説明

白金族金属を有する電気触媒コーティング及びこれから製造された電極

本発明は、電気触媒コーティング及びこのコーティングを表面に有する電極に関し、ここで、コーティングは、金属酸化物混合物のコーティングであり、好ましくは白金族金属酸化物であって、低レベルの弁金属酸化物はあってもなくてもよい。電気触媒コーティングを、電解セル、特に水性クロル−アルカリ溶液の電気分解のためのセルのアノード成分として特に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性クロル−アルカリ溶液の電気分解において使用するための電解電極及び低減された量の白金族金属を有し弁金属はほとんどまたは全く無い表面のコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面の活性コーティングで本質的に構成される電極の寿命は、基板に施用する活性材料の量及び電流密度の両方の関数である。コーティングの量を低減するかまたは電流密度を増大させると、電極のより急速な破損をもたらす。一般に、電極の初期破損は、2つの主要なファクター、すなわち、活性コーティングの損失及び溶解、または、膜形成金属の場合、基板のパッシベーションに帰する。時々こうしたものは同時に起き、電極はその寿命の終りに若干の活性材料がコーティング中に残っていることを示すことがあるが、基板はパッシベーションされている。
【0003】
これまで、基板のコーティング及びパッシベーションにおける活性成分の損失の問題に対する一般的な解決は、より厚いコーティングの使用、すなわち、活性成分のより高い負荷だった。基板の上に幾つかの例えば10〜20以上の層の活性コーティングを施用することによって製造されたより厚いコーティングは、同じコーティング組成物を有する電極の寿命にとって有益であることが判明した。電極寿命の問題に対する解決が簡単であることは、より厚いコーティングを普及させ、これをほぼ万能の救済策にした。しかしながら、コーティング厚さの増大は、コーティングにおいて利用される増大した量の白金族金属が理由となるコストのかなりの増大、並びにより大きな数の施用した層が理由となる増大した人件費を意味した。
【0004】
こうしたコーティングの貴金属含量を節約するために多くの試みがなされ、これは通常、白金族金属酸化物を、適合する非貴金属酸化物の例えば二酸化スズ(例えば、米国特許第3,776,834号を参照されたい。)またはスズ及び酸化アンチモン(例えば、米国特許第3,875,043号を参照されたい。)で部分的に置き換えることによる。
【0005】
加えて、貴金属コーティングと組み合わせた弁金属酸化物の使用が試みられた。電解過程の例えば塩素製造において使用するためのこのようなアノードは、米国特許第4,070,504号において開示されている。電極は、金属酸化物混合物、好ましくはドーピング酸化物をドープした弁金属酸化物及び白金族金属酸化物のコーティングを有するチタンまたはタンタル金属基板を利用する。弁金属酸化物は、コーティング中に25モル%を超える量で存在する。
【0006】
電極寿命の問題も、様々な工業的に重要な電気化学的プロセスにおいて、例えば、低電流密度酸素発生プロセスにおいて、アノードとして使用される酸素発生電極の場合に重要である。こうしたプロセスにおいて、白金族金属酸化物コーティングを有する電極は、酸素発生アノードとして使用される。こうした白金族金属酸化物アノードは、こうしたプロセスによって課される比較的に困難な条件下で(例えば、攻撃的な電解質中で、電流密度最高2〜3kA/mまで)非常に申し分なく作動することが見い出された。しかしながら、こうした条件下で許容可能な性能を達成するために、こうした電極は比較的に高い白金族金属負荷(例えば、約12〜16g/mを超える)を有しなければならない。しかしながら、周知の酸素発生アノードを用いた様々な試験は、白金族金属酸化物を有する電極はこうした条件下で満足に作動するが、作動電流密度が5kA/m以上に増大した場合これは急速に破損することを示した。より高い負荷という簡易なアプローチは従ってより高いコストのみを意味し、より良好な運用寿命を意味しなかった。近年、高速めっき(電気亜鉛めっき)技術の急速な開発は問題を増幅した。
【0007】
米国特許第3,711,385号から、白金族金属酸化物の電気触媒コーティングは0.054マイクロメートルもの薄さにすることができる可能性があることは周知である。しかしながら、実際には、任意の許容可能な寿命を実現するためには幾分より厚いコーティングが必要であることが見い出された。従って、適切な塗料溶液の通常10〜20回の薄いコーティングを膜形成金属ベースに施用し、毎回加熱して、1平方メートルの突出した電極表面当り白金族金属酸化物の金属で約5〜20グラムを含む塗料の分解済みの成分から形成した電気触媒コーティングを与える。
【0008】
共析出済み酸化チタンまたは酸化スズ及び酸化タンタルまたは酸化ニオブの混合物を電極下層としての白金金属と共に使用し、酸化イリジウムまたはイリジウム/酸化ルテニウムでチタン基板をコーティングすることによって製造される酸素発生アノードは、米国特許第4,481,097号において開示されている。電極活性成分は、下層中に1.3g/mの白金金属及び上層中に3.0g/mの酸化イリジウムを含む。この文書によれば、電解質として150g/lのHSOを有する水溶液中、80℃、電流密度25kA/mで実行する加速寿命試験中に、電極は最大寿命80時間を有する。
【0009】
しかしながら、改良された寿命を有しかつこのことが電極材料の高いコストまたは高い生産費またはこうしたものの組合せが理由となる法外なコストによって相殺されることの無い、上述の使用のための電極を提供することが望ましいと思われる。
【発明の開示】
【0010】
