説明

白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法、白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極、燃料電池用セルロース電極の製造方法、及び、セルロース繊維

【課題】既存のカーボンペーパーに代える新たな高性能/低費用の燃料電池電極を開発するためのものであり、現在開発されているカーボンペーパー電極よりも低価格の代替原料を用いて燃料電池電極の製造コストを減少させ、新しいナノ−バイオ−環境に優しいハイブリッドエネルギー素材を開発する。
【解決手段】本発明の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法 は、セルロース繊維を分離した後に板状のセルロース板を製造する第1段階と、製造されたセルロース板にカーボンナノチューブを成長させる第2段階と、カーボンナノチューブが成長したセルロース板に白金ナノ触媒を担持する第3段階とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状に製作されたセルロース繊維の表面にカーボンナノチューブを成長させ、そこに化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持して製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、多数のマイクロ細孔を有するセルロース繊維を用いてセルロース板を製造し、そこにカーボンナノチューブを直接成長させた後、白金ナノ触媒を担持して製造した白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法、それによる白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極及びセルロース繊維の燃料電池用電極としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、セルロース繊維は自らの表面積と気孔度及び物理的な強度に非常に優れていることから、軽量複合材料、吸着及びろ過素材や強化材などとして広く用いられてきた。しかしながら、これまでセルロース繊維を一連の過程を経て燃料電池用電極素材として活用しようとする国内外における研究は皆無であり、現在開発されているカーボンペーパー(carbon paper)を電極として用いることは比較的に高価なカーボンファイバを原料として製造するようになるので、これに代える低価格の電極素材についての開発が急務となっている。
【0003】
現在、本発明者はカーボンペーパーの表面にカーボンナノチューブを直接成長させた後、そこに化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持し、それを燃料電池電極として活用する技術を開発して下記の特許文献1として出願した。本発明は、このような燃料電池電極に関する更に改良された発明であって、開発されたカーボンペーパーに代えることのできる高機能性/低費用の素材としてセルロース繊維板を用いる技術に関する。
【0004】
カーボンナノチューブは、電気伝導度、比表面積、水素貯蔵性に優れているため、触媒支持体としての使用が期待され、特に燃料電池電極用白金触媒の支持体としての使用が好ましい。今のところ、カーボンナノチューブについての研究は合成に関するものが主流となっており、その応用についての研究は大きく遅れを取っている。特に、カーボンナノチューブを触媒支持体として応用しようとする試みは殆どない。しかしながら、カーボンナノチューブは特有の表面構造のため、金属粒子を担持する場合に、粒子同士の凝集を防止できるという長所を有している。
【0005】
また、貴金属である白金触媒は、各種の水素化反応や改質反応などに広く用いられ、他の金属触媒に比べて優れた活性を示すにも拘らず、高い製造コストが問題となっている。従って、このような問題を解決するためには、触媒活性相である白金の粒径をナノ規模に最小化し、高分散状態で担持することで、最少量の白金を用いて触媒活性点の数を最大化することが重要である。そのためには、触媒を支持している支持体の表面積が優れていなければならず、担持過程で触媒の粒子が支持体の表面で凝集しないようにしなければならない。
【0006】
現在、電極の製造工程では多様な炭素素材が白金触媒の支持体として用いられているが、まだカーボンナノチューブを用いた例は殆どない状況である。カーボンナノチューブを燃料電池電極用触媒の支持体として用いる場合、電気伝導度、水素貯蔵性、機械的強度、そして表面積に優れているので、電極の性能を大きく向上させることができる。
【0007】
既存の燃料電池電極の製造工程では白金担持カーボン触媒をカーボンペーパーに塗布するための方法として「ペースト法」を用いたが、この過程で白金触媒の活性相が互いに遮られてしまうという短所がある。一方、電極の表面にカーボンナノチューブを直接成長させた後、白金を担持する場合にはカーボンナノチューブの大きい表面積をそのまま用いることができ、そこに担持された白金触媒の粒子が遮られることなく、いずれも反応に参加できるので、反応活性を大きく向上させることができるという長所がある。
【0008】
これまでセルロース繊維だけを燃料電池の電極材料として活用した例は皆無であり、類似の研究としては下記の特許文献2でセルロースマトリックスの間に電気伝導度を示す炭素物質を添加してセルロース複合材料を製造した後、これを燃料電池電極として活用する方法を提示した。
【0009】
燃料電池電極としての活用のために、炭素電極の表面にカーボンナノチューブを成長させる研究についての文献は、以下の通りである。下記の特許文献3には燃料電池電極として用いるためのカーボンナノチューブ電極の製造方法が提示されているが、炭素基板上に電気泳動、溶射、スパッタリング、又はCVD法を用いて金属触媒を分散させた後、炭素源としてはエチレン、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレン、メタンを用い、温度を400〜900℃に上昇させるCVD方法を用いてカーボンナノチューブを合成するようにし、その他にプラズマ化学気相蒸着法を用いてカーボンナノチューブを合成することもできる。
【0010】
