力を電力変換器144によって商用周波数の電力に変換する構成が開示されている。すなわち、この発電装置では、発電機142を高速回転に耐え得る発電機によって構成するとともに、ガスタービンエンジン140に発電機142を直結し、このガスタービンエンジン140を数万rpm〜数十万rpmの回転速度で駆動することにより、1kHz〜3kHz程度の高周波数の電力を発電している。そして、この高周波数の電力を一旦整流回路146によって直流電力に変換し、さらにインバータ148によって商用周波数に同期する交流出力に変換して系統に連系している。
【特許文献1】特開2000−170548号公報
【特許文献2】特開2002−84795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、駆動機側の駆動トルクと発電機側の負荷トルクによって発電機の回転数が決まり、ひいては発電機によって発生される電力が決定される。ところで、通常は、発電機の許容する回転数には上限があり、また発電機側の負荷トルクにも上限があるので、つまりは駆動機側の駆動トルクにも上限があることになる。そのような制約のなかで、駆動トルクを適正に制御し、最大の電力を確保することが発電装置としては重要になる。
【0007】
しかしながら、駆動トルクを適正に制御することには往々にして困難が伴い、場合によっては、前述の駆動トルクが過大となり、発電機に不具合を及ぼす可能性もあった。しかしながら、前記特許文献1や特許文献2には、そのような駆動トルクが過大になった場合の不具合を回避するための特段の方策は開示されていない。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動機側の駆動トルクが過大となることを防止し、あるいは、万が一、駆動トルクが過大となりそれによる不具合が発生してもその影響を極力小さくせしめ、後のメンテナンスの容易な発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、流体により駆動される駆動機を有し、この駆動機によって発電機を駆動して発電する発電装置であって、前記駆動機への流体の供給圧を検出する供給圧検出手段と、前記駆動機からの流体の排出圧を検出する排出圧検出手段と、前記供給圧又は前記排出圧を調整するための圧力調整手段と、前記供給圧検出手段によって検出された流体の供給圧の検出値と、前記排出圧検出手段によって検出された流体の排出圧の検出値とが入力され、それら検出値と予め設定された前記駆動機の仕様値とに基づいて、前記駆動機の駆動トルクを算出し、この駆動トルクが予め設定された最大負荷トルクを超えないように前記圧力調整手段を制御する制御手段と、を備えている発電装置である。
【0010】
本発明では、予め設定された発電機の吸収し得る最大負荷トルクに駆動トルクが達すると、圧力調整手段を制御して、供給圧と排出圧との差圧を減少させて駆動トルクを低減するように構成しているので、駆動機側の駆動トルクが過大になることを防止でき、駆動トルクが過大であることに伴う不具合が発生することを防止することができる。また、万が一駆動トルクが過大となる場合があったとしてもそれによる不具合の影響を極力小さくすることができる。この結果、後のメンテナンスを容易なものにすることができる。
【0011】
ここで、前記圧力調整手段は、前記駆動機の流体供給側の流路に設けられた調整弁であるのが好ましい。この態様では、駆動機へ供給される流体の圧力をダイレクトに調整することができるので、駆動トルクが過大になることを防止し易くすることができる。
【0012】
また、前記駆動機が蒸気で駆動されるものである場合には、前記駆動機の入口側に接続される導入管と、前記駆動機の出口側に接続される排出管とが設けられ、前記導入管及び前記排出管は、蒸気生成手段で生成された蒸気を蒸気利用設備に導く主配管に接続可能に構成され、前記導入管及び前記排出管を前記主配管に接続することにより、この主配管を流れる蒸気が前記導入管へ流入して前記駆動機に導入され、この駆動機から排出された蒸気が前記排出管を通して前記主配管に戻されるのが好ましい。
【0013】
この態様では、蒸気利用設備へ導入される前の蒸気を利用して発電を行うことができるので、駆動機の最大負荷トルク範囲内に調整しつつ、蒸気生成手段で生成された蒸気を有効利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、駆動機側の駆動トルクが過大となることを防止し、あるいは、万が一、駆動トルクが過大となりそれによる不具合が発生してもその影響を極力小さくせしめ、後のメンテナンスの容易な発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る発電装置の一実施形態を示している。同図に示すように、この発電装置20は、蒸気生成手段10で生成されて蒸気利用設備12で利用される蒸気のエネルギーを利用して発電を行うものである。以下、具体的に説明する。