現在、改良された寿命を提供し、同時に高い効率を維持する電極コーティングが見い出された。本コーティングはさらに、貴金属の低減された使用を可能にし、従ってより費用効果的である。電極は、塩化物から塩素への酸化が主なアノード反応である電気化学的電池において特に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電極ベースは任意の膜形成金属の例えばチタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン及びケイ素、並びにこうした金属のうちの1種以上を含む合金のシートとしてよく、コストの点でチタンが好ましい。“膜形成金属”とは、電解質中でアノードとして接続し、コーティング済みアノードがそれに続いて電解質内部で作動する場合、電解質による腐食から下にある金属を保護するパッシベーション酸化膜を迅速に形成する特性を有する金属または合金、すなわち、しばしば“弁金属”と呼ばれる金属及び合金、並びに弁金属(例えば、Ti−Ni、Ti−Co、Ti−Fe及びTi−Cu)を含むが同じ条件で非パッシベーションアノード表面酸化膜を形成する合金を意味する。チタンまたは他の膜形成金属のプレート、ロッド、管、ワイヤまたは編成ワイヤ及び発泡メッシュを電極ベースとして使用できる。伝導性コア表面を被覆したチタンまたは他の膜形成金属もまた使用することができる。また希薄な塗料溶液を有する多孔質焼結済みチタンを同じように表面処理することも可能である。
【0012】
大部分の用途の場合、ベースはエッチングまたはグリットブラスティング、またはこれらの組合せによって粗面化されようが、場合によってはベースは単に清浄化することができ、これは非常に平滑な電極表面を与える。他に、膜形成金属基板は、膜形成金属酸化物の予備施用した表面膜を有することができ、これは、活性コーティングの施用の最中にコーティング溶液(例えばHCl)中の試剤によって攻撃され、一体化型表面膜の一部分として再構成できる。
【0013】
本発明の電解過程は、塩素の製造のためのクロル−アルカリ産業において特に有用である。このような過程において使用される場合、本明細書において説明する電極は、事実上常にアノードとして使用されよう。従って、電極に言及する場合“アノード”という語を本明細書においてしばしば使用するが、これは単に便宜上のものであり、本発明を限定するものと解釈するべきではない。
【0014】
電極のための金属は、任意のコーティング可能な金属であると広く予測されている。電気触媒コーティングの特定の用途の場合、金属は例えばニッケルまたはマンガンであり得るが、最も多くの場合、チタン、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム及びニオブを含む弁金属である。その丈夫さ、耐食性及び利用可能性の点で特に興味深いのはチタンである。基板として適切な金属としては、通常入手可能な元素状金属自体の他に、金属合金及び金属間混合物、並びに1種以上の弁金属を含むようなセラミックス及びサーメットを含む。例えば、チタンは、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、または銅と共に合金生成してよい。具体的に、第5等級チタンは、最高6.75重量%までのアルミニウム及び最高4.5重量%までのバナジウムを含んでよく、第6等級チタンは、最高6重量%までのアルミニウム及び最高3重量%までのスズを含んでよく、第7等級チタンは、最高0.25重量%までのパラジウムを含んでよく、第10等級チタンは、10〜13重量%及び4.5〜7.5重量%のジルコニウムを含んでよい等である。
【0015】
元素状金属とは、最も狭義において、通常利用可能な状態にある金属、すなわち、少量の不純物を有する状態の金属を意味する。従って、特に興味深い金属、すなわちチタンの場合、他の成分が合金または合金プラス不純物であるような金属を含めて、様々な等級の金属が利用可能である。チタンの等級は、ASTM B 265−79において詳述されるチタンの標準規格において具体的に説明されている。特に興味深い金属なので、チタンはしばしば、電極ベースのための金属に言及する場合便宜上本明細書において言及しよう。
【0016】
選択された金属及び電極ベースの形態にかかわらず、コーティング組成物をこれに施用する前に、電極ベースは清浄化された表面であるのが好ましい。これは、機械的清浄化を含む清浄な金属表面を実現するために使用される任意の処理によって得てよい。通常の清浄化手順である脱脂、化学的若しくは電解、または他の化学洗浄操作もまた効果的に使用してよい。ベース製造がアニーリングを含む場合、金属は第1等級チタンであり、チタンは温度少なくとも約450℃で少なくとも約15分間アニーリングできるが、最もしばしばより高いアニーリング温度、例えば、600℃〜875℃が有利である。
【0017】
清浄な表面、または調整され清浄化された表面が得られたら、表面粗さを得るのが有利なことがある。これは、金属の粒間エッチング、溶射施用は粒子状弁金属若しくはセラミック酸化物粒子、または両方を有することができるプラズマ溶射施用、金属表面の尖鋭グリットブラスティング(sharp grit blasting)、所望により続いて埋込まれたグリットを除去する及び/または表面を清浄化するための表面処理を含む手段によって実現されよう。
【0018】
表面粗さ及び/または表面形態を発達させるために、エッチングは、十分に活性なエッチング溶液を使用して行われようし、これは可能な攻撃的な粒界攻撃を含む。典型的なエッチング溶液は酸溶液である。こうしたものは、塩酸、硫酸、過塩素酸、硝酸、シュウ酸、酒石酸、及びリン酸並びにこれらの混合物、例えば、王水によって提供することができる。利用してよい他のエッチング液は、水酸化カリウム/過酸化水素の溶液、または水酸化カリウムと硝酸カリウムとの融解物等のカセイエッチング液を含む。エッチングに続いて、エッチングされた金属表面を濯ぎ及び乾燥工程にさらすことができる。エッチングによる表面の適切な調整は米国特許第5,167,788号においてより十分に検討されており、この特許を本明細書において参考のために引用する。
【0019】
適切に粗面化された金属表面の場合のプラズマ溶射においては、材料は、粒子状形態の例えば溶融金属の小滴で施用されよう。このプラズマ溶射(金属を噴霧する)においては、金属を融解し、不活性ガスの例えばアルゴンまたは窒素(所望により少量の水素を含む)中でアークを用いて高温に加熱することによって発生したプラズマ流れ中で金属を噴霧する。本明細書において“プラズマ溶射”という用語は、プラズマ溶射が好ましいが、この用語は一般には、電磁流体溶射(magnetohydrodynamic spraying)、フレーム溶射、及びアーク溶射等の熱溶射を含むよう意味しており、従って、溶射は単に“融解溶射(melt spraying)”または“熱溶射”と呼ばれることがあることは理解できるはずである。