また、下記の特許文献4ではカーボンナノチューブを含むナノ複合体を製造し、これを燃料電池電極に活用することで、燃料電池の性能を大きく向上させる方法を提示した。その方法を詳察すると、まず、カーボンクロス(carbon cloth)やカーボンファイバ(carbon fiber)に鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらの合金をスパッタリング、気化(evaporation)、化学気相蒸着(CVD)、電気メッキ(electroplating)、又は無電極メッキ(electroless plating)方法を用いて担持し、炭素源を流すことでカーボンナノチューブを合成するようにした。ここで初期に成長したナノチューブの表面に続いて枝状のナノチューブを追加的に成長させることによって、遮られる部分を最小化するために、DCプラズマCVD方法(DC plasma CVD method)を用いた。
【0011】
文献を検索した結果、これまでセルロース繊維板にカーボンナノチューブを直接成長させて、その表面に化学気相蒸着法を用いて白金触媒粒子をナノ規模で高分散させた後、燃料電池電極として活用しようとする研究は全く行われていない状況である。
【0012】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2007−0015801号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0286434号明細書
【特許文献3】特開2004−59428号公報
【特許文献4】国際公開第2006/080702号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、既存のカーボンペーパーに代える新たな高性能/低費用の燃料電池電極を開発するためのものであり、現在開発されているカーボンペーパー電極よりも低価格の代替原料を用いて燃料電池電極の製造コストを減少させ、新しいナノ−バイオ−環境に優しいハイブリッドエネルギー素材を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような技術的課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者は、比較的に低価格のセルロース繊維を用いる場合、大幅なコスト削減の効果をもたらすと共に、新しいナノ−バイオ−環境に優しいハイブリッドエネルギー素材として利用可能であるという点に着目して本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、多数のマイクロ細孔を有するセルロース繊維を用いて電極を製造し、その表面に金属触媒を均一にドーピングした後、一定太さのカーボンナノチューブを高密度、且つ、高分散に成長させ、セルロース板の表面に成長したカーボンナノチューブの表面に化学気相蒸着法を用いてナノ規模の白金触媒粒子を高分散状態で担持して燃料電池電極として活用することで、従来のカーボンペーパー電極に代えることができるようにした。
【0016】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、前述した技術的課題を解決するために、セルロース繊維を分離した後、板状のセルロース板を製造し、製造されたセルロース板にカーボンナノチューブを成長させた後、そこに白金ナノ触媒を担持してセルロース電極を製造する方法を提供する。更に詳細には、セルロース繊維をマイクロメーター単位の繊維に分離し、所定の長さに切断して接着及び乾燥させて板状に成形してセルロース板を製造する第1段階と、製造されたセルロース板にカーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持した後、炭素源を供給して化学気相蒸着法でカーボンナノチューブを直接成長させる第2段階と、カーボンナノチューブが成長したセルロース板を酸で前処理した後、化学気相蒸着法で白金ナノ触媒を担持する第3段階とを含んでなる白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法を提供する。
【0017】
以下、本発明に係る製造方法を更に詳細に説明する。
第1段階:セルロース板の製造段階
セルロース繊維を分離してセルロース板を製造する段階は、多様な方法が利用され得るが、(A)A−1)セルロース繊維の切断及び接着による製造方法、又はA−2)セルロース繊維の製織による製造方法を用い、製造されたセルロース板を燃料電池用炭素電極として用いるための(B)セルロース板を前処理する段階を含んでなる。
【0018】
A−1)まず、セルロース繊維をマイクロメーター単位、即ち、直径数十〜数百マイクロメーター単位の細い繊維に分離した後、これを所定の長さに切断し、そこに接着剤を適用した後、圧着成形過程を経て板状に製造する方法を用いてもよく、A−2)セルロース繊維の製織により織物(cloth)の形態に製造してセルロース板を製造する方法を用いてもよい。燃料電池用電極として用いるためには、セルロース繊維をなるべく細く分離することが好ましく、太さが細いほど、稠密な構造の製織が可能になる。本発明では繊維の特性上、マイクロ単位(直径数十〜数百マイクロの範囲)に分離して用いることが好ましい。製織されたセルロース板は、用途に応じて単一又は2〜3枚を重ねて圧着することで、触媒を支持できる表面積及び気孔度の調節が可能であり、且つ燃料電池の電極反応における反応経路の調節が可能である。
【0019】
(B)セルロース板を前処理する段階
セルロース繊維で製造されたセルロース電極を燃料電池用電極として活用するための前処理過程であり、熱処理過程を通じてセルロース繊維が有している不純物成分が除去されて繊維の壁厚さが減少し、不純物が存在していた空間は内部気孔として維持されるようにする。また、硫酸水溶液で処理することにより、セルロース電極表面の濡れ性を増加させるための前処理を行なうことができる。
【0020】
第2段階:カーボンナノチューブの成長段階
前記(A)段階を通じて製造されたセルロース電極を燃料電池用電極として活用するためには、セルロース板にカーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持した後、炭素源を供給してカーボンナノチューブを成長させる。カーボンナノチューブの成長段階は、(C)触媒金属の担持段階及び(D)炭素源の供給を通じたカーボンナノチューブの成長段階を含んでなることができる。
