説明

白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤

【課題】シスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤が惹起する腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性の軽減剤を提供する。
【解決手段】緑茶微粉末を有効成分として含む白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤に関するものであり、より具体的には、緑茶微粉末を有効成分として含む上記毒性軽減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチン(cis-Diamminedichloroplatinum、CDDP)は、1969年にRosenbergらにより、大腸菌(E. coli)の細胞増殖抑制物質として偶然発見された白金(Pt)錯体である。その後、アメリカにおいて臨床試験がなされ、1979年にはFDAにより抗がん剤としての認可を得ている。本薬剤は睾丸腫瘍、卵巣がん、膀胱がん、子宮がんを含む種々の固形がんに対して幅広い抗腫瘍効果を示す抗がん剤であり、現在我が国をはじめ世界中で汎用されている。白金含有抗腫瘍剤(白金製剤とも呼ばれる)として、シスプラチンのほか、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンなどが開発されている。
【0003】
しかしながら、シスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤は、腎毒性、嘔吐、悪心などの強い副作用を発症するという重大な欠点を有しており、このため連続投与が制限されている。現在、例えばシスプラチンの毒性に対して大量の補液や利尿剤の投与、あるいはセロトニンアンタゴニストの投与などが行なわれているが、特に亜急性毒性に対しては未だ満足のいく結果は得られておらず、その対策が重要な問題となっている。
【0004】
こうした状況にあって、近年、腎毒性を中心に白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤に関する多くの研究がなされている。その結果、メタロチオネイン誘導作用を有する亜セレン酸(Br. J. Cancer, 58, pp.38-41, 1988; Cancer Res., 49, pp.3020-3023, 1989)、リソゾーム膜安定化作用を有するホスホマイシ(Gan To Kagaku Ryoho, 11, pp.2400-2407, 1984)、抗酸化作用を有するo-(β-hydroxyethyl)-rutoside(Lab. Invest., 55, pp.557-563, 1986)、中和作用を有するジエチルジチオカルバメート(Res. Commun. Chem. Pathol. Pharmacol., 40, pp.55-66, 1983)、腎血流量減少作用をもつアンジオテンシン(Cancer Chemother. Pharmaco., 14, pp.262-264, 1985)、エンテロコッカス属に属する微生物の菌体又はその処理物(特許第3040699号) などが見いだされているが、いずれも臨床応用には至っていない。
【0005】
一方、緑茶を平均粒径10μm以下の微粉末に粉砕して得られる粉砕物が皮膚免疫能低下抑制剤として有用であることが知られており(特開2005-97145号公報)、緑茶ポリフェノールや緑茶抽出物がメトトレキセートなどの抗腫瘍剤の作用を増強することが知られている(Advances in Experimental Medicine and Biology, 370, pp.779-782, 1995; Chinese Medical Sciences Journal, 6, pp.1-5, 1991)。また、茶ポリフェノール類や茶カテキン類などが抗腫瘍作用を有することも知られている(特開平3-297352号公報、特開平6-122631号公報、特開平10-36260号公報)。しかしながら、これらの刊行物には緑茶粉砕物、緑茶抽出物、又は緑茶ポリフェノール類などが抗腫瘍剤の毒性を軽減することは記載されておらず、特に白金含有抗腫瘍剤の腎毒性や肝毒性などを軽減できることについて示唆ないし教示は全くない。
【非特許文献1】Advances in Experimental Medicine and Biology, 370, pp.779-782, 1995
【非特許文献2】Chinese Medical Sciences Journal, 6, pp.1-5, 1991
【特許文献1】特開平3-297352号公報
【特許文献2】特開平6-122631号公報