【0020】
用いる粒子状材料は、弁金属またはこれらの酸化物、例えば、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化ニオブとしてよい。また、チタネート、スピネル、磁鉄鉱、酸化スズ、酸化鉛、酸化マンガン及びペロブスカイトが融解溶射されると予測されている。また、例えばニオブまたはスズまたはインジウムのイオン形態のドーパントを含む様々な添加剤を、噴霧される酸化物にドープすることができると予測されている。
【0021】
また、このようなプラズマ溶射施用を基板金属表面のエッチングと組み合わせて使用してよいと予測されている。または電極ベースをまず本明細書において上文で検討したグリットブラスティングによって調整してよく、続いてエッチングはしてもしなくてもよい。
【0022】
さらに、尖鋭グリットを用いる特殊グリットブラスティングによって、所望により続いて表面に埋込まれたグリットを除去することによって、適切に粗面化された金属表面を得ることができるということも見い出された。グリットは通常角状粒子を含み、金属表面をピーニングせずに金属表面をカットしよう。このような目的で使用可能なグリットは、砂、酸化アルミニウム、鋼及び炭化ケイ素を含むことができる。グリットブラスティングに続いてエッチング、または他の処理の例えばウォーターブラスティングを使用して、埋込まれたグリットを除去する及び/または表面を清浄化することができる。
【0023】
前述のものから、例えば、弁金属酸化物コーティングの上記に説明したプラズマ溶射のようなコーティング前の前処理を提供する様々な手順によって表面を処理することができることは理解できよう。他の前処理もまた有用となり得る。例えば、表面を水素化処理または窒化処理にさらしてよいと予測されている。電気化学的に活性な材料でコーティングする前に、基板を空気中で加熱することによって、または基板の陽極酸化(米国特許第3,234,110号において説明されている)によって酸化物層を形成することが提案されている。主として保護及び伝導性中間体として役立つ下位層表面に電気化学的に活性な材料の外側層を析出させるという様々な提案もなされている。酸化スズをベースとした様々な下層が、米国特許第4,272,354号、同第3,882,002号、及び同第3,950,240号において開示されている。さらに、表面は、アンチパッシベーション層と同様に作製してよいと予測されている。
【0024】
上記に説明したような前処理層を提供することを含むことがあり得る表面作製に続いて、電気化学的に活性なコーティング層を次に基板部材に施用することができる。しばしば施用される電気化学的に活性なコーティングの典型的に代表的なものは、白金族金属酸化物、磁鉄鉱、フェライト、コバルトスピネル、または金属酸化物混合物のコーティング等の活性酸化物コーティングから提供される。こうしたコーティングは、水をベースとしたもの(例えば、水溶液)、または溶媒をベースとしたもの(例えば、アルコール溶媒を使用)としてよい。しかしながら、本発明の方法の場合、好ましいコーティング組成物溶液は典型的に、全てのアルコール溶液中のRuCl及びIrCl及び塩酸からなるものである(このとき弁金属成分が存在してもしなくてもよい)ことが見い出された。また、クロルイリジウム酸(chloriridic acid)(HIrCl)を利用することが予測されている。RuClをRuClxHOのような形態で利用してよく、IrClxHOを同様に利用できることは理解できよう。便宜上、このような形態を一般に本明細書において単にRuCl及びIrClと呼ぶ。一般に、塩化ルテニウムはアルコール中で塩化イリジウムと一緒に溶解し、アルコールは、例えばイソプロパノールまたはブタノールであり、全て少量の塩酸の添加と組み合わせても組み合わせなくてもよく、n−ブタノールが好ましい。
【0025】
このようなコーティング組成物は十分なルテニウム成分を含んで、コーティングの金属含量の100モル%を基準として少なくとも約5モル%、最高約50モル%までのルテニウム金属を提供しようし、好ましい範囲は約15モル%〜最高約35モル%までのルテニウムである。成分は実質的にこれらの酸化物として存在し、金属への言及は、特に比率に言及する場合には便宜上のものであることは理解できよう。
【0026】
このようなコーティング組成物は十分なIr成分を含んで、イリジウム及びルテニウム金属の100モル%を基準として少なくとも約50モル%〜最高約95モル%までのイリジウム金属を提供しようし、好ましい範囲は約50モル%〜最高約75モル%までのイリジウムである。最良のコーティング特性のためには、Ru:Irのモル比は約1:1〜約1:4であろうし、好ましい比は約1:1.6である。
【0027】
弁金属成分を所望によりコーティング組成物中に含めて、さらにコーティングを安定化する及び/またはアノード効率を変更してよい。チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、及びタングステンを含む様々な弁金属を利用することができる。弁金属成分は、アルコール溶媒中の弁金属アルコキシドから形成することができ、このとき酸が存在してもしなくてもよい。本発明において使用するために予測されているこのような弁金属アルコキシドは、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、及びブトキシドを含む。例えば、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルイソプロポキシドまたはタンタルブトキシドが有用かもしれない。さらに、溶解した金属の塩を利用してよく、適切な無機置換物質は、酸またはアルコール溶液中の塩化物、ヨウ化物、臭化物、硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、酢酸塩、及びクエン酸塩、例えば、TiCl、TiClまたはTaClを含むことができる。