【0017】
前記蒸気生成手段10と前記蒸気利用設備12とは、蒸気が流通する主配管14によって接続されている。この主配管14には、減圧弁16が設けられている。
【0018】
前記蒸気生成手段10は、主配管14に並列に接続された複数のボイラー10aによって構成されている。これら各ボイラー10aは、蒸気発生量が例えば2トン/時間程度のものが用いられており、各ボイラー10aは、それぞれ例えば小型貫流ボイラーによって構成されている。
【0019】
前記蒸気利用設備12は、例えば給湯器、暖房機、風呂設備、乾燥機、洗浄設備、厨房機器、殺菌器等、例えば150〜200℃程度の蒸気を利用する設備である。
【0020】
本実施形態に係る発電装置20は、蒸気タービン22、発電機24、周波数変換器26、コントローラ28、冷却手段30等を備えており、これらはケーシング32内に収納されている。なお、このケーシング32には、換気ファン34が配設されている。
【0021】
前記蒸気タービン22は、例えばスクリュ膨張機によって構成されている。蒸気タービン22は、対象となる蒸気の最大供給量から得られる最高回転数が許容回転数の範囲内となるように選定されている。
【0022】
蒸気タービン22には、この蒸気タービン22の入口側に接続される導入管36と、蒸気タービン22の出口側に接続される排出管38とが設けられている。導入管36は、前記主配管14における減圧弁16の上流側に接続され、また排出管38は、前記主配管14における減圧弁16の下流側に接続されている。これにより、蒸気生成手段10で生成された蒸気の少なくとも一部が蒸気タービン22に導入され、この蒸気タービン22から排出された蒸気が主配管14に戻されるようになっている。
【0023】
導入管36には、上流側から順に開閉弁40、ドレンセパレータ42、流量調整弁44及び緊急遮断弁46が設けられている。開閉弁40は、前記主配管14との接続部の近傍に配置されている。ドレンセパレータ42は、導入管36を流れる蒸気からドレンを分離するためのものである。流量調整弁44は、導入管36を流れる蒸気流量を調整するものであり、コントローラ28によって開閉制御が可能に構成されている。流量調整弁44は、蒸気タービン22への供給圧を調整するための圧力調整手段として機能するものである。緊急遮断弁46は、導入管36を完全に遮断するものであり、コントローラ28によって制御可能となっている。
【0024】
排出管38における主配管14との接続部の近傍には、開閉弁50が設けられている。この開閉弁50と前記導入管36の開閉弁40は、主配管14を流れる蒸気を導入管36へ導入するか否かを切り換える切換手段を構成している。すなわち、蒸気生成手段10で生成された蒸気をそのまま蒸気利用設備12へ導くときには、これら開閉弁40,50を閉じ、蒸気を利用した発電を行うときにはこれら開閉弁40,50を開く。なお、これら開閉弁40,50は、全開及び全閉の2状態に切り換え可能な開閉弁、開度調整可能な開閉弁のいずれによって構成することもできる。また、切換手段として、開閉弁40,50に代えて、三方切換弁を配設してもよい。この場合、三方切換弁は、主配管14と導入管36の接続部及び主配管14と排出管38の接続部に配置されることになる。
【0025】
導入管36には、蒸気タービン22へ導入される蒸気の圧力(供給圧)を検出する第1圧力センサ52が設けられている。また排出管38には、蒸気タービン22から排出された蒸気の圧力(排出圧)を検出する第2圧力センサ56が設けられている。
【0026】
前記発電機24の回転軸60は、カップリング62を介して蒸気タービン22の駆動軸64と結合されている。すなわち、発電機24の回転軸60は、蒸気タービン22の駆動軸64と減速機を介さないで連結されている。このため、発電機24の運転回転数は、蒸気タービン22の回転数と同じになる。
【0027】
発電機24で発電された電力は、前記周波数変換器26に導入されるようになっている。この周波数変換器26は、発電機24で発電された電力の周波数を変換するものであり、例えば10〜100Hzの電力を60Hzの商用周波数の電力に変換する。周波数変換器26は、発電機24で発電した交流を直流へ変換する。そして、この直流の電力を所望の周波数すなわち商用周波数の電力に変換して出力する。周波数変換器26から出力された電力は、変圧器68を通して系統70に連系される。
【0028】