【特許文献3】特開平10-36260号公報
【特許文献4】特許第3040699号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、シスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤を提供することにある。特に、シスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤が惹起する腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性の軽減剤を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、緑茶微粉末がシスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減に有効であり、特に腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性の軽減に顕著な有効性を発揮でき、抗腫瘍効果に影響を及ぼさないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明により、緑茶微粉末を有効成分として含む白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、毒性が腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性である上記の毒性軽減剤、白金含有抗腫瘍剤がシスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、又はオキサリプラチンである上記の毒性軽減剤、及び緑茶微粉末が下記のいずれかの方法:(1)荒茶を粉砕して微粉末とし、前記微粉末に水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;(2)荒茶を粉砕して1ミクロン以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;又は(3)荒茶を粉砕して1μm以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で130分〜180分間、遠赤外線によって加熱する工程を含む方法により製造された緑茶微粉末である上記の毒性軽減剤が提供される。
【0009】
別の観点からは、白金含有抗腫瘍剤の毒性を軽減する方法であって、白金含有抗腫瘍剤の投与と同時に、別々に、又は時間を変えて緑茶微粉末を患者に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毒性軽減剤は、シスプラチンなどの白金含有抗腫瘍剤の毒性を軽減することができ、特に腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性を顕著に軽減できる。また、本発明の毒性軽減剤は白金含有抗腫瘍剤の抗腫瘍作用を減弱することがないので、白金含有抗腫瘍剤の毒性を軽減することにより治療域を拡大することができ、白金含有抗腫瘍剤の臨床上の有用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の毒性軽減剤は、緑茶微粉末を有効成分として含み、白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減に有効である。
白金含有抗腫瘍剤は抗腫瘍作用を有する白金錯体であれば特に限定されないが、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、又はオキサリプラチンなどを例示することができる。これらのうち、シスプラチンが好ましいが、本発明の毒性軽減剤の提供対象はシスプラチンに限定されることはない。
【0012】
緑茶微粉末としては、例えば、粒径が10μm以下の緑茶微粉末を用いることができるが、好ましくは粒径が3μm以下、特に好ましくは1μm以下の緑茶微粉末を用いることができる。好ましくは、茶の生葉を蒸してから粗揉、揉捻、中捻、及び精捻工程を経て乾燥させた荒茶を粉砕した微粉末を用いることができる。
【0013】
荒茶を粉砕した微粉末のうち、特に好ましいのは、下記のいずれかの方法:(1)荒茶を粉砕して微粉末とし、前記微粉末に水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;(2)荒茶を粉砕して1ミクロン以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;又は(3)荒茶を粉砕して1μm以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で130分〜180分間、遠赤外線によって加熱する工程を含む方法により製造された緑茶微粉末である。この緑茶微粉末の製造方法については、特許第3126963号の請求項1〜3及び同特許公報の発明の詳細な説明の欄に具体的かつ詳細に説明されているので、当業者は上記の好ましい態様の緑茶微粉末を容易に製造することが可能である。また、上記特許の請求項3の工程により製造された緑茶微粉末として市販されている「フォースSOD」(フタバ興産株式会社製造及び販売)などを用いてもよい。