【0028】
弁金属成分が存在する場合、コーティング組成物は、コーティングの金属含量の100モル%を基準として約0.1モル%〜最高25モル%以下までを含もうし、好ましい組成物は約5モル%〜最高約15モル%までを含む。
【0029】
本発明において利用される任意の多数のコーティング層は、液体コーティング組成物を金属基板に施用するのに有用な任意の手段によって施用されようと予測されている。このような方法としては、ディップスピン法(dip spin technique)、ディップドレイン法(dip drain technique)、はけ塗り、ローラー塗り、及び噴霧塗布法(例えば、静電噴霧)がある。さらに、噴霧塗布法及び組合せ技術の例えばディップドレイン法と噴霧塗布法とを組み合わせたものを利用できる。電気化学的に活性なコーティングを提供するための上述のコーティング組成物の場合、ローラー塗りの操作が最も実際的となり得る。
【0030】
コーティングを施用する方法にかかわらず、従来は、1回のみのコーティングによって実現されるものよりも大きい均一なコーティング重量が得られるように、コーティング手順が繰り返されている。しかしながら、施用されるコーティングの量は、電極ベースの面当り、金属としてのイリジウム含量を基準として、約0.05g/m(グラム毎平方メートル)〜約3.0g/mの範囲内、好ましくは、約0.2g/m〜約1.0g/mを提供するのに十分なものであろう。
【0031】
コーティングの施用後、施用した組成物を加熱して、コーティング組成物中に存在する前駆体の熱分解によって、得られる酸化物混合物コーティングを製造する。これは、上記に検討したように酸化物の金属を基準としたモル比率で酸化物混合物を含む酸化物混合物コーティングを製造する。このような熱分解のための加熱は、温度少なくとも約350℃で少なくとも約3分間行われよう。より典型的に、施用したコーティングは最高約550℃までのより高温にて約20分間以下加熱されよう。適切な条件は、空気中でまたは酸素中で加熱することを含むことができる。一般に、用いられる加熱技術は、金属基板表面のコーティングを硬化するために使用してよい任意のものとすることができる。従って、コンベヤーオーブンを含むオーブン硬化を利用してよい。さらに、赤外線硬化技術は有用となり得る。このような加熱後、コーティング組成物の追加の施用を行う追加のコーティングの前に、加熱及びコーティング済み基板は通常少なくとも実質的に雰囲気温度に冷却されよう。特にコーティング組成物の全ての施用が完了した後に、ポストベーキングを用いることができる。コーティングのための典型的なポストベーク条件は、温度約400℃〜最高約550℃までを含むことができる。ベーキング時間は約10分間、最高約300分間もの長さまで変化してよい。
【0032】
電解質中の試剤(例えば、有機添加剤)に対する耐性を得るためにアノードを調整するために、例えば弁金属酸化物、若しくは酸化スズ、またはこれらの混合物のトップコーティング層を利用してよい。トップコートを使用して、溶液中の少数種の酸化の速度を低減してもよい。トップコーティング層は典型的に、溶解した金属の塩、例えば、ブタノール中のTaClから形成されよう。酸化チタンを利用する場合、このような置換物質をドーピング剤と共に使用してよいと予測されている。
【0033】
酸化スズが所望のトップコーティング層である場合、適切な前駆体置換物質は、SnCl、SnSO、または他の無機スズ塩を含むことができる。酸化スズをドーピング剤と共に使用してよい。例えば、アンチモン塩を使用して、アンチモンドーピング剤を提供してよい。他のドーピング剤は、ルテニウム、イリジウム、白金、ロジウム及びパラジウム、並びに任意のドーピング剤の混合物を含む。
【0034】
トップコーティング層を利用する場合、このようなトップコーティングの施用後、例えば本明細書において上記に検討した仕方でコーティング層をポストベークすることが望ましいことがある。
【0035】
上文で検討したように、本発明のコーティングは、塩素及びアルカリ金属水酸化物の製造のための電解過程におけるアノードのために特に使用可能である。しかしながら、また、こうした電極は、他のプロセス例えば塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の製造において使用してよいと予測されている。また、電解採取、プリント回路板の製造を伴うプロセス、有機酸化及び還元を実行するプロセス並びに陰極防食のプロセスを含む、低電流密度酸素発生を伴う様々なプロセスにおいて、本発明のコーティングは利用されると予測されている。本発明の電極を、リチウム、ナトリウム及び塩化カリウム、臭化物及びヨウ化物の電気分解及びより一般にハロゲン化物の電気分解、電気分解条件下で分解する他の塩の電気分解、HCl溶液の電気分解及び水の電気分解のために使用してよい。これを一般に他の目的の例えば溶解した種の電解酸化または還元、例えば第一鉄イオンから第二鉄イオンへの酸化のために使用してよい。
【実施例】
【0036】
実施例1
厚さ約0.025インチで約10×10cmの未合金生成第1等級チタンであり穿孔済みの穴を有する平らなチタンプレートを、アルミナを使用してグリットブラストして粗面を実現した。次に試料を90〜95℃、18〜20%塩酸の溶液中で25分間エッチングした。
【0037】
表1において説明するコーティング組成物を、4つの別個の試料に施用した。表1に列記する量の金属を塩化物塩として19.2mlのn−ブタノール及び0.8mlの濃HClの溶液に加えることによって、コーティング溶液A〜Eを作製した。表1に列記する量のRu及びIrを塩化物として、及びTiをチタンブトキシドとして、5.3mlのBuOH及び0.3mlのHClの溶液に加えることによって、コーティング溶液Fを作製した。混合して塩の全てを溶解させた後に、調整済みチタンプレートの個別の試料に溶液を施用した。コーティングを層で施用し、各コートを別個に施用し、110℃で3分間乾燥し、続いて空気中で7分間480℃に加熱した。合計3回のコートを各試料に施用した。試料A〜Cは本発明による。試料D〜Fは比較例とみなされる。