【0021】
(C)カーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階
前処理されたセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させるために、触媒金属であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属粒子を担持する段階であって、C−1)前処理されたセルロース電極をナイトレート又はアセテート系のニッケル、コバルト、鉄化合物、又はこれらの混合物を溶解させた前駆体水溶液に浸漬した後、超音波を加える段階又はC−2)金属粒子の担持のために電気化学的方法を用いる段階のうち選択的な方法を用いることができる。
【0022】
(D)カーボンナノチューブの成長段階
カーボンナノチューブ成長用触媒金属が担持されたセルロース電極の表面に炭素源を供給してカーボンナノチューブを成長させる。カーボンナノチューブ成長用触媒としてニッケル、コバルトなどが担持されたセルロース電極の金属を還元させた後、メタン、ベンゼン、エタノール、キシレンなどの炭素源を流してカーボンナノチューブを成長させる。
【0023】
第3段階:カーボンナノチューブに白金ナノ触媒を担持する段階
白金ナノ触媒を担持する段階は、セルロース電極の表面からカーボンナノチューブを成長させるための触媒金属を除去する(E)前処理段階と、(F)白金ナノ触媒の担持段階とからなる。
【0024】
(E)白金ナノ触媒の担持のための前処理段階
セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブからニッケル、コバルトなどのカーボンナノチューブ成長用触媒金属成分を除去するために塩酸処理を施した後、水洗及び乾燥を行い、その後、カーボンナノチューブ表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置換させ、触媒の効果的な蒸着のための欠陥(defect)を作るために、混合酸(窒酸+硫酸)溶液で処理した後、水洗及び乾燥を行う。
【0025】
(F)カーボンナノチューブに白金ナノ触媒を担持する段階
セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブに気相の白金前駆体を流して化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持する。
このような一連の方法を通じて本発明に係る白金ナノ触媒が担持された燃料電池用セルロース電極を製造する。
【0026】
本発明は、セルロース板、セルロース板上に直接成長したカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブの表面に担持された白金ナノ粒子を含んでなることを特徴とする白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極を提供することで、前記目的を達成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、既存の燃料電池電極素材であるカーボンペーパーに代える新たな高機能性セルロース電極の開発に関するものであり、セルロース素材は既存のカーボンペーパーの原料となるカーボンファイバに比べて原価が1/4000と安価であり、電極の製造コストの面でも略1/130の割合で、非常に安い。本発明ではセルロース板を用いた燃料電池電極の製作のために、従来の電極製造方法である白金担持カーボン触媒をカーボンペーパーに塗布する「ペースト法」の代りに、優れた電気的、物理的、化学的特性を有するカーボンナノチューブをセルロース繊維で製造した電極の表面に直接成長させることで、既存のペースト法を用いる場合に発生する白金が担持された触媒粒子がペースティング(pasting)過程に互いに重なりながら、触媒活性相を遮るという短所が解決された。また、カーボンナノチューブの広い表面積と優れた電気伝導度などを最大限に活用することができ、カーボンペーパー表面にカーボンナノチューブの垂直配向によって燃料電池の駆動中に発生する副産物である水分を容易に排出できるので、電極の耐久性が大幅に増加するという効果を有する。
本発明でカーボンナノチューブが成長したセルロース電極に白金ナノ触媒を担持するためには、特許文献1に開示されているように、化学気相蒸着法を用いることで、1〜2nm規模のナノ粒子の担持が可能であることが確認でき、これにより、既存に用いられていた高価のカーボンペーパーを安価なセルロース板に代えることで高付加価値を達成できる。特に、電極の反応面積の増加及び触媒粒子の大きさの減少による燃料電池電極の性能向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係るセルロース電極の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明の好適な一実施形態に係る概略図を図1に示す。
(A)A−1)セルロース繊維を切断した後、接着剤を用いて板状に製作し圧着することで電極を製作するか、又はA−2)セルロース繊維の製織により職物の形態に製作する方法を利用したセルロース原繊維を用いたセルロース板の製造段階と、(B)セルロース繊維板を電極として用いるための前処理過程で特定の気体を流しながら熱処理する段階と、(C)前処理されたセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させるために、触媒金属であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属粒子を(C−1)超音波又は(C−2)電気化学的方法を用いて担持する段階と、(D)セルロース電極の表面に気相の炭素源を流し、適正の温度を維持することで、カーボンナノチューブを成長させる段階と、(E)セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブから触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属を除去し、白金の担持のためのカーボンナノチューブの表面を前処理する段階と、(F)セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブに気相の白金前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持する段階とを含んでなる。