前記冷却手段30は、発電機24を冷却するためのものであり、冷却液が循環する循環路72を備えている。この循環路72には、冷却液タンク74とポンプ75と冷却器76とが設けられている。冷却液タンク74は、冷却液を貯溜するためのものである。ポンプ75は、冷却液タンク74内の冷却液を圧送するためのものであり、このポンプ75を駆動することにより、冷却液が循環路72を循環する。冷却器76は、発電機24に導入される冷却液を冷却するためのものであり、この冷却器76には、冷却水が流通する冷却水通路76aが設けられていて、この冷却水通路76aを流れる冷却水で冷却液を冷却する。冷却液としては、例えば油が用いられている。
【0029】
前記発電機24は、図2に示すように、略円筒状に形成された胴部80aと、この胴部80aの両端部に設けられる端壁部80bとを有する発電機ケーシング80を備えており、胴部80aの軸方向が水平になる姿勢で冷却液タンク74の上に設置されている。発電機ケーシング80の両端壁部80bには、内方へ向かって突出する円筒状のボス部80cがそれぞれ設けられ、この両ボス部80cを前記回転軸60が貫通している。ボス部80cには、軸受82が配設されていて、回転軸60は回転自在となっている。
【0030】
回転軸60は、水平方向に延びるように配置され、一方のボス部80c(図2における左側)から外方へ延出されていて、カップリング62を介して蒸気タービン22の駆動軸64に結合されている。
【0031】
発電機ケーシング80の端壁部80bには、発電機ケーシング80の上端部からボス部80c内へと延びる給油孔80dが形成されている。この給油孔80dを通して潤滑油が軸受82に供給される。そして、ボス部80cにおける軸受82よりも軸方向外側には軸封部84が設けられており、軸受82の潤滑油がケーシング外へ漏れ出さないようになっている。一方、発電機ケーシング80の下端部に、発電機ケーシング80内と冷却液タンク74の上部開口86とを連通する連通路88が設けられており、ボス部80c内から発電機ケーシング80内へ流出した潤滑油が、連通路88を通して冷却タンク74内へ流下するようになっている。すなわち、この潤滑油は、冷却液として用いられている油と同じものが用いられている。なお、発電機ケーシング80に連通路88を形成する構成に代え、発電機ケーシング80の下端部から外方へ延びる配管(図示省略)を設け、この配管の先端部を冷却液タンク74に接続する構成にしてもよい。
【0032】
発電機24は、内部永久磁石同期発電機(IPM)によって構成されている。すなわち、発電機ケーシング80の胴部80aにステータ90が固定されるとともに、このステータ90の内周側にロータ91が設けられている。そして、ロータ91の内部に永久磁石(図示省略)が嵌め込まれるとともに、このロータ91は、前記回転軸60に固定されている。
【0033】
ステータ90にはコイル93が巻装されていて、このコイル93は、電装ポート95と結線されている。この電装ポート95には、周波数変換器26に繋がる配線が接続されている。また、コイル93には、図示省略した温度センサが設けられており、この温度センサは電装ポート96と結線されている。この電装ポート96には、コントローラ28に繋がる配線が接続されている。
【0034】
発電機ケーシング80の胴部80aには、入口ポート98と出口ポート99とが設けられており、これら入口ポート98及び出口ポート99は、胴部80a内に形成された冷却路100によって連通されている。入口ポート98は、胴部80aの一方側に設けられ、前記循環路72における冷却器76側の端部が接続されている。一方、出口ポート99は、胴部80aの他方側に設けられ、前記循環路72における冷却液タンク74側の端部が接続されている。
【0035】
冷却路100は、軸方向に間隔をおいて配置されるとともに胴部80a内を周方向に延びる複数の周方向部100aと、これら周方向部100aを連通するように軸方向に延びる軸方向部100bとを備えている。そして、入口ポート98を通して導入された冷却液が、出口ポート99に向かって周方向部100aと軸方向部100bを流通するようになっている。これにより、発電機ケーシング80の胴部80aが偏り無く冷却されるようになっている。
【0036】
ここで、発電装置20の運転動作について説明する。各ボイラー10aの駆動によって生成された蒸気は、主配管14を流れて減圧弁16で減圧された後、蒸気利用設備12へ導入される。そして、発電を行う場合には、導入管36の開閉弁40及び排出管38の開閉弁50を開き、これにより、各ボイラー10aで生成されて主配管14を流れてきた蒸気の一部が導入管36に分流される。この場合でも、蒸気利用設備12へ蒸気が送られるので、蒸気利用設備12において蒸気を利用することができる。
【0037】
導入管36へ分流された蒸気によって蒸気タービン22が駆動され、それに伴って発電機24の回転軸60が回転し、電力が生成される。
【0038】