【0038】
【表1】

【0039】
次に試料A〜Fの組を、加速試験において酸素発生アノードとして電流密度10kA/mで150g/lのHSOを含む電気化学的電池中50℃で、アノードとして作動させた。槽電圧対時間のデータを30分間毎に集めた。結果を、所定の電圧上昇までの所要時間として下記の表IIに要約する。
【0040】
【表2】

【0041】
従って、本発明に従って作製した試料は、比較例に対して、かなりの電圧上昇(>1ボルト)が生じるまでの時間が長いことによって立証される実質的に増大した寿命を有することが表IIの結果から明らかである。
実施例2
工業的塩素膜槽のための約1.5mのアノードを作製し、13.3mlのHCl毎リットルの溶液を有するn−ブタノール中の塩化物塩を使用して、Ru:Ir:Taのモル比35:55:10で構成される溶液でコーティングした。総金属濃度(Ru+Ir+Ta)は15gplだった。この溶液を10層施用し、各層を約110〜150℃で乾燥し、次に7分間480℃に加熱した。12.7×12.7cmの突出したメッシュ領域を有するアノードの区画を切断し、実験室用膜塩素槽中に取り付けた。ユニットを最高8kA/mまでで295日作動させた。Ru及びIrの損失は15%未満だった。比較として、15:10:75のモル%のRu:Ir:Ti(実施例1の試料Eど同様)で構成されるコーティングを実験室用膜槽アノードに施用し、同様に作動させた。269日の作動後に、Ru及びIrの損失は30%を超えた。貴金属の使用の点では、本発明のコーティング(Ru:Ir:Taは35:55:10)は、平均摩耗率0.0015グラムの貴金属毎メトリックトンの製造された塩素を有した。比較試料(Ru:Ir:Tiは15:10:75)は、摩耗率0.016グラムのPM毎トンのClを有し、または本発明のコーティングより10倍高かった。
【0042】
特許法に従って最良の態様及び好適な具体例を説明してきたが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、むしろ添付の請求の範囲によって限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された量の白金族金属酸化物を有し同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを表面に有する電解電極の製造方法であって:
弁金属電極ベースを提供する工程と;
前記弁金属電極ベースを、前記弁金属電極ベース表面の電気化学的に活性なコーティングのコーティング層でコーティングする工程と;を含み、前記コーティングは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含み、白金族金属酸化物の混合物は、前記コーティング中に存在する金属の100モル%を基準として少なくとも約5モル%〜最高約50モル%までのルテニウム、及び少なくとも約50モル%〜最高約95モル%までのイリジウムを提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になる、方法。
【請求項2】
前記弁金属電極ベースは、弁金属メッシュ、シート、ブレード、管、穿孔済みプレートまたはワイヤ部材または焼結済み粒子を含むチタンの粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弁金属電極ベースは、チタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金及びこれらの金属間混合物のうちの1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記弁金属電極ベースの表面は粗面である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射のうちの1つ以上によって調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粗面の前処理層としてセラミック酸化物バリヤー層が確立される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは、前記コーティング中に存在する金属の100モル%を基準として、約15モル%〜最高約35モル%までのルテニウム、及び約50モル%〜最高約75モル%までのイリジウムを提供する比率で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電気触媒コーティングは、前記弁金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズのうちの1種以上であり、前記弁金属酸化物は、約0.1モル%〜約25モル%の量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは約1:1〜約1:4のモル比率で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、約0.1%〜約20%の範囲内の量である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングは、ディップスピン、ディップドレイン、はけ、ローラー塗りまたは噴霧塗布法のうちの1つ以上によって施用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電気化学的に活性なコーティングは、前記電極ベースの面当り、金属としての前記イリジウムを基準として約0.05g/m〜約3.0g/mの量で施用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気化学的に活性なコーティングを、温度少なくとも約350℃〜最高約550℃までで少なくとも約3分間〜最高約20分間まで加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記電解電極は酸素発生電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電極は、金属の電解採取、銅箔析出のために、または陰極防食、ハロゲン化物の電気分解、水の電気分解、塩素酸塩若しくは次亜塩素酸塩を製造するための塩化物の電気分解のために、または陰極防食のために利用される電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電解電極は、分離された電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記電極は、可溶性種の酸化または還元のために利用される電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