【0030】
(A)段階は、セルロース繊維を燃料電池用炭素電極の形態に製作する段階である。この時に用いられるセルロース繊維としては、へネケ麻(henequen;龍舌蘭)、ケナフ(kenaf)、アバカ(abaca)、竹(bamboo)、大麻(hemp)、亜麻(flax)、苧麻(jute)、パイナップル、カラムシ(ramie)、サイザル(sisal)麻などが挙げられる。
【0031】
A−1)の方法は、セルロース繊維を切断した後、接着剤を用いて板状に製作する段階であって、前述したセルロース繊維を直径数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で2〜10mmの長さに切断する。セルロース繊維を切断するために液体窒素を用いる理由は、常温で器具を用いて切断する場合、セルロース繊維の内部気孔が切断過程での圧力により変形されたり、閉塞される恐れがあるためである。従って、液体窒素に含浸させて凍結した状態で切断する方法を用いることで、内部気孔がそのまま維持された状態で長さを調節するようにする。
【0032】
切断されたセルロース繊維試料に一定の濃度で希釈したフェノールレジンを混合した後、50〜90℃でレジン中の溶媒部分を50〜80%揮発させた後、板状に圧着及び成形する過程を経てセルロース板を製作する。このとき、常用のフェノールレジンをメタノールなどの溶媒で希釈して最少量を用いることが好ましい。フェノールレジンの濃度が濃い場合、セルロース繊維が有している気孔を塞ぐ現象が発生するためである。即ち、セルロース繊維の気孔の閉塞を最小化しながら、セルロース繊維の結合のみを手助けするためにはフェノールレジンの濃度が低く、なるべく最少量を用いることが有利である。セルロース板は圧着し、100〜150℃で2〜12時間硬化させる。この過程を要約した図面を図2に示す。
【0033】
A−2)の方法は、セルロース繊維の製織により職物の形態に製作する段階であって、この段階も前述したセルロース繊維を原料として用いてこれを職物の形態に製織し、セルロース板を製作する。燃料電池電極用として用いるためには、セルロース繊維の太さをなるべく細く分離するのが有利であり、太さが細いほど、稠密な構造の製織が可能になる。本発明ではセルロース繊維の特性上、数十〜数百μmに分離して用いることが好ましい。製織されたセルロース板は、用途に応じて単一、又は2〜3枚を重ねて圧着することで触媒を支持できる表面積及び気孔度の調節が可能であり、燃料電池の電極反応における反応経路の調節が可能である。
【0034】
(B)段階は、セルロース繊維板を電極として用いるための前処理段階である。A−1)又はA−2)段階を通じて製造されたセルロース板を水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、次いで500〜1500℃で30分〜2時間維持することで、炭化した状態のセルロース電極を製造する。この過程でセルロース繊維が有している不純物成分が除去されて繊維の壁厚さが減少し、不純物(主に、ワックス、脂肪成分)が存在していた空間は内部気孔として維持される。
【0035】
次に、セルロース電極表面の濡れ性を増加させるために、セルロース電極を0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vで掃引速度(Sweep rate)を50mV/sにし、10〜60サイクル処理する。ここで、硫酸水溶液の濃度はセルロース電極の材質及び構造によって異なり、0.1molより低ければ、表面処理効果が低下し、0.5molより高ければ、セルロース電極を腐食させる恐れがある。適用電圧の範囲は、−0.15〜1.3Vの間であり、これ以上の範囲ではセルロース電極の損傷をもたらし得る。処理する回数も電極の材質や硫酸溶液の濃度に応じて調節され、10サイクル以下では処理効果が殆どなく、60サイクル以上では表面の損傷をもたらし得る。
【0036】
(C)段階は、前処理されたセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させるために、触媒金属であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属粒子を担持する段階である。
【0037】
C−1)段階は、硫酸処理後に乾燥したセルロース電極をナイトレート又はアセテート系のニッケル、コバルト、鉄化合物、又はこれらの混合物を溶解させた前駆体水溶液に浸漬した後、超音波を加える方法である。硫酸処理後に乾燥したセルロース電極は、ナイトレート又はアセテート系のニッケル、コバルト、鉄化合物、又はこれらの混合物を前駆体として用いた水溶液(0.1〜1mol)に浸漬した後、超音波を加える段階を1〜10回繰り返して金属粒子をセルロース電極の表面に均等に分散させることが好ましい。ここで、前駆体溶液の濃度が0.1mol以下であれば、セルロース電極に担持し難く、1mol以上の場合には担持量は多いものの、金属粒子が大きな塊りになる傾向が増加する。担持回数の増加により、セルロース電極表面の金属担持量が増加し、担持段階を繰り返す場合には途中に大気中で乾燥させる過程を経て金属粒子が効果的に担持されるようにする。
【0038】
C−2)段階は、C−1)と選択的に用いることができる方法であって、セルロース電極の表面でカーボンナノチューブを成長させるための触媒金属であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属粒子の担持のために電気化学的方法を用いる方法である。
【0039】
この方法は標準電極として飽和カロメル電極、対電極として白金電極、作業電極として石英管内部の均一温度区間内に入ることができるように、横の長さが4cm以内であり、縦の長さは20cm以内の範囲であるセルロース電極を連結して三電極(three electrode cell)を設置する段階と、前記電極を0.1〜1molのニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物水溶液に浸漬し、電圧は−2.5V〜2.5Vの間の範囲で変化させながら、10mV/sec〜50mV/secの掃引速度で10〜600サイクル繰り返して金属粒子の担持量を調節する段階と、その後、ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物が担持されたセルロース電極を溶液から取り出して100℃〜120℃のオーブンで12時間〜24時間乾燥させる段階と、からなり、セルロース電極の表面に金属粒子が担持されるようにする。