【0014】
緑茶微粉末は、例えば錠剤やカプセル剤などの経口投与用固形製剤の形態で投与することもできるが、微粉末の形態の粉体を直接投与することが好ましい。白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減作用は、本明細書の実施例に具体的に記載された方法により当業者が容易に確認することが可能であり、毒性軽減のための投与量も実施例に示されたデータを基にして適宜選択することが可能である。本発明の毒性軽減剤の投与量は、一般的には、一日あたり緑茶微粉末質量として0.1g〜50g程度、好ましくは1g〜10g程度であり、毒性の種類は発現の程度などに応じて適宜増減することが可能である。
【0015】
白金含有抗腫瘍剤は種々の毒性を有することが知られている。例えば、シスプラチンでは、腎障害(急性腎不全や腎機能低下、血尿、尿タンパク、乏尿、無尿など)、肝障害(劇症肝炎、代謝機能低下、黄疸など)、骨髄機能抑制(汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少など)、聴器障害(聴力低下、難聴、耳鳴りなど)、消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔など)、精神神経症状(末梢神経障害、言語障害、津痛、意識障害、痙攣など)、循環器症状(動悸、頻脈など)、全身症状(体重減少、全身倦怠感、眩暈、発熱、疼痛、全身浮腫、血圧低下など)など多様な毒性の発現が知られている。本発明の毒性軽減剤は、これらの毒性のうち1又は2以上の毒性の発現を抑制し、発現した毒性を軽減する作用を有している。「毒性軽減」の用語は、毒性発現の抑制及び発現した毒性の軽減を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味においてもこの用語を限定的に解釈してはならない。これらの毒性のうち、特に腎毒性(BUNの上昇など)、骨髄毒性(血小板減少、白血球減少、脾臓重量低下など)、体重減少、肝毒性(肝臓重量低下)、嘔吐などは本発明の毒性軽減剤の好適な適用対象であり、腎毒性、骨髄毒性、又は肝毒性の軽減ないし抑制、体重減少の抑制、催吐の抑制などに用いることができるが、適用対象はこれらに限定されることはない。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。以下の実施例において緑茶微粉末として「フォースSOD」(フタバ興産株式会社製造及び販売)を用い、白金含有抗腫瘍剤としてシスプラチン(以下、「CDDP」と略す)を用いた。
例1
(1)材料及び方法
(a)実験スケジュール
5週齢のddY系雄性マウスを購入し、1週間予備飼育を行い、体重を測定後、体重により1群8匹として、表1に示すように群分けした。
【表1】

【0017】
群分けを行った日を投与1日目とし、その後は図1に示す投与スケジュールに従い実験を行った。すなわち、投与1日目より連日、3群から6群にはフォースSOD含有の粉末餌を自由摂取させ飼育した(1群及び2群には餌のみを摂取させた)。投与32日目に2群から6群のマウスの皮下にがん細胞(S180)を移植し固形がんを形成させた(1群には培地を皮下注射した)。投与34日目から39日目及び投与41日目から43日目まで、2群から6群のマウスにCDDP 3.0 mg/kgを1日1回腹腔内投与した(1群には生理食塩水のみを投与した)。投与91日目まで3群から6群のマウスにはフォースSODを与え、その間、1週間に1度、体重を測定した(1群及び2群には餌のみを摂取させた)。投与92日目にジエチルエーテル麻酔下で腹部大静脈より採血し、BUN、血算値を測定した。また、腫瘍、脾臓及び肝臓を摘出し、重量を測定した。なお、解剖日前日は14時間絶食とした。
【0018】
(b)試料の投与量
フォースSODの1日摂取推奨量は2.4 gである(ヒトの体重を60 kgとすると、40 mg/kg/day)。本実験では、マウスにその1倍量(40 mg/kg)、5倍量(200 mg/kg)、20倍量(800 mg/kg)、及び60倍量(2,400 mg/kg)を投与した。マウスの体重及び摂餌量から1日あたりフォースSODが40 mg/kg、200 mg/kg、800 mg/kg及び2,400 mg/kgとなるように、それぞれフォースSODを0.034%、0.17%、0.67%及び2.0%餌に混和し、自由摂取させた。