低減された量の白金族金属酸化物を有し同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを表面に有し、クロル−アルカリ溶液の電気分解において使用するための電極であって:
弁金属電極ベースと;
前記弁金属電極ベース表面の電気化学的に活性なコーティングのコーティング層と;を含み、前記コーティングは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含み、白金族金属酸化物の混合物は、前記コーティング中に存在する金属の100モル%を基準として少なくとも約5モル%〜最高約50モル%までのルテニウム、及び少なくとも約50モル%〜最高約95モル%までのイリジウムを提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になる、電極。
【請求項22】
前記弁金属電極ベースは、弁金属メッシュ、シート、ブレード、管、穿孔済みプレートまたはワイヤ部材である、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記弁金属電極ベースは、チタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金及びこれらの金属間混合物のうちの1種以上である、請求項22に記載の電極。
【請求項24】
前記弁金属電極ベースの表面は粗面である、請求項23に記載の電極。
【請求項25】
前記表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射のうちの1つ以上によって調整される、請求項24に記載の電極。
【請求項26】
前記粗面の前処理層としてセラミック酸化物バリヤー層が確立される、請求項24に記載の電極。
【請求項27】
前記電気触媒コーティングは、前記弁金属酸化物を含む、請求項23に記載の電極。
【請求項28】
前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズのうちの1種以上であり、前記弁金属酸化物は、約0.1モル%〜約25モル%の量で存在する、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは約1:1〜約1:4のモル比率で存在する、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項29に記載の電極。
【請求項31】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項30に記載の電極。
【請求項32】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、約0.1%〜約20%の範囲内の量である、請求項30に記載の電極。
【請求項33】
低減された量の白金族金属酸化物を含み同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを有する少なくとも1つのアノードを内部に有する電解槽中の水性クロル−アルカリ溶液の電気分解方法であって:
内部にセパレーターを有する分離された電解槽を提供する工程と;
前記槽中に電解質を確立する工程と;
前記電解質と接触した状態になっている前記槽中に前記アノードを提供し、前記アノードは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含む前記電気触媒コーティングを有し、白金族金属酸化物の混合物は、前記コーティング中に存在する金属の100モル%を基準として少なくとも約5モル%〜最高約50モル%までのルテニウム、及び少なくとも約50モル%〜最高約95モル%までのイリジウムを提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になる、工程と;
前記アノードに電流を印加する工程と;
前記アノードで塩素を発生する工程と;
を含む方法。
【請求項34】
前記槽中の前記電解質は、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化リチウムのうちの1種以上である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記電気触媒コーティングは、前記弁金属酸化物を含み、前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、または酸化タングステンのうちの1種以上である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記弁金属酸化物は、約0.1モル%〜最高約25モル%までの量で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記アノードの表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射の工程のうちの1つ以上によって調整された粗面である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記アノードの表面はチタンを含み、前記電気触媒コーティングは、静電噴霧塗布法、はけ塗り、ローラー塗り、ディップ施用法及びこれらの組合せを含む手順によってチタン部材表面に提供される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは約1:1〜約1:4のモル比率で存在する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、約0.1%〜約20%の範囲内の量である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記槽は、ダイアフラムを含む膜セパレーターまたは多孔質セパレーターによって分離される、請求項33に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された量の白金族金属酸化物を有し同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを表面に有する電解電極の製造方法であって:
弁金属電極ベースを提供する工程と;
前記弁金属電極ベースを、前記弁金属電極ベース表面の電気化学的に活性なコーティングのコーティング層でコーティングする工程と;を含み、前記コーティングは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含み、白金族金属酸化物の混合物は、酸化ルテニウム:酸化イリジウムのモル比1:1〜1:6.5を提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になる、方法において、
前記コーティングを施用して、前記電極ベースの面当り、金属としてのイリジウム含量を基準としてコーティング重量0.05g/m〜3.0g/mを実現する、方法。
【請求項2】
前記弁金属電極ベースは、弁金属メッシュ、シート、ブレード、管、穿孔済みプレートまたはワイヤ部材または焼結済み粒子を含むチタンの粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弁金属電極ベースは、チタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金及びこれらの金属間混合物のうちの1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記弁金属電極ベースの表面は粗面である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射のうちの1つ以上によって調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粗面の前処理層としてセラミック酸化物バリヤー層が確立される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは、前記コーティング中に存在する金属の100モル%を基準として、15モル%〜最高35モル%までのルテニウム、及び50モル%〜最高75モル%までのイリジウムを提供する比率で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電気触媒コーティングは、前記弁金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズのうちの1種以上であり、前記弁金属酸化物は、0.1モル%〜25モル%の量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは1:1〜1:4のモル比率で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、0.1%〜20%の範囲内の量である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングは、ディップスピン、ディップドレイン、はけ、ローラー塗りまたは噴霧塗布法のうちの1つ以上によって施用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電気化学的に活性なコーティングを、温度少なくとも約350℃〜最高約550℃までで少なくとも約3分間〜最高約20分間まで加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記電解電極は酸素発生電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記電極は、金属の電解採取、銅箔析出のために、または陰極防食、ハロゲン化物の電気分解、水の電気分解、塩素酸塩若しくは次亜塩素酸塩を製造するための塩化物の電気分解のために、または陰極防食のために利用される電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電解電極は、分離された電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電極は、可溶性種の酸化または還元のために利用される電解槽中のアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
低減された量の白金族金属酸化物を有し同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを表面に有し、クロル−アルカリ溶液の電気分解において使用するための電極であって:
弁金属電極ベースと;
前記弁金属電極ベース表面の電気化学的に活性なコーティングのコーティング層と;を含み、前記コーティングは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含み、白金族金属酸化物の混合物は、酸化ルテニウム:酸化イリジウムのモル比1:1〜1:6.5を提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になる、電極において、
前記コーティングを、前記電極ベースの面当り、金属としてのイリジウム含量を基準としてコーティング重量0.05g/m〜3.0g/mで施用する、電極。
【請求項21】
前記弁金属電極ベースは、弁金属メッシュ、シート、ブレード、管、穿孔済みプレートまたはワイヤ部材である、請求項20に記載の電極。
【請求項22】