【0040】
これらの過程で、ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物の担持に適用する電圧が−2.5V以下と2.5V以上の範囲では金属粒子が塊になる現象が現れるので、両数値の中間範囲で調節するようにし、繰り返す回数が10サイクル以下である場合は、担持量があまりにも少なく、600サイクル以上の場合には、担持量は多いものの、粒径が増加する現象が現れ得る。
【0041】
(D)段階は、セルロース電極の表面に気相の炭素源を流し、適正の温度を維持することで、カーボンナノチューブを成長させる段階である。
【0042】
ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物が担持されたセルロース電極を図3の加熱炉(Furnace)内に位置する石英管の中央に設置し、内部の圧力は6〜10Torrに減圧した状態で30分以上維持することで、石英管内部の不純物を除去する。次に、常温で50〜300sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、以下、「sccm」という)の窒素を1時間以上流して内部を非活性状態にする。窒素の流量が50sccm以下とあまりにも少なければ、石英管内の流れが不均一となる恐れがあり、300sccm以上の場合には反応が起こるための滞留時間が得られなくなる。
【0043】
次に、酸化物状態であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属の還元のために、30〜150sccmの水素を更に流しながら、金属成分の還元温度(400〜500℃)まで上昇させた後、この温度で2時間維持して金属成分の完全な還元が起こるようにする。次いで、温度を10℃/minの速度で継続的に上昇させる。その後、石英管内部の温度がカーボンナノチューブの活発な成長が起こる600〜800℃に到達する時点で炭素源として用いられたメタン、ベンゼン、エタノール、キシレンなどを2〜300sccm流すと、セルロース電極の表面にカーボンナノチューブが成長し始める。用いられた炭素源のうち、分子内の炭素数が多いほど、流量を2〜3sccm近く減少させ、メタンのように炭素数が少ない場合には100sccm以上の高い流量を適用するのが有利である。この状態で10分〜6時間維持し、反応時間は用いられた炭素源と所望のカーボンナノチューブの成長形態(長さ、密度、太さなど)に応じて調節する。
【0044】
(E)段階は、セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブから触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属を除去し、白金の担持のためにカーボンナノチューブの表面を前処理する段階である。
【0045】
セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブから触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物成分を除去するために塩酸処理を施すが、カーボンナノチューブが成長した状態のセルロース電極を6〜10molの塩酸溶液に浸漬して6〜24時間維持した後、蒸留水で洗って100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させる。前記オーブンの温度が100℃以下である場合には、水分の除去が難しく、120℃以上の場合には、試料の変形をもたらす恐れがあり、短くは12時間から長くは24時間乾燥させることにより、水分を完全に除去できる。塩酸溶液の濃度が6mol以下である場合には、処理効果が低下し、10mol以上の場合には、セルロース電極表面に腐食を発生させる恐れがある。
【0046】
その後、カーボンナノチューブ表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置換させ、触媒の効果的な蒸着のための欠陥を作るために、混合酸溶液(14Mの窒酸と98%の硫酸とを1:1の体積比で混合)に試料を浸漬し、50〜70℃で還流{かんりゅう}させながら、5〜360分間処理する。混合酸溶液は、窒酸と硫酸とを1:1で混合した場合に最も処理効果に優れ、混合酸溶液の濃度が前記値より低ければ、処理効果が低下し、逆に、高い場合には表面を深刻に腐食させ得る。常温でも処理効果が現れるが、適用温度が50℃以上である場合の処理効果が優れ、70℃以上では混合酸の深刻な気化が起こり得る。処理時間は、カーボンナノチューブ及びセルロース電極の構造に応じて変化させ、軽い欠陥の形成は5分前後に調節する。360分以上の処理では、セルロース電極及びカーボンナノチューブの深刻な変形をもたらし得る。処理された試料は、蒸留水で複数回洗い、100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させて水分を除去する。
【0047】
(F)段階は、セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブに気相の白金前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持する段階である。(E)段階で製造されたカーボンナノチューブが成長したセルロース電極を石英管の中央に位置させ、前記(C)段階でのように、100℃〜120℃で圧力を6〜10Torrにし、30分間維持して石英管内の不純物を除去した後、そこに50〜300sccmの窒素を流しながら、1時間以上維持する。化学気相蒸着法を用いた白金触媒の担持のために石英管内部の温度を10℃/minの昇温速度で80℃〜300℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相の白金前駆体を流し始めることで、カーボンナノチューブの表面に白金粒子が担持されるようにする。
【0048】