【0019】
CDDPをヒト患者に投与する場合の投与量は50〜100 mg/m2である。体重60 kgのヒトの体表面積を1.5 m2とすると、100 mg/m2投与する場合は150 mgのCDDPを必要とし、1 kgあたり3.0 mgの投与量に相当する。本実験では100 mg/m2の投与量を適用し、3.0 mg/kgのCDDPをマウスに1日1回腹腔内投与した。具体的には、3.0 mgのCDDPを10 mLの生理食塩水に溶解した溶液(0.3 mg/mL)を各マウスに体重相当量投与した(約0.4 mL/マウス/日)。
【0020】
(c)担癌マウスの作成
(c−1)Sarcoma 180細胞の培養方法
以下の方法で予め培養したSarcoma 180を実験に供した。
培地(MEMアール培地、FBS 10%を含む)を37℃の水浴で加温した。
液体窒素中のSarcoma 180(1.0×106 cells/mL、大日本製薬)を37℃の水浴で溶解した。
溶解した細胞を氷冷した培地5 mLが入っている遠沈管に懸濁した。
100×gで1分間遠心分離した。
細胞沈査を確認し、ピペットマンで上清を吸引除去した。
37℃に加温した培地4 mLを遠沈管に加え、ピペッティングを行い、2枚の10 cmシャーレに2 mLずつ播種した。さらに培地6 mLで遠沈管を洗浄し、2枚の10 cmシャーレに3 mLずつ加えた。その後、2枚のシャーレに培地を5 mLずつ入れ、シャーレを緩やかに振盪し、細胞を均等に分散させ、37℃、5%CO2インキュベーター内で6日間培養した(50,000 cells/シャーレ)。その間、3日に1回培地の交換を行った。
【0021】
6日後、シャーレ内の培地をピペットマンで、静かに吸引除去した。
予め37℃に加温したPBS 4 mLをシャーレに静かに加え、細胞層を洗浄した。
PBSを静かに吸引除去後、予め37℃に加温した0.25%トリプシン/EDTA溶液4 mLをシャーレに静かに加えた。
37℃のインキュベーター内に1〜2分間入れ、細胞を剥離した。
顕微鏡で細胞の状態を観察し、細胞が剥離した後、氷冷した培地4 mLを加え、ピペッティングを行ないトリプシンの作用を停止した。
細胞浮遊液を15 mLの遠沈管に移した後、さらにシャーレに氷冷した培地を3 mL加え、ピペッティング後、同じ15 mLの遠沈管に移した。
100×gで1分間遠心分離した。
【0022】
細胞沈査を確認して、ピペットマンで上清を吸引除去した。
37℃の培地5 mLを遠沈管に加え、ピペッティングを行い、175 cm2のフラスコに全量を播種した。さらに培地45 mLをフラスコに加え、緩やかに振盪後、CO2インキュベーター内で6日間培養した(4,000 cells/mL)。その間、3日に1回培地の交換を行った。
6日後、フラスコ内の培地を除去後、細胞をPBSで洗浄し、37℃に加温した0.25%トリプシン/EDTA溶液で細胞を剥離し、氷冷した培地で作用を停止した。その後、50 mLの遠沈管に移し、100×gで1分間遠心分離した。
上清を吸引除去後、10 mLの培地を添加し、ピペッティングを行ない、計数盤を用いて細胞数をカウントした。
細胞数が1.0×106 cells/0.2 mLとなるように培地を添加し、ピペッティングを行って移植用がん細胞とした。
【0023】
(c−2)担癌マウスの作製方法
フォースSOD投与32日目にsarcoma 180をマウスの鼠径部皮下に移植した。
具体的な移植方法は以下の通りである。1 mLのシリンジ(TERUMO)に26G針を装着し、培地に懸濁させたがん細胞を吸引し、マウス1匹当り0.2 mL(1.0×106 cells)を移植した。移植に際しては、注射器をその都度、十分に転倒混合し、細胞が均一になるように注意した。なお、1群には培地のみを0.2 mL皮下注射した。
(d)解剖及び採血
マウスをジエチルエ−テルにより麻酔し、腹部を切開後、腹部大静脈から1 mLシリンジ(22G針)で採血を行った(抗凝固剤として1.5%EDTA2Na溶液を使用した)。採取した血液をピペットマンで0.2 mLとり、0.5 mLのエッペンドルフチュ−ブに移し、1,000×g、4℃で15分間遠心分離を行った。遠心分離後の上清(血清)を尿素窒素(BUN)測定用サンプルとし、測定まで−80℃に保存した。残りの全血は白血球数、赤血球数及び血小板数の測定に用いた。なお、白血球数、赤血球数及び血小板数の測定は自動血球計算機による電気抵抗法で行った。鼠径部の腫瘍、脾臓及び肝臓を摘出し、PBSで洗った後、重量を測定した。
(e)BUNの測定
BUNの測定は、尿素窒素 B−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて、以下の手順で行なった。
−80℃で保存しておいた血清を氷中で融解し、1,000×g、4℃で15分間遠心分離を行った。