前記弁金属電極ベースは、チタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金及びこれらの金属間混合物のうちの1種以上である、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記弁金属電極ベースの表面は粗面である、請求項22に記載の電極。
【請求項24】
前記表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射のうちの1つ以上によって調整される、請求項23に記載の電極。
【請求項25】
前記粗面の前処理層としてセラミック酸化物バリヤー層が確立される、請求項23に記載の電極。
【請求項26】
前記粗面の前処理層としてセラミック酸化物バリヤー層が確立される、請求項23に記載の電極。
【請求項27】
前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズのうちの1種以上であり、前記弁金属酸化物は、0.1モル%〜25モル%の量で存在する、請求項26に記載の電極。
【請求項28】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは1:1〜1:4のモル比率で存在する、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項29に記載の電極。
【請求項31】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、0.1%〜20%の範囲内の量である、請求項29に記載の電極。
【請求項32】
低減された量の白金族金属酸化物を含み同時にコーティング耐久性を維持する電気触媒コーティングを有する少なくとも1つのアノードを内部に有する電解槽中の水性クロル−アルカリ溶液の電気分解方法であって:
内部にセパレーターを有する分離された電解槽を提供する工程と;
前記槽中に電解質を確立する工程と;
前記電解質と接触した状態になっている前記槽中に前記アノードを提供し、前記アノードは、前記コーティングの金属含量の100モル%を基準として白金族金属酸化物と所望により弁金属酸化物との混合物を25モル%以下の量で含む前記電気触媒コーティングを有し、前記白金族金属酸化物の混合物は、酸化ルテニウム:酸化イリジウムのモル比1:1〜1:6.5を提供する比率の酸化ルテニウム及び酸化イリジウムから本質的になり、前記コーティングを、前記電極ベースの面当り、金属としてのイリジウム含量を基準としてコーティング重量0.05g/m〜3.0g/mで施用する、工程と;
前記アノードに電流を与える工程と;
前記アノードで塩素を発生する工程と;
を含む方法。
【請求項33】
前記槽中の前記電解質は、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化リチウムのうちの1種以上である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記電気触媒コーティングは、前記弁金属酸化物を含み、前記弁金属酸化物は、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、または酸化タングステンのうちの1種以上である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記弁金属酸化物は、0.1モル%〜最高25モル%までの量で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記アノードの表面は、粒間エッチング、グリットブラスティング、または熱溶射の工程のうちの1つ以上によって調整された粗面である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記アノードの表面はチタンを含み、前記電気触媒コーティングは、静電噴霧塗布法、はけ塗り、ローラー塗り、ディップ施用法及びこれらの組合せを含む手順によってチタン部材表面に提供される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記酸化ルテニウム及び酸化イリジウムは1:1〜1:4のモル比率で存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記電気触媒コーティング表面に、弁金属酸化物コーティング若しくは酸化スズコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも1つのトップコーティング層が確立される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
弁金属酸化物の前記トップコーティング層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記トップコーティング層は、Sb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはIn及びこれらの酸化物のうちの1種以上をドープされた酸化スズコーティング層であり、ドーピング剤は、0.1%〜20モル%の範囲内の量である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記槽は、ダイアフラムを含む膜セパレーターまたは多孔質セパレーターによって分離される、請求項32に記載の方法。

【公表番号】特表2006−515389(P2006−515389A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571173(P2004−571173)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/039149
【国際公開番号】WO2004/094698
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(591041783)エルテック・システムズ・コーポレーション (6)
【氏名又は名称原語表記】ELTECH Systems Corporation
【Fターム(参考)】