セルロース電極上に成長したカーボンナノチューブの表面に白金粒子を担持するために、図3の左側に示すオーブン内に設置された気化器に白金前駆体(メチルトリメチルシクロペンタジエニル白金)を入れ、60〜80℃で加熱して前駆体が気化されるようにする。
【0049】
その後、前駆体の温度が一定の温度に到達すれば、石英管の内側に直接流していた窒素が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相の白金前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース電極まで伝達されるようにし、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉とを連結する連結管の温度を同一に維持し、白金前駆体が石英管内に流れ始める時点は、セルロース電極の温度が反応温度に到達する時点と一致するようにする。
【0050】
好ましくは、前駆体の温度が60〜80℃に到達すれば、石英管の内側に直接流していた10〜300sccmの窒素が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相の白金前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース電極まで伝達されるようにする。このとき、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉とを連結する連結管の温度も前駆体の完全な気化が起こる60〜80℃に維持し、白金前駆体が石英管内に流れ始める時点は、セルロース電極の温度が反応温度である80〜300℃に到達する時点と一致するようにし、この温度で一定時間(30分〜24時間)維持する。反応時間は、担持したい白金の担持量に応じて調節し、担持量を最大にしたい場合には24時間以上維持させることもできる。
【0051】
本発明の結果としてのセルロース繊維を用い、そこにカーボンナノチューブを直接成長させた後、白金ナノ触媒を担持した電極は、従来の含浸法によって白金を担持し、ペースト法によって炭素触媒粉末を塗布した炭素電極と比較するとき、電極の製造コストが顕著に減少した。また、セルロース電極の優れた気孔度と表面積によって電極そのものの反応面積が大幅に増加し、化学気相蒸着法によるナノ白金粒子の担持により、少量の白金前駆体を用いるだけでも優れた性能の電極が製作可能になり、燃料電池電極の性能も大きく向上した。従って、本発明に係る製造方法は、多様な触媒製造工程や2次電池電極などの製造過程にも応用が容易である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明する。本発明の構成が下記の実施例により限定されるものではないということは自明である。
【0053】
<実施例1>
(A)へネケ麻(龍舌蘭)繊維を直径数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で2〜10mmの長さに切断した。用いる繊維の断面直径が数μm前後に細いほど、燃料電池の電極反応に有利であるが、本発明では数十〜数百μmの厚さに分離した。セルロース繊維の直径を更に微細に分離する場合、電極の性能向上が更に有利になる。切断したセルロース繊維試料にフェノールレジンをメタノール溶媒で希釈(フェノールレジン:メタノールの割合を1:3〜1:5に希釈する)してセルロース繊維の表面に均一にスプレーした後、60℃で乾燥させてレジン中の溶媒部分を70%程度揮発させた後、板状に圧着及び成形する過程を経てセルロース板を製作した。圧着されたセルロース板は120℃が維持されるオーブンで10時間乾燥させて硬化させた。
【0054】
(B)(A)過程により製造されたセルロース板を水素:窒素=1:1の雰囲気で700℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、次いで700℃で2時間維持することで炭化した状態のセルロース電極を製造した。その後、セルロース電極を0.1molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vで掃引速度を50mV/sにし、60サイクル処理した。
【0055】
(C)硫酸処理後に乾燥したセルロース電極は、ナイトレート又はアセテート系のニッケルを前駆体として用いた0.1mol濃度の水溶液に浸漬した後、超音波を加える段階を3回繰り返して金属粒子をセルロース電極の表面に均等に分散させた。
【0056】
(D)ニッケル粒子が担持されたセルロース電極を図3に示す装置において加熱炉内に位置する石英管の中央に設置し、内部の圧力は10Torrに減圧した状態で30分以上維持して石英管内部の不純物を除去した。次に、常温で100sccmの窒素を1時間以上流して内部を非活性状態にした。
【0057】
次いで、酸化物状態であるニッケル金属の還元のために、100sccmの水素を更に流しながら、金属成分の還元温度である500℃まで上昇させた後、この温度で2時間維持して金属成分の完全な還元が起こるようにした。次いで、温度を10℃/minの速度で継続的に上昇させ、700℃に到達する時点で2sccmのアセチレンを流してセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させた。
【0058】
(E)セルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブから触媒として用いられたニッケル金属成分を除去するために、セルロース電極を6molの塩酸溶液に浸漬し、24時間維持した後、蒸留水で洗い、110℃のオーブンで12時間乾燥させた。
【0059】
その後、14Mの窒酸と98%の硫酸とを1:1の体積比で混合した混合酸溶液に飼料を浸漬し、50〜70℃で還流{かんりゅう}させながら、5分間処理した。
【0060】
(F)(A)〜(E)過程を経てカーボンナノチューブが成長したセルロース電極を石英管の中央に位置させ、前記(C)段階でのように、110℃で圧力を10Torrにし、30分間維持して石英管内の不純物を除去した後、そこに100sccmの窒素を流しながら、1時間以上維持した。化学気相蒸着法を用いた白金触媒の担持のために石英管内部の温度を5℃/minの昇温速度で140℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相の白金前駆体を流し始めることで、カーボンナノチューブの表面に白金粒子が担持されるようにした。このとき、適用した反応温度は、前述した特許文献1が白金ナノ触媒の化学気相蒸着に最も有利な条件である。