ウレアーゼ溶解用試薬6 mLでウレアーゼを溶解した(ウレアーゼ溶液)。
緩衝液をメスシリンダーで120 mL計量し、ビ−カ−に移し、ウレアーゼ溶液(上記2)6 mLを添加し、スターラーで混合した(発色試薬A)。
融解した血清10 μLと生理食塩水10 μLをピペットマンでとり、エッペンドルフチュ−ブ内でピペッティングを行ない混合した。
試験管に発色試薬Aを1 mL加えた。
各試験管に希釈したサンプル(上記4)及び標準液(尿素窒素 50 mg/dL)を10 μL添加した。
ミキサーで混合し、37℃で15分間静置反応させた。
各試験管に発色試薬B(次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム)を1 mL添加した。
ミキサーで混合し、37℃で10分間静置反応させた。
96 well plateに200 μLずつ移し、プレートリ−ダーで570 nmの吸光度を測定し、BUN濃度を下記の式から算出した。
BUN(mg/dL)=(サンプルの吸光度)/(50 mg/dLの標準品の吸光度)×50
【0024】
(2)結果
(a)副作用軽減効果
(a-1)生存率
各群におけるマウスの生存率の経時的変化を図2に示す。フォースSOD投与開始日を0日目とし、その開始日のマウスの生存率を100%として実験終了日(92日目)までの各群のマウスの生存率の経時変化を示した。
CDDPのみを投与したマウス(2群)は、CDDP投与開始2週間後からマウスは死亡しはじめ、13週目にはすべてのマウスが死亡した。これらのマウスには、腫瘍はまったく認められず、死因は腫瘍によるものではなくCDDPの毒性によるものであると思われた。
一方、フォースSOD 0.67%投与群(5群)では、CDDP投与開始3週間目に1匹死亡したが、その後7匹のマウスは実験終了時まで生存していた。また、フォースSOD 2.0%投与群(6群)では、CDDP投与開始4週間目に1匹死亡、5週間目に1匹死亡、8週間目に1匹死亡したが、その後5匹のマウスは実験終了時まで生存していた。さらに、フォースSOD 0.034%投与群(3群)では、実験終了時において3匹生存しており、フォースSOD 0.17%投与群(4群)では2匹生存していた。
【0025】
(a-2)腎毒性軽減効果
実験終了時に生存していたマウスの血清BUN濃度を指標に、CDDPの腎毒性に対するフォースSODの軽減効果を評価した。マウスの血清BUN濃度(mg/mL)を図3に示す。各グラフの値は平均値±標準偏差で示した。**は非がんコントロールに対する有意差(p<0.01)を示す。である。なお、2群のマウスは全て死亡したので、2群に示した値は実測値ではなく、類似条件のもとに実施した実験の文献記載値である(Ueda H. et al., Biol. Pharm. Bull., 21, pp.121-128, 1998)。上記文献により、本実験系においてCDDPのみを投与すると腎毒性が誘発され、BUN濃度は上昇し、非がんコントロール群(1群)の約3倍程度の100 mg/dLの値を示すことが知られている。フォースSOD投与により生存していたマウスのBUN濃度は、0.034%投与群(3群)及び0.67%投与群(5群)において、わずかな上昇は認められたものの、ほぼ非がんコントロール(1群)の濃度まで低下していた。このことより、生存していたマウスでは腎毒性の発現がほとんどなかったものと考えられる。
【0026】
(a-3)骨髄毒性軽減効果
1)血小板数
マウスの血小板数を図4に示す。本実験系では、CDDP投与により強い骨髄毒性が認められ、血小板数は著しく低下する(2群推定値参照)。各グラフの値は、平均値±標準偏差で示した。2群のマウスは全て死亡したので、2群に示した値は実測値ではなく、図3と同様に文献記載値である。フォースSOD投与群では、いずれの投与量においても血小板減少は認められず、CDDPによる骨髄毒性が発現していないものと考えられる。
【0027】
2)白血球数
マウスの白血球数を図5に示す。各グラフの値は、平均値±標準偏差で示した。2群は図3と同様に文献記載値である。本実験系では、CDDP投与により強い骨髄毒性が認められ、白血球数は著しく低下する(2群推定値参照)。フォースSOD投与群では、いずれの投与量においても白血球減少は認められず、CDDPによる骨髄毒性はほとんど発現していないものと考えられる。
【0028】
3)赤血球数
CDDP投与による赤血球数の減少は認められず、フォースSOD投与による赤血球数の変動も認められなかった。
4)脾臓重量
マウスの体重あたりの脾臓重量を図6に示す。各グラフの値は、平均値±標準偏差で示した。*は非がんコントロールに対する有意差(p<0.05)である。2群に示した値は図3と同様に文献記載の参考値である。本実験系では、CDDP投与により強い骨髄毒性が認められ、脾臓重量は著しく低下する(2群推定値参照)。フォースSOD投与群では、コントロール群(1群)に比べ、0.67%投与群(5群)においてわずかな上昇が認められたものの、おおむね脾臓重量の低下は認められず、CDDPによる骨髄毒性は軽減しているものと考えられる。