前述したとおり、第1圧力センサ52(すなわち流体の供給圧を検出する供給圧検出手段)によって、蒸気タービン22へ導入される蒸気の圧力が検出され、第2圧力センサ56(流体の排出圧を検出する排出圧検出手段)によって、蒸気タービン22から排出された蒸気の圧力が検出されている。
【0039】
コントローラ28(すなわち制御手段)では、それら検出値と予め設定された蒸気タービン22(すなわち駆動機)の仕様値とに基づいて、蒸気タービン22の駆動トルクを算出している。さらに、コントローラ28では、予め設定された発電機24の吸収しうる最大負荷トルクを駆動トルクが超えないよう、流量調整弁44(すなわち圧力調整手段)を制御する。すなわち、最大負荷トルクに駆動トルクが近くなった場合、コントローラ28は、流量調整弁44の開度を調整して、供給圧と排気圧との差圧を減少させて駆動トルクを低減するように構成されている。
【0040】
以下、蒸気タービン22の駆動トルクの算出、及び流量調整弁44の開度制御について具体的に説明する。
【0041】
蒸気タービン22が例えばスクリュ膨張機のような容積形の蒸気タービンの場合には、蒸気タービン22の軸トルクTgは、以下の式(1)
Tg=974×(Nth−Nm) ・・・ (1)
で算出される。ここで、Nthは理論発生動力(kW)であり、Nmはメカニカルロス(軸受、軸シール、ギア等の損失動力)(kW)である。
【0042】
理論発生動力Nthは、以下の式(2)
Nth=Nthi+NΔP ・・・ (2)
で算出される。ここで、Nthiは内部理論圧縮動力(kW)であり、NΔPは過不足膨張動力(kW)であり、それぞれ図3で示される。内部理論圧縮動力Nthi、過不足膨張動力NΔPは、以下の式(3)、(4)
【0043】
【数1】

で算出される。ここで、nはポリトロープ指数、Viは内部容積比、Vth2は排気工程体積(m/rev)、P1は給気圧力(kg/cmA)、P2は排気圧力(kg/cmA)、P2iは内部排気圧力(kg/cmA)である。なお、P2i=P1/Viκである。
【0044】
前記式(3)、(4)において、給気圧力(供給圧)P1及び排気圧力(排出圧)P2以外は、事前に分かっている定数なので、給気圧力P1と排気圧力P2を監視することで、蒸気タービン22の軸トルクTgを計算できることになる。なお、減速機を有する場合には、減速比をrgとして、発電機トルクTは、
T=rg×Tg ・・・ (5)
として計算することができる。このトルクが、「発電機の許容する軸トルク」を超えないように、流量調整弁44の開度を調整して、給気圧力P1を制御する。
【0045】
つまり、発電機24の仕様から予め決定される「発電機の許容する軸トルク」の値から最大負荷トルクTthをコントローラ28に設定する。最大負荷トルクTthは「発電機の許容する軸トルク」と等価でもよく、あるいは「発電機の許容する軸トルク」よりも若干低い値でもよい。
【0046】
そして、コントローラ28は、入力される給気圧力P1と排気圧力P2とから、前記式(1)〜(5)に基づいて、駆動トルクT(又はTg)を算出する。算出された駆動トルクT(又はTg)と最大負荷トルクTthとを比較し、その結果、駆動トルクT(又はTg)が最大負荷トルクTthよりも大きい場合には、コントローラ28は、現状の流量調整弁44の開度の値と、駆動トルクT(又はTg)と、最大負荷トルクTthとからPID演算により、調整すべき流量調整弁44の開度を算出し、相応の制御信号を流量調整弁44に対して発信する。これにより、流量調整弁44の開度が調整されて「発電機の許容する軸トルク」の範囲内で蒸気タービン22が駆動される。
【0047】
発電機24の運転中において、発電機24内での温度が図略の温度センサで検出されていて、冷却液が循環路72を循環している。すなわち、ポンプ75の駆動により冷却液タンク74内の冷却液が送出されて、冷却器76において冷却水通路76aの冷却水によって冷却され、この冷却された冷却液が発電機24に導入される。そして、冷却液は、入口ポート98を経由して冷却路100の周方向部100a及び軸方向部100bを流通し、発電機ケーシング80の胴部80aを均等に冷却する。これにより、発電機24の発熱を効率的に抑制することができる。そして、冷却路100を流れた冷却液は、出口ポート99を経由して循環路72を流れ、冷却液タンク74へ戻る。冷却液はこの循環を続ける。
【0048】
発電機24で生成された電力は、電装ポート95を通して周波数変換器26に出力される。この電力の周波数は、例えば10〜100Hzとなっている。そして、この電力は、周波数変換器26において商用周波数の電力に変換されて出力され、変圧器68を通して系統70に連系される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、予め設定された発電機24の吸収し得る最大負荷トルクTthに駆動トルクT(又はTg)が達すると、圧力調整手段を制御して、給気圧力P1と排気圧力P2との差圧を減少させて駆動トルクT(又はTg)を低減するように構成しているので、蒸気タービン22側の駆動トルクT(又はTg)が過大になることを防止でき、駆動トルクT(又はTg)が過大であることに伴う不具合が発生することを防止することができる。また、万が一駆動トルクT(又はTg)が過大となる場合があったとしてもそれによる不具合の影響を極力小さくすることができる。この結果、後のメンテナンスを容易なものにすることができる。