【0061】
図3の左側に示すオーブン内に設置された気化器に白金前駆体(メチルトリメチルシクロペンタジエニル白金)を入れ、60℃で加熱して前駆体が気化されるようにした。前駆体の温度が60℃に到達すれば、石英管の内側に直接流していた100sccmの窒素が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相の白金前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース電極まで伝達されるようにした。このとき、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉とを連結する連結管の温度も前駆体の完全な気化が起こる60℃に維持し、白金前駆体が石英管内に流れ始める時点は、セルロース電極の温度が反応温度である140℃に到達する時点と一致するようにし、この温度で2時間維持させた。
【0062】
<実施例2>
(A)実施例1におけるA段階と同様の方法で処理した。
【0063】
(B)実施例1におけるB段階と同様の方法で処理した。
【0064】
(C)標準電極として飽和カロメル電極、対電極として白金電極、作業電極としてはセルロース電極を用い、このとき、セルロース電極は石英管内部の均一温度区間内に入ることができるように、横と縦の長さがそれぞれ4cm以内の範囲であるセルロース電極を連結して三電極を設置した。前記電極を0.1molのニッケル水溶液に浸漬し、電圧は−2.5V〜2.5Vの間の範囲で変化させながら、50mV/secの掃引速度で60サイクル繰り返した。その後、ニッケル粒子が担持されたセルロース電極を溶液から取り出して110℃のオーブンで12時間乾燥させてセルロース電極の表面に金属粒子を担持させた。
【0065】
(D)実施例1におけるD段階と同様の方法で処理した。
【0066】
(E)実施例1におけるE段階と同様の方法で処理した。
【0067】
(F)実施例1におけるF段階と同様の方法で処理した。
【0068】
(A)〜(F)方法によって本発明に係る白金触媒が担持された燃料電池用セルロース電極を製造した。
【0069】
<実施例3>
(A)へネケ麻繊維を直径が数十〜数百μmとなるように分離した後、織物の形態に製織して製作した後、2枚を重ねてフェノールレジンを用いて圧着した。
【0070】
(B)実施例1におけるB段階と同様の方法で処理した。
【0071】
(C)実施例1におけるC段階と同様の方法で処理した。
【0072】
(D)実施例1におけるD段階と同様の方法で処理した。
【0073】
(E)実施例1におけるE段階と同様の方法で処理した。
【0074】
(F)実施例1におけるF段階と同様の方法で処理した。
【0075】
(A)〜(F)の方法によって本発明に係る白金触媒が担持された燃料電池用セルロース電極を製造した。
【0076】
実施例1の(A)段階によって製造されたセルロース板を走査電子顕微鏡で分析した結果写真を図4に示し、実施例3の(A)段階で製造されたセルロース板を走査電子顕微鏡で分析した写真を図5に示す。図4及び図5に示すセルロース電極の厚さは手作業の特性上、セルロース板の厚さが1mm前後であり、常用的には主に200〜500μm前後の製品に製造して用いることができる。
【0077】
実施例1の(A)〜(D)段階を通じて製造したセルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブを走査電子顕微鏡を用いて分析し、その結果を図6及び図7に示す。図6は、(D)段階によって製造されて得られたセルロース電極の表面を走査電子顕微鏡で分析したものであり、図7は、(D)段階によって製造されて得られたセルロース電極の断面を分析したものである。実施例1の(A)〜(F)過程を通じて最終的に製造された白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極で白金ナノ触媒の形状を透過電子顕微鏡を用いて分析し、(F)段階によって製造されたセルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブの表面に白金ナノ触媒を担持させた後の試料を分析した透過電子顕微鏡写真の結果を図8に示す。高分散された白金ナノ触媒を確認することができ、その大きさは1nm前後であって、この技術分野において世界で最も優れた水準であることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図2】実施形態の(A)段階によってセルロース繊維を切断して板状に圧着することで、セルロース電極を製造する過程を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係るセルロース電極の製造時に用いられる装置の例示図である。
【図4】実施例1の(A)段階によってセルロース繊維を切断した後に製造したセルロース板の走査電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例3の(A)段階によってセルロース繊維を製織して織物の形態に製造したセルロース板の走査電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例1の(D)段階によって製造されて得られたセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させた後、表面を分析した走査電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1の(D)段階によって製造されたセルロース電極の表面にカーボンナノチューブを成長させた後、断面を分析した走査電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例1の(F)段階によって製造されたセルロース電極の表面に成長したカーボンナノチューブの表面に白金ナノ触媒を担持させた後の試料を分析した透過電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を分離した後、板状のセルロース板を製造する第1段階と、