【0029】
(a-4)その他の毒性に対する軽減効果
1)体重増加率
解剖日前日のマウスの体重を非がんコントロール群(1群)の平均体重を100%として、図7に示す。グラフの値は平均値±標準偏差で示し、非がんコントロール群の体重を100%とした。**(p<0.01)及び***(p<0.001)は非がんコントロールに対する有意差である。2群に示した値は図3と同様に参考値である。本実験系ではCDDP投与により体重が60%減少する(2群推定値参照)。フォースSOD投与群では、非がんコントロール群(1群)までは回復しなかったものの、いずれの投与量においても体重は増加傾向を示した。
【0030】
2)肝臓重量
マウスの体重あたりの肝臓重量を図8に示す。各グラフの値は平均値±標準偏差で示した。2群に示した値は実測値ではなく図3と同様に参考値である。本実験系では、CDDP投与により肝臓重量は著しく低下する(2群推定値参照)。フォースSOD投与群では、いずれの投与量においても肝臓重量の低下は認められず、CDDPによる肝毒性は軽減しているものと考えられる。
(b)抗腫瘍効果に及ぼす影響
S-180細胞を移植した後、CDDPを投与しなかったマウスにおいては肥大化した固形腫瘍が認められた。これに対して、CDDPのみを投与したマウス(2群)では、死亡時に剖検した結果、固形腫瘍は全く認められなかった。また、フォースSOD投与群(3、4、5、6群)では、死亡したマウスを含めて全てのマウスにおいて固形腫瘍は全く認められなかった。この結果は、フォースSODがCDDPの抗腫瘍効果を減弱させずに、毒性のみを選択的に軽減していることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】例1における投与スケジュールを示した図である。
【図2】例1におけるマウスの生存率の経時的変化を示した図である。
【図3】例1におけるマウスの血清BUN濃度を示した図である(mean±S.D.、n=0−8、**;p<0.01 vs 非がんコントロール)。
【図4】例1におけるマウスの血小板数を示した図である(mean±S.D.、n=0−8)。
【図5】例1におけるマウスの白血球数を示した図である(mean±S.D.、n=0−8)。
【図6】例1におけるマウスの体重あたりの脾臓重量を示した図である(mean±S.D.、n=0−8、*;p<0.05 vs 非がんコントロール)。
【図7】例1におけるマウスの解剖日前日の平均体重を示した図である(mean±S.D.、n=0−8、**;p<0.01 vs 非がんコントロール、***;p<0.001 vs 非がんコントロール)。
【図8】例1におけるマウスの体重あたりの肝臓重量を示した図である(mean±S.D.、n=0−8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶微粉末を有効成分として含む白金含有抗腫瘍剤の毒性軽減剤。
【請求項2】
毒性が腎毒性、骨髄毒性、及び肝毒性である請求項1に記載の毒性軽減剤。
【請求項3】
白金含有抗腫瘍剤がシスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、又はオキサリプラチンである請求項1又は2に記載の毒性軽減剤。
【請求項4】
緑茶微粉末が下記のいずれかの方法:(1)荒茶を粉砕して微粉末とし、前記微粉末に水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;(2)荒茶を粉砕して1ミクロン以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で遠赤外線によって加熱する工程を含む方法;又は(3)荒茶を粉砕して1μm以下の微粉末とし、前記微粉末の水分が6〜8%となるように水を噴霧して攪拌し、前記微粉末を、40℃〜65℃の温度で130分〜180分間、遠赤外線によって加熱する工程を含む方法により製造された緑茶微粉末である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の毒性軽減剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−96759(P2009−96759A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270205(P2007−270205)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(504414950)フタバ興産株式会社 (1)
【Fターム(参考)】