【0050】
しかも、本実施形態では、圧力調整手段が蒸気タービン22の給気側に設けられた流量調整弁44によって構成されているので、蒸気タービン22に供給される蒸気の圧力をダイレクトに調整することができる。このため、駆動トルクT(又はTg)が過大になることを防止し易くすることができる。
【0051】
また、本実施形態では、蒸気利用設備12へ導入される前の蒸気を利用して発電を行うことができるので、蒸気タービン22の最大負荷トルク範囲内に調整しつつ、蒸気生成手段10で生成された蒸気を有効利用することができる。
【0052】
なお、本発明は、本実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、本実施形態では、発電機を駆動する駆動機を蒸気タービン22として構成したが、これに限られるものではない。つまり、流体の供給圧と排出圧とによって駆動トルクが変化する駆動機であればよい。例えば、導入管36に設けられた流量調整弁44に代え、排出弁38に流量調整弁を設け、コントローラ28による開閉制御によって排出弁38を流れる蒸気流量を調整するものとしてもよい。
【0053】
また、発電機24で発電した交流を直流に変換するために、回転軸60の端部にパルスジェネレータを設け、そのパルスジェネレータからの出力値に応じて周波数変換器26が上記の変換を行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る発電装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】前記発電装置に設けられた発電機及び冷却液タンクを示す断面図である。
【図3】内部理論圧縮動力Nthi及び過不足膨張動力NΔPを説明するための特製図である。
【図4】従来の発電装置の構成を示す図である。
【図5】従来の発電装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 蒸気生成手段
12 蒸気利用設備
14 主配管
20 発電装置
22 蒸気タービン(駆動機の一例)
24 発電機
28 コントローラ(制御手段の一例)
36 導入管
38 排出管
44 流量調整弁(圧力調整手段の一例)
52 第1圧力センサ(供給圧検出手段の一例)
56 第2圧力センサ(排出圧検出手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体により駆動される駆動機を有し、この駆動機によって発電機を駆動して発電する発電装置であって、
前記駆動機への流体の供給圧を検出する供給圧検出手段と、
前記駆動機からの流体の排出圧を検出する排出圧検出手段と、
前記供給圧又は前記排出圧を調整するための圧力調整手段と、
前記供給圧検出手段によって検出された流体の供給圧の検出値と、前記排出圧検出手段によって検出された流体の排出圧の検出値とが入力され、それら検出値と予め設定された前記駆動機の仕様値とに基づいて、前記駆動機の駆動トルクを算出し、この駆動トルクが予め設定された最大負荷トルクを超えないように前記圧力調整手段を制御する制御手段と、を備えている発電装置。
【請求項2】
前記圧力調整手段は、前記駆動機の流体供給側の流路に設けられた調整弁である請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記駆動機は、蒸気で駆動されるものであり、
前記駆動機の入口側に接続される導入管と、前記駆動機の出口側に接続される排出管とが設けられ、
前記導入管及び前記排出管は、蒸気生成手段で生成された蒸気を蒸気利用設備に導く主配管に接続可能に構成され、
前記導入管及び前記排出管を前記主配管に接続することにより、この主配管を流れる蒸気が前記導入管へ流入して前記駆動機に導入され、この駆動機から排出された蒸気が前記排出管を通して前記主配管に戻されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−68367(P2009−68367A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235454(P2007−235454)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】