製造された前記板状のセルロース板に、カーボンナノチューブを成長させる第2段階と、
カーボンナノチューブが成長した前記板状のセルロース板に、白金ナノ触媒を担持する第3段階と、を含む、
ことを特徴とする、白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項2】
前記板状のセルロース板を製造する第1段階は、
前記セルロース繊維をマイクロメーター単位の繊維に分離し、分離された前記繊維を所定の長さに切断し、接着して板状に製造する段階、又は、
前記セルロース繊維を直接製織して製造する段階、のうちのいずれかを含み、
さらに、前記セルロース板を熱処理して電極として用いるための前処理段階、を含んでなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ、及び、サイザル麻のうち少なくともいずれか一つを含む植物の由来である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブを成長させる第2段階は、
前記板状のセルロース板の表面にカーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階と、
前記カーボンナノチューブ成長用触媒金属が担持された板状のセルロース板の表面に炭素源を供給して、カーボンナノチューブを成長させる段階と、を含み、
前記カーボンナノチューブが成長した板状のセルロース板に、白金ナノ触媒を担持する第3段階は、
前記板状のセルロース板の表面に成長したカーボンナノチューブから、カーボンナノチューブ成長用触媒金属成分を除去する、白金ナノ触媒を担持するための前処理段階と、
前記板状のセルロース板の表面に成長したカーボンナノチューブの表面に、化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持する段階と、を含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ成長用触媒金属は、ニッケル、コバルト、及び、鉄のうち少なくともいずれか一つを前駆体として用いた水溶液を使用する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項6】
前記白金ナノ触媒を担持するための前処理段階は、塩酸溶液で処理した後、水洗及び乾燥を行い、窒酸と硫酸との混合酸溶液で50〜70℃で5〜360分間処理する、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項7】
セルロース繊維をマイクロメーター単位の繊維に分離し、所定の長さに切断して接着及び乾燥させた後、板状に成形してセルロース板を製造する段階と、
前記セルロース板を熱処理により燃料電池用炭素電極として製造する段階と、
前記熱処理が施されたセルロース板にカーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持した後、一定温度で炭素源を供給してカーボンナノチューブを直接成長させる段階と、
前記カーボンナノチューブが成長したセルロース板を酸で前処理した後、化学気相蒸着法で白金ナノ触媒を担持する段階と、を含んでなる、
ことを特徴とする、白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極の製造方法。
【請求項8】
セルロース板と、
前記セルロース板上に直接成長したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブの表面に担持された白金ナノ粒子と、を有する、
ことを特徴とする、白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極。
【請求項9】
前記セルロース板は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ、及び、サイザル麻のうち少なくともいずれか一つを含む植物の由来のセルロース繊維からなる、
ことを特徴とする、請求項8に記載の白金ナノ触媒が担持されたセルロース電極。
【請求項10】
燃料電池用電極の製造方法であって、
セルロース繊維をマイクロメーター単位に分離する段階と、
前記分離されたセルロース繊維を所定の単位に切断する段階と、
接着剤を希釈して、前記切断されたセルロース繊維に塗布する段階と、
前記接着剤が塗布されたセルロース繊維を、乾燥、圧着して板状に成形する段階と、を含んでなる、
ことを特徴とする、燃料電池用セルロース電極の製造方法。
【請求項11】
前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ、及び、サイザル麻のうち少なくともいずれか一つを含む植物由来である、
ことを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用セルロース電極の製造方法。
【請求項12】
前記分離されたセルロース繊維は、2〜10mmの長さに切断し、
前記接着剤としてフェノールレジンを用い、
前記接着剤が塗布されたセルロース繊維の乾燥は、50〜90℃のオーブンで行い、
前記接着剤が塗布されたセルロース繊維を、乾燥、圧着して板状に成形した後、100〜150℃で、2〜12時間硬化させた後、
さらに、500〜1500℃で、30分〜2時間、熱処理して燃料電池用炭素電極として製造する段階、を含む、
ことを特徴とする、請求項10又は11に記載の燃料電池用セルロース電極の製造方法。
【請求項13】
燃料電池の電極材料用のセルロース繊維。
【請求項14】
セルロース繊維が、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ、及び、サイザル麻のうち少なくともいずれか一つを含む植物の由来である、
ことを特徴とする、請求項13に記載のセルロース繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−67674(P2009−67674A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232383(P2008−232383)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(507403551)韓国エネルギー技術研究院 (5)
【Fターム(参考)】